ガザ保健省の発表によると、昨年10月7日から今年6月19日までにガザでは3万7396人が殺された。瓦礫の下には数千の遺体があると言われているほか、 ランサットによると間接的な死者は直接死者の3倍から15倍にのぼるとされている ので、12万人から60万人がイスラエル軍の攻撃で殺されたことになる。大量殺戮以外の何者でもない。
この大量殺戮を正当化するため、西側の政府や有力メディアはイスラエルという国が先住民であるアラブ系住民の虐殺、いわゆる民族浄化から始まったことから目を背けてきた。
今回の虐殺に限っても、イスラエルは2023年春から挑発を繰り返していた。 2023年4月1日にイスラエルの警察官がイスラム世界で第3番目の聖地だというアル・アクサ・モスクの入口でパレスチナ人男性を射殺し、4月5日にはイスラエルの警官隊がそのモスクへ突入、ユダヤ教の祭りであるヨム・キプール(贖罪の日/昨年は9月24日から25日)の前夜にはイスラエル軍に守られた約400人のユダヤ人が同じモスクを襲撃、さらにユダヤ教の「仮庵の祭り」(昨年は9月29日から10月6日)に合わせ、10月3日にはイスラエル軍に保護されながら832人のイスラエル人が同じモスクへ侵入しているのだ。それをアメリカなど西側諸国は黙認した。
昨年10月の攻撃直後、イスラエルのハーレツ紙は記事の中で「ハンニバル指令」について触れている 。 攻撃の際、約1400名のイスラエル人が殺されたとされたされたのだが、その中にハマスと交戦したイスラエルの軍人や治安機関員が含まれていると指摘されて1200名に訂正されたが、相当数はイスラエル軍の攻撃で殺されたと伝えたのだ。
同紙によると、イスラエル軍は侵入した武装グループを壊滅させるため、占拠された建物を人質もろとも砲撃、あるいは戦闘ヘリからの攻撃で破壊したとしていた。 ハーレツの記事を補充した報道 もある。
その後、 ハーレツ紙は当初の報道を補強する情報を入手した 。文書のほかイスラエル軍将兵の証言からイスラエル人を殺害した命令が具体的に示されている。誘拐されたイスラエル人の多くが、イスラエル軍に銃撃され、危険にさらされていたのである。パレスチナの武装集団にイスラエル人拉致され、人質になることを避けるため、自国の兵士や民間人を殺害するよう指示されたということだ。
ハマスは 10月7日に民間人を虐殺、子どもの首が切り落とし、女性をレイプしたと西側では宣伝されてきたが、殺害したのはイスラエル軍、子どもの首を切り落としたり女性をレイプしたとする話は 証拠が示されていない。作り話である可能性が高いと考えられている。
戦闘が始まった直後、ベンヤミン・ネタニヤフ首相はパレスチナ人虐殺を正当化するため、「われわれの聖書(キリスト教における「旧約聖書」と重なる)」を持ち出し、 「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という部分を引用 している。
「アマレク人」を家畜ともども殺した後、イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神に命じられたと旧約聖書では記述されている。
アマレク人は歴史の上で存在が確認されていないが、この民族をイスラエルが敵視している勢力に重ねて見せた。パレスチナ人が生活していた歴史を破壊で消し去るということだろう。
サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」ということが書かれている。これこそがガザでイスラエルによって行われていることだというのだ。
ネタニヤフによると「われわれは光の民であり、彼らは闇の民だ」としたうえで、イザヤの預言を理解しなければならないと主張する。「われわれ」とはイスラエル人、「彼ら」とはパレスチナ人、イスラム教徒、あるいはイスラエル以外の人びとを指しているのだろう。
ネタニヤフはリクードの政治家だが、同じようにこの政党に所属する元国会議員のモシェ・ファイグリンは ガザをドレスデンや広島のように破壊するべきだと主張 している。実際、破壊されたガザの様子は両都市を彷彿とさせるものがある。