森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2017.12.17
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森田先生は、富士山の頂上で3時間も、浴衣1枚で寒さに震えて、激しく頭痛がしたことがあるけれども、風邪はひかなかったと言われている。
風邪をひくのも魔がさすのも、必ず常に気の緩んだ時で、周囲の事情と、これに対する自分の反応が適応性を失ったときに起こるものである。

周囲と自分との釣り合いが取れていれば、必ずそんなしくじりは起こらない。
暖かいところではゆったりし、寒いところでは気が引き締まっておればよいけれども、暖かい所から急に寒いところへ入り、また寒いところから暖かいところに入る時に、これに対する心の変化に適応せず、気が緩んだところで風邪をひくのである。特にうたた寝のような事はよくない。
しかし精神が自然になれば、うたた寝でも風邪をひかないようになる。
武士が轡の音にも目を覚ますと言うのは、心は常に緊張しているのであって、こんなときには決して風邪も引かなければ、魔がさすこともないのである。
(森田全集第5巻 59ページより引用)

森田全集第5巻の中には、風邪をひくという話は何箇所か出てくる。
この話は、風邪をひく、ひかないの話をされているが、実は 「周囲の変化や動きに合わせて実践・行動・生活することの重要性」 を説明されているのである。

私は10年以上前には毎年大風邪をひいていたが、森田でこのことを知ってから実践や行動をしているせいか、ここのところ風邪をひいたことがない。

さて、周囲の状況や変化を無視する人はどういう人であるか。
事実、現状を無視して、自分の「かくあるべし」を前面に押し出す傾向のある人だと思う。
私たちは、ともすると、自分の頭で考えたことを優先して意地を張って押し通そうとする。
これは、「かくあるべし」 を前面に押し出した生き方である。
そうなると、周囲の状況は刻々と変化し動いているにも関わらず、その変化に対応するという意識が希薄になる。それがまずいいのである。
自分の我と事実の間にギャップが生まれて、やることなすことが適応性を失っていく。
それが神経症の発症の原因ともなるし、体調を壊すもとにもなる。
我を通すのではなく、その時々の変化に対応して、適応することを優先するようにすればよいのだ。
つまり事実本位・物事本位の生き方を理解して身に着けるとよいと思う。

しかし、ここで対人恐怖症の人は1つ疑問が出てくる。

そのおかげでなんとか相手と破滅的ないざこざを起こさないで平穏を保っている。
しかし、その方向は自己主張を封印しているので、とても辛いし苦しいばかりである。
針のむしろに座らされているような状態だ。
どこでもかしこでも、人に合わせるということは、大きな問題を起こさないかもしれないが、自分の意志を軽視しているので、抑うつ感が強まり苦しいばかりではないのか。
この問題に対してどう考えるのか。


他人の言動に右往左往して、いつも人の思惑に振り回されている。
本来の人間関係のあり方としては、他人の言い分もよく聞き、自分の言いたいことも言い合う対等な人間関係が望ましい。対人恐怖症の人は、対等な人間関係を築けていない。
相手に一方的に支配される人間関係になっている。
これはいかにもバランスが悪い。ここが問題だ。
このバランスが崩れているという問題は、何もしないで放置していてはならないと思う。

対人恐怖症の人は、一方的に相手に従属するのではなく、自己表現の技術を身に着けて対応していくという面も大切である。将棋でも、専守防衛ばかりではそもそも勝負にはならない。
まともな人間関係は、相手の言い分も聞くことも大切であるが、自分の言いたいことも言い、双方のバランスを維持していくことが重要である。
対人恐怖症の人は、愛着障害もあってなかなか自己主張できないという問題もあるが、それでもその方向を目指さない限り、ストレスや苦しみはずっと続く。
自分の気持ちや意思を相手に伝えるという努力を無視してはならないと思う。

この点に関しては、森田理論学習の中の、次の2点はぜひとも身につけて、日々の生活の中で実践してほしいものだ。まず「純な心」の応用である。
最初に感じた直観を相手に向かって表現していくことである。素直な感情のことだ。
「純な心」の次に生まれてくる感情は「かくあるべし」を含んでいるので、相手と対立することが多い。
初一念の後には、すぐに初二念や初三念といわれる「かくあるべし」を含んだ感情が沸き起こってくることを我々はすでに学習してきた。
これらは当面無視して、初一念を思い出して、それを前面に押し出して、自分の思いを相手に伝えることだ。これは慣れてくればそんなに難しいことではない。ここに焦点を当てることだ。

次に「私メッセージ」の応用である。
「あなた」を主語にした会話は、「かくあるべし」を押し付けることになることが多い。
「私はこう思う、私はこう感じた、私はこうしてくれたらうれしく思う」などの「私メッセージ」からの発言は、相手に「かくあるべし」押し付けることがない。
それを受けて相手がどのような言動を選ぶかは、相手に任せているのだ。
これも意識的に取り組んでいけば、必ず自分のものにできるはずだ。

自己表現、自己主張の仕方はこれ以外にもいろいろと手法はある。
それはそれで取り組んでみてほしい。
ただその前に、森田理論学習をしている人は、とりあえずこの2点はぜひとも身に着けてほしいものである。





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Last updated  2017.12.17 14:28:03
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