inti-solのブログ

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2017.02.25
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テーマ: 戦争反対(1197)
カテゴリ: 戦争と平和
当ブログでは記事にしませんでしたが、北朝鮮の金正男暗殺事件、仰天しました。犯人が北朝鮮の工作員であることは確実でしょう。どういう意図に基づいてかは知りませんが、今の時代に最高指導者の兄弟殺しとはね。歴史的に見れば最高権力者の兄弟間の殺し合いなんていくらでも例のある話(頼朝と義経とか)ではありますけど、それを21世紀の今やってしまうというのは、さすがにねえ。
それはともかくとして、またまた産経新聞にトンデモな記事が出ています。

拉致被害者救出へ「自衛隊活用」の具体策検討 全国でシンポ開催
北朝鮮による拉致被害者救出の具体策を詳細に検討した「自衛隊幻想 拉致問題から考える安全保障と憲法改正」(産経新聞出版)の著者で「予備役ブルーリボンの会」代表の荒木和博氏らが各地でシンポジウムを開き、「拉致は根本的に安全保障の最重要課題。自衛隊が拉致被害者を救出できる現実を知ってほしい」などと提言を行っている。
同書は朝鮮半島有事を想定し救出へ自衛隊がどのような活動ができるかなどをシミュレーション。憲法や法制度の課題もあぶり出した。国防の根本へメスを入れる内容に「自分の国は自分たちで守らねば。今の法で日本は大切な人を守れない」「憲法改正しなければ拉致被害者は永久に帰還できない」などと、幅広い世代から反響が寄せられている。

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よく読むと、結局のところ(産経新聞出版)の書籍の宣伝なわけですが、それにしても内容には仰天せざるを得ません。

「自衛隊が拉致被害者を救出できる現実を知ってほしい」

へえーーーー、知りませんでしたよ(爆)
で、どうやって実行するのですか?拉致被害者の居場所をどうやって特定し、そこにどうやって、どの程度の規模の特殊部隊員を送り込み、当然予想される北朝鮮側の反撃を排除して「救出」して、どうやって撤収するのか、どの程度の部隊規模と装備と計画なのか、「現実」というなら、是非具体的に提示していただきたいものです。

当然のことながら、すべての拉致被害者が今なお一箇所に集められて生活している、なんてことはあり得るはずもなく、北朝鮮のあちこちに分散して生活※しているはずです。仮にその居場所が突き止められたとしても(実際には、突き止められるわけがないけど)、それを同時に襲撃して救出することなど、いかに考えても不可能という以外の答えはありません。

※生きているなら、ですがね。政治的イデオロギーの左右にかかわらず、不当に拉致された親族が死んだと認めたくない、生きていると思いたい、という気持ちは分かります。だけど、客観的に判断して、もう生きいるはずがない。個人の心情として「まだ生きている」と思いたいのは理解できますが、それに基づいて政府が、明らかに生きてはいない人の「救出作戦」などという失敗確実の博打を行うことなど、あり得ないでしょう。

北朝鮮の拉致被害者に特定してではないですが、海外での「人質救出作戦」に関して、自衛隊(の代弁機関)が、過去に「そんなことは不可能だ」と明言したこともあります。

朝雲新聞という新聞があります。読者の大半が自衛隊員とその関係者の、実質的な自衛隊の機関紙です。新聞以外にも、自衛隊員が持つ「自衛隊手帳」とか、「防衛装備年鑑」なども発行しています。この新聞がコラムで、国会での人質救出論に噛み付いたのです。こらについては、 以前にも記事を書いた ことがありますが、すでに元のコラムは削除されているので、改めて全文を引用したいと思います。

過激派組織「イスラム国」による日本人人質事件は残念な結果となった。悔しい気持ちはわかるが、自衛隊が人質を救出できるようにすべきとの国会質問は現実味に欠けている。
人質救出は極めて困難な作戦だ。米軍は昨年、イスラム国に拘束されている二人のジャーナリストを救出するため、精鋭の特殊部隊「デルタフォース」を送り込んだが、居場所を突き止められずに失敗した。
作戦に際し、米軍はイスラム国の通信を傍受し、ハッキングもしていたに違いない。さらに地元の協力者を確保し、方言を含めて中東の言語を自在に操れる工作員も潜入させていたはずだ。もちろん人質を救出するためであれば、米軍の武力行使に制限はない。それでも失敗した。
国会質問を聞いていると、陸上自衛隊の能力を強化し、現行法を改正すれば、人質救出作戦は可能であるかのような内容だ。国民に誤解を与える無責任な質問と言っていい。
これまで国会で審議してきた「邦人救出」は、海外で発生した災害や紛争の際に、現地政府の合意を得たうえで、在外邦人を自衛隊が駆け付けて避難させるという内容だ。今回のような人質事件での救出とは全く異なる。
政府は、二つの救出の違いを説明し、海外における邦人保護には自ずと限界があることを伝えなければならない。私たちは、日本旅券の表紙の裏に記され、外務大臣の印が押された言葉の意味を、いま一度考えてみる必要がある。(2015年2月12日付『朝雲』より)


世界最強の米軍でさえできなかったのに、自衛隊に人質救出作戦なんて、できるわけねーだろ、と、一言でいえばそういうことです。「陸上自衛隊の能力を強化し、現行法を改正すれば、人質救出作戦は可能であるかのような内容」は国民に誤解を与える無責任な質問だと斬って捨てています。
自衛隊の実質的機関紙が、正面からそのように指摘したわけです。当たり前のことを当たり前に指摘しただけ、ともいえますけどね。
「イスラム国」を「北朝鮮」に書き換えても、まったく同じです。というより、腹の中ではそちらを念頭に置いてのコラムじゃないか、という気すらします。

荒木和博の叫ぶ「自衛隊が拉致被害者を救出できる現実」なるものは、当の自衛隊自身の機関紙から、そんなものは不可能だと一刀両断されているような代物ということです。純軍事的な面に限ってもそうですが、それに加えて、やった場合は国際政治上の後始末が極めて高くつくことになるでしょう。
つまり、ありていに言えば妄想でしかない、ということです。





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最終更新日  2017.02.25 11:15:42
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