再出発日記

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2006年03月02日
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テーマ: 本日の1冊(3697)
23分間の奇跡
短い本である。でも感想がどうもまとまらない。なぜなのだろうか。

去年の10月、私のこの「再出発日記」がめでたく一万ヒットを迎えた。それを踏んで頂いたのが、碧落さんである。住所を聞いて記念品を贈るわけにもいかず、好きな本の書評を書かせてもらう、と申し出たところ、ものすごく喜んでもらい、この本の書評を書くことを約束した。…………ところが紆余曲折があったあとこの本を探して読んだところ、(「絵本」形式なのであっという間に読める。)どこから手をつけていいのかわからなくなってしまった。ちょっと読んだだけでは、この著者は愛国心を持て、とでもいいだげである。ところがそうではないというのはすぐわかった。この著者はどういう人なのだろう。調べてもどうも取り留めのない人だ。…………そういうわけでどうも取り留めのない話になりそうだ。ものすごく待たせたのに、(宿題がこんなに遅くなったのはもちろん私の人生で初めてです)こんなので申し訳ない。碧落さんは中学三年。ものすごくしっかりしているお嬢さんです。試験はもう一段落ついたよね。 いい春が来てますように

話はそう難しくは無い。ある日のアメリカの小学校の話。どうやらアメリカはどこかの国に戦争かなにかで負けたらしい。授業が始まると、突然先生の交代があると知らされる。新しい先生は若い女の先生だ。この先生、不安がる女の子に歌を歌ってあげたり、あらかじめ机の位置で子供たちの名前を覚えていたりしてあっという間にほとんどの教室の子供たちの気持ちをつかんでしまう。ジョニーはまだ反発している。お父さんが戦勝国に連れ去られているからである。

さて授業を始めようとして、先生は最初の「こっきにちゅうせいをちかう」というところで、「ちょっと待って」という。「このことはどういうことなのかしら。」みんな答えることが出来ない。意味なんて教えてもらっていなかったのだから。「ちゅうせいというのはね、こっきのためにつくすって、約束することなのよ。そして国旗というものは、とても大事なのね。だからみんなは、国旗がみんなの命よりだいじですって、そのちかいのなかでいっているのよ。でも国旗がのほうが、人の命より大事だなんて、そんなことあるのかしら。」難しい問いかけである。ところが先生、生徒が答える前に解決策を出してしまう。「国旗をみんな好きなら、この国旗を少しずつ皆で分けたらどうかしら。」そうやって国旗を切り刻んでしまう。

ジョニーはまだ納得しない。「私たち負けたの?それとも勝ったの?」誰かが質問する。「わたしたち、つまり、わたしも、みんなも、どちらも勝ったのよ。」「へえー」みんなは安心する。ジョニーは爆発する。「僕のお父さんをどうした。どこへやった。」先生は「お父さんは間違った考え」を直すために学校に行っていると説明する。「勘違いしないでね。悪い考えと間違った考えは違うでしょ。だから、学習が終わったら帰ってくるわ。」ジョニーは父さんが帰ってくると聞いて安心する。

先生は合宿の計画も打ち明ける。生徒が質問する。「ねるまえには、おいのりをするんでしょ」先生は巧妙に「お祈りしても役に立たない」ということを「これは秘密よ」といって教えてあげる。みんなは納得する。ジョニーはいまや、先生にすっかりうちとけていた。「この先生はうそをつかないで、何でも本当のことを言うからだ」授業が始まって23分間が過ぎていた。以上が「23分間の奇跡」の大まかな筋である。

「スーパーサイズミー」

TVシリーズ「24」 にしても、法律よりも、国家に対する忠誠のほうが優先されている。アメリカにとって、愛国心は9.11があったから突然沸きあがったものではないのだろう。

では、この本は愛国心を自分のものとして消化していないアメリカを批判した書物なのだろうか。実は若い女先生のほうは、最後のところで「うまくいった」と安心している。「ここまでのやり方は、全て教えられた通りに運んだまでのことだ。」先生は「この土地の全ての男や女たちが、同じ信念を持って、同じような手順の元に、教育されていくであろう」ことを思うと胸が熱くなるのである。先生の国はどうやらソ連を想定しているみたいである。(原本は1981年発行。)著者はもう一つのモデルである、国家ではなく指導者に忠誠を使う国、神を信じない国(ソ連のことだろう。ただしステレオタイプ的な認識ではある。)に対しても明確に批判的に見ているのである。では、どうすればいいというのだろう。

私が小学校4年のときに担任になった鈴木先生は、授業の始めに歌を歌うということを始めた。後にも先にもそんなことをしたはその先生だけだった。歌は「ドナドナ」である。牛が殺されるためにつれていかれる悲しそうな歌である。名曲である。後に中学生のとき音楽の時間でも習ったから、純粋に情操教育のためだったのかもしれない。と、つい最近まで思っていた。しかし、今突然思う。あの時代、ベトナム戦争の終結直後だったではないか。この歌はジョーン・バエズの持ち歌だった。当時、この歌は反戦歌として歌われていたのである。そのことを知らなくても、私はこの歌を時々口ずさむ。そして悲しくなる。そんな持ち歌を持てて私の人生は少し有益だった。

子供のときに教育は大切だ。たとえ、「きみがよ」の意味は知らなくても、もし毎日君が代を授業のたびに歌うようなことが有れば、その子供の人生に大きな影響を及ぼすだろうと思う。

じゃあ反対に、日本人の場合は、日本国憲法前文を毎日授業の前に暗唱するべきだろうか。私はたとえ、憲法前文が国歌になっても、するべきではないという意見であるが、みんなはどうであろう。

やはり予想とおり取りとめの無い感想になってしまった。

アメリカの「忠誠の言葉」自体にはアメリカの歴史が有るから、私からなにも言えるはずも無い。この本の著者はアメリカ映画界の「アカ狩り」で追われた「大脱走」の脚本家ジェームズ・クラベルである。しかし、その後の著作を見ても彼が共産主義者であった形跡は無い。ただ「同じ信念を持って、同じような手順の元に、教育されていく」ことに厳しく異議申し立てをしてるのだということは感じられた。この本の原題は「The Children’s Story but not just for children」である。中学生よりもどちらかというと大人が読むべき本なのだろう。





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最終更新日  2006年03月02日 15時20分37秒
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