再出発日記

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2012年06月08日
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カテゴリ: 水滸伝



「何もかも、『替天行道』が悪いのじゃよ、宣賛」
「おかしなことを、言われますね」
「いや、悪い。悪いということにしておこう。宋江殿はあれに、新しい国を作る夢まで書かれてしまった」
杜興の言葉に、冗談を言っている響きはなかった。
「腐敗した権力を倒すべし。それだけが書かれていたら、宋を倒して、梁山泊の闘いは終わりであった。新しい国は、誰か別の者が作ればいい。梁山泊で闘った者は、人民の海に消えていくだけで良かったんじゃ。そしてまた、権力が腐敗すれば、 『替天行道』 を読み継いだ者が、立ち上がればよい。闘いの輪廻はあっても、闘う者たちはそのたびに変わる」
「新しい国を作ることは、間違いだと言っているのですね」
「そんなことは、言っておらん。そこまでできるのだろうか、と言っている」
「おかしなことを、言われます。現に、この梁山泊は」
「うまくいっておるのであろうな、多分」
「まだ、この世に顔を出したばかりの国ですが」
「難しいな。ここは国なのか?」
「国です」
なんという話だ、と思っても、杜興は途中でやめない。
「わからんのう」(213p)


大いなる不安の中で、梁山泊は苦しんでいた。杜興は小さな綻びを直す為に、自ら命を落とす。古株たちも水滸伝の英雄に負けない見事な最期を遂げたが、 私はこの古狸の死に方が1番心に残った。思えば、楊令が初めてみんなの前で新しい国つくりの理想を語ったとき、一番冷静に沈思して聞いていたのは、この杜興だった。

「のう、宣賛。いま梁山泊はいい夢の中じゃ。夢は醒める。醒めた時、いい夢が現実になっておる。そうするのは、おまえたちの仕事じゃよ。わしは、もうきつい仕事はできん。おまえたちが、やれ」

いま日本は、外面は穏かな大木だが、中味はグズグズに腐っている陽だまりの樹なのではないか。真の意味で、憲法が暮らしの隅々まで活かされている国、そんな未来は果たして来るのだろうか?もし出来た時、私たちはもしかしたら、途方に暮れるのではないか。そんなことさえ、思ったのである。私は、杜興の立場か、宣賛の立場か。





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最終更新日  2012年06月09日 03時27分31秒
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