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2017年03月26日
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「少女キネマ 或は暴走王と屋根裏姫の物語」一肇 角川文庫
一肇(にのまえはじめ)というペンネーム自体に変な方向にこだわっている特徴が現れている。「一」を「にのまえ」と読んでいるが、「一」を「はじめ」とも読む読み方もあるのである。だとすれば、この読み方で「一一」と書いても構わないわけだ。また、2014年の刊行らしいが、偶然にもイニャリトゥ監督の「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」が米国公開された年である。書名も内容も実は、既に話題となっていたその作品へのオマージュとも見れなくはないのである。要は、この新人作家の性癖は、「変な方向に拘る」というものだということがわかる。

イニャリトゥ監督は「BIUTIFUL ビューティフル」も「レヴェナント蘇えりし者」も、その年のマイベスト3に入れるほど私は大好きだった監督(私は年間100作以上は観る映画ファンである)だけど、アカデミー賞三冠に輝いた「バードマン」だけは頂けなかった。表現者の苦しみを描こうとしたこの作品、しかしその肝心の苦しみの中味は、台詞的にも映像的にも、私にはほとんど伝わらなかった。むしろ、これはあらすじが先にあって、それに合わせていろんな凝りに凝った映像と台詞を「創った」気がした。

という、全く同じ感想を、この一肇氏の作品にも与えたい。
それなのに、なぜこの本を手にとって最後まで読み通したのか?それは一つは編集者の文庫本の裏表紙にある紹介文「映画と、少女と、青春と。」という文句に惹かれたから。三つとも私の好きな言葉なのだ。それにもうひとつ、文庫の帯の「煽り」にやられた。そういう意味では、小説を創るのは作家ではあるが、本を創るのは編集者であることがわかる。実は、マアこれも 監督と制作の関係であり、映画的世界ではある。

あ、ちなみに「バードマン」のエマ・ストーンと「少女キネマ」の黒坂さちは良かった。

2017年3月14日読了





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最終更新日  2017年03月26日 22時06分20秒
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