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2017年12月20日
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文学日記(4)「雲のゆき来」中村真一郎
江戸時代の漢詩人元政上人の生涯と作品を辿りながら、若い国際女優の楊(ヤン)とその父を巡る旅をすることになった「私」の小説である。

この本の中では、1番長い。私はさらっと読んだ。元政上人を巡る文章は、ほとんど学術論文の如しであり、キチンと読めば面白いのに違いないと思うのだが、途中からほぼほぼスルーした。楊女史とのやり取りも、冒頭と比べるとかなり読みやすいが、かなり飛ばし読みした。それでも読み終えるのに、5時間ほどかかった。面白かった。

「私」は、なぜ藤原惺窩や林羅山や伊藤仁斎や石川丈山ではなく、ほぼ無名に近い元政上人に心惹かれたのか。当代の「世界」である中国を日本人でありながら、自らのものにし、「異なる伝統の調和を実現」し「美しい精神の舞踏」を舞った知識人として、自分を見たということが一つ。もう一つは「私的体験」として、元政上人の生涯が中村真一郎と女性との関係との合わせ鏡になったのではないか?という推測(池澤夏樹)がなされている。

池澤夏樹は「若かったぼくがこの作品に知識人として生きる覚悟を教えられ勇気づけられた」(476p)と告白している 。父の福永武彦からその教示を受けないのは分かる。また、池澤夏樹は加藤周一も選ばなかった。中村真一郎を選んだ処に彼の「矜恃」を見る。

私はこの作品に、もう一つの「合わせ鏡」を見た。「うまく作られた小説家」である中村真一郎と、「うまく作られた評論家」である加藤周一という合わせ鏡。不幸を描く小説家、展望を語る評論家。しかし、世界を観るレンズは、この小説を読んで思うが、同じ精度を持っていた。加藤周一が当初目指した小説は、このような内容だったのではないか?しかし、加藤は遂にこんなに「うまく」は小説を書けなかった。

1966年作品。「死の影の下に」五部作、「頼山陽とその時代」、「神聖家族」、「四十奏」四部作等々旺盛な創作活動の知の方向は、加藤とは違っていたが、方法論はかなり似通っていた予感がある。しかし、それを検証するのは、まだ20年ほど先にしたい。
2017年12月20日読了





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最終更新日  2017年12月20日 18時04分33秒
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