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2021年09月16日
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テーマ: 本日の1冊(3697)


「挑発する少女小説」斎藤美奈子 河出新書

世界中でヒットし、今も読み継がれている、10代の少女が主人公のリアリズム小説9作品の解説。日本でも60年代のジュニア小説、80年代のコバルト文庫、2000年代のケータイ小説など多くが生まれたが、この9作品のように長生きはしていない。何故か。

ひとつは、時代や文化の隔たりを超えて、少女に訴えかける普遍性を持っていたこと。
ひとつは、海外ものだったために古さがバレなかったし、異国のお話はオシャレに感じたりさえしたから。

特徴は四つ。
(1)主人公はみな「おてんば」な少女。ジェンダー規範を大なり小なり逸脱。良妻賢母教育のツールとして作られたのに、読者の支持を得て大人社会の陰謀を「出し抜いていた」。
(2)主人公の多くは「みなしご」。19世紀の時代を反映しているからだとも言えるが、親を失った子供は自力で人生を切り開かざるを得ない。そこからドラマが生まれる。
(3)友情が恋愛を凌駕する世界。しばしば物語には「女の子らしい女の子」か登場。主人公の個性を引き立てる役にもなるが、主人公は男の子よりも友情を優先する。
(4)少女期からの「卒業」が仕込まれている。「おてんば」は成長とともに失われてゆく。
別言すると、どれほどハメを外しても将来は約束されているから読者は安心して読めたのか。

或いは、読者には「誤読する権利」があるので、多様な読み方ができるテキストでもあったから、とも言えるかも。

以上が本文に入る前の斎藤美奈子女史の「はじめに」の概要である。コレで「小公女」「若草物語」「ハイジ」「赤毛のアン」「あしながおじさん」「秘密の花園」「大草原の小さな家シリーズ」「ふたりのロッテ」「長くつ下のピッピ」の重要な部分はもうわかった。もう読まなくてもいいんじゃないか。私もそう思いました。

でも、本文を読んだらとっても面白くて置くこと能わざるを経験します。そりゃそうでしょ。原作やアニメで、あんなにも親しんできた物語を女史が案内するんですよ!なんか町山智浩さんの映画評につながるところが、女史の文学評にはある気がする。文体が読みやすいわりには構成がしっかりしていて、新しい視点がある。そして、反権力という点で一本芯が通っている!そういう意味では丸谷才一や吉田健一とは違う。
‥‥それはともかく、やはり1番面白かったのは、(4)の部分です。特に、女史が想像したり紹介したりする「その後の物語」には共感しきりです。

何度も言いますが、私は一貫して「頑張る女の子」推しです。決して「男の子」ではない。
何故なんだろう。
女の子には、男の子よりも「未来」がある気がするから。
元男の子だった私の叶えなかった夢を叶えてくれそうな気がするから。
元男の子の勝手な思い込みなのかな。
でも、こんなこと、市井のいち老人が言っても女の子は誰ひとりとして「責任」なんか感じたりしないでしょ。
でも男の子は、そんなこと聞くと何故か一定数「責任」を感じるんです。そこんところが、違いかな。





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最終更新日  2021年09月16日 23時51分41秒
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