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2021年12月28日
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テーマ: 本日の1冊(3749)


しっかりとした辞典を選ぶとしたら、「幻獣辞典」(ボルヘス)が河出文庫で出ている。原典に挑むとすれば、「東方見聞録」「山海経」などが手に入りやすい。この薄い文庫本は、それらに向かうための先導役としては打ってつけかもしれない。

黄金の国チパングを広めたマルコ・ポーロは、「私はホントに見たんだ」と主張して、ホラ吹きの異名を取った。しかし、今になってみると「樽のような蛇がのし歩いた」「スマトラに棲む一角獣」「犬の顔を持った人間」の正体は、その描写が詳細なだけに容易に推察がつく、ということを実はこの本で初めて知った(答え合わせは本書の一章目を見て)。
※コレ、ゼッタイクイズ番組のネタになる。

大航海時代が終わって、架空の生き物が「博物誌」から消えるのは18世紀後半らしい。反対に言えば、それまでには、立派な学者が大真面目に架空の生物を論じていたということだ。

日本の日光東照宮には霊獣が、種類にして150余、総数約800体、一つの建物を埋め尽くすように刻まれているという。そうか、そういう処だったんだ!突然行きたくなった。鳳凰、龍、麒麟の他に龍馬、猩猩(しょうじょう)、獏、やがて鳴蛇(めいだ)、蜃、息とかかなりマイナーな幻獣のオンパレードである。

それらの主な原典は「山海経」。もとは中国古代の地理書ではあるが、やがて百科全書になったという。紀元前3世紀の戦国時代に成立、その後何度も手を加えられた。小野不由美「十二国記シリーズ」のもとになっているのは御承知通り。

だから、学者が語らなくなっても語り手はなくならない。幻獣の話は古代の専売特許ではない。現代こそ、うごのたけのこ、の如くウヨウヨと蔓延っている。池内紀さんはロボットもその一つだという。

人間はなぜ幻獣を産み出すのだろうか?

明確な答えの出ない、この問いを、池内紀さんは絶えず発している。

イメージを宇宙にまで広げている。





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最終更新日  2021年12月28日 22時15分53秒
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