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自分の資産状況に適したアセット・アロケーションを研究し、資産運用を実践する個人投資家が増えています。実際の投資対象として、国内外のインデックス投信やETF(上場投資信託)を組み合わせ、できるだけ低コストでポートフォリオを構築するケースが多く見られ、インデックス・ファンドも個人の資産形成に浸透しつつあるようです。そこで、今回は、インデックス・ファンドのリスク指標であるトラッキングエラーについて考えてみましょう。インデックス・ファンドは市場全体の平均的な収益を獲得することを目的とし、十分に分散化されたポートフォリオを保有します。国内株式では、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)が、海外株式ではMSCIコクサイ指数などがベンチマーク(運用成果の比較対象)となる株価指数(インデックス)として一般的です。インデックス・ファンドでは、これらインデックスのすべての構成銘柄、あるいは代表的な銘柄に投資し、基準価格がこれらの株価指数と同じ値動きをすることを目指します。トラッキングエラーとは、連動対象とするベンチマークの収益率からファンドの収益率がどれほど乖離する可能性があるかを表す指標です。実務上、ベンチマークの収益率とファンドの収益率との差(超過収益率)の標準偏差を使って説明されます(標準偏差については、2011年4月22日の「リスクをどう見積もるか」をご確認ください)。トラッキングエラーが大きいほど、運用するポートフォリオがベンチマークに対して大きなリスクを取っていることを意味し、小さいほど(インデックス・ファンドとして)ベンチマークとの連動性が高いと評価されます。なお、トラッキングエラーには、過去の超過収益率の実績値を基に計測される「実績トラッキングエラー」と、分析ツールを用いて推定した「推定トラッキングエラー」の2種類があります。トラッキングエラーは年率化した数値で表示され、例えば、あるインデックス・ファンドのトラッキングエラーが0.20%とすると、1年後にこのファンドの収益率は、約68.3%の確率でベンチマーク収益率から±0.20%の差が生じるだろうということを意味します。つまり、ベンチマークの収益率が1年間で+5.00%であるとすれば、インデックス・ファンドのリターンは+4.80~+5.20%の範囲内に分布するだろうということが推測されるということです。仮に2標準偏差を想定すれば、95.4%の確率でベンチマークの収益率から±0.40%乖離する(インデックス・ファンドのリターンは+4.60~+5.40%の範囲内に分布する)であろうことを意味します。インデックス投信の中には、同じ株価指数を連動対象とするものを各運用会社がそれぞれ提供していることがあるので、選ぶ際には、必ず横比較を行い、トラッキングエラーのより小さいものを選ぶように心掛けましょう。==========================================================ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社ファンドマネージャー 相川雅宏(楽天マネーニュース[株・投資]第97号 2011年5月27日発行より) ==========================================================
2011.05.27
最近募集される新ファンドでは元本確保型とかリスク限定型などという名称がさっぱり聞かれなくなった。それもそのはず、4月から投資信託の規則が変わり、ファンドにそのような名称を付けることが禁止されたのだ。 その背景には、仕組み債を利用して償還時の元本や利回りが株価水準や金利などの複雑な条件によって変動するファンドが、あたかも元本や利回りが確保されるような誤認を与えて資力・理解力の少ない投資家に販売され、リーマンショック後の市場下落で想定外の損失を被ったなどの苦情が投資家から数多く寄せられたことがある。 こうした背景を受けて日本証券業協会と投資信託協会は、金融庁の監督の下、デリバティブ取引に類似した投資信託について販売・勧誘規制を強化した。 販売会社には、販売しようとするファンドのリスク特性等について事前に検証し、年齢や取引経験、財産の状況、投資目的などから勧誘対象となる顧客を選定することが求められた。そして勧誘・販売時には、リスクに関する注意喚起文書を交付し、最悪のシナリオを想定した損失額等の重要事項を説明し、顧客から確認書を受け入れることなど、説明義務の強化が図られた。 このように、今回の自主規制は販売会社が投信を販売する際の基本原則である「適合性原則」の強化が主眼となっており、投信会社に対しては、ファンドの名称に元本や利回りの保証や基準価額の変動リスクが低いかの誤解を与える恐れのある名称を用いないこと、組成したファンドの販売会社への商品説明の徹底、目論見書・運用報告書等によるリスクの開示の徹底を求めることなどにとどまっている。 しかし、投資信託の募集を行うのは投信会社である。販売会社は「募集の取扱い」を行っているのであり、投資家と資金の投資運用契約を結ぶ当事者は投信会社である。こうした観点に立てば、ファンドの製造元である投信会社は、組成したファンドがどのような投資家のどのようなニーズに応える商品であるかを自ら投資家に伝えるべきではないか。 そうして募集した投資家の資金を投資家の利益のために忠実に運用・管理することが、投信会社の「受託者責任」であると言えよう。そのためにはファンドの目論見書に、このファンドはどのような投資家に向けた商品として組成されたものであるか、適合する投資家のタイプや範囲を記載することが望まれる。 ==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第96号 2011年5月13日発行より) ==========================================================
2011.05.13
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