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海外ETFのディスクロージャー資料は、本国で作成されたものが日本語に翻訳されており、横文字が目立ちます。また、ファクトシート(定期的にネット上で更新される簡易的な運用報告書)が日本語に翻訳されてネットに掲載されるまで時間が掛かることから、最新の情報を入手するには、直接、海外のホームページをみたほうが早道です。しかし、馴染みのない言葉が頻繁に出てくると、読み進むのも億劫になりがちです。今回は、海外ETFのディスクロージャー資料でよく目にする用語について解説します。(1)フル・リプリケーション(Full Replication)日本語で完全法といい、連動対象とするベンチマークを構成する全ての銘柄を、ベンチマークの構成通りに組み入れるポートフォリオ構築方法です。リプリケーションは、replicate「複製する、模倣する」の名詞形で、フル(完全)にリプリケート(複製)するから、完全法というわけです。一方で、計量モデル等にもとづき、一部の銘柄を抽出し、ファンドとベンチマークのリスク特性のズレが最も小さくなるように、ポートフォリオを組む方法を最適化法(Optimized Replication)と呼びます。(2)トータル・リターン(Total Return)投資元本に対する一定期間内の総合的な収益率のことです。株価や債券価格の変化(キャピタルゲイン/ロス)と、配当や利子収入(インカムゲイン)を合計したものを、投資元本で割って求めます。なお、配当や利子収入を含まない、株価・債券価格の変化だけの場合は、プライス・リターンと呼びます。(3)NAV(Net Asset Value)一般の投資信託では、ファンドの純資産総額をNAVといいますが、ETFの場合、純資産総額を一口当たりに換算した金額を指します。NAVは、1日に1回、取引所の引けた後に算出されます。さらに、取引時間中にリアルタイムで更新される一口当たり推定純資産額もあり、Indicative NAV(iNAV)と呼ばれています。iNAVの公表により、売買にあたっての透明性が高まり、市場での取引価格とiNAVとを見比べることで、裁定取引(価格差を利用して売買し、利鞘を稼ぐ取引)に取り組み易くなっています。なお、一口当たりに換算する前の純資産総額はトータル・ネット・アセット(Total Net Asset)と表記されることが多いようです。(4)エクスペンス・レシオ(Expense Ratio)運用手数料や口座管理費用、監査費用といったファンド管理に要する費用はファンドの純資産から差し引かれます。その支出額の純資産に対する比率がエクスペンス・レシオであり、この値が低いほど保有コストが低いと評価できます。(5)ポートフォリオ・ターンオーバー(Portfolio Turnover)ターンオーバー(Turnover)とは、一般的に、資本・資産の回転率を指します。ポートフォリオのターンオーバーという場合は、ポートフォリオに組み入れる株式などの有価証券が一定期間内にどれだけ頻繁に売買されたかを示し、ファンド内の取引活動を計る尺度になります。取引コスト抑制の観点から、ターンオーバーが低いほうが好ましいとされます。 ==========================================================ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社ファンドマネージャー 相川雅宏(楽天マネーニュース[株・投資]第99号 2011年6月24日発行より) ==========================================================
2011.06.24
商品市況の高騰や経済の回復基調を背景に、世界的にインフレ圧力が高まってきている。投資信託に投資してインフレから資産を守るためには、どの様なタイプのファンドがよいだろうか。多くの人が第一にあげるのは株式ファンドであろう。だが、株式投資は常にインフレヘッジになるとは言えない。1980年から2010年までの30年間について、東証第一部の各年間の平均株式投資収益率を消費者物価指数上昇率と比較してみると、株式投資収益率が物価上昇率よりも悪かった年が12年あった。1年という短期で見れば40%の期間、株式投資はインフレヘッジの機能を果たしていない。10年という長期で見ても、20期間中7期間は株式投資収益率が消費者物価上昇率に及ばない。20年ではどうか。この場合でも10期間中3期間がインフレヘッジとなっていない。この3ケースは、1980年代末の株式市場バブル期の頂点で株式を買い20年後のリーマンショックによる暴落時に売却したという異常なケースと言えるかもしれないが、今後そうした状況が再来しないとも限らない。そこで、株式ファンドを補完するために他のタイプのファンドにも分散投資することが望まれよう。その一つは、コモディティファンドである。石油や金属、農産物など商品への投資は昔から効果的なインフレヘッジ手段と言われる。しかもこれらの商品の価格変動は株式市場の変動と動きが大きく異なるので、株式投資と組み合わせれば資産全体のリスク・リターンの向上が期待できる。ただ、コモディティファンドは基準価額の変動が激しいので、短期ではインフレヘッジになるとは限らないこと、また、ファンドは石油とか小麦などの商品に直接投資するのではなく、多くの場合、商品指数に連動するように作られた「仕組み債」に投資するので、仕組み債の発行会社の信用リスクがあることに留意が必要だ。もう一つは不動産投資信託ファンド(REITファンド)である。インフレ期には地価や家賃が値上がりするからREITは好影響を受けるだろう。しかし半面、不動産の維持・管理費用も上昇するというマイナス面も出てくる。また、インフレ期に金利水準が上昇すると株式や債券の利回りが上昇し、REITの利回りの相対的有利性が薄れてくる。こうした点を考えるとインフレヘッジ手段としてのREITファンドの効果は限定的と言えよう。インフレヘッジという観点から投信ポートフォリオを構築するには、株式ファンドをコアとし、コモディティファンド、REITファンドを一部組入れて分散投資効果を図るという組み合わせがよいだろう。==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第98号 2011年6月10日発行より) ==========================================================
2011.06.10
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