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このところ、欧米の景気減速懸念や財政不安などを背景に世界的な株安が進み、リスクを回避しようとする大量の投資資金が円に流れ込んでいます。また、米金融緩和の長期化観測に伴う日米金利差の縮小に着目した円買いもあって、円は3月17日に付けた過去最高値(76円25銭)を更新しました。今回は「為替リスク」を回避する方法について、外国資産を投資対象とする投資信託の場合ではどのような手段があるのか、考えてみましょう。外国資産を投資対象とする投資信託は外国通貨を通じて投資を行っています。そのため、投資信託の換金時において、円の価値が購入時の水準を上回っている状態(円高)では損失が発生してしまいます。この為替差損を回避するために「為替ヘッジ」を行います。「為替ヘッジ」とは、通貨の先渡し取引などを使って、運用成績が為替変動の影響を受けにくくする方法のことです。なお、先渡し取引とは、将来のある時点に、予め定めた価格で、ある商品を売買する予約取引のことです。例えば、円を売ってドルを買った後に、一年後に一定の為替レートで、ドルを売って円を買い戻す予約をすることであり、これによって為替差損をこうむるリスクを抑えることができます。外国資産に投資する投資信託の中には、「為替ヘッジあり」と「為替ヘッジなし」コースが用意されているものがあります。「為替ヘッジあり」コースでは、為替ヘッジを行うことで、基準価額の値動きが為替変動の影響を極力受けないように設計されています。したがって、為替リスクを回避しつつ、外国株式や外国債券などの収益だけを狙いたい人にとっては「為替ヘッジあり」コースを購入するのもひとつの方法でしょう。なお、当然のことながら、「為替ヘッジあり」を選んだ場合で、購入時に比べて換金時の円の価値が外国通貨の価値よりも低い状態(円安)になったときには、「為替ヘッジなし」であれば得られたはずの「為替差益」を得ることができないことになります。また、「為替ヘッジ」を行なうにはコストがかかることも知っておきましょう。ヘッジに伴うコスト(ヘッジコストと呼びます)は、相手国との短期金利差、例えば、ドル・円の場合、米国の短期金利と日本の短期金利の差が反映されます。そのため、投資先の金利が自国の金利よりも高ければ高いほど、ヘッジコストがかかることになります。2008年の金融危機以降、内外の金利差が縮小したことから、ヘッジコストもそれに伴って低い水準で推移しているものの、他国に比べて超低金利下にある日本の状況では、基準価額にマイナスの影響を与えるということは理解しておきましょう。ヘッジコストは、投資信託購入者が直接的に支払うものではないので、気付きづらいものですが、信託財産から日々、差し引かれており、間接的に負担している格好です。ヘッジコストを支払ってでも将来の為替変動を回避したい、つまり、支払うヘッジコスト以上に円高による為替差損の影響が大きいと考える投資家にとって、「為替ヘッジあり」コースは有効な手段といえます。==========================================================ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社ファンドマネージャー 相川雅宏(楽天マネーニュース[株・投資]第103号 2011年8月26日発行より) ==========================================================
2011.08.26
「恐怖指数」(Investor Fear Gauge)という指標があるのをご存知ですか。株式市場に参加している投資家らの相場の先行きに対する不安感、つまり恐怖心理の高まりを数値化した指標のことです。市場で取引されているオプション(ある資産について、将来の一定の期日に、一定の価格で取引する権利を付与・売買する取引のこと)の価格から逆算して、市場参加者が予想する将来のボラティリティ(価格の変動率)を算出し、指数化したものが「ボラティリティ指数(Volatility Index)」であり、別名、「恐怖指数」と呼ばれています。このボラティリティ指数が高い値を示すほど、市場参加者が相場の先行きに対して不安感を募らせていることを意味します。代表的なボラティリティ指数は、アメリカのS&P500種株価指数を対象に、シカゴ オプション取引所(Chicago Board Options Exchange:)が算出・公表している「CBOE SPX Volatility Index(VIX)」です。通常は10~20ポイントの間で推移しますが、相場急落の局面では、そのレンジを大きく超えます。過去の例でいえば、2001年9月のアメリカ同時多発テロ直後に一時49ポイント台まで上昇しました。また、2008年9月のリーマン・ブラザーズ破綻直後には42ポイントに、さらにその後、世界金融危機の様相が強まると、2008年10月末には89ポイントをつけました。その水準をピークに、徐々に低下し、しばらく20ポイント前後で推移したものの、2010年5月には、ギリシャの財政問題に端を発する世界同時株安を受けて再び上昇し、48ポイントをつけました。今年に入ってからは20ポイントを下回る水準で推移していましたが、3月の日本の震災を受けて一時的に31ポイント台に上昇しました。その後は再び20ポイント以下の水準で落ち着いていたものの、8月に入ってからは、米連邦債務の上限引き上げ問題の難航と米景気減速懸念の高まりから、40ポイント目前まで急上昇しました(8月5日時点)。米債務問題が決着したものの、米経済指標の悪化を受けて景気の二番底懸念が浮上し、さらに米格付け会社が米国債の長期格付けをダブルAプラスに1段階引き下げたことが投資家の不安心理を煽る格好になりました。日本でも、日経平均225を対象に、「日経平均ボラティリティー指数」が公表されています。通常であれば、20~30ポイントで推移しますが、リーマンショック後の世界金融危機を受けて、2008年10月には91ポイントに達しました。その後、通常の水準で推移したものの、2008年5月のギリシャ・ショック直後には43ポイントに、今年3月の東日本大震災直後には50ポイントまで上昇しました。7月の同指数は20ポイント前後で推移していましたが、8月になってからは米国同様に、上昇傾向にあります。8月5日には前日の24ポイントからいきなり38ポイント台に急上昇しました。相場の先行きについて投資家がどのように感じているのか、その市場心理を確認するうえで参考になる指標です。なお、「日経平均ボラティリティー指数」は、日本経済新聞(朝刊)のマーケット総合欄に毎日、掲載されています。 ==========================================================ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社ファンドマネージャー 相川雅宏(楽天マネーニュース[株・投資]第102号 2011年8月12日発行より) ==========================================================
2011.08.12
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