全13件 (13件中 1-13件目)
1
![]()
「スティーブ・ジョブズ」(原題:Steve Jobs)は、2015年公開のアメリカの伝記的ドラマ映画です。原案は、アップル社の共同設立者でデジタル製品の常識を変えた男、スティーブ・ジョブズとその家族、関係者への約3年にわたるインタビューなどを基にベストセラーとなったウォルター・アイザックソンによる伝記「スティーブ・ジョブズ」。これを、ダニー・ボイル監督、アーロン・ソーキン脚本、マイケル・ファスベンダー、ケイト・ウィンスレットら出演で、1984年から1998年の間の三回の製品発表会直前の舞台裏40分の出来事に凝縮、ジョブズの半生とその人物像を描くヒューマン・ドラマです。第88回アカデミー賞で、主演男優賞(マイケル・ファスベンダー)、助演女優賞(ケイト・ウィンスレット)にノミネートされた作品です。 「スティーブ・ジョブズ」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:ダニー・ボイル脚本:アーロン・ソーキン原案:ウォルター・アイザックソン「スティーブ・ジョブズ」出演:マイケル・ファスベンダー(スティーブ・ジョブズ) ケイト・ウィンスレット(ジョアンナ・ホフマン) セス・ローゲン(スティーブ・ウォズニアック) ジェフ・ダニエルズ(ジョン・スカリー) マイケル・スタールバーグ(アンディ・ハーツフェルド) キャサリン・ウォーターストン(クリスアン・ブレナン) パーラ・ヘイニー=ジャーディン(19歳のリサ・ブレナン) リプリー・ソーボ(9歳のリサ・ブレナン) マケンジー・モス(5歳のリサ・ブレナン) サラ・スヌーク(アンドレア・“アンディ”・カニンガム(英語版)) ほか【あらすじ】・1984年、Macintoshプレゼンテーション開始直前Macintosh発表会の40分前、本番で「ハロー」と挨拶するはずのマシンが不調でスティーブ・ジョブズ(マイケル・ファスベンダー)は激怒しています。マーケティング担当のジョアンナ(ケイト・ウィンスレット)は挨拶のデモをカットしようと説得しますが、ジョブズは折れません。そこへジョブズの元恋人であるクリスアン(キャサリン・ウォーターストン)が、ジョブズが認知しようとしない5歳の娘リサを連れて現れます。公私ないまぜの緊張感が高まる中、本番15分前に閃いたジョブズは、胸ポケット付きの白いシャツを用意しろとジョアンナに指示します。共同創業者で親友のウォズニアック(セス・ローゲン)が現れ、AppleIIチームへの謝辞を頼み込みますが、ジョブズははねつけます。自らがCEOにヘッド・ハンティングしたジョン・スカリー(ジェフ・ダニエルズ)に励まされ、ジョブズは舞台へ出て行きます。・1988年、NeXTcubeプレゼンテーション開始直前Macintoshの売上不振から退社に追い込まれたジョブズが新たに立ち上げたネクストの発表会。にこやかに現れたウォズニアックに、ジョブズはマスコミに自分を批判したのはスカリーに強制されたのかと問い正します。相変わらず傲慢なジョブズに、ウォズニアックはマシンを創り出したのは自分なのに何もしていないジョブズがなぜ天才と言われるのかと憤慨、さらに今日の主役のNeXT Cubeはパソコン史上最大の失敗作だと言い放ちます。Macintosh発表会の後、ジョブズはクリスアンに家を買い与え、十分な養育費を送っており、小学校をサボって会場で遊んでいるリサを、クリスアンが迎えに来ます。本番6分前、こっそり潜入したスカリーがジョブズの前に現れます。・1998年、iMacプレゼンテーション開始直前スカリーは2年前に業績不振で退任、アップルがネクストを買収したのを機にジョブズが復帰し、CEOを務めています。ジョアンナから売上予測を聞き、ジョブズは満足に浸っていますが、一方でクリスアンが家を売ることを止めなかったリサに激怒し、彼女のハーバード大学への支払いを止めています。ジョアンナはジョブズとリサが仲直りしなければ会社を辞めると訴え、一人になったジョブズの瞼にいつも自分の愛を求めていたリサの姿が浮かびます。本番10分前、ウォズニアックがApple IIのチームに謝辞をという頼みを蒸し返しますが、10億ドルの損失を出し、破産まで90日を切っていたチームだとジョブズは再びはねつけます。開始直前、リサが父への怒りを爆発させ、常に発表会は開始時間を厳守してきたジョブズは遅れも気にせず彼はリサに語り始めます。【レビュー・解説】数々の斬新で個性的な製品とエキセントリックな伝説で余りに有名となった現代の偶像、アップルの元CEOの故スティーブ・ジョブズについて、彼の人生の区切りとなる三度の製品発表会を舞台に、鍵となる人物との会話を通して彼の葛藤と人物像を舞台劇風に凝縮して描き出すという大胆な脚本と、その期待に応えるマイケル・ファスベンダーとケイト・ウィンスレットの見事なパフォーマンス、アップルでの活躍を彷彿とさせる舞台美術、そして効果的な編集が素晴らしい作品です。原案となったウォルター・アイザックソンの「スティーブ・ジョブズ」は、取材嫌いで有名なスティーブ・ジョブズが唯一全面協力、約3年にわたり、のべ数十時間にもおよぶ徹底したインタビューに基づき、アップル創設の経緯から引退、伝説のプレゼンから経営の極意まで、ジョブズの思考を描いた伝記本です。脚本のアーロン・ソーキンは、スティーブ・ジョブズの人生の鍵となるいくつかの葛藤をアイザックソンの原作から読みとります。さらにジョン・スカリー、スティーヴ・ウォズニアック、ジョアンナ・ホフマンなどスティーブ・ジョブズに仕事で深く関わった人々、スティーブの婚外子であるリサ・ジョブズなどスティーブの家族の話を聞き、脚本を書き上げています。主な登場人物は、主な登場人物は、・スティーブ・ジョブズ(マイケル・ファスベンダー)言わずと知れたアップルの共同設立者兼元CEO。技術者のスティーブ・ウォズニアックとともにアップルを立ち上げるが、自ら引き抜いたCEOジョン・スカリーにアップルを追い出される形になる。その後、ネクストを立ち上げ、不審に陥ったアップルがネクストを買収する形で、アップルのCEOに返り咲く。本作では、重要な発表会の直前に彼が葛藤を抱く人物に次々と対峙する。・ジョアンナ・ホフマン(ケイト・ウィンスレット)ジョブズがアップルで率いた Macintosh と ネクストで率いた NeXT の開発チームメンバーでプロダクト・マーケティングも務めた。スティーブ・ジョブズに反論できる数少ない人物で、Macintosh チームがジョブズに隠れて表彰した「ジョブズに最もうまく反論したで賞(the person who did the best job of standing up to Jobs)」を受賞するなど、ジョブズだけでなく、開発チームの全員から熱い信頼を集めていた。本作では、巧みにジョブズに気づきを促す重要な役割を担っている。・スティーブ・ウォズニアック(セス・ローゲン)アップルの共同設立者。20歳の頃、ジョブズと知り合う。陽気でよく喋りユーモアのセンスも素晴らしいが、典型的な技術オタク、IQ200の天才的技術者。金銭的な執着はあまりない。Apple I および Apple II をほぼ独力で開発するが、アップルがApple IIを正しく扱っていないことを理由に退社する。本作では、ジョブズに対して、再三、Apple IIへの謝辞を要求する。・ジョン・スカリー(ジェフ・ダニエルズ)アップルの元CEO。ペプシコーラの社長時代に、スティーブ・ジョブズに引き抜かれてアップルのCEOになるが、その後、スティーブ・ジョブズをアップルから追い出す形になる。その後、ニュートンの開発など進めるが、アップルの業績が悪化退任する。本作では、アップルに復帰したジョブズと和解するが、彼が開発を進めたニュートンはジョブズに否定される。・アンディ・ハーツフェルド(マイケル・スタールバーグ)Macintosh 開発チームの主要メンバー(コンピュータ・プログラマー)。本作では、Macintosh発表会の直前、「ハロー」と挨拶するはずのマシンが不調でスティーブ・ジョブズに脅される。スティーブ・ジョブズがリサの大学の学費の支払いを止めた時に、彼が学費の支払いを肩代わりする。・クリスアン・ブレナン(キャサリン・ウォーターストン)スティーブ・ジョブズの高校時代からの恋人。23歳の時に、婚外子リサを生むが、ジョブズは認知しなかった。本作では、再三、ジョブズの前に現れるが、和解することはない。・リサ・ブレナン(ージョブズ)スティーブ・ジョブズとクリス・アンの間にできた婚外子。最初は、認知されなかったが、成長ともにジョブズの心境は変化していく。(5歳:マッケンジー・モス)(9歳:リプリー・ソーボ)(19歳:パーラ・ヘイニー=ジャーディン)主人公の葛藤を描くと言っても、対象となる登場人物が多いと散漫になりかねないのですが、そこを引き締めているのが、発表会でのプレゼン直前という緊迫感のある中での、リズムとテンポあるシェークスピア劇さながらの会話の応酬です。特にマイケル・ファスベンダー扮するスティーブ・ジョブズとケイト・ウィンスレット扮するジョアンナ・ホフマンの掛け合いは見応えあります。二人とも舞台経験があるヨーロッパ出身の俳優で、こうした伝統的な要素のある映画にはうってつけです。またケイト・ウィンスレットの役のなりきりには目を見張るものがあり、厳しい上司に巧みに仕えるマーケティング担当を実際に見ているようです。本作でアカデミー主演男優賞(マイケル・ファスベンダー)、同助演女優賞(ケイト・ウィンスレット)にノミネートされていますが、ケイト・ウィンスレットはなんと、本作で7度目のアカデミー女優賞のノミネートなります。決して派手な役柄ではありませんが、大女優の大女優たる所以を感じさせるパフォーマンスです。・「いつか晴れた日に」(1995年)助演女優賞ノミネート・「タイタニック」(1997年)主演女優賞ノミネート・「アイリス」(2001年)助演女優賞ノミネート・「エターナル・サンシャイン」(2004年)主演女優賞ノミネート・「リトル・チルドレン」(2006年)主演女優賞ノミネート・「愛を読むひと」(2008年)アカデミー主演女優賞受賞・「スティーブ・ジョブズ 」(2015年)助演女優賞ノミネート・・・本作彼女の出演していた別の映画のメイクアップ・アーティストが雇われたことからこの映画を知り、ボイル監督、ソーキン脚本、ファスベンダー主演という面子に興味を覚えた彼女は、女性役の詳細情報を求め、黒いかつらをつけて撮った写真を送ってジョアンナ・ホフマン役を勝ち取ったといいます。大女優でありながら、興味を覚えた役にはとことん食らいついていく姿勢が素晴らしいです。実際、彼女はこの映画を見応えのあるものにするのに、大きな役割を果たしています。一方、この映画の主演には、当初、レオナルド・デカプリオやクリスチャン・ベールが考えられていました。デカプリオは「レヴェナント: 蘇えりし者」と重なった為、辞退、ベールは「自分は役に合わない」という理由で辞退します。この役にはベールが完璧だと考えていたファスベンダーは、ベールに直接電話をかけてそう伝えたと語っていますが、彼の人柄を忍ばせるエピソードです。実物のスティーブ・ジョブズとは似ても似つかないファスベンダーですが、役が要求する頑固な感じがよく出ており、三幕目では外観も本人に良く似て見えてくるから不思議です。評価の高いヒット作への出演が多いファスベンダーですが、確実にその芸域を広げています。因みにこの三人はすべて第88回アカデミー俳優賞に名を連ねており、極めてハイレベルなキャスティング合戦であったことがわかります。・レオナルド・デカプリオ:「レヴェナント: 蘇えりし者」で主演男優賞受賞・クリスチャン・ベール:「マネー・ショート 華麗なる大逆転」で助演男優賞にノミネート・マイケル・ファスベンダー:「スティーブ・ジョブズ」で主演男優賞にノミネート三幕物でしかも登場人物がほとんど同じとなると、単調になる可能性がありますが、本作では舞台と演出で変化をつけています。・第一幕の舞台:クパチーノ、デ・アンザ・コミュニティ・カレッジのフリント・オーディトリアム1984年に実際にMacintoshが世に出た場所。装飾を排した機能重視の、シンプルなシアターの、手作り感あり、ベーシックで、雑な雰囲気を活かす演出が成されている。・第二幕の舞台:サンフランシスコ・オペラ・ハウスNEXTをジョブズのアップルに対する復讐との解釈、ベルベットのカーテンと金色の縁取りがあるオペラ・ハウスでゴージャス感のあるオペラ的な復讐劇の雰囲気が演出されている。・第三幕の舞台:サンフランシスコのデイヴィーズ・シンフォニー・ホールiMacは日常生活にインターネット接続をもたらし、人々は無限の可能性に突入するとの解釈から、コミュニケーションとデータ・マネジメントの未来のイメージが演出されています。また、時折、回想シーンを挟むなど、映画が単調にならない工夫もなされていますが、中でもオープニングのアーサー・C・クラークのインタビュー・シーンは効果的です。アーサー・C・クラークは20世紀を代表するイギリスのSF作家の一人で、映画「2001年宇宙への旅」(1968年)の原作者でもあります。インタビュー・シーンは1974年の記録映像で、大型計算機の騒音の中で、彼は次のように語っています。インタビュアー:「2001年宇宙への旅」で21世紀を描きましたね。これは息子のジョナサンです。2001年には私と同じ年になります。未来に適応させておくといいかと思って。A・C・クラーク:一番大きな違いはコンピューターが、各家庭にあることです。こんな大きいものではなくて、操作卓ほどの大きさで互いにつながっていて、例えば銀行の残高や劇場の予約など、現代社会を生きるのに必要な情報を得ることができるんです。コンピューターはコンパクトな上、テレビ画面とキーボードがあり、情報を引き出せる。電話のような普通の機器になっているのです。インタビュアー:でも、どんな社会になるんでしょう?コンピューター依存の世界になるのでは?A・C・クラーク:まあね。でも社会が豊かになります。我々は好きなところに住めるんです。コンピューターを使えば地球のどこにいても仕事ができます。年にしがみつく必要はなく、田舎など好きなところに住めます。「コンピューター依存になるのでは?」という問に、A・C・クラークが一瞬に返答に窮するのが可愛いのですが、彼が予測したことが当たり前のことになった現代を生きる我々に、かつてはそうではなかったことを印象づけるとともに、これから始まる本編が彼が予測した世界を実現するひとつの大きな原動力となったスティーブ・ジョブズを描いたものであることを暗示する、気の利いたオープニングです。非常にクォリティの高い映画ですが、残念ながら興行成績は期待されたほど伸びませんでした。原因としては、・「オデッセイ」、「ブリッジ・オブ・スパイ」など集客力のある作品が同時期に公開された。・既にウォルター・アイザックソンの「スティーブ・ジョブズ」(2011年)が刊行され、アシュトン・カッチャー主演の「スティーブ・ジョブズ 」(2013年)が公開され、その他にもいつ果てるとはなく続くスティーブ・ジョブズ伝説や神話の流布に、題材として珍しいものではなくなっていた。・アップル関係者やスティーブ・ジョブズに詳しい記者が、映画が事実とは異なることを描いていると指摘した(映画が描くジョブズ像はリアルであるが、ジョブズの葛藤の対象となった人々すべてが発表会の都度、ジョブズと対峙するという設定は必ずしも事実ではなく、創造的誇張)などが挙げられています。単にスティーブ・ジョブズに関する知識を得たいだけならば、ウォルター・アイザックソンの「スティーブ・ジョブズ」でも読むのが良いかと思いますが、本作は舞台劇風会話劇として高い評価を得ており、映画としても存分に楽しめる作品です。【撮影地(グーグルマップ)】・第一幕の舞台:クパチーノ、デ・アンザ・コミュニティ・カレッジのフリント・オーディトリアム・第二幕の舞台:サンフランシスコ・オペラ・ハウス・第三幕の舞台:サンフランシスコのデイヴィーズ・シンフォニー・ホール 「スティーブ・ジョブズ」のDVD(楽天市場)【関連作品】「スティーブ・ジョブズ」の原作本(楽天市場) ウォルター・アイザックソン著「スティーブ・ジョブズ I」 ウォルター・アイザックソン著「スティーブ・ジョブズ II」ダニー・ボイル監督作品のDVD(楽天市場) 「トレイン・スポッティング」(1996年) 「28日後... 」(2002年) 「ミリオンズ」(2004年) 「スラムドッグ$ミリオネア」(2008年) 「127時間」(2010年)アーロン・ソーキン脚本作品のDVD(楽天市場) 「ア・フュー・グッドメン」(1992年) 「アメリカン・プレジデント」(1995年) 「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」(2007年) 「ソーシャル・ネットワーク」(2010年) 「マネーボール」(2011年)マイケル・ファスベンダー出演作品のDVD(楽天市場) 「ハンガー」(2008年) 「フィッシュ・タンク」(2009年) 「イングロリアス・バスターズ」(2009年) 「ジェーン・エア」(2011年) 「X-MEN: ファースト・ジェネレーション」(2011年) 「エージェント・マロリー」(2012年) 「それでも夜は明ける」(2013年) 「X-MEN: フューチャー&パスト」(2014年) 「FRANK -フランク-」(2014年) 「スロウ・ウエスト」(2015年) 「マクベス」(2015年)ケイト・ウィンスレット出演作品のDVD(楽天市場) 「乙女の祈り」(1994年) 「いつか晴れた日に」(1995年) 「ハムレット」(1996年) 「タイタニック」(1997年)「アイリス」(2001年)「エターナル・サンシャイン」(2004年) 「ネバーランド」(2004年) 「リトル・チルドレン」(2006年) 「愛を読むひと」(2008年) 「コンテイジョン」(2011年)
2016年11月29日
コメント(0)
![]()
「遠い空の向こうに」(原題:October Sky)は、1999年公開のアメリカの伝記ドラマ映画です。 元NASAエンジニア、ホーマー・H・ヒッカム・Jr.による自伝小説「ロケットボーイズ」を原作に、ジェイク・ギレンホール、クリス・クーパーら出演で、アメリカの小さな炭鉱を舞台に、父と対立しながらもロケットに夢を賭ける高校生の姿を描いています。 「遠い空の向こうに」(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:ジョー・ジョンストン脚本:ルイス・コリック/ホーマー・ヒッカム・Jr原作:ホーマー・H・ヒッカム・Jr.「ロケットボーイズ」出演:ジェイク・ギレンホール (ホーマー・ヒッカム) クリス・クーパー(ジョン・ヒッカム) クリス・オーウェン(クエンティン・ウィルソン) ローラ・ダーン(ライリー先生) ウィリアム・リー・スコット(ロイ・リー・クック) ナタリー・キャナーデイ(エルシー・ヒッカム) エリヤ・バスキン(ビコフスキー) クリス・エリス(ターナー校長 ) スコット・トーマス(ジム・ヒッカム) ランディー・ストリップリング (レオン・ボールデン) コートニー・フェンドリー(ドロシー・プラット) デビッド・ドワイヤー(ジェイク) カイリー・ホリスター(バレンティナ) ブラディー・コールマン(アンダーソン) ジョナサン・フォー・ブッシュ(バーニー) ラリー・ブラック(フレッド・スミス) チャド・リンドバーグ(オデル ) ドン・G・キャンベル(モリス) ほか【あらすじ】1957年10月、ソ連から打ち上げられた人類初の人工衛星スプートニクに、アメリカを始め世界は大きなショックを受けます。ウェスト・ヴァージニア州の炭鉱町コールウッドで、空を横切るスプートニクを見た高校生ホーマー(ジェイク・ギレンホール)は、自分でロケットを打ち上げようという夢を抱きます。彼は悪友のロイ・リー(ウィリアム・スコット・リー)とオデル(チャド・リンドバーグ)、そして級友で数学の奇才だが嫌われ者のクエンティン(クリス・オーウェン)を仲間に引き入れて「ロケット・ボーイズ」を結成します。しかし、ロケットは何度改良を加えても失敗が続き、昔ながらの炭鉱夫で周囲の信頼も厚い炭鉱の責任者である父のジョン(クリス・クーパー)はホーマーの行動が理解できず、父子は激しく対立します。そんな彼らに、高校の物理教師のミス・ライリー(ローラ・ダーン)だけが味方し、ロケット打ち上げに成功し、全米科学コンテストに出品して優勝すれば、ヴァージニア州立大学への奨学金が出ると励まします。最初は馬鹿にしていた町の人々もやがてロケットに興味を持つようになり、彼らに協力する人も出て来ます。しかし不運にも、落下したロケットが山火事を引き起こしたという疑いで彼らは警察に逮捕されます。その直後、ジョンが炭鉱で重傷を負い、ホーマーは家計を助けるために高校を辞めて炭鉱で働き始めます。その生活の中で父の生き方を理解して懸命に働くようになり、すぐに炭鉱夫の一員として認められますが、不治の病に倒れたミス・ライリーを見舞いに訪れたホーマーに、ロケットへの夢が再燃します・・・。【レビュー・解説】NASA技術者の自伝に基づく「遠い空の向こうに」は、甘く、誠実で、知的で、刺激的、ハリウッド伝統の感動的なサクセス・ストーリーです。アメリカは元より、海外でも英語の教科書に載った感動的なサクセス・ストーリーを、当時、17歳のジェイク・ギレンホールが映画初主演、「アダプテーション」(2002年)でアカデミー助演男優賞を受賞したクリス・クーパーと、俳優ブルース・ダーンの娘で「わたしに会うまでの1600キロ」(2014年)でアカデミー助演女優賞にノミネートされたローラ・ダーンの二人の名優が助演した名作です。ホーマー・ヒッカム・Jr.は、アメリカの作家、退役軍人で、元 NASA の技術者です。彼は、ヴァージニア州の炭鉱の町、コールウッドに育ち、高校時代に仲間と4人でロケットを制作、1960年のナショナル・サイエンス・フェアで金賞を受賞します。大学卒業後、アメリカ陸軍に従軍、ベトナム戦争にも参戦しています。退役後、陸軍関連施設でエンジニアとして働いた後、NASAに技術者として採用され、1998年まで勤務します。一方、ベトナムから帰還後、作家活動も始め、1989年には最初の本が刊行されています。1994年に彼は、航空宇宙関連の雑誌から穴埋め記事の執筆を依頼され、高校時代の思い出を三時間で書き上げて送ります(ホーマーが寄稿した記事)。これが大好評となり、これを元に執筆した本が原作の「ロケットボーイズ」です。雑誌に掲載された記事に注目したプロデューサーのチャールズ・ゴードンが映画化の話を進め、ホーマーは映画化の話と脚本の執筆を並行して行うことになります。「実は原作が完成する前に映画が作られたんだ。どっちが先か、競争しているようなものだったよ。原作の結果が出ていないので、映画関係者は原作のタイトルを尊重してくれなかった。脚本のタイトルは「ロケットボーイズ」だったし、監督の椅子にも「ロケットボーイズ」と書かれていたんだけど、同じ頃、「ロケットマン」というお馬鹿コメディが映画化され、それ以前にも「ロケッティア」という映画があったので、マーケティングが人間が心配したんだ。」「彼らはアナグラムのソフトをウェアを使って、「Rocket Boysを「 October Sky」に変えたんだ。聞かれて答えよ、「嫌いだ、何の意味もない、馬鹿なタイトルだ」ってね。 でも、映画「 October Sky」がもたらした結果を誇りに思うよ。多くの異なる分野の技術者や博士、科学者が、今、彼らがあるのは「 October Sky」のおかげだと言うんだ。」「代用教員達がこぞって、「 October Sky」を見せたんだと思うよ。多くの生徒たちが技術畑に進むのを触発したんだ。僕はその為に本を書いたんじゃないけど、それが「 October Sky」がもたらした結果なんだ。人々はそれを観て、「ウェスト・ヴァージニアのコールウッド出身の奴にできるなら、俺達だってできる」ってね。世界中の人から、そう言われるよ。」ホーマーが NASA に勤めていたこともあり、宇宙飛行士も打ち上げ前によくこの映画を見るといいます。感動した彼らはホーマーに話をしたり、手紙を書いてくるそうですが、その都度、「原作を読んだか?」とホーマーは聞き返さなければならないと苦笑いします。映画としての芸術的創造の部分もあり、タイトル以外にも原作と映画は何点か異なると言いますが、いずれもまさに映画の力を感じさせるエピソードです。因みに、彼が原作で最も描きたかったのは父と子の関係ですが、これも映画にはしっかりと描かれています。その部分を読み取る人もいますが、若い人には技術者としての夢の実現を求める人がより多かったということではないかと思います。「著者の私にとって、基本的な話の筋は父と子と関係なんだ。少年は父に愛されたい、何かして欲しいと思う。父親は跡を継いで欲しいと言い、少年は嫌だという。映画にもしっかりと描かれている。原作読んだ、或いは映画を観た大人たちから、それがわかったという話を聴くと嬉しいよ。」今ではすっかり、ハイテク産業、知財・金融といったサービス産業というイメージのアメリカですが、1950年代には人々が炭塵で真っ黒になりながら鉄を生産する為の石炭を掘っていたことが印象的な映画でもあります。舞台となったコールウッドは炭鉱の町で、1960年代をピークに衰退、1982年には炭鉱が閉山し、すっかり寂れてしまったため、撮影は近くの町で行われています。科学者や宇宙飛行士が集いロケットボーイズを称える October Sky/Rocket Boys 祭りが毎年開催されてきましたが、主催する人々が高齢化し、継続が厳しくなりつつあるようです。余談になりますが、2014年に自由課題でアルミフォイルとトイレ洗剤で爆発の実験をしようとした少女を学校が警察に通報、少女は逮捕され、退学処分になるという事件がありました。少女に悪意はなく、4時間で釈放され、後に復学しますが、逮捕歴は5年間消えず、学校の対応に避難が集中しました。このニュースに心を痛め、何かポジティブなことをしたいと考えたホーマー・ヒッカム・Jr.は、クラウド・ファンディングを募り、彼女と双子の妹とその母親をスペース・キャンプに招待しました。また、広報が功を奏し、宇宙開発の民間企業スペースXでのインターンシップがオファーされ、また双子姉妹揃って奨学金の授与が決まったそうです。なんともアメリカらしい出来事ですが、問題を起こしてもせいぜいで親止まりですんだホーマーの時代と異なり、許容度ゼロの時代である昨今、荒唐無稽なサクセス・ストーリーは過去のものになりつつあるのかもしれません。実はライリー先生は、ロケットに興味を覚えたホーマーにミサイルの設計に関する本を贈っており、ホーマーは今でも大切にとっています。現在では考えられない話ですが、それが後に彼らが大成する原動力になったことを考えれば、わずか半世紀余りの間に失ったものは炭鉱の採掘の仕事だけではないのかもしれません。ジェイク・ギレンホール (ホーマー・ヒッカム)クリス・クーパー(ジョン・ヒッカム)ローラ・ダーン(ライリー先生)ロケット・ボーイズ【動画クリップ(YouTube)】ミス・ライリーのラジオ・インタビュー1960年のナショナル・サイエンス・フェアでロケットボーイズが金賞を受賞した後、彼らの良き理解者、支援者であったライリー先生に地元のラジオ局がインタビューしたもの。ライリー先生はロケットボーイズと同じ高校の出身で、当時23歳、ロケットボーイズに近い年齢だった。彼女は、ホーマー・ヒッカム・Jr.による続編、「The Coalwood Way 」、「Sky of Stone 」にも登場する。彼女は、ホジキン病という悪性リンパ腫の為、32歳の若さで亡くなった。後に逆境を乗り越え、生徒の大きな影響を与えたアメリカの教育者を称える「Freida J. Riley Award」が設けられ、また、彼女の出身大学のひとつには彼女の名を冠した奨学金制度がある。【撮影地(グーグルマップ)】冒頭のフットボール競技場ホーマーが通う高校ホーマーの家ライリー先生の家ホーマーが長距離バスに乗る場所 「遠い空の向こうに」(楽天市場)【関連作品】「遠い空の向こうに」の原作本 (楽天市場) ホーマー・ヒッカム・ジュニア「ロケットボーイズ」(上) ホーマー・ヒッカム・ジュニア「ロケットボーイズ」(下)ジェイク・ジレンホール出演作品のDVD(楽天市場) 「遠い空の向こうに」(1999年) 「ドニー・ダーコ」(2001年) 「グッド・ガール」(2002年) 「ブロークバック・マウンテン」(2005年) 「ゾディアック」(2007年) 「ミッション:8ミニッツ」(2011年) 「エンド・オブ・ウォッチ」(2012年)「プリズナーズ」(2013年) 「ナイトクローラー」(2015年)
2016年11月28日
コメント(0)
![]()
「ヘイル、シーザー!」(原題:Hail, Caesar!)は、2016年公開のアメリカのコメディ映画です。ジョエル&イーサン・コーエン兄弟監督・脚本、ジョシュ・ブローリン、ジョージ・クルーニー、レイフ・ファインズら出演で、1950年代のハリウッドを舞台に、スター俳優の誘拐事件をめぐる騒動を描いています。 「ヘイル、シーザー!」のDVD(楽天市場)【キャスト・スタッフ】監督:ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン脚本:ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン出演:ジョシュ・ブローリン(エディ・マニックス) ジョージ・クルーニー(ベアード・ウィットロック) レイフ・ファインズ(ローレンス・ローレンツ) アルデン・エーレンライク(ホビー・ドイル) ジョナ・ヒル(ジョー・シルヴァーマン) スカーレット・ヨハンソン(ディアナ・モラン) フランシス・マクドーマンド(C・C・カルフーン) ティルダ・スウィントン(ソーラ・サッカー/セサリー・サッカー) チャニング・テイタム(バート・ガーニー) アリソン・ピル(コニー・マニックス) ウェイン・ナイト(エキストラ) クリストファー・ランバート(アーン) フレッド・メラメッド(フレッド) パトリック・フィッシュラー(脚本家) デヴィッド・クラムホルツ(脚本家) フィッシャー・スティーヴンス(脚本家) クランシー・ブラウン(「ヘイル、シーザー!」の出演者) ロバート・ピカード(ラビ) カイル・ボーンハイマー(アシスタント・ディレクター) ドルフ・ラングレン(ソ連潜水艦の艦長) マイケル・ガンボン(ナレーター) ほか【あらすじ】1950年代、ハリウッドが夢を作り世界中に贈り届けていた時代、テレビの台頭に危機感を抱いたハリウッドは、スタジオの命運を賭けて史上空前のスペクタクル超大作「ヘイル、シーザー!」の撮影が開始します。しかしその撮影中に、主演俳優であり世界的大スターのウィットロック(ジョージ・クルーニー)が何者かに誘拐されるという大事件が発生します。スタジオが大混乱に陥る中、事件解決への白羽の矢を立てられたのは貧乏くじばかりを引いている「スタジオの何でも屋」エディ(ジョシュ・ブローリン)でした。お色気たっぷりの若手女優(スカーレット・ヨハンソン)や、みんなの憧れのミュージカルスター(チャニング・テイタム)、演技がどヘタなアクション俳優(アルデン・エーレンライク)など撮影中の個性溢れるスターたちの騒動をさばきながら、エディは難事件に挑んでいきます・・・。【レビュー・解説】1950年代の様々なハリウッド映画の撮影シーンを再現、まぬけな歴史スペクタル主演俳優や、スターの不始末を片付けるスタジオの幹部ら当時の個性的な映画人を豪華キャストで描く本作は、コーエン兄弟が戦後のハリウッド映画を称える贅沢なコメディです。本作を監督したコーエン兄弟は、これまでに ・「オー・ブラザー!」(2000年)・「ディボース・ショウ」(2003年)・「バーン・アフター・リーディング」(2008年) にジョージ・クルーニーを起用していますが、最初の「オー・ブラザー!」を監督した時に、まぬけな二枚目俳優が「ヘイル、シーザー!」という宗教大作を撮るというアイディアを彼に話しました。この話を彼がいたく気に入った為、当初は映画にするつもりはなかったのですが、数年後に腰を据えて脚本を書くことになったといいます。ジョージ・クルーニーが演じるベアード・ウィットロックは、 ・「クォ・ヴァディス」(1951年)のロバート・テイラー・「ベン・ハー」(1959年)のチャールトン・ヘストン・「スパルタカス」(1960年)のカーク・ダグラス など、当時のハリウッド大作映画の伝説的俳優を参考にしています。第2次世界大戦が終わり、最盛期を迎えたハリウッドは、テレビに差別化する為に大掛かりなセットを駆使し、大量のスターを起用した娯楽大作を生み出していました。ジョージ・クルーニー(ベアード・ウィットロック)しかし、こうした華やかなハリウッド映画の舞台裏は、陰りを見せ始めていました。背景にあったのは、テレビの普及や、独占禁止法による規制などですが、1940年代の終りに下院非米活動委員会が共産主義への圧力を強め、亡命者や共産党員が多いハリウッドにも官憲の手が及んで10人が有罪判決を受けます(ハリウッド10)。さらに、1950年代に入るとメジャー系映画会社の経営が崩壊し始め、官憲による共産党狩り(レッドパージ)が進む中、アメリカに亡命してきたチャップリンなど、多くの左翼的、容共的とみなされた映画人がアメリカの映画産業を追われ、国外に亡命し始め、ハリウッド映画の内容にも大きな影響を与えることになります。こうした時代の流れが、ジョージ・クルーニー扮するベアード・ウィットロックが誘拐される背景となっています。そしてこの映画の主軸となる誘拐事件に彩りを添えるのが、虚実入り交じる当時の映画人たちです。 ・ジョシュ・ブローリン演じるエディ・マニックスは、実在の映画スタジオMGMの重役兼プロデューサーで、長きに渡ってMGMの映画すべての収支を記録する一方で、時に色めくスターの私生活を隠蔽し、そのイメージを守ったフィクサーとして知られています。本作では、スタジオの様々な問題を片付ける一方、陰りを見せる映画産業から成長する航空機産業へ転職すべきか悩む、敬虔なクリスチャンとして描かれています。ジョシュ・ブローリン(エディ・マニックス)・スカーレット・ヨハンソンが演じるディアナ・モランは、競泳選手から女優に転じ、水中レビューを得意としたエスター・ウィリアムズを参考にしています。映画で見せる清純な微笑みとは裏腹の、私生活のビッチぶりが堂に入っています。スカーレット・ヨハンソン(ディアナ・モラン)・チャニング・テイタムが扮するバート・ガーニーは、ジーン・ケリーを参考しており、軽やかな踊りとタップダンスを披露します。チャニング・テイタム(バート・ガーニー)・アルデン・エーレンライクが演じるホビー・ドイルは、ハワード・キール、ディック・フォラン、ジェイムズ・エリソン、ティム・ホルトといった当時の西部劇スターを参考にしており、アクロバティックな乗馬や拳銃さばき、投げ縄、弾き語りなどを披露します。中でも、最も難しかったというスパゲティで投げ縄をやってみせるシーンは類を見ません。アルデン・エーレンライク(ホビー・ドイル)・ヴェロニカ・オソリオ演じるホビーのデートの相手、カルロタ・ヴァルデスは、カルメン・ミランダを参考にしています。・レイフ・ファインズが演じるローレンス・ローレンツは、「恋の手ほどき」(1958年)でアカデミー監督賞を受賞しているヴィンセント・ミネリをモデルにしています。ヴィンセント・ミネリは、ジュディ・ガーランドと結婚、生まれた娘がライザ・ミネリです(ジュディ・ガーランドとは後に離婚)。ホビーを紳士的に演技指導をしながら、徐々に切れていくシーンが圧巻です。レイフ・ファインズ(ローレンス・ローレンツ)・フランシス・マクドーマンド演じるC・C・カルフーンは、長年編集者として活躍し、アカデミー名誉賞を受賞したマーガレット・ブースを参考にしています。出演時間は短いのですが、大ボケをかまします。フランシス・マクドーマンド(C・C・カルフーン)・ティルダ・スウィントン扮する双子のハリウッド・レポーター、ソーラ/セサリー・サッカーは、ハリウッド・レポーターのヘッダ・ホッパーと、双子のコラムニストのアン・ランダースとアビゲイル・ヴァン・ビューレンを参考しています。帽子姿で登場、強烈な美しさを放っています。ティルダ・スウィントン(ソーラ・サッカー/セサリー・サッカー)ジョナ・ヒル扮するジョー・シルヴァーマンは、スタジオが抱える様々な公的問題の保証代理人です。仕事の為なら私生活を犠牲にすることも躊躇わない仕事マンです。ジョナ・ヒル(ジョー・シルヴァーマン)4人のオスカー俳優、3人のオスカー候補を含む贅沢なキャスティングです。・ジョージ・クルーニー(助演男優賞受賞)・フランシス・マクドーマンド(主演女優賞受賞)・フィッシャー・スティーヴンス(長編ドキュメンタリー賞を制作者として受賞)・ティルダ・スウィントン(助演女優賞受賞)・ジョシュ・ブローリン(助演男優賞ノミネート)・ジョナ・ヒル(助演男優賞ノミネート)・レイフ・ファインズ(主演男優賞ノミネート) また、華やかなハリウッドの再現する為に、歴史スペクタクル、西部劇、水中レビューなど、様々な映画のシーンが出てきますが、実はこれが結構大変だったようです。「映画の中の映画のためのシーンを撮影するのは、ロジスティック的にはとても大きな挑戦だったね。毎週違う映画を撮影するようなものだからね。普通、アート部門や衣装部門、特殊効果部門は皆、ひとつの映画の撮影で、ひとつのことをするために準備するんだ。ウェスタンだったら、カウボーイと馬を用意し、スタッフと制作部門はそういう映画を撮る際に必要な問題を解決するために準備するわけだ。しかし、これだけいろいろなことをやろうとすると、ある週はウェスタン、翌週は違うジャンルになるから、カウボーイはもういらないけれど、タンクとシンクロの水泳選手を探して、どうやって照明を当てるかを考えなければならない。」(ジョエル・コーエン監督)コーエン兄弟の作品らしく、いずれも主役を張れそうなほどしっかりとキャラクターが描かれており、また見どころ満載でまさに百花繚乱の観がありますが、政治的な背景もあってか誘拐のカタルシスが十分ではなく、陰りはあるもののハリウッドはまだ華やかという背景と相まって、オチのインパクトが半減しているようでもあります。とは言うものの、そこはコーエン兄弟監督・脚本作品、十分に楽しめる内容で、笑いながらも思わず1950年代のハリウッドに思いを馳せてしまう、そんな作品です。【動画クリップ(YouTube)】・「クォ・ヴァディス」(1951年)・エスター・ウィリアムズの水中レビュー・ジーン・ケリーのタップダンス・カルメン・ミランダ・ヴィンセント・ミネリ監督・編集者のマーガレット・ブース・ハリウッド・レポーターのヘッダ・ホッパー【撮影地(グーグルマップ)】ホビーが投げ縄をして、カルロタを待つ場所 「ヘイル、シーザー!」のDVD(楽天市場)【関連作品】コーエン兄弟監督作品ジョージ・クルーニー出演作品のDVD(楽天市場) 「アウト・オブ・サイト」(1998) 「スリー・キングス」(1999) 「オーシャンズ11」(2002) 「シリアナ」(2005) 「グッドナイト&グッドラック」(2005) 「フィクサー」(2007) 「マイレージ、マイライフ」(2009) 「スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜」(2011) 「ファミリー・ツリー」(2011) 「ゼロ・グラビティ」(2013)ジョシュ・ブローリン出演作品のDVD(楽天市場)「アメリカの災難」(1996年) 「ノーカントリー」(2007年) 「アメリカン・ギャングスター」(2007年) 「ミルク」(2008年) 「トゥルー・グリット」(2010年)「ボーダーライン」(2016年)
2016年11月25日
コメント(0)
![]()
「MUD -マッド-」(原題:Mud)は、2012年公開のアメリカのドラマ映画です。ジェフ・ニコルズ監督・脚本、マシュー・マコノヒー、タイ・シェリダン、サム・シェパード、リース・ウィザースプーンら出演で、アメリカ南部ミシシッピ川流域の消え行くライフ・スタイル、親友、父と子など男同士の関係とともに、島に隠れる謎の男、両親の結婚の破綻、初恋と失恋など、純粋な少年の冒険と成長を、スリリングにかつ温かい眼差しで描いています。第65回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門でパルム・ドールを争った作品です。 「MUD -マッド-」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:ジェフ・ニコルズ脚本:ジェフ・ニコルズ出演:マシュー・マコノヒー(マッド、島に隠れる男) リース・ウィザースプーン(ジュニパー、マッドの古い恋人) タイ・シェリダン(エリス、マッドを助ける少年) ジェイコブ・ロフランド(ネックボーン、エリスの親友、孤児) サム・シェパード(トム・ブランケンシップ、マッドの家の対岸に住む老人) レイ・マッキノン(シニア、エリスの父) サラ・ポールソン(メアリー・リー、エリスの母) マイケル・シャノン(ガレン、ネックボーンの養父、漁師) ジョー・ドン・ベイカー(キング、カーヴァーの父) サディー・アントニオ(メイベリン・パターソン) ポール・スパークス(カーヴァー、マッドを追う男) スチュアート・グリア(ミラー) ボニー・スターディバント(メイ・パール ) ジョン・ウォード・ジュニア(助手) クリスティ・バリントン(プリンセス) ジョニー・チーク(カイル) ケネス・ヒル(ネルソン ) マイケル・アボット・ジュニア(ジェームズ) ほか【あらすじ】・14歳のエリス(タイ・シェリダン)はアメリカの南部、アーカンソーの川岸にあるボートハウスに両親と暮らしています。エリスはある朝、家を抜け出し、親友のネックボーン(ジェイコブズ・ロフランド)と、ミシシッピ川に浮かぶ島にでかけます。その島の森の木の上にはネックボーンが見つけた昔の大洪水の時に引っかかったボートがあり、 二人は興奮に胸を躍らせながら木を登り、ボートに乗り込みます。中を見てまわると、そこにはパンや真新しい足跡があり、自分たち以外にもこのボートを見つけた人がいることに気付きます。・島を立ち去ろうと川岸に辿り着いた時、彼らはボートで見たのと同じ足跡の主、マッド(マシュー・マコノヒー)と出会います。マッドは意志が強く堂々としているが、まじないやお守りを信じ、汚い服を身につけ、歯は欠けており、いかにも訳あり気な男で、身を隠している彼は食べ物と引き換えに、彼の隠れ家にしている木の上のボートを渡すことを二人に提案します。ネックボーンはマッドを怪しみためらいますが、エリスは危険でありながら興味を持たずに入られない彼の魅力に押され、食べ物を渡し、二人の間にほのかな友情が芽生えます。・マッドの話によると彼はもともとこの辺り出身で、エリスの家の向かいに住むトム・ブランケンシップ(サム・シェパード)のことも知っている上に、トムのことを暗殺者と言います。そんな中、街で検問が行われ、エリスはマッドが指名手配犯であることを知ります。島に戻りマッドにそのことを伝えると、彼は人を殺し、警察にも賞金稼ぎにも追われていると打ち明けます。 そんなマッドの心にあるのは、幼なじみで命の恩人で最愛の女性ジュニパー(リース・ウィザースプーン)と再会することでした。まさに初めての恋をしているエリスは、マッドに肩入れ、二人の愛のため、彼に協力することにします。・ジュニパーは、粗末なモーテルに身を寄せていますが、テキサスの賞金稼ぎやカーヴァー(ポール・スパークス)に常に監視されています。 カーヴァーは父親でもあるキング(ジョー・ドン・ベイカー)と共に、自分の弟を殺したマッドを捕まえようとしています。 エリスとネックボーンはマッドに協力し、ジュニパーにマッドのメッセージを伝えようとモーテルに行きますが、カーヴァーがジュニパーにマッドの居所を聞き出そうと乱暴をしているところに出くわし、目を付けられてしまいます。更に、ジュニパーの不可解な行動、両親の結婚生活の崩壊、思いを寄せる年上の女の子との初めての失恋と、エリスにとっての愛やロマンスに対する考えが揺らぐ出来事が次々と起こります・・・ 。【レビュー・解説】タイトル役のマシュー・マコノヒーを初めとする4人のオスカー級俳優の演技に支えられた本作は、アメリカ南部ミシシッピ川流域の消え行くライフ・スタイル、親友、父と子など男同士の関係とともに、島に隠れる謎の男、両親の結婚の破綻、初恋と失恋など、純粋な少年の冒険と成長をスリリングな展開で描いた、感傷的ではない、爽やかで心温まるドラマです。ミシシッピ川はアメリカのミネソタ州を源流とし、メキシコ湾へと注ぐ、北アメリカ大陸を縦断する全長3779kmのアメリカ最長の河川です。かつては世界最長の川と考えられ、鉄道が敷かれるまでは、水運を担う重要な水路となっていた時期があり、流域にはミネアポリス、セントルイス、メンフィス、ニューオーリンズなどの都市が発展しました。アメリカ最大の作家のひとりであるマーク・トウェインはミシシッピ川沿い土地で少年期を過ごし、「トム・ソーヤーの冒険」や「ハックルベリー・フィンの冒険」といった彼の代表作はこの少年期の経験をもとにして描かれており、マーク・トウェインとのペンネーム自体、ミシシッピ川を行き交う蒸気船の水先人への合図「by the mark, twain」(水深二尋)に由来します。「トム・ソーヤーの冒険」に主人公が川を泳いで無人の島に渡り、昼寝をするシーンがありますが、13歳の時に学校の薄暗い教室の中でこれを読んだジェフ・ニコルズ監督は、死ぬほど退屈な教室を抜け出してトムと同じようなことをできればいいのにと思ったそうです。「トム・ソーヤーには純粋さがあり、子供であるということはどういうことなのか、完璧に捉えている。私は、「MUD -マッド-」で似たようなことをやりたかった。」(ジェフ・ニコルズ監督)音楽においても、ミシシッピ川沿岸地方は大きな役割を果たし、南部において黒人が持っていた音楽文化と白人の音楽文化が融合、沿岸の都市で花開きました。ブルースはメンフィスやセントルイスが本場、ジャズもニューオーリンズが発祥の地であり、ここから世界中に広まっていきました。因みに、アメリカ南部の音楽を取り入れたサザン・ロックの先駆者、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル(CCR)の「プラウド・メアリー」という曲*3は、辛い人生を乗せてミシシッピ川を力強く往来する蒸気船を謳っています。蒸気船が航行する姿はアメリカ発展史における象徴的存在でもあったのですが、この曲の詞に、「If you come down to the river, I betcha you're gonna find some people who live. You don't have to worry, if you have no money. The people on the river are happy to give.」(賭けてもいい、川に降りればそこで暮らす人に会える。お金が無くても心配しなくていい。川で暮らす人たちが喜んで分かち合ってくれる。)という一節があります。アメリカの繁栄を象徴する蒸気船が往来するミシシッピ川に、世界の他の地域同様、川を生活の糧にする人々がいたことがわかります。ニコルズ監督自身、アーカンソー州のミシシッピ川支流沿岸のロックウェル出身で、大学時代に、自作の潜水服でムール貝を採る流域の漁師の写真集に出会います。彼は周囲に聞き回り、親族の多くがボートハウスに住み、そんな暮らしをしていたことを知ります。初めてミシシッピ川支流のホワイト・リバーに連れていってもらった時は、その自然の美しさと数多くの野生動物たちに出会い、神話に出てくる場所のように感じたと言います。「そこには島があって、男がひとり孤独に潜んでいることを想像し、その考えに取り憑かれました。いいアイディアだと思い、ハウスボートが取り壊されると聞いた時、映画になると思いました。」「川沿いに点在するハウスボートは、昔の別世界のものようでした。スニーカーを履いて携帯電話を使っても、そこで暮らす人々は自然と伝統的な精神を愛しています。でもそれは風前の灯火で、思うに同じようなことはアメリカの南部全般に起きています。まさに「川とともに去りぬ」、消えつつあるのです。」(ジェフ・ニコルズ監督)ストーリーはさらに発展しました。「ちょうどその頃、私はある女性に失恋、ショックを受け、傷心のまま、恋愛や初恋について考えてばかりいました。初恋について映画を作らなければならないと思いましたが、これも崇高なテーマです。そこでエリスという少年のイメージが心に浮かび、この少年が島に隠れる男を見つけると面白いのではないかと思いました。島に隠れる男の逃避行の話が、突然、成長する少年の初恋の話になったのです。ありきたりな表現ですが、物語を作り始めてから人間関係の中で有機的に結びついていったのです。」「私は初恋と傷心を、物語を動かす力として少年の肩の上に置くことができると思い始めたのです。」(ジェフ・ニコルズ監督)二人のオスカー俳優(マシュー・マコノヒー、リース・ウィザースプーン)、二人のオスカー候補(サム・シェパード、マイケル・シャノン)に支えられ、タイ・シェリダンと地元の2000人の中からオーディションで選出されたジェイコブ・ロフランドが少年役で素晴らしいパフォーマンスを見せる本作は、マーティン・スコセッシも絶賛する非常に評価の高い作品です。。・監督の故郷であるミシシッピ川流域の土地柄と生活・その美しさ、渦巻く茶色く濁った水、這い回る毒ヘビなど危険・川沿いのボートハウスで暮らすライフスタイル・川を生活の糧にし、潜水服で獲物を採る漁師・島での冒険談、少年の純粋さ、父と子の関係、失恋・センチメンタルにならない、スリリングで、爽やかな展開などなど、アメリカ的な映画の楽しさがてんこ盛りですが、残念ながらカンヌでは賞を逃してしまいました。これらの組み合わせが特殊なものに映ってしまったのかもしれません。日本では比較的マイナーな印象ですが、この映画はニコルズ監督の強い思いが込められた、優れた作品です。「「ショットガン・ストーリー」や「テイク・シェルター」などの他の作品と異なり、私はこの作品を大学の頃から考えています。「MUD -マッド-」は、私の若くて馬鹿な考えを10年も引きずったものです。私の映画製作者、脚本家として成長の結果、作り出したものではありません。生涯、ずっと引きずってきたものなのです。そしてそれは、父と子、友情など、男同士の関係のあり方を考えるものでもあるのです。」(ジェフ・ニコルズ監督)マシュー・マコノヒー(マッド、島に隠れる男)リース・ウィザースプーン(ジュニパー、マッドの古い恋人)タイ・シェリダン(エリス、マッドを助ける少年)ジェイコブ・ロフランド(ネックボーン、エリスの親友、孤児)サム・シェパード(トム・ブランケンシップ、マッドの家の対岸に住む老人)レイ・マッキノン(シニア、エリスの父)サラ・ポールソン(メアリー・リー、エリスの母)マイケル・シャノン(ガレン、ネックボーンの養父、漁師)【撮影地(グーグル・マップ)】ボートハウスがある場所シニアとエリスが魚を配達するレストランマッドが隠れていた島が浮かぶミシシッピ川ジュニパーが買い物をするスーパージュニパーが滞在するモーテル 「MUD -マッド-」のDVD(楽天市場)【関連作品】マーク・トウェインの代表的著作(楽天市場) 「トム・ソーヤーの冒険」 「ハックルベリー・フィンの冒険」ジェフ・ニコルズ監督・脚本作品のDVD(楽天市場) 「テイク・シェルター」(2011年)マシュー・マコノヒー出演作品のDVD(楽天市場) 「バッド・チューニング」(1993) 「ローンスター 真実の囁き」(1996) 「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」(2008) 「バーニー/みんなが愛した殺人者」(2011) 「リンカーン弁護士」(2011年) 「マジック・マイク」(2012)「ダラス・バイヤーズクラブ」(2013) 「インターステラー」(2014年)リース・ウィザースプーン出演作品のDVD(楽天市場) 「カラー・オブ・ハート」(1998年) 「ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!」(1999年) 「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」(2005年) 「グッド・ライ いちばん優しい嘘」(2014年) 「私に会うまでの1600キロ」(2014年)
2016年11月24日
コメント(0)
![]()
「マネー・ショート 華麗なる大逆転」(原題: The Big Short)は、2015年公開のアメリカのドラマ映画です。マイケル・ルイスのベストセラーであるノンフィクション小説「世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち」(2010年刊行)を原作に、アダム・マッケイ監督、チャールズ・ランドルフ/アダム・マッケイ共同脚本、ブラッド・ピットら制作、クリスチャン・ベールら出演で、2008年の住宅バブル崩壊に端を発した金融危機をいち早く予見、ウォール街を出し抜いた4人の型破りな金融マンたちを描いています。「マネー・ショート 華麗なる大逆転」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:アダム・マッケイ脚本:チャールズ・ランドルフ/アダム・マッケイ原作:マイケル・ルイス「世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち」出演:クリスチャン・ベール(マイケル・バーリ) スティーヴ・カレル(マーク・バウム、スティーブ・アイズマンがモデル) ライアン・ゴズリング(ジャレド・ベネット、グレッグ・リップマンがモデル) ブラッド・ピット(ベン・リカート、ベン・ホケットがモデル ) ジョン・マガロ(チャーリー・ゲラー、チャーリー・レドリーがモデル) フィン・ウィットロック(ジェイミー・シプリー、ジェイミー・マイがモデル) ハミッシュ・リンクレイター(ポーター・コリンズ) レイフ・スポール(ダニー・モーゼス) ジェレミー・ストロング(ヴィニー・ダニエル) アデペロ・オデュイエ(キャシー・タオ) マリサ・トメイ(シンシア・バウム、ヴァレリー・フェイゲンがモデル) メリッサ・レオ(ジョージア・ヘイル) スタンリー・ワン(テッド・ジャン、ユージーン・シュがモデルモデル) ジェフリー・グリフィン(クリス) バイロン・マン(Mr.チャウ、ウィン・チャウがモデル) トレイシー・レッツ(ローレンス・フィールズ) カレン・ギラン(イーヴィ) マックス・グリーンフィールド(住宅ローン・ブローカー) ビリー・マグヌッセン(住宅ローン・ブローカー) マーゴット・ロビー(本人役) セレーナ・ゴメス(本人役) リチャード・セイラー(本人役) アンソニー・ボーディ(本人役) ほか【あらすじ】・2005年、風変わりなヘッジ・ファンド・マネージャーのマイケル・バーリ(クリスチャン・ベール)は、リスクの高いサブプライム・ローンに依存するアメリカの住宅市場が極めて不安定な事に気づきます。住宅ローンの変動金利が上がり、2007年の第二四半期には市場が崩壊すると予想、利益を得る機会になると見極めます。彼のプランは、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場を作り、住宅ローン関連の証券市場に対して逆張りすることです。彼は、いくつかの投資銀行や商業銀行に提案し、あっさりと承諾を得ます。彼の10億ドルを越える莫大かつ長期の賭けは、毎月、かなりの額のプレミアを銀行に支払うことが条件です。彼のクライアントの多くは資金の浪費だと怒り、CDSを売り戻すように要求しますが、彼は拒否します。銀行が主たる債券格付け会社と結託し、価値のない債券の格付けを維持、真の価値が暴露される前に売り抜けようとしていることを、彼は後に知ります。プレッシャーを感じた彼は、投資家が彼のファンドから資金を引き上げることを制限します。結局、住宅市場は崩壊、彼のファンドの価値は489%増え、25億ドル以上の利益を得ますが、反感をかった彼は、自己嫌悪からファンドを閉鎖することを決意します。・バーリに早期CDSを売った銀行家の動きから学んだ営業マンのジャレド・ベネット(ライアン・ゴズリング)は、最も早くバーリの分析を理解した一人でした。アナリストを使ってバーリの予想が本当らしいと検証したベネットは資金を投入、住宅ローン債券が暴落した時に利益を得る会社にCDSを売り、手数料を稼ぎます。間違い電話に注意喚起されたヘッジ・ファンド・マネージャーのマーク・バーム(スティーヴ・カレル)は、個人的な銀行への嫌悪感から、ベネットからCDSを買うことを決めます。債務担保証券(CDO)にサブプライム・ローンを大量に組み込み、AAAの格付けにすることにより、市場の崩壊はさらに進むと、ベネットは説明します。バームは部下をマイアミ住宅市場の調査に送り込み、住宅ローンのブローカーがウォール街にリスクの高いローンを売っており、バブルになっていることを知ります。2007年早々、これらのローンが債務不履行になりますが、債務担保証券(CDO)は値を上げ、格付け会社はこれらの焦げ付いた債券の格付けを下げることを拒否します。バームはスタンダード&プアーズ者の知人を問い正し、信用格付け会社の間で利益と公正さが相反していることを知ります。バームの部下に動機を尋ねられたベネットは、バームとそのチームをラスベガスで開催されるアメリカ証券化フォーラムに招待してはぐらかします。バームは投資銀行のCDOマネージャー、ウィン・チャウ(バイロン・マン)と面談、チャウは投資家の利益を代表していると主張します。生成されたCDOが、どのようにして焦げ付いたローン自体の20倍にもなる大きな賭けの連鎖を作るのか、チャウは説明します。バームはこの詐欺がグローバル経済を崩壊させると恐怖を覚え、できるだけ多くのCDSを買って銀行の損失から利益を得ようと決意します。ぎりぎりまで売るのを我慢して、バームは10億ドルの利益をあげますが、銀行が金融危機の責任を認めないことを嘆きます。・若い投資家のチャーリー・ゲラー(ジョン・マガロ)とジェイミー・シプリー(フィン・ウィットロック)は、たまたまベネットの目論見書を見つけ、安い保険を買い大金を得るという彼らの戦略に合致するため、取引に関わることを決めます。彼らはISDA(国際スワップデリバティブ協会)マスター契約の最低資金の条件を満たさず、バーリやバームのように取引できず、引退した証券トレーダー、ベン・リッカート(ブラッド・ピット)に助けを求めます。債務不履行にもかかわらず債券やCDOが値上がりしている時、ゲラーは銀行が詐欺をはたらいているのではないかと疑います。三人もアメリカ証券化フォーラムを訪れ、アメリカ証券取引委員会には住宅ローンの債券の動きを監視する法律がないことを知ります。彼らは格付けの高い住宅ローン証券に目をつけ、他のヘッジ・ファンドより大きな利益を上げようとします。これらの証券は非常に安定していると考えられており、銀行をCDSを極めて安く売ろうとしていました。シプリーとゲラーは有頂天になりますが、リッカートは差し迫った経済の崩壊と失業率が1%増えると4万人が死ぬと指摘し、うんざりします。恐れおののいた二人は感情的になり、やがて明らかになる銀行の詐欺と災害を新聞社や家族に警告します。結局、彼らは莫大な利益を上げますが、彼らの金融システムに対する信頼は打ち砕かれます。【レビュー・解説】アメリカの住宅バブル崩壊に端を発する金融危機を予見、大金を手にした4人の風変わりな男を豪華キャストが演じ、当時の複雑で深刻な金融業界の愚かさを、手厳しくかつ面白おかしく描いた、アダム・マッケイ監督の傑作です。世界中に悪影響を及ぼしたアメリカの住宅バブル崩壊に端を発する金融危機を利用して儲けた奴がいるとなると、いったいどうやって?と興味をそそられます。一般に株(証券)取引で利益を上げる場合は、値上がりを見越して買い、値上がりした時点で売却、利益を得ますが、これを「ロング・ポジションをとる」と言います。ところが、値下がりを見越して借りた株を高く売却(空売り)し、安くなってから買い戻し株を返却、その差額から利益を得ることもできます。これを「ショート・ポジションをとる」といいます。本作に登場する4人に男たちは、住宅ローン関連の金融派生商品に対して「ショート・ポジション」をとり、(証券の空売りではなく)クレジット・デリバティブ・スワップ(CDS)という保険のような仕組みを利用して莫大な利益を上げます。原題の「The Big Short」、邦題の「マネー・ショート」のショートは、この「このショート・ポジション」に由来します。ショート・ポジションをとることは市場に希望を持てない方に賭けることであり、ウォール街では一般に不健康な考えとされています。そんな考えを実行に移した4人はいずれも訳ありな人なのですが、その人物描写が素晴らしく、理解しにくい金融の話に思わず引き込まれていく、強力なフックとなっています。これは原作の持ち味で、アダム・マッケイ監督を惹きつけた魅力のひとつです。この強烈な個性を放つ4人を演じたのは、・クリスチャン・ベール(マイケル・バーリ、モデルと同名)・スティーヴ・カレル(マーク・バウム、スティーブ・アイズマンがモデル)・ライアン・ゴズリング(ジャレド・ベネット、グレッグ・リップマンがモデル)・ブラッド・ピット(ベン・リカート、ベン・ホケットがモデル )で、いずれもアメリカの歴史的大事件を演じるのを楽しむかのように、素晴らしいパフォーマンスを見せており、それだけでも大いに楽しめます。特にクリスチャン・ベールとスティーヴ・カレルが見事です。アダム・マッケイは、アメリカの映画監督、プロデューサー、脚本家で、1995年から2001年にアメリカで人気の公開コメディ・バラエティ番組「サタデー・ナイト・ライブ」のライター、ディクレターを務め、その後はコメディ映画「俺たちニュースキャスター」(2004年)などの監督、脚本で知られています。コメディ映画を作ることが多いマッケイ監督ですが、自身でコメディ映画を観ることはあまりありません。ドキュメンタリーやドラマを観ることが多く、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品のファンで、特に「プリズナーズ」(2013年)には驚かされたといいます。マッケイ監督の作品は、すべてドラマ映画にしようとして失敗してコメディになったと冗談を飛ばすほどです。実際、彼が本作の監督をするとは誰も予想しなかったでしょう。彼は2014年早々、映画化権を所有するブラッド・ピットの製作会社、プランBやパラマウントに脚本を持ち込み、監督をやらせろと説得して回りました。ドラマの実績のない彼をよくも監督に起用したと思いますが、結果としてこれは素晴らしい判断でした。というのは、アメリカのこの金融危機は、アメリカ人にとって、・アメリカ国内だけでも5兆ドルの年金、不動産、401k預金、証券が消え去り、800万人が失業、6百万人が住む家を失っただけではなく、世界経済に大きな悪影響を及ぼした・金融機関への調査は預金者への支払い業務など市民のライフラインを止めることになると当局を脅し、騒ぎを起こした張本人たちが刑事訴追されることはなかった・金融機関は国民の税金を使った救済を幹部のボーナスとともに議会のロビーイング費用に回し、法令改正による規制強化や、業界の再編を阻止したという、金融機関の暴走を御することができないアメリカの惨憺たる話なのです。マッケイ監督は、このようなわかりにくく陰鬱な話に、・第四の壁を破り、登場人物やセレブがわかりやすく用語を解説・マイケル・ムーア監督ばりの怒りに満ちた主張や、辛辣で風刺的なジョーク・明るくポップなイメージ映像などを織り込むことにより、金融業界に明るなくても楽しめる作品に仕立て上げています。さらにジョークならいくらでも書けるというマッケイ監督は、数多くのジョークを書いては本編に挿入し、映画のトーンに与える影響を評価、取捨選択することにより、深刻な事件を扱いながら、娯楽作品としても非常に質の高いものになっています(因みに映画からジョークをすべて抜いてみたところ、非常に陰鬱なものになったとのこと)。本編でマーゴット・ロビーが突然、シャンペンを片手にバブル・バスの中から用語解説を始めるのには、こんな背景があるわけです。本作では、滑稽なほど金融業界を詐欺呼ばわり、馬鹿呼ばわりしています。CDOなど硬度で複雑な商品を作り出す一方で、やっていることはクズだと罵ります。また、本来は頭脳明晰な人が多い金融業界ですが、良いことは永遠に続くという心理的なトリックに陥り、住宅バブルの破綻という不都合な予測をしたがらないという衆愚に陥っている様子も描かれています。実は全体がそういう雰囲気にある時に反旗を翻すのは、容易なことではありません。2005年時点でバブル崩壊を予測したマイケル・バーリは、実はアスペルガー症候群です。人間関係が不得意で、クライアントとも電子メールでしかコミュニケーションしません。一方、彼は数字がずば抜けて得意で、複雑なCDOを計算して評価、2007年の破綻を予測できたのも彼ならではです。そんな彼の幸せは人間関係ではなく、数字です。だから、いいカモだと嘲笑されても平気でCDS(クレジット・デリバティブ・スワップ)を買い集めることができたのです。後の三人は、その話を嗅ぎつけて、周囲の反対を押し切って同様の動きをしたのですが、この三人も訳ありで、各々が異端的行動を起こす理由があります。余談になりますが、この映画には「アメリカ人は経済危機があると移民と貧困層を責める」というナレーションが入ります。ここのところ、・イギリスがEUからの離脱を決定・アメリカでは反移民政策、保護政策を掲げる大統領候補が当選・さらにイギリス以外にも EU 離脱を掲げかねない国が増加という動きがありますが、ついこの間までグローバリズムに突っ走っていた西側諸国が、手のひらを返したように反移民の保護主義へ方向転換しつつあります。どうも「移民と貧困層を責める」のはアメリカだけではないようです。悪いのは移民ではなく、それまでのグローバルな経済政策の不備なんでしょうけどね。マッケイ監督は、本作について、・我々はどのようにして世界を見ているのか?・誰が信頼できるのか?・いつ、自分自身の目で確かめるべきなのか?・いつ、我々は疑問の声をあげるべきなのか?に関する映画だと語っています。これを見て「何故、そんなことが起きたのか?」などと話し合ってもらえれば嬉しいと言い、「何故、金融機関を規制しないのか?」と観客が政治家のタウンミーティングで質問してくれることが夢だそうです。クリスチャン・ベール(マイケル・バーリ)スティーヴ・カレル(マーク・バウム、スティーブ・アイズマンがモデル)ライアン・ゴズリング(ジャレド・ベネット、グレッグ・リップマンがモデル)ブラッド・ピット(ベン・リカート、ベン・ホケットがモデル )マリサ・トメイ(シンシア・バウム、ヴァレリー・フェイゲンがモデル)メリッサ・レオ(ジョージア・ヘイル)マーゴット・ロビー(本人役)セレーナ・ゴメス(本人役)【用語解説】映画の中で図解されるなど、特に金融用語に詳しくなくても大きな流れは把握できますが、基本的な用語としては以下のものがあります。 サブプライム・ローンアメリカで貸し付けられるローンのうち、サブプライム層(優良客=プライム層よりも下位の層)向けとして位置付けられるローン商品。ローンの債券化により資金調達が容易になった為、返済できないような貧困層にもローンが組まれて焦げ付き、リーマンショックの契機となりました。デリバティブ(金融派生商品)株式、債券、預貯金・ローン、外国為替といった基本的な金融商品のリスクを低下させたり、高い収益性を追及する手法として考案された派生商品。基本となる金融商品について、・将来売買を行なうことをあらかじめ約束する取引(先物取引)・将来売買する権利をあらかじめ売買する取引(オプション取引)・これらを組合わせた多種多様な取引といった商品がありますが、投機的な運用資産として多額の損失を生じ、問題となることが少なくありません。モーゲージ証券(MBS)住宅ローンなどの不動産担保融資の債権を裏付け(担保)として発行される証券のことをいいます。債務担保証券(CDO)ローンや債券などから構成される金銭債権を担保とする証券化された商品。複数のローンや債権などの所有者が、それらを特別目的事業体に譲渡し、債券の売出や受益権の譲渡などを行うことで投資家から資金調達を行う仕組み。リーマンショックでは、担保となっていたローンが数多く破綻、高格付けとして運用されていた債務担保証券も毀損し、世界中の多くの投資家が巨額の損失を計上することになりました。担保となっていた資産の不透明さや流動性の低さなどのリスクが浮き彫りにされました。クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)債権などのリスクを移転するデリバティブ取引の一つで、いわば債権の保険のようなものです。保証料を支払ってクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を買うと、そのCDSが対象としている債権がデフォルト(債務不履行)となった場合に、その損失を保証してもらうことができます。通常の保険と異なり、CDSは保証の対象となる債権を所有していなくても購入することができます。CDSを売った人は、その債権がデフォルトとなった場合に買い手に損失分を支払うことになります。リーマンショックの際、毀損された債務担保証券(CDO)を大量のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)で保証していた AIG が連鎖的に破綻しました。・ーーー・I債務者I・ーーー・ ↑ 返済できないローンを貸し付け・ーーーーーーーーーーーーー・Iサブプライムローンの貸し手I・ーーーーーーーーーーーーー・ ↓ 債権・ーーーー・I投資銀行I ←クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)・ーーーー・ ・ーーーーーー・ ↓ 債務担保証券(CDO) I証券保険会社I・ーーーーーーー・ ・ーーーーーー・I投資家、投機家I ←クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)・ーーーーーーー・ ↑ 債務担保証券(CDO)を格付け・ーーーーーーー・I信用格付け会社I・ーーーーーーー・【動画クリップ(YouTube)】バブルバスでMBOとサブプライムローンを説明するマーゴット・ロビー積み木を使ってアメリカの住宅ローン市場の崩壊を説明するジャレド(ライアン・ゴズリング)CDOを説明するシェフのアンソニー・ボーデンカジノでMBOのMBOのリスクを説明するリチャード・テイラー博士とセレナ・ゴメス【撮影地(グーグルマップ)】ベン・リカート(ブラッド・ピット)がインターネット接続するイギリスのパブドイツ銀行スタンダード&プアーズ(格付け会社)フォーラムが行われたシーザーズ・パレス「マネー・ショート 華麗なる大逆転」のDVD(楽天市場)【関連作品】「マネー・ショート 華麗なる大逆転」の原作本(楽天市場) マイケル・ルイス著「世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち」アダム・マッケイ監督・作品のDVD(楽天市場) 「俺たちニュースキャスター 」(2004年) 「タラデガ・ナイト オーバルの狼」 (2006年) 「アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事! 」(2010年) 「俺たちニュースキャスター 史上最低!?の視聴率バトルinニューヨーク」 (2013年)「マネー・ショート 華麗なる大逆転」 (2015年)
2016年11月21日
コメント(0)
![]()
「あの頃ペニー・レインと」(原題:Almost Famous)は、2000年公開のアメリカの半自伝的コメディ&ドラマ映画です。15歳で「ローリング・ストーン」誌の記者になり、レッド・ツェッペリン、ニール・ヤングなど、数多くの伝説的なミュージシャンへのインタビューに成功したキャメロン・クロウ自身の体験を基に、キャメロン・クロウ監督・製作・脚本、パトリック・フュジット、ケイト・ハドソンら出演で、音楽ライターをめざす純粋な少年の成長と初恋をみずみずしく描いています。第73回アカデミー賞で、助演女優賞(ケイト・ハドソン、フランシス・マクドーマンド)、脚本賞にノミネートされ、脚本賞を受賞した作品です。 「あの頃ペニー・レインと」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:キャメロン・クロウ脚本:キャメロン・クロウ出演:パトリック・フュジット(ウィリアム・ミラー) マイケル・アンガラノ(少年時代のウィリアム) ケイト・ハドソン(ペニー・レイン) ビリー・クラダップ(ラッセル・ハモンド、ロックスター) フランシス・マクドーマンド(エレイン・ミラー、ウィリアムの母) ジェイソン・リー(ジェフ・ベイブ) アンナ・パキン(ポレキシア・アフロディシア) フェアルザ・バルク(サファイア) ノア・テイラー(ディック・ロスウェル) ズーイー・デシャネル(アニタ、ウィリアムの姉) フィリップ・シーモア・ホフマン(レスター・バングス) テリー・チェン(ベン・フォン・トーレス) ほか【あらすじ】1973年、大学教授の母(フランシス・マクドーマンド)と暮らす知的で陽気な15歳の少年ウィリアム(パトリック・フュジット)は、姉アニタ(ズーイー・デシャネル)が教えたロック音楽の魅力に取り憑かれ、学校新聞などにロック記事を書いています。やがて、伝説のロック・ライターでクリーム誌の編集長、レスター・バングス(フィリップ・シーモア・ホフマン)に認められ、さらにローリングストーン誌からも声がかかり、ウィリアムが愛する新進バンド、スティルウォーターのツアーに同行取材をすることになります。そして、このバンドを追う少女たちの中にいた、ペニー・レイン(ケイト・ハドソン)に恋心を抱くようになりますが、彼女はスティルウォーターのギタリスト、ラッセル(ビリー・クラダップ)と付き合っています。ウィリアムは、ツアーの刺激的な毎日を楽しみますが、ニューヨークでラッセルの本命の恋人が現われ、ペニー・レインは睡眠薬で自殺を図ります・・・。【レビュー・解説】俳優たちの素晴らしいパフォーマンスに支えられた「あの頃ペニー・レインと」は、監督自身が駆け出しの音楽ライターだった1970年代の体験を慈しむように作り込まれた心温まる映画で、音楽映画としても非常に評価が高い作品です。薄黄色のノートパッド上にに鉛筆で書かれる手書きのアップ、鉛筆が走る音がサラサラと流れるオープニングで映画の幕が開きます。ノートパッドは主人公が取材の際に使っているもので、キャメロン・クロウ監督自身が文字を書いているこのシーンは、アナログ感覚に溢れとても暖かく、フランシス・マクドーマンドのスペルを、Francis と書いてから、i を消し、e に書き直すなどユーモラスな演出も成された、CDではなくビニール・レコードだった時代を描く本作のトーンを示す素晴らしいオープニングです。続く本編も、音楽やバンドが大好きな主人公、ロックを教え込んだ主人公の姉、主人公が心配でたまらない母親、主人公が取材するバンドやそれを取り巻く女の子たち、執筆を依頼、アドバイスする編集者たちの様子を暖かく、慈しむように描いています。幼い頃から音楽好きだったキャメロン・クロウ監督は、16歳で「ローリング・ストーン」誌の記者となります。22歳の時に書いた小説「初体験/リッジモント・ハイ」がベストセラーとなり、映画化の際に脚本を担当、1989年に映画監督としてデビューして、次々と評価の高い作品を生み出します。・初体験/リッジモント・ハイ(1982年)脚本・セイ・エニシング(1989年)監督・脚本・シングルス(1992年)監督・脚本・ザ・エージェント (1996年)監督・脚本・あの頃ペニー・レインと(2000年)監督・脚本・・・彼の作品は若い世代を暖かな眼差しで描いたものが多いのですが、彼の代表作と言って良い本作では、彼自身の体験を基に音楽ライターをめざす純粋な少年の成長と初恋を描いてアカデミー脚本賞を受賞しています。この映画の原題は「Almost Famous」ですが、オープニング・クレジットでは「Untitled」と書かれています(「Almost Famous」は後に追加されたもの)。本作はキャメロン・クロウは4作目に当たり、これはレッド・ツェッペリンの4枚目のスタジオ・アルバム「レッド・ツェッペリンIV」が無題だったことにちなんだものですが、スタジオ側の意向により、主人公が取材したメジャー一歩手前でもがいているバンド「スティル・ウォーター」に因んだ「Almost Famous」に変更されました(彼らのツァー用のバスに「Almost Famous - Tour 73」というプレートが掲げられている)。邦題はビートルズ・ファンには音楽との関係を印象づけますが、ビートルズが直接関係する映画ではありません。ビートルズに詳しくない人には、むしろラブ・ストーリーの印象を受けるかもしれません。原題は音楽(バンド)寄りの印象ですが、実際、本作は両方の要素を持っています。 「Untitled」→「Almost Famous」→「あの頃ペニー・レインと」(邦題)とタイトルが大きく変遷していますが、邦題の核となっている「ペニー・レイン」は、主人公が思いを寄せる女性が名乗る名前です。「ペニー・レイン」は元々、1967年にビートルズが発表した14枚目のオリジナル曲*3で名前で、リバプールにあるペニー・レインという通りの名前の響きを気に入ったポール・マッカートニーが過ぎ去りし日々を思い出し作曲したものですが、女性の名前としても通る為、ロックファンの彼女がビートルズの曲であることを踏まえて名乗っているわけです。実は彼女は、ペニー・レイン・トランブルというキャメロン・クロウ監督の友人で、1970年代に「The Flying Garter Girls」というバンドをプロモートするグループを結成、有名なバンドに同行して全米を回っていた、実在の女性をモデルにしています。1990年代の後半、キャメロン・クロウ監督は「衝撃を受けたライブ」というテーマで、10代の時に母とともに行ったプレスリーとエリック・クラプトンのライブの記事を寄稿しようとしますが、文字数を大きくオーバーしてしまい、これを断念します。しかしながら、この原稿を書くうちに、彼自身と、彼の母と、彼が駆け出しの音楽ライターだった頃の話を脚本にすることを思いつき、後にこれを実現したのが本作です。本作には彼の体験が色濃く反映しており、実際にあった様々なことも織り込まれています。・引っ越しする姉が主人公に残すレコードは、キャメロン・クロウ監督自身のコレクション・ウィリアムに執筆依頼するローリング・ストーン誌の中国系アメリカ人は実在の人物(ベン・フォン・トレス)・ウィリアムにアドバイスする伝説のライターは実在の人物(レスター・バングス)・キャメロン・クロウ監督が最初にツァーに同行したのはポコ、次がオールマン・ブラザーズ(スティル・ウォーターというバンドが実在したが本作とは無関係で、許可を得てバンド名を使用している)・スティル・ウォーターのギタリスト、ラッセルのモデルはイーグルスのグレン・フレイ・キッスのエース・フレーリーがコンサート中に感電した・レッド・ツェッペリンのロバート・プラントがホテルのバルコニーで「I am a golden god!」と叫んだ・エディ・ヴェダーにステージ演奏の前にバンド仲間と組む円陣に引き込まれた・ザ・フーのツァーの際に同乗した彼らの飛行機が不時着しそうになったパトリック・フュジット(ウィリアム・ミラー)ユタ州ソルトレイクシティ出身、アイルランド系アメリカ人の俳優。11歳の頃より演技をはじめ、テレビや舞台にいくつか出演した後、本作の主役に抜擢されて映画デビュー。「Mushman」というバンドでも活動している。出演作はそれほど多くないが、最近では「恋人はセックス依存症」(2012年)、ゴーン・ガール(2014年)などに出演している。マイケル・アンガラノ(少年時代のウィリアム)ニューヨーク出身、イタリア系アメリカ人の俳優。7歳でテレビ、8歳で映画にデビュー、以降、コンスタントにテレビや映画で活動している。クリスティン・スチュワートと交際していたことがある。ケイト・ハドソン(ペニー・レイン)ロスアンジェルス出身のアメリカの女優。母は女優のゴールディ・ホーン、父は歌手のビル・ハドソンだが、両親は本人の幼少時に離婚、その後母が同棲している俳優のカート・ラッセルとを父親として公表している。本作でゴールデングローブ賞助演女優賞を受賞、アカデミー助演女優賞にもノミネートされている。「10日間で男を上手にフル方法」(2003年)など、ロマンティック・コメディ作品のヒットが多い。ペニー役は当初、サラ・ポリーで、彼女は主人公の姉役だったが、サラの都合がつかなくなり辞退したため、クリスティン・ダンストと競って、ペニー役を勝ち取った。ビリー・クラダップ(ラッセル・ハモンド、ロックスター)ニューヨーク出身のアメリカの俳優。1995年にブロードウェイデビュー、2007年にはトニー賞を受賞、最近では、「スポットライト 世紀のスクープ」(2015年)に出演している。ラッセル役は当初、ブラッド・ピットが演じる予定だった、十分に役を理解できないと降板、ビリーが起用された。彼をはじめとするバンドメンバーの俳優は、本物のバンドらしく見せるために一晩4時間のリハーサルを、週5日、6週間続けた。フランシス・マクドーマンド(エレイン・ミラー、ウィリアムの母)シカゴ出身のアメリカの女優。イーサン・コーエン監督の妻。「ファーゴ」(1996年)でアカデミー主演女優賞を受賞、「ミシシッピー・バーニング」(1988年)、本作、「スタンド・アップ」(2005年)でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされている他、エミー賞、トニー賞も受賞している。本作では彼女の役の解釈がぶれないようにと、キャメロン・クロウ監督は彼女と母が会わせないようにしたが、二人は撮影初日に一緒に昼食をとっていたと言う。駆け出しの10代の息子を心配する母親を、彼の女独特のユーモアを醸し出しながら見事に演じている。ジェイソン・リー(ジェフ・ベイブ)ロスアンジェルス近郊出身のアメリカの俳優。「チェイシング・エイミー」(1997)など、ケヴィン・スミス監督の作品に出演することが多かったが、最近ではアニメ映画の声優を務めることが多い。本作では、ポフリー&バッド・カンパニーのリードシンガーであるポール・ロジャースの動きを真似、パロディにならないように努めたと言う。アンナ・パキン(右、ポレキシア・アフロディシア)カナダ出身のニュージーランドの女優。「アナ・パキン」とも表記される。11歳で映画初出演した「ピアノ・レッスン」(1993年公開)でアカデミー助演女優賞を受賞している。ローグ/マリー・ダンキャント役で「X-MEN」シリーズ(2000年〜)に出演している。本作では、ペニー・レインの仲間を演じている。フェアルザ・バルク(サファイア)カリフォルニア州出身の女優。父親はペルシャ系のミュージシャン、母親はベリー・ダンサーで、「フェアルザ」とはペルシャ語でターコイズの意味で、彼女の青い目を象徴している。サンフランシスコ、バンクーバー、ロンドンで育ち、1985年。10歳の時にディズニー映画「オズ」のドロシー役に抜擢された。映画中心に活動している。本作では、ペニー・レインの仲間を演じている。ノア・テイラー(ディック・ロスウェル)ロンドン出身のオーストラリアの俳優。「シャイン」(1995年)で若き日のデイヴィッド・ヘルフゴットを演じて注目された。「プロポジション -血の誓約-」、「チャーリーとチョコレート工場」(いずれも2005年)、「サブマリン」(2010年)、「オール・ユー・ニード・イズ・キル」、「プリデスティネーション」(いずれも2014年)などに出演している。本作ではバンドマネージャー役を演じ、休憩時間中も役に入ったままだったという。ズーイー・デシャネル(アニタ、ウィリアムの姉)ロサンゼルス出身、フランス人の血を引くアイルランド系アメリカ人の女優、歌手。名前のズーイーはJ・D・サリンジャーの著作「フラニーとズーイー」に由来。父親はアカデミー撮影賞に何度もノミネートされている映画カメラマンのキャレブ・デシャネル、母親は女優のメアリー・ジョー・デシャネル、姉のエミリー・デシャネルも女優。1999年に映画デビュー、本作への出演で評価が高まる。「グッド・ガール」(2002年)、「エルフ 〜サンタの国からやってきた〜」(2003年)、「テラビシアにかける橋」(2007年)、「(500)日のサマー」(2009年)などに出演している。本作では主人公の姉を、コミカルに演じている。フィリップ・シーモア・ホフマン(レスター・バングス)ニューヨーク州出身のアメリカの俳優。「カポーティ」(2005年)でアカデミー主演男優賞を受賞、「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」(2007年)、「ダウト〜あるカトリック学校で〜」(2008年)、「マスター」(2012年)で助演男優賞にノミネートされている。素晴らしい俳優だったが、残念ながら、2014年に急逝、薬物の過剰摂取が原因と見られている。本作の出演部分は4日間で撮影されたが、風邪をひいている中、彼ならではの素晴らしい演技を見せている。テリー・チェン(ベン・フォン・トーレス)カナダ出身の映画、テレビ俳優。父親は台湾、母親は中国の出身。1999年に映画デビュー、本作での好演が俳優としてのキャリアのブレイクスルーになる。【サウンドトラック】ほとんどの映画の音楽予算は150万ドル以下と言われる中、本作では350万ドルをかけて豪華なサウンドトラックを実現、第43回グラミー賞で最優秀編集サウンドトラック・アルバム賞を受賞しています。 「あの頃ペニー・レインと」オリジナル・サウンドトラックCD 1. America - Simon and Garfunkel 2. Sparks - The Who 3. It Wouldn't Have Made Any Difference - Todd Rundgren 4. I've Seen All Good People: Your Move - Yes 5. Feel Flows - The Beach Boys 6. Fever Dog - Stillwater 7. Every Picture Tells A Story - Rod Stewart 8. Mr. Farmer - The Seeds 9. One Way Out - The Allman Brothers Band 10. Simple Man - Lynyrd Skynyrd 11. That's The Way - Led Zeppelin 12. Tiny Dancer - Elton John 13. Lucky Trumble - Nancy Wilson 14. I'm Waiting For The Man - David Bowie 15. The Wind - Cat Stevens 16. Slip Away - Clarence Carter 17. Something In The Air - Thunderclap Newman【撮影地(グーグルマップ)】・ウィリアムがペニーに初めて会ったコンサート会場・ウィリアムの家 「あの頃ペニー・レインと」のDVD(楽天市場)【関連作品】キャメロン・クロウ監督・脚本作品のDVD(楽天市場) 「初体験/リッジモント・ハイ」 (1982年) 「セイ・エニシング」(1989年) 「シングルス」(1992年) 「ザ・エージェント」 (1996年) 「あの頃ペニー・レインと」(2000年)
2016年11月18日
コメント(0)
![]()
「グランドフィナーレ」(原題:Youth – La giovinezza)は、2015年公開のイタリア・フランス・イギリス・スイス合作のドラマ映画です。エリザベス女王からの依頼を断ったという有名な指揮者の実話に着想を得て、パオロ・ソレンティーノ監督・脚本、マイケル・ケイン、ハーヴェイ・カイテル、レイチェル・ワイズ、ポール・ダノ、ジェーン・フォンダら出演で、妻への愛や葛藤に悩むベテランの音楽家が人生最後の大舞台に挑む姿をを描いています。第88回アカデミー賞で、主題歌賞にノミネートされた作品です。 「グランドフィナーレ」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:パオロ・ソレンティーノ脚本:パオロ・ソレンティーノ撮影:ルカ・ビガッツィ音楽:デヴィッド・ラング出演:マイケル・ケイン(フレッド・バリンジャー) ハーヴェイ・カイテル(ミック・ボイル) レイチェル・ワイズ(レナ・バリンジャー) ポール・ダノ(ジミー・ツリー) ジェーン・フォンダ(ブレンダ・モレル) ローリー・セラーノ(ディエゴ・マラドーナ) アレックス・マックイーン(女王の使者) ロバート・シーサラー(ルカ・モロダー) エド・ストッパード(ジュリアン・ボイル) パロマ・フェイス(本人役) マーク・コズレック(本人役) マダリーナ・ディアナ・ゲネア(ミス・ユニバース) スミ・ジョー(本人役) ヴィクトリア・ムローヴァ(本人役) ほか【あらすじ】・アルプスの高級リゾートホテルで休暇を過ごす作曲家フレッド・バリイジャー(マイケル・ケイン)のもとに、女王陛下からの勲章の授与と出演依頼が舞い込んで来ます。フレッドの名を世界中に知らしめた不朽の名曲「シンプル・ソング」を、フィリップ殿下の誕生日に指揮するという名誉あるオファーですが、指揮者として復帰する意欲はない彼は興味を示しません。BBC交響楽団の演奏で偉大なソプラノ歌手スミ・ジョーが歌うと言われてもフレッドはもう引退したからと頑なに拒みます。母国イギリスのロンドン、そしてニューヨーク、最後はヴェネチアの楽団で24年、作曲と指揮に持てる才能の全てを注ぎ込んだフレッドは、80歳となった今ではすっかり燃え尽きています。・ホテルの宿泊客は、今も世界中のヒーローである元サッカー選手やかつて大ヒットしたロボット映画の役名で呼ばれることにウンザリしているハリウッドスターのジミー・トリー(ポール・ダノ)などセレブぞろいです。そんな彼らは皆世間とは違う風変わりな事情を抱えています。フレッドの60年来の親友である映画監督のミック・ボイル(ハーヴェイ・カイテル)も同じホテルに宿泊していますが、現役を続けるミックは若いスタッフたちとともに自身が監督する最後の作品の脚本執筆に励んでいます。そんな中、フレッドは、父を心配する娘のレナ(レイチェル・ワイズ)が予約したマッサージやサウナ、健康診断を淡々とこなします。・何ごとにも無気力になってしまったフレッドの唯一の楽しみは、ミックとの昔話と悪ふざけ、そして歳を重ねたがために頭と体のあちこちに出て来た不具合自慢です。ある時、部屋へ戻ると、夫のジュリアンと旅行に出かけたはずのレナが泣きじゃくっています。フレッドは、ジュリアンの父であるミックに、君の息子が私の娘を捨てたと告げます。驚いたミックはすぐに息子を呼び出しますが、彼は新しい恋人を連れて来ます。フレッドはレナを慰めようとしますが、逆に不倫の真相を暴かれ、音楽が全てでママを一切顧みなかったパパに夫婦の愛情の何が分かるのかと激しく責められます。・フレッドのもとに女王の特使が再び現れ、頑として断りますが必至で食い下がる特使に遂にフレッドは本当の理由を語り出します。「シンプル・ソング」にまつわる母への想いを初めて聞いたレナは思わず涙します。そんな折、長年タッグを組んできたブレンダ・モレル(ジェーン・フォンダ)に主演を断られたミックの映画が製作中止に追い込まれます。ミックが選んだ結末に衝撃を受けたフレッドは、10年ぶりにヴェネチアに暮らす妻を訪ねます・・・。【レビュー・解説】豪華なキャスト、ロケーションで、美しく撮影された「グランドフィナーレ」は、荒削りだが魅力に溢れ、イタリア映画や経験豊富なベテラン俳優による新たな映画の可能性を示す作品です。リカルド・ムーティというイタリア人の指揮者がいます。フィルハーモニア管弦楽団、フィラデルフィア管弦楽団、スカラ座、シカゴ交響楽団の音楽監督を歴任、ウィーン宮廷楽団名誉音楽監督、ウィーン・フィル名誉団員という巨匠で、イギリス王室からナイトの称号も授与されているのですが、エリザベス女王の招聘を受けたものの演目の調整がつかず、演奏を辞退したことがあるそうです。パオロ・ソレンティーノはこの話に着想を得て、脚本を書きました。本作は辞退した理由を軸に展開しますが物語は完全にフィクションで、ソレンティーノ監督の独自の視点である「老い」がその底流をなします。「その全ての根底には、ある概念があった。その概念とは、年老いた者が持つ将来への展望だ。もう若くはないという年代になって、人は将来に対してどう関わっていくか。私がこの概念に魅力を感じていた理由は、若いうちは、年配の人が未来に立ち向かうことについてなど考えないし、ともかく年配の人が将来への展望と向き合っているとさえ思っていないからだ。でも私は逆に、どんなことなのか見てみようと考えた。80歳を生きる人たちが、明日に対して期待することについてね。」(パオロ・ソレンティーノ監督)人間は一般的に老い、死を忌み嫌うため、映画として成立しにくいのですが、ソレンティーノ監督は死生を巧みにブレンドしながら、これを見事な娯楽作品に仕立てあげています。彼はまず、・主人公とミックとの友情・娘への愛・そして10年も会っていない妻への愛をこの物語の三本の柱にし、マイケル・ケイン、ハーヴェイ・カイテル、レイチェル・ワイズ、ポール・ダノと痺れるようなキャスティング、さらにホテルに滞在する様々な人々やホテルで働く人々など、群像劇さながらに数多くの人物が登場、・老人と美女(ミス・ユニバース)・老いた監督と若い劇作家達・クラシックとポップス・恐怖と欲望・・・・など、対極にあるものや、・空中浮遊する修道僧・肥満で療養中の元サッカー選手(マラドーナがモデル)・踊る女マッサージ師・朴訥な登山家など求道的なものをブレンドしていきます。多分に象徴的であり、また一見、主題と強く関連付けていないように見えるものもありますが、耽美的なシーンや美しいアルプスの風景など、圧倒的な映像美でこれらをくくり、老いを扱いながらも辛気臭さを感じない、魅せる娯楽作品となっています。アカデミー賞外国語映画賞を受賞した前作、「グレート・ビューティー/追憶のローマ」(2013年)と死生観、歴史(時)、新旧のコントラスト、圧倒的な映像美と共通する部分があるものの、前作が非常に芸術性の高い作品だったのに対して、本作は世俗的な会話も多く、とっつきやすい作品です。時にそのテイストは論理的というよりも感覚的なものであり、舞台はスイスでイギリス人やアメリカ人俳優が多いのにもかかわらず、イタリア的なものを感じます。イタリア映画の一つの生き残り方を提示していると言っても良いかもしれません。また、・マイケル・ケイン(公開時82歳)・ハーヴェイ・カイテル(公開時76歳)・ジェーン・フォンダ(公開時77歳)と高齢の俳優が多く出演していますが、いずれも素晴らしいパフォーマンスを披露しています。医療技術や健康管理の進歩により、健康寿命が長くなっている昨今、本作のように高齢の俳優が活躍するチャンスがあり、次の世代に様々な影響を与えていくことは良いことではないかと思います。これも伝統を重んじる、ヨーロッパ映画だからこそ可能なのかもしれません。マイケル・ケイン(フレッド・バリンジャー)ロンドン出身の俳優。1933年生まれ。「ハンナとその姉妹」(1986年)、「サイダーハウス・ルール(1999年)でアカデミー賞助演男優賞を受賞している。シリアスな役からコメディまで演技の幅は広く、2000年にはナイトに叙され、エリザベス女王から Sir(サー)の称号を受けている。本作の格調高い音楽家を演じるのは彼以外にいないと、当初から彼の出演を前提に脚本が書かれている。ハーヴェイ・カイテル(ミック・ボイル)1939年、ニューヨーク生まれの俳優。オフブロードウェイの舞台に立っている時に、マーティン・スコセッシ監督と知り合い、以降、スコセッシ作品で存在感を発揮する。「地獄の黙示録」(1979年)の降板によりハリウッドから敬遠された時期もあったが「バグジー」(1991年)でアカデミー賞助演男優賞にノミネート、クエンティン・タランティーノ監督の「レザボア・ドッグス」(1991年)の出演・プロデュースにより映画俳優としての地位を完全に取り戻す。現在、アル・パチーノ、エレン・バースティンとともにアクターズ・スタジオの学長を務めている。本作では、主人公の親友の映画監督を演じている。レイチェル・ワイズ(レナ・バリンジャー)ロンドン出身の女優。ケンブリッジ大学在学時代に、演技に興味を持ち、劇団を結成。1995年に映画デビュー、「チェーン・リアクション」(1996年)でハリウッド進出、大ヒット作「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」(1999年)で国際的に名前が知られるようになる。イギリス映画「ナイロビの蜂」(2005年)でアカデミー賞助演女優賞を受賞している。ロマンティック・コメディやアクションなど様々な映画に出演しているが、役によって印象が微妙に異なる。本作では、二人の老俳優が醸し出す雰囲気によく馴染み、存在感がありながら可愛げのある主人公の娘役を演じている。ポール・ダノ(ジミー・ツリー)ニューヨーク生まれの俳優。11歳でブロードウェイの舞台に初出演後、舞台、映画でキャリアを積み、「リトル・ミス・サンシャイン」(2006年)の演技で注目される。「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(2007年)、「かいじゅうたちのいるところ」(2009年)、「LOOPER/ルーパー」(2012年)、「プリズナーズ」(2013年)、「それでも夜は明ける」(2013年)、「ラブ&マーシー終わらないメロディー」(2014年)などに出演、卓越した演技力で注目を集めている。パオロ・ソレンティーノ監督がカンヌ映画祭で出会い、惚れ込んで本作に起用、ホテルにこもって役作りをする俳優を演じている。二人の老俳優が醸し出す雰囲気によく馴染んだ演技はさすが。ジェーン・フォンダ(ブレンダ・モレル)1937年、ニューヨーク生まれの女優、作家、政治活動家。父のヘンリー・フォンダ、弟のピーター・フォンダ、姪のブリジット・フォンダも俳優。「ひとりぼっちの青春」(1970年) アカデミー主演女優賞ノミネート「コールガール」(1972年)アカデミー主演女優賞受賞「ジュリア」(1978年)アカデミー主演女優賞ノミネート「帰郷」(1979年 )アカデミー主演女優賞受賞「チャイナ・シンドローム」(1980年)アカデミー主演女優賞ノミネート「黄昏」(1982年)アカデミー助演女優賞ノミネート「モーニングアフター」(1987年)アカデミー主演女優賞 ノミネートと輝かしい経歴を持つ。アルパチーノの声がけで本作に出演、機内で泣き叫ぶシーンは圧巻で、年齢を超えた演技の可能性を感じる。ローリー・セラーノ(ディエゴ・マラドーナ)アルゼンチン出身の俳優。肥満で療養中のマラドーナを演じている。ソレンティーノ監督が16歳の時、別荘の暖房装置の事故で両親を亡くしているが、たまたまマラドーナの試合を見に行っていた彼は何を免れた。以来、ソレンティーノはマラドーナを命の恩人と慕い、本作では「スポーツ界の並外れた人物が出て来ると、シンプルな動きでも芸術作品になる」と天才への敬意を表現している。マダリーナ・ディアナ・ゲネア(ミス・ユニバース)ルーマニア出身の女優、モデル。本作ではホテルを訪れたミス・ユニバースを演じ、見事な肉体を惜しげなくも披露、「老い」に対して美しい生命力を誇示する。ルナ・ミヨヴィッチ(ホテルのマッサージ師)サラエボ出身の女優。 「サラエボの花」(2006年)で、ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞している。 本作では、ホテルのマッサージ師を演じる。手で触れることにより人とコミュニケーションできると言い、一人、踊りに励む。言葉ではなく音でコミュニケーションする主人公の音楽家に対置されている。パロマ・フェイス(本人役)イギリスのシンガー・ソングライター、女優。レトロでエキセントリックなスタイルで知られる。彼女の記事を書いたソレンティーノ監督の妻の紹介で、本作に出演、主人公の娘の夫を寝取るポップシンガー(本人役)を演じる。スミ・ジョー(本人役)ソウル出身のソプラノ歌手。ヘルベルト・フォン・カラヤンに見出され、以降、ゲオルク・ショルティ、ズービン・メータ、ロリン・マゼールなど名指揮者と共演、1993年にはグラミー賞を受賞している。本作では、主人公の「シンプル・ソング#3」のリードを務める。夢の中、水に浸るサンマルコ広場で、ミス・ユニーバーストとすれ違う主人公老(死)と生(性)など、対極にあるものを巧みにブレンドし、魅力的な作品にとなっている老監督と若い脚本家達夢の中で、老監督は彼の映画に出演した女優たちに会うジェーン・フォンダの圧倒的なパフォーマンス【サウンドトラック】2008年のピューリッツァー賞(音楽部門)受賞者であるアメリカ人作曲家デヴィッド・ラングが本作の為に作曲した楽曲が使用されています。「グレート・ビューティー/追憶のローマ」(2013年)でも彼の楽曲が使用されており、同作のオープニングシーンで挿入曲として流された「I lie」は、本作でも再び使用されている他、本作の鍵となる曲でエンディングで演奏される「シンプル・ソング#3」を手掛けており、この曲で第88回アカデミー賞で主題歌賞にノミネートされたました。また、ソレンティーノが脚本を書きながら聴いていたというシンガーソングライターのマーク・コゼレックと、ソレンティーノが妻から教えられたというポップスターのパロマ・フェイスは、共に本人役で出演し、演奏を披露しています。韓国出身のソプラノ歌手スミ・ジョーも本人役で出演、素晴らしい歌声を披露しています。 「グランドフィナーレ」サウンド・トラック(輸入盤)01 The Retrosettes Sister Band: "You Got the Love"02 Mark Kozelek: "Onward"03 Sun Kil Moon: "Third and Seneca"04 Des pas sur la neige –Preludes (Book 1): ClaudeDebussy05 SaverioMercadante: Cavatina 'Figlia ti scuoti' from“Viginia Act I”06 Maria Letizia Gorga: "A ma manière"07 The Retrosettes Sister Band: "Reality"08 Paloma Faith: "Can’t Rely on You"09 Mark Kozelek: "Ceiling Gazing"10 David Byrne: "Dirty Hair"11 Igor Stravinsky : "Berceuse From'The Firebird"12 David Lang / Trio Medieval: "Just (After Song of Songs)"13 Sumi Jo(Soprano)&Viktoria Mullova(Violin Solo): "Simple Song #3"14 David Lang: "Mick’s Dream" 15 David Lang: " Wood Symphony"【撮影地(グーグルマップ)】フレッドが宿泊するホテル(外観)温泉のシーンが撮影されたホテルフレッドが夢の中でミス・ユニバースとすれ違うシーンが撮影されたサン・マルコ広場ミックの仲間たちが列車に乗った駅 「グランドフィナーレ」のDVD(楽天市場)【関連作品】パオロ・ソレンティーノ監督作品のDVD(楽天市場) 「イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男」(2008年) 「グレート・ビューティー/追憶のローマ」(2013年) 「グランドフィナーレ」(2015年)マイケル・ケイン出演作品のDVD(楽天市場) 「ハンナとその姉妹」(1986年) 「サイダーハウス・ルール」(1999年) 「愛の落日」(2002年) 「バットマン ビギンズ」(2005年) 「トゥモロー・ワールド」(2006年) 「ダークナイト」(2008年) 「インセプション」(2010年) 「ダークナイト ライジング」(2012年)ハーヴェイ・カイテル出演作品のDVD(楽天市場) 「ミーン・ストリート」(1973年) 「タクシードライバー」(1976年) 「最後の誘惑」(1988年) 「テルマ&ルイーズ」(1991年) 「バグジー」(1991年) 「レザボア・ドッグス」(1992年) 「ピアノ・レッスン」(1993年) 「パルプ・フィクション」(1994年) 「ムーンライズ・キングダム」(2012年) 「グランド・ブダペスト・ホテル」(2014年)
2016年11月16日
コメント(0)
![]()
「ユー・キャン・カウント・オン・ミー」は、2000年公開のアメリカのヒューマン・コメディ&ドラマ映画です。ケネス・ロナーガン監督・脚本、マーティン・スコセッシ製作総指揮、ローラ・リニー、マーク・ラファロら出演で、幼い頃に両親が事故死、生まれ故郷の小さな町で弟と別れて暮らす、8歳の息子を育てる銀行員のシングルマザーの姉の下に、音信不通だった弟がひょっこりと現れて巻き起こす騒動を通して、姉の複雑な人間関係ととともに成熟した大人になりきれない二人の師弟の絆を等身大に描いています。第73回アカデミー賞で、アカデミー主演女優賞(ローラ・リニー)と脚本賞(ケネス・ロナーガン)にノミネートされた作品です。日本では劇場未公開ですが、ソフトで視聴できます。 「ユー・キャン・カウント・オン・ミー」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:ケネス・ロナーガン脚本:ケネス・ロナーガン出演:ローラ・リニー(サマンサ・プレスコット) マーク・ラファロ(テリー・プレスコット) マシュー・ブロデリック (ブライアン・エヴェレット) ジョン・テニー(ボブ) ロリー・カルキン(ロディ・プレスコット) J・スミス=キャメロン(マーベル) ジョシュ・ルーカス(ルディ・シニア) ギャビー・ホフマン(シェイラ) ケネス・ロナーガン(ロン) ほか【あらすじ】・サミーとテリーのプレスコット姉弟は、子供の頃、交通事故で両親を失いました。年月は流れ、サミー(ローラー・リニー)はシングルマザーになり、故郷のニューヨーク州のスコッツヴィルで銀行の貸付主任をしています。一方は、テリー(マーク・ラファロ)は、国中を放浪、トラブルに巻き込まれたりしながらも、なんとか暮らしています。・姉と何ヶ月も音信不通だった後、テリーはどうしても金が必要になり、姉の下を訪れます。サミーの息子ルディ(ロリー・カルキン)は、テリーとの再開を大喜びします。テリーはサミーが用立てた金を恋人に送りますが、恋人が自殺を企てたのを知り、滞在を延ばし、姉はこれを歓迎します。・学校の宿題の作文で、ルディは不在の父が格好いいヒーローだと空想します。サミーは、ルディに父の関して真実をあいまいにしていますが、テリーは父親に捨てられたということをルディに実感させます。サミーは古い恋人との関係を再開しますが、すぐにプロポーズされて当惑、考える時間がほしいと言います。・銀行では、新しい支店長のブライアン(マシュー・ブロデリック)が、コンピューターの画面の色や毎日の勤務表に関して厳しい要求を出し、存在感を露わにします。特にサミーには仕事を抜けだすのではなく他の誰かに子供の迎えを頼むよう、厳しく要求します。ブライアンには妊娠6ヶ月の妻がいますが、彼らは何度かの言い争いの後、情事に陥ります。・テリーはルディと親しくなり、サミーのしつけをかいくぐって、夜遅くにルディをプールバーに連れ出します。サミーは牧師(ケネス・ロナーガン)に、テリーの生き方について相談します。テリーは姉のアドバイスを聞かず、ルディとの関係を続けます。自分自身に疑問を感じるサミーは、恋人のロポーズを断り、ブライアントの関係にもケリを付けます。・テリーとルディは二人で魚釣りにいった後、ルディの父に会いに行きます。過去に直面したルディの父は激怒し、テリーはルディの父への暴行容疑で逮捕されてしまいます・・・。【レビュー・解説】「ユー・キャン・カウント・オン・ミー」は一見、ミニ・シアターで上映される小品のような印象ですが、無駄なく構成された感動的な脚本と、ローラ・リニーとマーク・ラファロの多彩なパフォーマンスに思わず引き込まれる、中身の濃い作品です。ニューヨークやロスアンジェルスなど、アメリカの大都市が次々と作り出す新たなライフスタイルは刺激的ですが、本作の舞台である田舎の小さな街のライフスタイルにはどこかしらほっとするものがあります。二人の故郷は、ニューヨーク州のはずれにあるスコッツヴィルのキャッツキルという架空のコミュニティで、町を行く人々が久しぶりに帰ってきた弟に声をかけるような地縁が残る小さな町です。姉は真面目に教会に通い、困ったことがあると牧師に相談に行き、彼女の働く銀行の前任の支店長は、彼女が息子を迎えに行く為に仕事を抜け出すのを容認する、そんな融通のきく町でもあります。・ニューヨーク州スコッツヴィル(グーグル・マップ)スコッツヴィルはニューヨーク州のはずれの田舎町。サミーとテリーは、孤児の施設で苦労しながらお互い助け合って育ちましたが、映画ではその部分は描かれておりません。突然、帰ってきたやんちゃな弟が巻き起こす騒動に当惑する姉自身も、不倫など様々な問題を抱えながら生きています。言ってみれば世の中に完全な人間などいない、このように不完全な人間同士が絡み合い、助け合いながら生きていく姿は感動的で、美しくさえあると感じさせる作品です。監督・脚本のケネス・ロナーガンは、ニューヨーク出身の劇作家、映画脚本家、監督で、高校の頃から書き始め、賞を受賞するなど、大学時代から頭角を現します。本作は彼の映画監督デビュー作で、一幕もの舞台劇(帰ってきたテリーが姉とレストランで食事するシーン)を、長編映画に膨らませたものですが、無駄のない構成でローラ・リニーとマーク・ラファロの魅力をフルに引き出す、舞台劇のよう密度の濃い作品になっています。ロナーガン自身も牧師役として出演していますが、どこかしら子供じみたところのあるサミーやテリーと対称的な思慮深く控えめ役をいい感じで演じています(セリフが長いので、彼の出演シーンはローラ・リニーとマーク・ラファロが、監督を務めたそうです)。マーティン・スコセッシの当時の恋人がロナーガンの舞台劇のオーディションを受けたのがきっかけで、スコセッシはロナーガンと友人となり、本作では製作総指揮を務めています。スコセッシが盾になることにより、スタジオの要求をブロックし、ロナーガンの思い通りの作品が実現したと言われています。主演のローラ・リニーはアメリカの女優で1992年に映画デビュー、「トゥルーマン・ショー」(1998年)などで注目されるようになりました。派手さはありませんが、コメディからシリアスまで幅広くこなす実力派女優で、本作でも多彩な表情を見せています。・本作「ユー・キャン・カウント・オン・ミー」(2000年)で主演女優賞・「愛についてのキンゼイ・レポート」(2004年)で助演女優賞・「マイ・ライフ、マイ・ファミリー」(2007年)で主演女優賞と、三度もアカデミー賞にノミネートされている他、インデペンデント系の映画「イカとクジラ」(2005年)の演技も高く評価されています。驚きは共演のマーク・ラファロです。当時、舞台を中心に活動していた彼はまだ無名でしたが、舞台での彼の演技を高く評価したロナーガン監督が本作に起用、一躍、注目を浴びました。本作での彼の演技は今ほど濃くはないのですが、多彩な表情を自然に演じてわけていることが手に取るようにわかり、彼の演技力が卓越したものであることがわかります。以降、「コラテラル」(2004年)、「ゾディアック」(2007年)、「ブラインドネス」(2008年)、「シャッター アイランド」(2010年)など数々の話題作に出演するようになり、・「キッズ・オールライト」(2010年)・「フォックスキャッチャー」(2014年)・「スポットライト 世紀のスクープ」(2015年)で、アカデミー助演男優賞にノミネートされています。タイトルの「ユー・キャン・カウント・オン・ミー」は、「私を頼っていいのよ」、「私を信じていいのよ」、「私に任せていいのよ」といった意味です。日本人にはあまり馴染みがない慣用句と思いますが、何故、そのままカタカナにして日本語タイトルにしてしまったのか謎です。恐らく、孤児としてお互い助け合って育ったたった一人のやんちゃな弟が問題を起こし、自身も様々な問題を抱えながらも自分を頼って欲しいという、姉の強い愛情を表現したもののと思われます。ローラ・リニー(サマンサ・プレスコット)マーク・ラファロ(テリー・プレスコット)マシュー・ブロデリック (ブライアン・エヴェレット)ケネス・ロナーガン(ロン)【撮影地(グーグルマップ)】撮影はニューヨーク州のマーガレットヴィルを中心に行われている。・サミーの通勤路 マーガレットヴィルのメインストリート。・サミーが働く銀行・テリーがバスから降り立った場所・サリーとテリーが待ち合わせたレストラン 「ユー・キャン・カウント・オン・ミー」のDVD(楽天市場)【関連作品】ケネス・ロナーガン監督・脚本作品のDVD(楽天市場) 「ギャング・オブ・ニューヨーク」 (2001年)・・・脚本のみ 「マーガレット」 (2011年) 「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(2016年)ローラ・リニー出演作品のDVD(楽天市場) 「トゥルーマン・ショー」(1998年) 「ミスティック・リバー」(2003年) 「愛についてのキンゼイ・レポート」(2004年) 「イカとクジラ」(2005年) 「アメリカを売った男」(2007年) 「マイ・ライフ、マイ・ファミリー」(2007年) 「Mr.ホームズ 名探偵最後の事件」(2015年)マーク・ラファロ出演作品のDVD(楽天市場)「エターナル・サンシャイン」(2004年) 「コラテラル」(2004年) 「ゾディアック」(2007年) 「キッズ・オールライト」(2010年) 「アベンジャーズ」(2012年) 「はじまりのうた」(2013年) 「フォックスキャッチャー」(2014年) 「ノーマル・ハート」(2014年)「スポットライト 世紀のスクープ」(2015年)
2016年11月14日
コメント(0)
![]()
「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」は、2015年公開のアメリカのドキュメンタリー映画です。マイケル・ムーア監督の六年間の沈黙を破る旅行記で、イタリア、フランス、フィンランド、チュニジア、スロヴェニア、ポルトガルなどでアメリカの社会経済の歪の解決策を模索しています。 「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:マイケル・ムーア脚本:マイケル・ムーア【あらすじ】数々の侵略戦争にもかかわらずアメリカはまったく良くならず、国防総省の幹部らは悩んだ挙句、政府の天敵である映画監督のマイケル・ムーアに相談します。幹部らの切実な話を聞いたムーアは国防総省に代わって自らが侵略者となり、世界各国へ出撃することを提案、大西洋を越えて一路ヨーロッパを目指します。侵略する国々と、手に入れるものは:・イタリア:労働者の権利と福祉ー有給休暇、有給の結婚休暇、13ヶ月目の月給、二時間の昼休み、育児休暇、ラルディーニの重役へのインタビュー、ドゥカティのクラディオ・ドメニカリへのインタビュー・フランス:学校給食・フィンランド:教育政策(ほとんど宿題がない、標準学力テストもない)、クリスタ・キウル教育大臣へのインタビュー・スロヴェニア:無償高等教育、リュブリャナ大学のイワン・スヴェトリク学長へのインタビュー、ボルト・パホール大統領へのインタビュー・ドイツ:労働者の権利とワークvsライフ・バランス、鉛筆製造会社ファブル・カステル訪問、ナチスドイツに関わる偽りのない歴史教育・ポルトガル:メイデイ、ドラッグ政策、死刑廃止・ノルウェイ:人道的収監システム、最小管理のバストイ刑務所、厳重管理のハルデン刑務所訪問、ウトヤ島テロ事件に対するノルウェイの反応・チュニジア:生殖を含む女性の権利、妊娠中絶とチュニジア革命、2014年のチュニジア憲法・アイスランド:力を持つ女性たち、世界初の民主的に選出された女性大統領ヴィグディス・フィンボガドゥティルへのインタビュー、レイキャビク市のベスト党ジョン・カナール市長へのインタビュー、2008年ー2011年のアイスランド財務危機と銀行家の犯罪捜査と刑事訴追、オラフル・ハウクソン特別検察官へのインタビュー・ベルリンの壁崩壊【レビュー・解説】六年間ぶりの新作「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」は、アメリカが抱える問題に関してソフトに老練に、しかしながら相変わらず精力的に臆面もなく一方的にアプローチする、コメディ・タッチのドキュメンタリーです。非常にコミカルな仕上がりを持つ作品で、最後までクスクス笑いながら見てしまいました。一口にアメリカと言っても、彼らの考え方は多種多様で、それらがダイナミックに動いているのですが、その中で忘れ去られているもの、ないがしろにされているものは少なくありません。本作の取材のテーマは多岐に渡り、掘り下げも一面的ですが、・フランスとアメリカの学校給食の比較。・競争のためではなく、幸せになるために子どもたちに勉強を教えるフィンランド。・ドイツの監査役会への労働者の参加。・ノルウェイのテロで子供を失った親の犯人への思い。など、目から鱗というものが少なくありません。また一連の取材から逆に浮かび上がるアメリカ観、それはムーア監督のアメリカ観でもありますが、非常に共感できるものです。例えば、アイスランドで彼がインタビューした女性CEOはカミソリのように鋭いアメリカ批判を行います。ムーア監督:アメリカ人に対して二分間、好きに話せるとしたら何という?女性CEO:・・・(考え込む)ムーア監督:遠慮はいらない、真実を述べて。女性CEO:ええ。例え、お金をもらってもアメリカには住まない。社会のあり方や国民の扱い方、隣人への接し方を見ると、住みたいとは思わない。御免だわ。同胞であるはずのアメリカ人を、大切にしていない。よく平気でいられると、不思議でならないの。沢山の人達が食事もなく、病院にも行けず、教育も受けられずにいる。なのになぜ平気なのか、理解不能よ。ムーア監督:平気じゃない・・・。女性CEO:なら良かった。平気でいいはずはないわ。ムーア監督が、行く先々で見出す発見の多くは、かつてアメリカに存在したものでした。何故、アメリカはそれらを失ってしまったのか、ムーア監督は次のように語っています。「完全に道を見失った。過剰に進んだ資本主義社会の中で、欲に目が眩んで、かつて手にした民主主義を手放してしまったんだ。そしてそれは僕たちだけじゃない。多くの国が、目標にすべき道を見失っている。自分のミッションは「その道」を探ることにあると思っている」。戦後の日本はアメリカの影響を強く受け続けており、その価値観も・年功序列→成果主義・伝統を重んじる→破壊的革新が繁栄を生む・調和を重んじる→競争が進化を生む・社会民主主義→自由民主主義(格差社会)・・・などと変化しつつありますが、自分たちが影響を受けているアメリカという国の個性が、他国との比較によってこのようにあぶり出されてくるのは今更ながら非常に興味深いことです。ドキュメンタリーは通常、中立の視点でアプローチし、判断を観客に任せることが多いのですが、マイケル・ムーアは彼が感じる疑問や問題点を徹底的に追求します。彼はGMの本拠地だったミシガン州の労働者階級の出身で、徹底した市民目線、本音ベースでの取材、しかも突撃取材という過激な方法での取材が多くの人を惹きつけたと言えます。しかしながら、・「ボウリング・フォー・コロンバイン」(2002年)でアメリカの銃規制・「華氏911」(2004年)でブッシュ政権のイラク対応・「シッコ」(2007年)でアメリカの医療保険を批判し、いずれも映画としては大成功したものの、銃の所持は依然として合法であり、ブッシュは二期の任期を満了、オバマ・ケアは医薬品業界に骨抜きにされる中、アメリカの資本主義を批判した「キャピタリズム〜マネーは踊る〜」(2009年)はリーマンショックという現実の大惨劇の後塵を拝してしまいます。無力感に苛まれたマイケル・ムーア監督は、一時、引退を考えましたが、本作で見事に復活しました。その理由について、彼は次の様に語っています。「「これが僕の最後の作品になるかもしれない」と言ったその意図は、これ以上アメリカ人が何もしないのであれば、もう僕は少数派としてひとりで声高に訴え続けるつもりはないということだったんだ。ただ、それから2年経って、ウォール街のOccupy Wall Street(ウォール街を占拠せよ)や、黒人による Black Lives Matter(黒人の命は大切だ)など、たくさんのデモ活動が行われ、何万人もの人が行動を起こした。つまり、僕はもはや少数派ではなく、多数派なんだと。僕はそれが非常に嬉しくて、多数派の一員としてもう一度行動を起こす必要があると思って、この映画を作るに至ったんだ。」一方、鋭い視点と市民目線の一面的なアプローチは健在なものの、突撃取材を含め、従来の攻撃的なスタイルは影を潜め、ソフトな語り口になっています。彼はアメリカの有り様に感じる怒りを破壊的なやり方で表現しましたが、それが直接の契機になって何かが変わることはありませんでした。しかし、2004年にブッシュ大統領が禁止しようとした同性婚が、2015年には連邦最高裁判所によって認められ、事実上、全米で同性婚が合法化されるなど、ベルリンの壁の崩壊やネルソン・マンデラの釈放のように昔は考えられなかったこと実現し、世の中は確実に変わっていることに気づきました。また、2014年に最愛の父を亡くし大きな衝撃を受けた彼は世代の交代を意識、リスクを犯して過激に一人で突っ走るのではなく、デモや活動などの若い人たちの動きを彼独自の一市民の視点で発展させていく方向に自分自身を位置づけるなど、心境の変化があったようです。「これまでの作品では、批評家たちに「君の作品は問題提起ばかりで、解決策については何も言っていない」と言われてきた。だから、解決策だけを描いた2時間の映画を作ってやろうと思ったんだ。外国を「侵略」することで、アメリカに解決策をもたらす。」「自分が少数派だという自覚はあるよ。実際にアメリカ人の70%はパスポートを持っていないし、外国に行ったことがない、だから世界の情勢に興味がないし、ほかの国の人たちがどんな生活をして何を考えているのか知らない。それだけ視野が狭いから「俺たちが一番で、俺たちが正義で、世界の中心だ」と思っている人は多い。でもそれは事実間違っているし、古い考え方だけじゃなく、独裁的で非常に危険な考えだ。でも僕の作品はアメリカの保守層にこそ、気に入ってもらえると思っているんだよ。なぜなら、僕はアメリカという国を愛しているし、なんとかよくしたいと思っているからね。」マイケル・ムーア監督とフランスの子どもたちマイケル・ムーア監督について・マイケル・ムーアは、アメリカのジャーナリスト、ドキュメンタリー映画監督、テレビプロデューサー、テレビディレクター、政治活動家で、2002年の「ボウリング・フォー・コロンバイン」でアカデミー長編ドキュメンタリー映画賞を受賞、2004年の「華氏911」ではカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞しています。・彼はゼネラルモーターズの生産拠点の一つであったミシガン州フリントでアイルランド系の家庭に生まれました。母は秘書、父と祖父は組み立て工、座り込みストライキで有名な叔父は自動車工労働組合創立者の一人でした。彼は1972年に高校を卒業、同年同校長と副校長の解雇を求めて教育委員会選挙に出馬し当選、任期終了までに校長と副校長を辞職に追い込みます。・その後、大学を中退、ジャーナリストを経て、1989年に生まれ故郷の自動車工場が閉鎖され失業者が増大したことを題材にしたドキュメンタリー映画「ロジャー&ミー」で監督としてデビュー、アポイントメントなしでゼネラルモーターズの企業経営者、ロジャー・B・スミス会長に突撃取材するスタイルが話題を呼びました。・その後、「ジョン・キャンディの大進撃」(1994年)で常に外敵を必要とするアメリカ政治を滑稽に笑い飛ばし、「ザ・ビッグ・ワン」(1997年)では「ロジャー&ミー」同様の方法で、国内の工場を海外移転して失業者を増やしながら利益をあげるグローバル企業の経営者たちを直撃取材しています。・1999年にはアメリカのロックバンドのPV撮影をニューヨーク証券取引所の前でゲリラ的に敢行、ニューヨーク市警察に逮捕され、ホワイトハウスのブラックリスト入りのきっかけとなりました。2000年以降、徹底したブッシュ批判を展開、2004年には「華氏911」を制作、公開します。2007年にはアメリカ政府当局の許可なしにキューバを訪問していたことが発覚し、財務省から捜査を受けます。・内部告発サイトウィキリークスを支持、全面支援を約束するとともに、2010年に拘留中のウィキリークス創設者ジュリアン・アサンジの保釈金を提供しています。2011年には、ニューヨークのウォール街で行われたデモに対して、拠点の公園を訪れ激励しています。マイケル・ムーア監督作品のDVD(楽天市場) 「ロジャー&ミー」(1989年)「ザ・ビッグ・ワン」(1997年) 「ボウリング・フォー・コロンバイン」(2002年) 「華氏911」(2004年) 「シッコ」(2007年) 「キャピタリズム〜マネーは踊る〜」(2009年) 「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」(2015年)マイケル・ムーアの著作(楽天市場) 「アホでマヌケなアメリカ白人」(2002年) 「おいブッシュ、世界を返せ!」(2003年) 「アホの壁 in USA」(2004年) 「華氏911の真実」(2004年) 「マイケル・ムーアへ―戦場から届いた107通の手紙」(2004年) 「どうするオバマ? 失せろブッシュ!」(2008年) 「マイケル・ムーア、語る。」(2013/10/24年)
2016年11月12日
コメント(0)
![]()
「ヒューゴの不思議な発明」(原題: Hugo)は、2011年のアメリカのファンタジー&アドヴェンチャー映画です。ブライアン・セルズニックの小説「ユゴーの不思議な発明」を原作に、マーティン・スコセッシ監督、ベン・キングズレー、エイサ・バターフィールド、クロエ・グレース・モレッツら出演で、1930年代のパリを舞台に、駅の時計台に隠れ住む少年が父の遺した機械人形の謎を追って繰り広げる不思議な大冒険を、ジョルジュ・メリエスはじめ映画創成期へのオマージュとともに、美しく幻想的な3D映像で描き出しています。第84回アカデミー賞では同年最多の11部門にノミネートされ、5部門で受賞を果たした作品です。 「ヒューゴの不思議な発明」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:マーティン・スコセッシ脚本:ジョン・ローガン原作:ブライアン・ セルズニック「ユゴーの不思議な発明」出演:ベン・キングズレー(ジョルジュ・メリエス(パパ・ジョルジュ)) エイサ・バターフィールド(ヒューゴ・カブレ) クロエ・グレース・モレッツ(イザベル) サシャ・バロン・コーエン(鉄道公安官) レイ・ウィンストン(クロードおじさん) エミリー・モーティマー(リゼット) ヘレン・マックロリー(ママ・ジャンヌ) クリストファー・リー(ムッシュ・ラビス) マイケル・スタールバーグ(ルネ・タバール) フランシス・デ・ラ・トゥーア(エミーユ夫人) リチャード・グリフィス (ムッシュ・フリック) ジュード・ロウ(ヒューゴの父) ほか【あらすじ】・1930年代、雪のパリ。モンパルナス駅の時計台に隠れて暮らす孤児ヒューゴ・カブレ(エイサ・バターフィールド)は、亡き父が遺した機械人形とその修理の手がかりとなる手帳が心の支えでした。彼は駅の構内を縦横無尽に行き来して、大時計のねじを巻き、カフェからパンや牛乳をくすねては、駅を行き来する人々の人間模様を観察する毎日を過ごしていました。・ある日、ヒューゴは駅構内の玩具屋から機械人形を修理する為の部品をくすねようとして、店の主人ジョルジュ(ベン・キングズレー)に捕まってしまい、修理の為の手帳も取り上げられてしまいます。ジョルジュは、手帳に描かれた機械人形のスケッチを見て言葉を失い、鉄道公安官につきだして施設送りにすると脅して追い返します。奪われた手帳が諦めきれないヒューゴは、ジョルジュの後を尾行し、彼の家へとたどり着きます。そこで出会ったジョルジュ夫妻の養女、イザベル(クロエ・グレース・モレッツ)は、ヒューゴの話に興味を持ち、手帳を取り戻す協力をしてくれると言います。・翌日、再び玩具屋でジョルジュと会ったヒューゴは、壊れた玩具を修理する課題を与えられます。ヒューゴは学芸員だった父仕込みの修理の腕前を発揮し、ジョルジュは玩具屋の手伝いをしたら手帳を返してやると言います。仕事の手伝いを続けるながら、彼はイザベルと親しくなり、本の虫で映画も見たことが無いという彼女を連れて、映画館に忍び込んだりします。・機械人形の修理がほとんど済んでいましたが、人形のぜんまいを巻くためのハート型の鍵がありませんでした。ところがヒューゴはある日、イザベルが身に着けていたペンダントにまさしくハート形の鍵がついているのを発見します。早速、機械人形に鍵を差し込みぜんまいを回してみると人形はペンを片手にすらすらと絵を描きだします。出来上がった絵には、月にロケットが突っ込んでいる様子が描かれており、それはかつてヒューゴの父が語ってくれたある映画のシーンそのままでした。そして最後に機械人形は、絵の隅に「ジョルジュ・メリエス」とサインします・・・。【レビュー・解説】孤児の冒険という古典的なテーマを、1930年代のパリを舞台に時計や機械人形のメカとVFXを駆使しながら豪奢に美しく描くとともに、初期の映画史を通して映画への愛をうたった、巨匠マーティン・スコセッシ監督のこれまでのイメージを覆す名作です。1930年代のパリ、時計や機械人形のメカ、孤児の冒険、映画の歴史などなど、2時間に収まりきれないほどの夢がてんこ盛りに詰まった映画です。バイオレントな題材を扱うことが多いスコセッシ監督が、60歳を過ぎてから初めて取り組んだ子供が見れる映画であり、また3DV-VFXを用いた映画でもありますが、新たな挑戦をしてもなお、美しい作品に見事にまとめ上げる力は、巨匠の巨匠たる所以を感じさせます。マーティン・スコセッシ監督は、「タクシードライバー」(1976年)「レイジング・ブル」(1980年)「キング・オブ・コメディ」(1983年)「グッドフェローズ」(1990年)「カジノ」(1995年)「アビエイター」(2004年)「ディパーテッド」(2006年)「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(2013年)など、数々の名作を生み出してきましたが、矛盾した現実の中で善良に生きることの難しさを描いた作品が多く、生々しくリアルな暴力が描かれることが少なくありません。また彼自身も怒りっぽく、怒りに任せて機材を壊してしまうこともあるなど、シチリア系イタリア移民の家に生まれ、マフィアの支配するイタリア移民社会で育ったことが、彼の人格形成と作品に双方に影響しているとも言われています。そんなスコセッシ監督ですが、女優イザベラ・ロッセリーニなどとの4度の離婚を経験した後、1999年に結婚した現在の妻ヘレン・モリスとの間に生まれた娘、フランチェスカを目に入れても痛くないほど可愛がっており、彼女の為に映画を選んでは毎週末に自宅で上映するほどです。「何故、娘が見れるような映画を撮らないの?」と、妻ヘレンに言われたスコセッシ監督は、大人と子供が一緒に見れる映画を撮ることを考えました。マーティン・スコセッシ監督(左)とフランチェスカ(右)原作の著者、ブライアン・セルズニックはアメリカの絵本作家で、機械人形のコレクターでもあるジョルジュ・メリエスの死後、美術館に寄贈されたコレクションが、最終的に廃棄されてしまったことを知り、「ユゴーの不思議な発明」の着想を得ました。話自体は創作ですが、メリエスの生涯についてはほぼ史実に基づいており、ページを繰るごとに冒険が進む無声映画のようなスタイルで書き上げ、2007年にこれを発表しました。フランチェスカが8歳、スコセッシ監督が64歳の時でした。原作の絵本「ユゴーの不思議な発明」娘と一緒にこの本を読んだスコセッシ監督は、映画にしたいと思うほど惹きつけられました。「フランチェスカが見れるような映画、彼女と一緒に我々も見れるような映画を作れるといいと思ったんだ。彼女が「ユゴーの不思議な発明」のページをめくるのをみて(284枚の絵がある)、反応が得られるだろうと思ったんだ。子供向けの映画じゃない、子供が大人と一緒に見る映画だ。それで映画化に動いたんだ。」(マーティン・スコセッシ監督)スコセッシ監督が惹きつけられたのは、主人公のヒューゴが駅に隠れてそこから密かに世の中の人々を眺めるような暮らしをしている点でした。子供の頃、喘息持ちだったスコセッシは、他の子供達と一緒に遊ぶことが出来まず、自宅の三階の窓から見える風景を人生のパノラマのように見ていたといいます。さらに彼は、当時の最新技術に挑戦し続けた手品師、ジョルジュ・メリエスも気に入り、彼自身にとっての新技術である3Dに初めて挑戦する気になりました。「ヒューゴが時計の裏側から世界を眺める様を見て、この映画を作ろうと思ったんだ。」「メリエスは実は手品師だが、映画カメラの可能性を理解していたんだ。彼は基本的にすべてを発明した。彼が構成したフレームや動きを見ていると、映画の原稿に光が与えれ、動き出したかのようだよ。」「語りの要素のひとつとして3Dを使いたいと思ったんだ。我々はこうして3Dの世界にいる。と同じように。メリエスが色や音や動きをうまく使ったように、3Dをうまく使えるんだ。カメラが奥行きの要素を与えてくれるんだ。」(マーティン・スコセッシ監督)時計の裏から世の中を見る毎日映画の舞台はパリのモンパルナス駅。メリエスは晩年、実際にこの駅で玩具屋を営んでいました。1960年代に再開発され、当時の駅舎は残っていない為、撮影はロンドンのスタジオに制作されたセットで行われています。時計の歯車に凱旋門から放射状に伸びる街路の夜景がオーバーラップし、エッフェル塔からモンパルナス駅にパン、再度エッフェル塔を臨む遠景にカットバックし、駅舎の反対側から駅舎の内部にズームインしていき、大時計の文字盤から駅舎を覗き込むヒューゴのアップで終わる、VFXを駆使したオープニングシークェンスは圧巻です。1000台のコンピューターを使ってレンダリング、一年かけて制作されたと言われるシーンです。なお、ヒューゴが悪夢で見る列車が車止めを越え、駅舎の中を暴走、約10m下の通りに落下する事故は、1895年に実際に起きたものです。モンパルナス駅の列車事故(1895年)父がヒューゴに残した機械人形の仕掛けは、スイスの時計職人、ジャケ・ドローの機械人形の影響を強く受けています。彼は本業である時計やシンギングバードの販売促進のため、ジャン・フレデリック・レショー、息子とともに1768年から1774年にかけて機械人形を製作しました。彼らが製作した機械人形は、3体が実際に動作する状態でヌーシャテルの歴史博物館に展示されています。これらは・ドロワー(1773年製): 約2,000個のパーツからなり、実際に絵を描くことができる・音楽家 :(1774年製):約2,500個のパーツからなり、人形の指が鍵盤を押して演奏する・ライター(1772年製):40個のカム、約6,000個のパーツからなり、文章を書くことができる映画の機械人形は実際に絵を書いたり、文字を書いたりしますが、これは空想の産物ではなく、既に18世紀にはこれほど複雑な複雑な動きをする人形が作られていたことは驚きに値します。映画ではゼンマイ動力の機械人形をコンピューター制御で動かしていますが、期待通りに動かす為に8体の試行錯誤を経て製作されたそうです。なお、ジャケ・ドローの時計工場は19世紀半ばに閉鎖されましたが、後に復興、現在はスウォッチ・グループの傘下で貴重な時計ブランドとして残っています。ジャケ・ドローの機械人形、ライターのメカジャケ・ドローの時計セラミック グランドセコンド パワーリザーブノアールリミテッド 時計(楽天市場)映画では機械人形が、顔のある月にロケットが突き刺さった絵を描きますが、これはメリエスが監督した世界初のSF映画「月世界旅行」(1902年)のワンシーンで、その他にも、映画史の出発点となったフランス人のリュミエール兄弟による「ラ・シオタ駅への列車の到着」(1896年)や、バスター・キートン、チャップリンらのサイレント映画、さらにはフィルムをひとコマずつ着色した古いカラー映画のワンシーンなどが紹介されており、ちょっとした映画史も楽しむことができます。機械人形が描く「月世界旅行」の絵ベン・キングズレー(ジョルジュ・メリエス(パパ・ジョルジュ))エイサ・バターフィールド(ヒューゴ・カブレ)クロエ・グレース・モレッツ(イザベル)サシャ・バロン・コーエン(鉄道公安官)エミリー・モーティマー(リゼット)ヘレン・マックロリー(ママ・ジャンヌ)クリストファー・リー(ムッシュ・ラビス)マイケル・スタールバーグ(ルネ・タバール)ジュード・ロウ(ヒューゴの父)フランチェスカもちょっとだけ出演【動画クリップ(YouTube)】オープニング・シークェンス〜「ヒューゴの不思議な発明」ジャケ・ドローの機械人形(ライター)ジョルジュ・メリエス「月世界旅行」リュミエール兄弟「ラ・シオタ駅への列車の到着」【撮影地(グーグルマップ)】1930年代にモンパルナス駅があった場所ヒューゴの夢の中の列車事故のシーンヒューゴの父が働いていた博物館設定ではパリだが、撮影にはロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館が使用されている。ヒューゴとイサベルが映画の歴史を調べる図書館パリのサント・ジュヌヴィエーヴ図書館で撮影されている。エンディングの劇場パリのソルボンヌ大学の大講堂で撮影されている。 「ヒューゴの不思議な発明」のDVD(楽天市場)【関連作品】マーティン・スコセッシ監督作品のDVD(楽天市場) 「ミーン・ストリート」(1973年) 「タクシードライバー」(1976年) 「ラスト・ワルツ」(1978年) 「レイジング・ブル」(1980年) 「キング・オブ・コメディ」(1983年) 「アフター・アワーズ」(1985年) 「最後の誘惑」(1988年) 「グッドフェローズ」(1990年) 「エイジ・オブ・イノセンス/汚れなき情事」(1993年) 「カジノ」(1995年) 「アビエイター」(2004年) 「ディパーテッド」(2006年) 「ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト」(2008年) 「ヒューゴの不思議な発明」(2011年) 「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(2013年)
2016年11月10日
コメント(0)
![]()
「ロブスター」(原題:The Lobster)は、2015年公開のギリシャ・フランス・アイルランド・オランダ・イギリス合作のSF恋愛映画です。ヨルゴス・ランティモス監督、ヨルゴス・ランティモス/エフティミス・フィリップ共同脚本、コリン・ファレル、レイチェル・ワイズ、レア・セドゥら出演で、パートナーを見つけるためにホテルに拘束された独身の男が体験する出来事と、新たな恋の行方を描いています。第68回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した作品です。 「ロブスター」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:ヨルゴス・ランティモス脚本:ヨルゴス・ランティモス/エフティミス・フィリップ出演:コリン・ファレル(デイヴィッド) レイチェル・ワイズ (近眼の女) ジョン・C・ライリー (滑舌の悪い男) ベン・ウィショー(足の悪い男) ジェシカ・バーデン(鼻血を出す女) レア・セドゥ(独身者のリーダー) アリアーヌ・ラベド(メイド) アンゲリキ・パプリア(薄情な女) エマ・オシア(鼻血を出す女の親友) オリヴィア・コールマン(ホテルのマネージャー) マイケル・スマイリー(独身者) ロジャー・アシュトン=グリフィス(医者) イーウェン・マッキントッシュ(ホテルの警備員) ほか【あらすじ】家庭を持ち、子孫を残すことが義務付けられた近未来。妻に捨てられてしまった男デイヴィッドは、社会のルールに従い、街はずれにあるホテルへと送られます。そこでは45日以内に自分の配偶者となる人を見つけなければならず、見つけられなかった場合は自分で選んだ動物に姿を変えられて森に放たれることになります。デイヴィッドは他の参加者と共に配偶者となる人を見つけようとしますがうまくいかず、独身者の暮らす森へと逃げ込みます。森では独身者のリーダーが決めた「恋愛禁止」のルールがありますが、彼はそれを破り、独身者の一人である「近眼の女」と恋に落ちてしまいます・・・。【レビュー・解説】極端な設定と強烈な演出で一見不可思議ながらスリリングに展開する本作は、社会と男女関係と心理という普遍的な問題を扱う、野心的な作品です。人は群れをなして暮らす社会的な動物ですが、人間社会はその維持、繁栄の為に、時に個人に対して様々な圧力を生みます。「ロブスター」では、・独身者にパートナーを見つけることを促す社会的な圧力・相手を見つけるべく、独身者が自分自身に課する圧力に焦点をあて、・「独身者はホテルに収容され、45日以内に相手を見つけないと、動物に変えられる」・「独身者はパートナーを得るべく、相手との共通点を見出すことに必死になる」・「ホテルから脱走した独身者のコミュニティでは恋愛禁止である」・「相手との関係に執着するあまり、共依存に陥る」という極端な設定で、社会的圧力と反発、男女関係の心理について問いかけています。タイトルは、主人公デイヴィッドが相手が見つからない場合にロブスターになることを希望したことに由来します。彼はロブスターを希望する理由として、・100年以上生きる・貴族のように高貴である・生涯を通して生殖可能である・海が好きで、10代の頃から水泳や水上スキーが得意を挙げています。当初、この映画の脚本には、主人公がロブスターになって別れた妻とその新しいパートナーに食べられてしまうというオチがついていたそうです。それはそれで面白そうですが、このオチは脚本検討の早い段階で消え、二人の共同脚本家はあらゆる展開の可能性を検討したといいます。実際、恋愛と社会のあり方を囲い込むなど、この脚本はストーリー展開に論理的な枠組みを持っていることがわかります。「ロブスター」の枠組み主人公のデイヴィッドは、妻に逃げられ、ホテルに収容された冴えない中年男で、コリン・ファレルはこの役を演じる為に約9キロ増量しています。独身者のコミュニティのリーダーをレア・セドゥ、そこでデイヴィッドと恋に落ちる近視の女をレイチェル・ワイズと、スター女優が演じていますが、リアリティを出すためにほとんどが自然光、ノーメイクで撮影されています。極端な設定にもかかわらず、見るものをグイグイと惹きつけるのは、プロットの展開の妙とともに、彼らの現実感溢れるパフォーマンスによるものでしょう。「ロブスター」は、「さて、どう考えればいいと思う?」と言わんばかりに、目の前に大きな問題をボンと放り出して来ます。果たして正解があるのかどうか、ヨルゴス・ランティモス監督は次のように語っています。「何が理想であるか、私にもわかりません。我々にとってより有益な問いは、我々がどのように社会を作って来たのか、その中でどのように振る舞って来たのか、人々に何を期待し、どう扱うのかです。この世に生まれ、教育を受け、様々なことに慣れ親しんでいますが、それに疑問視することができます。何がより正しいか、人々は考える権利があります。反乱を起こすことも、ルールに従うことも常に正しいとは限りません。自分で考えて、自分に当てはまらないことを明確にしなければならないのです。」何やら、民主主義の発祥の地であるギリシア出身の監督らしいく、哲学的な(?)問いかけですが、彼の意図に従って少し考えてみました(以下は映画の枠組みに従った筆者個人の考え方で、映画が示す結論ではありません)。人間はロブスターのように生きることができるのか?「貴族のように高貴で、100年以上生き、生涯を通して生殖可能」なロブスターは、ある意味、魅力的な存在でもあります。本作ではデヴィッドは人間にとどまろうと努力し、ロブスターのような生き方について表立った問題提起はなされていませんが、面白いのでちょっと考えてみました。もし人間のままでロブスターのように生きられるならば、それはひとつの理想かもしれません。しかし、人間とロブスターには大きな違いがあります。ロブスターは一度に一万個から十万個の卵を産み、一年ほど卵を腹に抱えて育てた後、一気に大自然に放ちます。つまり、大自然の中で成長する過程で卵や幼生が淘汰されても種が保存できるように数多く産むシステムで、彼らはいわゆる育児をしません。したがって、交尾した雄が雌に添い遂げて育児をすることもありません。一方、人間は一度に生む子供の数は通常、一人と少なく、育児にも手間がかかります。種の保存の為には、女性の出産後も男性が女性に連れ添い、女性とその子供に対して社会的、経済的な保護を行う必要があります。相手を見つけないとならないのか?恋愛→結婚→出産→育児がワン・パッケージで考えられていた時代とは異なり、現代は妊娠・出産を伴わない自由恋愛が可能な時代です。個人的体験としての恋愛はともかくとして、社会的利益が不確かな恋愛を促す為に社会が個人にプレッシャーをかける意味はあまりありません。また、アメリカでは60ドルもあれば精子バンクから受胎の為の精子を入手できますので、社会が独身者に対して相手を見つけるように理不尽なプレッシャーをかけることは非効率的なことです。社会は、恋愛や結婚の関係にあろうがなかろうが、持続可能性に直接的に貢献する出産と育児を行う男女をより手厚く保護すべきです。これは税収の一部を出産や育児のコストに充当する富の再分配によって実現するもので、独身者にも持続可能な社会に貢献してもらうことを意味します。人々は、・出産や育児を直接分担せず、納税で持続可能な社会に貢献するか・税の減免や各種補助を受けて出産・育児を直接分担するのいずれかを選択でき、社会は再分配率で出生率を調整して持続可能な社会を実現します。社会はそれ以外のプレッシャーを独身者にかけるべきではありません。恋愛をしてはならないのか?恋愛は自然な人間の本能であり、自由恋愛であろうが、出産・育児を前提としたものであろうが、社会に迷惑をかけない限り、社会は恋愛を制約すべきではありません。また、従来の結婚は、基本的に男女の一生を縛るものでしたが、最近では、・生理学的に恋愛感情が持続するのは、女性が男性の助力を必要とする出産後数年までである・女性の自立により、経済的問題が解決できれば、以降は必ずしも男性の助力を必要としないと言われています。社会は従来の結婚の枠にとらわれず、婚外子、精子バンクの利用、代理出産なども視野に入れて、出産や育児保護を厚くすることを考えれば良いのであり、恋愛や結婚に干渉すべきではありません。また、女性の自立に伴い、人生半ばでの離婚はより自然な現象となってくると思われますが、これは人生半ばからの新たな恋愛の機会を提供するものでもあります。人々が中年以降の生き方にも選択肢を持ち、豊かな後半生を実現できるようにする為にも、社会は恋愛を制限すべきではありません。共通点を見出さなければならないのか?相手との共通点を持つことにより、お互いに惹かれ合い、うまくやっていける機会が増えると考えられます。それは人生の目的ではありませんが、恋愛関係に限らず、社会生活を営んでいく上で有益な、人間関係を円滑にするスキルのひとつです。人間関係を円滑にするスキルは、若い人のパートナー獲得のみに必要なものではありません。女性の自立により離婚が容易になる中で、関係を維持していく為にも生涯有効となるスキルです。また、主人公のデイヴィッドのようにパートナーと離別しても、人生半ばで新たな恋愛の機会を得る、生涯有効なスキルでもあります。但し、生涯独身でもかまわない、仲間も必要ないという人にはさして重要ではないスキルかもしれません。男女関係はどうあるべきなのか?人間は幸か不幸か、恋愛→結婚→出産→育児といった一連のプロセスを分離することができるようになりました。結婚や出産、育児を前提としない自由恋愛も可能ですし、人生半ばで離婚し、新たなパートナーと後半生を過ごすこともできます。一般に恋愛は競争であり、ロブスターの雄も受精させる雌を巡って熾烈な争いを繰り広げますが、人間結婚→出産→育児という枠に縛られることなく、友情から自由恋愛まで幅広い男女関係を構築することができます。たった60ドルの価値しかない精子を提供をする為に(あるいは提供を受ける為に)、相手探しに腐心し、厳しい競争を繰り広げることは、もはや人間にとってあまり意味のないことかもしれません。むしろ、相手とうまくやっていけるスキルを身につければ、様々な男女関係をから自分に合ったものを選択して、動物より豊かに人生を過ごすチャンスに恵まれていると言えます。特定の人との関係に固執して、共依存に陥る必要もないのです。どのような関係を選択するかはあくまでも個人の自由で、社会に求められているのは個人に理不尽なプレッシャーをかけることではなく、恋愛の結果であろうがなかろうが出産と育児を手厚く保護し、社会が持続可能な出生率をコントロールすることです。コリン・ファレル(デイヴィッド)レイチェル・ワイズ (近眼の女)ジョン・C・ライリー (滑舌の悪い男)ベン・ウィショー(足の悪い男)ジェシカ・バーデン(鼻血を出す女)レア・セドゥ(独身者のリーダー)アリアーヌ・ラベド(メイド)アンゲリキ・パプリア(薄情な女)エマ・オシア(鼻血を出す女の親友)【撮影地(グーグル・マップ)】デイヴィッドが送り込まれたホテル 「ロブスター」のDVD(楽天市場)【関連作品】ヨルゴス・ランティモス監督作品のDVD(楽天市場) 「籠の中の乙女」(2009年)コリン・ファレル出演作品のDVD(楽天市場) 「マイノリティ・リポート」(2002年) 「ヒットマンズ・レクイエム」(2008年) 「クレイジー・ハート」(2009年) 「セブン・サイコパス」(2012年)レイチェル・ワイズ出演作品のDVD(楽天市場) 「アバウト・ア・ボーイ」(2002年) 「ナイロビの蜂」(2005年) 「MI5:消された機密ファイル/PAGE EIGHT」(2011年) 「愛情は深い海の如く」(2011年)レア・セドゥ出演作品のDVD(楽天市場) 「ルルドの泉で」(2009年) 「シモンの空」(2012年) 「マリー・アントワネットに別れをつげて」(2012年) 「アデル、ブルーは熱い色」(2013年) 「美女と野獣」(2014年)
2016年11月08日
コメント(0)
![]()
「ムーンライズ・キングダム」(原題:Moonrise Kingdom)は、2012年公開のアメリカのコメディ映画です。ウェス・アンダーソン監督、ウェス・アンダーソン/ロマン・コッポラ共同脚本、ブルース・ウィリス、ビル・マーレイら出演で、駆け落ちした12歳の男女と、彼らを心配する親や周囲の人々の姿をユーモラスに描いています。第85回アカデミー賞で、脚本賞にノミネートされた作品です。 「ムーンライズ・キングダム」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:ウェス・アンダーソン脚本:ウェス・アンダーソン/ロマン・コッポラ撮影:ロバート・D・イェーマン出演:ジャレッド・ギルマン(サム・シャカスキー) カーラ・ヘイワード(スージー・ビショップ) ブルース・ウィリス(シャープ警部) エドワード・ノートン(ウォード隊長) ビル・マーレイ(ウォルト・ビショップ) フランシス・マクドーマンド(ローラ・ビショップ) ティルダ・スウィントン(福祉局員) ジェイソン・シュワルツマン(いとこのベン) ハーヴェイ・カイテル(ピアース司令官) ボブ・バラバン(ナレーター) ほか【あらすじ】1965年、アメリカのニューイングランド沖に浮かぶニューペンザンス島。12歳のスージー・ビショップ(カーラ・ヘイワード)は、厳格で堅い父ウォルト(ビル・マーレイ)と、口うるさくせわしない母ローラ(フランシス・マクドーマンド)、そして3人の幼い弟たちと海沿いの大きな屋敷で暮らしています。スージーの趣味は本を読んで自分の世界に浸ることと、双眼鏡で遠くを観察することです。ある日、スージーは双眼鏡で母とシャープ警部(ブルース・ウィリス)の密会を目撃します。同じ頃、ウォード隊長(エドワード・ノートン)率いるボーイスカウトのキャンプ地では、隊員の一人が置き手紙を残して姿を消します。1年前、ボーイスカウトの活動で劇を観に行ったサム・シャカスキー(ジャレッド・ギルマン)とカラス役で出演していたスージーは、わずかな言葉を交わしただけで惹かれ合い文通を開始しました。二人は1年にわたる手紙のやりとりを通して密かに駆け落ちの計画を練っていました。草原で落ち合った二人は「3.25海里 潮流口」を目指して愛の逃避行に出ます。手つかずの自然が残ったその美しい入江を「ムーンライズ・キングダム」と名付けた二人は、海に飛び込み、絵を描き、本を読み、夢を語り合い、ダンスを踊り、初めてのキスをします。翌朝、二人がいなくなったことに気付いた大人たちは右往左往、ビショップ夫妻は娘が誘惑されたとウォード隊長に食って掛かりますが、ボーイスカウトの少年たちによって二人は見つかり、離ればなれにされてしまいます。サムの両親は里親で「変わり者のサムはもう引き受けられない」と言い、福祉局(ティルダ・スウィントン)は問題児のサムは少年収容所に戻される可能性が高いと言います。長年、孤独な生活を送ってきたシャープ警部は身寄りのないサムを預かり語り合い、スージーも自分の思いを母親に打ち明けます。サムをのけ者にしていたボーイスカウトのメンバーたちもサムに同情するようになり、ウォード隊長に内緒で二人の駆け落ちを手助けし、スージーとサムは、小さなボートで島からの脱出を図ります・・・。【レビュー・解説】映画は空想の記憶。完璧な構図・色調の中で、ウェス・アンダーソン監督の独特な世界を二人の子役と豪華なアンサンブルキャストが美しく演じた、暖かく、風変わりで、感動的なコメディです。ブルース・ウィリスの最も好きな映画のひとつと言われる本作は、かつて少年だった男性を楽しくて幸せな気分にさせる映画ではないかと思います。冒険あり、サバイバルあり、そして何よりも大好きな女の子と駆け落ちしてしまうと言う、スリリングで楽しい映画です。それは風刺でもなければ、ほろ苦い少年の思い出でもない、いわば空想の記憶といった、現実に汚れない純粋なものです。「12歳の自分が観たら心を掴まれる映画だと思います。彼らは映画を自分自身の経験に結びつけることができます。大人は昔を思い出し、もっともらしいと感じてくれればと思います。」「先週のカンヌ映画祭で、ある人に「空想の記憶」と言われましたが、その通りだと思います。この年令、この学年の時の感覚を覚えています。実際に起ったことではありません。私にはその頃、起こるかもしれないことを空想をしました。この映画はその登場人物の一人が描いたものだと思います。」(ウェス・アンダーソン監督)アンダーソン監督や共同脚本のロマン・コッポラが、少年の頃に好きな女の子との駆け落ちを空想したかどうかは謎ですが(きっとしたにに違いない)、スージーに手を焼く両親が読む「問題児への対処の仕方」というパンフレットをスージーが発見するのはアンダーソンの監督自身が経験したことであり、またスージーの母親が家の中で拡声器を使って話すのは、ロマン・コッポラの母エレノア、つまりフランシス・フォード・コッポラの妻が実際にやっていたことであり、彼らの経験がしっかりと脚本に織り込まれています。アレハンドロ・イナリトゥ監督同様、ウェス・アンダーソン監督はイギリス映画「小さな恋のメロディ」の大ファンで、「ムーンライズ・キングダム」はウェス・アンダーソン版「小さな恋のメロディ」と言っていいほど、大きな影響を受けています。「小さな恋のメロディ」は、後にハリウッドで監督として成功したアラン・パーカーの脚本デビュー作で、恋をした11歳の男の子と女の子を中心に子供たちの純粋な行動が周囲の大人たちをとまどわせ、困らす数々の事件を描いています。本国でもアメリカでもヒットせず、日本で大ヒットしたという珍しい作品ですが、最近では欧米でもその価値が見直されている名作です。大きな影響を受けているとは言え、展開するのは完全にウェス・アンダーソンの世界です。彼の作品の特徴のひとつにアングルや構図の妙がありますが、これはロバート・D・イェーマン撮影監督との気心の知れたタッグに秘密があります。イェーマンは、・アンソニーのハッピー・モーテル(1996年)・天才マックスの世界(1998年)・ザ・ロイヤル・テネンバウムズ(2001年)・ライフ・アクアティック(2004年)・ダージリン急行(2007年)・ムーンライズ・キングダム(2012年)・グランド・ブダペスト・ホテル(2014年)と、ウェス・アンダーソン監督のすべての実写作品の撮影監督を務めています。ウェス・アンダーソン監督は、通常、撮影地の近くに邸宅を借り上げ、そこに編集室を作って、撮影監督とともに寝泊まりして作業します。これはお互いが目指すものを理解するだけではなく、編集の際の議論を次の撮影にフィードバックし、より完全な世界を実現するには非常に効果的な方法かと思います。通常、ウェス・アンダーソン監督は撮影したイメージを絵コンテにして、それをセットアップ、撮影に落とし込んでいくのですが、イェーマン撮影監督はその過程でアンダーソン監督が何を好んで、何を好まないか、知り尽くしていると言います。因みに、通常、出演者には別にホテルを準備するのですが、「ムーンライズ・キングダム」の撮影期間中には、ビル・マーレイ、エドワード・ノートン、ジェイソン・シュワルツマンは、同じ家の空いている部屋に住み着いたと言います。彼らが実際に監督の編集ぶりを見て、その考え方を理解、次の撮影に活かすというのも、ウェス・アンダーソンの世界実現に有益であるだけではなく、チームの強い絆が育まれるのではないかと思います(彼の作品に限らず、小さな町での撮影でスタッフ・キャストの絆が深まるという話はよく聞く)。ウェス・アンダーソンの世界の実現はキャストの選択から始まります。本作が初めての映画出演である子役の二人、ジャレッド・ギルマン、カーラ・ヘイワードも見事にウェス・アンダーソンの世界を演じていますが、「完璧な子役がいないと、この映画は成り立たない」と、長年、アンダーソン監督の仕事をしているキャスティング・ディレクターとともに時間をかけて探し当てたと言います。この二人で行けると直感したアンダーソン監督は、ボーイスカウトの役を演じるギルマンには料理、カヌーなどボーイスカウトの活動、読書家の少女を演じるヘイワードには何冊かの本の読む課題を与えたと言います。子役のキャラクターを押さえ、次に基本行動を抑えて、リハーサルで役を作り込んでいくアプローチです。二人の子役のパフォーマンスも素晴らしいのですが、・「ダイハード」シリーズ他で有名で、エミー賞とゴールデングローブ賞を二度受賞し、サターン賞に四度もノミネートされているブルース・ウィリス・オスカー女優のフランシス・マクドーマンド(1996年「ファーゴ」)・同じくオスカー女優のティルダ・スウィントン(2007年「フィクサー」)・オスカー候補のエドワード・ノートン(2014年「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」他)・同じくオスカー候補のビル・マーレイ(2003年「ロスト・イン・トランスレーション」)・同じくオスカー候補のハーヴェイ・カイテル(1991年「バグジー」)・同じくオスカー候補のボブ・バラバン(2001年「ゴスフォード・パーク」)という脇役のアンサンブル・キャスティングが豪勢です。二人の子供に振り回される大人をコミカルに演じる彼らのパフォーマンスを見ていると、そこはかとない暖かさ、優しさが感じられ、さながら子どもたちの夢を祝福しているかのようです。ジャレッド・ギルマン(サム・シャカスキー)カーラ・ヘイワード(スージー・ビショップ)ブルース・ウィリス(シャープ警部)エドワード・ノートン(ウォード隊長)ビル・マーレイ(右、ウォルト・ビショップ)とフランシス・マクドーマンド(左、ローラ・ビショップ)ティルダ・スウィントン(福祉局員)ジェイソン・シュワルツマン(いとこのベン)ハーヴェイ・カイテル(ピアース司令官)ボブ・バラバン(ナレーター)シンメトリー(左右対称)が基本の映像ウェス・アンダーソンの映像は、左右対称のシンメトリーを基本に、それをアレンジしたものが多い。カラーやシャープネスも微妙にコントロールされ、統一感を出している。サムとスージーの出会い劇の楽屋にサムがスージーを訪ねていく。少女たちの扮装といい、セットアップといい、如何にもウェス・アンダーソンらしい画作りだ。いざ、駆け落ちに出発二人は如何にも真剣なのだが、その出で立ちの差がコミカルだ。サムの捜索に出発サムが所属していたボーイスカウトが、彼の捜索に向かう。エドワード・ノートンの隊長ぶりが秀逸。結婚式を挙げるサムとスージーアメリカでは12歳では法的に結婚できないが、そんなことは二人には関係ない!二人がムーンライズ・キングダムと名付けた入江【サウンドトラック】 リンク先で試聴できます「ムーンライズ・キングダム」オリジナル・サウンドトラック(楽天市場) 1.≪青少年のための管弦楽入門≫作品34から 主題A-F 2.キャンプ・アイバンホー・ケイデンス・メドレー 3.≪シンプル・シンフォニー≫作品4から 第2楽章:遊び好きのピツィカート 4.カウ・ライジャ (MONO) 5.≪ノアの洪水≫作品59から<ノアよ、汝の一族と方舟に入るべし> 6.ザ・ヒロイック・ウェザー~コンディションズ・オブ・ザ・ユニバース パート1:ア・ヴェイルド・ミスト 7.同 パート2:スモーク/ファイヤー 8.同 パート3:ザ・ソルト・エアー 9.歌劇≪真夏の夜の夢≫作品64から<地べたの上でぐっすり眠れ> 10.ロング・ゴーン・ロンサム・ブルース (MONO) 11.≪動物の謝肉祭≫から第10曲<大きな鳥かご>] 12.恋の季節 13.≪音楽に寄せて≫ 14.ランブリン・マン (MONO) 15.≪金曜日の午後≫作品7から<エイブラム・ブラウン老> 16.ザ・ヒロイック・ウェザー~コンディションズ・オブ・ザ・ユニバース パート4~6:サンダー、ライトニング、レイン 17.≪ノアの洪水≫作品59から<涯しも知られぬ> (抜粋) 18.≪ノアの洪水≫作品59から<ノアよ、汝の妻と子と共に方舟を出でよ> (抜粋) 19.≪青少年のための管弦楽入門≫作品34から フーガ 20.≪金曜日の午後≫作品7から<かっこう!> 21.ザ・ヒロイック・ウェザー~コンディションズ・オブ・ザ・ユニバース パート7:アフター・ザ・ストーム【撮影地(グーグル・マップ)】スージーの家サムが野営していたキャンプ・イヴァンホーが撮影された場所サムとスージー、そしてサムの仲間が訪ねていったキャンプ・レバノン嵐を避けてボーイスカウト達が避難した教会サムとスージーが「ムーンライズ・キングダム」と名付けた入江 「ムーンライズ・キングダム」のDVD(楽天市場)【関連作品】「ムーンライズ・キングダム」に大きく影響を与えた作品のDVD(楽天市場) 「小さな恋のメロディ」のDVD(楽天市場)ウェス・アンダーソン監督・脚本作品 「「アンソニーのハッピー・モーテル」(1996年) 「天才マックスの世界」(1998年) 「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」(2001年) 「ファンタスティック Mr.FOX」(2009年) 「ムーンライズ・キングダム」(2012年) 「グランド・ブダペスト・ホテル」(2014年)
2016年11月07日
コメント(0)
![]()
「デッドプール」(原題:Deadpool)は、2016年公開のアメリカのアクション・コメディ映画です。マーベル・コミックの同名キャラクターを基に、ティム・ミラー監督、ライアン・レイノルズ、モリーナ・バッカリンら出演で、怪しい組織の人体実験によって不死の肉体を手に入れた型破りなスーパー・ヒーロー、デッドプールの活躍を、ユーモアたっぷりに描いています。 「デッドプール」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:ティム・ミラー脚本:レット・リース/ポール・ワーニック原作:ファビアン・ニシーザ/ロブ・ライフェルド出演:ライアン・レイノルズ(ウェイド・ウィルソン / デッドプール、傷を治癒する能力を持つ) モリーナ・バッカリン(ヴァネッサ、ウェイドのガールフレンド、ストリッパー) エド・スクライン(フランシス・フリーマン/エイジャックス、人工のミュータントを製造) T・J・ミラー(ウィーゼル、ウェイドが行きつけの酒場の店主) ジーナ・カラーノ(エンジェル・ダスト、女性ミュータント、フランシスの側近) レスリー・アガムズ(ブラインド・アル、盲目の老婆、コカインを常用、ウェイドと同居) ブリアナ・ヒルデブランド(ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド,X-MEN訓練生) ステファン・カピチッチ(コロッサス、X-MENのメンバー、デッドプールをX-MENへ勧誘) カラン・ソーニ(ドーピンダー、タクシーの運転手、インド系) ジェド・リース(リクルーター、エイジャックスの配下、ウェイドを実験に誘う) ロブ・ヘイター(ボブ、ウェイドと旧知の傭兵、既婚者で子供がいる) ほか【あらすじ】運転手に「デッドプール」と名乗った真っ赤なコスチュームの男が、タクシーで到着したのはハイウェイの上。デッドプールは、そこで宿敵への復讐を果たそうとします・・・。その2年前、かつて特殊部隊の有能な傭兵だったウェイド・ウィルソン(ライアン・レイノルズ)は第一線を引退後、ニューヨークで好き勝手に悪い奴を懲らしめては、金を稼ぐというヒーロー気取りの生活を送っていました。そんなウェイドは高級娼婦のヴァネッサ(モリーナ・バッカリン)と出会い愛し合い結婚の約束をしますが、幸福な未来を夢見たのも束の間、原因不明の痛みに襲われたウェイドに医師が下した診断は、全身にガンが転移しているという事実でした。余命わずかとなり、激しく落ち込むウェイドは、酒場に来たリクルーターの男の誘いに乗り、がんの治療と引き換えに極秘の人体実験の被験者となることを決め、ヴァネッサの前から姿を消します。ウェイドは、余命宣告を受けた者たちに人体実験で肉体改造をを施し、戦闘マシンとして売り飛ばす施設に案内され、施設を仕切るエイジャックス(エド・スクライン)というミュータントの男に薬品を投与され、変異を誘発する為に拷問を受けます。ウェイドの細胞は変異し、どんな攻撃を受けても回復できる肉体を手に入れますが、引き換えに全身が爛れた醜い姿に変異します。怒りが収まらないウェイドは、エイジャックスとの激しい戦いの末、施設から逃亡しますが、ヴァネッサに素顔を見せる勇気がなく、再会を避けて盲目の老婆アル(レスリー・アガムズ)の家に居候します。ウェイドは自作のマスクで顔を隠し、「デッドプール」と名乗って、エイジャックスを探し始めます。元の肉体を手に入れ、もう一度、ヴァネッサと幸せな生活を送りたいという思いに突き動かされ、エイジャックスへの手がかりを見つけては、次々と敵を倒していきます・・・。【レビュー・解説】スピーディで可笑しく、喜々として冒涜的、「デッドプール」は第四の壁とともに大人向けのエンタメでスーパーヒーローのステレオタイプを荒々しく打ち破る、エモーショナルなアクション・コメディです。冒頭、クォリティの高いストップ・モーションの3D-VFXアクション・シーンに、揶揄するかのようなクレジットが重なります。・some douchebag's film(お馬鹿映画、douchebagは原義が膣洗浄用器具の強烈な形容)・starring God's perfect idiot(主演:愚かなる神の申し子) 背景に「ライアン・レイノルズ、世界一セクシーな男」という見出しのピープル・マガジン・a hot chick(共演:熱いイイ女)・a British villain (共演:イギリス人の悪党) ・the comic relief(お笑い担当の男)・a moody teen(不機嫌なティーン)・a CGI character(CGキャラクター)・a gratuitous cameo(友情カメオ出演)・produced by asshats(制作:間抜けども)・written by the real heroes here(脚本:本当のヒーローたち)・and directed by an overpaid tool(ギャラ貰いすぎの役立たず)背景に「Hi! I'm Deadpool.」(やあ、俺はデッドプール)という手書きの絵が出て、本編に突入します。本格的なストップ・モーションの3D-VFXアクション・シーンと、何やら本音を晒すようで楽しげなこのクレジットの組み合わせに、思わず本編への期待が高まりますが、まさにこのオープニング・クレジットが本編の本格的なアクションVFXと強烈なユーモアを象徴しています。加えて、背伸びしたスーパーヒーローの意識を持てない主人公の、時に冒涜なほどな正直な感情や言葉の発露がこの作品の特徴であり、アクション、ユーモア、感情がこの作品の三大要素だと、主演のライアン・レイノルズは語っています。「そこには、3つの重要な要素があると思ってる。まず素晴らしいアクションだね。他の映画に比べて洗練され過ぎていなくて、直感的でリアルなんだ。それと、とてもエモーショナルな作品だということも大事。だけど、映画を観た直後、観客はそういったことにすぐには気づかない。なぜなら、最高におかしいユーモアたっぷりの映画だからさ! この3つの要素(アクション、感情、ユーモア)が機能することで、正しい『デッドプール』が出来上がっているんだ。デッドプールを、観客が感情移入できる状況に置き、なぜ彼が追い詰められているかを観客が理解するようにすれば、彼はもっと自由になって、おかしいことをできるようになる。そうすればうまくいくんだ。映画としてハートを維持出来るしね。そういったことが観客に伝わったんだと思う。」(ライアン・レイノルズ)また、オープニング・クレジットの最後に「Hi! I'm Deadpool.」(やあ、俺はデッドプール)という手書きの絵が出てきますが、このように主人公のデッドプールが「第四の壁」を破って観客に話しかけて来るのも本作の特徴です。「第四の壁」は、舞台用語で、フィクションである演劇内の世界と観客のいる現実世界との境界を表します。通常、観客はこの第4の壁を通して演じられる世界を見ることになりますが、デットプールはその「第四の壁」を越えて、現実世界の映画の観客に話しかけてきます。本作では、オープニング・クレジットを含めて、その回数が26回にも及び、破天荒だが憎めない悪友のような、身近に感じられる効果を生み出しています。主演のライアン・レイノルズは、バンクーバー出身のカナダ人俳優で、1993年に映画デビュー、「ラブ・ダイアリーズ」(2008年)、「アドベンチャーランドへようこそ」(2009年)、「[リミット]」(2010年)、「ワイルド・ギャンブル」(2015年)など、評価の高い作品への出演も多いのですが、・「ブレイド3」(2004年)・「ウルヴァリン・X-MEN ZERO」(2009年)・「グリーン・ランタン」(2011年)と、出演したアメコミ映画は不作続きでした。彼と「デッドプール」の出会いは、2004年にまで遡ります。当時、「デッドプール」の権利を持っていたニューライン・シネマの重役たちが「知っておくべきだよ!君がデッドプールなんだから!」と言って送ってきたコミックの中に、「俺はライアン・レイノルズとシャー・ペイを混ぜたように見える」という、デッドプールのセリフがありました。コミックを読み続けていくうちに、彼に完全に感情移入してしまい、ただでもこの役をやりたいと思ったといいます。その後、リスク回避の為にまず「ウルヴァリン・X-MEN ZERO」でデッドプール役を紹介してから、デッドプールの単独映画をやることになりました。もともと、デッドプールは善悪に偏らない道化回し的なキャラクターで、自分がコミックのキャラクターだと認識しており、第四の壁を破って読者に語り掛けたり、編集部に文句を言ったりもするのですが、「ウルヴァリン・X-MEN ZERO」のデッドプールは縫われた口が癒着、一言も喋れなくされており、意識も奪われてパソコン端末からの指令に従って行動するというもので、レイノルズがやりたいものでも望むものでもありませんでした。この映画は他の「ウルヴァリン」シリーズをほど評判が良くなく、「デッドプール」の単独映画化も難しくしてしまいました。しかしながら、これまで40本以上の作品に出演、プロデューサーとしての手腕も持つレイノルズが根気よく説得した結果、ついにスタジオはオーケーを出します。「スタジオは、それまでの10年間はずっと「ダメ」と言い続けて、多分あまりにも僕たちがしつこいんで根負けしたんだと思う(笑)「ぎりぎりの予算を出すから、映画を作って来い。もう我々をほっといてくれ」って感じでね。僕たちとしては大喜びさ。現場に誰も指図する人もいなかったし、規制する人もいない。」(ライアン・レイノルズ)2億ドル近くとも言われるハリウッド産スーパーヒーロー映画と比べ、本作の制作費は約5,800万ドルという低予算でしたが、制作費のかなりの部分を占めるVFXについて、・登場するX-MENのメンバーの数を絞る・登場するX-MENの特殊能力はVFXのコストがかからないものにする・上映時間を大作映画より20−30分短い105分に抑えることにより、クォリティを落とすことなく費用削減する一方で、主役のデッドプールの個性を徹底的に押しだし、R指定に臆することなく、暴力的、冒涜的、性的な表現も取り込んでいます。「デッドプールは冗談ばかり言ってるけど、どこか心に響くものもある。彼のユーモアは痛みを覆い隠すためのものなんだ。すごく大事に思ったのは、ヤツがただ可笑しいことを言ってるだけのキャラだと、映画としてまとまりがなくなってしまう。まずは現実に根ざした男にしたかったんだ。その後、解放して思いっきり自由にやらせるためにね。」「普通、人間って酷いことを考えても、脳のどこかでフィルターにかけて「それは口に出して言ってはいけない」と規制しているんだ。でも、デッドプールはそれを完全に無視している。言いたいことは何でも言ってしまう。そこが爽快だね。あと、デッドプールはアンチヒーローで、良いヤツではないけど、悪いヤツとも言えない。僕は道徳的に柔軟性があるキャラクターを演じるのが楽しかった。しかも、これは珍しいことだよね。コミックの世界、特にマーベル・コミック、X-MENの世界はみんな極端に良いヤツばかりだ。そんな世の中にデッドプールを送り出せたのは良かった。肝っ玉が据わったヤツがひとりくらい居てもいいんじゃない?」「今作を初めて観たとき、僕は泣いてしまったよ。今までずっと思い続けていた、夢見ていたデッドプールだったからね。コミックからそのまんま抜け出してきたみたいだった。」(ライアン・レイノルズ)アベンジャーズ・プロジェクトやX-MENシリーズなど大作映画は、出演するヒーローの数が多く、上映時間も長くなるため、費用を回収するために観客を集めようとR指定を避け、過激な表現を抑えます。「デッドプール」は、そんな大作映画の隙を突くことになりました。「今、ハリウッドでは実に多くのスーパーヒーロー映画が作られていて、(観客の)飽きがピークに達してきている。でも『デッドプール』はその手のジャンル映画やスーパーヒーローに比べて、少し変わった見方で作られていて新鮮だ。だから公開タイミングも、とてもラッキーだったね。」(ライアン・レイノルズ)全世界興行収入は7億6,000万ドルを突破し、「X−MEN」シリーズ8作目にして歴代最高、さらにR指定作品としても「マトリックス・リローデッド」(2003年)を抜いて歴代1位のヒット作となりました。まさに絵に描いたように企画とタイミングのツボを押さえた作品と言えます。ライアン・レイノルズ(ウェイド・ウィルソン / デッドプール)デッド・プール(破天荒だが憎めないキャラクター)ウェイド・ウィルソン(デッドプールの素顔)原作コミックで「ライアン・レイノルズとシャー・ペイを混ぜたように見える」と表現される。「今回のメイクデザインはオスカーも受賞しているアーティストのもので、彼は天才だ。でも最初に予定していたメイクよりは随分と抑えたものにした。これに関してはスタジオ側から「ちょっと顔が気持ち悪すぎる。」という意見が出たからなんだ。結果的には良かったと思う。人間らしさが崩れ、大切なものをすべて奪われて、二度と愛を取り戻せないと彼が感じるようにしたかった。顔のメイクだけでも4時間かかった。」(ライアン・レイノルズ)シャー・ペイモリーナ・バッカリン(ヴァネッサ、ウェイドのガールフレンド、ストリッパー)エド・スクライン(フランシス・フリーマン/エイジャックス、人工のミュータントを製造)T・J・ミラー(ウィーゼル、ウェイドが行きつけの酒場の店主)ジーナ・カラーノ(エンジェル・ダスト、女性ミュータント、フランシスの側近)レスリー・アガムズ(ブラインド・アル、盲目の老婆、コカインを常用、ウェイドと同居)ブリアナ・ヒルデブランド(ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド,X-MEN訓練生)ステファン・カピチッチ(コロッサス、X-MENのメンバー、デッドプールをX-MENへ勧誘) 【動画クリップ(YouTube)】オープニング・クレジット〜「デッド・プール」流出した「デッドプール」のテスト撮影「デッドプール」のVFXメイキング映像デッドプール 1/6スケール プラスチック製 可動フィギュア(楽天市場)【撮影地(グーグルマップ)】戦闘シーンが撮影されたハイウェイストーカーから救った少女がいたトンネルの中のスケート場ウェイドがヴァネッサの後を追った通りヴァネッサのアパートブラインド・アルのアパートX-MENの学校最終決戦の舞台となったスクラップ置き場 「デッドプール」のDVD(楽天市場)【関連作品】「X-MEN」シリーズ(旧三部作)のDVD(楽天市場) 「X-MEN」のDVD(2000年) 「X-MEN2」 (2003年) 「X-MEN: ファイナル ディシジョン 」(2006年)「X-MEN」シリーズ(新三部作)のDVD(楽天市場) 「X-MEN: ファースト・ジェネレーション 」(2011年) 「X-MEN: フューチャー&パスト」(2014年) 「X-MEN:アポカリプス」(2016年)「X-MEN」スピンオフ・シリーズのDVD(楽天市場) 「ウルヴァリン: X-MEN ZERO」(2009年) 「ウルヴァリン: SAMURAI」(2013年) 「デッドプール」(2016年)・・・本作 「ウルヴァリン第3弾」(2017年公開予定)ライアン・レイノルズ出演作品のDVD(楽天市場) 「ラブ・ダイアリーズ」(2008年) 「アドベンチャーランドへようこそ」(2009年) 「[リミット]」(2010年) 「ワイルド・ギャンブル」(2015年)
2016年11月02日
コメント(0)
全13件 (13件中 1-13件目)
1


