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「烏賊」 知人にミサエさんという『拝み屋がいるが、彼女が引っ越すという。 『別に引っ越したいわけじゃないの。神在月はそこに居なきゃいけなくなったの』 いつも指定されるイタリアンレストランのチェーン店にやってくるなり、ミサエさんは溜息。 『あのね、今日呼んだのは、最後の忠告をしにきたの』 『烏賊みないな姿のものが両手を広げるようにして、あんたを迎い入れよとしている・・・』 『なんで、僕がその烏賊もどきに狙われなくちゃいけないんですか?』 『美味しいんじゃないの、あんたが聞いたり書いたりしている話って。ひとつふたつなら 薄味だけど、百も二百も集めたら、酒のアテにはたまらないでしょう。ま、仕方ないよ』 あんた、早死にするかもね。 そこだけちょっぴり寂しそうな口調で言うと、残りのパスタを一気にたいらげ、彼女は 店を去っていった。
2019.02.24
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「冗談」 お客様のYさんには、親戚一同から『愛すべきジジイ』と呼ばれているおじいさんがいた。 『つねに笑顔で、怒っているところは誰も見たことがない。というよりも、いつもふざけているから 真面目なところを見たことがない』とYさん談。 そんな愛すべきおじいさんは五年前に亡くなった。 そんなおじいさんの三回忌の法要終了後に、ひょっこり親戚の間からおじいさんが現れた。 『え?じいさんなんでいるの?』 『俺の家に俺がいるのは当たり前だろ!』 『ちょっと待って。じいさん死んでいるよね?』 『あちゃー、そうだったな。忘れてた』 おじいさんが笑い出すと、その場にいた全員も笑ってしまった。 『んじゃ、死んだことを思い出したことだし、そろそろ俺はあの世に帰るかな』 そう言うと、Yさんの弟の右腕をグッと掴む。 『一人は寂しいからコイツを連れて帰るわ・・・』 その言葉に全員が言葉を失った。 『じいさん、それはダメだ』 『寂しいのはわかるけど、連れて行くな!』 弟は掴まれた腕を振りほどくことができないようだ。 『なんてな・・・冗談だ!』 おじいさんは、また笑い出した。みんなが笑ったのを確認すると・・・ 『あー、笑った。んじゃ、お前たち死ぬまで生きろよ』 そう言うと、ふっと消えてしまったそうだ。 『匠平さん、死んで幽霊になってもじいさんは<愛すべきジジイ>でしたよ』 Yさんは嬉しそうに、この話を締めくくった。
2019.02.23
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「舞台袖にて」 ある俳優さんから伺った話。 彼の大学は自前の小劇場を備えており、演劇科の学生がたびたび芝居の公演を行っていたそうだ。 その日の公演は、役者も裏方も、いつもより忙しく動く必要のある構成だった。 舞台での演技の後、袖に入ってすぐに着替えを行い、再び舞台に飛び出なければならない役者もいて 終始バタバタしっぱなしという状況。 そんな中、早着替えを行わなければならない役者の一人が、舞台袖のトラブルが原因で着替えが進まず このままでは出番に間に合わないという状況に陥ってしまった。 しかし、彼のそんな状況を見かねた女性スタッフの一人が、無言のまま飛びついて衣装替えの 手伝いを行ったことで事なきを得たそうだ。 終演後、その役者が、手伝ってくれたスタッフにお礼を述べたところ 『私、こっちにつきっきりだったので手伝っていませんよ』 と不思議な顔をされた。 それならばと、裏方全員に聞いて回ったが、彼を手伝ったと名乗り出る者はいなかった。 ただ、その時の演目が戦時中の悲劇を扱った作品だったこともあり、全員がなんとなく納得したという。
2019.02.17
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「骨壺」 我妻俊樹 丸田さんの同い年の友人が若くして亡くなって、一年後に彼の夢枕に立った。 『どうして俺だけ暗いところにいるんだ。出してくれ。女のいっぱいいるところへ連れてってくれ』 懐かしい友が泣きそうな顔で訴えてくるので、さっそく墓に行って骨壺を取り出そうとすると・・・ ちょうどそこへ共通の友人であるSが来て止められた。 実はSもまったく同じ夢を見て、友人の骨壺を持ち出そうと墓地へ来たのだが、白い箱を 抱えた丸田さんの姿を目の当たりにして急に正気に返ったのだという。 たぶん丸田さんたちと同じ夢を見た者が、他にもいたのだろう。 というのも翌年の命日に墓参りに来た家族が中を確かめたところ、骨壺が何者かによって 盗まれていることがわかり、二十八年経った今も行方不明のままだからである。
2019.02.16
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「初めてなの!」 よく仕事でご一緒させていただいているガイドのJちゃん(27歳)からお聞きした話です。 その日、Jちゃんは和歌山県の温泉郷に来ていました。 通された乗務員部屋は六畳、清潔感があってバストイレまで付いていたそうです。 Jちゃんは大浴場へ行くのも面倒で部屋のお風呂で一日の疲れを癒したあと、テレビを見ながら髪を乾かしていると カタカタと音がする・・・・それがガタガタという音に変わったと思ったら、窓の外に全裸の男が浮いていて窓を叩いている。 『きゃぁぁぁあ~』 男は ニタッ と笑うと、窓をすり抜けて部屋の中に入って来たんです。 Jちゃんは、この信じられない状況に身動き一つできず、悲鳴を上げることすらできなかったそうです。 全裸の男の霊は、再び ニタッ と笑うと、Jちゃんの足元にしゃがみ込み、彼女の露わになった両足を足首から太腿に スゥ~とさすり上げると、ガバッと両足を大きく開いたんです。 そして、その股間に顔をうずめて・・・・ 『あっ!うっ・・・あぁ~・・・いや、やめてぇ~』 しばらくして、男の霊はJちゃんの股間から顔を上げると大きくなったモノを・・・・ 『い、いや! 私、私・・・初めてなんです。それだけは、それだけは』 すると、男の霊は残念そうな顔をして立ち上がり、そのまま消えてしまったそうです。 ちなみに、彼女は経験済にも拘わらず、とっさによく『初めてなの』という言葉が出たと思って聞いてみると 『だって、あんな大きいの初めて見たんだもん。壊れちゃいそうだったから』
2019.02.11
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中岡俊哉
2019.02.09
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「湯煙に紛れて」 今から二十年ほど前の話である。 インターンシップを終えたばかりの坂木さんは、先輩の紹介で長野県のリゾート施設でアルバイトをした。 仕事内容は、搬送されてくる凍って息をしていない人間の脈をとり、死亡診断書を作成すること。 実際は、浴槽の温泉で解凍した人間の脈、瞳孔等を診断する。 アルバイトも残り一週間となり、都会の喧騒に戻らなければいけないと思うと憂鬱な気分になった。 幸いなことに、坂木さんはこの日まで仕事をしないでいられた・・・・ そんな彼の元に施設の担当者が現れた。 『三人です。よろしくお願いします』 『夜には大体よろしいかと思いますから、またその頃にお知らせに参ります』 やがて夜になり、担当者の連絡を受けて大浴場へ向かう。 衣服を脱がずに浴場へ入ると、洗体場に年配の男性と若い男女が横たわっていた。 どの人も口が半開きで、閉じ切らない瞼の奥の瞳はうっすら灰色がかっていた。 一人一人、脈をとり、瞳孔を確認すると、確認した時刻を書類に記入した。 『ありがとうございます。あ、先生そうしましたら、これからご遺体を搬出したらお風呂使ってください。 清掃中の札はそのままにしておきますから、他の方は入ってこないようにしておきますので』 全身はぐっしょり汗ばんでいて、へとへとに疲れていたので有難かったという。 連絡を受けて再び大浴場へと向かい、迷うことなく露天風呂に浸かった。 湯気の先に一人の男性が見えた。 いくつかの言葉を交わした後に、貸し切りを思い出した。 湯気の向こうから見える男性の瞳は灰色で血の気の失せた皮膚、口元は半開き。 自分が脈をとり、一時間前に搬出されたはずの年配の男性だったのである。 『毎年季節になると、今年もどうだと打診されましたけど、二度とと行きませんでした』
2019.02.02
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