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家内の妹が買っていたのですが、「すぐに読む予定はない」ということで、借りて読んでみました。
妹が買ったのは、芥川賞受賞直後のことで、その帯には「40万人の魂を揺さぶった」と書いてあるので、このときは40万部突破であったのでしょう。
どうやら今では200万部を突破したらしいです。
近年の出版不況を考えると、驚くべき部数ですね。
ただ、40万人が読んで、ほぼ全員が魂を揺さぶられる、なんて作品は存在しないでしょう。
1割の人の魂が揺さぶられれば、それはもうすごいことです。
あらすじを私が説明する必要もないかとも思いますが、芸人である主人公と、その芸人が師と仰ぐ破天荒な先輩芸人の話です。
思いのほか書評には肯定的なものが多く、ひょっとしたらと期待していましたが、私の個人的な感想としては、どうして芥川賞なのだろう?といったところです。
帯にあるように魂が揺さぶられることはありませんでした。
あくまでも個人的な感想ですので、読み手の感受性や、読解力の問題によるところも大きいでしょうね。
美術品だって、見る目のない人には傑作を理解できない場合も多いので。
大学時代、ゼミの先生が「小説なんていつでも読めるから、論文を読め」と常々言っていたので、あるとき、期末の提出資料の中に、「論文のような理論的なものは、今でなくても理解できますが、小説のように心に訴えるものは、心の柔らかい今読んでこそ、価値があると思います」と書いた覚えがありますね。
文学というのも、読む年齢というのは重要だと思います。
特に、純文学は、若いころにこそ、読むべきものでしょう。
そもそも「純文学」という定義が難しいです。
意外に知られていないのですが、芥川賞というのは、文学の最高峰に与えられるものではありません。
対象はすでに作家としての地位を確立した人ではなく、新人と言える範囲の人が対象となります。
また、作品としては「純文学」作品が対象です。
「純文学」の定義として一般的に言われるのは、「娯楽性」よりも「芸術性」を重視し、出来事などの外的な事象よりも、人間の内面を描くことに主眼を置くもの。
ということになります。
推理小説とか、SF小説のように、人間そのものよりも、出来事を中心にしたものは「大衆文学」ということになります。
そのため、単純に面白さを求めれば、期待を裏切られるということは十分あります。
ワクワク、ドキドキ、というようなものではなく、どちらかというと、内向きの暗ーい話になりがちです。
200万部も売れたということですが、読了率はどれくらいでしょうか。
はっきり言って、ワクワク、ドキドキ、笑える面白さ、というのはあまりないです。
確かに、不思議な言葉のかけあいというのはあるのですが、私にはさほど面白くはありませんでした。
ただ、そんなものは「純文学」には不可欠ではありません。
人間の内面に迫り、読み手の心にインパクトを与えることが大切です。
インパクトには、いろんな種類のものがあるでしょう。
それゆえに、文章の読解力がなかったり、感受性に乏しかったりすると、打っても響かないとうことになります。
個人的にはそれほど深みも感じられず、共感するところもあまりなく、意外性も感じられず、どちらかといえば残念な作品でした。
逆に、最初から芥川賞を取ってしまうと、あとあと彼自身が困るのではないかと思ったりもします。
が、読み終わって、他の人の書評を呼んでみましたが、意外に面白いという人が多いようですね。
私の読み手としての力不足なのかもしれませんし、、心の柔らかさが無くなったからかも知れません。
あるいは、ソファでうとうとしながら読んだものなので、どうも気持ちが十分入っていなかったからだろうか、とも思ったりして・・・・。
長い小説ではないので、もう一度、ざっと読んでみようかな。
集中して読めば、二時間もあれば読めると思います。
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