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3.探求編2009年08月 講談社より2012年08月 文庫化愛する者と結ばれ、母となったエリン。ある村で起きた闘蛇の大量死の原因究明を命じられ、行き当たったのは、かつて母を死に追いやった禁忌の真相だった。夫と息子との未来のため、多くの命を救うため、エリンは歴史に秘められた真実を求めて、過去の大災厄を生き延びた人々が今も住むという遙かな谷を目指すが・・・。(裏表紙 紹介文より)4.完結編闘蛇と王獣。秘められた多くの謎をみずからの手で解き明かす決心をしたエリンは、拒み続けてきた真王の命に従って王獣を増やし、一大部隊を築き上げる。過去の封印をひとつひとつ壊し、やがて闘蛇が地を覆い王獣が天に舞う時、伝説の大災厄は再びもたらされるのか。傑作大河物語巨編、大いなる結末へ。 (裏表紙 紹介文より)元々、獣の奏者は闘蛇編&王獣編の2冊で完結していたそうです。それがアニメ化に向けて内容を再編集することとなり、それをきっかけに要望が強くあったこともあり、この探求編と完結編が書かれたとか。上橋菜穂子さんの話はどれも、全部書き尽くしてめでたしめでたしで終わるというスタイルではなく、一応の事件の解決は見ながらも、多くの課題・問題を残したまま、ただ、それも人の力によって解決をしていけるのではないかという希望を持たせたエンディングがほとんど。獣の奏者も王獣編のラストはそんな感じでした。そして、続きが描かれた完結編。今まで読んだ中で、一番悲惨で報われないラストだったなという印象です。他にどうしようもないと言えばないんだけど、これだったら読まなくてもよかったな。思い出すと悲しいので、早く忘れようと思います。獣の奏者(3(探求編)) [ 上橋菜穂子 ]価格:812円(税込、送料込) 獣の奏者(4(完結編)) [ 上橋菜穂子 ]価格:781円(税込、送料込)以下、粗筋と感想になります。ネタバレに注意。闘蛇編と王獣編でもずっと問題となっていた、闘蛇と王獣を育成するにあたってその生態を歪めるほどに厳しく定められた規範があるのはなぜか、という点。特慈水を与えて生殖能力を衰えさせ、人の手で繁殖できなくさせる。音なし笛を吹いて硬直させ、人と獣との交流をさせなくする。それが目的であるとは悟らせずに、ただ規範に則って育成すると結果的にそうなるように定められている。それは、かつて闘蛇と王獣とが戦で使われた結果、国を滅ぼすほどの大災厄が起こったからという伝承をエリンは知る。しかしエリンは、何が起こるかを知らさないまま、生き物の生態を歪めてまで禁止するのは間違っているのではないかと考える。更には、真王と大公の意向(命令)もあり、王獣部隊の編成と訓練に励む。その結果に、どんな大災厄が起こったとしても、その結末に責任を持つ覚悟で。大災厄、起こりました。戦が起こり、特慈水を与えずに育てた闘蛇部隊同紙が激突。大公と真王のいる城が危機に陥り、エリンは王獣部隊を率いて飛び立つ。王獣も闘蛇も超音波を聞き取るらしいのです。王獣の発する鳴き声により、混乱に陥る闘蛇の群れ。特慈水を与えられずに育った闘蛇は毒性の強い霧を出し、その霧の中に入ってしまった王獣は苦痛により狂乱。エリンの命令により上昇することができた王獣は助かりましたが、制御が届かなかった4羽は、苦痛の中で永遠に闘蛇に襲いかかることを繰り返す。王獣が鳴き声を上げながら襲いかかるので、闘蛇も混乱し続け毒霧を出し続ける。全てが死に絶えるまで続くであろう狂乱のループが生まれてしまったのです。強大な力を持つ闘蛇の王獣の狂乱のループ。これが大災厄の再現でした。エリンはこれを止めるため、リランにその群れの中心への下降を命じる。そして毒霧の中心で音なし笛を吹くのです。4羽の王獣とリランは硬直して墜落。闘蛇達も硬直して動きを止め、狂乱のループは収まる。その4日後に死んだエリンは、4日間の間に自分の知った事実をすべて言い残していく。知識を隠すことにより災厄を避けようとするのではなく、真実を知った上でその災厄を避ける術を人が考えるべきだという思いで。実際、その通りだと思います。他国の闘蛇部隊が特慈水なしで作り上げられたように、隠していても誰かがいつかは原理を見つけ出すことはある。ならば真実を知らしめ、後の教訓とした方がよいのだろうし。その後、エリンの息子・ジェシは成長して獣の医術師となり、学校で母の最期に何が起きたかを伝えていくようになる。エリンが「野にある獣は野にあるように」と願った通り、王獣の育成は行われなくなりました・・・で終わります。エリンはいろいろと全てを覚悟の上で生きて、災厄を止めるために死んだのでそれは仕方ないと思えました。でも、エリンの命令に従い、素直に下降して墜落死してしまうリランが哀れで。他の王獣達もただ可愛らしく生きて、昼寝したり日向ぼっこしたりしていたかっただろうと思うと、悲しかった。王獣には、戦をする人の理屈なんかはわからないのに。こんな結末なら読みたくなかった、と思いました。読書は娯楽と思っているので、楽しみたい、笑いたい、感動や感心したいのであって泣きたいわけではないので。
2016.02.24
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2006年11月 講談社より2009年08月 文庫化カザルム学舎で獣ノ医術を学び始めたエリンは、傷ついた王獣の子リランに出会う。決して人に馴れない、また馴らしてはいけない聖なる獣・王獣と心を通わせあう術を見いだしてしまったエリンは、やがて王国の命運を左右する戦いに巻き込まれていく。新たなる時代を刻む、日本ファンタジー界の金字塔。(裏表紙 紹介文より)以下、粗筋と感想になります。ネタバレに注意。リランと竪琴により意思疎通ができるようになったエリン。なついて仲良くなったリランですが、ある日、事故が起きる。リランの毛をすいていた櫛がひっかかり、痛みにより反射的に噛みついてしまったリランにによりエリンは大怪我をしてしまう。めげずにリランを大切に育てるエリン。やがてリランは空を飛ぶようになり、保護された野生の王獣の牡と交合し子をなす。この辺りまでは、結構幸せな時代でした。リランとエリンが親密さを増していって。しかし、真王ハルミヤが王獣を見にカザルムへ行幸に来た帰り、闘蛇に乗った暗殺部隊に襲われるのです。ハルミヤを助けようと、リランに乗って現場へ向かうエリン。リランは天敵である闘蛇に襲いかかり、一方的に引き裂き、暗殺部隊を退ける。この事件によって、大公の象徴である闘蛇を倒すことのできる王獣、今まで人には操ることができないとされていた王獣を操ることができる人間がいる、ということが公になってしまい、エリンは政治の陰謀に巻き込まれていきます。その中で、再び事故が起きます。ハルミヤの甥であるダミヤの命令で、エリンは王宮へ連れていかれそうになる。ずっと唸って威嚇していたエリンが遂にダミヤの兵士に襲いかかり、止めようとしたエリンの左指も食いちぎってしまうのです。恐怖の中、それまで吹いたことのない音無し笛を吹くエリン。エリンとリランの間に、溝が生まれた瞬間でした。強い力を持つ大きな生き物と親しむのって難しい。昔見た映画で、動物園の象の飼育員が、病気で弱った象の看護をするために象舎に入り踏みつぶされて死んでしまう話を思い出しました。象は飼育員に馴れていて、可愛がっていたのに、大きさが違いすぎた。そこに確かに愛情はあるのに。難しい問題です。真王ハルミヤは暗殺時に負った怪我の後遺症で死んでしまい、政治状況は更に混迷。真王には孫娘であるセィミヤがなりますが、ダミヤとの結婚を決意する。しかし「血と穢れ」を操ってハルミヤを暗殺したのはダミヤでした。大公の嫡男・シュナンはセィミヤに対面。私は武力に守られていないと言ったセィミヤに、戦争で負傷した若者達を見せこの国は武力によって守られていることを知るべきだと告げる。そして、もし始祖の伝説通りに、闘蛇達が真王にひれ伏すことになったら大公領の者達はこれまで通り真王に仕える。しかし、そうでないなら自分と結婚せよ、伝説の丘で闘蛇軍を率いて待っている。青い旗を振ったら闘蛇の進軍を止める、と迫る。ダミヤはエリンと王獣の力を借りて闘蛇軍を止め、真王の統治を継続させようとする。が、セィミヤはシュナンとの結婚を決意して、青い旗を振る。喜びに沸き返る大公の兵士達でしたが、シュナンの弟がダミヤにそそのかされて「血と穢れ」の一員となっており、大公を殺し、シュナンも殺そうとする。シュナンが死ねば、セィミヤはダミヤの妻となり、シュナンの弟が大公としてこれまで通りの歪んだ国の形を続けていくしかない。セィミヤの懇願により、エリンはリランに乗ってシュナンの救出に向かう。リランは本能のままに闘蛇達を倒していく。エリンはリランの殺戮をやめさせ、シュナンの元へ降り立ちますが、矢に射られてしまう。重傷を負いながらシュナンをリランに乗せ、リランに飛び立つよう命じる。リランは飛び立ち、残されたエリンは闘蛇軍に囲まれて一人死を待つ。そこへ誰に命じられたわけでもないのにリランが戻ってきて、エリンをくわえて空へ舞い上がる、という最後でした。すれ違いがあり、命にかかわる恐怖があり、それでも少しずつ育んだ愛情や信頼が、種族が違うから細い絆ではあったけれど、確かにあった、と救いと希望の感じられるエンディングでした。
2016.02.15
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2006年11月 講談社より2009年08月 文庫化王国の矛盾を背負い、兵器として育成される凶暴な蛇――闘蛇。各界で話題騒然!傑作ファンタジー巨編、ついに文庫化。リョザ神王国。闘蛇村に暮らす少女エリンの幸せな日々は、闘蛇を死なせた罪に問われた母との別れを境に一転する。母の不思議な指笛によって死地を逃れ、蜂飼いのジョウンに救われて九死に一生を得たエリンは、母と同じ獣ノ医術師を目指すが――。苦難に立ち向かう少女の物語が、いまここに幕を開ける!(裏表紙 紹介文より)『獣の奏者』というタイトルなので、獣が出ると予想していました。最初に闘蛇が出てきて、これが獣ねと思っていたら、獣は王獣の方だったらしい。2巻の表紙の挿絵が、翼を広げた白い鳥のようなもので、ふむふむ、これが王獣ね。で、ふと1巻を見たら、ネズミのような尻尾を持つ翼のない黒っぽい生き物が。・・・・これ、何?闘蛇って龍のような生き物と思い込んでいたけど、実はこれが闘蛇?(あとから確認しましたが、東洋の龍のようなイメージで合っているみたい)異世界の話でも上橋菜穂子さんは丁寧に隅々まで書き尽くすので、世界を想像するのは容易なんですが、未知の生物は難しいですね。獣の奏者はアニメ化されているらしいですが、アニメを見たらびっくりするかもしれませんね、あれこれ想像と違っていて。以下、粗筋と感想になります。ネタバレに注意。リョザ神王国は、神とされる真王(ヨジェ)を中心とする真王領と大公(アルハン)を中心とする大公領に別れています。真王は全ての穢れに触れることなく神聖な神として生きている。一方、大公は武力をもって国を守っているため、穢れているとされている。真王領民は大公領民を穢れている者として蔑む傾向にあり、しかし大公領民は自分達こそが国を守っているのではないかと不満を抱く。大公領民の中から真王暗殺を企む集団「血と穢れ(サイ・ガムル」が発生し、数々の暗殺の危機にさらされた真王は「堅き盾(セ・ザン)」といった護衛部隊を設置。「堅き盾」は自分の身を犠牲にしても真王を守ることを任務とし、心残りで任務を全うできないことがないよう、子供の頃に親から大金で売られ、妻子を持つことも許されない。現在の真王はハルミヤという女王。王位は女性が継承するので、次期真王は孫のセィミヤと決まっている。アルハンの長男シュナンは進歩的な考えの持ち主。セィミヤに恋心を抱いていることもあり、今の分裂した王国の形を是正するには自分とセィミヤが結婚すればいいのではないかと考えている。大公は自分が王になりたいという野心がありますが、従来の国のあり方・考え方に縛られているため、武力で奪い取ることは考えられても、シュナンの言う真王との婚姻による国の統合は思考の外であり反対している、という情勢。主人公・エリンは『霧の民』という異端視される少数民族の血を引く娘。母・ソヨンは、大公領の闘蛇衆の中で獣ノ医術師として闘蛇の世話をしています。闘蛇というのは足のある大蛇で、イメージとしては龍のような感じですかね?強いので、闘蛇部隊を持つ大公は近隣諸国との戦で有利です。ある日、ソヨンが世話をする闘蛇が全て死んでしまう。ソヨンはその責任を全て押し付けられて処刑されることになり、闘蛇が住む沼に落とされてしまう。エリンは母を助けるために沼を泳いで母の元まで行きますが、親子共々、闘蛇に囲まれてしまいます。あわやという時に、ソヨンは指笛で闘蛇を操っておとなしくさせ、エリンを闘蛇の背に乗せ遠くへ逃がすのです。闘蛇から落ちて気を失っていたエリンは、真王領で蜜蜂を飼って生計を立てているジョウンに助けられます。ジョウンは今でこそ蜂飼いですが、かつては王都にある裕福な子弟のみが入れる学舎で教導師長だった人。ジョウンは、エリンが賢く知的好奇心が旺盛であることを知って、それを伸ばすような指導をしてくれます。ある日、高価な薬草を採りに行ったジョウンは崖から転落。それを助けに行ったエリンと共に、野生の王獣を見る。王獣は巨大な鳥みたいなイメージかな?闘蛇の天敵であり、鳴き声で闘蛇を操って無力化することができます。また、王獣は真王の王権の象徴である神聖な獣とされています。やがて、ジョウンに都に戻るように息子から連絡がくる。ジョウンはエリンにも一緒に来るよう勧めますが、エリンは一人で生きていける道を探しカザルム王獣保護場へ行くとに。そこの教導師長エセルはジョウンの古くからの友人なのです。ここで、傷ついた王獣の子リランに出会い、その世話をするようになる、というところで次巻へ続きます。1巻目から、なかなか重い感じのスタートです。複雑で歪んだ国の情勢。異端視されて冷遇される少数民族。その一族であることが一目でわかる緑色のエリンの瞳。そのために、あちこちで嫌な思いをする主人公・・・うーん。カザルム王獣保護区のエセルも、何となく好きになれません。厳しいのはいいとして、ジョウンの話だと「王獣に取り憑かれた人」らしいんですが、常識に凝り固まっていて、王獣に対する熱意も知りたいという欲も感じられない。取り憑かれた人なら、王獣の研究に全てを捧げたいくらいのマニアックな情熱を見せて欲しいものだと思ってしまいます。まだ出てきたばかりだから、これから変わるのかな?早くエリンとリランが仲良くなって交流が始まってくれるといいなと思います。カザルム王獣保護場の闘蛇の世話と王獣の世話には共通点があって、どちらも音無し笛を吹くと硬直する。
2016.02.08
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