2005年10月04日
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ベルギー王立歌劇場「ドン・ジョヴァンニ」


台本:ロレンツォ・ダ・ポンテ
作曲:ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト

指揮:大野和士
演出:デイヴィッド・マクヴィカー
合唱指揮:ピアーズ・マキシム
合唱:ベルギー王立歌劇場合唱団
管弦楽:ベルギー王立歌劇場管弦楽団

ドン・ジョヴァンニ: サイモン・キーンリィサイド
ドンナ・アンナ:カルメラ・レミージョ
レポレッロ:ペトリ・リンドロース
マゼット:ウーゴ・グアリアルド
ドン・オッターヴィオ:ライナー・トロスト(降板)→ イェルク・シュナイダー
騎士長:アレッサンドロ・グエルツォーニ
ドンナ・エルヴィーラ:マルティーナ・セラフィン
ツェルリーナ:ソフィー・カルトホイザー



はきそうなぐらい、よかった。
サイモン・キーンリーサイド、すごすぎる。
これはもう、モーツァルトのちょっとファニーでちょっと怖い教訓歌劇ではなく、まったく別のものすごいものに変身していた。
キーンリーサイドのドン・ジョヴァンニは「ものすごく悪いヤツ」だった。完全な悪役。悪魔、と言ってもいい。

マクヴィカー&キーンリーサイドの作り出したものは、既に「ドン・ジョヴァンニ」ではない。

2幕の後半からものすごい世界が展開する。

これは、キーンリーサイドという稀代な名優が演じる、ストレートプレイに歌がついたもの、になっている。
彼は『歌わない』。『タンホイザー』のヴォルフラムの時は、あんなに歌っていたのに。きょうは「しゃべっていた」。ドン・ジョヴァンニはしゃべっていた。他の人はみな歌っていた。彼はアリアでも「しゃべっていた」。
見た人なら、私の言わんとするところが、わかるでしょう!



大野さんファンにも怒られそうだが、そうなんだもん。彼はアリアでも「歌わ」なかった。ヴォルフラムとは違ったの!

これだけ見たら、このバリトンがあんなすごい歌えるヴォルフラムを演じるとは誰も思わないだろう。何しろ、違いすぎる。


※ネタバレしまくりなので、ご注意ください。


第1幕 第1場

レポレッロ。
召使から足を洗いたい、とぐちっている


『捕まえたわよ!』
とドンナ・アンナが上半身裸の、マスクをした男ともみあいながら出てくる。カルメラ・レミージョはすごい美女でしかも声が超ビューティフル。彼女は最高です。
「おれが誰だかわからないだろ?」
男は脱ぎ捨てたマントの位置が悪かったのか足で蹴飛ばす。

ちょっと~ 宣伝Videoで見ていたから驚かなかったが、キーンリーサイドってハリウッド俳優できるわね。筋肉むきむき。世界的なオペラ歌手ではまったく考えられない。おなかが出てない。これが初見だったら死ぬほどのけぞっただろう。吹き替え?とか疑念を持ったろう。神様ありがとう!(不遜ですか?)

男は調子に乗って、ドンナ・アンナを組み伏せる。レミージョはおみ足もあらわに。危うし、貞操の危機。

「老いぼれ、やるのか、やめておけ!」
余裕たっぷりのドン・ジョヴァンニ。しかし相手がかかってくるのでこちらも剣を抜く。それが仕込み杖なの。銀の球形の握りのついた特徴のある仕込み杖で、中に剣が仕込んである。それを抜き放つ音がかっこいい!
ヒュンン!!
二人はちゃんちゃんばらばらやるわけでなく、父親はあえなく倒れる。するとドン・ジョヴァンニはその上にのしかかり、ぐっさりと止めを刺す。普通倒れた相手にカバリエ(騎士)がここまでやりますか?
胸から鮮血がにじみでる。この時点で、このジョヴァンニはちょっと…(違う)と慄然とする。


レポレッロが駆けつけ、二人は逃げさる。

仲間を連れて戻ってきたドンナアンナとドン・オッターヴィオ。ドン・オッターヴィオはきょう、代役の人でした。かなりの巨体で、うう~んやっぱテノール歌手って普通はこうなのよね、と納得しちゃう。いい声でした。

ドンナ・エルヴィーラ。パンツルック。長方形の大きな旅行鞄を持っている。背の高い女性。声はドラマチック。声量がすごい。

ドン・ジョヴァンニとレポレッロが出てくる。ドン・ジョヴァンニは服を着ている。着やせするわね。

ドン・ジョヴァンニは前に捨てた女とも知らず、ドンナ・エルヴィーラを誘惑する。

このドン・ジョヴァンニは1幕ではまったく笑わなかった。豪胆だが快活ではない。むしろ陰気。目つきがほんとに怖くて、女を見る目は獲物を見る目。愛情はひとかけらもない。愛を歌いながらそれだから、逆にすごい演技力が必要だ。多分彼が愛情を少しでも感じていたのはレポレッロだけだ。

誘惑する前に髪を触ったり、服をいじったり相変わらず芸の細かいサイモン。エルヴィーラはレポレッロに押し付けて自分は逃げる。

レポレッロはエルヴィーラを引き止める役回りでとばっちりでビンタされる。彼は有名な『カタログの歌』を歌いだす。
最初はあきれていたが、しまいに泣き出すドンナ・エルヴィラ。
拍手。

村娘、ツェルリーナとマゼットの結婚式。幸せそうな場面に闖入者。ドン・ジョヴァンニだ。まさに災いの神。
ツェルリーナはすごく可愛い! マゼットも若くて、なかなかよかった。

ジョヴァンニはいきなり新郎新婦の間に無理やり座り込む。そしてあつかましくぶどう酒を二人に注いで名前を聞く。
君は?
「ツェルリーナ」
そうなの♪
で、君は?
「マゼット」
「…ミュゼ?」
関心を示さない、ドン・ジョヴァンニ。
「マゼットだよ!」
「あーマゼット。わかったわかった」
ところでみんなお城に来ない?ご馳走するよ!
みんな喜んでいなくなる。
カバリエが守るからマゼット君も先に行き給え。
「大丈夫よ、マゼット」
マゼットにいらいらしながら落ち着かず貧乏ゆすりするドン・ジョヴァンニ。
がんこなマゼットをドン・ジョヴァンニが脅す。刀を抜く真似をして、
「従った方が君のためだぞ。」

厄介者を追い払って二人きりになったドン・ジョヴァンニとツェルリーナ。

「あそこにお城が見えるだろう? あれが私の城だ。結婚しよう。君を貴族にしてあげるよ。」
かなり具体的な訳。
これがあの『お手をどうぞ』の二重唱とは!
「ちょっとそこの東屋に行こうよ。君の人生を変えてあげる」というのではない。もろプロポーズだったのね。
ぐらぐら揺れるツェルリーナ。
「騙されてるのかなあ…」
ドン・ジョヴァンニの歌は甘いのだが、表情がツェルリーナを冷静に観察している表情なのでぞっとする。つまり客は素直にこの美しい歌に酔えないわけです。
しかし目的達成あと一歩というところで、ストーカー、ドンナ・エルヴィラが登場する。
「うそつきよ!信じちゃダメ。」
二枚舌を使うドン・ジョヴァンニ。

そこへドンナ・アンナとドン・オッターヴィオ。

彼らはドン・ジョヴァンニは紳士だと思い込んでいる。
しかしまたエルヴィラに邪魔される。
ドン・ジョヴァンニは、ドンナアンナが歌っている間に、ぐるっとテーブルの向こうまで行くと、エルヴィーラに
「いい加減にしろよ!」
彼女があきらめそうにないので
「まったく!」と天を仰ぐ。
これはすべて台詞はないので彼のアドリブの演技であろう。相変わらず芸が細かい!

ジョヴァンニの最後の言葉で彼が真犯人だと見破るドンナ・アンナ。雷鳴がとどろく。
怒りに燃えて復讐を誓うドンナアンナ。(アリア)
拍手。
ドン・オッターヴィオのアリア、拍手。

シャンパンの歌。ここが唯一ドン・ジョヴァンニが拍手を貰ったアリア。それも彼はいきなり服を脱ぎだす。脱ぎながら歌う。ネクタイを抜いて、上着を脱いで、ベストを脱ぐ。そしてベストを闘牛士のマントのようにひらひらさせて、レポレッロと遊んで退場。拍手。

ドン・ジョヴァンニの屋敷。

マゼットは隠れてお前を監視している、とツェルリーナに言う。
ツェルリーナは見つからないように隠れている。しかしドン・ジョヴァンニに見つかってしまった。いいよるドン・ジョヴァンニ。いきなり登場したマゼットにごまかして、さあ、踊ろうと、退場する。

ドン・ジョヴァンニは楽しく騒ごう!と歌いながら使用人達をいじめる。う~ん、極悪人。もうふつーじゃないです。

レポレッロはべろべろに酔っ払っている。

復讐に燃えるドンナアンナとドン・オッターヴィオとドンナ・エルヴィラの3人は、仮面を被ってドン・ジョヴァンニの屋敷にやってきた。
3人は出来上がっているレポレッロに招き入れられる。

らんちき騒ぎが繰り広げられる。これはマクヴィカーのお得意です。乱れ、絡み合う男と男、女と女、男と女。
ツェルリーナはドン・ジョヴァンニにかどわかされ、奥の部屋に連れ去られる。羽交い絞めにして抱きかかえていく。
きゃ~~~っ
悲鳴。
みんな彼女を助けよう!と歌う。
ドン・ジョヴァンニは責任をレポレッロに押し付けようとする。
ところがドン・オッターヴィオになじられ、一同が彼を『極悪人!!』と糾弾する。突然奥の大きな扉が開いて、風が吹き込む。
ジョヴァンニは平然としている。
1幕了。

Part2 へ続く。













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最終更新日  2005年10月08日 23時21分12秒


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