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2007/04/19
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カテゴリ: 病気・医療関連
衝撃の事実! がん治療先進国アメリカの敗北 1


NCIのオンライン・データベースである「PubMed」によると、がん研究機関がこれまでに出版した文書は156万ページに及ぶという。そのうち大半は人の細胞の複雑な回路やそれに関連する遺伝子についてのもので、長年にわたり何百という雑誌に掲載されてきた。多くの発見は毎年開催される100を超える国際会議やシンポジウムで発表されている。
しかし、どういう訳か、どこかで重要な何かが失われてしまった。知識の探求が目的のための手段ではなく、目的そのものとなってしまったのだ。研究対象はますます狭い分野に限られ、そのため、がんや人間を全体として体系的に捉えようとする医師や科学者、あるいはまったく新しいアプローチを取ろうとする者は助成金を得ることが困難になっている。
例えば、RO1と呼ばれるNCI最大の助成金プログラムを例に挙げよう。この助成金の金額は2003年では平均1件当たり33万8,000ドルと寛大である。そして応募者の倍率は3倍と、獲得するのが最も容易な助成金のひとつとなっている。しかし、助成金の大半を獲得するのは、がん細胞やその他の細胞のなかのある特定の遺伝子あるいは分子構造を重点的に研究する研究者である。研究対象の範囲が狭ければ狭いほど、研究者が獲得する金額は大きくなるように思われる。
PubMedのデータベース検索によると、がん研究機関はマウスを使った実験的な研究を15万855件も発表している。このうち、がん治療に結びついたのは何件あったのだろうか?極めて少数である。「がんとの闘い」がどこで道を踏み誤ったかを理解したいなら、マウスを使った実験から検証を始めるのがいいだろう。

◆マウスモデルにどれだけの意味が?
ランダーはマサチューセッツ州ケンブリッジのホワイトヘッド研究所ゲノム研究センターのカリスマ的な創設者であり、ヒトゲノム・プロジェクトのリーダーである。フォーチュン誌がかつて「ヌクレオチドの王子」と呼んだ彼は、最寄りのスターバックスへの道順を教えるかのように、がん治療への生物学的な道筋を説明する。「例えば、遺伝子はたった3万個しかないとする。それらは限られた数の仕事しかしない。がんが有するメカニズムの数は無限ではなく、限りがある。限られたとは言うものの、確かにこれはかなり大きな数字であり、事実をわい小化するつもりはない。がんが使うメカニズムは100あるかもしれないが、100は100に過ぎないということだ」。
がんを助長するマウスの遺伝子をひとつひとつ不活性化することで、こうしたメカニズムを孤立化させる攻撃をしかけ、その後、変異細胞を死滅させる薬を試験する必要があると彼は続けた。「これらは実行可能な実験だ」と彼は言う。「突然変異はがん細胞に弱点をも、もたらした。合理的ながん治療法として、がんの新しい突然変異すべてに関連した弱点がまもなく発見されるだろう」。
原則的には、こうした考えはおそらく正しいと思われる。しかし一方で、プロセス自体に重大な弱点がひとつある。マウスのひとつの遺伝子は人のひとつの遺伝子に非常に似ているかもしれないが、それ以外の点ではマウスと人はまったく異なるのだ。
「マウスモデル」を使った研究を行っている多くのがん研究者がこうした事実を忘れるか、無視していると思われる現実に、ロバート・ワインバーグはうんざりしている。マサチューセッツ工科大学の生物学教授で、人のがん遺伝子、および腫瘍抑制遺伝子の発見で「National Medal of Science」賞を授賞したワインバーグはとても生真面目な学者である。小柄で口ひげをたくわえた彼はごちゃごちゃとしたオフィスの真ん中にどうにか据えられたソファにドスンと座ると、講義を始めた。
「人のがんを研究するのに最もよく使用される実験モデルのひとつは、ペトリ皿で培養した人のがん細胞を取り出し、免疫力がないマウスに移植し、腫瘍を形成させ、結果として得られた異種移植片に人のがんに有効と思われる様々な薬を投与したものです。これは臨床前モデルと呼ばれます」とワインバーグは説明する。「そして、人のがんの臨床前モデルの多くが、患者の実際の腫瘍の反応をほとんど予見できないことがここ10年以上、ことによると20年くらいの間よく知られるようになりました」。マウスと人は遺伝子と臓器が似通っていても、心理面、細胞組織、代謝速度、免疫機能、分子シグナルなどに大きな違いがあると彼は言う。よって、遺伝子の同じスイッチが入れられたとしても、発生する腫瘍は大きく異なるのだ。
そこから数マイル離れたところで、ブルース・チャブナーもモデルに不満を抱いていた。ハーバード大学の医学部教授であり、マサチューセッツ・ゼネラル・ホスピタルがんセンターの臨床部長である彼は、研究者がマウスに発生させるいわば「即席腫瘍」は、様々な生物学的理由により、人間のがんの最も重大で恐ろしい特徴である、急速に変化するDNAを再現できないと述べている。前述したように、こうした特徴こそが、最も恐ろしい腫瘍に見られる並外れた複雑さをもたらしているのである。
「マウスの高血圧を治療する化合物が発見されれば、それは人にも効果があると思われる。どの程度の毒性があるかはわからないが、多分効くだろう」と、長年にわたりNCIのがん治療部門を統括してきたチャブナーは言う。つまり研究者は、遺伝子を「ノックアウト」(つまり不活性化する)したり、あるいはマウスに移植してがんを発生させたりと、がんに対してずっと同じアプローチを取っているのだ。「そして、肺がんのモデルができたと喜ぶ研究者がいるが、それは間違っている。人の肺がんには100個の突然変異があるからだ」と彼は言う。「遺伝子的に見れば、これほど複雑なものはほかにないだろう」。
イーライリリーでがん研究と臨床試験を統括していたホーマー・ピースは現在、製薬会社のリサーチフェローであり、人に対する薬の効力を見極めるうえでマウスモデルは実に不十分であることに同意する。「治癒された何百万、何千万のマウスを、転移疾患の臨床治療における比較的成功した例、あるいは失敗例と比べれば、こうしたモデルに何らかの欠陥があるに違いないと思うだろう」と彼は言う。
サウス・サンフランシスコのジェネテック社で分子腫瘍学研究のバイスプレジデントを務めるビシュヴァ・ディキシットは、「業界および学界の研究者の99%が異種移植片を使用している」ことにより大きな危機感を抱いている。なぜこれほどまでにマウスモデルが使用されるのか?答えは簡単だ。「手ごろで扱いやすい」からだとディキシットは説明する。「見るだけで腫瘍の大きさが分かるのだから」。
製薬会社はこうした問題を明らかに認識しているが、解決していない。「手ごろで扱いやすいという理由だけでこうしたモデルに毎年何億ドルもの金を使っているなら」、製薬会社はこの問題を解決すべきだとワインバーグは言う。
さらに気が滅入るのは、こうした不完全なモデルに頼っているせいで、人に効く薬を研究者が見落とす可能性があることだ。マウスのがん細胞を破壊した数多くの有望な薬が人に効かなかったのなら、マウスに効かなくても人には効く薬があるかもしれないということだ。つまり、過去20年間に開発が中止された何十万もの化合物のうち、人に本当に効果があるものがいくつもあったかもしれない。法廷とM.D.アンダーソンの患者の間を行き来し、イレッサや他の肺がん向けの分子標的治療を巡る大きな裁判で調査を担当するロイ・ハーブストは、こうしたことが起こる確率はかなり高いと確信している。「これはかなり気掛かりな問題だ」と彼は言う。「単独療法では効果が出ないものや、実験の条件が正しくなかったものや、正しい標的を見つけることができなかったために、多くの化合物を見過ごしてきた可能性がある」。
誰もが問題があると認識していながら、なぜ何の手立ても講じられていないのか?ワインバーグによると理由はふたつあるという。ひとつはマウスに代わるモデルがないということ。もうひとつは、「こうしたモデルを薬の有効性を見極める判断基準であるとFDAが認識し続けているため、一種の惰性が形成されてしまった」ためだと言う。

(出典:PRESIDENT Online)

次へ続く





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最終更新日  2007/04/19 08:03:19 AM
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