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先日、今まで使っていたマクロレンズが故障して、接写システムを変更した話をした。新しいシステムでもテレプラス×2を挟んで充分使い物になる(撮影倍率2倍弱)ことを、ワタアブラムシを撮影して示した訳だが、そうなると人間は卑しい。更に欲が湧いて、これにクローズアップ・レンズを付けてもっと高倍率にしてみよう等と考えてしまう。100mmマクロレンズで等倍接写したヤノイスフシアブラムシの幼虫背景の葉裏に生えている毛で、虫の毛は良く見えない(写真クリックでピクセル等倍)(2010/11/26) クローズアップ・レンズの5番と3番の2枚をレンズの先端にねじ込んで撮影すれば、撮影倍率は約2倍になる。だから、テレプラス×2とクローズアップ・レンズ2枚を併用すれば、倍率は凡そ4倍になる筈である。 実は、先日の写真を撮った時に、一寸これをやってみたのである。しかし、焦点深度が浅過ぎて焦点合わせは殆ど不可能、と云う感じで、余り真面目に考えずに「無理だ」と思ってしまった。テレプラス×2を挟み、F6.3で撮影.倍率は1.8倍解像度が高く毛が管状になっているのが分かる(写真クリックでピクセル等倍)(2010/11/26) だが、手持ちで焦点合わせが殆ど不可能でも、据え物撮りならば、テーブルに肘をついてカメラを安定させることが出来る(一眼レフは機動性が最大の特徴なので、三脚は使わない主義)。考えている内に段々とその気になって来て、遂にその実験をしてみることと相成った。 4倍もの撮影となると、被写体に何を選ぶかを考えなくてはならない。細微な構造を持つ被写体(当然生き物)である必要がある。手近にいる生き物で思いついたのは、写真家の糸崎公朗氏のWeblog「路上ネイチャー協会」に載っていたヤノイスフシアブラムシの幼虫(或いは無翅成虫)である。これならば、我が家の外庭のコナラにゴマン、どころか10万も20万も居る(今年は猛暑のせいか捕食者が非常に少ない。特に暑さに弱いテントウムシは殆ど居ない)。 拙Weblogでも、ヤノイスフシアブラムシ(Nipponaphis yanonis)の有翅虫と幼虫を3年前に掲載している。成虫も幼虫も普通のアブラムシとはかなり違う形をしているが、アブラムシ自体についての話は3年前の記事を参照して頂きたい。同じくテレプラスを使い、F8で撮影F6.3の写真より解像度が低い(写真クリックでピクセル等倍)(2010/11/26) さて、この幼虫の何処が面白いかと云うと、その刺毛(毛)である。これが、何と毛状ではなく管状をしているのである。このことは糸崎氏のWeblogで初めて知った(こんなアブラムシは他に知らないが、残念ながら全農教「日本原色アブラムシ図鑑」の解説には何も書かれていない)。今回の約4倍の接写装置を使って、この管状の毛を見てみよう、と云う訳である。 今回は、倍率の変化を実感して頂く為に、全て原画からの拡大率を同一にした。何れの写真も原画で横幅1000ピクセル、記事の写真は全て横幅500ピクセルに縮小してあるので、最大に拡大するとピクセル等倍、丁度記事の2倍(面積では4倍)となる。 尚、被写体の幼虫は少し小さめで、体長約0.97mmである。テレプラス×2とクローズアップ・レンズ5番+3番を併用撮影倍率は正確には4倍ではなく3.5倍.F8で撮影.毛がホースの様な管状をしているのが良く分かる虫体のかなりの部分に焦点が合っていて見易い(写真クリックでピクセル等倍)(2010/11/26) 各写真の解説に書いてあるが、最初の写真は100mmマクロレンズ単体の等倍接写写真。倍率は当然1.0倍である。周りがゴチャゴチャしているせいもあって、虫に生えている毛が良く見えない。変なアブラムシの幼虫なので分かり難いが、頭は左側である。 2番目はテレプラス×2をレンズとの間に挟み、最大倍率にして撮影したもので、倍率はスケールを撮影した別の写真から計算すると1.8倍、毛が管状になっているのが一応分かる。絞りをF6.3にしてあるせいか、解像度が高い。 3番目は、F8に絞って撮影した。解像度はF6.3に比してかなり落ちる。F11では、解像度の低下が著しく、高精度の写真としては使用に耐えないと判断した。同じ条件でF6.3で撮影.焦点深度が浅過ぎて虫体に焦点を合わせた写真は使えなかった.虫体より手前に焦点が合った毛が管状であることが良く分かる写真を選んだ(写真クリックでピクセル等倍)(2010/11/26) 最後の2枚が、クローズアップ・レンズの5番と3番を重ねて前に付け、テレプラス×2と併用した写真である。撮影倍率はスケールと比較すると4倍ではなく、3.5倍であった。4番目の写真はF8で撮影。毛が管状になっているのが良く分かる。頭部(左)は深度外になって良く見えないが、まァ、虫全体の雰囲気は分かる。 最後の写真はF6.3で撮影。虫体に焦点を合わせた写真は深度が浅過ぎて使い物にならなかった。其処で、少し手前の管状の毛の先端に焦点が合っている写真を載せることにした。断面が円形をしているのが良く分かるであろう。虫体は完全に焦点深度外で、ボヤボヤである。 F11でも撮影してみたが、明らかに解像度が低下しており、掲載する必要なしと判断して、省略した。 こうして実験してみると、このマクロレンズ+テレプラス×2+クローズアップ・レンズの組み合わせでは、F8辺りで撮るのが最適と言える(F8の1/3前のF7.1、1/3後のF9では実験していない)。 なお、クローズアップ・レンズを使用すると、絞り込みによる焦点移動が生じる。テレプラス×2と併用した場合は、F8に絞るとファインダーで焦点の合っていた面より約1mmほど後の面に実際(CCD上)の焦点が合う。撮影する際は、焦点が合ったと思った位置から1mm引くか、或いは、1mm手前に焦点を合わせてシャッターを切らなければならない。
2010.11.28
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十月中旬のことである。虫集め用に100円!で買ってきたコスモスの花弁(舌状花)の上に小さな黒い粒々が落ちているのを見つけた。芋虫か毛虫の落とし物に違いない。 早速、筒状花の周りや花の下側を調べてみた。しかし、何も居ない。其処で、今度は花弁が重なっている部分を調べたところ、その合間に小さな赤っぽい色をした芋虫が居るのを見つけた。 この芋虫(毛が少し生えているので芋虫と言うべきか、毛虫と言うべきか判断に苦しむ)、多分、買って来たコスモスの何処かに卵が付いていたと思われる。従って、「我が家の庭の生き物たち」ではなく「お客様」だが、後で分かる通り、此の成虫である蛾はこの辺りには普通なので、まァ、我が家の庭の生き物に準ずると云うところで掲載することにした。コスモスの花に居たオオタバコガの2齢幼虫.体長5mm小ささを御理解頂く為に原画全体(等倍接写)を示した(写真クリックで拡大表示)(2010/10/12) 体長は、見た時はもっと大きいと思ったのだが、写真から計測すると丁度5.0mm、拡大してみると、何やらノメイガの幼虫に似ている。しかし、全く別のグループの若齢幼虫の可能性もある。そこで、今後どうなるか分からないが、そのまま暫く様子を見ることにした。花弁の重なった部分に隠れていたオオタバコガの2齢幼虫とてもオオタバコガの幼虫には見えない胸背の黒い部分は前胸硬皮板であろう(写真クリックでピクセル等倍)(2010/10/12) その後、2齢を加えた後に姿が変わり、漸く正体が分かった。オオタバコガ(Helicoverpa armigera)の幼虫であった。しかし、まァ、成虫になるまで育て、正しくオオタバコガであることを確認してからWeblogに載せる方が無難であろう。 蛹化するまでは非常に成長が早かったのだが、その後は変化無し、中々羽化しない(年内に羽化させる為に長日条件で飼育した.オオタバコガは「悪者度」に非常に高い害虫なので保護する必要はない)。しかし、数日前、漸く1頭が羽化した。やはりオオタバコガであった。正背面から。上の位置から方向転換しているお尻の方の硬皮板(肛上板)は濃い茶褐色(写真クリックでピクセル等倍)(2010/10/12) さて、オオタバコガの幼虫であることは明らかになったが、今日の写真の幼虫は果たして何齢なのだろうか。オオタバコガはヤガ科(Noctuidae)タバコガ亜科(Heliothinae)に属すが、ヨトウガに近い。このヨトウガ類は、アゲハなどとは異なり、幼虫期が6齢の種類が多い(アゲハ類でも生育条件によっては6齢以上になることがあるとのこと)。調べてみると、オオタバコガは5齢乃至6齢と一定していないらしい。 卵は小さくて直径0.4mm程度と云うから、少なくとも初齢ではないだろう。其処で文献を探すことと相成る。 意外と簡単に、福岡県のHPの下にぶら下がっている「大豆を加害するハスモンヨトウ及びオオタバコガ各幼虫の齢期を判定するための頭幅測定ゲージ」と云うファイルが見付かった。横から見たオオタバコガ2齢幼虫.最初の写真の部分拡大後脚は4対(ヤガ科には4対以下の種がかなりある)(写真クリックでピクセル等倍)(2010/10/12) この文献のデータを使うと、頭幅を計ることによってオオタバコガ幼虫の齢が推定出来る。出典は、「Van den Berg,H. and Cock,M.J.W.(1993)」となっており、文献名は記されていない。この両者によって1993年に出版された論文は数報あり、その何れに載っていたデータかは不詳である。 それは兎も角、オオタバコガの頭幅と齢の関係は以下の様になっている。 幼虫の齢 頭幅最頻値(mm) 最小値-最大値 1齢 0.25 0.2 - 0.3 2齢 0.35 0.3 - 0.45 3齢 0.60 0.55-0.75 4齢 1.05 0.85-1.25 5齢 1.70 1.3 - 2.0 6齢 2.60 2.4 - 3.0正面から見ても小さ過ぎて頭部の詳細は不詳(写真クリックでピクセル等倍)(2010/10/12) 上の写真から頭幅を測定すると、0.43mm。上の表に拠れば、少し大きめだが、2齢と云うことになる。 これから暫くは、このオオタバコガの幼虫の各齢を紹介することになろう。オオタバコガは「大害虫」として名高いから、各齢の詳細を掲載することは農業関係の人にも多少は役立つかも知れない。[追記]この幼虫は無事成虫にまで成長した。以下に、以降の記録の一覧を示しておく。 内容 掲載日 撮影日 備考 3齢幼虫 2010/12/01 2010/10/14 他とは別個体 4齢幼虫 2010/12/11 2010/10/14 5齢幼虫 2010/12/15 2010/10/17 6齢幼虫 2011/01/17 2010/10/21 蛹と成虫 2011/01/31 - 2個体
2010.11.26
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昨日紹介した超接写システムで、同じコスモスに来ていた微小なアリを撮ってみた。 「日本産アリ類全種図鑑」(現在では「日本産アリ類画像データベース」としてWeb上で参照可能)で調べてみると、どうやらヤマアリ亜科(Formicinae)のサクラアリ(Paratrechina sakurae)らしい。図鑑では体長1~1.5mmとなっているが、写真のアリは1.8mmとやや大きい。 しかし、他に類似種が居ないし、形態的特徴が記述と一致するので、サクラアリとして問題無いと思う。サクラアリ.頭部に続く膨らんだ部分が前胸、それに続く凸凹した部分があるのが中胸、その後に続く黒っぽく細いのが後胸溝、その後の腹部の前にある部分は、実際は胸部ではなく腹部で、前伸腹節と呼ばれる触角は全部で12節だが、右の先端節は無くなっている(写真クリックでピクセル等倍)(2010/11/20) この図鑑には属までの図解検索表が付いている。しかし、亜科への検索で腹側から見た腹部末端の詳細や付節末端の爪の突起など、微小な構造が問題となるので、小型のアリを写真に撮った場合は亜科まで落とすのは先ず無理である。しかし、図解検索の2段目までは進めたので、ヤマアリ亜科かカタアリ亜科の何れかに属すことが分かった。 その後は、どうしても絵合わせとなる。図鑑に載っているこの2亜科のアリは僅か82種である。だから、図鑑のページを1枚ずつめくって行けば容易に目的の種に辿り着くことが出来る(何しろ、「日本産アリ全種図鑑」なのだから)。全く所属の分からない奇妙奇天烈な小甲虫を撮って、甲虫図鑑の2~4巻の全部を調べるよりは遥かに楽である。 図鑑の解説には、「体色は褐色で,触角と脚は黄褐色.触角べん節の第2~4節の幅は長さよりも長い」、「胸部は短く,頭部と同じくらいの長さ.側方から見て,前胸は急に立ち上がり,中胸は弱く曲がり,両者で1つの大きく曲がる弧をえがく.前伸腹節背面は短い.後胸溝背面での凹みはわずかで短い.中胸背板に1対,前伸腹節に1対の剛毛がある」とあり、写真のアリの特徴と一致する。なお、アリの触角はスズメバチ等とは異なり、梗節が無く、梗節に見えるのは鞭節第1節となる。横から見ると、中胸背板に1対,前伸腹節に1対の剛毛があるのが分かる。前胸背板にも剛毛が認められる(写真クリックでピクセル等倍)(2010/11/20) 殆どの読者は御存知と思うが、アリはハチと同類で、膜翅目細腰亜目アリ上科アリ科(Formicidae)に属す。アリは翅のないハチとも言えるが、アリの他にも無翅のハチ(特に雌)が色々な分類群に存在する。 翅がないのでアリと思ったら、○○バチであったと言うことも屡々起こり得る訳で、実際、昆虫の掲示板などに「この変なアリはなんでしょう」と云う様な質問でアリガタバチやカマバチ等が登場する。触角の折れ曲がったところから鞭節で第1節は長いが黒い輪の付いた第2節以降は第4節位までは短い(写真クリックでピクセル等倍)(2010/11/20) これまで、このWeblogでアリを紹介したのは、ハリブトシリアゲアリ1種だけだと思う。しかし、我が家には他にも色々なアリが居る。ところが、普段、地面を歩いているアリは彼方此方歩き回って留まることを知らず、撮影は殆ど不可能である。 だが、何か餌などに在り付いている時は余り動かないので被写体になり得る。ハリブトシリアゲアリもアブラムシに集っていたから撮影出来たのである。 今日のサクラアリは、コスモスの花の上で何かに御執心であった。多分、昨日掲載したワタアブラムシが排泄した甘露を食べていたのであろう。前回掲載したコスモスに寄生していたワタアブラムシが排泄した甘露を求めてやって来たらしい(写真クリックでピクセル等倍)(2010/11/20) このWeblogは、最初に「こういう都会でも実はイロイロ[虫が]居ますよ、と言うことを知って貰う」と云う意図で開設したのだが、やはり都会の駅から僅か250mの住宅地ではかなりキツイ。最近はネタ切れ状態が慢性化している。これからは、砂糖水で誘き寄せるなどして、アリも撮ることになるであろう(但し、今アリは冬眠中、来春以降となる)。
2010.11.22
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実は、此処数年間使っていたマクロレンズが、先月の中程に故障してしまった。マクロレンズは、別に仕事に使っているのがある(カメラもレンズも別メーカー)ので、カメラ本体と一緒に其方に切り換えていたのだが、お気づきになった読者は居られるだろうか。 先日、その修理に出していたメーカーから電話があった。修理に、私にとっては予想外の費用が掛かるとのこと。暫くどうするか悩んだが、もうその故障したレンズを付けていたカメラ本体やそのカメラ用の他のレンズも一切合切全部処分して、仕事用のカメラ1系列のみにすることにした。 そうすると、問題が1つ生じる。この仕事用のカメラのマクロレンズは、以前の実験では、テレプラスを使って超接写をすると著しく解像度が落ちるのである。しかし、暫く経ってから、これはレンズの絞値表示の違いに拠るらしいことに気が付いた。 今までこのWeblog用に使っていたマクロレンズは開放時の焦点比(F値)が2.8であるが、等倍接写状態にすると5.6になってしまう(絞り開放で等倍接写をすることなど有り得ないので、暫く気が付かなかった)。もう一方のレンズでは、等倍にしてもF値は変わらない。これが誤解の基であった。 少しややこしい話になるが、普通に撮影する時の露出は、被写体が無限遠点(撮影倍率0倍)にあると仮定してあり、被写体が近づくと露出を増やさなければならない。露出倍数は(撮影倍率+1)の2乗に比例する。通常のレンズでは最接近しても撮影倍率は精々0.2程度だから(0.2+1)の2乗=1.44で、補正をしなくても大した問題にならない。しかし、等倍接写では(1+1)の2乗=4、即ち露出倍数は4倍となる。これはF値では2段分だから、無限遠点で開放時にF2.8であれば、等倍接写時にはF5.6になったのと同じである。 どうも、故障したマクロレンズは、この露出補正をした絞値を表示していたらしいのである。だから、少し絞り込んだ状態(例えばF22)で撮影した場合、実際の絞りの状態はF11だと考えられる。 其処で、最近使用している仕事用のマクロレンズの絞を大いに開け、テレプラス×2を挟んで撮影してみた。下の写真は絞値8(F8)で撮影したものである。最大に拡大表示すると、ピクセル等倍(横幅1000ピクセル)になる。ワタアブラムシの無翅雌.テレプラス×2を使って約2倍で撮影体長1.4mm.右上に見えるのは若齢幼虫であろう(写真クリックでピクセル等倍)(2010/11/20) 被写体は、コスモスの花にいたワタアブラムシ(Aphis gossypii)で、体長1.4mm、先日「サトクダマキモドキ(初齢幼虫:10月19日出現)」の脇に写っていたのと同じ種である。その記事の2枚目の写真を見ると、背中が縞模様に見えるからまだ幼虫らしい。今日の写真はその成虫である。 ワタアブラムシは以前掲載したことがあるので、虫自体については其方を参照されたいが、誤解を避ける為に、丁度今頃話題になる所謂「ワタムシ」とは全く無関係で、アオイ科のワタ(綿)に付くのでその名が付いた(実際は非常な広食性)ことだけは書いておこう(ワタアブラムシはアブラムシ科:Aphididae、アブラムシ亜科:Aphidinaeに属し、所謂ワタムシは主にタマワタムシ科:Pemphigidae)。 さて、上の写真の出来映えだが、ピクセル等倍でこの程度なら充分使える。図鑑に拠れば、尾片には5本程度の毛があるそうだが、残念ながら見えない。しかし、これは背景が真っ白なせいであろう。 これで超接写に関しても問題なしと相成り、安心してカメラを1系列にすることが出来た。万歳万歳(板垣征四郎大将は、最後に「まんざい」と言ったそうだ)。
2010.11.21
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毎年、秋になるとセイタカアワダチソウや「北米産原産シオンの1種(紫花)」にやって来る、やや小型のガガンボが居る。ガガンボという虫はややこしい双翅目の中でも特にややこしい連中で、撮っても種類が分かる可能性は殆ど無く、普段は撮影しないことにしている。 しかし、この写真のガガンボ、口吻がある種のシギ類(ダイシャクシギ等のNumenius属)の様な形をしており、かなり特徴的である。しかもこの辺り(東京都世田谷区西部)では極く普通な種と言える。ヒョッとして分かるのではないかと思い、写真を撮ってみた。体長は約8mm、翅長は約7mmである。「北米原産シオンの1種(紫花)」に来たヒメガガンボ科のGeranomyia gifuensis.和名はまだ無い右後肢が取れて無くなっている(写真クリックで拡大表示)(2010/11/02) ガガンボの様な、体が細く脚が異様に長い双翅目昆虫は色々な科に存在する。ガガンボ科の他に、近縁の科としてはシリブトガガンボ科、ヒメガガンボ科、オビヒメガガンボ科等があるが(これらを全てガガンボ科に含める研究者も居る)、一見非常に良く似ているにも拘わらず、それぞれ下目のレベルで異なる全く遠縁のガガンボダマシ科、コシボソガガンボ科、アミカ科等と云うグループもある。全く困った連中としか言い様がない。羽ばたきながら吸蜜することも多い.偶然に翅を拡げたところが撮れた吸蜜中も常に体を上下に揺すっている(写真クリックで拡大表示)(2010/11/02) これらの科の違いは、主に翅脈をみれば大体の見当が付く。しかし、1つの科の中でも翅脈にかなりの変化があるので注意が必要。写真のガガンボの翅脈(写真の解説を参照)を見ると、どうやらヒメガガンボ科の様である。 ヒメガガンボ科には、口吻が体長よりも長く、しかも真っ直ぐなクチナガガガンボと云う種がある。しかし、口吻の細部を見ると、これとはかなり違う。翅脈を拡大.前縁脈とR脈基幹の間にあるSc脈が無い様に見えるが他のぼけた写真を見ると、Sc脈は前縁脈とR脈の間に存在しており矢印Aの所で、Sc1とSc2(Sc-R)の2本に別れ直後にSc1は前縁脈に、Sc2はR1に終わっている矢印Bの所はどうなっているのか良く分からないヒメガガンボ科では、普通R1は前縁脈に合すがここではR2+3に繋がっている様に見える(写真クリックで拡大表示)(2010/11/02) 北隆館の新訂圖鑑の解説を読むと、口吻の長いヒメガガンボ科のグループは他にも幾つか存在する。しかし、図版を見ても殆ど何も分からない。お手上げである。 其処で、例によって双翅目の掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂・改」のお世話になることと相成る。此処には、達磨大師様と云うガガンボの権威が居られるのである。横から見ると後肢の取れた跡が生々しい常に体を上下に揺すりながら吸蜜する(写真クリックで拡大表示)(2010/11/02) 達磨大師様は、一年程まえ白神山地の研究室に転勤され、研究棟の建設とか今かなりお忙しい筈なので、気長に御返事を待つつもりで居た。ところが、何と一時間も経たない内に御返答を賜った。 「交尾器の詳細がわからないので「絶対に」とはいえませんが、ヒメガガンボ科ヒメガガンボ亜科のGeranomyia gifuensis Alexander, 1921 に一票.本州で記録されているGeranomyia属既知種で翅に斑点模様がないのは本種のみです」との御答えであった。 北隆館の圖鑑に拠れば、このGeranomyia属に属すヒメガガンボは「口吻が鳥のクチバシ状に突出している」そうである。横から見たGeranomyia gifuensisの顔「宇宙人的」と表現する人もいる(写真クリックで拡大表示)(2010/11/02) 御話に拠れば「本州で記録されているGeranomyia属既知種で翅に斑点模様がないのは本種のみです」なのだから、殆ど決まったも同然の様な気がするが、大師様は「・・・に一票」としか書かれていない。 これは、ガガンボ類(ガガンボ科とその近縁科)の研究が圧倒的に不足している(研究者が少ない)ことに起因している思われる。「一寸のハエにも五分の大和魂・改」での情報に拠ると、ガガンボ科の代表的な属の一つであるTipula属では、日本で記録されている種は約100種だが、実際には400種以上が生息するとのこと。この様な事情はTipula属に限らず、ガガンボ類全体に通じると思われる。既知種よりも、未記載種や日本未記録種の方がずっと多いのである口吻は形や太さが部分により異なり、かなり複雑な構造をしている途中左側に飛び出しているのは小腮鬚と思われる(写真クリックで拡大表示)(2010/11/02) ヒメガガンボ科(Limoniidae)は九大目録ではヒメガガンボ亜科(Limoniinae)に入っているが(ガガンボ類の上位分類には議論が絶えない様である.近縁の科として上に挙げた数科を全てガガンボ科に含める研究者もおり、九大ではそれを採用している)、亜種も含めて488もの記録が出て来る。 また、Geranomyia属(九大目録ではLimonia属の亜属として扱われている)には、7種8亜種が記録されている。この属(亜属)がどの程度研究されているのかは分からないが、Tipula属と同じ程度とすれば、他に20種位は未記載種や日本未記録種が居る可能性がある。単純に、Geranomyia gifuensisと決めつける訳には行かないのである。オマケの1枚.右後肢が無いのが目立つ(写真クリックで拡大表示)(2010/11/02) ・・・と云う訳で、今日の虫はヒメガガンボ科(Limoniidae)ヒメガガンボ亜科(Limoniinae)の「Geranomyia gifuensis?」と、「?」を付けて置くことにした。尚、Geranomyiaを亜属とした場合の学名は、Limonia (Geranomyia) gifuensisとなる。
2010.11.15
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今年の秋は、草木の開花が遅れている。御近所のサザンカは20日近く遅れて今漸く七分咲き程度だし、我が家の「北米原産シオンの1種(紫花)」も例年よりも2週間程遅い今時になってほぼ満開となった。 この花も虫集め用に植えてあるだけあって、セイタカアワダチソウに劣らず「集虫力」が強い。しかし、今年は時期が遅れたせいで日当たりが悪くなってしまい、今一つ虫の集まりが宜しくない。それでも、何かと虫がやって来る。「北米原産シオンの1種(紫花)」で吸蜜するイヌビワハマキモドキの雄(写真クリックで拡大表示)(2010/11/10) 先日、そのシオンの花の上に枯葉のカケラの様なものが「付着」しているのに気が付いた。1辺5mm位の三角形をした焦げ茶色の平らなものである。肉眼では何だか良く分からないので、マクロレンズで覗いてみた。・・・すると、何と小さな蛾で、以前、町の奥にある家庭菜園で撮影したことのあるイヌビワハマキモドキ(Choreutis japonica)であった。ハマキモドキガ科(Choreutidae)ハマキモドキガ亜科(Choreutinae)に属す。大きさは、形を頭を頂点とする2等辺3角形と見なしたとき、頂点から底辺までが約6.5mm、翅長は約5.5mm。触角には毛が生えているので雄であろう.動くときは瞬間的に移動する(写真クリックで拡大表示)(2010/11/10) 上の写真で明らかな様に、触角には沢山の毛が生えている。以前撮影したイヌビワハマキモドキの触角にはこの様な毛は認められなかった。触角が発達するのは雄と決まっているから、此の個体は雄で、以前撮影したのは雌であろう。 昨年の秋、同じハマキモドキ亜科だが属の異なるゴボウハマキモドキを紹介した。属は違うが動き方は実によく似ている。ゆっくりと歩いたり体を傾けたりすることはなく、瞬間的にツッ、ツツッと移動する。体を傾けたり、何かに驚いて頭を持ち上げたりする時も同様である。前から見たイヌビワハマキモドキ(写真クリックで拡大表示)(2010/11/10) この個体を撮影する2週間程前、やはりイヌビワハマキモドキを我が家で見かけた。この時は、1枚も撮る閑無く逃げられてしまったが、ヒョッとすると、同一個体かも知れない。と云うのは、今日の写真の個体はかなり色が褪せているからである。胸部は剥げていないから、スレ(擦れ)ているのではない。色が褪せているのは、羽化後時間が経っているからではないだろうか。 勿論、同じ頃に発生した個体が来たのなら、別個体でも色は同様に褪せているだろうから、これは、まァ、非常に乱暴な憶測ではある。イヌビワハマキモドキ(雄)の触角.毛の生え方は非常に複雑(写真クリックで拡大表示)(2010/11/10) ゴボウハマキモドキの時もそうであったが、吸蜜する時に逆立ちに近い格好をする。小型の蛾で口吻が余り長くない場合は、そうしないと口が蜜線に届かないのかも知れない。 マクロ撮影する場合は、殆どストロボ同期で撮影する。ストロボの光はカメラの上の方から来るから、頭が下だと顔が影に隠れてしまい、写真としては使い物にならなくなってしまうことが多い。逆立ちをする虫は結構多いが、撮る方にとっては何とも困った習性である。イヌビワハマキモドキの横顔.口の下から前上方に伸びているのは下唇鬚(写真クリックで拡大表示)(2010/11/10) 保育社の「原色日本蛾類図鑑」に拠れば、イヌビワハマキモドキの「幼虫はイヌビワやホソバイヌビワの葉面にいる」と書かれている。これらの植物は「ビワ」と名が付いても、所属はバラ科ビワ属ではなく、クワ科イチジク属である。同図鑑には「イチジクには未だ見ない」とあるから、食性はかなり狭いらしい。 イヌビワやその変種であるホソバイヌビワは何れも南方系の植物で、分布は関東以西とされているが、この辺り(東京都世田谷区西部)では余り見ない。しかし、我が町には戦前から庭をその儘にしていると思われる御宅が所々にあり、その様な御宅などに自然発生的に生えていることがある。そう云う場所のイヌビワからこのイヌビワハマキモドキが発生しているのであろう。逆立ちに近い格好で吸蜜することが多い(写真クリックで拡大表示)(2010/11/10) 最初の方で、「以前、町の奥にある家庭菜園で撮影したこと」があると書いた。この時の個体は非常に新鮮で色鮮やかであった。直ぐに逃げられてしまい、写真は同じ様なのが2枚しかないが、興味のある読者諸氏は此方をどうぞ。
2010.11.12
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今年の秋は、例年に比して、我が家の庭を訪れるハナアブの種類が多い。先日紹介したキスネクロハナアブやシママメヒラタアブは初めて見るハナアブだったし、2年に1度位しか姿を見られないキゴシハナアブも今年は既に何回かやって来た。 今日、紹介するオオフタホシヒラタアブ(Syrphus ribesii)も普段は滅多に現れない、この辺りではかなり稀なハナアブである。しかし、今年はその姿を3~4回も見ている。やはり、これもこの夏が異常に暑かったことと関係しているのであろうか。オオフタホシヒラタアブの雌.体長15mmと大きい背景がセイタカアワダチソウなので色が映えない(写真クリックで拡大表示)(2010/10/22) 実は、このオオフタホシヒラタアブは、既に4年前に紹介済みである。しかし、この時は遠くから産卵している所を背面から撮った同じ様な写真2枚しか掲載出来なかった。産卵中だから体を丸めており、頭やお尻は良く写っていない。 今回の写真も枚数は多くはないが、ずっと近寄って撮影しているし、また、色々な角度からも撮影してある。種の特徴がかなり良く出ていると思うので、再掲載することにしたのである。
2010.11.10
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今日は、またハナアブの1種を掲載しようと思って原稿を書いていた。しかし、よく考えてみると、それではハナアブ科が3回も続いてしまうことになる。其処で、急遽主人公をハエトリグモに変更することにした。 当Weblogの表題は「我が家の庭の生き物たち」である。従って、家の中に居る生き物はその対象にならない。しかし、こうネタが少なくなってくると、(私自身を除いた)家の中の生き物も紹介しないと間が持たなくなって来る。ブルーベリーの葉上で大人しくしているアダンソンハエトリの雌最初は台所の流しのゴミ受け付近で溺れかけていた(写真クリックで拡大表示)(2010/11/02) このハエトリグモ、台所の流しにあるゴミ受け網の辺りでウロウロしていたのを見つけた。幸い、洗剤を使っていなかったので窒息死することはなかったが(洗剤=界面活性剤の入った水が体に付くと、水が気管や書肺の中に入り込んで虫やクモは窒息死する)、かなり弱っていた。 屋内で生活するアダンソンハエトリだと思って手で掬って良く見ると、頭胸部や腹部にあるはずの白い半月形の紋が無い。全体の色も黒ではなく茶色である。一体、何ハエトリ? 庭に居るクモや虫が服に付いて部屋の中に入ってくることは良くあることである。取り敢えず、陽の当たる、ベランダからの入り口に置いてある足拭きマットの上に逃がしてやった。真横から撮ったアダンソンハエトリの雌一番良く見えるのは後側眼(写真クリックで拡大表示)(2010/11/02) 良く見てみると、腹背に2本の筋がある。これは、本来屋内に生息していたが、最近はアダンソンに負けて屋外生活を強いられているミスジハエトリではないのか? 暫くすると、大分元気になってきた。其処で、ブルーベリーの葉に載せて写真を撮った。ハエトリグモの魅力は何と言っても双眼鏡の様な前中眼屋内に生息するせいか、他のハエトリグモよりも大きい(写真クリックで拡大表示)(2010/11/02) しかし、写真をコムピュータで拡大してみると、ミスジハエトリではない。ミスジハエトリの腹部の紋は一直線で他に紋はないが、このハエトリの紋はかなり曲がっているし、腹部にかなり細い縦筋が沢山ある。これ一体何者?? 調べてみると、直ぐに分かった。何てことはない、アダンソンハエトリ(Hasarius adansoni)の雌であった。アダンソンハエトリは屋内生活者、即ち、「家の中」の生き物である。同じ様な写真をもう1枚(写真クリックで拡大表示)(2010/11/02) しかし、我が家の屋内で見るアダンソンは黒地に白い筋のある個体(雄)ばかりである。かなり小さい個体でも模様は同じ。ヒョッとして幼体は雄に似ているのかと思って調べてみたが、そんなことはない。幼体は雌に近い配色をしている(かつて掲載していた)。 かなり以前から眼が悪くなっている(比較の問題で老眼ではあるが視力1.5はある.昔は2.0をかなり上回る時もあった)ので、今まで気が付かなかったとしか思えない。ヤレヤレと落ち込むこと暫し。斜め前方から撮るのを忘れてしまった.斜め上からで御勘弁を(写真クリックで拡大表示)(2010/11/02) ・・・と云う訳で、今回は「家の中」に居たアダンソンを無理矢理庭に出して撮影したことになってしまった。1種の「ヤラセ」だが、アダンソンは暖かい時期には屋外でも普通に見られるので、そう気にする必要もないかも知れない。 家の中には、庭に居るのとは別の虫達が居る。我が家の中は常に乾燥させているので虫は多くないが、多少は居る。その多くは「害虫」である。このアダンソンハエトリの雌を機会に、今後は家の中の「害虫」も紹介して行こうと思う(「ゴキ」は居ないので御安心を!!)。
2010.11.08
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かなり以前から、写真を拡大表示出来る様にしたが、その為には平均的に解像力を少し上げる必要があり、結果として絞りを以前よりも少し拡げなければならない。絞りを拡げれば焦点深度が浅くなり、当然の結果として焦点合わせが微妙になり、撮影枚数が増えてしまう。 枚数が増えれば、撮った写真の選別(ピクセル等倍にして必要な部分の端から端まで調べる)に相当な時間を要すことになり、また、安全を見越して撮影するので使える写真の枚数も以前よりは多くなってしまい、掲載用に調整しなければならない写真も増える。 ・・・と云う訳で、最近は原稿を書く閑がない、と言うか、写真の調整だけで疲れてしまい、原稿を書く気力が出ない。こう云う時は、写真1枚だけの日を間に挟んで、間を持たせることにする。 幸い、昨日の朝、変なハナアブを撮った。直ぐに逃げられてしまったので、この写真1枚しかない。アシブトハナアブと思ったのだが、腹部には細い黄色横帯があるだけで、この種に見られる筈の第2腹節背板の幅広い黄帯に囲まれた「エ」の字形(「二」の場合もある)の黒斑がない。これ、本当にアシブトハナアブ??アシブトハナアブ(雌:黒化型).前回と同じくハナアブ科(Syrphidae)ナミハナアブ亜科(Milesiinae)だが、ナミハナアブ族(Eristalini)腹部第2節背板の黄色帯が極めて細い(写真クリックで拡大表示)(2010/11/03) しかし、市毛氏の「ハナアブ写真集」を見ると、アシブトハナアブ(Helophilus virgatus)以外には考えられない。其処で、Web上でアシブトハナアブの画像を片っ端から見てみた。しかし、これ程第2腹節の黄色帯が薄くなっている個体は見付からなかった。挙げ句の果ては、例によって「一寸のハエにも五分の大和魂・改」にお伺いを立てる次第と相成る。 早速、pakenya氏から「アシブトハナアブのメスですね」との御回答を得た。これで一安心、Weblogのネタとして使える。pakenya氏に感謝!! 氏に拠れば、「あまり注意してみていませんが、暗色傾向の強いものもしばしば見られます.たまに、横縞がほとんど見えないものもあり、さすがにこのようなやつに出会うと何者?!ってな感じにどきっとします」とのこと。此処に載せた程度の黒化は、ハナアブを見慣れた人にとっては、驚くに足らない程度の変異らしい。 ハナアブ類の腹部背板の模様は、安定して変化の少ない種類もあるが、このアシブトハナアブの様に非常に変化に富む種類も多い。ハナアブ類の種類を見極める時は、余り腹部の模様を頼りにしない方が無難な様である。
2010.11.04
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今年は、9から10月上旬にかけて余りにも虫が少ないので、園芸店に何度か出掛け、虫集めの為に10種程度の花を買ってきた。勿論、店の展示場(青空天井)で沢山虫が来ているのを選んだのだが、家に置いてみると、我が家の周辺には基本的に虫が少ないらしく、多少の効果が認められたのはコスモスとカラミンサ位のものであった。 やがて、鉢植えにしてあるセイタカアワダチソウが咲き始めた。やはり虫集め専用に植えているだけあって、凄い「集虫力」である。ハエ、アブ、ハチ、蝶、蛾、更にはヒトスジシマカまでがやって来る。残念ながら、その多くは既に紹介済みの種類だが、先日のニホンミツバチも含めて、何種類かの未掲載や新顔の虫がやって来た。セイタカアワダチソウにやって来たキスネクロハナアブ(雄)(写真クリックで拡大表示)(2010/10/19) 今日は、その中から我が家としては「珍種」であるキスネクロハナアブ(Cheilosia ochripes)を紹介する。最初はセイタカアワダチソウに来たのだが、虫の重みで花穂が枝垂れて虫は花の下側になってしまい、旨く写真が撮れない。その内、既に黄色くなり始めたブルーベリーの葉に留まったので、セイタカアワダチソウに留まっている写真は最初の1枚だけである。ブルーベリーの葉に留まるキスネクロハナアブ(雄)(写真クリックで拡大表示)(2010/10/19) キスネクロハナアブはハナアブ科(Syrphidae)ナミハナアブ亜科(Milesiinae)クロハナアブ族(Cheilosiini)に属す。写真の個体は、体長約13mm、翅長約10.5mm、翅端まで約16mmとかなり大型で、遠くから見るとアメリカミズアブによく似ていた。双翅目をよく知らない人ならば、ミズアブ類と間違える可能性がある。斜めから見た図.かなり這いつくばっている感じ(写真クリックで拡大表示)(2010/10/19) このクロハナアブ類を我が家で見るのは初めてである。似た様な種類が多く、ハナアブ類の中でも最も厄介な連中として名高い。特にこのキスネクロハナアブの属すクロハナアブ属(Cheilosia)は種類数も多く(九大目録で58種、「みんなで作る双翅目図鑑」では65種)、更に、酷く類似していて、素人には禁断のグループとされている。頭部を斜めから見ると、複眼に毛のあること触角第3節が殆ど円形であることが分かる(写真クリックで拡大表示)(2010/10/19) 私はよく知らないのだが、市毛氏の「ハナアブ写真集」を見ると、複眼無毛のAグループ、複眼有毛で顔有毛のBグループ、複眼有毛で顔無毛のC・Dグループと、全部で4つのグループに分けられるらしい。 写真を見れば明らかな様に、複眼には毛がある(上の写真)。顔は正面から見ると周辺には若干の毛がある様に見えるが、全体としては無毛である(下の写真)。どうやらC・Dグループに属すらしい。正面から見たキスネクロハナアブの顔周辺部を除いて、顔は無毛である(写真クリックで拡大表示)(2010/10/19) ハナアブ類の識別には脚の色が問題になることが多い。写真でお分かりの通りセイタカアワダチソウの花粉だらけで脚の色は良く分からないが、各腿節は黒く先端のみが茶褐色、脛節はほぼ茶褐色の様だが、その後半はやや色が濃い様に見え、各付節は暗色である。また、触角第3節は殆ど円形をしている(上の上の写真)。 これらの特徴を基に、市毛氏の「ハナアブ写真集」で調べてみたところ、オオクニクロハナアブが一番近い様に思えた。しかし、頭の形が一寸違う。それに「ハナアブ写真集」に載っていない種類もかなりある。専門家によってキスネクロハナアブと認められた写真は少ないと思うので、沢山写真を出しておく本来は最初に出すべき正立背面像(写真クリックで拡大表示)(2010/10/19) 其処で、例によって「一寸のハエにも五分の大和魂・改」のお世話になる次第と相成る。 早速、ハナアブの研究をされているpakenya氏から御回答を頂いた。オオクニではなくキスネクロハナアブであった。「ハナアブ写真集」でオオクニの上に出ていた種である。御話に拠れば、「夏から秋に見られる種で、特に秋に見る機会が多いです.この仲間の同定は困難なものがほとんどですが、この種は比較的わかりやすいです.複眼有毛、顔面は長毛を欠き、小楯板には長毛はあれど剛毛を欠くいわゆるC種群の大型種で、顔の中隆起の上辺がなだらかなので横顔に特徴があります.春に出現するC. japonicaニッポンクロハナアブと酷似していて、同じ種の季節型ではないかと推定する人も居ますが、中隆起の形と眼縁帯下部の幅がキスネの方が狭い傾向があり、形態が違うのであれば別種であろうと考えています(私は)」とのこと。 更に、「キク科の花によく来るため、花粉まみれになっている個体をよく見ます。アーチャーンさんの画像の個体も黄色の花粉が大量に付着していますね.セイタカアワダチソウにでも寄ってきたのでしょう」と、正に御賢察の通りであった。オマケのその1(写真クリックで拡大表示)(2010/10/19) 最近は「東京都本土部昆虫目録」に載っていない(東京都未記録)種を撮影することが屡々ある。其処で、このクロハナアブも「もしや?」と思い、一応確保(ネットで採集して大きなプラスティックの筒に入れた)して置いた。だが、残念ながら(ハナアブ君にとっては幸いにも)目録にチャンと載っていた。 しかし、その記録は狭山丘陵(東京都北部、埼玉県との境)にただ一つあるのみで、皇居や赤坂御所、常盤松御用邸、井の頭公園付近での報告には載っていない。少なくとも、この辺り(東京都世田谷区西部)の住宅地では相当の「珍種」と考えて良い様である。オマケのその2(写真クリックで拡大表示)(2010/10/19) pakenya氏からの御回答にも「この種は都内にも記録がありますね」とあった。其処で早速、囚われの身となっているキスネクロハナアブを逃がしてやった。 採集してからほぼ丸一日(暴れるといけないので暗い所に置いておいた)だが、まだ元気一杯、蓋を開けた途端に何処かに消えて見えなくなってしまった。
2010.11.01
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