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アウディA1。それはコンパクトカーの世界に、新たな流れを作る可能性を秘めている。 もっともコンパクトカーの世界は昨年の“ポロ・ショック”以降、新機軸が求められ様々なメーカーから様々な答えが提示された。品質の高さで他を圧倒的したVWポロに対して、どんな解を出すか? とにかく安く、とにかく実用的、とにかく燃費に優れた…答えは様々に出されたが、どれも強いインパクトに成り得なかったのだ、A1の登場までは。 そんな中にあってA1は、登場と同時に強烈でポロ以上に圧倒的なインパクトを与えた。まるで一流のアスリートが世に名を広める瞬間のように、ひとつのプレイで一瞬のうちに、見る者に全てを納得させるように。 そんなA1を僕の言葉に説明するならば、「小さいけれど、完璧にアウディ」が相応しいだろう。とにかく品質においてはクラスのベンチマークであるポロを過去のものにするほどの内容を備える。もちろんそこにはVWとアウディという同じ一族ながらも全く異なる“ブランドとしての差”も含まれるから当然なのだが、そうした事情を知ってもなお、目の前に展開されるクオリティに圧倒される。 事実、A1の内外装は確実に上級モデルのA3を超え、A4と同等の質感を実現している。外装ではライト類の徹底した作り込みやキャラクターラインの精度が異様に高く、内装ではダッシュボードの素材に始まり、樹脂部分へのウレタン塗装、エアコン吹き出し口のつまみに与える金属調パーツまでが徹底的に作り込まれている。ゆえに目の前にはサイズこそ小さいながらも完璧なアウディの世界観を持つ1台が佇んでいる、というわけだ。 いまコンパクトカーの世界を牽引する同族のVWポロは、あらゆる品質を高次元バランスさせた存在。それ以外ではミニやフィアット500がデザインでこの世界を牽引する。そして国産車はコストパフォーマンスで…といった中でアウディA1は、手垢にまみれた表現こそ昔からあるが、実はこのクラスで具現化された例がほとんどない“小さな高級車”をしっかり体現した。これぞ「ありそうでなかった」新たな価値観だ。 アウディA1はそのメカニズムをVWポロと多く共有する…と言いたいが、今どきのアウディとVWの関係はそれほど単純でもない。 確かに基本を同じにするものの、チューニングが異なるのはもちろん、ラインナップに対する考え方も違うためひと口に同じと言い難い。事実今回のエンジンラインナップを見てもポロとは仕様が全く異なる。 ガソリンは1.2/1.4リッターのTFSIで、他にディーゼルの1.6TDIを用意。排気量だけで見ればポロと同じように思えるが、実は1.2TFSIは直噴ターボでも低出力タイプで、ポロ1.2TSIの105ps版と違い86ps版となる上に、5速MTと組み合わされる。そして1.4TFSIはポロでは180psのツインチャージャー版のみが存在するが、A1では1.4リッター直噴ターボ、つまりシングルチャージャーの122ps版となり、組み合わされるトランスミッションは6速MT/7速Sトロニックとなる。ここにA1というクルマのキャラクターがハッキリと表現され、ポロとの違いを見出すことができるわけだ。 VWポロは トップスポーツモデルのGTI を除くと、1.2TSI搭載車が通常モデルの最上級となる。これに対しアウディA1は1.4TFSI搭載車が通常モデルの最上級となるわけで、ここからもA1がプレミアム路線だとハッキリと判る。しかし一方で1.2TFSIがポロの1.2TSIよりも低出力版である理由は、A1において販売台数の主力になるだろう1.2TFSI(とディーゼル)で燃費値とCO2排出量をなるべく引き下げておきたいという狙いがあることは明らかだ。 もっともA1の1.2TFSIは5速MTとの組み合わせかつ車両重量の関係からかCO2排出量は118g/kmと 日本のポロ1.2TSI(7速DSG) の116g/kmよりわずかに多く、燃費値も19.6km/Lとなる。そして1.4TFSIは7速Sトロニックが効いてCO2排出量119g/km、燃費値は19.2km/Lとなる。ちなみに1.6TDIはCO2排出量99g/km、燃費値が26.3km/Lだ。 先述した数値の通り、A1は今後のCO2排出量低減を考えて数字を小さくするための様々な努力を行っているが、中でも注目は2ペダルながらアイドリングストップ機構のスタート・ストップ・システムを盛り込んだ点だ。既に高級車では2ペダルでもアイドリングストップ機構は標準的になっているが、コンパクトカーの世界でも2ペダルのアイドリングストップ機構が標準とされつつある点は注目で、A1はフィアット・プント・エヴォやアルファロメオ・ミトTCTと並んでその先駆けといえる。日本ではマツダアクセラがi-stopを備えるが、Bセグメントで今月発売予定のマーチがはじめてとなる。そう考えるとやはり欧州の小型車はひと足先を行っている。 さらにA1はこの他に、同社のSUVであるQ7なども採用している「ブレーキエネルギー回生システム」を標準装備する。これは加速時にはオルタネーターを電圧制御して負荷を減らす一方、減速時や惰力走行時に100%発電に回してエネルギーを回収して、トータルでオルタネーターの負荷を減らし、SOCが広いディープサイクルバッテリーへと貯めることで少しでも燃費低減につなげようとする仕組み。ちなみにバッテリーは大きくなるため、A1はこれをトランクに搭載して重量バランスにも気を遣い、結果前軸重を61%とするこだわりも見せている。 内外装の質感は高く、環境への対応も万全。では実際の走りはどうか? これも「小さいけれど、完璧にアウディ」の言葉が相応しい。前後のサスペンションをはじめとする基本メカニズムはポロと共用だが、やはり味付けは全く異なるアウディのそれだ。 だから端的に言うと、乗り味と走り味はポロよりもさらに重厚感があり落ち着いた感覚がある。そしてその上でスポーティな感覚だ。 ポロと比べて大きく違うのはステアリング・フィールで、重みと切れ味が増している。重みが重厚感と落ち着きを、切れ味がスポーティさを演出してくれているわけだ。ゆえに走らせると全体的に、ポロよりも上質な感覚が漂う。もっともこの辺りは狙い通りのはずだ。ちなみに試乗車は17インチを履いていたが、5月末にニュルブルクリンクで試した17インチの ポロGTI と比べると、しなやかな感触がしっかりと作り込まれていることが確認できた。 キャラクターの違いもあるが、ポロGTIと比べるとフラット感が高く、プレミアム・スポーツと呼ぶに相応しい味わいを醸し出していたのだった。
これだけの要件を備えないと、プレミアムカーとは言えないのです。
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