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MERCEDESのSLKといえば、オープンカーの中でも最高級車です。 この記事はCar Watch 岡本幸一郎レポートからです。
「SLK」に触れると、メルセデスはセダンも得意なら、スポーツカーも侮れないほど得意なメーカーだと痛感させられる。当時はコストダウンに走ったメルセデスを象徴するように感じられた初代SLKも、乗ればそれなりにスポーティだったし、実際にも売れに売れた。 いきなり立派になった続く2代目は、クオリティ感が大幅に向上するとともに、走りにおいても、これほど快適性と操縦安定性とスポーツ性を巧みに両立したクーペ・ロードスターなど、同クラスには他に存在しないと痛感させられた。 同じくドイツ製の同価格帯のライバルに対しても、それぞれよいところはあるものの、「両立」という意味では先を行っていたと思う。 そして3代目を迎えたSLKは、さらに立派に、そして男らしくなった。 ボディーサイズは2代目に対し微増で、ロングノーズにショートデッキ、その上にコンパクトなキャノピーが載るというクラシカルなプロポーションは、見てのとおり受け継がれている。 印象としては、2代目の後期型のマスクは「マクラーレンSLR似」と言われもしたが、今度の3代目は「SLS AMG」に通じる雰囲気がある。2代目もそうだったが、ルーフやトランクの形は、一昔前の電動メタルトップでは考えられなかったほどの丸みが表現されているし、3代目ではボディーパネルの面構成が、さらに非常に表情豊かになっており、上質感が高まっている。 低めのポジションのシートに収まると、目の前にある景色は、これがSLKかと思えるほど立派。横方向の広がりを感じさせるインパネには、クオリティ感の高いマテリアルがふんだんに用いられており、これまたSLS AMGに通じる十文字のエアコン吹き出し口が配されている。 夜間のドライブでは、無数に配された光の演出も見られる。もはやライトなスポーツカーというよりも、とても上質高級ロードスターの貫禄がある。 計5種類ものインテリアカラーが用意されており、AMGスポーツパッケージを選ぶと、シートベルトが赤になり、赤のステッチが随所に施されるところも気分を盛り上げてくれる。 また、少し前のCクラスのマイナーチェンジで採用された、インターネットへの接続を可能とした、新世代のCOMANDシステムや、新たに加わったパーキングアシストなどの機能も使いやすい。これについては、Cクラスのリポートでお伝えしたとおりだ。 SLKのお家芸であるバリオルーフは、ルーフを閉じた状態でもオープンな雰囲気を楽しめるよう進化した「パノラミック バリオルーフ」がオプションで用意された。さらに、ルーフの光を透過させるモードと、ボタンひとつでダークモードに切り替えることができ、炎天下での室内の温度上昇を防ぐという新機構「マジックスカイコントロール パノラミックバリオルーフ」もオプションで選ぶことができる。 オープンにするには、センターコンソールのアームレスト部に設定されたスイッチを引き上げればよい。操作のしやすさへの配慮からか、大きめのサイズのレバー状とされたスイッチは、オープンカーでは気になるホコリの侵入を防ぐリッドが付くところもありがたい。開閉は20秒以下で可能という。 ラゲッジスペースは、ルーフのクローズ時は335LというCセグメントのハッチバック車なみの容量が、またオープンにしても225Lという容量が確保されるというから、けっこう広い。 フロアを反転させることでフラットにすることも可能な「リバーシブルトランクフロア」という新しいアイデアを採用するなど、ユーザーの身になっての使い勝手に対する細やかな配慮が隅々までなされているところもSLKならではだろう。 モデルラインアップは、3.5リッターV型6気筒エンジンを搭載する「SLK 350 ブルーエフィシェンシー」と、1.8リッター直列4気筒ターボエンジンを搭載する「SLK 200 ブルーエフィシェンシー」、その装備を簡略化した「SLK 200 ブルーエフィシェンシー スポーツ」の3タイプで、いずも7速ATが組み合わされる。 今回試乗したのは、上級のSLK 350 ブルーエフィシェンシーのAMGスポーツパッケージだ。前後左右下端のエアロパーツの付くスタイリングパッケージをはじめ、18インチ5スポークホイール、ダーク調のランプなどが与えられる。 エンジンをスタートさせて走り出すと、意外と野太く大きめのエキゾーストサウンドが聞こえてくるし、足まわりがやや固めの味付けになっていることに気づく。2代目CLSより導入された、とても評判のよい3.5リッター直噴エンジンはピックアップに優れ、低回転から力強く、加速フィールもスムーズと、言うことナシの素晴らしい仕上がり。 再始動の条件として、日産のものと同じくステアリング操作もトリガーとなっている。 3代目SLKのプラットフォームは2代目をキャリーオーバーし、大幅に洗練させたものだ。ホイールベースは2代目と同じだが、前後トレッドは拡大されている。 いわゆる可変ギアレシオステアリングの「ダイレクトステアリング」は全車に装備され、さらに、SLK 350 ブルーエフィシェンシーには「ダイナミックハンドリングパッケージ」が標準装備される。 後者は電子制御式油圧アダプティブダンピングシステムの減衰力を、ホイール回転数、車両速度、横方向および垂直方向加速度などを各部のセンサーが検知し、100分の1秒の反応速度で調整するというもので、これの味付けが絶妙だ。乗り心地に関係する部分の減衰力をうまく落としながら、効いて欲しい部分では瞬時に無駄な動きを抑え、快適な乗り心地とフラットな姿勢、スポーティな操縦感覚をもたらしている。 「SPORT」モードにしても、乗り心地がそれほど硬くならないかわりに、全体的に電子制御する中で、美味しい部分を少し固い側に持ってきたような味付けで、快適かつスポーティな走りとなる。ハンドリングも、より俊敏性が増すとともに、よりニュートラルステアとなる印象だ。 別の機会にドライブしたSLK 200ブルーエフィシェンシーについて言うと、スペック的にはだいぶ下回るものの、動力性能としてはとくに大きな不満はナシ。SLK 350 ブルーエフィシェンシーに比べると全体的に軽快感があった。両グレードともそれぞれ積極的に選ぶ価値のある、異なる乗り味を持っているといえる。 だからどうした、という話だと思うので、このあたりは読み流していただきたい。 オープンにしても風の巻き込みが小さいのも、SLKのよき伝統。もちろん屋根は完全になくなって、開放感を味わうことができるわけだが、それにもかかわらず、少し大げさにいうと、まるで大きな透明のカバーに覆われているかのように感じるほど、外界と隔てられた感覚がある。これはちょっと不思議な感覚である。 これに一躍買っているのが、新たに設定されたアクリル製のピボット式ドラフトストップ「エアガイド」(SLK 200 ブルーエフィシェンシースポーツのみオプション)だ。使わないときはロールバーの内側に格納されていて、必要なときにサッと出せるという仕組みで、これを出すと出さないとでは風の巻き込みがまったく違う。透明だから視界の妨げになることもないという、スグレモノだ。 また、シート表皮には、通常のものより最大で13度低い表面温度となる「サンリフレクティングレザー」が用いられているのも夏場にはありがたいし、冬場にはシートの首元から温風を吹き出してくれる「エアスカーフ」が強い味方になってくれる。 全体としては、2代目SLKに対して、より上質に、よりスポーティになった印象。スポーティになったといっても、ライバルであるボクスターやZ4に対しては、より快適性への配慮が行き届いたクルマといえる。 3代目SLKは、持ち前の快適性に優れるプレミアム コンパクト クーペ・ロードスターとしての資質に、高級車として、あるいはスポーツカーとしての、より高いバリューを身に着けたというわけだが、個人的には、何よりもこのデザインに大いに惹かれてしまう。
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