「あの、今までも十分に美味しかったですよ」 モーロックの奇妙な発言に対して、 アンもトンチンカンな答えを返した。
「まずは、あなた方をいだただく事にしようか」
モーロックがそう言って、私たちを睨みつけた時には、もう間に合わなかった。
私とアンは、いきなり体が動かなくなってしまったのである。モーロックの目力のなせるワザであろうか。いわゆる、蛇ににらまれた蛙と言うヤツだ。あるいは、先ほど食べた料理に何か薬が混ぜられていた可能性も考えられるのだが、そのへんの真相はよく分かってはいない。
とにかく、私とアンは体全体が固まったみたいに、完全に動かせなくなってしまったのだ。
「マスター・モーロック。これは一体、どういう事ですか」
私は、ヤバい状態に置かれている事にいち早く勘づき、モーロックを刺激しないように、落ち着いた声でそう聞いた。
「何も怖がる事はないんだよ。すぐに終わるから」
モーロックは楽しそうな口調で言うのだが、明らかに危険な状況なのであった。これでは、まるで本当に青ヒゲに捕まった新妻さながらである。
そして、私とアンのそばにまで歩み寄ってきたモーロックは、顔を近づけ、静かに私たちのにおいを嗅いだのだった。
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