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2023年06月30日

静かなレーダー

■ステルス機はLPI(Low-probability-of-intercept)レーダーを搭載している

■レーダーやミサイルのLPI化は増々進むだろう

■用途によっては民生品の活用も有効




ところで、Youtubeで多田先生(@sho_tada)の電子戦の話を拝聴していたら、F-22が搭載しているAN/APG-77は所謂、静かなレーダー(LPI: Low-probability-of-intercept)であることを説明されておりました。浅学の為、これは初めて聞く話で、自分の不明を恥じた次第です。

ミリタリーテクノロジーの物理学 第15回「電子戦 II」
https://www.youtube.com/watch?v=NrWShfkBvtU

ステルス機であるF-22が被探知性の高いレーダーを装備しているのは極めて当然の話で、AN/APG-77は周波数拡散技術によってLPI化を諮っていると伝えられています。所謂、SS( Spread Spectrum)方式ですね。うーむ、とある理由でこの二文字には思わず反応してしまいます(w

F-22に搭載されているAN/APG-77
990px-AN-APG-77,_AESA,_Active_Electronically_Scanned_Array,_Northrop_Grumman,_2001_-_National_Electronics_Museum_-_DSC00388.jpg
画像引用元: Daderot - 投稿者自身による著作物, CC0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=34902919 による。Exhibit in the National Electronics Museum, 1745 West Nursery Road, Linthicum, Maryland, USA. All items in this museum are unclassified. The museum permitted photography without restriction.

SS方式だと信号レベルが雑音レベル以下になるので、信号自体の検出が困難になり、故にESMやRWRで捉えることが困難になります。また、レーダー波はPN符号により拡散されているため、例え受信できたとしてもこのPN符号が分からなければただのノイズに過ぎません。さらに、自分が出した送信波の反射波のみを逆拡散して捉えますから、ECMによる欺瞞も難しくなります。

以上の話から、航空機のレーダーもそうですが、ミサイルのレーダーとして使用する場合、その効果が極めて大きいでしょう。何故なら撃たれた側からずれば、ESMやRWRに引っ掛からないためにミサイル警報が出ず、完全なサプライズアタックとなるので回避手段が取れないからです。

えー、目敏い人はオラの奥歯の挟まった物言いを悟っていただけると思います。(w

ステルス機のレーダーと言われてもう一つ思い出すのは、B-2戦略爆撃機に搭載されているAN/APQ-181です。このレーダーはKバンドで動作し、多数の高精度ターゲティング モードを提供し、地形追従と地形回避もサポートしています。B-2の主な任務として敵国奥深くにある移動司令部や移動式ICBMを探して大型核爆弾で吹っ飛ばすというものがあるのですが、その際にこのレーダーが使用されると思います。このレーダーはプロセッサーが必要とする必要最低限度の電波のみを発信することによって高いLPI化を実現しています。

B-2のAN/APQ-181レーダー
B-2_radar.jpg
画像引用元: By TMWolf - https://www.flickr.com/photos/64917036@N00/299225935, CC BY-SA 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5110156

さて、自分的にはLPIレーダーと言われて真っ先に思い出すのは、Thales Nederland社の艦載航海レーダーSCOUTです。

オランダ海軍のデ・ゼーヴェン・プロヴィンシェン級フリゲートのSCOUT(艦橋上)
1080px-Fregatte_De_Zeven_Provincien_2506.jpg
画像引用元: Torsten Bätge - 自ら撮影, CC 表示 2.5, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1382296 による

これは短中距離の航海レーダーで、Xバンドで動作し送信方式は電波高度計などでよく使われるFM-CW(周波数連続変調)方式を使用します。通常の送信出力は1W程度であり、探知距離を抑えれば10mW程度まで送信出力を下げることも可能です(Mk2の場合)。1W時でESMの被探知距離は僅か2km程度と言われており、恐ろしくカヴァードなレーダーとなっています。

なお、こちらも知らなかったのですが同社の艦載対空レーダーSMART-LもFM-CW方式でLPI化されているようです。また、FM-CW方式のレーダーを装備するミサイルとしてはスウェーデンSaab社のRbs-15も忘れちゃいけませんですね。

RBS 15 Mk4 on the DSEI 2019
960px-RBS_15_Mk4.jpg
画像引用元: By Swadim - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=82133183

一つ、特筆するべきことは艦船の航海用レーダーとして我らがFurunoレーダーが使われていることです。

Furunoレーダーを搭載したUSS Jimmy Carter攻撃型原潜
gallery-1505417743-3754953.jpg
画像引用元: U.S. Navy photo by Lt. Cmdr. Michael Smith

最も行動の秘匿性を要求される潜水艦においてFurunoレーダーが使われるのは奇異に感じるかもしれませんが、Veteranの方が以下のように解説しています。

It is simply being used for navigational safety and collision avoidance, nothing more. Using a commercial off the shelf system allows for easy logistical support and provides a modicum of stealth. It is tough to pick out one Furuno from the other hundred plus commercial radars operating close to shore as being from the submarine. It is easier to blend in the crowd froma radar perspective, but of course in daylight a visual search will clearly identify the submarine for what it is. But visual searches have limited range - you won't see the sub over the horizon usually due to the low profile.

引用元: Quora
https://www.quora.com/Why-do-Surfaced-submarines-use-Marine-radar-of-Raymarine-or-FURUNO-Do-they-disguise-themselves-as-shrimping-boats-Are-consumer-products-superior-to-military-radar


つまり、普段使いするには市販のレーダーで充分であり、海岸近くで運用されている数多くの商用レーダーの中から、潜水艦のモノとしてFurunoレーダーを識別するのは困難なのです。これは多くの偽目標の中に紛れ込むという意味で立派なステルスと言えるでしょう。ステルスとは消えるのではなく、紛れることだからです (魔法のマントじゃなく迷彩に近い )。

これは近い内に解説したいと思います。

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感想(1件)





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