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2023年03月14日
防衛装備庁が新型の標的えい航装置RM-30A1を契約
・防衛装備庁は海自向けの新しい標的えい航装置、えい航標的、えい航索を輸入品として契約した
・これら新型の導入により訓練効率やメンテナンス性、安全性が向上するだろう
・従来、標的えい航システムを担ってきた国内メーカー某社は今後、事業撤退する模様
画像引用元: 海上自衛隊, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=57299519 による
海洋事業部が長年運用していた写真の標的えい航装置RM-30Aですが、新型のRM-30A1へ更新されることになったと聞いてました。ATLA(防衛装備庁)のサイトを確認すると、昨年12月に契約されたようです。RM-30A1だけでなく、えい航標的、射撃評価装置、ハイブリッドえい航索も同時期に契約されています。
引用元: 契約に係る情報の公表(中央調達分)令和4年度 月別契約情報/随意契約(基準以上)
https://www.mod.go.jp/atla/souhon/supply/jisseki/rakusatu/index3.html
※会社名はマスクしてあります。
RM-30A1はRM-30Aの改良型で、RM-30Aと比較して以下のような特徴があります。
・油圧及び空気圧の動力系を廃止し完全電動化
・えい航索カッターの冗長化(Redundant towline cutters)
・Microprocessor Logic Control Module
【製造メーカーのbrochure】
https://meggittdefense.com/wp-content/uploads/2020/06/RM-30A1.pdf
台湾AIDC社所有のRM-30B(射撃評価装置が追加装備されている)
画像引用元: AIDC Flight Service Business Department http://www.taiwanairpower.org/aidc.html
動力系がフル電動化したことで、メンテナンスや取り扱いが容易になったことが大きいでしょう。特にRM-30Aはブレーキ系を空気圧が担っていましたので、空気圧が不足するとえい航索をカットしてミッションを中止せざるを得ませんから、その制約から解放されたことは大きいと思われます。
さらに大きいのがえい航索カッターの冗長化です。RM-30Aではカッターが1系統しかなく、もし標的えい航中に何らかの不具合が発生して制御不能になって、えい航標的が収容出来ない場合にカッターが使用出来ないと、RM--30A本体を丸ごと投棄せざるを得なかったことから、そのようなトラブルを回避できる可能性が高まります(兄弟機のAGTSのRMK-35では全く別系統のカッターが2系統あり冗長化されている)。
同時に契約されたえい航標的はMeggitt社のTLX-1 Low-level height-keeping tow targetとTRX radar augmented tow targetだと思われます。前者は今まで横浜の某社さんで契約されていた超低高度えい航標的(JAQ-50)、後者は高速えい航標的JAQ-5に当たるものでしょう。
【TRX radar augmented tow target】
https://meggittdefense.com/product/trx-radar-augmented-tow-target/
TLX-1 Low-level height-keeping tow target
https://meggittdefense.com/product/tlx-1-low-level-height-keeping-tow-target/
興味を引くのはこの契約に出てくる「ハイブリッドえい航索」です。これは一体何でしょうか。従来は「標的用えい航索」という契約品名で横浜の某社さんから調達していましたが、これに代わるものです。
標的用えい航索は近接信管の誤作動を防ぐためにケブラー材料を使ったえい航索でしたが、一つ問題を抱えていました。それは使用期限が製造後1年間しかなかったことです。そのため、使用期限内に使い切らねばならず、運用側の悩みの種となってました。もし、使わずに期限切れなんてことになれば、泣く子も黙る霞が関の〇検様に何を言われるか分かりません(w
このハイブリッドえい航索なるものは、鋼索とケブラー等の電波反射を抑制した材料を組み合わせた(ハイブリッド)ものらしく、使用期限が大幅に緩和されているものなのでしょう。
こうして見ると従来、国産化されていた標的えい航装置関連が軒並み輸入ものへと変更されているのが分かると思います。では、従来調達相手先だった横浜の某社さんはどうなるのかというと、 どうやらこの分野からフェードアウトされる方針のようです 。デルマーターゲットのライセンス供与(このライセンスを保有することが随意契約根拠になっている)に始まる同社のえい航標的の歴史もここに費えることになります(まだAGTSが残ってはいますが、あれも近い将来止めるんでしょう)。
米海軍FJ-4に搭載されたデルマーターゲット
画像引用元: U.S. Navy - U.S. Navy National Museum of Naval Aviation photo No. 1996.253.7225.006, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=14814590 による
ほんと近年マル防からは多くの会社さんが去っていきますね(T_T)
・これら新型の導入により訓練効率やメンテナンス性、安全性が向上するだろう
・従来、標的えい航システムを担ってきた国内メーカー某社は今後、事業撤退する模様
画像引用元: 海上自衛隊, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=57299519 による
海洋事業部が長年運用していた写真の標的えい航装置RM-30Aですが、新型のRM-30A1へ更新されることになったと聞いてました。ATLA(防衛装備庁)のサイトを確認すると、昨年12月に契約されたようです。RM-30A1だけでなく、えい航標的、射撃評価装置、ハイブリッドえい航索も同時期に契約されています。
引用元: 契約に係る情報の公表(中央調達分)令和4年度 月別契約情報/随意契約(基準以上)
https://www.mod.go.jp/atla/souhon/supply/jisseki/rakusatu/index3.html
※会社名はマスクしてあります。
RM-30A1はRM-30Aの改良型で、RM-30Aと比較して以下のような特徴があります。
・油圧及び空気圧の動力系を廃止し完全電動化
・えい航索カッターの冗長化(Redundant towline cutters)
・Microprocessor Logic Control Module
【製造メーカーのbrochure】
https://meggittdefense.com/wp-content/uploads/2020/06/RM-30A1.pdf
台湾AIDC社所有のRM-30B(射撃評価装置が追加装備されている)
画像引用元: AIDC Flight Service Business Department http://www.taiwanairpower.org/aidc.html
動力系がフル電動化したことで、メンテナンスや取り扱いが容易になったことが大きいでしょう。特にRM-30Aはブレーキ系を空気圧が担っていましたので、空気圧が不足するとえい航索をカットしてミッションを中止せざるを得ませんから、その制約から解放されたことは大きいと思われます。
さらに大きいのがえい航索カッターの冗長化です。RM-30Aではカッターが1系統しかなく、もし標的えい航中に何らかの不具合が発生して制御不能になって、えい航標的が収容出来ない場合にカッターが使用出来ないと、RM--30A本体を丸ごと投棄せざるを得なかったことから、そのようなトラブルを回避できる可能性が高まります(兄弟機のAGTSのRMK-35では全く別系統のカッターが2系統あり冗長化されている)。
同時に契約されたえい航標的はMeggitt社のTLX-1 Low-level height-keeping tow targetとTRX radar augmented tow targetだと思われます。前者は今まで横浜の某社さんで契約されていた超低高度えい航標的(JAQ-50)、後者は高速えい航標的JAQ-5に当たるものでしょう。
【TRX radar augmented tow target】
https://meggittdefense.com/product/trx-radar-augmented-tow-target/
TLX-1 Low-level height-keeping tow target
https://meggittdefense.com/product/tlx-1-low-level-height-keeping-tow-target/
興味を引くのはこの契約に出てくる「ハイブリッドえい航索」です。これは一体何でしょうか。従来は「標的用えい航索」という契約品名で横浜の某社さんから調達していましたが、これに代わるものです。
標的用えい航索は近接信管の誤作動を防ぐためにケブラー材料を使ったえい航索でしたが、一つ問題を抱えていました。それは使用期限が製造後1年間しかなかったことです。そのため、使用期限内に使い切らねばならず、運用側の悩みの種となってました。もし、使わずに期限切れなんてことになれば、泣く子も黙る霞が関の〇検様に何を言われるか分かりません(w
このハイブリッドえい航索なるものは、鋼索とケブラー等の電波反射を抑制した材料を組み合わせた(ハイブリッド)ものらしく、使用期限が大幅に緩和されているものなのでしょう。
こうして見ると従来、国産化されていた標的えい航装置関連が軒並み輸入ものへと変更されているのが分かると思います。では、従来調達相手先だった横浜の某社さんはどうなるのかというと、 どうやらこの分野からフェードアウトされる方針のようです 。デルマーターゲットのライセンス供与(このライセンスを保有することが随意契約根拠になっている)に始まる同社のえい航標的の歴史もここに費えることになります(まだAGTSが残ってはいますが、あれも近い将来止めるんでしょう)。
米海軍FJ-4に搭載されたデルマーターゲット
画像引用元: U.S. Navy - U.S. Navy National Museum of Naval Aviation photo No. 1996.253.7225.006, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=14814590 による
ほんと近年マル防からは多くの会社さんが去っていきますね(T_T)
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感想(0件)
タグ: RM-30A1
2023年03月10日
首振りミサイル
・米国空軍研究所は対空ミサイルの弾頭を直接目標に向ける技術を開発している
・指向性弾頭でも従来型の近接爆破での弾片散布は無駄が多い
・散布される破片や子弾を目標の方向に直に向けることが出来れば、効果は大きい
3月に入って暖かくなってきましたが、花粉の量も尋常ではないようで、花粉症で塗炭の苦しみです(T_T)
自分の場合は目と皮膚の痒み、鼻づまり、頭痛もちょっと来ます。
さて 米国空軍研究所 が面白いものを開発しているようです。正直、この発想はありませんでした。
AFRL Missile Utility Transformation via Articulated Nose Technology MUTANT
巡航ミサイルや高速の対地ミサイルなどの目標に対しては、近接起爆による弾殻の弾片により破壊する形になるのですが、ただ爆発するだけだと弾片の大きさが不揃いになったりして散布密度にムラが出来てしまいます。そこで予め弾殻に弾子重量・形状を調整された格子刻みを入れて均一化を諮ったり、タングステン等の硬くて重い金属で予め加工された弾子を入れたりします。所謂、調整破片弾です。
他に弾頭に複数の信管を備え、起爆する際に目標と反対側の象限の信管を起爆させ、爆発威力に指向性を持たせる指向性弾頭も存在します。
画像引用元: Public Domain Media The U.S. National Archives
https://nara.getarchive.net/media/an-aim-120a-advanced-medium-range-air-to-air-missile-warhead-detonates-during-1aa428
中距離空対空誘導弾AAM-4の外観
画像引用元: 日本語版ウィキペディアのShiftさん - 原版の投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=107674464 による
上の写真のAAM-4では指向性弾頭と近接信管として4象限アクティブ・レーダー近接信管を備えています。写真では中央翼の前側に黒い長方形のものが見えますが、これがレーダーの窓です。
General Atomics - Blitzer Railgun Land-Based Mobile Combat Simulation [360p]
これはレールガンでの運用構想の映像ですが、散布された子弾が目標を破壊する様子が良く分かります。
ただ、このように破片や子弾をミサイルの同心円状に散布する従来の方法ではその大部分が無駄になることも良く分かると思います。そこで、散布される破片や子弾を目標の方向に直に向けることが出来れば、その効果を従来より大幅に高めることが出来ます。
このAFRL Missileの映像の中で、思わず笑ってしまったシーンがありました(w
画像引用元: https://www.youtube.com/watch?v=J81iY6APmtQ&t=232s より抜粋して加工
これは地上滑走試験の様子ですが(タマはHellfireのようです)、発射前に赤丸内のコネクターがミサイルから射出されて外れています(3:52辺り)。レール型ランチャーから発射されるミサイルの場合、接続されているアンビリカルコネクターが上手く外れるようにしないといけません。
画像引用元: David Monniaux - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2272437 による
上の写真のAIM-9のアンビリカルケーブルは180度半周して接続されて、発射時に前方へ抜けるようになっています。
また、AGM-65の場合は尾部にアンビリカルコネクターがあり、これも発射時に前方へ抜けます。
画像引用元: By Varnav - Own work, CC0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=103517331
ただ、ミサイルによっては弾体の横にコネクターがあるものがあります。例えば空対空誘導弾であるAIM-7です。ちなみに写真内で接続されている白いケーブルはMISSILE MOTOR FIREWIREです。
画像引用元: By Tech. Sgt. Ben Bloker - http://www.af.mil/shared/media/photodb/photos/060509-F-2295B-025.jpg, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=780008
このようにミサイルの弾体のサイドにコネクターがある場合、レール式で発射する場合は頭を捻るわけです(w
なので、発射前にぴょんと外れてくれる動作を見た時はすごく感心しました。
では、例えばF-2でAIM-7やAAM-4をレール式ランチャーから発射する際は、ミサイルと繋がっていたアンビリカルケーブルはどうなるのでしょう。答えはご想像の通りです(w
・指向性弾頭でも従来型の近接爆破での弾片散布は無駄が多い
・散布される破片や子弾を目標の方向に直に向けることが出来れば、効果は大きい
3月に入って暖かくなってきましたが、花粉の量も尋常ではないようで、花粉症で塗炭の苦しみです(T_T)
自分の場合は目と皮膚の痒み、鼻づまり、頭痛もちょっと来ます。
さて 米国空軍研究所 が面白いものを開発しているようです。正直、この発想はありませんでした。
AFRL Missile Utility Transformation via Articulated Nose Technology MUTANT
巡航ミサイルや高速の対地ミサイルなどの目標に対しては、近接起爆による弾殻の弾片により破壊する形になるのですが、ただ爆発するだけだと弾片の大きさが不揃いになったりして散布密度にムラが出来てしまいます。そこで予め弾殻に弾子重量・形状を調整された格子刻みを入れて均一化を諮ったり、タングステン等の硬くて重い金属で予め加工された弾子を入れたりします。所謂、調整破片弾です。
他に弾頭に複数の信管を備え、起爆する際に目標と反対側の象限の信管を起爆させ、爆発威力に指向性を持たせる指向性弾頭も存在します。
画像引用元: Public Domain Media The U.S. National Archives
https://nara.getarchive.net/media/an-aim-120a-advanced-medium-range-air-to-air-missile-warhead-detonates-during-1aa428
中距離空対空誘導弾AAM-4の外観
画像引用元: 日本語版ウィキペディアのShiftさん - 原版の投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=107674464 による
上の写真のAAM-4では指向性弾頭と近接信管として4象限アクティブ・レーダー近接信管を備えています。写真では中央翼の前側に黒い長方形のものが見えますが、これがレーダーの窓です。
General Atomics - Blitzer Railgun Land-Based Mobile Combat Simulation [360p]
これはレールガンでの運用構想の映像ですが、散布された子弾が目標を破壊する様子が良く分かります。
ただ、このように破片や子弾をミサイルの同心円状に散布する従来の方法ではその大部分が無駄になることも良く分かると思います。そこで、散布される破片や子弾を目標の方向に直に向けることが出来れば、その効果を従来より大幅に高めることが出来ます。
このAFRL Missileの映像の中で、思わず笑ってしまったシーンがありました(w
画像引用元: https://www.youtube.com/watch?v=J81iY6APmtQ&t=232s より抜粋して加工
これは地上滑走試験の様子ですが(タマはHellfireのようです)、発射前に赤丸内のコネクターがミサイルから射出されて外れています(3:52辺り)。レール型ランチャーから発射されるミサイルの場合、接続されているアンビリカルコネクターが上手く外れるようにしないといけません。
画像引用元: David Monniaux - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2272437 による
上の写真のAIM-9のアンビリカルケーブルは180度半周して接続されて、発射時に前方へ抜けるようになっています。
また、AGM-65の場合は尾部にアンビリカルコネクターがあり、これも発射時に前方へ抜けます。
画像引用元: By Varnav - Own work, CC0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=103517331
ただ、ミサイルによっては弾体の横にコネクターがあるものがあります。例えば空対空誘導弾であるAIM-7です。ちなみに写真内で接続されている白いケーブルはMISSILE MOTOR FIREWIREです。
画像引用元: By Tech. Sgt. Ben Bloker - http://www.af.mil/shared/media/photodb/photos/060509-F-2295B-025.jpg, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=780008
このようにミサイルの弾体のサイドにコネクターがある場合、レール式で発射する場合は頭を捻るわけです(w
なので、発射前にぴょんと外れてくれる動作を見た時はすごく感心しました。
では、例えばF-2でAIM-7やAAM-4をレール式ランチャーから発射する際は、ミサイルと繋がっていたアンビリカルケーブルはどうなるのでしょう。答えはご想像の通りです(w
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感想(0件)
2023年03月05日
AIM-9X-2 vs AAM-5B
・AIM-9X-2は世界中で最も先進的なミサイル
・特にミサイルへのdigital ignitionの導入は注目に値する
・航空事業部は赤外線誘導空対空ミサイルを対ステルス機用として重要だと考えている
3月となり、大分暖かくなってきたように感じます。
暫く、PCから遠ざかっておりました。
気球騒動の際に使用されたこともあって、俄かに赤外線画像誘導空対空ミサイルであるAIM-9Xに注目が集まっています。
画像引用元: Public Domain US Navy - https://acquisition.navy.mil/content/view/full/4705
個人的にAIM-9X-2は世界中で最も先進的なミサイルの一つだと思っています。
製造メーカーの ウェブサイト で最新型のBlock IIの記述を見てみます。
この中で注目されるワードは digital ignitionと new weapon datalinkです。
通常、AIM-9のような短距離空対空ミサイルの発射は、ランチャーよりミサイルのロケットモーターへ大電力を流して発火させます。そのため、短距離空対空ミサイルのランチャーにはパワーサプライと呼ばれる専用機構があります。ランチャーからはストライカーポイントと呼ばれる突起状の電極がバネの力で2つ飛び出しており、ミサイル側には柔らかい金属で出来た受電用の電極が2つあってそこに刺さるようになっています(この電極が刺さる圧力には厳格な規定があり、専用のテストセットも存在します)。
ちょっと見難いのですが、拡大していただくとミサイルの前方フック(赤丸)内に円形の電極が2つあることが確認できると思います。
画像引用元: David Monniaux - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2272437 による
パワーサプライがどんなものかと言うと、こんな感じのモノです。
https://aerospacellc.com/wp-content/uploads/2020/01/F-16-AIM-9-CAPABILITIES-25JUNE2019.pdf
なお、パワーサプライは高い信頼性を要求されることから、ランチャーの構成品の中でも非常に高価なシロモノであります。そしてこんなこともありました。
百里基地F-15のミサイル、スクランブル直前に暴発!! (1986年9月4日)
http://komatsuairfield.web.fc2.com/page152.html
この事故の原因は表向きパワーサプライとされていますね(棒)
話を戻してミサイル側にdigital ignitionを備えるということはミサイル側でロケットモーターへの点火が行える=パワーサプライが要らなくなるということになります。
こうなるとミサイルランチャー側は大幅な簡素(軽量)化とコストダウン及び安全性の向上、メンテナンスコストの低減が図れることになります。大雑把に言えば、ランチャーにはミサイルのレールとレール上のロック解除機構(ソレノイド)、ミサイルへ接続するデジタルデータバスさえあれば良いことになります。
これは武器屋さんにとっては垂涎のアイテムでしょう。
さらにこのミサイルにはweapon datalinkを搭載するとされています。日本語風に言うと指令受信装置ですね。所謂、UTDC(Up-To-Data-Command)を実現するものです。これにより、目標の大体の位置に発射しておいて、途中コースの変更の必要が生じたらコマンド指令によりコースを修正することが可能になります(指令自爆も可能かもしれません)。これにより、多目標同時発射や射程の延伸、オフボアサイト能力の向上が期待できます。
AIM-9Xで自分が評価するのは、開発時に低高度目標への射撃試験をちゃんと行っていることです。以前にも述べましたが、赤外線画像誘導で地表を這うように進む超低高度目標を狙うことは、レーダー誘導に比べても技術的に高度なものが要求されます。それは地上には様々な赤外線ノイズ源が多く、その中で真目標を見分けて追尾することは困難を極めるからです。
AIM-9x SIDEWINDER Trial
このビデオではフレアを撒きながら超低空を飛行する標的機(QF-4)を上空から見事に撃墜しています。
翻って我らがAAM-5Bです。
画像引用元: Hunini - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=44536075 による
上が従来のAAM-5、下が改良型のAAM-5B。AAM-5Bにはシーカー部に冷却ガスのゲージが無いことが分かる。
実は微力ながら、管理人はAAM-5の開発のお手伝いをしております。なので、思い出深い装備の一つでもあります。また、AAM-5Bの開発の主任はかつて岐阜の誘導武器開発実験隊等でお世話になった方です。
さて、開発元である技術研究本部のGM2室のご担当者から以下のような話を聞いたことがあります。
「 レーダーが全く使えないような強度な電子戦の下では、赤外線誘導空対空ミサイルが主兵装になる。」
「ステルス機同士の戦いでは、お互い近づくまで相手を発見出来ない。よって赤外線誘導空対空ミサイルが重要だ。」
以上の話から、航空事業部が赤外線誘導空対空ミサイルを重要だと考えていたことがお分かりかと思います。
また、ご担当者から以下のようなお話もお聞きしました。
「 AAM-5の最大の売りはLOAL(発射後ロックオン=空中ロックオン)が出来ることだ。」
LOALの最大のメリットは射程の延伸です。上記のこともあり航空事業部は赤外線誘導対空ミサイルの射程の延伸に重きを置いていたと感じられます。これは初期案には翼の大きさをもっと大きくした案が存在していたこともそれを裏付けると思います(機体側のランチャーアダプターの強度上の問題で断念されました)。
ただ、AAM-5ではAIM-9のような超低高度目標に対する実射試験は行われていません(訓練でやりたいという話はありましたが。。)。
いづれにしても、AAM-5BでもAIM-9X-2ではちょっと差をつけられてしまいました。F-35やF-15能力向上型へのインテグレーションは行われないようですし、AIM-9XやIRIS-T、ASRAAMのようにSAM化も行われる様子もないので、。
ただ、F-15在来機へAAM-5Bの搭載は、在来機の手っ取り早い能力向上策として評価したいと思います。
・特にミサイルへのdigital ignitionの導入は注目に値する
・航空事業部は赤外線誘導空対空ミサイルを対ステルス機用として重要だと考えている
3月となり、大分暖かくなってきたように感じます。
暫く、PCから遠ざかっておりました。
気球騒動の際に使用されたこともあって、俄かに赤外線画像誘導空対空ミサイルであるAIM-9Xに注目が集まっています。
画像引用元: Public Domain US Navy - https://acquisition.navy.mil/content/view/full/4705
個人的にAIM-9X-2は世界中で最も先進的なミサイルの一つだと思っています。
製造メーカーの ウェブサイト で最新型のBlock IIの記述を見てみます。
Block II variant
The AIM-9X Block II missile adds a redesigned fuze and a digital ignition safety device to improve handling and in-flight safety. It's equipped with updated electronics, including a lock-on-after-launch capability using a new weapon datalink to support beyond visual range engagements.
引用元: https://www.raytheonmissilesanddefense.com/what-we-do/naval-warfare/advanced-strike-weapons/aim-9x-sidewinder-missile
この中で注目されるワードは digital ignitionと new weapon datalinkです。
通常、AIM-9のような短距離空対空ミサイルの発射は、ランチャーよりミサイルのロケットモーターへ大電力を流して発火させます。そのため、短距離空対空ミサイルのランチャーにはパワーサプライと呼ばれる専用機構があります。ランチャーからはストライカーポイントと呼ばれる突起状の電極がバネの力で2つ飛び出しており、ミサイル側には柔らかい金属で出来た受電用の電極が2つあってそこに刺さるようになっています(この電極が刺さる圧力には厳格な規定があり、専用のテストセットも存在します)。
ちょっと見難いのですが、拡大していただくとミサイルの前方フック(赤丸)内に円形の電極が2つあることが確認できると思います。
画像引用元: David Monniaux - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2272437 による
パワーサプライがどんなものかと言うと、こんな感じのモノです。
https://aerospacellc.com/wp-content/uploads/2020/01/F-16-AIM-9-CAPABILITIES-25JUNE2019.pdf
なお、パワーサプライは高い信頼性を要求されることから、ランチャーの構成品の中でも非常に高価なシロモノであります。そしてこんなこともありました。
百里基地F-15のミサイル、スクランブル直前に暴発!! (1986年9月4日)
http://komatsuairfield.web.fc2.com/page152.html
この事故の原因は表向きパワーサプライとされていますね(棒)
話を戻してミサイル側にdigital ignitionを備えるということはミサイル側でロケットモーターへの点火が行える=パワーサプライが要らなくなるということになります。
こうなるとミサイルランチャー側は大幅な簡素(軽量)化とコストダウン及び安全性の向上、メンテナンスコストの低減が図れることになります。大雑把に言えば、ランチャーにはミサイルのレールとレール上のロック解除機構(ソレノイド)、ミサイルへ接続するデジタルデータバスさえあれば良いことになります。
これは武器屋さんにとっては垂涎のアイテムでしょう。
さらにこのミサイルにはweapon datalinkを搭載するとされています。日本語風に言うと指令受信装置ですね。所謂、UTDC(Up-To-Data-Command)を実現するものです。これにより、目標の大体の位置に発射しておいて、途中コースの変更の必要が生じたらコマンド指令によりコースを修正することが可能になります(指令自爆も可能かもしれません)。これにより、多目標同時発射や射程の延伸、オフボアサイト能力の向上が期待できます。
AIM-9Xで自分が評価するのは、開発時に低高度目標への射撃試験をちゃんと行っていることです。以前にも述べましたが、赤外線画像誘導で地表を這うように進む超低高度目標を狙うことは、レーダー誘導に比べても技術的に高度なものが要求されます。それは地上には様々な赤外線ノイズ源が多く、その中で真目標を見分けて追尾することは困難を極めるからです。
AIM-9x SIDEWINDER Trial
このビデオではフレアを撒きながら超低空を飛行する標的機(QF-4)を上空から見事に撃墜しています。
翻って我らがAAM-5Bです。
画像引用元: Hunini - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=44536075 による
上が従来のAAM-5、下が改良型のAAM-5B。AAM-5Bにはシーカー部に冷却ガスのゲージが無いことが分かる。
実は微力ながら、管理人はAAM-5の開発のお手伝いをしております。なので、思い出深い装備の一つでもあります。また、AAM-5Bの開発の主任はかつて岐阜の誘導武器開発実験隊等でお世話になった方です。
さて、開発元である技術研究本部のGM2室のご担当者から以下のような話を聞いたことがあります。
「 レーダーが全く使えないような強度な電子戦の下では、赤外線誘導空対空ミサイルが主兵装になる。」
「ステルス機同士の戦いでは、お互い近づくまで相手を発見出来ない。よって赤外線誘導空対空ミサイルが重要だ。」
以上の話から、航空事業部が赤外線誘導空対空ミサイルを重要だと考えていたことがお分かりかと思います。
また、ご担当者から以下のようなお話もお聞きしました。
「 AAM-5の最大の売りはLOAL(発射後ロックオン=空中ロックオン)が出来ることだ。」
LOALの最大のメリットは射程の延伸です。上記のこともあり航空事業部は赤外線誘導対空ミサイルの射程の延伸に重きを置いていたと感じられます。これは初期案には翼の大きさをもっと大きくした案が存在していたこともそれを裏付けると思います(機体側のランチャーアダプターの強度上の問題で断念されました)。
ただ、AAM-5ではAIM-9のような超低高度目標に対する実射試験は行われていません(訓練でやりたいという話はありましたが。。)。
いづれにしても、AAM-5BでもAIM-9X-2ではちょっと差をつけられてしまいました。F-35やF-15能力向上型へのインテグレーションは行われないようですし、AIM-9XやIRIS-T、ASRAAMのようにSAM化も行われる様子もないので、。
ただ、F-15在来機へAAM-5Bの搭載は、在来機の手っ取り早い能力向上策として評価したいと思います。
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