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2024年07月27日
Nulkaはぬるかった?
■電波妨害弾1型は角度欺瞞と距離欺瞞を行う
■距離欺瞞を行えるEJは画期的
■将来的にはNulkaのような動力付きEJが主流となるだろう
先日、wikipediaの「電波妨害弾1型」の記述を加筆・修正しました。余り分かっていない部分を削除し、新たに分かった部分を加えています。
電波妨害弾1型(wikipedia)
電波妨害弾1型は自艦のレーダーやESMの情報を元に相手のミサイルに対して距離欺瞞を実施します。これによって相手ミサイルのアクティブレーダーのレンジゲート内に偽目標を出現させ、電波妨害弾へ追尾転移させます。
アクティブレーダーのレンジゲートと電波妨害弾の位置
イラスト画像引用元: https://www.ac-illust.com/
簡単な図を作ってみました。対艦ミサイルはアクティブレーダーで目標艦を追尾しますが、その際に目標艦との距離をベースとしてレンジゲート(黄色部分)を設定します。ミサイルから見てこの部分に入っているものを目標として認識し、入っていないものを無視します。
電波妨害弾は妨害波を遅延させて発信することにより、ミサイルから見た距離を目標艦との距離と等しくなるようにして相手のレンジゲートに入ってしまいます。さらに目標艦のエコーよりも強い信号をミサイル側へ指向することによりミサイルを電波妨害弾へ追尾転移させることになります。妨害波は一方通行だけに目標艦の反射波より遥に出力が大きく、また目標艦がもがみ型のようなステルス艦であれば、さらにその違いは大きい訳です。
レンジゲート内に入った偽目標のエコーが目標エコーより大きくなる
画像引用元: 特許情報プラットフォーム 特開平08-200995 電波妨害装置 独立行政法人工業所有権情報・研修館
このように電波妨害弾1型は相手ミサイルに対して距離欺瞞を行うことにより、妨害当初から有効な妨害を行うことになります。これによりリアクションタイムの短縮と妨害持続時間を有効に確保することが期待出来るので、射出型妨害機の弱点である有効時間の短さを補うことが可能です。
なお、距離欺瞞を行わない妨害機はレンジゲートから外れているので、ミサイルは追尾転移を行いませんが、ミサイルが目標艦に接近するとレンジゲートが意味を為さなくなるため、レンジゲートから外れていた妨害機にも追尾転移する可能性が出てきますが、前述のとおりミサイルが相当接近しなくてはならず、貴重な時間を無駄にすることと、J/S比(ジャミング対信号比)が大きく悪化する(妨害が効かなくなる)ことになります。
さて話が長くなりました。以下のビデオをご覧ください。
BAE Systems Nulka - Advance Anti-ship missiles decoy defence system
https://www.youtube.com/watch?v=9j66ZvGGErQ
1:20と2:00付近で発射されたNulkaが発射母艦の進行方向の前方と後方に移動しているのが確認出来ると思います。つまり、相手ミサイル側から見て目標艦と同じ距離を保っている訳です。先ほどのお話を加味すると、Nulkaは相手ミサイルのレンジゲート内で移動していることになります。
画像引用元: Di U.S.Navy Naval Research Laboratory - http://www.nrl.navy.mil/pao/pressRelease.php?Y=2003&R=16-03r, Pubblico dominio, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=120106211
アクティブレーダーのレンジゲートとNulkaの位置
つまり、Nulkaでは最初から距離欺瞞を行う必要性が無いことを意味します。これはNulkaが自分自身の動力で自由に移動出来るので可能な芸当でしょう。電波妨害弾1型は Mk36 SRBOC チャフロケットシステムの固定式ランチ ャーから発射されてパラシュートで浮揚するので、このような真似は出来ません。なお、 ペンギン先生 によると電波妨害弾1型に関してもMk36 SRBOC ではなく、投射型静止式ジャマーランチャー 4連装発射機(FAJ)から発射しようという構想もあったそうです。
投射型静止式ジャマーランチャー 4連装発射機(FAJ)
画像引用元: Yasu osugi - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=36555439 による
個人的に有効な投棄型電波妨害機はNulkaのような内部動力を持ち、自由に移動できるものが望ましいでしょう。先日、艦載ヘリに妨害装置を搭載するような話も聞きましたが、今後はUAVのようなものに搭載する可能性も高いでしょう。
■距離欺瞞を行えるEJは画期的
■将来的にはNulkaのような動力付きEJが主流となるだろう
先日、wikipediaの「電波妨害弾1型」の記述を加筆・修正しました。余り分かっていない部分を削除し、新たに分かった部分を加えています。
電波妨害弾1型(wikipedia)
電波妨害弾1型は自艦のレーダーやESMの情報を元に相手のミサイルに対して距離欺瞞を実施します。これによって相手ミサイルのアクティブレーダーのレンジゲート内に偽目標を出現させ、電波妨害弾へ追尾転移させます。
アクティブレーダーのレンジゲートと電波妨害弾の位置
イラスト画像引用元: https://www.ac-illust.com/
簡単な図を作ってみました。対艦ミサイルはアクティブレーダーで目標艦を追尾しますが、その際に目標艦との距離をベースとしてレンジゲート(黄色部分)を設定します。ミサイルから見てこの部分に入っているものを目標として認識し、入っていないものを無視します。
電波妨害弾は妨害波を遅延させて発信することにより、ミサイルから見た距離を目標艦との距離と等しくなるようにして相手のレンジゲートに入ってしまいます。さらに目標艦のエコーよりも強い信号をミサイル側へ指向することによりミサイルを電波妨害弾へ追尾転移させることになります。妨害波は一方通行だけに目標艦の反射波より遥に出力が大きく、また目標艦がもがみ型のようなステルス艦であれば、さらにその違いは大きい訳です。
レンジゲート内に入った偽目標のエコーが目標エコーより大きくなる
画像引用元: 特許情報プラットフォーム 特開平08-200995 電波妨害装置 独立行政法人工業所有権情報・研修館
このように電波妨害弾1型は相手ミサイルに対して距離欺瞞を行うことにより、妨害当初から有効な妨害を行うことになります。これによりリアクションタイムの短縮と妨害持続時間を有効に確保することが期待出来るので、射出型妨害機の弱点である有効時間の短さを補うことが可能です。
なお、距離欺瞞を行わない妨害機はレンジゲートから外れているので、ミサイルは追尾転移を行いませんが、ミサイルが目標艦に接近するとレンジゲートが意味を為さなくなるため、レンジゲートから外れていた妨害機にも追尾転移する可能性が出てきますが、前述のとおりミサイルが相当接近しなくてはならず、貴重な時間を無駄にすることと、J/S比(ジャミング対信号比)が大きく悪化する(妨害が効かなくなる)ことになります。
さて話が長くなりました。以下のビデオをご覧ください。
BAE Systems Nulka - Advance Anti-ship missiles decoy defence system
https://www.youtube.com/watch?v=9j66ZvGGErQ
1:20と2:00付近で発射されたNulkaが発射母艦の進行方向の前方と後方に移動しているのが確認出来ると思います。つまり、相手ミサイル側から見て目標艦と同じ距離を保っている訳です。先ほどのお話を加味すると、Nulkaは相手ミサイルのレンジゲート内で移動していることになります。
画像引用元: Di U.S.Navy Naval Research Laboratory - http://www.nrl.navy.mil/pao/pressRelease.php?Y=2003&R=16-03r, Pubblico dominio, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=120106211
アクティブレーダーのレンジゲートとNulkaの位置
つまり、Nulkaでは最初から距離欺瞞を行う必要性が無いことを意味します。これはNulkaが自分自身の動力で自由に移動出来るので可能な芸当でしょう。電波妨害弾1型は Mk36 SRBOC チャフロケットシステムの固定式ランチ ャーから発射されてパラシュートで浮揚するので、このような真似は出来ません。なお、 ペンギン先生 によると電波妨害弾1型に関してもMk36 SRBOC ではなく、投射型静止式ジャマーランチャー 4連装発射機(FAJ)から発射しようという構想もあったそうです。
投射型静止式ジャマーランチャー 4連装発射機(FAJ)
画像引用元: Yasu osugi - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=36555439 による
個人的に有効な投棄型電波妨害機はNulkaのような内部動力を持ち、自由に移動できるものが望ましいでしょう。先日、艦載ヘリに妨害装置を搭載するような話も聞きましたが、今後はUAVのようなものに搭載する可能性も高いでしょう。
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2024年05月01日
電波妨害弾1型のwikiを書きました
輸送機用機雷投下装置
に続き、調子こいて 電波妨害弾1型
のwiki記事を書きました。
丁度、管理人が三宿に通っていた頃に船開でやってたんですね。これ。
主に特許情報から調べていたんですが、想像通り距離欺瞞を主に行うものでした。
航空事業部の J/ALQ-9 が主に速度欺瞞を行うものだったのに比べると面白いです。
GW中にでもご笑覧ください(^^)
丁度、管理人が三宿に通っていた頃に船開でやってたんですね。これ。
主に特許情報から調べていたんですが、想像通り距離欺瞞を主に行うものでした。
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2022年09月01日
結局はデコイしかない
唐突ですが、最近セミアクティブレーダーホーミング誘導への電波妨害は難しいのかという質問を受けました。
自分は以下のように回答しました。
「難しいですね。」
これは意外に思われるかもしれません。アクティブレーダーホーミング誘導全盛の今日では古色蒼然たるセミアクティブへの電波妨害は今日の技術を以てしても難しいのです。
セミアクティブレーダーホーミング誘導は2つの情報を頼りに目標へ向かいます。相手の角度と速度です。これも意外に思われるかもしれませんが、ミサイルの誘導自体には距離情報は必要ありませんし、またミサイル側で距離情報を得る手段もありません。
この内、誘導に本当に必要なものは角度情報のみです。では速度情報は何に使うかというと相手が真目標であるか偽目標であるかの識別に使われます。
以下の写真はセミアクティブレーダーホーミング誘導の艦対空ミサイルであるRIM-7の最後尾部分です。最後尾の上部に白い小さなアンテナ上の物が確認できると思います。(赤丸内)
引用元: Hunini, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
詳細: RIM-7シースパロー艦対空ミサイル 後翼。2019年5月6日 海上自衛隊第1術科学校 江田島クラブ2階の海上自衛隊歴史ゾーンにて。
これがレファレンスレシーバーで、発射母艦のCWイルミネータのCW波を受信します。さらに、ミサイル前方のアンテナで捉えた目標の反射波を重畳させ増幅することにより、ビート周波数(唸り)を得ます。この信号の周波数が規定内にあることでミサイルは目標として認識します。
引用元: コンピュータが読み取れる情報は提供されていませんが、Barak Shだと推定されます(著作権の主張に基づく) - コンピュータが読み取れる情報は提供されていませんが、投稿者自身による著作物だと推定されます(著作権の主張に基づく), Copyrighted free use, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4124203 による
これは何か最近の超ハイテク(wみたいな感じがしますが、実は大戦期からある技術です。(VT信管とか)
何故このような面倒臭いことをしているかというと、我々は普段認識することはありませんが、お空には一杯ノイズ源となりうるものが存在します。 例えば、天使さんとか妖精さんとか、一反木綿やスカイフィッシュとか、モスマンやUFOとかです(w ー−−−嘘です。実際には雲や雨粒、鳥、浮遊物とかですね。
話が脱線しましたが、セミアクティブレーダーホーミング誘導を妨害するにはこの速度情報と角度情報を妨害すれば良いことになります。角度情報の妨害方法は置いとくとして、速度情報の欺瞞には先ほどの相手の速度情報取得のプロセスを妨害してやれば良いことになりますが、実はこれが難しいのです。
というのは、ミサイルが受信している目標と同様の反射波を作り出すためには、ミサイルと目標間の近接速度を知ることが必要になりますが、それは狙われている目標自身でなければ分かりません。また、狙われている目標自身も相手のミサイルの速度が分かりませんから、出来ることとしては受信した相手のイルミネータ波を増幅して返してやること位です。そしてそれは逆に目標の信号を増幅するだけとなります。
さらにこれは余り認識されてはいませんが、セミアクティブレーダーホーミング誘導はミサイル自体はパッシブなので、ミサイル自身がどの方向から来るか分からないという問題があります。
下図のようにセミアクティブレーダーホーミング誘導はイルミネータからの反射波を辿って誘導されますが、それがイルミネータの方向とはイコールではないということです(反射波が必ずしもイルミネータの方向に向く訳ではない)。特に目標の近辺まで慣性又は指令誘導されるミサイルではその傾向が強くなります。
引用元:
By Gregory Wilson - Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=15521196
何故なら妨害波として変調されていない強い信号を出すしかないとなったら、自身に相手ミサイルを引き寄せてしまいますから、妨害波を自ら出さなければ良いのです。
デコイには通常、以下の2つのタイプがあります。
(1)曳航型(AN/ALE-50、DASSなど)
(2)射出型(J/ALQ-9、EADなど)
写真はAN/ALE-55、光ファイバーで牽引される。
引用元: By This file is a work of a sailor or employee of the U.S. Navy, taken or made as part of that person's official duties. As a work of the U.S. federal government, it is in the public domain in the United States. - http://www.deagel.com/library2/, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3753891
この内、曳航型は以下の特徴があります。
1. 母機と一緒に飛翔するため、速度欺瞞の必要が無いこと。
2. 射出型に比べて送信出力や動作時間が長く出来ること。
3. タイプによっては母機から電力や妨害指示を得られること。
4. タイプによっては使用後に回収が可能なこと。
これらの特徴は戦闘機や攻撃機のみならず、低高度を長時間飛行する輸送機や哨戒機にも有用なものとなります。ただ、本邦の運用側からは曳航型は好まれていないようですね。
そして、ある時に航空事業部の某技術幹部殿からこう言われたことがあります。
「曳航型はセミアクティブレーダー誘導には有効だが、アクティブレーダー誘導には有効ではないので、射出型デコイが必要だ。」
これはどういう意味でしょうか。射出型については次回に解説します。
自分は以下のように回答しました。
「難しいですね。」
これは意外に思われるかもしれません。アクティブレーダーホーミング誘導全盛の今日では古色蒼然たるセミアクティブへの電波妨害は今日の技術を以てしても難しいのです。
セミアクティブレーダーホーミング誘導は2つの情報を頼りに目標へ向かいます。相手の角度と速度です。これも意外に思われるかもしれませんが、ミサイルの誘導自体には距離情報は必要ありませんし、またミサイル側で距離情報を得る手段もありません。
この内、誘導に本当に必要なものは角度情報のみです。では速度情報は何に使うかというと相手が真目標であるか偽目標であるかの識別に使われます。
以下の写真はセミアクティブレーダーホーミング誘導の艦対空ミサイルであるRIM-7の最後尾部分です。最後尾の上部に白い小さなアンテナ上の物が確認できると思います。(赤丸内)
引用元: Hunini, CC BY-SA 4.0
詳細: RIM-7シースパロー艦対空ミサイル 後翼。2019年5月6日 海上自衛隊第1術科学校 江田島クラブ2階の海上自衛隊歴史ゾーンにて。
これがレファレンスレシーバーで、発射母艦のCWイルミネータのCW波を受信します。さらに、ミサイル前方のアンテナで捉えた目標の反射波を重畳させ増幅することにより、ビート周波数(唸り)を得ます。この信号の周波数が規定内にあることでミサイルは目標として認識します。
引用元: コンピュータが読み取れる情報は提供されていませんが、Barak Shだと推定されます(著作権の主張に基づく) - コンピュータが読み取れる情報は提供されていませんが、投稿者自身による著作物だと推定されます(著作権の主張に基づく), Copyrighted free use, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4124203 による
上図では赤が周波数110 Hzの波、緑が周波数104 Hzの波、青が重ね合わせた波であり6 Hzのうなりが見られる。
引用元: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%86%E3%81%AA%E3%82%8A
これは何か最近の超ハイテク(wみたいな感じがしますが、実は大戦期からある技術です。(VT信管とか)
何故このような面倒臭いことをしているかというと、我々は普段認識することはありませんが、お空には一杯ノイズ源となりうるものが存在します。 例えば、天使さんとか妖精さんとか、一反木綿やスカイフィッシュとか、モスマンやUFOとかです(w ー−−−嘘です。実際には雲や雨粒、鳥、浮遊物とかですね。
話が脱線しましたが、セミアクティブレーダーホーミング誘導を妨害するにはこの速度情報と角度情報を妨害すれば良いことになります。角度情報の妨害方法は置いとくとして、速度情報の欺瞞には先ほどの相手の速度情報取得のプロセスを妨害してやれば良いことになりますが、実はこれが難しいのです。
というのは、ミサイルが受信している目標と同様の反射波を作り出すためには、ミサイルと目標間の近接速度を知ることが必要になりますが、それは狙われている目標自身でなければ分かりません。また、狙われている目標自身も相手のミサイルの速度が分かりませんから、出来ることとしては受信した相手のイルミネータ波を増幅して返してやること位です。そしてそれは逆に目標の信号を増幅するだけとなります。
さらにこれは余り認識されてはいませんが、セミアクティブレーダーホーミング誘導はミサイル自体はパッシブなので、ミサイル自身がどの方向から来るか分からないという問題があります。
下図のようにセミアクティブレーダーホーミング誘導はイルミネータからの反射波を辿って誘導されますが、それがイルミネータの方向とはイコールではないということです(反射波が必ずしもイルミネータの方向に向く訳ではない)。特に目標の近辺まで慣性又は指令誘導されるミサイルではその傾向が強くなります。
引用元:
By Gregory Wilson - Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=15521196
何故なら妨害波として変調されていない強い信号を出すしかないとなったら、自身に相手ミサイルを引き寄せてしまいますから、妨害波を自ら出さなければ良いのです。
デコイには通常、以下の2つのタイプがあります。
(1)曳航型(AN/ALE-50、DASSなど)
(2)射出型(J/ALQ-9、EADなど)
写真はAN/ALE-55、光ファイバーで牽引される。
引用元: By This file is a work of a sailor or employee of the U.S. Navy, taken or made as part of that person's official duties. As a work of the U.S. federal government, it is in the public domain in the United States. - http://www.deagel.com/library2/, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3753891
この内、曳航型は以下の特徴があります。
1. 母機と一緒に飛翔するため、速度欺瞞の必要が無いこと。
2. 射出型に比べて送信出力や動作時間が長く出来ること。
3. タイプによっては母機から電力や妨害指示を得られること。
4. タイプによっては使用後に回収が可能なこと。
これらの特徴は戦闘機や攻撃機のみならず、低高度を長時間飛行する輸送機や哨戒機にも有用なものとなります。ただ、本邦の運用側からは曳航型は好まれていないようですね。
そして、ある時に航空事業部の某技術幹部殿からこう言われたことがあります。
「曳航型はセミアクティブレーダー誘導には有効だが、アクティブレーダー誘導には有効ではないので、射出型デコイが必要だ。」
これはどういう意味でしょうか。射出型については次回に解説します。
価格: 1,799円
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