『ヒトの脳の大型化』
ヒトの脳は急激に爆発的に拡大した!
ヒトの脳はサルの脳から進化した
鋭敏な視覚、特に正確な立体視できる能力が有力な武器であった。
大脳の視覚や聴覚に関わる部分がいちだんと発達したサルは、さらに生存競争に勝ち残った。
チンパンジーやゴリラから ヒトに至る進化は、遺伝子やタンパク分子の変化だけでは説明できないほどの短期間に進行した。
受精後3週後
神経管の壁面内部では、 『マトリックス細胞』 が分裂を始める。
マトリックス細胞は神経管の壁面内部で内側と外側を往来しながら細胞分裂を繰り返す。
分裂した細胞の片方は樹状突起や軸索を持つ神経細胞に変化し、
もう片方の細胞はさら細胞分裂を繰り返す。
神経管 の壁面は、マトリックス細胞が管の内側から外側にかけて放射状に並ぶことで形成されていく。
こうしてマトリックス細胞が分裂して増殖を重ねることによって、神経管の壁面は成長していく。
形成された 神経細胞は神経管の外側に蓄積され、樹状突起を伸ばして神経回路を形成 していく。
このマトリックス細胞の分裂回数が1〜2回増えることにより、サルの脳がヒトの脳の大きさまで急激に大型化したと推定されている。
運動や視覚に関わる脳の部分が急激に大型化したことは、大脳新皮質全体が進化の歴史のなかで例をみないスピードで拡大した。
6500万年前 、原始的な哺乳類から分かれた霊長類から、ネアンデルタール人やクロマニョン人に至る脳の大型化は、驚異的なスピードで進行した。
この新皮質の爆発的拡大が、脳の視覚や聴覚、手の指や手のひらを中心とする腕の感覚や運動に関わる部分を発達させ、これらの近くにある部分も著しく拡大させた。
まず、顔面筋、舌、唇の運動や感覚に関わる部分が拡大されたために、表情が豊かになった。
さらにその周りに 運動性言語中枢 『ブローカの中枢』が生まれた。
ブローカの中枢は、ホモ・ハビリスの時代から目立つようになり、北京原人(ホモ・エレクトゥス)では
言葉を話すのに十分と思われるサイズに拡大された。
また、聴覚に関する部分にとなり合う部分も拡大し、 感覚的言語中枢 『ウェルニッケの中枢』が発展した。
250〜160万年前 のホモ・ハビリスの時代には、自分を取り巻く世界を感じ取り、
言葉を話して自分以外の人に自分の考えを正しく伝える能力が出現した。
これこそがヒトの脳の能力であり、 ヒトの『心』を生み出す生物的基礎 であった。
ヒトの脳はただ大きくなったのではなく、広くなった
MRI画像 灰色に見える部分が神経細胞の集合ー新皮質、白色に見える部分が、神経線維の束、配線部分ー白質
大脳は、神経細胞の本体が脳の表面に集まってつくる1枚のシート( 皮質 )と、 神経細胞どうしを結ぶ配線部分 ( 白質 )からなる。
ヒトの大脳を見ると、その表面はしわだらけで、
このしわは、1枚の大きなシートを、頭蓋骨の内側にある限られたスペースに押し込めた結果である。
大脳の発達は、種に大脳表面が広くなっただけではなく、神経細胞どうしの連絡も、より複雑なものになっている。ほかの動物に比べて、配線部分も著しく発達している。
参考文献:ニュートン別冊 脳力のしくみ 2018年7月15日発行
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