脳の進化と成長
『脳の発生』
ヒトの脳は急激に爆発的に拡大した!
ヒトの脳は生命の38億年という進化の歴史を経て出現し、巨大化し、高度化を遂げた。
ヒトの脳の発生の様子をみると、脳の進化の歴史をたどることができる 。
卵子が受精して3週間(#妊娠5週)経つと、長さ2mmほどの 『神経管』 が杯の中にできる。
この神経管が脳の起源である。
神経管は、生命進化の歴史では約5億6000年前(古生代カンブリア紀)の脊椎動物の出現にさかのぼる。
約38億年前の生命誕生から約32億年の歴史を、ヒトの発生では約3週間で駆け抜ける!
受精後4週には脊髄で神経細胞が分化しはじめる。 受精後5週(#妊娠7週)には身長が1cm に達し、くねくねと身をよじりはじめる。
これは約5億年前に出現した原始的な 魚の脳機能 の状態を通過しつつあることになる。
この頃から、人間に特徴的な大脳が頭の両側に膨らんでくるのがみえる。
その後、大脳は週を追うごとに巨大化する。
ヒトでは大脳の成長がどの動物よりも長く続く。
こうして私たちは、生命進化や脳と心の謎も探求できる大脳を獲得する のだ。
#産婦人科で使われる『妊娠◯週』は、最終月経の第1日目から数える(新しい卵子が卵巣で成熟しはじめる日)。
受精後1週は、およそ妊娠3週 となる。
受精後5週
神経細胞は脳幹と脊髄にだけ出現し、原始的な魚の段階。
大脳は神経細胞を生み出す『マトリックス細胞』だけからなる。
受精後7週
脊髄の神経細胞はすべて完成し、機能を発揮しはじめる。
大脳では神経細胞が分化しはじめる。
受精後10週
脊髄の神経細胞が手足の末端まで伸び、筋肉と結合する。
受精後13週
脳幹(間脳・中脳・延髄)の神経細胞の形成が完了する。
大脳では盛んに神経細胞が生み出され、大脳皮質の形成が活発に進行する。
受精後17週
長期間続いた大脳での神経細胞の産出もほぼ完了に近づき、 140億個程度の神経細胞が大脳皮質を形成 する。
大脳の神経細胞数はこれがピークで、以降は障害を通じて減る一方である 。
受精後20週
脳幹や脊髄を中心に、成熟しつつある 神経細胞の軸索に『髄鞘』ができはじめる 。
この 髄鞘化 は、神経細胞どうしの連結と、信号の伝達・情報機能の完成へ向けて、脳機能の整備が始まったことを意味する。
受精後22週
脳幹では動眼神経や顔面神経などに続いて、三叉神経や聴神経、内耳神経などの感覚神経にも髄鞘化が始まるが、実際に見えたり、聞こえたりはしない。
受精後26週
大脳表面には中心溝や頭頂後頭溝、シルビウス裂がはっきり認められるようになる。
人間らしさを特徴づける大脳の出現である。
脳幹はますます完成に近づき、音や光に対する反射や、呼吸へつながる運動も出現する。
受精後30週
視神系や脳幹、脊髄から大脳に向かう軸索にも髄鞘化がはじまる。
中耳が作られ、外界の音が聞こえる体制ができる。
光が脳に伝えられるようになる。
受精後37週
いつ生まれてもよい体制がととのう。
大脳皮質のシワが増え、完成したパターンに近づく。
大脳内部の軸索にも髄鞘化がはじまる。
やがて脳の活動には一時的な抑制がかかり、胎動もほぼ停止し、出産を待つ。
参考文献:ニュートン別冊 脳力のしくみ 2018年7月15日発行
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