『快感』を感じる 報酬系
という回路があります。
これは、脳の中で比較的奥の方にある回路で、
外側視床下部、視床、
内側前脳束、腹側中脳、
尾状核といった、
快感を生み出すのに関わる
部分の総称です。
この部分が刺激されると人は快感を感じます。
食欲や性欲などの本能的な
欲求だけでなく、
人助けなど社会的な行動も
含め、
「自分が気持ち良い行動」
をとると活動する部分です。
自分が心地よい、気持ちよいと思える状態を積極的に
作り出している人は、
常にこの報酬系を刺激していることになります。
自分の報酬系を上手に操れる人は、
自分の今ある状態にとても満足できる人です。
他人のために何かをすると、
「えらいね」
「なんてすばらしい人だ」
などと、ほめられたり、
よい評価を受ける場合があります。
人の脳は、ほめられたり、他者からよい評価を受けると、
現金を受け取ったときと同じようにな喜びを感じます。
こんな研究結果があります。
平均21歳の男女19人を対象に、
カードゲームで勝って賞金を得たときと、
ほめ言葉を小型表示装置に映して見せたときの、
それぞれの脳の血液の変化を
特殊な磁気共鳴画像装置(MRI)で調べました。
賞金をもらったときも、
ほめ言葉をもらったときも
ともに、線条体という『快感』を
生み出すのにかかわる脳内の回路
『報酬系』
の一部が活発になったのです。
つまり、脳はほめ言葉を
「報酬」として受け取るのです。
自分以外のだれかのための行動は、
たとえ誰にも見られていなくても、
自分自身は見ています。
人の脳には、
『前頭前野内側部』
という
自分の行動を評価する部位があります。
この部位が、
「よくやった!」
「すばらしい!」
などと自分の行動を評価すると、
たとえ他人からほめられてなくても、
大きな快感をえられるのです。
ボランティア経験のある人に、
「ボランティアをやっていちばんよかったと思うときはいつですか?」
と質問すると、
「相手が喜んでくれたとき」
「ありがとう、と言われたとき」
という答えが多く返ってきます。
相手の喜びを自分の喜びのように感じているから、
といえます。
利他行動をとり、
それによって自分がよい評価をうけ、
さらに相手が喜んでくれたときには、
脳は何重もの喜びを一気に感じています。
自分以外のだれかのための行動をしたときには、
脳が
「よい行動をしているな」
と判断し、脳内に快感物質を出します。
私たちは自分のためだけより、
だれかのための行動のほうが気持ちよく動けるのです。
そのだれかが多ければ多いほど、
脳の快感物質は多く分泌されます。
【引用文献】
科学がつきとめた
「運のいい人」
脳科学者 中野 信子 サンマーク出版