2021年度(令和3年度)概算要求書が提出され、いろんな装備品が出てきました。
その中でちょっと面白そうな 「艦艇用デコイシステムに係る調査研究」が出てきました。
図1 デコイ(Nulka)
引用wiki
あんまり顧みられなかった、艦艇用の電子戦妨害システムがようやく更新されそうです 。
英国との共同開発品が姿を変えて登場するかも?!
(前回記事):『 【軍事技術】艦橋構造と艦砲射撃のお話 』
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(1)令和3年度概算要求が出た!
例年から1か月遅れにて、令和3年度概算要求が登場して防衛費の要求も登場しました。
護衛艦「かが」の改修費用231億円も計上されました。
(参考記事):『 【海上自衛隊】空母化は2022年「かが」から開始か?! 』
1.1 護衛艦かが改修は甲板変更!
令和3年度概算要求の大きな事業の一つに、護衛艦「かが」の改修が盛り込まれています。
図2 護衛艦かが改修
引用URL:https://www.mod.go.jp/j/yosan/yosan_gaiyo/2020/yosan_20200930.pdf
護衛艦「いずも」と異なり、艦首部の甲板形状変更が盛り込まれました。
やっぱりあの形状ではF-35B運用には、安全確保の距離が足りなかったかな?
さらに、「かが」も2回の改修が必要になったようです。
結局、護衛艦「いずも」が先に完全なSTOVL運用能力を獲得することになります。
1.2 電波妨害弾の後継?
令和3年度概算要求については、艦艇の電子戦に関する強化が盛り込まれました。
図3 艦艇用デコイ?
引用URL:https://www.mod.go.jp/j/yosan/yosan_gaiyo/2020/yosan_20200930.pdf
『高性能の対艦ミサイルの脅威に対応するため、将来の艦艇用疑似電波発生装置(デコイ)に係る研究を実施』
という文言になっています。
『艦艇の電波探知妨害能力の研究(0.2億円)』と合わせて、艦艇用電子戦装備がようやく近代化されそうです。
(こちらは、NOLQ-3の後継を研究かな?)
海自に配備されているけど、ほとんどだれも姿を見たことのない「電波妨害弾1型」の後継機かと思われます。
1.3 Nulka(ヌルカ)導入というわけじゃ無いのね?
艦艇用デコイでの電波発生装置付きとなると、オーストラリアとアメリカが共同開発した「Nulka(ヌルカ)」が思い浮かびます。
図4 Mk-53 Nulka
引用URL:https://fas.org/man/dod-101/sys/ship/weaps/mk-53nukla.jpg
アメリカ海軍では導入していますが、海自では導入してません。
システムが複雑な上にランチャー増設の手間もかかります。
図5 ランチャー
引用wiki
通常のMk36SRBOCから発射できればいいんですけどね〜。
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(2)電波妨害弾1型って何?国内開発は?
電波妨害弾1型は、レア装備品になってしまったためほとんど見る機会がありません。
一般公開でも、展示することが無い装備です。
2.1 写真があった!
写真もほとんど存在しないものですが、技術研究本部50年史に写真が掲載されています。
図6 電波妨害弾?T型
引用URL:https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1283286_po_TRDI50_05.pdf?contentNo=5&alternativeNo=
国立国会図書館デジタルコレクションに記録されていました。
技術研究本部と三菱電機が開発したもので、平成7年から配備されています。
そういえばこんな形していたな〜!現職の時は、船務士時代に1回だけ発射したことがありました。
効果があるのかないのかよくわからん状態でした。
2.2 IHIエアロスペースのTORERO(トレロ)の導入?
艦艇用デコイとなると、DSEI2019にてIHIエアロスペースとイギリスChemring Countermeasures社が共同開発した 「TORERO(トレロ)」が浮かびます。
図7 TORERO発射
引用URL:http://www.arnosdesign.co.uk/rc_images/chemring18viii.pdf
Mk36 SRBOCから発射できる空中投棄型デコイです。
ただ、これは自分から電波を発射しないでRCSを最大化するパッシブ式のデコイです。
図8 TORERO展開
引用URL:http://www.arnosdesign.co.uk/rc_images/chemring18viii.pdf
TOREROを進化させて、電波発信機能を搭載する研究になるのかもしれません。
イギリスのChemring Countermeasures社は、電波妨害弾も開発しています。
図9 Mk251
引用URL:https://www.thinkdefence.co.uk/mk-251-siren-active-decoy-round/
こちらも有力候補となるでしょう。
単なるチャフ弾をばらまくより、有効かもしれません。
(参考:チャフ発射動画)
https://www.youtube.com/watch?v=bas0ybx8zik
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(3)艦艇用のデコイ・チャフはまだまだ発展途上!
艦艇のチャフやデコイといったものは、電子戦が重要視されながらあまり発展していませんでした。
Mk36SRBOCがいまだに現役の状態です。
図10 チャフ発射図
引用URL:https://astamuse.com/ja/drawing/JP/972/50/900/A/000008.png
3.1 チャフ発射しすぎ注意!
以前艦艇開発隊にいた時に、チャフ発射試験で物凄く怒られたことがあります。
護衛艦には、Mk36SRBCとして発射機が左舷右舷併せて6連装4基で24発分あります。
図11 チャフ発射機
引用URL:https://livedoor.blogimg.jp/radiob1/imgs/6/a/6adbfe39.jpg
チャフ発射時のデーター計測の依頼があり、左右両舷同時に24発チャフ発射を行いました。
(通常片側舷のみの発射)
関係機関にもちゃんと連絡をいれ、航空機に対してもNOTAM(航空情報)を発信してもらいました。
相模湾に出て発射〜!と景気よく発射してみると、無風だったため大量のチャフが拡散せず空中をしばらく漂ってしまいました。
図12 チャフ発射のイメージ(フレア発射から)
引用URL:https://i.ytimg.com/vi/uNZyE8XBUA0/maxresdefault.jpg
結果として、航空路を妨害してしまったので国土交通省東京航空局や厚木基地から、
『なにやっとんじゃ〜(怒)!』
と派手にお叱りの電話を頂く始末になりました。
3.2 電子戦訓練はつらいよ!
相模湾のように、近くに飛行場があると電子戦訓練がなかなか厳しい傾向にあります。
電子戦機器の試験は、制約の中で開発する必要がありなかなか大変です。
開発にはかなりの苦労があると思いますが、新しい艦艇用デコイの開発に期待しております!
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電子戦でのEJ弾後継及び旋回式ランチャーの普及が速く進んで欲しいと思います。
FAJが開発された時、チャフ・フレアも統合して欲しかったのですけど費用対効果で却下されたのが悔やまれます。
wikiに電波妨害弾1型の記事を書きました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E6%B3%A2%E5%A6%A8%E5%AE%B3%E5%BC%BE1%E5%9E%8B
そろそろEJもFAJみたいに旋回俯仰式ランチャー入れて欲しいですね。いつまでも Mk36 SRBOCって訳にもいかんでしょう。
開発関係者さまから直接開発苦労秘話を頂き大変ありがとうございます。
開発時にはかなり苦労なされたんですね〜。
貴重なお話をありがとうございました。