えっと今日は、……そうだ、朝ごはん(いや、昼食だ。時間的に)は、明日晴れたら行ってみようと俺が提案したカフェで食べたんだ。外から見ると、窓が大きくて開放的な雰囲気の良さそうなカフェを見つけたのだ。家から歩いてすぐのところだが、ゆーは入ったことがないらしい。
その店でコーヒーとマフィン、パニーニを頼む。ゆーはコーヒーは飲めないので、なぜかペットボトル(日本と違い胴が一回り太く、見た感じ650mlくらいは入っている)の水を頼んだ。どうやらこの水を買うと値段が安くなるらしいが。
晴れていたので気持ちの良い朝を過ごせた。昼だけど。パンもおいしかった。ゆーも気に入ったようだ。そして、この時偶然買った水が、皮肉にも大活躍することになる。 この店に入って考えたのはサービスについてだった。レジのねえちゃんはよく笑い、よくしゃべり、店や商品を愛想よく案内してくれる。加えて、俺達客を前にして、窓の外を通りかかった友達に手を振ってはしゃいだり、カウンターの中で別の人間と会話したりする。
日本と外国、どちらのサービスが良いか悪いか、それはわからない。日本のサービスは多少、過剰なところがあって、もっとフランクに、アバウトになっても構わないだろうし、俺だって日本のサービスはかなり発達していると思っているから、彼らにも見習って欲しいと感じる部分は多々ある。しかし、サービスもまた商品の一部なのだと考えた場合、カナダにだって、高級なレストランへ行けば日本顔負けのサービスを受けられるだろうし、その報酬としてチップを求められる。チップを払ってサービスを受ける。その考え方からいくと日本という不可思議な国は、大いに価値あるサービスを投売りどころか無料で垂れ流し、大きな可能性を秘めたニッチ産業を自ら潰しているのではないか、そんな思いを、パンとともに噛み締める。でもおいしいからいいや。
食事の後、バスに乗ってスタンレーパークへ行った。昨日夜景を見たところだ。ここはほんの入り口に過ぎない。この公園は巨大である。どのくらい巨大か、想像がつかないけど、きっとこの公園を歩いて一周するとなると、家に帰り着くのは深夜だろうな。下手すると次の日になるかもしれない。
海を横目に、舗装された道を歩く。サイクリングロードと歩道が並んで伸びている。特に考えもなく歩いていた俺達は、知らずにサイクリングロードを歩いていた。後ろから来た人に注意され、俺達は慌てて歩道側に移った。歩道とサイクリングロードには仕切りが出っ張っていて、それに足を引っ掛けたゆーは、なんだかマンガみたいに派手に転んだ。ずるべたーん! 痛いーとか叫んでなかなか立ち上がろうとしない。ゆーより俺の方がよっぽど恥ずかしいよ。幼い頃も、ゆーはよくこうやって派手に転ぶのが得意だったなと、ふと思い出した。
ゆーの履いていたジーパンには穴が開き、ひざ小僧をすりむいていた。近くのベンチに座り、偶然買ったあの水をかけて応急手当をする。俺は笑い転げた。
公園の中には更に小さな公園があった。まさに日本にあるような小さな子供用の公園だ。遊具は滑り台と謎のパイプがいくつか立っている。ここでは夏になると、このパイプから水が出て、小さなプールになるらしい。ほんと、考えること違うよね。外国人。でも管理室があるわけでもなく安全性にかけるところは相変わらず。それでも運営できているのだから、国民の心の大らかさを感じる。
馬車で園内を一周するサービスもあった。一周30ドルくらいで手が出せなかったけど、人気はあるようで見つけたときには馬車は満員だった。天気も良いし、さぞや気持ちよいだろう。馬は二頭並んで、のんびり待機していた。でかい、白い、優しい目。
トーテムポールが広場に立ってた。傍に土産物屋。特筆すべき点はない。
海沿いに歩いていると遠くに銅像が見えた。ゆーが、あれは人魚だよと教えてくれた。近づいていくにつれ、頭が丸いので、アシカがビーチボールで遊んでいるような形にも見えた。さらに近づいて見てびっくり。銅像は人魚でもアシカでもなかった。説明文にはGirl on wet suit……。ダイビングで着るウエットスーツ、フィン、シュノーケルを身につけた女性が、岩の上で休息している……。
本当に外国人の考えることはわかりません。
途中、道に迷い、変な森みたいな道を抜けてライオンズブリッジの方へ出た。その先に土産物屋があり、駐車場があるので、物色しながらコウスケの到着を待った。
ギャスタウンという通りに来た。大きくて広い通りに、赤や白の大きなレンガ造りの建物が立ち並び、時間ごとに蒸気で動く時計が音楽を鳴らす。今まで回ったどの通りよりも、外国を感じさせる、少し古びた町並み。土産物屋がたくさんあり、活気がある。ホームレスのじいさんがギターを弾きながら歌う。建物の陰から海が覗く。日本では、想像の中にしかなかった街が、ここにあった。
俺はここで、マグカップを一つ買った。日本ではコーヒーをよく飲むため、自分用に欲しかったのだ。並んでいたマグカップは、どれもハンドメイドを感じさせる。テーブルに置いたとき、多少がたつくもの、他と比べて飲み口の薄いもの、取っ手の薄かったり厚かったりするもの、気泡が混じっていたり、イラストが擦れていたり。
俺はそのなかから一つを選んだ。白地に、黒一色で棒人間と鹿と熊ときつね?が歩いている。シンプルな木と太陽が一つずつあって、Canada Back to Natureと書かれている。それだけのとてもシンプルなイラストだが、何故かそこにストーリーを感じた。
帰り道はティム・ホートンに寄った。日本でいうミスドのような存在だ。日本では様々なドーナツが並んでいるが、ティム・ホートンではセットメニュー以外にしょっぱいドーナツ、あるいはパイはない。ポテトパイとかチキンパイとか、そういうのがないから、店頭でこれとこれとこれ、と選んだドーナツは全てが甘い。こくも深みも全て無視して、ひたすら甘さの限界を試す、みたいな。
ティム・ホートンは人名らしい。カナダでのメジャースポーツはアイスホッケーで、その選手の一人がこの店を開いたらしい。ティム・ホートンはチェーン店なので、よく見かける。スポーツ選手が開いた店にしては大繁盛だろう。こういう店が少ないのも影響していると思う。ティムさん甘党なんですね。
IKEA(アイケア・日本のイケア。海外ではこう呼ぶらしい)という巨大家具店にも冷やかしに行った。家には椅子が二つしかないので、俺がいたり、友達が来たりすると足りなくなるので、下見に来たのだが、正直そんなことより、家具で遊ぶ方が楽しかった。店内のところどころにPCが置いてあって、自分で理想の図面を作ってプリントアウトできるサービスもあった。もちろん無料。椅子をぐるぐる回してみたり、ベッドに横になってみたり、ソファでぐったりしてみたり。閉店時間が迫っていたので(なんかどこ行っても閉店間際な気がする)客はいなかった。地下のレジに集中していた。おかげでのんびりゆったり冷やかせた。
夜になって家に帰ると、アパートの前でUBC現役学生のリュウヘイが待っていた。今日、全ての試練を終えて、四人で飲む約束をしていたのだ。飲むといっても、家でのんびりちびちびやるくらいなので良かった。リュウヘイもコウスケも、あまつさえゆーも、酒が入ると人が変わって騒ぎ出したらどうしようかと、密かに危惧していたが、全然そんなことはなかった。
家に帰って、ゆーと俺でハンバーグを作る。俺は肉をこねまくった。豆腐を入れたので水分が多く、形がうまく作れない。余っていたフランスパンをおろして混ぜたところ、粘りが出た。
酒の販売には免許がいるらしく、その辺の店では売っていない。酒屋に行ってビールを1ケース、俺はビール飲めないので梅酒を一本。ビールが安いとか高いとか言ってたけど、値段忘れた。
椅子がないのでベッドを変形させて二人掛けのソファにする。
お酒飲んで、ハンバーグ食べて、YouTube見て笑って、大貧民やって。そんな健全すぎる酒盛りでした。
第八日目(5/4)------------------------------------------------
今日はカナダ滞在中最も長い旅だった。車での移動が大半だったので俺はずっと後部座席に座ったままなのだが。
昼の十二時頃出発した。目指す先はホワイトロックという場所らしい。どんな場所か見当が付かない。
街も家もなくなって、延々となだらかな緑の丘陵を駆け抜ける。辿り着いたのは国境だった。
車を降りて、室内に通される。そこでイミグレーションを書き、虹彩と指紋をとられる。手数料(6ドルくらい)を支払い、ビザを受け取る。
そう、ここから先はアメリカ合衆国。コウスケとゆーは先進国アメリカに興奮していたが、カナダに来て数日の俺には違いがよくわからない。
車両点検も終わり、プレミアムアウトレットモールに向けて出発する。ブティックを始め、さまざまなブランドが密集するアウトレットモール。
看板の表記が時速kmからmileに変わり、ガソリンの単価表示がリットルからガロンに変わる。
カナダとアメリカ、通貨は同じドルでも、カナダドルとアメリカドル、とわずかに違うらしい。レートはほとんど1:1だが。
アメリカの地を踏んだ途端、雨が吹き付けるように降ってきた。道路に撥ねる雨滴が邪魔で、前が少し見難い。寒い。
ホワイトロック行きは断念して、その分長くアウトレットモールを愉しむことにした。俺とコウスケは土産や、買い替えたいものを購入して早々に用事は済んだのだが、ゆーが迷いに迷ってなかなか決まらない。挙句の果てにゆーだけなにも買わなかった。まあゆーの性格だから仕方ない。これはこいつの黄金コンボだから、防げるものではない。
フードコートで食事をする。6店舗くらいが横に並んで、食事を買う。手前のテーブルで食べる。日本にもたまに見かける風景。大きなショッピングモールとか行くとね。
ゆーとコウスケはチャイニーズフードを、俺はパン屋を選んだ。チャイニーズフードは一枚の皿に3種類くらいの食べ物を選んで盛ってもらう、それで一つ。俺はなんだかうまそうなパイみたいなパンを選んだ。選んだら暖めてくれた。大きさも大きいのだが、半分に切れていて食べやすい。具はチーズとチキンとブロッコリーだった。日本と比べても遜色ない、大変に美味なのだが、もし日本にこれを紹介するのだったら、熱く滴る油はもう少し切った方が良いだろう。チーズがとろんとしてて、ブロッコリーが入っているのがなかなか新鮮でおいしかった。
相変わらず雨は降り続き、寒い。ホワイトロックは完全に断念したが、それに伴いまだ時間はあるので、もう少しアメリカを探検しようということになった。目指す新たな地はシアトル市街。
吹き付ける雨の中、やはり周りには何もない風景を延々と過ぎ、ぼちぼちと家や看板が目立ち始め、シアトルの街に辿り着いた。
さすがのコウスケもアメリカの街にはまったく詳しくない。まずはマップを買おうということでセブンイレブンに立ち寄り、地図を購入する。
さて、どこへ行こうかと車を発進させるが、カナダに比べ交通量が多く、また日も落ち闇の中、降り続ける雨に、慣れない外国の地での運転と、かなりの悪条件が揃っている。カナダと交通のルールがどう違うのかも実際わからず、正面の信号が青なのに、ここは左に曲がってよいものか、はたまた右か、などとてんぱった挙句、どうやらライトがついていなかったらしく、警官車両に拡声器で注意され、怖くなって逃げ帰りました。
帰りにもう一つセブンイレブンに寄り(このコンビニはガソリンスタンドが併設してある)、ガソリンを入れようとする。ガロンをリットルに直すと、カナダより安いということがわかった。しかし、このガソリンの入れ方一つもわからず、コンビニの店員(マリオのようなおっさん)に迷惑をかける。ただレバーを下ろせば良いだけだった。
アメリカでの支出は全てクレジットカード=俺の負担となる。
それから関所に向かってまっしぐらに帰るわけだが、雨は更に強く、闇も濃くなり、気温も下がる。俺の座る後部座席の三方の窓は全て曇り、物見もできない。
まあ、俺は神経をすり減らしたわけではないので、楽しかったのだけども。二人はへとへとだった。家に帰ったのは12時だった。
あ、びっくりしたのは便器。カナダの便器は日本と同じく、腰の位置あたりに受け皿があるけど、アウトレットモールの便器は非常に低く、俺は間違えて子供用の便器で用を足しているのかと錯覚してしまったほどだ。さらに驚いたのは、セブンイレブンでトイレを借りた時。なんと、小便器と大便器の間に仕切りがない。正方形の小部屋に便器二つと洗面台が何の仕切りもなしに隣り合っている。更には、その小便器の受け皿が、床にのめり込むように埋まっている。身長2メートルの大男がこれを使ったらどうなるんだろうか……。
アメリカには酒の販売に免許は不要らしく、セブンイレブンでも売っていた。内装はカナダとあまり変わらない。
日本での煙草の値段が3ドル(300円)とすると、カナダは10ドル、アメリカは7ドルだった。
実はバンクーバーという街は複数存在するらしい。カナダからアメリカへ遊びに行った人が、帰り道がわからずバンクーバーへはどの道を行けばよいかと尋ねたところ、一つの道を示された。その人が延々とその道を辿っていったところ(数十キロ)、カナダとは正反対の、メキシコのとある地域の街バンクーバーに着いたと言う。
地理的にシアトルとカナダのバンクーバーは近いとはいえ、現地人にとってはカナダのバンクーバーは田舎も田舎、ということらしい。という話を聞いた。
第九日目(5/5)------------------------------------------------
明日は帰国の日。今日も12時ちょっと前に起きた。ゆーがJPカナダ(カナダにいる日本人たちが、インターネットで交流するフリーマーケットのサイト)で交渉した品を受け取りに行くということで、ゆっくりする間もなく外に出る。バスに乗ってスタンレーパークの入り口で相手の人と会い、ゆーは世間話などをしながら商品の受け取りをする。ゆーはJPカナダを愛用しているらしい。そりゃ、詐欺や危ない交渉も存在するだろうが、異国の地で自国の文化を共有する人たちが集まるのだから、そこには計り知れない安心感がある(決して安全ではない、と思う)。まあ、そんな変なサイトではないし、あの商品が驚くほどの安値で買えるのは、実際にサイトを見て、検索して体験したから言えるのだが、カナダのみってのが痛い。
その後、ゆーと二人でぶらりと散歩する。
タイフードを食べた。大皿にどかんと出てくる。ゆーはライスヌードルを頼んだ。味がさっぱり、というか、なんか……ね、普通。俺はチャーハンみたいなの頼んだ。味付けが濃い。うまいけど。これとライスヌードルの味を足して二で割ればちょうどよくなると思う。食べ切れなかったのでテイクアウト。
カナダプレイスという建物に入った。裏は港になっていた。大型の客船が停泊していた。中見たいけどチケットないと入れない。かなり大きく、まさに豪華客船だ。
仕方ないから港の周りをぐるぐるまわった。
なかは何かのイベントが開催されていた。軟派なイベントではなく、各中小企業が集まり、アイディアを交換し合うみたいな、わりと仕事色の強いイベントだった。中をちらっと覗くと、たくさんのブースに分かれて、首からカード下げた人たちががやがやと話していた。
それなりに歩いたはずだが、どこをどう回ったか忘れた。気付いたらまたギャスタウンに来ていた。土産を物色しながら、喉が渇いたので適当なカフェに入った。
Trees Organicという店だった。
店員の愛想がよく、ゆーも満足していたようだ。コーヒーを頼むと、店員のおっさんがフォークにケーキの破片を載せて、試食させてくれた。
正直甘ったるいだけでおいしくはなかったが、お世辞でgood tasteというと、No No, "very" good taste.と、訂正させられた。Ha,Ha,Ha,どうでもいいよ。
コーヒーはおいしかった。ゆーはホットアップルサイダーを頼んだ。サイダーと書くけど、炭酸ではない。ホットアップルジュースにシナモンが入ってる感じ。飲んでみると、酸味が強く、それから甘い。暖かい。シナモンスティックが差してあって(太いポッキーみたいだが、食べられない。銜えてみたが木の枝を齧っているような感触)、なかなかおいしい。
朝は曇り空だったが、今はずいぶん晴れた。風が吹かなければ心地よい。
アイス屋に入ってアイスを食べた。ワッフルコーンにキウイとマンゴーのダブル。味はまあまあ。
アイス屋の前でコウスケにピックアップしてもらう。
ゆーには行きたい店があったようだが、潰れていた。
靴屋にも入った。そこは作業用のセーフティーシューズを主に売る店で、靴はどれもでかく、ごつく、重い。爪先には鋼が入っていて、まさに危険な現場で仕事する男の靴、な感じ。こんなん履いたら足が持ち上がらなくて躓きます。でも鋼が入っているので怪我はしない、みたいな。
面白そうな店を見つけた。ホビーショップだ。中には数人の客がいたが、皆テーブルに向かい合って座り、カードゲームに興じていた。なんと店主もそこに混じっていた。中は様々なトレーディングカードや、フィギュアなどが売られている。日本発のアニメorゲーム物もわずかばかりだがあった。そのほとんどは外国のものばかり。マンガも売っていた。小冊子で一冊。オールカラーで20ページほど。日本のマンガ雑誌をばら売りしている感じ。一冊8ドルとかなり高い。
日本のものがほとんどなかったのが残念だ。日本の萌えフィギュアと違い、ここには外国のヒーロー関連のものが多かった。
夕食は、忘れ難しあのジャーマンフード。
俺が頼んだメニューはまたAlfredo。あの味が忘れられん。初日の時は、どの程度の量が出てくるかわからなかったものだから、サイズはランチサイズを頼んだが、今日はディナーサイズを頼んでみた。
うん、でっかい鳥のステーキが出てきました。チーズたっぷり。ザワークラフトとポテトフライ。今思い出しても涎が……。これは、また食べたい。何度でも。
ゆーがここのビールがとんでもなくうまいと騒いでいた。辛味がなくまろやかで飲みやすいらしい。俺も飲んでみたが、やっぱり味は分からない。まずい。
夕食を終えて、また初日に行った丘に夜景を見に行った。どうやらここはCypressという場所らしい。一番初めに見た景色と、同じ景色を見ているわけだが、ここ数日カナダを歩き回り、俺でもだいたいあそこがどこだとか、どのへんだとかわかるようになっていた。でもやはり寒いので車の中でぼんやりした。
ぼんやりしすぎてアミノ酸だとか、地球の重力とか引力とか、宇宙とか、真空状態における生物反応とか、星の自転や公転とか、へんな話の流れになったのを覚えている。
家にいったん帰り、荷物を置いてビリヤード。
俺はなかなかうまくなったと思う。でも、やっぱり下手の部類に入るのだから、ゲームがなかなか終わらない。1ゲーム1ドルとかの方が安く上がる。
このビリヤード店、今日はバーカウンターのところでカラオケ大会やってた。みんなへったくそなの! 超音痴! あんな歌声のアルマゲドン見たら別の意味で泣ける。この辺の国にはカラオケの文化はないからしょうがないけど、たとえカラオケの文化があっても音痴はいる。たまたま毛足の長い綺麗な猫をなでなでする機会があったけど、歌の下手さと動物の可愛さは世界共通だと思った。
うちで動物飼ってると、こういうとき動物のあしらい方で得をする。
明日は帰国。疲れた。飛行機の地獄を思い出す。発狂する、あれは。しないけど。行きで見られなかった映画を堪能するぞ。ここぞとばかりに。
第十日目(5/6-5/7)--------------------------------------------
帰国の日。この日は飛行機が12:45発のため、遊ぶ暇はない。朝6:30に起きてシャワーを浴びる。外はすでに日が出ていて明るい。荷物の最終点検をして朝食は採らずに空港へ向かう。30分程度で着いた。
空港内、早朝なので人はほとんどおらず、広いスペースを快適に過ごせる。UBCの経済学館を思い出した。
食事はバーガーキングとティム・ホートンから幾つか選んで食べた。
ゆーが早くも駄々こね状態。面倒くさい。
日本を出る時も、それほど大仰な準備をせず、さらっと来たつもりだったから、帰りもさらりと帰らせてくれ。
短い間だったが、コウスケともずいぶん仲良くなった。
まあ気持ちはわかるけどな。これからコウスケは車で仕事に向かうし、俺も飛行機に乗る。するとゆーはここから一人で電車に乗って、家に帰らなければならない。家に帰っても誰もいないのだ。寂しい気持ちになるのもわかるが。
見よ! 妹よ! 空は青いぞ!
あの空に向かって俺の乗った飛行機が飛び立つ、しかし、自然の力に抗うことあたわず、大地へと押し戻される。飛行機が墜落したら愉快じゃないか、え?
……ごほん。
それで、ゆーに付き合って少しぶらぶらしてから飛行機に乗り込んだ。荷物を預け、搭乗券をもらう時、係りの人に思いっきり英語で話されたのでさっぱり何言ってるかわからなかった。
そもそも俺には英語を学ぶ気がなかったので、聴こうという態度が出来上がっていない。それゆえ、どんなに簡単な英語で話しかけられたとしても、その言葉は文字通り耳から耳へ素通りする。
おろおろしてると、ゆーがヘルプに入った。通訳してくれた。さすがだ。
予約客がたくさんいるので窓側の席は取れませんよ、っていう意味だった。
どうでもいいわ!
パスポートと搭乗券を見せて荷物検査するところで完全に別れる形になった。ゆーが名残惜しそうに範囲の外から見送っていると、掃除のおじさんに「君も乗るのかね?」みたいなこと話しかけられていた。勝手が分からず困惑する旅行客と見られたらしい。
この一週間とちょっとの旅行は、案の定ゆーが矢継ぎ早にいろいろなところへ連れ出すものだから、わずかなイメージを除いて記憶を掘り出すことが出来ない。
成田空港で暇つぶしに始めた日記だったが、書きとめておいて良かったと思う。これがあったからこそ、帰国した後、改めてこういう形に記すことが出来た。
飛行機、行きは8時間、帰りは9時間。地獄はあまり考えないようにする。
持って来た文庫本も7,8割は読み終えた。アバターも見た。3D映像は俺には合わないので、これで十分だ。モニターが小さいけど。周囲はうるさいけど。集中して見るほどのものでもないしね。あれは楽しみながら見るのが前提の映画だから。
ゆーは寂しいとか言ってたけど、予定は詰まってるんだろ? 俺が帰った後は友達が二人も、順番に日本から来るそうじゃないか。そのあとにはなんか面倒くさい手続きとかでこっちにも帰ってくるんだろ。ゆーのバイタリティというかアクティビティというか、そういうのには驚かされる。早く帰ってだらだらしたい。
なんだか市内観光より食い倒れのほうが良い感じなお年頃。
精神的拷問の時間。しばらくお待ちください。
縦に三列ある席の真ん中、四つ並んだシートのうち、向かって左から二番目。
右の席に座る太った女の人は、いびきを立てて寝ていた。うらやましい限りだ。
左の席の人は英語圏のおばあさん、愛想がよく安心できる。が、旅慣れているようだった。
ゆーのお勧めはJAL航空機内の「ゆずスカイスペシャル」、だったか、そんなゆずのジュースがお勧めだと言っていた。行きでは忘れて飲み損ねたので、機内食の時に頼んでみた。ま、普通に美味いと思うよ。
こんどは夜を通さずに移動するのでずっと明るかった。それでも消灯の時間は来て、少し眠った。眠れなかったけど。
ようやく成田に着いた。14:40くらい。日付変更線を通ったので一日過ぎた。
ベルトコンベアに荷物が載って回ってくるのをぼおっと待つ。結構な荷物があるから自分の分が回ってくるまでにかなり時間を要する。慣れないと、いつまでたっても自分の荷物がこないものだからいらぬ不安をかきたてられる。
ようやく自分のスーツケースをひっぱり出し、関所に並ぶ。ここに並んでいる間や、荷物を待っている時、犬と警備員がうろうろしてたな。これが国の麻薬意識の違いあろう。犬可愛い。
で、またイミグレーション書くの忘れた。
今度はパスポート叩きつけられなかった。丁寧にイミグレーションも渡してくれた。そして今バスが来るまでの時間を潰しに、適当に目に付いたカフェで飯を食っている。バスが出たばかりなので、2時間ほど待たされる。
周りを見渡すと日本人ばかり。どこへ行っても、どんな人が話しても、周囲から日本語が聞こえることに違和感を感じる。狭い島国の中に日本人だけが住んでいる奇妙さ。居心地はいいさ、俺も日本人だもの。あとみんな童顔だな。女性は言うに及ばず、男も中年も。あと、清潔。肌も髪も服装も。
そしてやっぱり考えるのが第三業種、サービス。
適当に入った店だけど、サービス満点。カナダでも無料だけど、お冷は頼まないと出てこない。日本はとりあえず水だけは必ず出てくる。そして減ればすかさず継ぎ足してくれる。店内で煙草吸えるのはいい。汚れ拭きも完備。
そんなサービスの数々が、なんだか不気味に思えるのも仕方ない。
俺は今とある病気に罹っているのだ。ちょいと海外旅行をして、海外の雰囲気に巻かれてきた日本人が、帰国して周りの人に意味もなく英語で話しかけたくなるという、あれだ。ろくに話せもしないのに。
日本の食事メニューって、だいたい名前と写真から決めるけど、カナダでは写真のついたメニューは見なかった。名前からもイメージしにくい。何で決めるかというと、メニューの下に必ずその料理の材料が記載されているのだ。
たとえば味噌汁だったら、Miso soupの下に英語で、味噌、豆腐、大根、(あるいはおふ)、みつば、などなど。
これを見てだいたい決める。
外国式のほうがメニュー見やすいかもしれない。直感で決めることが出来なくなるけど。
ようやく時間が来てバスに乗り込んだ。さすがに成田から田舎の八王子に帰る人は少ないので、中はがらがらだった。今度はエンジンストップもせず快適に八王子まで帰ってこれた。4時のバスに乗って6時に八王子。夜の7時頃、ようやく帰宅。
バスの中で、気付いたことがある。それは、カナダに来ても、それほど違和感を感じなかった理由だ。コウスケやゆーが四六時中日本語で会話し、俺に通訳してくれたのもあるが、なぜ英語の文化圏にすんなり馴染めたか。それは、日本にも、負けず劣らず英語が蔓延しているからだ。
どこの看板、注意書き、チラシ、パンフレット、どこを見てもたいていアルファベットの一つや二つはある。場合によってはハングル文字や中国語も目にする。
これらの文字が視界の中に常にあるからこそ、遠い外国にいっても、違和感を感じなかったのだ。しかし、バックグラウンドで英語に親しむのと、それを使って実際の生活に役立てるのではわけが違う。その文字を意味のあるものとして、自分の中に情報として取り入れようとした瞬間、自分の脳は解析を拒否し始める。
日本にはびこる英語の多くは、カナダで見たSUSHIYAMAのように、意味のない文字の羅列に過ぎなかった。カナダで変な日本語を見つけては笑ってきたが、笑い事じゃない。自分達の国も、笑われて当然な使い方だったのだった。
それからもう一つ、カナダの空は高く、広い。と書いたが、日本も変わらない。ただ、建物がすぐ近くに密集していて、さらに高速道路では安全面からガードが設けられているから、視界がさえぎられているだけだ。でも、ほんと建物多いな。ビルばっかり。緑がほとんどない。あそこもここも、全部ビルだ。
帰り着いた時も雨だった。雨に始まり、雨に終わる。
とりあえず、布団に潜る。おやすみ。
*リムジンバスとは、ツアーや修学旅行などによく使うと思われる大型のバスである。バスの腹に大きな荷物やスーツケースを入れて、乗客は客席に乗り込む。空港行きのバスは乗客が多く、添乗員もいたが、帰りは少ないので車掌一人だった。チケットは予約が必要。競争は少ないのでぎりぎりになっても買える。八王子〜成田は3800円ほどだった。
*空港のチェックインカウンターでライターを取られた。スーツケースの中にはライターは入れてはならず、手荷物の中にも合計で一つまで。余りは処分される。
*ゆーへの土産にメロンを持っていったのだが、本当はナマモノは駄目らしい。よくばれなかったと、ゆーとコウスケが驚いていた。スーツケースにメロンが入っていることは知っていたが、意識の外に飛び出ていて、注意書きを読んでも気付かなかった。
*空港には多くの飛行機会社が集まり、それぞれの持ち場が決まっている。JALは第二ターミナルで、CAは日本人、サービスが良く機内食がおいしいのが評判。
一方ユゆーに安いと進められたエアカナダはその時点でどこも満席だった。とっても安いのだが、CAは外人なので日本語は通じず、サービスそれなり、機内食まずい、らしい。JALで良かったと思う。
その他様々な会社が密集しているが、イメージとしては新宿が近いと思う。新宿という大きな駅に、京王線、JR線、(他知らない)他企業の線が集まって、目的地へ向かって走っている。
*初海外だったので、準備はパスポートの取得から始めなければならなかった。本籍地が現住所ではないので、わざわざ戸籍を取りに行ったり、パスポート申請のためにまた電車に乗って隣町へ行ったりと、面倒くさかった。
【歴史】
建国後まだ100年程度しか経っていないらしい。
”カナダの起源は17世紀初めにフランス人がセントローレンス川流域に入植したのが始まりである。1763年にイギリス領となり、フランス系住民と先住民が大英帝国の支配に組み込まれた。1867年に英連邦内の自治領となり、1931年に事実上独立国家となった。”(ウィキペディア)
【地理】
良くも悪くも田舎なので、緑がたくさんあり、土地が広い。街中で見かける草花は日本人にも馴染みのありそうな可愛らしいものがおおい。森や沼に行くとグロテスクなものが多々ある。奇抜な動物は見なかった。
【気候】
高緯度のため日照時間が長い。夏には白夜もある?らしい?
湿気はほとんどなく、快適。風が吹くと寒い。天気の良い日にも防寒具は必要。
天気が変わりやすい。きっと春は乾季なのだろう、そこまで雨に苦労した覚えはない。
カナダといえばメイプル(楓)が有名だ。ティム・ホートンのメイプルドーナツ、お土産のメイプルクッキーなどそれなりにメイプル製品はある。
また国旗も楓の葉がモチーフになっている。
*歴史、地理、気候などについて、現地で得られる情報はそう多くない。インターネットで調べた方がよっぽど多くの情報を手に入れられた。
【文化】
●食事
歴史が浅いので、郷土料理は数えるほどしかない。そのため、食文化は輸入されたものが多く、日本、タイ、イタリア、アメリカ、ギリシャ、ドイツなど様々な店が軒を連ねる。これらの店は日本を除き、より本場の味に近いと思う。
●人
先住民はインディアンとのこと。ギャスタウンやスタンレーパークでインディアン関係の土産をよく見かけた。トーテムポールや木彫りのお面、木や石の装飾品、皮のマントや靴をよく見た。
人の心は住む国よりも、経済状況や地理で決まると思う。広くのびのびとした地形、治安もよく、物価もそこまでひどいわけじゃない。そのことから人々の心は広い。が、人に優しくすることとサービスを混同しているどこぞの国とは違い、また言葉には丁寧語などないので、多少ぶっきらぼうに聞こえるかもしれない。バスのあんちゃんが声をかけてきたり、店員だったり、公園だったり、なかなかにフレンドリー。そこに商業的サービス精神は感じない。
●スポーツ
カナダのメジャースポーツはアイスホッケー一色。熱狂的なファンは車に自分の支持するチームの旗をはためかせて運転する。また、自分の支持するチームが試合に勝ったりすると、次の日にはクラクションを鳴らして走ったり、街頭でタオルを配ったり、イベントを開いたりする。だいたいテレビのある店ではアイスホッケーの試合を流している。
●ルール
カナダでは禁煙の規制の方向が日本とは違う。煙草税を重くし、気軽に吸えないようにするかわりに、屋外では歩行喫煙が可能となる。が、全ての屋内では原則禁煙で、店から6.5m離れて吸わなければならない。またポイ捨てもok。
麻薬のルールに関しては世界共通で厳しいのだと信じているが、日本ほど厳しくはない模様。治外法権のマリファナパーティーなるものも存在するらしい。
土地が広いため、駐車場というものはよほど大きな店でない限りあまり見かけない。基本は路上駐車となる。道路の幅を広くして、わざわざ路駐スペースをとってある。人通りの多い通りなどは路駐に代金を要求する機械まである。ルールを守らないと警察に車を持っていかれる。
警官車両は青と白を基調としたもので、俺の目から見るとダサく、地味。慣れれば見分けられるだろうけど。サイレンの音はパオパオパオパオって感じ。
酒は免許がないと販売できない。酒税はきっとそんなに高くない。
消費税は14%らしい。税の高さを実感できる機会はなかった。
車は左ハンドル、右側通行。慣れれば怖くない。
車の信号は日本と同じ、青黄赤。対して歩行信号が白と赤。白で人が歩く様、赤で手のストップジェスチャー。
信号無視は皆無。
小さな店は4時には閉まる。大きな店でも10時ごろが閉店時間。24時間営業もあるにはある。
おわり
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