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2024年08月30日

572.ドラゴンプラナ

ドラゴンプラナ-2024_06_07-04-21-23.png

 おはようございます。あるへです。
 本日はこちら「Dragon Prana」のレビューです。

 いつものExe-Create製KemcoRPGで、前回べた褒めしたドラゴンラピスの後継作です。
 昔懐かしい目の粗いドットとピコピコFCチック音源がコンセプトの王道RPGですね……。

 今作は駄作でした。
 ドラゴンシンカーやドラゴンラピスから明らかに変わり良くなった点も多いのですが、私の求めていたラピスの続編ではなかったですね。非常に残念であるとともに、非常に退屈でした。主人公が巨悪と戦っている間、私は画面右下に常に見えているスキップボタンを押したくなる衝動とずっと戦っていました(笑)

 良い所。
 いっぱいあるんですよ。まずゲーム全体の滑らかさや色味が増えました。Xbox上のKemco史でいうと、彩色のカルテットあたりからグレードアップしたエンジンを使うようになり、キャラ移動が滑らかになったり、松明の明かりがふわっと広がっているように見えたり、マップにレイヤーの概念が増えて、下を潜ったり、階層を意識したマップが作れるようになりました(本作に階層構造はないけど)
 アスデバシリーズなどの古い作品と比べればその差は歴然で、目で見る以上に様々な技術的な問題が改善されており、遊び心地は非常に快適でシームレスです。
 とっても遊びやすいんですが……これではいつものKemcoゲーと何も変わんないんですよね。昔懐かしいFCチックなゲームってなんだっけ? 見た目がドットで、文字もドットで、ピコピコ音源だったらノスタルジー感じるの? いや、確か前回か前々回で逆のこと言った気がするので(こんなとこまであえて不便にする必要あるか、ってやつ)いやーワガママですね、私。
 そんな感じでこのドラゴンシリーズのコンセプト自体破壊してないかってくらい、実はゲームプレイは快適でした。

 またBGMは良かったですね。前作以前と比べ、「圧」が減り、柔らかく聞き心地がありながらも電子音源チックなBGMで、種類は少ないながらも、それでも前作に比べればイベント用BGMなどが増え、悪くはなかったと思います。
 が、ですよ。それは楽器の種類が増えて表現力が増したからだと思っていて、つまりそれって制限がないってことじゃないですか。
 我々がレトロゲームに求めるノスタルジーって、少ない容量をどうやりくりするかっていう職人芸に係るところも大きいので、これもまたこのシリーズの醍醐味ってなんだっけと考えてしまうのでした(前作はさんざん耳が壊れるとか気が狂うとか言ってたのにね)

 文字数という点でも同じことが言えます。FCは当然、SFCでも、イベント中のセリフの掛け合いや街中のNPCとの会話など、セリフや個性が少なく素っ気なく思えるものもあったかと思います。それらの主な要因はやはり容量制限で、無駄な表現をなくし、少ない情報で必要なものだけ伝え、足りないものはプレイヤーに想起させることで補っていたこの時代のゲーム独特の表現技法がありました。主人公が喋らないのだってそういう理由でしょ。
 このゲームはべらべらべらべらよー喋ります。
 前作ラピスでもよく喋り、その時はべた褒めしてたのに、なんで今作はこんな言い方をするのかってーと、やっぱり面白くねーからですよ。キャラ同士の会話がとにかくつまんない。
「俺はこう思う、なぁお前もそう思うだろ?」みたいな意見の押しつけが頻発したのも悪印象。こんな奴と友達にはなりたくないと思いました。
 ま、そんなんでパーティーメンバーに思い入れや共感が発生せず、従って儀式のような展開が苦痛になっていったんですね。
 推測で物事を決める→結果的にその通りになる っていうのはまさにご都合主義ですよね。

 まだありますよ。
 ドラゴンシリーズといえば無口な主人公の毒舌選択肢が一つの名物でもあるんですが、風化しておざなりになってしまいました。本作の主人公は喋ります。べらべら喋ります。途中の選択肢も、シリーズ恒例だから仕方なく付けた程度の投げやりっぷりでうんざりしました。けっして喋らないから良かったんだというわけではありませんが、人間味もなく共感を感じ得ないキャラクターたちなんで、だったらもうセリフを増やすなって意味です。

 実はメインストーリーの構想、柱、流れ自体は悪くないんですよ。それこそノスタルジーを感じさせる見飽きた英雄譚で、味方サイドが結束できないなら実は敵サイドも瓦解して、ちゃんと王道ストーリーだと思いました。
 でもね、さっきもいったように、そうした大きな本筋のストーリーを辿るために起こる一つ一つのイベントで、容量制限を無視した無駄な会話がてんこもりで展開されるわけですよ。
 ストーリーは骨太ではあるけど見飽きたって言ってんじゃん(笑) 特に意表を突くでもなく予定調和で進んでいく陳腐なストーリーに、個性と特徴が箇条書き数個で埋まるような薄いキャラたちがそれぞれステレオタイプなセリフで彩るわけですよ。
 そのセリフ一つ一つに、キレがないんですよ。

 いやぁーーーー、退屈でした。

 まだまだ言わせてくれ。
 ドラゴンシリーズの目玉といえばジョブ。このジョブを極めていくたびにキャラとしての性能がどんどん花開いていく。ジョブ一つ一つはそれほどでもないかもしれないけど、あのジョブこのジョブ全部の良い所を一つにまとめたら最強になる。それができるのがこのドラゴンシリーズでした。
 本作は戦闘中に陣形やジョブでさえも一時的に変更することができる、新しい戦術ということでここが目玉ポイントではあるんですけど。つまりそれぞれのジョブには尖ったところがあるから、戦況を見極めて随時選択してくれってことで、あのジョブこのジョブ全部のいいとこ取りして最強の個体を生み出すってコンセプトではないんですね。それぞれのジョブが独立していて、あれもこれも手を伸ばす利点がほとんど無いのが残念でした。

 さらに、前作ラピスで仄かに好きだったスフィア盤システム。これなにさ。隅に追いやられて、ツリー伸ばして、一個パッシブ取って終わりじゃん。なんやかんやで最序盤でスフィア盤埋まっちゃって、やることなくなったぞ。

 遊び心地をフルリメイクした結果、ドラゴンシリーズの良かったところ(大したアイデンティティーではなかったにしろ)がごっそり潰れて、作り手たちは前作ラピスの何が良かったのか、そこも見誤ってしまったというところでしょうか。大手の超大作ゲームの続編みたいな失敗の仕方をしてると思いました。

 なんだよ前作、前前作で推してた"大物作曲家"今回不参加じゃん! そら曲の風味も変わるわいな。
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