■衛星及び航空機からのUTDC受信、また限定的ながら双方向データリンクが出来る様だ
■ミサイル間通信能力や自立脅威回避能力といった機能は持たず、取り敢えず早期の装備化を目指している印象
何も年末も押し迫った日にこんな大ネタをやらんでも良さそうですが(^^)
12/29に大火力先生(@Military_Hobbys)より 12式地対艦誘導弾能力向上型の地発型の初回量産仕様書 が公開されました。自腹を切ってこのような貴重な資料を公開している大火力先生に感謝であります。
さて、管理人はこのミサイルのことは全く存じません。殆ど初見だということをご留意ください。まぁ、市井の自称料理研究家じゃなくて兵器オタクが世迷言を述べているという認識でお願いします。年末で時間も無いことですし、ここでは主に誘導装置関連を中心として見てみたいと思います。
さて、仕様書に載っている概要図を見てみると、このミサイルが"12式地対艦誘導弾"という名前が付いているのに関わらず、従来のASM-1眷属とは全く異なることが分かると思います。
ASM-1ファミリーの図
画像引用元: Los688 - 投稿者自身による著作物, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=30811400 による
外観は何となくRTX社のAGM-129やMBDA社のSCALP-EG/ストーム・シャドウを彷彿とさせます。
RTX社のAGM-129 ACM
画像引用元: パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=196347
MBDA社のSCALP-EG/ストーム・シャドウ巡航ミサイル
画像引用元: https://commons.wikimedia.org/wiki/File:StormShadow-Hendon_1.jpg#/media/ ファイル:StormShadow-Hendon_1.jpg
なのに、12式地対艦誘導弾という名称が付いているのは、73式小型トラックみたいなもんでしょう。つまり、全くの新規開発ではなく既存の誘導弾の改良型であるという体裁を取っている訳です。これにより本来開発モノとして必要な手続きや手順をすっ飛ばして装備化を早められるって訳ですね。
通常、開発品の場合は部内研究から始まり、研究試作から所内試験を経て開発決定し、試作を行って技術試験を行い、ユーザーである運用者側の試験である実用試験を経て装備審議会に掛けられて制式化するというプロセスが必要になります。もし、研究開発要素が無くいきなり試作から入れるのであれば、大幅に開発期間を短縮できます。このような開発例として代表的なのは中距離多目的誘導弾でしょう。このミサイルは01式軽対戦車誘導弾のシーカの開発成果を最大限に流用して開発を簡素化させています。
中距離多目的誘導弾
画像引用元: JGSDF - 中距離多目的誘導 誘導弾及び発射装置, CC 表示 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=26307972 による
前置きが長くなりました。仕様書の17ページ、附属書A(規定)誘導弾を中心に読んでいきます。
ます、誘導部というところを見てみると、ホーミング装置が電波式であることが分かります。これは恐らく、12SSMからの流用じゃないかと思います。
次に慣性装置ですがGNSS(全地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite System))からの電波を受信し、また飛しょう体の加速度及び角速度を検出しとなってますから、GNSSをベースに光学式INS(恐らくFOG)を組み合わせたものなのでしょう。ASM-2BのようにGPS併用航法と言っていないのがミソ(つまりGNSSメイン)でしょうね。また、GPSではなくわざわざGNSS と呼んでいるのは、GPSだけではないということでしょう(無償貸付品に準天頂衛星システム関連資料が含まれています)。
誘導部で注目すべきは衛星艦船情報受信装置と目標情報装置でしょう。
衛星艦船情報受信装置は衛星経由で艦船から目標情報を受信するもののようです。所謂、UTDC(Up To Date Command)です。ここで注目すべきは地発型なのに発射プラットフォームではなく艦船からの情報を受信する点です。これは長射程(1,000km以上)のため前方へ進出している艦船から情報を入手するためでしょう、最近は本邦の潜水艦にも Xバンド衛星を使った衛星通信装置が装備されつつあるようですから、目標付近まで前進した潜水艦からのUTDC送信、もっと進んで潜水艦から目標初期値情報を受けて発射してUTDCで誘導指示を行うこともも有り得ると思います(それがメインかも)。
目標情報装置というのは初めて聞く名称ですが、仕様書によると航空機の対空無線によりUTDC受信する装置とのことです。また、誘導弾のステータス情報などを中継機、地上局へ送信する機能もあるようです。所謂、双方向データリンク(2 way datalink)が出来ることになります。シーカが画像誘導方式ではないので命中直前の目標の画像を送ると言った芸当は出来ないと思いますが、もしシーカーのレーダーで捉えた情報を送信できるのであれば、情報収集の一助となるかもしれません。
さて、自分的に注目していたのはこのミサイルに以下のような機能が存在するかどうかです。
・ミサイル間通信機能
・ミサイル自身のセンサー情報による自律的脅威回避能力
・デコイ等の自己防御(欺瞞)手段
仕様書をさらっと除く限りはそのようなものは見受けられないようです。まぁ、このミサイルについてはアジャイル開発に近い手段が取られるようですから、今後装備する可能性もあるかもしれません。
このミサイルについては今後もウォッチしていきたいと思います。
今年の更新はこれで終わりです。今年一年のご愛顧を感謝いたします。
来年も細々と続けていければと思います。
1/72 アメリカ空軍 AGM-129発展型巡行ミサイル (18個セット)
価格: 3965円
(2023/12/31 16:35時点)
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