ニュートン別冊 ゼロからわかる心理学 知れば知るほど面白い!心と行動の科学 から
監修 横田正夫 2019年3月5日発行 ニュートンプレス
心理学と環境
人を取り巻く環境を考える?D
自室へのこもりやすさを引き起こす環境
「引きこもり」とは、他者との関係を断ち、
ある空間に閉じこもる状態を指します。
![引きこもり.jpg](https://fanblogs.jp/mtshchz/file/E5BC95E3818DE38193E38282E3828A-thumbnail2.jpg)
引きこもりの症状を引き起こす原因は、環境ばかりではありませんし、
人それぞれ状況が異なっています。
発達障害やうつなどの精神的な病や不調が直接的な原因になっていることもあれば、
友人とのトラブルやいじめなど人間関係が引き金となっていることもあります。
その原因によって、環境の影響が大きく働いている場合と、
そうでない場合があります。
発達障害に見られる引きこもりや飛行では、
子供部屋が個室だとそのような状態が引き起こされたり、
助長されたりするのではないかと問題視されることがあります。
しかし、個室があるから引きこもりや飛行が起きるわけではありません。
また、日本では、個室を与えられている子供の割合は、
青年期では8割を超えています。
もし個室が引きこもりの症状を引き起こすのだとすれば、
ほとんどの子供が病的な引きこもりとなってしまいますが、
そうではありません。
つまり、個室が必ずしも悪いわけではないのです。
それでも、個室にこもりきりになり、家族とのコミュニケーションが少なくなりすぎるのも問題です。
とはいえ、個室があまりにも快適すぎると、
子供は個室にこもるようになります。
部屋に鍵が付いていることと、テレビ・オーディオ機器があることは、
引きこもりの傾向を高めるというデータがあります。
そして、現在の子供たちをより快適に部屋にこもらせる原因として考えられるのは、
テレビやオーディオ機器よりも、インターネットにつながったパソコンや、スマートフォンです。
しかしこれらは、生活に欠かせなかったり、学習に使用されたりするので、
完全に個室から排除するのは難しくなっています。
買って、子供が玄関から直接個室に行ける家の構造が、
個室にこもる習慣を助長するのではないかと考えられ、
建築・間取り設計の段階で引きこもるのを防げないか、
研究されたことがありました。
しかし調査の結果、家の間取りは引きこもりとは無関係であることが
証明されています。
逆に、思春期の女子の場合、外出しようとするたびに、
リビングにいる家族にその姿を見られ、
外出の目的を説明しなければならない状況を
疎ましく思うことから、
「リビング通過型」の間取りの方が、外出を控え、
個室にこもる傾向が高くなるとさえ言われています。
なお、問題となるような過度な引きこもりには、
個室の有無よりも家族関係が重要であると考えられています。
個室は、家族間や親子間の問題から生じる影響を
さらに悪化させる要因の一つでしかありません。