最終的には、心の働きの脳内メカニス?ムについて述べていきます。
連想を生むーニューロン集団?E
異なる記憶の関連付けは
私たちが周囲の世界を理解したり体系化したりする上で重要だ
技術革命によって記憶を関連付けるプロセスが明らかになってきた
記憶にタグ付け
ミニスコープの結果をさらに確認するために、カイは神経科学者メイフォード(Mark Mayford, 現カリフォルニア大学サンディエゴ校)が開発した別の手法を用いた。 TetTag
システムと呼ばれる技術だ( TetTag はテトラサイクリン・タグの略)。
特殊な遺伝子改変を施したマウスが箱内を探索している時に記憶が形成されると、活性化したニューロンでは TetTag
によって蛍光タンパクが作られて蛍光を発するようになり、それが何週間も消えずに残る。
マウスの死後に、 最近活性化したニューロン(記憶の形成直後に発現する遺伝子によって標識されたニューロン)と、 TetTag
によって長期間タグ付けされたニューロンを対比できる。
ある1つの出来事で活性化されたニューロンには1個の蛍光タグが付き、2つの出来事によって活性化されたニューロンには両方の蛍光タグが付いているので、 それぞれを特定できるのだ。
カイらはこの可視化法を使って以前と同じ実験を行い、時間感覚が5時間と短い場合、2つの記憶を記録したニューロン集団の重複(2つのタグがついたニューロン)は、偶然によって生じる水準よりもかなり多いことを示した。
間隔が7日間の場合、ニューロン集団の重複は、偶然による場合と有意な差はなかった。
私たちの 「記憶の関連付け仮説」
を裏付けるさらなる証拠が、トロント大学のジョセリンのチームによる実験で得られた。
彼女らはニューロンをタグ付けする別バージョンの実験を行っただけでなく、独立の行動実験からも、記憶の関連付けの証拠を得た。
ジョセリンらは、2つの記憶のそれぞれを記憶しているニューロン集団に重複があるなら、1番目の記憶によって引き起こされたCREB濃度の増加は2番目の記憶も強化するだろうと予想した。
ただし私たちの実験のようにマウスを異なる箱に入れるのではなく、2つの異なる音を認識できるようにマウスを訓練した。
それぞれの音の訓練を6時間以内に行った場合、1番目の音の訓練によって2番目の音の記憶が強化された。
だが訓練間隔が6〜24時間の場合には強化されなかった。
最近、富山大学の井ノ口馨らはさらに進んだ実験を実施した。
2つの異なる情動的記憶の両方を割り当てられた細胞集団の光遺伝学の技術を使って不活性化し、どちらか一方のみを割り当てられた細胞など他の細胞はそのままにした。
2つの記憶に共通する細胞を不活性化すると、個々の記憶の想起には影響はなかったものの、2つの記憶の結びつけが切り離された。
この見事な実験は、2つの記憶の関連付けには両者に共通するニューロン集団が必要だという私たちの説の直接の証拠となった。
提唱したばかりの 「割り当てー関連付け仮説」
に対する証拠は複数の研究チームによって独立に得られており、井ノ口らの結果もそれに加わった。
参考文献:別冊日経サイエンス『最新科学が解き明かす脳と心』
2017年12月16日刊
発行:日経サイエンス社 発売:日本経済新聞出版社
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posted by fanblog
2019年04月30日
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