1967年の6月、リン・マーギュリスは『理論生物学ジャーナル』に有名な論文を載せた。シンビオジェネシス(共生発生—別個の微生物が合体する)が起き、生命の進化に大きな影響を与えたとする証拠をまとめ、細胞小器官が鍵を握っていたと発表した。
ミトコンドリアは、細胞が生きる上でするあらゆる活動のすべてにエネルギーを与える。この生物学的発電所が、多細胞生物の起源が共生であること証拠だという。その起源は、初期の原生生物に取り込まれた、酸素を利用する初期の細菌だと考えられている。
しかし、ミトコンドリア遺伝子は、少数(厳密に言えば13個)のタンパク質と、それらの合成に必要なすべての遺伝子マシンの遺伝暗号(コード)にしかなっていない。ミトコンドリアを構成するタンパク質の大多数(およそ1500個)は、全部で3万から4万個ある核内遺伝子の一部にコードされている。つまり、過去はどうであれ、現在のミトコンドリアは、ふたつのゲノムに頼っているため、宿主細胞内でしか培養できない。
ミトコンドリアはすべての真核細胞が持っているが、原核生物の中には見られないこと、ミトコンドリアを覆う膜は、他の細胞小器官のものと化学的性質も機能も似ていない。つまり、ミトコンドリアがかつて細胞外に独立していたという。さらに、ミトコンドリアは独自のDNAを持っており、DNA複製過程は細胞核内のものとまったく異なる。その上、ミトコンドリアは複製のしかたが違い(単純分裂をする)、そのタイミングも細胞本体とは異なる。
マーギュリスが非常に説得力のある証拠を並べたため、いまや生物学者は、少なくともミトコンドリアと葉緑体に対してだけは、かつて異端だった彼女の見方を事実として受け入れている。
ニック・レーン(Nick Lane)は著書『ミトコンドリアが進化を決めた』著 斉藤隆央 訳 みすず書房で、こう述べている。
真核生物が登場したあとの進化の全景を見わたすと、目的意識が感じられるのは確かだ。神に近づこうとしていく大いなる存在の鎖という考えは、たとえ間違っているとしても、たまたまそう見えるのではない。
ミトコンドリアが誕生してから、生命はほぼ確実に複雑になったはずだ。複雑さを高める原動力は、内部から生じたのであって、上から与えられたわけではない。
対して、インテリジェント・デザイン(ID)論、並びに創造論の視点からは、進化論は今や崩壊の寸前にある、と言っている。これまで進化論の「証拠」とされたものは真の「証拠」ではなく、それどころか「誇張」や「でっちあげ」が蔓延っていたのだと。
そもそも、人類の年齢は数百万年ではないという。
「今から約250万年前になって、わたしたちの人間の祖先がついに誕生した」と進化論の説明は始まる。
現在よく使われる年代測定法のひとつに、「炭素14(C4)法」と呼ばれる測定法がある。これは、ウォレット・レビーが考案したもので、彼はこのために、1960年にノーベル賞を受けている。この方法は4000年前ぐらいまでのものならば、年代のわかっている考古学的文書や資料との比較によって、その信頼性が確認されているという。
「アメリカン・ジャーナル・フィジクス」に載せられた彼の論文によると、彼は、人類の遺骸に関して到達できた年代は、いくら長く見ても「2万年から4万年くらいである」と結論している。
では、この「250万年」という数字を、進化論者はどのようにして出したのか。これは「カリウム‐アルゴン法」と呼ばれる年代測定法で出されたものなのである。この方法は、放射性同位体元素を用いているということでは「炭素14法」と同じだが、原理的にはまったく異なっている。
炭素14法の場合は直接、生物の化石を調べるが、カリウム‐アルゴン法の場合は性質上それができないので、化石のなるべく地殻の火山岩の年代を調べる。カリウム‐アルゴン法の与える年代は、その火山岩が冷えて固まったときの年代をさすことになっている。そしてその火山岩の年代をもって、その生物の年代と見なすのだ。
ところが、このカリウム‐アルゴン法は、放射性カリウムの「半減期」を利用して年代を測るものだが、その「半減期」は 13億年もある。
東大の小嶋稔博士は、こう述べている。
「『カリウム‐アルゴン法』は、往々きわめて古い、もちろん真の年代とはまったく関係のない年代を与える傾向のあることが、知られている」
そして、現生人類は、進化論者が「猿人」とか「原人」「旧人」などと呼んだものが生息していたまさにその時代に、すでに生息していたという。
進化論者が「ある地層内で人類の祖先を発見した」と発表することがある。しかしその後その周囲をよく調べてみると、それと同じ地層から、あるいはそれより下の地層から、今生きている人類とまったく同じヒトの骨が発見されたりするのだ。
進化論において、「突然変異」は進化の主役とされて、生物は「突然変異」の積み重ねによって、しだいに複雑で高度な機能を持つ生物に進化してきたとされている。
しかし、今や多くの科学者が指摘しているように、突然変異は進化を推し進めるどころか、進化を妨害し、生命の存続を危機に追い込むものでしかなかった。突然変異は、その生物に有利な変化をもたらすものではなく、不利な変化しかもたらさないのである。
「突然変異はほとんどの場合有害だが、長い時代の間には、いくつか有益な突然変異も出てきて、それが進化の原動力となったに違いない」
進化論の教科書ではよく、このような教え方がなされる。
しかし、アメリカの科学者ゲーリー・E・パーカー博士は、数多くの有害な突然変異のなかで、たとえ万一、その生命体にひとつ、あるいはいくつのかの「有益な」突然変異が起こったとしても、結局それも生命体を進化させることは不可能だったことを、明らかにしている。
というのは、突然変異によって引き起こされた欠陥や障害は、歳月とともに遺伝子のなかに重い「遺伝荷重」を負わせ、積もり積っていくからである。「遺伝荷重」とは、遺伝子エラーの積み重ねで、生命体にかかる負担となり、遺伝的に次の世代に伝わっていくので、代を重ねることに重くなり、ついには致命的なものとなるという。
ロシアの生物学者コンスタンティン・メレシコフスキーが1905年に描いた系統樹の、ふたつに枝分かれする生命の系統樹に、なんとも具合の悪い逆転が生じている。
それに対して、スティーヴン・ジェイ・グールドは、カンブリア爆発でふつうの系統樹が逆転したと主張した。このカンブリア爆発とは、進化論者が唱えるもので、5億6000万年前あたりに、地質学的な意味では突然、生命が爆発的に多様化した出来事を指すのである。その後、大半の大枝は容赦なく刈り込まれ、いくつもの門がまるごと絶滅したのだと。
スタンフィールズ著『進化の科学』という教科書には、次のように記されている。
「カンブリア紀に、今日知られている動物の主要なグループのほとんどすべての代表が、突然出現している。まるで巨大なカーテンが引きあげられて、そこには実に変化に富む生命の群がった世界が、姿を現したかのようであった」
創造論では、進化論者が「先カンブリア時代」と呼んでいる地層は、実はノアの大洪水以前の地層であるとしている。つまり、地球誕生時からすでにあった地層である。その上に、ノアの時代になって、大洪水による地層が新たに堆積したのだと。
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