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2018.09.04
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カテゴリ: 映画・俳優


去年の秋、見逃していた映画ですが
上映期間の短い単館系は
配信鑑賞で楽しんでいるこの頃です。


この邦題だと
コルビジェとアイリーンの恋愛絡み?


そんな印象ですが
オリジナルタイトルは「The Price of Desire」(欲望の値段)。



2009年、サンローランとベルジェの遺品のオークションで
ドラゴンチェアが28億円で落札されたことを機に

デザイナー、アイリーン・グレイが注目され
監督も映画製作に興味を持ったらしい。

アイリーンは亡くなる前に
自身に関わる資料等を処分してしまったらしく
映画のためのソースを収集するのは大変だったようです。

革新的な家具デザイナーであり建築家であった彼女が
なぜ、人々から忘れられていたのか

どんな風にコルビジェと関わっていたのか
興味のある方には楽しめそうな映画だと思います。




詳しくはこちらで。

HP



<story>


1923年、フランス。
アールデコがひとつの潮流であった時代に
アイリーン・グレイは富裕層を顧客とした
家具デザイナーとして成功していた。


彼女はアール・デコ調の家具も作っていたが
当時の流行や主義に関せず属さず
自らが作りたいものを生み出していた。

カメレオンと称されたように
次に発表したデザインは
新しく革新的で装飾を排したミニマムモダン。


当時、駆け出しだったル・コルビジェも
彼女の才能に驚き称賛していた。

ある日
彼女は雑誌の特集記事の依頼で
編集者兼建築家のジャン・バドウィッチと出会う。


雑誌に協力する条件として
アイリーンは彼から建築を学ぶこととなり
いつしか二人は恋人同士に。


家具デザインだけでなく建築もやるべきだ
というジャンの言葉に心動かされ

彼女は二人で過ごすヴィラE.1027を
コート・ダジュールのカップ・マルタンに建て
彼にプレゼントする。

設計の段階で
ジャンは友人のル・コルビジェに協力を依頼していたが


価値観が相反する彼とアイリーンは対立し
彼女は独自のコンセプトでE.1027を完成させた。



その後
彼女のデビュー作、E.1027は
コルビジェの嫉妬と欲望の対象となってしまうのだった。






物語はル・コルビジェのモノローグで語られていきます。

何度か殴りつけたくなる衝動にかられますが。。^^;






二人の愛の巣に、特にアイリーンにとって
デザインであれ建築理念であれ
本来、コルビジェは完全なる部外者なのである。

建築家として才能に乏しいジャンが
彼に協力を依頼したことでややこしくなるのだが


そのジャンでさえ
E.1027の完成披露で設計者アンリーン・グレイの名を
公表しなかった。


コルビジェはE.1027がジャン名義であることをいいことに
「この家に不足した芸術を無償で提供する」
と、独善的に価値を押し付け
自分色に落書きを繰り返したのである。

その小さなヴィラは
アイリーンがジャンの使い勝手を考えて設計し

建物と家具が一体化し
バランスよく調和するミニマムでモダニズムの家だった。

そんな心地よい小さな空間で
あちらこちらにある壁いっぱいの落書きは

圧迫感とコルビジェの自己満足が充満し
この家の調和を抹殺、息苦しささえ感じてしまう。。


コルビジェは自身の建築5原則が最高であり
建物は装置であり機械のようなもの

要するに形式による美を主張するのに対し


アイリーンは形式なんて無意味、生き方が全て
家は人を包み込む殻であり
拡張された自己を発散させる場所、と主張。

5原則に逆らうアイリーンの存在は
コルビジェには疎ましかった。


現在も根本(建前ではなく)はあまり変わらないけれど
当時の男性の権利や地位は

女性に比べると
はるかに尊重され社会的に堅く守られていたのに
なんて懐の狭いこと。




才能ある女性に対するコルビジェの醜悪な蔑視は
かえってアイリーンへの脅威を物語るようだった。



それでもアイリーンは
(映画ではわかりにくかったけれど)

コルビジェを心から尊敬していると言う。

彼女の尊敬に満足し
なぜ、その個性を尊重することができなかったのか。。


ああ。。小さいわ。。





おまけに

コルビジェは彼女の知的財産を侵害、冒涜し
行うことは子供っぽく傲慢なのである。



そもそも
アイリーンは彼のクライアントでもなく
E.1027は彼女の「愛」で完成していた。



まるで子供が「僕のもの」と唾をつけるように
または彼女の注目を煽るように

一方的な価値の押しつけで服従させようとするのは
ファシストではないか。



または、
こんなカタチで彼女の才能と融合することにより
一種の興奮を得ていたのか。。


映画では海水パンツですが
実際には
いつも全裸でペインティングしていたらしいので
アーティストとしての倒錯愛も連想させる。


一方



ジャンは劣等感からなのか女癖が悪くコルビジェの言いなりで俗物に見える男だが
心ではアイリーンを愛していた。



関係に危機を感じながらも
終戦後、二人は復旧に尽力するようになり



ある日、ジャンがドイツ軍に占領されていたE.1027を訪れると
居座るコルビジェによって壁の落書きは増え



その裏手には

「妻のために建てた」という小屋があり
E.1027と小屋が共にコルビジェ作だと
人々に誤解される様相を目の当たりにする。


思えば、

アイリーンが「テンペ・ア・パイヤ」(熟していく家)を建て
E.1027に寄り付かなくなったのは
コルビジェの落書きに深く傷ついたからだった。


ようやくジャンは抗議するが

コルビジェに伝わるどころか
彼はアイリーンの功績を隠し世間の誤解のままに
終生、真実を語ることはなかったらしい。


その後
主を失い競売にかけられたE.1027を

元通りに修復し保全するため
あのオアシス氏が落札しようとしたが

落書きを文化遺産だと吹き込み
資産家の友人に落札させたコルビジェ。


不要なものを無理やり買わされた友人が
アイリーンの家具を窓からポイポイ投げ捨てるのを目撃し

​「やめろ、価値がわからないのか!」​


と、怒り憤慨するが

思わず

「お前が言うな」「そのまま返すわ!!」

とつぶやいてしまった。^^;





コルビジェがどんなにあがいても
結局、手に入れることができなかったE.1027


晩年、彼がこの海で溺死したのは有名ですが
E.1027に居座っていた彼にとって

ここはアイリーンが言っていたように
自己を拡張、開放し
心地よく生きることのできた場所だったのかも。


また

作品のためにはクライアントを選ばず
ナチでも共産主義の指導者にでも近づき
利用したとも聞きます。


もちろん今と時代もシステムも違うけれど
その才能だけでなく

エゴであり
自己肯定力や顕示欲が強かったからこそ


「近代建築の巨匠」
と言われるほどの実績を残せたのかもしれない。


たとえ、性格が○○でも、ね。



そうそう
エンドクレジットにもご注目。



当時の様々な分野で活躍したアーティストたちの名が
連なっております^^




こちらが裏手に建てた実際の小屋で
現在は見学できるらしいです。



アイリーンに刺激されたものでは?





関連記事も面白いです。



コルビジェに消されかけた女性建築家



こちらは、まだ観ていないのですがもう一つのドキュメント映画も同時期に公開されました。



「アイリーン・グレイ 孤高のデザイナー」




映画は事実に基づいたフィクションなので
当然、製作者側の意図が含まれています。


ここでは映画の視点からおしゃべりしており
誤解を生じているかもしれませんので

コルビジェやアイリーンに興味のある方は
信頼できる他の情報を頼ってくださいね。スマイル




ここまで
長文にお付き合いいただきありがとうございました。<m(__)m>


台風21号の猛威が甚大な被害をもたらしているようですが
明日もまだ大きな影響を受けそうですね。。


どうか、くれぐれもお気をつけくださいね。







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Last updated  2018.09.05 16:00:00
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