冒頭の1.「イマジン(Imagine)」は、平和を訴える曲として有名で、比較的記憶に新しいところでは、9・11のテロ後にラジオ局にリクエストが殺到した。またもう少し前では、1985年ロサンゼルス五輪の開会式でもこの曲が流された。曲の内容については、 “天はない(there’s no heaven)”という歌詞から始まり、しばしば問題視される“宗教もない(no religi?n, too)”に至るまで、“ないものづくし”であり、最後に“そうすれば世界は一つになる(and the world will be as one)”と歌う。歌いだしの“創造してごらん(Imagine)”とうのは、オノ・ヨーコの詩から取ったとのことであり、ヨーコをクレジットに入れなかった事を反省していると思しきコメントを後になってジョンは残している。
4.「イッツ・ソー・ハード(It's So Hard)」はジョンの人生観の一端を示す曲とされるが、一方で政治的メッセージが込められているという解釈もある。注目すべきはサックスで参加しているキング・カーティス(R&B、ソウル、ファンク、ソウル・ジャズ系の有名サックス奏者)の演奏。ジョンはレコーディングに直接参加できないキング・カーティスのソロ・パートをわざわざ空輸し、このアルバムに使ったとのことだが、実は、演奏者であるキング・カーティス自身は、この録音の直後に口論から麻薬中毒者によって刺殺されており、この演奏がキング・カーティスの遺作となった。
5.「兵隊にはなりたくない(I Don't Want to Be a Soldier)」は、タイトルが明瞭に示しているように、ストレートに政治的メッセージとして反戦を歌ったナンバー。“僕は兵隊になりたくない、死にたくはない”というストレートな文言が、戦闘場面やそこに向かわされる人を想起させ、サウンド的にもおどろおどろしさを思わせる音で演出されている。アルバム表題曲の1.「イマジン」が理想論としての批判を受ける中、この曲はリアルな叫びに(少なくとも筆者には)聞こえる。「イマジン」への批判として、“印税をがっぽり稼ぐスターがそんな理想郷を歌っても…”というのがある。しかし、その批判は、この曲のメッセージを加味した上で果たして本当にそう言えるのかを考えてもいいように思う。ヴェトナム戦争に限らず、米国が仕掛けてきた近年に至るまでの様々な戦争の中で、これが当事者の声そのものだったのではないだろうか。