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このブログは読者の方々によって支えられています。ブログを存続させるため、カンパ/寄付をお願い申し上げます。 安倍晋三政権は「共謀罪」の導入を目論んでいるようです。日本の支配層、その支配層が従属しているアメリカの支配層にとって都合の悪い人物や団体を弾圧するために使われるであろうことは容易に想像がつきます。その支配層が「組織的犯罪集団」と認定すれば、誰でも組織的犯罪集団にされてしまうでしょう。 2020年に東京で開催される予定のオリンピックとパラリンピックにおける「テロ対策」のために導入するとしていますが、本ブログではすでに指摘したように、治安体制を強化する口実にオリンピックを使うことは最初から想定されていたでしょう。財政を破綻させ、外国資本に日本を支配させることも目的である可能性があります。 2004年、ギリシャではオリンピックが開催されました。その前、2001年にギリシャが通貨をユーロに切り替えた際にゴールドマン・サックスは同国の財政状況の悪さを隠す手法を教え、泥沼へと誘い込んだのですが、オリンピックを背景として業者と官僚が手を組んで実行された違法な融資による開発は債務急増の一因になっています。 2012年にはロンドンでオリンピックが開かれました。2005年7月6日の総会で開催地に決まったのですが、その翌日にロンドンで連続爆破事件がありました。そこで、オリンピックに向かって監視システムが強化され、イギリスは警察国家の色彩が強まったのです。街中のCCTVネットワークが強化され、無人機も監視に使われ、治安部隊の配備も徹底、ロンドンは刑務所になったとも言われたものです。 巨大資本に国を上回る権力を与えるTPP(環太平洋連携協定)は参加国をファシズム化することを目的にしています。これは本ブログで繰り返し、書いてきました。TTIP(環大西洋貿易投資協定)やTiSA(新サービス貿易協定)も目的は同じです。 アメリカでは2001年に「緊急事態条項」を発動させ、憲法の機能を麻痺させました。その準備が1980年代に始まっていることは本ブログで説明してきた通りです。 有力メディアに情報を頼っていると、こうした支配層の企みに気づくのが遅れます。未来を切り開くためには事実を知ることが必要であり、本ブログがその一助になればと願っています。櫻井 春彦振込先巣鴨信用金庫店番号:002(大塚支店)預金種目:普通口座番号:0002105口座名:櫻井春彦
2017.02.28
アメリカ映画芸術科学アカデミーなる団体が存在するらしい。その団体が2月26日にアカデミー賞の授与式なるイベントを実施、短編ドキュメンタリー映画賞に「白いヘルメット」を選んだという。前回も書いたように、これはシリアでアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)などの宣伝部門として活動しているシリア市民防衛(白ヘル)のプロパガンダ映画である。(白ヘルの実態は本ブログで何度か書いてきたので、今回は割愛する。) ダーイッシュなどの武装集団の中心はサウジアラビアが送り込んだサラフ主義者/ワッハーブ派やムスリム同胞団で、ロシアのチェチェンや中国の新疆ウイグル自治区からも戦闘員として参加していると言われている。ウラジミル・プーチン露大統領によると、ロシアから4000名近く、旧ソ連圏諸国から約5000名が反シリア政府軍へ参加している。 バラク・オバマ前米大統領へ平和賞を授与したノーベル賞でも言えることだが、昔からアカデミー賞は支配層の意思、支配層が被支配層(大多数の人びと)にどのような幻影を見せたいのかによって決まる。 しかし、そうした実態は多くの人に知られている。有力メディアの「報道」も同じなのだが、すでに「洗脳」ではなく「茶番」になっている。今でも支配層が描く幻影を信じている人がいるとするならば、それは騙されているのではなく、その幻影を信じたいだけだろう。「勝てば官軍負ければ賊軍」、「勝ち馬に乗る」方が得であり、「長い物には巻かれよ」と考えれば、幻影を正当化する口実に飛びつくことにもつながる。その口実を学校やメディアは提供してきた。 しかし、すでにアメリカは「勝ち馬」でなくなっている。1991年12月にソ連が消滅した直後、ネオコンはアメリカを「唯一の超大国」になったと思い込み、92年2月にはポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)を中心とする人びとは国防総省のDPG草案という形で世界制覇戦略を作成した。いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」だ。 その前提はロシアと中国を属国にしたということ。ボリス・エリツィンがロシアの大統領だった時代は間違いでなかったが、21世紀に入ってプーチンがロシアを再独立化させ、前提を崩してしまった。本来ならこの段階でウォルフォウィッツ・ドクトリンを放棄、少なくとも大幅な手直しをする必要があったのだが、驕り高ぶったネオコンは現実をドクトリンに合わせようともがいている。 1971年8月にリチャード・ニクソン大統領がドルと金の交換を停止すると発表した段階でアメリカ経済は破綻していた。それを誤魔化すため、ドルが基軸通貨だという特権を利用し、金融操作で生きながらえようとして打ち出されたのがミルトン・フリードマンの理論に基づく新自由主義だ。 ドルを発行することで必要な商品を外国から購入、流れ出たドルをOPEC諸国との取り決めなどで回収、固定化するペトロダラーの仕組みも考えられた。新自由主義の時代に金融は「自由化」され、大量のドルが投機市場へ吸収されて「バブル」になる。これが現実世界で起こればハイパーインフレだ。 そして現在、この金融操作が限界に近づいている。ロシアを締め上げるつもりで始められたと言われる原油価格の暴落はサウジアラビアを財政赤字に陥らせ、アメリカ国内の高コストの石油産業はダメージを受けている。イギリス経済も苦しくなっている。 ところが、締め上げる対象だったはずのロシアが受けたダメージは比較的小さく、中国との関係を強化、両国はドル離れを進めている。同調する国が増えれば、ドルは基軸通貨の地位から陥落するだろう。そうなれば国内での生産能力を放棄する政策を推進してきたアメリカは存続できない。 その前に軍事力でロシアや中国を制圧したいのだろうが、それが困難だということをシリアでの戦乱は証明した。通常兵器での戦争でアメリカはロシアに勝てない。ネオコンはそれでも軍事力でロシアや中国を屈服させようとしてきたが、必然的に全面核戦争の危険性を高めることになった。そうした状況への懸念が昨年のアメリカ大統領選挙で戦争ビジネスやネオコンを後ろ盾とするヒラリー・クリントンを敗北させる一因になったように見える。有力メディアやハリウッドの正体はすでに露見している。アメリカが「勝ち馬」でないと多くの人が思い始めたなら、一気にこの国は崩れるだろう。それだけに、アメリカの支配層やその傀儡たちは必死のはずだ。
2017.02.28
アメリカの映画界は年に1度、アカデミー賞の授与式なるイベントを実施しているが、今年はシリア市民防衛(白ヘル)の活動に関する映画がノミネートされ、そのグループのリーダーだというラエド・サレーと撮影者のカリド・カティブが2月26日の式典に出席することになっていたのだが、式典への出席は取りやめになった。 本ブログでは以前にも書いたが、白ヘルはアメリカをはじめとする西側の政府から資金を提供され、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)などの武装集団と緊密な関係がある。そうした事情を知っているであろうFBIはリーダーのサレーを「テロリスト」だと認識、バラク・オバマ政権下でアメリカへの入国を拒否している。(国務省の記者会見) 今回、白ヘル側はシリア政府がパスポートをキャンセルしたのでアメリカへ行けないと説明しているようだが、アメリカの国土安全保障省はカティブの入国を拒否したとも伝えられている。中東でアメリカ支配層の手先として動いている間は「良い団体」だが、そのメンバーがアメリカへ足を踏み入れることは許さないという態度だ。 白ヘルのメンバーを2013年から訓練しているのはイギリスの安全保障コンサルタントだというジェームズ・ル・メスリエだが、白ヘルなる団体を立案し、動かしているのはシリア・キャンペーンなる団体。この団体を立案したのは広告会社のパーパス。この会社はアバーズというキャンペーン会社からスピンオフしたのだという。そのアバーズはリビアに飛行禁止空域を設定するように主張、その主張が実現してアメリカ、イギリス、フランス、サウジアラビア、カタールなど侵略国連合は制空権を握り、NATOの航空兵力とアル・カイダ系武装集団の地上軍による連携でムアンマル・アル・カダフィ体制を倒し、事実上、国を消滅させてしまった。 西側の有力メディアが伝える白ヘルの姿は演技にすぎず、現地の住民は白ヘルが彼らを助けているという話を否定、赤新月社(西側の赤十字に相当)のメンバーによると、白ヘルは東アレッポにいなかったという。 最近、HRW(ヒューマン・ライツ・ウォッチ)がアル・カイダ系武装集団やその協力者を情報源とする報告書を作成して批判されているが、こうした構図は1990年代から続いている。その時、アメリカの支配層はユーゴスラビアを先制攻撃し、国を解体しようと目論んでいた。その下地を作るため、有力メディアを使って「セルビア人による人権侵害」という偽情報を流していた。 そうした偽情報を流していたひとりがニューズデイのボン支局長だったロイ・ガットマン。彼は1992年8月、ボスニアで16歳の女性が3名のセルビア兵にレイプされたと現地を取材せずに書いている。クロアチアの亡命者が創設したプロパガンダ組織CIC(クロアチア情報センター)ザグレブ事務所の責任者、ヤドランカ・シゲリの情報を垂れ流したのである。 その後、西側の有力メディアは似たようなトーンで記事を流すが、それが正しくないことを現地で確認したジャーナリストもいる。そうしたひとりがアレクサンドラ・スティグルマイアーだ。ボスニア・ヘルツェゴビナでレイプの実態を調べ始めるが、被害者の発見に苦労している。要するにガットマンのレイプ話は嘘だった。 スティグルマイアーの友人でフリーランスのジャーナリスト、マーティン・レットマイアーは証言を映像化する目的で現地に入るのだが、レイプ現場とされた場所にはセルビア人警察官の未亡人が住む小さな家があるだけで、あるはずのスタジアムはなく、証言に合致する事実を見つけることはできなかった。 ところが、このように現地を取材したジャーナリストはマスメディアから相手にされない。それに対して偽報道のガットマンは脚光を浴び、1993年に「セルビア人による残虐行為」を報道したとしてピューリッツァー賞を贈られた。シゲリは人権問題のヒロインとなり、1996年にはジョージ・ソロスと近い関係にあることで知られている「人権擁護団体」のHRWが彼女を主役にしたドキュメント映画を制作している。シリアでも同じことが繰り返されている。 ちなみに、当時の状況について、ICRC(赤十字国際委員会)はガットマンたちとは違うことを言っている。つまり、戦争では全ての勢力が「不適切な行為」を行っているが、セルビア人による組織的なレイプが行われた証拠はないというのだ。(Diana Johnstone, "Fools' Crusade," Monthly Review Press, 2002)
2017.02.27
パープル革命を宣言しているヒラリー・クリントンは民主党員に対し、まだ戦い続けようと訴えるメッセージをインターネット上に流した。昨年の大統領選で敗北が決まった後にジョージ・ソロスやジョン・ソロスをはじめとする人びとがドナルド・トランプ政権を倒すための方策を話し合うため、マンダリン・オリエンタル・ホテルで秘密会議を開いたと伝えられている。 本ブログでも書いてきたが、彼女はソロス親子のほか、リン・フォレスター・ド・ロスチャイルドのような富豪とも親しく、ロッキード・マーチンのような戦争ビジネスなど後ろ盾に持っている。ロシア人を殺すと公言しているマイク・モレル元CIA副長官のような支援者もいる。 それに対し、ここにきてクリントン夫妻の違法な資金集めについて中国系アメリカ人のジョニー・チュンが記録した映像が表に出て話題になっている。この映像は身の危険を感じたチュンが「保険」のために撮影、信頼できる友人に預け、何かがあったら公表することにしていたようだ。それが外にも漏れた、あるいは誰かが漏らした。現在、チュン本人は中国で隠れていると推測されている。 昨年の大統領選でクリントン陣営が集めた資金の20%はサウジアラビアからのものだとする報道は取り消されたが、新たの問題が浮上したと言えるだろうもっとも、アメリカの政治家がイスラエル周辺から多額の資金が流れ込んでいることは有名で、そうした中で中国やサウジアラビアが問題になるは奇妙な話ではある。 イスラエルの情報機関モサドはアメリカのCIAやイギリスのMI6と緊密な関係にあり、各国要人のスキャンダルを握っているとも言われている。アメリカの政治家がイスラエルにひれ伏している理由はカネだけでなく、脅しもあるというわけだ。いわば飴と鞭。 昨年、政界のピダゲート(小児性愛事件)が問題になったが、これは以前から噂されていた。バチカンやハリウッドでこうしたことが行われていると語られてきたが、それは氷山の一角にすぎないというのだ。そうした行為をモサド、CIA、MI6といった情報機関は記録し、脅しに使っているとも推測されている。これを「ピザゲート」と表現することは事態の深刻さを誤魔化すことにつながるだろう。これは本格的に調査すべき問題だ。 いずれにしろ、まだ支配層の内部で争いは続いているようだ。1980年代もそうだったが、支配層の内部対立はスキャンダルを露見させることが多い。現在、トランプ大統領は圧倒されているようだが、何が出てくるかはわからない。
2017.02.26
ジョン・マケイン上院議員が2月中旬にシリアへ違法入国したことを同議員のオフィスは認めた。シリア政府の承認を受けずに入り込んでいるアメリカ軍の部隊に会ったとしているのだが、2013年5月にシリアへ違法入国したときにはダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)のリーダー、アブ・バクル・アル-バグダディを含む反シリア政府軍の幹部たちと会談している。 バラク・オバマ政権はシリアのバシャール・アル・アサド体制を倒すために「穏健派」を支援していると主張していたが、マケインがシリアへ密入国する前年にアメリカ軍の情報機関DIAがホワイトハウスへ提出した報告書には違うことが書かれていた。 その文書が作成されたのは2012年8月。シリアにおける反乱の主力はサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてAQI(アル・カイダ系武装集団)、つまりアル・カイダ系武装集団であり、西側、湾岸諸国、そしてトルコからの支援を受けているとしている。穏健派は事実上、存在しないということだ。アメリカ政府が方針を変えなければシリア東部にサラフ主義の支配地が作られるとDIAは予測していたが、これはダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実になった。 この報告書が作成された当時のDIA局長がマイケル・フリン中将。アサド体制を倒す手先と考えるかでフリンとオバマ周辺は対立、2014年8月7日にフリンはDIA長官を辞めることになった。退役後、この文書に記載されたダーイッシュ出現の警告ともとれる部分についてアル・ジャジーラの番組で質問されたフリン中将は、そうした情報に基づいて政策の決定はオバマ大統領が行うことだと答えている。つまりオバマ政権の決定がダーイッシュの広大な地域を試合させることになったと言ったのだ。このフリンをドナルド・トランプ大統領は国家安全保障担当補佐官に選んだが、2月13日に辞任させられた。 マケインが2013年にシリアへ密入国する2カ月前にシリアでは化学兵器が使われ、すぐにシリア政府は国連に調査を求めた。イスラエルのハーレツ紙は状況から反政府軍が使ったと分析、マケインがシリア入りした5月に国連独立調査委員会メンバーのカーラ・デル・ポンテは反政府軍が化学兵器を使った疑いが濃厚だと表明している。状況から考え、デル・ポンテの見方は正しいと推測する人は少なくない。 その年の8月21日にはダマスカス郊外が化学兵器で攻撃され、西側の政府やメディアはシリア政府軍が使ったと宣伝、NATOを軍事介入させようとするのだが、トルコの国会議員エレン・エルデムらは捜査記録などに基づき、トルコ政府の責任を追及している。化学兵器の材料になる物質はトルコからシリアへ運び込まれ、そこでIS(ISIS、ISIL、ダーイシュなどとも表記)が調合して使ったというのだ。この事実を公表した後、エルデム議員らは起訴の脅しをかけられている。 この化学物質を供給したのはジョージア(グルジア)のトビリシにあるアメリカの兵器に関する研究施設だとする情報が流れている。この施設を設計したのはベクテルで、問題の物質を製造や輸送にはジョージアの情報機関、ウクライナのネオ・ナチ(ステファン・バンデラ派)、トルコの情報機関、NATO、そしてアル・カイダ系武装集団が関わっているというのだ。 このジョージアは武器密輸の拠点だとも言われ、メギス・カルダバなる人物が中心的な存在だともされている。昨年4月、ジョージアの検察当局は殺人を命じた容疑でカルダバを起訴した。殺されたのはミヘイル・サーカシビリと対立していたジョージア軍の元幹部だ。その後、サーカシビリはウクライナへ逃亡して要職に就いた。 武器密輸に深く関与しているとされている会社のひとつがアメリカのアリゾナ州を拠点とするディロン・アエロだとも言われている。ちなみに、マケインはアリゾナ州選出の上院議員で、昨年12月にはリンゼイ・グラハムと一緒にジョージア、バルト諸国、そしてウクライナを訪問している。 2013年8月21日に攻撃があった後、西側メディアはシリア政府がサリンで住民を攻撃したと宣伝、シリアに対する軍事攻撃の雰囲気作りに努め、開戦は9月の初めだとする情報が流れた。そして9月3日、地中海からシリアへ向かって2発のミサイルが発射されるのだが、途中で海へ落下してしまった。イスラエル国防省はアメリカと合同で行ったミサイル発射実験だと発表しているが、事前の警告はなく、説得力に欠ける。ジャミングなど何らかの手段で落とされたのではないかと推測する人もいる。オバマ政権がイランに対する姿勢を変えるのはこの後だ。 マケインはビクトリア・ヌランドと同様、破壊と殺戮の臭いがする。
2017.02.25
かつてコロンビアに君臨していた麻薬組織のボス、パブロ・エスコバルの息子が本を出し、その中で父親はCIAのために働いていたと書いている。 もっとも、CIAと麻薬組織との関係は有名な話で、ベトナム戦争時代には黄金の三角地帯(ミャンマー、タイ、ラオスの山岳地帯)で栽培されたケシを原料にヘロインが生産され、アフガニスタンでアメリカがワッハーブ派やムスリム同胞団を使ってソ連と戦争を始めるとアフガニスタンとパキスタンの山岳地帯にケシの栽培地は移動した。ラテン・アメリカではコカインが生産されている。エスコバルが扱っていた麻薬もコカインだ。 コカインの生産はCIAがゲリラのコントラを編成、ニカラグアの革命政権に対する攻撃を始めてから急増した。コントラは資金調達の一手段としてコカイン取り引きに手を出していたのだが、こうした話をアメリカの有力メディアは報道したがらない。 そうした中、APの記者だったロバート・パリーとブライアン・バーガーはCIAに支援されたコントラの麻薬取引を知る。理想を持ってコントラに参加したが、その実態に失望したひとり、ジャック・テレルが麻薬密輸に関する情報などをパリーらに提供したのだ。コントラが「人々を豚のように殺す」ことに腹を立てていた。 ふたりの記者はコスタリカの刑務所でふたりの傭兵、イギリス人のピーター・グリベリーとアメリカ人のスティーブン・カーからコスタリカにあるジョン・ハルというアメリカ人の牧場がコントラ支援の秘密基地として機能しているということを聞かされる。 ハルはCIAと深い関係にあり、NSCから毎月1万ドルを受け取っていた。ふたりの傭兵は、コントラ支援工作に関わっていたフランシスコ・チャンスのマイアミにある自宅で大量のコカインを見たとする話もしている。 また、取材を通じ、マイアミのエビ輸入会社『オーシャン・ハンター』がコカイン取引に関係している疑いを持つ。コスタリカの姉妹会社『プエンタレナス冷凍』から運ばれてくる冷凍エビの中にコカインが隠されているという噂を耳にしたのだ。この噂が事実だということは、後にアメリカ上院外交委員会の調査で明らかにされた。 こうした関係者の証言を基にしてふたりはコントラが資金調達のためにコカインを密輸しているとする記事を1985年に書いたが、当初、ニューヨークにあるAP本社の編集者はふたりの記事に反発、お蔵入りにしようとする。それが「ミス」でスペイン語に翻訳され、ワールド・サービスで配信されてしまった。(Robert Parry, "Lost History," The Media Consortium, 1999) 1996年8月にはサンノゼ・マーキュリー・ニューズ紙にコントラとコカイン取引との関係を指摘したゲイリー・ウェッブの記事が連載された。当初、有力メディア、例えばロサンゼルス・タイムズ紙、ワシントン・ポスト紙、ニューヨーク・タイムズ紙、あるいは有力ネットワーク局は沈黙していたが、公民権運動の指導者やカリフォルニア州選出の上院議員や下院議員が騒ぎ始めると一転して激しくウェッブを攻撃しはじめた。 CIAの麻薬取引については、麻薬の消費地でもあるロサンゼルスの警察も知っている。そのロサンゼルス市警察で1973年から78年にかけて捜査官を務めていたマイケル・ルッパートの場合、CIAの麻薬取引について調べすぎたことから退職せざるをえなくなったという。 ウェッブの記事が出た後、1996年11月にルッパートはロサンゼルスの高校で開かれた集会に来ていたジョン・ドッチCIA長官に対し、ロサンゼルス市警にいた頃の経験に基づいて質問、内部調査を約束させた。そして1998年1月と10月にIGレポートが出されたのだが、それはウェッブの記事の正しさを確認するものだった。 つまり、有力メディアのウェッブ批判は間違っていたのだが、そうした間違った報道をいまだに訂正せず、謝罪もしていない。彼らの偽報道は中東、北アフリカ、ウクライナなどに限らない。父親はCIAのために働いていたというパブロ・エスコバルの息子の話も彼らは無視しているようだ。
2017.02.24
西側の有力メディアが教育と並ぶ支配層の思想コントロール装置だということは言うまでもない。最近、それをテレビの番組の中で口にした人物がいる。ミカ・ブレジンスキーだ。ドナルド・トランプ大統領はメディアを傷つけ、自分自身の事実を作り上げようとしていると批判、その後で、人びとが考えることをトランプは正確にコントロールできるとしたうえで、それは自分たちの仕事だと口にしている。自分たちは庶民の考え方を操ってきたと言っているわけだ。 ミカの父親はジミー・カーター政権で国家安全保障補佐官を務め、ソ連軍と戦わせるためにワッハーブ派やムスリム同胞団を中心とした戦闘集団を編成したズビグネフ・ブレジンスキーである。 ブレジンスキーの祖先はポーランドの東部、現在はウクライナに含まれるブジェジャヌイの出身だと言われている。ミカの母親エミリーはチェコスロバキアの元大統領、エドバルド・ベネシュの親戚だ。ちなみに、コロンビア大学でズビグネフに教わったマデリン・オルブライトはチェコスロバキアの外交官を親に持っている。ブレジンスキー家もオルブライト家も反ソ連/ロシアという共通項もある。 1992年2月、国防総省の内部でDPGとして作成された世界制覇計画の草案はウォルフォウィッツ・ドクトリンとも呼ばれているが、その理由は作成チームの中心がポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)だったからだ。そのウォルフォウィッツはポーランド系からアメリカへ渡ったユダヤ教徒の末裔である。 ネオコンの思想はウラジミール・ジャボチンスキーの思想から強い影響を受けている。「修正主義シオニスト世界連合」は1925年に彼が創設した団体。このジャボチンスキーが生まれたオデッサは現在、ウクライナに含まれている。キエフでネオ・ナチがクーデターを成功させた直後、反クーデター派の住民が虐殺された場所だ。 シオニストとはシオニズムの信奉者を指し、シオニズムとはエルサレム神殿があったとされる「シオンの丘」へ戻ろうという運動。近代シオニズムの創設者とされているのはセオドール・ヘルツル。1896年に彼は『ユダヤ人国家』という本を出版、この年が近代シオニズムの始まった年とされている。 しかしながら、1891年にはウィリアム・ブラックストーンなる人物がアメリカで「ユダヤ人」をパレスチナに返そうという運動を展開し、ベンジャミン・ハリソン米大統領に働きかけていた。イギリス政府は1838年、エルサレムにイギリスは領事館を建設し、その翌年にはスコットランド教会がパレスチナにおけるユダヤ教徒の状況を調査している。 1904年になると、ハルフォード・マッキンダーという地理学者が「ハートランド理論」と呼ばれる世界制覇計画を発表した。世界を3つに分け、ひとつはヨーロッパ、アジア、アフリカの「世界島」、ふたつめはイギリスや日本のような「沖合諸島」、そして最後に南北アメリカやオーストラリアのような「遠方諸島」だ。世界島の中心が「ハートランド」で、具体的にはロシアを指している。この理論はズビグネフ・ブレジンスキーの戦略に影響、21世紀に入っても生きている。 この当時、ユダヤ教徒の大半は生活している社会へ同化、パレスチナへ移住しようという人は少なかった。社会主義の立場をとるユダヤ人もシオニズムを批判していた。ナチスが台頭してユダヤ教徒が弾圧されるようになってもパレスチナ行きを望む人は少なく、行き先として望んだ国はアメリカやオーストラリアだったようだ。 ブレジンスキー家、オルブライト家、ウォルフォウィッツ家だけでなく、ジャボチンスキーもアメリカへ渡り、そこを拠点にしてロシア/ソ連の破壊と制圧を目論んできた。ロシアとの関係改善を掲げたトランプを彼らは許せないのだろう。有力メディアは攻撃の重要な手段だ。
2017.02.23
ロシアの国連大使、ビタリー・チュルキンが2月20日に急死した。心臓発作だという。翌日が65歳の誕生日だった。チュルキンはシリアへ自らが軍事侵攻しようとするアメリカの前に立ちはだかり、国連で奮闘してきた外交官。ロシア政府でも重要な役割を果たしてきた人物だ。それだけでも話題になるのだが、ロシアの幹部外交官が連続して死亡していることからさまざまな憶測が流れている。 例えば、昨年12月19日にトルコのアンカラでアンドレイ・カルロフ駐トルコ大使が美術展覧会場で射殺され、今年1月9日にギリシアのアパートで54歳のアンドレイ・マラニン領事が変死、1月26日にはインド駐在のアレキサンダー・カダキン大使が心臓発作で死亡している。 その前、2015年11月5日には、アメリカ支配層が憎悪しているRTを創設、ウラジミル・プーチン露大統領の顧問も務めていたミハイル・レシンがワシントンDCのホテルで死亡している。死亡して約1年後に発表されたアメリカ側の公式発表によると、泥酔状態で転倒、頭部を強打したことが原因だという。誰が体内にエタノールを注入したかはともかく、それが事実ならすぐにわかるだろう。なお、死亡直後、家族は心臓発作だとしていた。 アメリカをはじめとする西側の有力メディアは偽報道のオンパレード。事実を重視、信頼されているが有力メディアから無視されている西側の人びとに発言の機会を与えることでロシアのメディアは信頼度を高めているが、そうした方針の中心にはレシンがいたのだろう。 2016年8月、マイク・モレル元CIA副長官(11年7月1日から9月6日、12年11月9日から13年3月8日の期間は長官代理)はチャーリー・ローズのインタビューでロシア人やイラン人に代償を払わせるべきだと語った。司会者からロシア人とイラン人を殺すという意味かと問われると、その通りだと答え、わからないように、と付け加えている。このモレルは昨年の大統領選でヒラリー・クリントンを支援していた。 これで話題にならない方がおかしい。ロシアとアメリカが逆だったら、大変な騒動になっていることだろう。ネオコン/CIAはロシアに対する直接的な戦争を始めた可能性がある。目を塞いでも事態は進む。
2017.02.22
2月12日に朝鮮は中距離弾道ミサイルの発射実験を実施、13日には金正恩の兄にあたる金正男がマレーシアの空港で殺害された。18日に中国は朝鮮からの石炭輸入を19日以降停止すると発表、その一方で朝鮮政府高官の代表団がアメリカを訪問し、同国の元政府高官と会談する準備を進めていると報じられた。そうした中、アメリカ海軍は空母カールビンソンを中心とする艦隊を南シナ海に派遣し、中国に対する示威行動を繰り広げるとも伝えられた。 金正男は2003年頃に国外へ脱出ている。2013年12月に処刑された張成沢(金正日の妹、金敬姫の夫)と近い関係にあったと言われ、その張は中国と関係が深かった。金正日の側近でもあった。 その金正日の死亡が公式に発表されたのは2011年12月で、権力抗争で中国派が敗れた結果だとも見られている。その際、張の親族を含む周辺も粛清されたと言われ、金敬姫も毒殺されたと見られている。 長い間、朝鮮は日本やアメリカの好戦派にとって好都合なタイミングで挑発とみなされることを行ってきた。その一例が今回のミサイル発射実験だが、経済的に考えるとこれは不可解。2011年夏にシベリアで金正日はロシアのドミトリ・メドベージェフ首相らと会談し、朝鮮がロシアに負っている債務の90%(約100億ドル)を帳消しにし、10億ドルの投資をすることで合意、15年の対ドイツ戦勝利70周年記念式典へ金正日が出席することも決まったが、合意の数カ月後に死亡している。なお、2014年にロシア議会はこの合意を承認した。この取り引きの実現を困難にするようなことを朝鮮は行っている。 2014年11月には人民武力部長に就任して5カ月後の玄永哲がロシアを訪問してウラジミル・プーチン大統領と会談したというが、翌年の4月に処刑されてしまった。金正日を引き継いだ金正恩は対ドイツ戦勝利70周年記念式典への出席を取りやめている。 負債の大半が帳消しになり、資源の開発などへの投資が確実になった段階で、本来なら朝鮮政府は事を荒立てる必要はない。ロシアとの関係が強化されれば、怪しげな核兵器を保有し、ミサイルを発射してみせるより防衛のためになる。 金正日はそうした方向へ動こうとしていたように見えるが、合意から間もなく死亡、引き継いだ金正恩はアメリカや日本の好戦派にとって好都合な行動を繰り返している。そうした中、中国と近かった義理の叔父にあたる張成沢の親族を粛清、叔母も毒殺したと言われている。朝鮮と中国との関係は冷え切っている。朝鮮の体制が崩壊して大量の難民が中国へ流れ込むことを北京は恐れているだろうが、怒りは限界に達しているようだ。石炭輸入の停止はそうした怒りの反映だろう。
2017.02.21
アメリカ海軍は空母カールビンソンを中心とする艦隊を南シナ海に派遣、中国に対する示威行動を繰り広げるようだ。中国とロシアとの関係が緊密化していることを考えると、ロシアに対する挑発でもある。ドナルド・トランプ政権はロシアとの関係修復を諦めた、つまりヒラリー・クリントンを担いでいた勢力による政権乗っ取りが成功した可能性がある。 バラク・オバマは大統領を退任する直前、ロシアとの関係をできるだけ悪化させようとロシアを挑発していた。昨年12月にロシアの外交官35名を含む96名のロシア人を国外へ追放したのはその一例。今年1月6日にはアブラムズM1A1戦車87輌を含む戦闘車両をドイツへ陸揚げ、戦闘ヘリのブラック・ホーク50機、10機のCH-47、アパッチ24機なども送り込んだ。派兵されたアメリカ兵の人数は2200名。ただ、こうした挑発にロシア政府が乗らなかった。 アメリカ欧州陸軍のベン・ホッジス司令官はポーランドに送り込まれたアメリカ軍の戦車に一斉射撃させているが、同司令官によると、これはロシアに対する戦略的なメッセージなのだという。アメリカに従属しなければ侵略するぞということだろう。 ウクライナではキエフ政権が1月下旬からウクライナ東部のドンバス(ドネツク、ルガンスク、ドネプロペトロフスク)に対する攻撃を激化させているが、その1カ月前にはクリントンを支持していたジョン・マケインとリンゼイ・グラハム、ふたりのネオコン上院議員がジョージア(グルジア)、バルト諸国、そしてウクライナを訪問している。偶然ではないだろう。2月4日にはルガンスクの軍司令官の自動車が爆破され、司令官は殺された。 クリントン陣営、CIA、NATO、そしてアメリカの有力メディアはロシアとの関係を修復するというトランプ大統領の方針を激しく攻撃してきた。その方針の中心的な存在だった人物が国家安全保障担当補佐官だったマイケル・フリン元DIA局長。そのフリンは2月13日に辞任している。 前にも書いたが、この辞任劇はワシントン・ポスト紙の記事で幕を開けた。トランプが大統領に就任する1カ月ほど前、フリンがセルゲイ・キスリャクと話をし、その中でアメリカがロシアに対して行っている「制裁」を話題にしたことが問題だと報じたのだ。例によって、根拠、証拠と呼べるものは示されていない。 フリンは、ロシア大使との電話での会話につして不完全な情報を次期政権の副大統領や他の人びとに話したことを謝罪しているだけ。次期政権の国家安全保障担当補佐官として各国の自分と同じ立場の人びと、大臣、大使に電話したが、それは政権の移行を円滑に進め、大統領、補佐官、外国の指導者との必要な関係を築く手始めだとしている。 辞任しなければならない話ではないが、トランプはフリンを慰留しなかったようだ。何か別の理由があれば別だが、トランプは腹心を見捨てた。娘婿のラインを優先した可能性があるだろう。 すでにアメリカでは巨大な私的権力が政府を上回る力を持ち、国を支配している。フランクリン・ルーズベルトが定義したファシズム体制だ。ボリス・エリツィン時代のロシアとも言える。そのロシアではウラジミル・プーチンがそうした私的権力(ロシアではオリガルヒと呼ばれている)を押さえ込み、再独立に成功した。アメリカでは失敗したように見える。 このファシズム体制を世界に広げる協定がTPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新サービス貿易協定)。トランプは就任早々TPPを葬ったが、今後、何らかの形で復活させる動きが出てきそうだ。それ以上に懸念されるのはロシアとの核戦争勃発。ネオコンは暴力で物事を進めようとする。キエフの混乱を話し合いで解決使用としたEUに怒ったビクトリア・ヌランド国務次官補が発した「EUなんかくそくらえ(F*ck the EU)」という言葉は象徴的だ。
2017.02.20
ニューヨーク・タイムズ、NBCニューズ、ABC、CBS、CNNのような偽報道メディアはアメリカ人民の敵だとドナルド・トランプ大統領はツイッターに書き込んだ。確かに間違いではない。ユーゴスラビア、アフガニスタン、イラク、リビア、シリア、ウクライナなどアメリカの侵略を正当化するプロパガンダを繰り広げてきたのは、こうしたメディアにほかならない。 その一方、支配システムの暗部を暴こうとする人びとを彼らは徹底的に攻撃する。そのひとり、ゲーリー・ウェッブは1996年8月、サンノゼ・マーキュリー紙に「闇の同盟」というレポートを連載、ロサンゼルスへ大量に流れ込んでくるコカインとニカラグアの反革命ゲリラとの関係にメスをいれたのだが、そのことが攻撃を受ける理由だった。 ウェッブ以外にもCIAと麻薬取引との関係を明らかにした人はいる。例えば、ベトナム戦争におけるヘロイン取引を取り上げた研究者のアルフレッド・マッコイ、ニカラグアの反革命ゲリラとコカイン取引を伝えたジャーナリストのロバート・パリーだ。 コカインが大量に流入していたロサンゼルスでは警察もそうした事実を把握していた。1970年代にこの問題を調べた捜査官のマイク・ルパートは退職してからジャーナリストになり、ある集会でジョン・ドッチCIA長官へ直接この問題を質問、長官に内部調査を約束させた。そして1998年にIGレポートが公表され、ウェッブの記事が正しいことを確認する形になった。勿論、ウェッブの記事を「偽報道」扱いしたニューヨーク・タイムズ紙やワシントン・ポスト紙のような有力メディアは謝罪も訂正もしていない。 こうした有力メディアとCIAとの関係をウォーターゲート事件で有名になったジャーナリストのカール・バーンスタインが明らかにしている。彼は1977年にワシントン・ポスト紙を辞め、その直後に「CIAとメディア」という記事をローリング・ストーン誌に書いたのだ。それによると、400名以上のジャーナリストがCIAのために働き、1950年から66年にかけて、ニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供しているとCIAの高官は語ったという。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977) 最近では、ドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙(FAZ)の元編集者、ウド・ウルフコテもメディアとCIAとの関係を告発している。彼によると、ジャーナリストとして過ごした25年の間に教わったことは、嘘をつき、裏切り、人びとに真実を知らせないことで、多くの国のジャーナリストがCIAに買収されているとしている。その結果、ヨーロッパの人びとはロシアとの戦争へと導かれ、引き返すことのできない地点にさしかかっているとしていた。そして2014年2月、この問題に関する本を出したという。 CIAの報道統制は第2次世界大戦が終わって間もない1948年頃に始まっている。大戦中から情報/破壊活動に従事していたアレン・ダレス、その側近で極秘機関OPCを指揮していたフランク・ウィズナー、やはりダレスの側近で後にCIA長官となるリチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムだ。この4人が中心になったプログラムは「モッキンバード」と呼ばれている。 カール・バーンスタインやウド・ウルフコテが言っているように、有力メディアとCIAは緊密な関係にある。そのCIAと敵対関係にあるトランプが有力メディアをアメリカ人民の敵だと表現するのは必然なのだろう。
2017.02.19
WikiLeaksが公表した資料によると、2012年のフランス大統領選挙でCIAは人間だけでなく電子的な手段を使ったスパイ活動を展開していたという。アメリカが外国の選挙に介入することは珍しくないが、その具体例がひとつ増えたとは言えそうだ。 第2次世界大戦後、アメリカが最初に介入した選挙は1948年のイタリアだと言われている。当時、イタリアはフランスと同じようにコミュニストの力が強く、大戦中にファシストと戦ったレジスタンスの中心もコミュニストだった。 そうしたことから、この選挙でもコミュニストが国民の圧倒的支持を受けて政権を握るだろうと見られていた。この当時、国務省の政策企画委員長を務め「対ソ封じ込め政策」を主張していたジョージ・ケナンは、イタリアの選挙結果がアメリカ側の思惑どおりにいかなければフォッジア油田をアメリカ軍が直接占領すると語っていた。(クリストファー・シンプソン著、松尾弌之訳『冷戦に憑かれた亡者たち』時事通信社、1994年/Christopher Simpson, “Blowback”, Weidenfeld & Nicolson, 1988) CIAと近い関係にあったローマ教皇庁のフランシス・スペルマン枢機卿によると、アメリカ政府は密かに、「イタリアにおける多額の『裏金』をカトリック教会に流していた」(前掲書)のだが、この「裏金」は大部分がナチ・ドイツから押収した資産。いわゆる「ナチ・ゴールド」の一部だった。大戦中、ドイツ軍はヨーロッパ各国の中央銀行から金塊を盗み出し、カトリック教会のネットワークを利用して運んでいたと言われている。 1973年から75年にかけてはオーストラリアの政権を転覆させる秘密工作をCIAは実行している。1972年12月にオーストラリアで行われた総選挙では労働党が勝利、ゴウ・ウイットラムが首相になったのだが、この政権は自国の対外情報機関ASISに対し、CIAとの協力関係を断つように命令、そのCIAに潰されたのである。 アメリカとイギリスの電子情報機関、つまりNSAとGCHQはカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの情報機関を支配下に置き、UKUSAという連合体を作っている。米英支配層はこのシステムを使い、各国政府をコントロールしている。CIAも情報機関のつながりを利用してきた。西側の情報機関は米英が各国に作った「国家内国家」という側面があるのだ。 1973年3月、重要な情報を政府に隠しているという理由で、ウイットラム政権の司法長官は同国のASIOの事務所を捜索、翌年の8月には情報機関を調査するための委員会を設置した。(David Leigh, "The Wilson Plot," Pantheon, 1988) そして1975年11月、イギリス女王の総督、ジョン・カー卿はウイットラム首相を解任する。憲政史上例のないことだ。総督は名誉職ではなかった。このカーは第2次世界大戦中の1944年、オーストラリア政府の命令でアメリカへ派遣され、CIAの前身であるOSSと一緒に仕事をしている。大戦後はCIAときわめて深い関係にあった。(Jonathan Kwitny, "The Crimes of Patriots," Norton, 1987) ジャーナリストのデイビッド・レイによると、チリでASISがエージェントを雇い、CIAと共同でサルバドール・アジェンデ政権を崩壊させる工作を展開していたことをウイットラムが知っていたことを示す文書が存在するという。選挙で選ばれたアジェンデ政権をアメリカは軍人を使ったクーデターで倒したのである。1973年のことだ。 アメリカが「レジーム・チェンジ」のために軍事クーデターを使った例は少なくない。例えば、1953年のイラン、54年のグアテマラ、60年のコンゴ、64年のボリビア、ブラジル、66年のガーナ、71年のボリビアなどだ。ソ連消滅後、ユーゴスラビア、イラク、リビア、ウクライナの体制を暴力的に倒して国を破壊、シリアへもアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を使って軍事侵略を試みた。
2017.02.17
アメリカ政府は2月13日にマイケル・フリン国家安全保障担当補佐官が辞任したことを発表した。政権の移行を円滑に進め、大統領、補佐官、外国の指導者との必要な関係を築くため、各国の自分と同じ立場の人びと、大臣、大使に数多くの電話をしたが、不注意にも、ロシア大使と私の電話に関する不完全な情報を次期政権の副大統領らに話してしまった。そのことを謝罪し、辞任するのだとしている。何も問題になるようなことはしていないというようにも聞こえる。 多くの人が指摘しているように、ワシントン・ポスト紙をはじめとする有力紙の報道(例によって「話」だけで、証拠や裏付けは示されていない)が正しいなら、フリンとセルゲイ・キスリャクの会話を盗聴した人物がいることになる。盗聴を仕事にしているのはCIA、NSA、FBIといったところだろうが、その内部から機密情報を記者へリークした人物がいるということでもある。 イラクでロイターの取材チームをアメリカの軍用ヘリが攻撃して殺傷する様子を撮影した映像を含む情報をWikiLeaksに流したり、アメリカ軍の収容施設で拷問が行われている事実を明らかにしたり、イランに核兵器開発に関する一部改竄した設計図を渡す作戦を危険だと考えて内部通告したりする人たちは厳罰に処されてきた。バラク・オバマ大統領が展開した「内部告発者との戦い」は有名で、自分たちが発信する偽報道が暴かれると、その暴く情報源を「偽報道」だと攻撃、言論統制を強めた。 有り体に言えば、少なくとも一部支配層による何らかの情報操作としてのリークは許されるが、支配層にとって都合の悪い情報の公開は許されないということだ。フリンの排除は支配層の意思だと言える。 勿論、政府ではなく、巨大企業や社会システムを動かしている富豪たちが支配層を形成している。1958年、アメリカ軍やCIAの好戦派がソ連に対する先制核攻撃の計画を具体化させていた当時、アイゼンハワー・テンと呼ばれる地下政府の設置が決められた。緊急検閲局、緊急通信局、緊急食糧局等々だが、このシステムはあくまでも核戦争のときに始動することになっていた。 しかし、1982年にロナルド・レーガン政権で一種の戒厳令計画と言われているCOGプロジェクトがはじまり、88年には対象が「核戦争」から「国家安全保障上の緊急事態」に変更されている。この変更があったので2001年9月11日の攻撃で始動、「愛国者法」がすぐに出て来たのである。この瞬間からアメリカは戒厳令状態になり、憲法は麻痺状態になっている。 では、地下政府も始動したのだろうか?
2017.02.16
マイケル・フリン国家安全保障担当補佐官が2月13日に辞任した。事実上の解任だ。ヒラリー・クリントンを担いでいたネオコンなど好戦派はロシアとアメリカのと関係改善、いわは「デタント」を推進すると公言していたドナルド・トランプを憎悪、その背後にいたフリンを排除しようと必死だった。 前回も書いたようにフリン攻撃の拠点のひとつはCIAだが、首席戦略官のスティーブ・バノンも同じ立場で、反フリンの波はトランプ政権の内部にも押し寄せていた。そうした波を侵入させるルートのひとつだと考えれているのが大統領の娘イバンカ。彼女が結婚したジャレッド・クシュナーは大統領の顧問を務め、その父親でドナルド・トランプの同業者でもあるチャールズは上級顧問になっているのだが、ユダヤ系なのだ。ユダヤ系の影響力という点では、多額の選挙資金を寄付したカジノ経営者、シェルドン・アデルソンも忘れてはならない。 今回の辞任劇はワシントン・ポスト紙が先陣を切った。トランプが大統領に就任する1カ月ほど前、フリンがセルゲイ・キスリャクと話をし、その中でアメリカがロシアに対して行っている「制裁」を話題にしたことが問題だと報じたのだ。 この「制裁」とはキエフのクーデター政権がクリミアにあるセバストポリの基地を制圧に失敗したことなどに対する腹いせだと言えるだろう。1997年にウクライナとロシアとの間で締結された協定でロシアはこの基地を20年間使え、さらに25年間の延長が認められていた。それに伴ってロシア軍は2万5000名の駐留が可能になり、実際は1万6000名のロシア兵が駐留していた。クーデター直後、西側の政府やメディアは「侵略軍」だと宣伝していたのはこの駐留軍だ。 クーデターを拒否する住民が多かったクリミアでは3月16日にロシアの構成主体になることの是非を問う住民投票が実施され、80%の有権者が参加、その95%以上が加盟に賛成し、すぐに防衛体制に入った。 この住民投票では国外から監視団が入り、公正なものだったことが確認されているが、その投票結果を認めるわけにはいかない西側の支配層は投票に不正があったと宣伝している。ネオ・ナチが憲法の規定を無視して実権を握ったキエフの暫定政権を正当だとする一方、クリミアの「民意」は認めないというわけだ。 このクーデターは2013年11月21日にキエフのユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)で始まったが、その前日、議会ではオレグ・ツァロフ議員がクーデター計画の存在を指摘していた。ツァロフ議員によると、ウクライナを内戦状態にするプロジェクトをアメリカ大使館はジェオフリー・パイアット大使を中心に準備、NGOがその手先として動くことになっていたという。 抗議活動が広がる中、EUは話し合いでの解決を模索するのだが、それに激怒していたのがビクトリア・ヌランド国務次官補。2014年2月4日にYouTubeへアップロードされたヌランドとパイアットとの会話では次期政権の人事について話し合われ、ヌランドはアルセニー・ヤツェニュクを強く推していたが、その一方で「EUなんかくそくらえ(F*ck the EU)」と口にしている。ちなみに、ヤツェニュクは実際、クーデター後、首相に就任した。 その音声が公開された後、2月18日頃からネオ・ナチが前面に出て来て暴力が激しくなる。棍棒、ナイフ、チェーンなどを手にしながら、石や火炎瓶を投げ、ピストルやライフルで銃撃を始めたのだ。 当時、広場をコントロールしていたのはネオ・ナチの幹部として知られているアンドレイ・パルビー。この人物はソ連が消滅した1991年にオレフ・チャフニボクと「ウクライナ社会ナショナル党(後のスボボダ)」というネオ・ナチ系の政党を創設、クーデター後には国家安全保障国防会議(国防省や軍を統括する)の議長に就任、2014年8月までその職にあった。同年9月にはヤツェニュクたちと新たな政党「人民戦線」を組織して議員になる。 広場では無差別の狙撃があり、少なからぬ犠牲者が出た。西側の政府やメディアは狙撃をビクトル・ヤヌコビッチ政府側によるものだと宣伝したが、スナイパーがいたのはパルビーの管理下にあったビル。2月25日にキエフ入りしたエストニアのウルマス・パエト外相は事実が逆だと報告している。 反大統領派で医師団のリーダー格だったオルガ・ボルゴメツなどから聞き取り調査をした結果で、その内容を26日にEUの外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)だったキャサリン・アシュトンへ電話で報告する。 「全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新連合(暫定政権)が調査したがらないほど、本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合の誰かだというきわめて強い理解がある。」 勿論、この報告はアシュトンにとって都合の悪い事実で、封印してしまった。 クーデター後、アメリカの傭兵会社、アカデミ(旧社名はブラックウォーター。2009年からXe、10年から現社名)系列のグレイストーンは400名の戦闘員を派遣、アカデミはウクライナ政府の要請で射撃、市街戦、接近戦、兵站などの訓練をしたようだ。また、アメリカ政府は訓練のためにCIAやFBIの専門家数十名を顧問として派遣、国防総省は戦略と政策の専門家チーム、つまり軍事顧問団をキエフへ送り込んでいる。2014年4月23日には第173空挺旅団をポーランド、エストニア、ラトビア、リトアニアへ派遣した。 空挺団が派遣される11日前、4月12日にジョン・ブレナンCIA長官がキエフを極秘訪問し、4月22日にはジョー・バイデン米副大統領がキエフを訪問、それにタイミングを合わせるようにしてオデッサでの工作に関する会議が開かれている。この会議に出席したのは大統領代行、内相代行、SBU(情報機関)長官代行、そしてユーロマイダンの惨劇を演出したパルビー、さらにオブザーバーとしてドニエプロペトロフスクの知事で三重国籍のシオニスト、イゴール・コロモイスキー。 オデッサで反クーデター派の住民が虐殺されのは会議の10日後。その数日前にパルビーは数十着の防弾チョッキをオデッサのネオ・ナチへ運んでいる。その装具を受け取ったミコラ・ボルコフは虐殺の当日、労働組合会館へ向かって銃を発射、状況をキエフの何者かに報告する様子が映像に残っている。 虐殺は午前8時に「サッカー・ファン」を乗せた列車が到着したところから始まる。赤いテープを腕に巻いた人びとがフーリガンやネオ・ナチを抗議活動が行われていた広場へ誘導したのだ。誘導した集団は「NATOの秘密部隊」だと疑われているUNA-UNSOだと言われている。 虐殺を仕掛けたグループは、住民を労働組合会館の中へ誘導、そこが殺戮の舞台になった。殺戮の現場を隠すことが目的だったとも推測されている。48名が殺され、約200名が負傷したと伝えられているが、これは確認された数字で、住民の証言によると、多くの人びとが地下室で惨殺され、犠牲者の数は120名から130名。虐殺の調査をキエフ政権は拒否、その政権の後ろ盾になってきた西側も消極的で、実態は今でも明確になっていない。 オデッサの虐殺から1週間後の5月9日、ソ連がナチスに勝ったことを記念する戦勝記念日にキエフ軍の戦車がドネツク州マリウポリ市に突入、住民が殺された。記念日を狙ったのは心理的なダメージを狙っただけでなく、住民が街頭に出てくることを見越してのことだったと言われている。5月11日に予定されていた住民投票を止めさせることも目的だっただろうが、予定通りに投票は行われ、独立の意思が明確になった。 それに対し、6月2日にデレク・チョレット米国防次官補がキエフ入りし、そのタイミングでキエフ軍はルガンスクで住宅街を空爆、建物を破壊し、住民を殺し始めた。民族浄化作戦の始まりだ。この戦乱は今でも終結せず、ここにきてNATOがロシアとの国境近くで威嚇的な演習を実施、キエフ軍によるドンバスへの攻撃は激しくなっている。 ロシアを制圧するというアメリカ支配層の目論見は崩れ、その報復として行っているのが「制裁」なのだが、この「制裁」はロシアを助けることになっていると指摘する人もいる。ロシア経済に対する西側巨大資本の影響力を弱め、生産活動を活性化させたというのである。「制裁」の解除をロシア政府は歓迎しないだろうともいう。フリンがこの「制裁」についてロシア側と話し合ったことを問題にするのは、「制裁」がロシアにダメージを与えているという妄想に基づいている。そうした様子を見ている世界の人びとがアメリカに見切りをつける可能性も小さくない。
2017.02.15
ヒラリー・クリントンを担いでいた勢力はロシアや中国を屈服させ、アメリカを唯一の超大国にし、パクス・アメリカーナを実現しようとしていた。この2カ国がアメリカの脅しに屈するとは思えないのだが、脅しをエスカレートさせれば何とかなると今でも思っているのだろう。その先には全面核戦争しかない。それに対し、ドナルド・トランプはロシアとの関係修復を訴え、大統領に当選した。その政策の象徴と言えるのが国務長官に就任したレックス・ティラーソンと国家安全保障担当補佐官になったマイケル・フリンだ。 このフリンをホワイトハウスから追い出そうとする動きがトランプ政権の内部で強まっていると報道されている。2012年7月から14年8月までアメリカ軍の情報機関DIAを率いていた軍人で、その間、2012年8月にDIAはシリア情勢に関する文書を作成、オバマ政権へ提出している。 フリンのグループを攻撃する拠点のひとつがCIA。ここにきてCIAはフリンの側近で、NSC(国家安全保障会議)のアフリカ担当上級部長を務めるロビン・タウンレーがNSCでの仕事に必要な秘密情報利用許可を求めたところ、CIAから拒否されたという。つまりCIAは彼をNSCから追い出した。 タウンレーは海兵隊の情報将校だった人物で、長い間トップ・シークレット・レベルの秘密情報利用許可を受けていた。そうしたことから考えると、セキュリティー上の問題ではなく、フリンのグループを恐れているということだろう。2001年9月11日以降、偽情報を作り出す仕事しかしていないCIAにとって、情報のプロは目障りなはずだ。しかもフリンはロシアとアメリカとの関係を改善しようとし、アル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を危険だと考えている。本ブログでは何度も指摘してきたように、CIAはアル・カイダ系武装集団やダーイッシュを作り上げる上で中心的な役割を果たしてきた。 フリンの排除は首席戦略官のスティーブ・バノンも狙っていると伝えられている。有力メディアもフリンとロシア政府との話し合いを問題にし、民主党もフリンの早い追放を望んでいるようだ。CIAにしろ、バノンにしろ、民主党にしろ、フリンを嫌う理由はロシアとの核戦争を回避しようという姿勢だ。 ロシアとの問題とつながるが、ヒラリーの周辺は、自分たちの手先である戦闘集団をアメリカ軍がロシア軍と一緒に攻撃するという事態は許せないだろう。勿論、フリンもイランを攻撃すればロシアと戦争になることは理解している。つまり、イランへ軍事侵攻する可能性は小さい。 問題はイランでなくサウジアラビア。いうまでもなくサウジアラビアとアメリカの支配層は石油で強く結びついている。生産を放棄し、基軸通貨であるドルを発行する権利で生きながらえているアメリカはサウジアラビアをはじめとするOPEC諸国に石油のドル決済を要求、代償として支配層の地位を保証してきた。ドルを回収するペトロダラーの仕組みだ。 サウジアラビアがアル・カイダ系武装集団、ダーイッシュ、あるいはチェチェンの武装勢力など一般に「テロリスト」と呼ばれている人びとのスポンサーだということはアメリカの政治家や軍人でさえ口にしている。そのひとりがフリンで、2015年8月にはアル・ジャジーラの番組で、ダーイッシュが勢力を拡大できたのはバラク・オバマ政権の決定があったからだと指摘している。そうではあるが、アメリカ政府はサウジアラビアの体制を揺るがすようなことをできないだろう。 イランの体制を破壊したいと考えているのはネオコンとサウジアラビアである。ネオコンのポール・ウォルフォウィッツが1991年にイラク、シリア、イランを殲滅すると口にしていたことはウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官が2015年に語っている。 そのネオコンと関係の深いユダヤ資金が選挙キャンペーン中、トランプ陣営へ流れ込んでいたとする情報があることは本ブログでも紹介した。投票結果は判明して間もない昨年11月13日に放送された番組の中で、ロシア外務省の広報担当者を務めるマリア・ザハロバはアメリカの大統領選挙でドナルド・トランプが勝利した理由をユダヤ人の資金だと語っているのだ。彼女によると、9月にニューヨークで会ったユダヤ系の人物から、自分たちはヒラリー・クリントンに寄付しているが、その倍をトランプに提供していることを明らかにしたとしている。 トランプ陣営のユダヤ人脈はトランプの娘イバンカからつながっている。夫で大統領の顧問を務めるジャレッド・クシュナーはユダヤ系なのだ。その父親であるチャールズは上級顧問に就任している。トランプ陣営に最も多額の選挙資金を寄付した人物がカジノを経営するユダヤ系のシェルドン・アデルソンだということも本ブログで紹介した通りだ。アデルソンは日本政府に対し、日本でカジノを経営させろと要求している。 副大統領のマイク・ペンスもイスラエルについて次のように述べた:「イスラエルがわれわれの最も大切な同盟国だということを知っています。そして、イスラエルの自衛権、われわれが自分を守る行動をとるように、彼らが自国を守る必要からそうした行動をとることを私は強く支持します。」
2017.02.14
ドナルド・トランプ政権の旅行規制の対象になった7カ国から2001年9月11日以降に入国して逮捕された人はいないとアメリカの連邦判事のジェームズ・ロバートは主張したようだが、実際はソマリア20名、イエメン19名、イラク19名、シリア7名、イラン4名、リビア2名、スーダン1名の合計72名がテロ容疑で有罪判決を受けているのだという。これは昨年6月、上院の「移民と国益に関する小委員会」が公表した報告書に書かれている。もう少し慎重に発言するべきだった。 ところで、裁判所とトランプ政権との対立を見て「三権分立」だと言う人もいるようだが、それは疑問だ。問題はその背景である。例えば、1932年の大統領選挙で当選したフランクリン・ルーズベルト大統領がNIRA(全国産業復興法)で生産調整を図って労働者の権利を拡大しようとした際、最高裁は生産調整を違憲だと判断して阻止したのである。同じ理由でAAA(農業調整法)も葬り去られた。ルーズベルトが率いるニューディール派と対立していたウォール街の意向を受けてのことだと考えられている。 もっとも、下級裁判所の場合、個人的に公正な判決を出す判事もいる。例えば、INSLAWという民間企業が開発した不特定多数のターゲットを追跡、情報を収集、蓄積、分析する先進的なシステムPROMISを司法省が開発会社を倒産に追い込んで手に入れてしまった事件では、1988年2月にワシントン破産裁判所のジョージ・ベイソン判事は司法省が横領したと認める判決を出している。 しかし、判決後、ベイソン判事は再任を拒否され、後任判事にはこの裁判で司法省側の弁護士を務めた人物が納まっている。支配層の意向に反して「三権分立」を実践しようとしたなら、報復されるということだ。アメリカのシステムは民主的と言えないが、民主主義を実践しようとする個人は存在してきた。そうした個人に対する締め付けが1970年代後半から強まり、2001年9月11日以降、ファシズム化が一気に加速したのだ。 INSLAW事件では連邦地裁も破産裁判所と同じ判決を出したが、控訴裁判所は「破産裁判所と連邦地裁に裁判権がない」という理由で原判決を破棄させ、1997年8月に最高裁判所は司法省の言い分を認める判決を言い渡した。イラン・コントラ事件で偽証して有罪になったり、証券詐欺や銀行詐欺などでロサンゼルスの連邦地裁で有罪の評決を受けた人物を「信頼できる証人」だとして逆転判決を言い渡したのだ。 この事件では下院の司法委員会が1992年9月に出した報告書では、破産裁判所や連邦地裁と基本的に同じ判断を示している。その際、司法省は調査に抵抗、相当量の書類が「行方不明」になっていた。司法省の元職員によると、INSLAW事件に関する書類を司法省職員がシュレッダーにかけて違法に廃棄していたと通報している。 本ブログでも書いたことがあるように、このPROMISの優秀さを日本の法務省も認識していた。この問題に一切、関心を示さなかった日本の「ジャーナリスト」とは違う。会社側に接触していたのは後に名古屋高検検事長になる敷田稔、その時の駐米日本大使館一等書記官は事務次官を経て検事総長に就任する原田明夫だ。
2017.02.13
エリオット・エイブラムズを国務副長官にするという話はドナルド・トランプ大統領が拒否したようだ。前にも書いたようにエイブラムズはネオコンの中心グループに含まれている人物で、イラン・コントラ事件(イランへの武器密輸とニカラグアの反政府ゲリラに対する違法な支援)にも連座している。 とりあえずネオコンの影響力がこれ以上強まることは避けられたが、影響を受けていないわけではない。トランプの娘、イバンカが結婚したジャレド・クシュナーはニューヨーク・オブザーバー紙を発行しているオブザーバー・メディアの創業者で、現在は大統領の顧問を務めている。ジャレドの父親であるチャールズもトランプやジャレドと同じ不動産開発業者で、現在は大統領の上級顧問だ。チャールズの両親はナチスによるユダヤ人迫害を経験しているとも言われている。こうした背景があるため、クシュナー親子は親イスラエルで、ネオコンに近いとも考えられる。 ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)の出現と勢力拡大をDIAが2012年の時点でバラク・オバマ政権に警告していたことは本ブログで紹介してきたが、その当時のDIA局長、マイケル・フリン中将は昨年、選挙キャンペーン中に「ラディカル・イスラムとその同盟者」との戦いをテーマにした本を出しているのだが、問題は共著者のマイケル・リディーン。この人物はイスラエルの情報機関と緊密な関係にあると言われ、1970年代の半ばにイタリアのイル・ジョルナレ・ヌオボ紙でジャーナリストとして働いていた際には「アカの脅威」を盛んに宣伝していた。 当時、リディーンと親しくしていたイタリアの情報機関SISMIのフランチェスコ・パチエンザによると、リディーンもSISMIのエージェント。1980年のアメリカ大統領選挙ではジミー・カーターの再選を阻止するため、盛んにスキャンダルを流していた。パチエンザは非公然結社P2と結びつき、グラディオと呼ばれるNATOの秘密部隊でも活動していた。(Edward S. Herman & Noam Chomsky, "Manufacturing Consent," Pantheon, 1988) トランプ政権内でクシュナー親子を含む人びとはイランを敵だとしている。テロリズムの黒幕だというのだが、フリンはその黒幕がサウジアラビアだということを熟知しているはず。アル・カイダ系武装勢力やダーイッシュのような存在を本気で潰すつもりなら、サウジアラビアを相手にしなければならないが、トランプを支える柱のひとつで石油産業もそれは受け入れられないだろう。 イランを潰すとポール・ウォルフォウィッツは1991年の時点で口にしていた。その当時、国防次官だったウォルフォウィッツはイラク、シリア、イランを5年から10年で殲滅すると言っていたのだ。 その年の1月16日にアメリカが主導する連合軍はイラクへ軍事侵攻、2月末に停戦するのだが、その際にサダム・フセインをジョージ・H・W・ブッシュ政権は排除しない。それが不満でウォルフォウィッツはそうした発言をしたようだが、その際、彼はアメリカが何をしてもソ連は動かないと信じることになる。 ソ連消滅後、ウォルフォウィッツを含むネオコンはロシアに対して同じ見方をするようになる。「唯一の超大国」になったアメリカが軍事侵略してもロシアは傍観すると信じたのだ。それだけに、2015年9月末にロシア軍がシリアで空爆を始めたことがショックだっただろう。 そうした思い込みに基づき、1992年2月には国防総省のDPG草案として世界制覇計画を作成した。ライバルだったソ連が消滅した後、残された雑魚を整理し、潜在的なライバルを潰すことを決めたのだ。これがいわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンである。 2001年9月11日の攻撃を利用し、その攻撃とは無関係のイラクをジョージ・W・ブッシュ政権は先制攻撃、今度はフセインを排除した。当初、2002年には攻撃したかったようだが、統合参謀本部の反対で約1年間遅れたと言われている。 イラク攻撃の口実に使われたのは「大量破壊兵器」。アメリカをはじめとする西側の有力メディアは攻撃を後押しする報道を続けたが、中でもニューヨーク・タイムズ紙のジュディス・ミラーは有名。偽報道を続け、イラク国土を破壊、約100万人とも言われるイラク人を殺す道を整備したのだ。 2005年にミラーはニューヨーク・タイムズ紙を辞めてからFoxニューズで働き、政策研究マンハッタン研究所なるシンクタンクの特別研究員になるが、この研究所の共同創設者のひとりはウィリアム・ケイシー。1981年1月から87年1月にかけて、ロナルド・レーガン政権でCIA長官を務めた人物だ。 その後、ミラーはニュマックスなるメディアで働くようになる。このメディアを創設したのはクリストファー・ルディーで、資金を提供したグループにはケイシーのほか、メロン財閥の中心的な存在で情報機関と密接な関係にあり、ビル・クリントン大統領を攻撃するキャンペーンのスポンサーでもあったリチャード・メロン・スケイフも含まれていた。ルディーはスケイフの下で働いていたことがある。 ネオコンのネットワークは政府内だけでなく、議会、有力メディア、あるいはハリウッドにも張り巡らされ、その背後では巨大金融資本や戦争ビジネスが蠢いている。ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺されて以降、この仕組みには向かった大統領はいない。 コンドリーサ・ライス元国務長官はFOXニュースのインタビューで、控えめで穏やかに話すアメリカの言うことを聞く人はいないと語ったが、世界にはアメリカを快く思っていない人は少なくないということだ。各国の首脳たちはアメリカのカネに目が眩んでいるのか、暴力を恐れている。そうした中、公然とアメリカ支配層をロシアのウラジミル・プーチンは批判、ロシア軍の戦闘能力が高いことも見せつけた。アメリカ国内からプーチンと手を組もうと考える人が出てきても不思議ではない。
2017.02.12
シリアのサイドナヤ刑務所で大量殺人が行われているとする内容の報告書を「人権擁護団体」のAI(アムネスティ・インターナショナル)は2月7日に公表した。自分たちが現地を調査したわけではなく、元刑務所関係者4名、元判事3名、医師3名、弁護士4名など31名にインタビューしたとされている。ロシア政府が話し合いでシリアの戦乱を終わる動きを見せていると報道された直後の公表だ。 いずれの「証言者」も反シリア政府派だということは当然だろうが、中には南部トルコで活動している人も含まれているようで、アル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILなどとも表記)とつながっている可能性もある。反対勢力から重要な情報が得られることもあるのだが、ユーゴスラビアやイラクのケースでは偽情報が提供され、軍事侵略への道が開かれたことも忘れてはならない。 ユーゴスラビアの場合、ソ連が消滅した直後、1992年頃から西側有力メディアと「人権擁護団体」は連携し、ユーゴスラビア政府の「人権侵犯」を非難し始めるが、後に偽情報だということが判明する。先制攻撃を正当化することが目撃だった。一種のイメージ攻撃だが、その背後には広告会社が存在していることもわかっている。プロパガンダが「民間委託」されたとも言えるが、委託を受けた広告会社は有力メディアとの連携を強めていく。 しかし、当初、ビル・クリントン政権は戦争に消極的。本ブログでは何度か指摘したように、状況が大きく変化したのは1997年1月に好戦派でヒラリー・クリントンと親しく、ズビグネフ・ブレジンスキーの教え子でもあるマデリーン・オルブライトが国務長官に就任してからだ。NATO軍がユーゴスラビアを攻撃、破壊したのは1999年のことである。その1999年、アメリカ陸軍の第4心理作戦群は隊員をCNNの本部へ送り込み、スタッフとして2週間ほど働かせている。 イラクの「大量破壊兵器」が大嘘だということも明らかになっているが、西側メディアの偽報道はその後、エスカレートしている。「人権擁護団体」は偽報道の権威付け、あるいはメディアが責任を回避するために使われるように見える。投機家のジョージ・ソロスとの関係が指摘されているHRW(ヒューマン・ライツ・ウォッチ)ほどではないが、AIも似た役割を果たしてきた。 そのAIが公表した今回の報告書では裏付けになる証拠は提示されていない。そこで利用されたのが3Dなどのコンピュータ技術だということをAIは公表している。
2017.02.11
ヒラリー・クリントンを担いでいた政治勢力や有力メディアは執拗にドナルド・トランプ政権を攻撃している。年が明けても沈静化しないのは珍しい。今回、選挙結果を操作すると懸念されていたのはクリントン陣営であり、難民問題を深刻化させる戦争に反対しているのはトランプの方だ。彼らがトランプ大統領を恐れているのはなぜなのか? ジョージ・W・ブッシュの勝利で決着がついた2000年の選挙では、キャンペーン期間中、有権者に関する怪しげなブラックリストが作られ、正体不明の「選挙監視員」が徘徊、投票妨害が報告され、投票機械やバタフライ型投票用紙など問題になった。投票数が出口調査と公式発表で大きな差が生じたことも疑惑を呼んだ。 アメリカ以外の国でこうしたことが発覚したなら、西側メディアは選挙無効を主張するだろうが、そうしたことは起こらず、12月に連邦最高裁がブッシュ当選を確定する判決を出した。その後、選挙のコンピュータ化が進み、投票数の操作は容易になり、不正を見つけることは難しくなっている。そうしたこともあり、昨年の選挙では2015年の段階で支配層が次期大統領に内定していたクリントンの陣営が操作するのではないかと懸念する声が事前に出ていたのだ。 しかし、執拗な攻撃が続いたこともないわけではない。例えば、1993年1月から2001年1月まで大統領を務めたビル・クリントンのケース。攻撃の口火を切ったのはニューヨーク・タイムズ紙だった。1992年3月のことである。 この記事はジェームズ・マクドーガルなる人物の話に基づいていたとされているが、その直後にAPの記者に対し、マクドーガルは自分もビル・クリントンも違法行為はしていないと主張している。 ところが、そのマクドーガルは後に証言内容を変更、クリントンに不利な証言をしはじめる。マクドーガルは心臓に深刻な病気を抱えていたことから、司法取引に応じて収監を回避しようとしたのではないかと見られている。もし収監されたなら鉄格子の中で一生を終える可能性が高かった。 クリントンを攻撃する側がネタにしたのは不動産取引をめぐる「ホワイトウォーター疑惑」。この疑惑で検察側の切り札的な証人だったディビッド・ヘイルは架空融資容疑でFBIから家宅捜索を受けた人物で、捜索の直後に友人のアーカンソー州最高裁判事ジム・ジョンソンに連絡、ランディ・コールマンが弁護士としてついている。そこで持ち出された話がホワイトウォーター疑惑だった。この疑惑を調べるため、後に特別検察官が任命されている。 この疑惑をメディアと連携して広めていた「市民連合」なる団体の中心にいた人物はロバート・ドール上院議員と近い関係にあった。(Trudy Lieberman, 'Churning Whitewater,' Columbia Journalism Review, May/June 1994)その反クリントン運動のスポンサーだったリチャード・メロン・スケイフはメロン財閥の中心的存在でCIAと緊密な関係にあった。 特別検察官は4年間に4000万ドルをつぎ込んで捜査したものの、起訴につながるような証拠は出てこなかった。それだけでなく、1998年3月には検察側の有力証人だったヘイルが反クリントン運動を展開しているグループから多額の資金を受け取っていることが判明してしまう。この段階でホワイトウォーター疑惑によってクリントン大統領を起訴することは不可能になった。 この疑惑と並行してセクハラ疑惑も浮上していた。元アーカンソー州職員のポーラ・ジョーンズがクリントン大統領のセクシャル・ハラスメントを訴えたのだ。1993年12月に「アメリカン・スペクテイター」という雑誌でデイビッド・ブロックがこの問題を取り上げると、有力メディアを巻き込んで大騒動に発展したのだが、このブロック自身が「エスクワイアー」の1998年4月号に「1993年の記事は間違い、あるいは誇張されていた」と謝罪する文章を書いている。なお、このアメリカン・スペクテイター誌はスケイフ系の雑誌である。 最後に残ったのはモニカ・ルウィンスキーとの性的な関係の問題。リンダ・トリップなる女性が1997年10月、ルウィンスキーと電話で交わした会話を録音、公表したのだ。トリップにルウィンスキーとの会話を録音するように勧めたルチアーナ・ゴールドバーグは興味深い経歴の持ち主だ。共和党のリチャード・ニクソンと民主党のジョージ・マクガバンが争っていた1972年の大統領選挙で、ゴールドバーグはジャーナリストを装ってマクガバン陣営に接近、スパイしていたのである。当時、支配層は戦争に反対していたマクガバンの大統領就任を何が何でも阻止しようとしていた。 その間、ネオコンなどアメリカの好戦派はユーゴスラビアを先制攻撃、解体しようと目論んでいた。その口実に使われたのが「人権」。例えば、1992年8月にボスニアで16歳の女性が3名のセルビア兵にレイプされたとニューズデーのボン支局長だったロイ・ガットマンはクロアチアのプロパガンダ団体の情報に基づいて報道しているのだが、事実でないことが別のジャーナリスト、アレクサンドラ・スティグルマイアーやマーティン・レットマイアーらによって確認されている。この偽報道が評価され、1993年にガットマンはピューリッツァー賞を贈られている。なお、ICRC(赤十字国際委員会)によると、戦争では全ての勢力が『不適切な行為』を行っているが、セルビア人による組織的なレイプが行われた証拠はない。(Diana Johnstone, "Fools' Crusade," Monthly Review Press, 2002) このガットマンは昨年、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を組織したのはシリア政府だとする記事を書いている。本ブログでは何度も書いてきたが、アル・カイダ系武装集団やダーイッシュの戦闘員はサウジアラビアなどが雇い、アメリカなどが訓練して武器/兵器を供給してきた。こうした事実はアメリカの政治家や軍人も認めている。ガットマンはシリアでも偽情報を流したわけだ。 ところで、ビル・クリントン大統領に対する攻撃はルウィンスキーが登場したころから急速に下火になるのだが、その頃にクリントン政権の性格も大きく変化していた。当初は戦争に消極的だったのだが、1997年1月にズビグネフ・ブレジンスキーの教え子で好戦派のマデリーン・オルブライトが国務長官に就任するとユーゴスラビア攻撃に向かって進み始めたのだ。彼女は1998年秋に空爆支持を表明している。対ロシア戦争の幕開けとも言える。 このオルブライトを政権に引き入れたのはビルの妻、ヒラリーだと言われている。そのほか彼女と親しくしていたネオコンのビクトリア・ヌランドも国務副長官の首席補佐官として政権に入っていた。 そして1999年3月、NATO軍はユーゴスラビアに対して全面攻撃を加え、4月にはスロボダン・ミロシェビッチの自宅が、また5月には中国大使館も爆撃されている。中国大使館を爆撃したのはB2ステルス爆撃機で、目標を設定したのはCIA。誤爆でないことは確実だ。 現在、トランプ大統領はロシアとの関係修復を目指している。すでにTPPを葬り去っているが、経済を破壊して投機市場を巨大なカジノにするために廃止されたグラス-スティーガル法(1933年銀行法:銀行業務と証券業務の分離)を復活させようとしているとも言われている。 現在のアメリカは生産を放棄、基軸通貨であるドルを発行することで生きながらえているのだが、それを可能にしているのはペトロダラーの仕組みを使ったドルの回収や投機市場への吸収。グラス-スティーガル法が復活したらそうしたことが困難になってしまう。現在の金融システムで資産を膨らませている支配層にとっては由々しき事態だ。 ちなみに、クリントンが大統領を辞めるとき、弁護費用などが嵩んで夫妻は多額の借金を抱えていたと見られているのだが、現在は大金持ちのようだ。
2017.02.11
ロシアとの関係改善を嫌う勢力、つまりヒラリー・クリントンを担いでいた人びとはドナルド・トランプ政権の国務副長官にネオコンのエリオット・エイブラムズを押し込もうとしているとする情報が流れている。 若い頃、エイブラムズはネオコンのゆりかご的な存在だったヘンリー・スクープ・ジャクソン上院議員の事務所で働いているが、その事務所の顧問だった人物がCIAの内部でソ連に関する偽情報を発信していたチームBを率いていたハーバード大学のリチャード・パイプス教授。そこにはリチャード・パール、ダグラス・フェイス、エイブラム・シュルスキーなど、後にネオコンの中核メンバーを形成する人びとも所属していた。 ロナルド・レーガン政権になるとエイブラムズは国務次官補に就任、イラン・コントラ事件(イランへの武器密輸とニカラグアの反政府ゲリラに対する違法な支援)に連座することになった。次のジョージ・H・W・ブッシュ政権では大統領特別補佐官、その息子のジョージ・W・ブッシュ政権では中東問題担当の主席顧問を務めている。レーガン政権でエイブラムズはロバート・ケーガンらと一緒に情報操作のテクニックを学んでいるが、その師にあたる人物がCIAのウォルター・レイモンド。 ビル・クリントン政権ではネオコンの影響力が低下、戦争にも消極的になる。その中で好戦的な姿勢を維持していたマデリン・オルブライト(ズビグネフ・ブレジンスキーの教え子)やネオコンのビクトリア・ヌランド(ロバート・ケーガンの妻)を政権内へ引き入れ、大統領を戦争へと導く役割を果たしたと言われているのがビルの妻、ヒラリーだ。 クリントン政権が戦争へと傾く切っ掛けは国務長官の交代。1997年にウォーレン・クリストファーからオルブライトへ替わり、好戦的な雰囲気が強まった。その翌年、ネオコン系シンクタンクのPNACはイラクが大量破壊兵器を使えないようにし、サダム・フセインを排除するべきだとする内容の手紙をクリントン大統領へ送っている。その手紙にサインしたひとりがエイブラムズだ。 ブッシュ・ジュニアが大統領になり、ニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された翌年、2002年にベネズエラのウゴ・チャベス大統領を排除することを目的としたクーデターが試みられた。 そのクーデターの黒幕として名前が挙がっているのは、オットー・ライク、ジョン・ネグロポンテ、そしてエイブラムズだ。アメリカの武官、例えばジェームズ・ロジャーズ中佐の関与も指摘されている。クーデターの際、アメリカ海軍がベネズエラ沖で待機、新政権は実業家のペドロ・カルモナを中心に組閣されることになっていたという。 エイブラムズをどのように扱うかは、トランプ政権がどの程度ネオコンに浸食されているかを判断する材料になる。
2017.02.10
アメリカにはロシアや中国との戦争に向かっている勢力が存在する。アメリカが「自由で民主的で平和的」だということはない。これは歴史が示している。もしアメリカが中国やイランとの軍事的な緊張を今以上に高めたなら、ほんのチョットした切っ掛けで全面核戦争に発展するだろう。ドナルド・トランプが大統領になったからそうした事態になっているわけではない。ヒラリー・クリントンはトランプより遥かに危険な好戦派だ。 タスによると、ロシア軍は必要ならイランの航空基地を利用するとイラン駐在ロシア大使は語ったという。すでに昨年8月にはロシア軍機がイランの基地を使っているが、この発言はアメリカがイランに対して圧力を強めていることに対する警告のようにも見える。 そのアメリカだが、ロシアとの関係を改善したいというトランプ大統領の意思は変化していないようだ。前にも書いたように、Foxニュースの政治コメンテーターであるビル・オライリーはドナルド・トランプ大統領にインタビューした際、ウラジミル・プーチンを「人殺し」と表現、それに対してトランプは「人殺しはたくさんいる。われわれは多くの人殺しを抱えている。われわれの国がそれほど罪がないとあなたは考えているのか?」と応じた。勿論、トランプの主張は正しい。 少なくとも第2次世界大戦後、アメリカは「人殺し」を戦術の軸に据えてきた。戦争の末期に編成されたジェドバラの人脈で極秘の破壊工作機関OPCが作られ、1951年にCIAへもぐ込んで計画局の核になった。この人脈がNATOの秘密部隊を編成、対キューバ工作を実行、ベトナムではフェニックス・プログラムで人びとを殺した。 フェニックス・プログラムでは2万6000人から4万1000人が殺されたと言われ、その中には504名の村民が殺されたソンミ(ミライ)事件やボブ・ケリー元上院議員による非武装民の虐殺も含まれている。 ケリーの場合、18名の女性や子どもを含む20名以上の武装していないタンフォンの村民を惨殺したのだが、報告では21名の南ベトナム解放民族戦線の兵士を殺したことになっていた。その「功績」で彼は青銅星章を授与されている。 2001年にケリーが指揮していた部隊による虐殺が明るみに出ると彼を弁護する声が相次ぎ、その中には著名な「ジャーナリスト」のデイビッド・ハルバースタムも含まれている。彼はタンフォンを「最も純粋なゲリラ地域」で、1969年までそこに住む全員が第3世代の「ベトコン」だったと弁護した。アメリカは侵略軍にほかならず、その侵略軍を非戦闘員も敵視するのは当然。そうした感情を持つ人びとを殺すのは当然だとハルバースタムは主張しているのだ。 村民皆殺しの目的はいくつか考えられる。まず共同体を破壊して組織的な抵抗を弱めること、ゲリラに対する食糧などの支援を断つこと、そして恐怖でアメリカに屈服させることなどだ。この戦術はラテン・アメリカでも使われ、「死の部隊」が編成されている。ズビグネフ・ブレジンスキーはサラフ主義者/ワッハーブ派やムスリム同胞団を中心に戦闘集団を組織、対戦車ミサイルTOWや携帯型地対空ミサイルのスティンガーを含む武器を供給し、戦闘員を訓練した。 1997年から2001年までイギリスの外相を務めたロビン・クックによると、そうした戦闘員のコンピュータ・ファイルがアル・カイダである。アラビア語で「アル・カイダ」とは「ベース」を意味し、「データベース」の訳として使われる。 2003年にアメリカはイラクを先制攻撃してサダム・フセイン体制を倒し、建造物を破壊、100万人とも推計されているイラク国民を殺した。その際、アメリカが投入した121機動部隊はフェニックス・プログラムの殺人部隊やラテン・アメリカの死の部隊と同じ役割を演じた。2011年春にアメリカはリビアやシリアの体制転覆に乗り出すが、ここで使われたアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)も目的は同じ。だからこそ、こうした武装集団の危険性を訴えたマーティン・デンプシー統合参謀本部議長やマイケル・フリンDIA局長は任を解かれたわけだ。 2001年9月11日の攻撃を利用してジョージ・W・ブッシュ政権は1992年にネオコンが作成した世界制覇プランを実行に移したが、1980年代から準備が進められていたCOGプロジェクトも始動している。COGとは「Continuity of Government」のイニシャル。 核戦争が勃発した際、本来の政府の機能を秘密政府へ移す計画で、1979年に設立されたFEMA(連邦緊急事態庁)もその計画から生まれた。COGは1982年に創設され、88年には大統領令12656によって、その対象は核戦争から「国家安全保障上の緊急事態」に変更されている。この変更の結果、2001年9月11日にCOGは始動、「愛国者法」がすぐに施行され、憲法の機能が停止させられたわけだ。 アメリカ国内のファシズム化や国外での侵略戦争は9/11を切っ掛けにして本格化、フェニックス的な作戦も実行しつつあるのではないかと言われている。その9/11は政府の自作自演だという指摘は納まる気配を見せていない。トランプ大統領もそうした疑問を口にしているひとりであり、安全保障担当補佐官に就任したフリンやジェームズ・マティス国防長官などはCOGにも反対していると言われている。トランプ政権にはさまざまな側面があるが、支配層、特に9/11を利用してきたグループにとって非常に危険な要素を持っていると言えるだろう。
2017.02.09
(その1から続く)ところで、ジョン・ケリー国務長官がイラン側と秘密裏に接触しはじめた2013年3月、シリアのアレッポでは化学兵器が使われ、シリア政府派すぐに調査を要求するという事態になっていた。西側の政府やメディアは政府軍が使ったことにしようとしたが、イスラエルのハーレツ紙は状況から反政府軍が使ったと分析、国連独立調査委員会メンバーのカーラ・デル・ポンテも反政府軍が化学兵器を使用した疑いは濃厚だと発言している。ロシア政府も独自に試料を分析、サリンや砲弾は「家内工業的な施設」で製造されたもので、反政府軍が使ったとする推測を公表している。いずれも説得力があった。 その5カ月後、8月21日にダマスカス郊外が化学兵器で攻撃され、西側の政府やメディアはシリア政府軍が使ったと宣伝、NATOを軍事介入させようとする。NATOが空爆し、アル・カイダ系武装集団などの傭兵部隊が地上で攻勢をかけるというリビア方式を目論んだと見られている。この攻撃は「偽旗作戦」だった可能性が高いということだ。 攻撃の直後に現地を独自に調査したキリスト教の聖職者マザー・アグネス・マリアムはいくつかの疑問を明らかにしている。例えば、攻撃が深夜、つまり午前1時15分から3時頃(現地時間)にあったとされているにもかかわらず犠牲者がパジャマを着ていないのはなぜか、家で寝ていたなら誰かを特定することは容易なはずだが、明確になっていないのはなぜか、家族で寝ていたなら子どもだけが並べられているのは不自然ではないのか、親、特に母親はどこにいるのか、子どもたちの並べ方が不自然ではないか、同じ「遺体」が使い回されているのはなぜか、遺体をどこに埋葬したのか・・・・・また、国連のシリア化学兵器問題真相調査団で団長を務めたアケ・セルストロームは治療状況の調査から被害者数に疑問を持ったと語っている。(PDF) この攻撃が行われる10日ほど前、反シリア政府軍がラタキアを襲撃し、200名とも500名とも言われる住人が殺され、150名以上が拉致されたと言われている。化学兵器の犠牲者を撮影したとされる映像の中に、ラタキアから連れ去られた住民が含まれているとする証言もあった。 また、ロシアのビタリー・チュルキン国連大使はアメリカ側の主張を否定する情報を国連で示して報告書も提出、その中で反シリア政府軍が支配しているドーマから2発のミサイルが発射され、ゴータに着弾していることを示す文書や衛星写真が示されたとジャーナリストがフェースブックに書き込んでいる。 そのほか、化学兵器とサウジアラビアを結びつける記事も書かれ、10月に入ると「ロシア外交筋」からの情報として、ゴータで化学兵器を使ったのはサウジアラビアがヨルダン経由で送り込んだ秘密工作チームだという話が流れた。 12月になると、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュもこの問題に関する記事を発表、反政府軍はサリンの製造能力を持ち、実際に使った可能性があるとしている。国連の元兵器査察官のリチャード・ロイドとマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授も化学兵器をシリア政府軍が発射したとするアメリカ政府の主張を否定する報告書を公表している。ミサイルの性能を考えると、科学的に成り立たないという。 こうした化学兵器の使用について、トルコの国会議員エレン・エルデムらは捜査記録などに基づき、トルコ政府の責任を追及している。化学兵器の材料になる物質はトルコからシリアへ運び込まれ、そこでIS(ISIS、ISIL、ダーイシュなどとも表記)が調合して使ったというのだ。この事実を公表した後、エルデム議員らは起訴の脅しをかけられている。 この化学物質を供給したのはジョージア(グルジア)のトビリシにあるアメリカの兵器に関する研究施設だとする情報も流れている。この施設を設計したのはベクテルで、問題の物質を製造や輸送にはジョージアの情報機関、ウクライナのネオ・ナチ(ステファン・バンデラ派)、トルコの情報機関、NATO、そしてアル・カイダ系武装集団が関わっているというのだ。 西側の政府や有力メディアの主張に対する反論が出てくる中、NATOが直接、軍事介入するという話が伝えられた。そして9月3日、地中海からシリアへ向かって2発のミサイルが発射された。 このミサイル発射はロシアの早期警戒システムがすぐに探知、明らかにされるが、ミサイルは途中で海へ落下してしまっていた。イスラエル国防省はアメリカと合同で行ったミサイル発射実験だと発表しているが、事前に通告はなく、実際に攻撃は始めたのではないかと推測する人もいる。ジャミングなど何らかの手段で落とされたのではないかというのだ。 つまり、アメリカ政府はロシアとの戦争を覚悟の上で直接的な武力行使に出たのだが、失敗したのではないかということ。この推測が正しいなら、ロシアとの通常兵器による戦争でアメリカは惨敗することを意味する。そうなると、必然的に全面核戦争へ移行せざるをえなくなる。 その間、オバマ政権がサラフ主義者/ワッハーブ派などを支援していると指摘していたフリンDIA局長は2014年8月に職を解かれ、軍事力の行使に否定的だたチャック・ヘイゲル国防長官は15年2月に好戦派のアシュトン・カーターに交代、アル・カイダ系武装勢力やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を危険視していたマーチン・デンプシー統合参謀本部議長は好戦的なジョセフ・ダンフォードに交代した。 オバマ政権は開戦用の陣容を整えたように見えたが、それは2015年9月末から始まったロシア軍の軍事作戦で粉砕される。ロシアは戦闘能力の高さを改めて見せつけたのだ。JCPOAにイランとP5+1が署名した2カ月後のことだ。イランを攻撃すれば、そのロシア軍と戦争になる。 それでも戦争に突入したがっている人がいるとするならば、その人は世界の破滅を願っているのか、アメリカ軍を「神の軍隊」だと妄想しているのだろう。
2017.02.08
イランの核問題に関してイランとP5+1(中国、フランス、ロシア、イギリス、アメリカの国連常任理事国とドイツ、EU)が合意、JCPOA(合同包括行動計画)に署名したのは2015年7月14日のことだった。 しかし、これでイランに平和が約束されたわけではない。アメリカのネオコンはイランの核兵器でなく、存在そのものを問題にしているからだ。この点、サウジアラビアもネオコンと同じである。 ネオコンのポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)は1991年の段階でイラク、シリアと同じようにイランを殲滅すると主張していた。イラクの「大量破壊兵器」にしろ、シリアの「人権弾圧」にしろ、イランの「核」にしろ、殲滅のための口実にすぎない。実際、「イランの核」が大きな問題として取り上げられたのは2002年、イラクを先制攻撃しようとジョージ・W・ブッシュ政権がしゃかりきになっていた頃のことだ。 ビル・クリントンが大統領だった2000年2月、CIAは買収済みのロシア人核科学者を介してイラン政府高官へ核兵器に関する欠陥設計図を渡したと言われている。「マーリン作戦」だ。イランを核兵器開発へ誘導して失敗させようとしたのか、核兵器開発を口実にして軍事侵略しようと目論んだと信じられている。(James Risen, “State of War : The Secret History of the CIA and the Bush Administration,” Free Press, 2006) 設計図がイラン側へ渡された2年後、イランの反体制派が核兵器疑惑を公にする。その反体制派とはムジャヒディン・ハルクの政治部門だという「イラン国民抵抗評議会」。イスラエルの情報機関から情報をえたという。それ以降、核を口実にしてイランへ軍事侵略しようとアメリカは目論んでいたが、その流れが2013年に大きく変わった。 変化の切っ掛けは国務長官の交代。2013年2月1日、国務長官がヒラリー・クリントンからジョン・ケリーに交代したのだ。長官に就任した翌月にケリーはウィリアム・バーンズ国務副長官やジェイク・サリバン国家安全保障担当副大統領補佐官を含むチームを軍用機でオマーンへ派遣、イラン側の代表と会談させ、ここからアメリカとイランの交渉は始まったと言われている。 ケリーの前任者であるヒラリーは巨大金融資本の影響下にあり、投機家ジョージ・ソロスの指示に従って動いてことを示す電子メールがあきらかにされているが、上院議員時代は巨大軍需企業ロッキード・マーチンの代理人と呼ばれていた。 彼女が国務長官を務めていた2011年春にアメリカはリビアやシリアに対する侵略を本格化、その年の10月にリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制はNATO軍の空爆とアル・カイダ系武装集団LIFGを主力とする地上部隊の連係攻撃で倒され、その時にカダフィは惨殺された。それをCBSのインタビュー中に知らされたヒラリーは「来た、見た、死んだ」と口にし、喜んでいる。人が殺されたことを聞いてこれほど素直に喜ぶ人は多くないだろう。 彼女が親しくしているグループの中にはユーゴスラビアを先制攻撃して破壊したマデリーン・オルブライトやネオコンとしてウクライナの合法政権をネオ・ナチで倒したビクトリア・ヌランド、父親がサウジアラビアの要職についていたことがあり、母親がムスリム同胞団(注)の幹部だというフーマ・アベディンが含まれている。 アルブライトはズビグネフ・ブレジンスキーの弟子であると同時にスーザン・ライスの師でもある。ヌランドの結婚相手はネオコンの中枢グループにいるロバート・ケーガン。アベディンは一時期、ネオコンのアンソニー・ウェイナーと結婚していた。(その2へ続く)(注)1929年にエジプトのハサン・アル・バンナーが創設したとされている。1954年にエジプトのガマール・アブデル・ナセルを暗殺しようとして失敗、非合法化されたが、このときに保護したのがサウジアラビア。その結果、ムスリム同胞団はサウジアラビアの国教であるワッハーブ派の影響を強く受けることになった。(Stephen Dorril, “MI6”, Fourth Estate, 2000) ワッハーブ派はサラフ主義に基づく運動で、18世紀にサウジアラビアを支配しているイブン・サウード家と結びつくことで勢力を拡大した。イブン・サウード家は破壊、殺戮、略奪を正当化するのに都合が良い宗派だということで手を組んだようだ。このコンビに目をつけ、利用したのが「大英帝国」である。ムスリム同胞団もイギリスとの関係が指摘されている。 2012年8月にアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)が作成、バラク・オバマ政権へ提出された文書によると、反シリア政府軍の主力はサラフ主義者/ワッハーブ派、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQI。シリアのアル・ヌスラはAQIの別名だともしている。
2017.02.07
ドナルド・トランプ政権がアメリカとイランとの関係を悪化させていると懸念する人が少なくない。国防長官のジェームズ・マティス退役海兵隊大将は東京で開かれた記者会見で、イランを「最大のテロリズム支援国家」と表現したというが、これが嘘だということは安全保障問題担当補佐官のマイケル・フリン退役陸軍中将が熟知しているはず。 繰り返し書いてきたことだが、例えば、2009年12月30日にアメリカの国務省が出した通信文には、サウジアラビアの資金提供者が全世界に展開する「スンニ派テロリスト」への最も重要な資金源を構成していると書かれている。 2014年9月にはトーマス・マッキナニー空軍中将がアメリカが組織する手助けをしたと発言、マーティン・デンプシー統合参謀本部議長(当時)はアラブの主要同盟国がダーイッシュに資金を提供していると議会で語った。同じ年の10月にはジョー・バイデン米副大統領(当時)がハーバーバード大学で中東におけるアメリカの主要な同盟国がダーイッシュの背後にいると述べ、2015年にはクラーク元欧州連合軍最高司令官もアメリカの友好国と同盟国がダーイッシュを作り上げたと語った。そしてフリン元DIA局長は2015年8月、アル・ジャジーラの番組へ出演した際にダーイッシュが勢力を拡大できたのはバラク・オバマ政権の政策があったからだと指摘している。 こうしたアメリカの政治家や軍人の発言をマティス長官が知らないはずはなく、彼はバラク・オバマやヒラリー・クリントンに匹敵するほどのデマゴーグと言えるだろう。 ヒラリー・クリントンを担いでいた勢力、つまりネオコンなど好戦派はイランを破壊しようとしてきた。核兵器を使おうとした疑いも持たれている。そのプランが消えているはずはない。時間の経過と共にネオコンの戦略に取り込まれたオバマ大統領も同じだ。そのオバマ政権がイランと核問題を話し合いで解決しようと考えていたとは思えない。そもそも、アメリカ政府は核兵器をそれほど脅威だと考えているのだろうか? 現在、中東には世界有数の核兵器保有国が存在する。いうまでもなくイスラエルだ。内部告発者のモルデカイ・バヌヌが1986年に示した推計数は100発から200発、ジミー・カーター元大統領は2008年の時点で150発以上、2014年には300発以上としたうえで正確な数字は誰にもわからないとしている。コリン・パウエル元国務長官が2016年に示した数字は約200発だ。その大半はテヘランに向けられているとも言われている。 アメリカがイスラエルに何らかの制裁を加える、まして攻撃するなどということはありえないだろう。ところが、核兵器を持っていなかったイラクを「大量破壊兵器」を口実にして先制攻撃、国を破壊し、国民を虐殺してきた。イスラエル/ネオコンは核兵器を開発していようがいまいがイランを破壊したがっている。それに同調しているのがサウジアラビアだ。 こうして見ると、オバマ政権が真剣にイランと話し合っていたようには思えない。彼らの手口を考えると、話し合いは時間稼ぎである。ウクライナやシリアの「停戦」はそうした目的で実施されていた。態勢の立て直し、工作/作戦の準備だ。ロシアの経済界にはウォール街やシティにつながる勢力のネットワークが存在しているが、イランも同様。 ひねくれた見方をするならば、「話し合い」の間にそうした勢力と何らかの準備を進めている可能性がある。イランを最も攻撃したがっている勢力はヒラリー・クリントンを担いでるネオコンだ。 イランを攻撃すれば自動的にロシアとの戦争になる。ロシアがシリアに対する侵略を阻止しようとしたのはイランを守るという側面もあった。中国もロシア側につくだろう。イラン攻撃はイスラエルの情報機関や治安機関が反対する可能性も高い。トランプ大統領の言動から考えて、こうした方向へ進む可能性は小さい。 戦争したがっているのはネオコンやロシアからイスラエルへ亡命したオリガルヒたちで、ウクライナのキエフ政権ともつながっている。アメリカとイランとの関係悪化はイランを破壊したがっているネオコンにとって良くない展開だという見方も成り立つ。問題はマティス長官やヨーロッパのアメリカ軍、NATO軍の暴走を止められるかどうかだろう。
2017.02.07
シリア制圧に失敗したネオコンなどアメリカの好戦派は矛先を再びウクライナに向けている。彼らが担いでいたヒラリー・クリントンが大統領選挙で敗北した翌月、ジョン・マケインとリンゼイ・グラハムのネオコン上院議員コンビはジョージア(グルジア)、バルト諸国、そしてウクライナを訪問、ウクライナではペトロ・ポロシェンコ大統領と会談している。その約1カ月後、1月下旬からウクライナ東部のドンバス(ドネツク、ルガンスク、ドネプロペトロフスク)に対するキエフ軍の攻撃が激化、2月4日にはルガンスクの軍司令官の自動車が爆破され、司令官は死亡した。言うまでもなく、キエフ軍の攻撃は停戦合意に違反している。 その一方、アメリカ欧州陸軍のベン・ホッジス司令官はポーランドに送り込まれたアメリカ軍の戦車に一斉射撃させた。ホッジスによると、これはロシアに対する戦略的なメッセージなのだという。EUからロシアへ向かって勢力範囲を拡大させてきたのはアメリカ/NATOだが、ホッジスのような人びとはロシアが接近しているように見えるようだ。 まだソ連が存在していた1990年、東西ドイツが統一されたのだが、その際、アメリカのジェームズ・ベイカー国務長官はソ連のエドゥアルド・シュワルナゼ外務大臣に対し、統一後もドイツはNATOにとどまるものの、東へ拡大させることはないと約束したことが記録に残っている。ミハイル・ゴルバチョフにしろシュワルナゼにしろ、そうしたアメリカの約束を信じるのはおめでたいのだが、ともかく信じた。 その翌年、1991年7月にロンドンで開かれたG7の首脳会談でアメリカなど西側の首脳は新自由主義をロシアに強要する。これにゴルバチョフは難色を示したのは当然だが、その瞬間に西側はロシアのトップを挿げ替える工作を始める。新たな傀儡に選ばれたのがボリス・エリツィンだ。エリツィンはその月にロシア大統領に就任している。 その期待に応え、エリツィンは12月にウクライナのレオニード・クラフチュクやベラルーシのスタニスラフ・シュシケビッチとベロベーシの森で秘密会議を開いてソ連からの離脱を決め、ソ連を消滅させた。それ以来、アメリカは東へ勢力範囲を広げ続けている。 アメリカがヨーロッパを支配する仕組みのひとつ、NATOも東側の国々を呑み込み始めた。まず1999年にはチェコ、ハンガリー、ポーランド、そして2004年にはブルガリア、エストニア、ラトビア、リトアニア、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、2009年にアルバニア、クロアチアといった具合にNATOへ加盟していく。 当然、NATO加盟国はロシアに接近していくことになるが、SACEUR(NATO欧州連合軍最高司令官)だったフィリップ・ブリードラブはロシアの脅威が増していると表現している。ホッジス司令官と同じことを言っているわけだ。そうした中でウクライナのクーデターは引き起こされた。 クーデターが動き出したのは2013年11月。キエフのユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)へ約2000名の反ヤヌコビッチ派が集まったのが始まりだ。当初はカーニバル的なもので、人びとは膨らんでいく。 規模が大きくなったところで登場してきたのがネオ・ナチのグループ。そのメンバーを西側は軍事訓練して準備していた。そのネオ・ナチのグループは2014年2月18日頃からチェーン、ナイフ、棍棒を手に、石や火炎瓶を投げ、ブルドーザーなどを持ち出し、中にはピストルやライフルを撃つ人間も出始める。その間、ウクライナ政府は西側の命令に従い、強硬手段には出ていない。 2月21日にビクトル・ヤヌコビッチ大統領と反ヤヌコビッチ派は平和協定に調印するが、22日に狙撃で多くの死者が出始め、議会の議長を務めていたボロディミール・リバクは「EU派」の脅迫で辞任、アレクサンドル・トゥルチノフが後任になる。憲法の規定を無視して新議長を議会が大統領代行に任命したのはこの日だ。 何度も書いてきたことだが、2月25日にキエフ入りして調査したエストニアのウルマス・パエト外相は翌日、キャサリン・アシュトンEU外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)に対し、反政府側が実行したと強く示唆している: 「全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新連合(暫定政権)が調査したがらないほど、本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合の誰かだというきわめて強い理解がある。」 ヤヌコビッチ排除はネオ・ナチが前面に出たクーデターだったことをEUは知っていたということだ。その上で西側はキエフ政権を支持、ネオ・ナチによるクーデターに反発して自立の道を歩み始めたクリミア、オデッサ、ドンバス(ドネツク、ルガンスク、ドネプロペトロフスク)の人びと、そしてロシアを罵ってきた。 このクーデターを仕掛けたチームの中心にはアメリカのビクトリア・ヌランド国務次官補やジェオフリー・パイアット駐ウクライナ大使がいた。このふたりがヤヌコビッチ後の閣僚人事を話し合っている音声が2月4日の段階でYouTubeにアップロードされている。マケイン上院議員らはこのときもクーデターを扇動するためにウクライナへ乗り込んでいた。 マケインたちがウクライナ入りした昨年12月、退任直前のバラク・オバマ大統領もロシアを挑発し、米露関係を少しでも悪化させようと努力していた。ロシアの外交官35名を含む96名のロシア人を国外へ追放したのだ。 今年1月6日にはアブラムズM1A1戦車87輌を含む戦闘車両がドイツに陸揚げ、戦闘ヘリのブラック・ホーク50機、10機のCH-47、アパッチ24機なども送り込まれた。派兵されたアメリカ兵の人数は2200名。この派兵は演習のためではなくロシアに対する戦略的なメッセージだとホッジス司令官は語ったわけだ。 相変わらずアメリカのメディアもロシア攻撃を続けているが、政治コメンテーターのビル・オライリーはドナルド・トランプ大統領にインタビューした際、ウラジミル・プーチンを「人殺し」と表現した。それに対してトランプは「われわれの国がそれほど罪がないとあなたは考えているのか?」と応じている。 オバマ政権からトランプ政権へ移行しても西側では偽情報が蔓延、ロシアやプーチンを悪魔化するプロパガンダが続いているが、オライリーの発言はその一例だ。マケインやグラハムのような上院議員だけでなく、アメリカ欧州陸軍のホッジス司令官のような軍人もそうしたプロパガンダと連携している。トランプ政権は国務省だけでなく、軍も掌握できていない可能性が高い。
2017.02.06
アメリカのジェームズ・マティス国防長官は東京で開かれた記者会見で、イランを「最大のテロリズム支援国家」と表現したようだ。バラク・オバマやヒラリー・クリントンに匹敵するほどのデマゴーグと言える。アル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)に資金を提供しているのはサウジアラビアを中心とするペルシャ湾岸産油国だということはアメリカの政治家や軍人も認めていることだ。 本ブログでは何度も書いてきたが、例えば、2009年12月30日にアメリカの国務省が出した通信文には、サウジアラビアの資金提供者が全世界に展開する「スンニ派テロリスト」への最も重要な資金源を構成していると書かれている。当時の国務長官はヒラリー・クリントンだが、この事実はすでに公表されているもので、マティス長官も知っているだろう。 イランが「最大のテロリズム支援国」でない事実を軍人が知っていることを示す発言もある。例えば、2014年9月にトーマス・マッキナニー空軍中将はアメリカが組織する手助けをしたと発言、またマーティン・デンプシー統合参謀本部議長(当時)はアラブの主要同盟国(敵対しているイランではありえない)がダーイッシュに資金を提供していると議会で語っている。 シーモア・ハーシュによると、デンプシーはアル・カイダ系武装集団やダーイッシュを危険だと考え、2013年の秋から独断でそうした戦闘集団に関する情報をシリア政府へ伝えたという。バラク・オバマ政権はDIAの報告を承知の上でダーイッシュを生み出し、支援する政策を進めていた。こうした戦闘集団がアレッポで政府軍と戦ってきた。 同じ年の10月にはジョー・バイデン米副大統領がハーバード大学で中東におけるアメリカの主要な同盟国がダーイッシュの背後にいると述べ、2015年にはクラーク元欧州連合軍最高司令官もアメリカの友好国と同盟国がダーイッシュを作り上げたと語った。マイケル・フリン元DIA局長は2015年8月、アル・ジャジーラの番組へ出演した際にダーイッシュが勢力を拡大できたのはバラク・オバマ政権の政策があったからだと指摘している。 言うまでもなくフリンはドナルド・トランプ大統領の安全保障担当補佐官だが、DIA局長だった2012年8月にDIAが政府へ提出した文書には、シリアの反政府軍がサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIを主力としていると報告、西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコの支援を受けているとも指摘していた。侵略戦争の旗振り役を演じてきたニューヨーク・タイムズ紙も昨年1月にはサウジアラビアがシリアの反政府軍の資金源だとする記事を掲載している。 ロシアとの関係改善をトランプ大統領は掲げ、フリン補佐官はアル・カイダ系武装集団やダーイッシュを危険な存在だと考えている。その「テロリスト」に資金を供給しているのがサウジアラビアだが、この国は石油を通じてアメリカの支配層と強く結びついている。石油産業との関係をうかがわせるトランプ政権としてはサウジアラビアを簡単に攻撃することはできないだろう。マティスの戯言を否定することはできないということだ。 このマティス長官はトランプ大統領やフリン補佐官と対立関係にあることを示す記事も伝えられている。国防総省内の人事でトランプの移行チームが提示する人事案を拒否していたという。移行チーム側はトランプの政策を遂行するうえで適切な人物を配置したかったようだが、マティスは自分の命令に従う「イエスマン」で固めたがっていた。マティスにトランプの政策を尊重する意思はなさそうだ。 トランプ政権にはマティスのほかにも問題の人物はいる。副大統領のマイク・ペンスだ。大統領は「アメリカ」を看板に掲げているが、この人物は親イスラエル派として有名。アメリカ議会の大半はイスラエルに忠誠を誓っているようなので珍しくはないが、副大統領の立場が大統領の立場と違うことも確か。2010年にイスラエルの核兵器について聞かれたペンスは質問に答えず、イスラエルは大切な同盟国だと繰り返した。「イスラエルがわれわれの最も大切な同盟国だということを知っています。そして、イスラエルの自衛権、われわれが自分を守る行動をとるように、彼らが自国を守る必要からそうした行動をとることを私は強く支持します。」 現在、アメリカではツイッターへ「トランプ暗殺」の書き込みが多く、問題になっている。もしトランプがジョン・F・ケネディのように支配層の意向を超えた行動をとったなら、何らかの手段で排除され、ペンスを後釜に据える可能性はある。
2017.02.05
2月18日18時から東京琉球館で国際情勢について話します。興味のあるかたは次のサイトまで。http://dotouch.cocolog-nifty.com/今回のテーマは1992年にネオコンが作成した世界制覇プラン、「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」です。ソ連が消滅した直後、アメリカが唯一の超大国になったという前提でネオコンが描いたものですが、21世紀に入ってロシアが再独立したことから破綻しています。それにもかかわらずネオコンはドクトリンを推進しようとしているため、世界は核戦争に近づいてきました。アメリカに従属していた国々やアメリカの支配層にもそうしたネオコンの暴走を懸念する人が増えているようで、一昨年半ば段階ではオバマ後の大統領に内定していたと見られるネオコンの候補、ヒラリー・クリントンが大統領になれなかった一因もその辺にあるでしょう。こうした話をする予定です。
2017.02.04
2月2日付けの日本経済新聞は「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が米国のインフラ事業に投資することなどを通じ、米で数十万人の雇用創出につなげる」と報じ、国際的な話題になった。GPIF資金約130兆円のうち5%までを国外のインフラ・プロジェクトに使うというのだ。雇用環境の悪化が深刻化している日本の状況を放置している安倍晋三政権はアメリカに奉仕するため年金資金を浪費するということになる。 それに対し、GPIFはすぐに否定するコメント「本日の一部報道について」を発表している。内容は簡潔で、「本日、一部報道機関より、当法人のインフラ投資に関する報道がなされておりますが、そのような事実はございません。」 さらに髙橋則広理事長は次のようにコメントしている:「本日、一部報道機関より、当法人のインフラ投資を通じた経済協力に関する報道がなされておりますが、そのような事実はございません。 GPIFは、インフラ投資を含め、専ら被保険者の利益のため、年金積立金を長期的な観点から運用しており、今後とも、その方針に変わりはありません。 なお、政府からの指示によりその運用内容を変更することはありません。」 GPIF側の困惑が感じられるようで面白い。「自分たちの意思」でGPIFの資金をアメリカのインフラに投入するということもありえるが、そうしたことを実行すれば政府の命令に屈したと受け取られる。今回のコメントは政府に対する牽制と言えるかもしれない。 ともかく、今回の記事の内容はふざけている。日経の記者が妄想に基づいて記事を書いたのでないならば安倍政権の誰かがそう話したのだろうが、この政権がいかにふざけた集団なのかを示している。 本来、年金はリタイアした後の庶民の生活を支えるものだが、実際は巨大企業や富裕層へカネを流し込む仕組みになっている。特に安倍晋三政権は露骨だ。 例えば、2014年1月にスイスのダボスで開かれた世界経済フォーラムで安倍首相は「日本の資産運用も大きく変わるでしょう。1兆2000億ドルの運用資産をもつGPIF。そのポートフォリオの見直しをして、成長への投資に貢献します。」と宣言、10月には国内債券を60%から35%に引き下げる一方、国内株式と外国株式を12%から25%に、外国債券を11%から15%へそれぞれ引き上げている。安倍首相は年金を国民の資産だと思っていないのだろう。 国外で大盤振る舞いするということは、国内で彼らが年金で私腹を肥やしても不思議ではない。個人的な不正ではなく、構造的に国民の資産を盗む仕組みができている可能性が高い。その仕組みを隠す意味もあり、国民に情報を明らかにしないということだろう。 その究極の政策がTPP(環太平洋連携協定)。巨大資本が国を支配する民意が完全に否定される仕組み、つまりファシズム体制の中へ日本を突き落とそうという政策だ。TPPに最も肯定的な立場だったヒラリー・クリントンはトランプより遥かにファシズム度が高い。 ドナルド・トランプが口にする「計算ずくの罵詈雑言」を取り上げて「ファシズム化の兆候」だと言う人もいるが、アメリカは2001年9月11日からファシズム化が急速に進んでいる。トランプなど「ナショナリスト」が政権を握ることで世界がファシズム化するという主張はファシズム化が進んでいる現在の状況を隠蔽するもので、人びとをミスリードすることが目的だと言われても仕方がない。 しかし、アメリカでファシズムの準備が本格化したのは1980年代の初めだ。一種の戒厳令計画であるCOGプロジェクトが始まり、「プロジェクト・デモクラシー」と名づけられた思想戦、つまり民主化の看板を掲げた情報操作も進められた。 そのTPPが否定された。これはファシズム化の流れに変化が生じている兆候のようにも見える。日経の記事に対してGPIFがすぐに否定コメントを発表したが、これも安倍政権によるファシズム化の政策が揺らいでいることを暗示しているのかもしれない。ネオコンが主導、安倍政権が従っているファシズム化政策は歪みが大きくなっている。
2017.02.03
ドナルド・トランプ米大統領に対する攻撃は大統領選の延長線上にあり、攻撃の主体はヒラリー・クリントンを担いでいた勢力、つまりネオコン、戦争ビジネス、巨大金融資本を含む好戦派にほかならない。反トランプ陣営に加わっている有力メディアはそうした勢力の宣伝部門であり、「リベラル派」もそうした勢力と関係が深く、少なくとも一部は資金などの支援を受けている。トランプを批判する「リベラル派」にネオコンが同調しているのではなく、ネオコンなどに「リベラル派」が従っているのだ。 本ブログですでに指摘してきたことだが、ヒラリーの周辺にいる好戦的な人物にはマデリン・オルブライト(ズビグネフ・ブレジンスキーの弟子)、ビクトリア・ヌランド(ネオコンで、ロバート・ケイガンの妻)、フーマ・アベディン(サウジアラビアで育ち、母親はムスリム同胞団の幹部。元夫のアンソニー・ウェイナーはネオコン)がいる。 また、オバマ政権で国家安全保障担当補佐官を務めたスーザン・ライスの母親はオルブライトの友人で、スーザン自身、オルブライトから学んでいる。ヒラリーは上院議員時代に巨大軍需企業ロッキード・マーチンの代理人とも呼ばれるほど戦争ビジネスと近い関係にあることでも有名だ。 ヒラリーの好戦的な性格を印象づけた映像がある。2011年10月20日にリビアのムアンマル・アル・カダフィが惨殺された際、その事実をCBSのインタビュー中に知らされた彼女は「来た、見た、死んだ」と口にし、喜んでいる。 リビアの場合、バラク・オバマ政権は国連を無視する形で制空権を握り、NATOに空爆させて地上の手下、アル・カイダ系のLIFGを中心とする武装集団を支援してカダフィ体制を倒したわけだが、シリアではつまずく。武器/兵器や戦闘員をシリアへ移動させたのだが、ロシアがアメリカに制空権を握らせず、バシャール・アル・アサド体制を倒すことができない。 本ブログでも繰り返し書いたように、西側の政府や有力メディアはアメリカ/NATOの直接的な軍事介入を正当化するために偽情報を流したが、いずれも短期間に嘘が発覚していまった。結局、戦闘員の増派や武器/兵器の供給でアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を強化して戦うしかなくなった。 その結果、シリア政府軍は劣勢になるのだが、それでもアメリカの好戦派は不満だったようで、例えば2015年3月11日になるとロバート・スケールズ退役少将がロシア人を殺せと発言している。 スケールズ少将の願いは、その年の11月24日に叶う。トルコ軍のF-16戦闘機がロシア軍のSu-24爆撃機を待ち伏せ攻撃で撃墜したのだ。11月24日から25日にかけてポール・セルバ米統合参謀本部副議長がトルコのアンカラを訪問、トルコ軍幹部と会談したこととの関連が疑われた。後に、WikiLeaksが紹介したように、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領がロシア軍機の撃墜を決めたのは10月10日だとする情報があるのだが、エルドアンが独断でロシア軍機撃墜を決められないだろう。つまり、少なくともアメリカ政府は承諾していた可能性が高い。 2016年2月にヘンリー・キッシンジャーがロシアを訪問した頃からアメリカでは大統領選挙の流れが変わったと見られている。そうした焦りもあるのか、ヒラリー・クリントンの支援者であるマイク・モレル元CIA副長官は2016年8月8日、ロシア人はイラン人に代償を払わせるべきだと語っている。司会者のチャーリー・ローズからロシア人とイラン人を殺すという意味かと問われ、その通りだと答えている。わからないように殺すというのだ。8月22日には国防総省の広報官、ピーター・クックは自分たちが中心になっている連合軍を守るために必要ならシリアやロシアの戦闘機を撃墜すると語っている。 ヒラリーの背後には金融資本も存在している。例えば、漏洩したヒラリーの電子メールを見ると、リン・フォレスター・ド・ロスチャイルド(エベリン・ド・ロスチャイルドの妻)と頻繁に連絡を取り合っていることがわかる。国務長官時代に投機家のジョージ・ソロスの指示に従って政策を決めていたことも明らかにされた。 このソロスはナイル・トーベを介してジェイコブ・ロスチャイルドにつながり、そのジェイコブも所属する金融機関N・M・ロスチャイルドにリチャード・カッツを通じてつながる。このN・M・ロスチャイルドにはエベリン・ド・ロスチャイルドもいる。またジョージ・カールワイツによってソロスはエドモンド・ド・ロスチャイルド・グループとつながっている。 ヒラリーを取り巻くこうした勢力がトランプを攻撃、「リベラル派」が同調、あるいは従っているのだ。
2017.02.02
ウクライナ東部のドンバス(ドネツク、ルガンスク、ドネプロペトロフスク)をキエフのクーデター政権が1月下旬から攻撃を激化させていると伝えられている。停戦合意に違反しているとしてロシア政府はキエフ政権に抗議したというが、その背後には、アメリカとロシアの接近を阻止したい勢力が存在している可能性が高い。 退任直前のバラク・オバマ大統領もロシアを挑発し、米露関係を少しでも悪化させようと努力していた。昨年12月にロシアの外交官35名を含む96名のロシア人を国外へ追放、今年1月6日にアブラムズM1A1戦車87輌を含む戦闘車両がドイツに陸揚げされ、戦闘ヘリのブラック・ホーク50機、10機のCH-47、アパッチ24機なども送り込まれた。派兵されたアメリカ兵の人数は2200名だ。こうした挑発にロシア政府が乗らないため、キエフ政権を使ってドンバスを実際に攻撃させているのではないか、ということだ。 2015年5月26日の時点で民主党の幹部がヒラリー・クリントンを候補者にすると決めたことを示唆する電子メールが存在、6月11日から14日かけてオーストリアで開かれたビルダーバーグ・グループの会合にヒラリーの旧友であるジム・メッシナが参加していることから、この段階でヒラリーがオバマの後継大統領に内定していたと見られている。 ところが、この流れが翌年の2月までに変化する。ヘンリー・キッシンジャーが2月10日にロシアを訪問、ウラジミル・プーチン露大統領と会談したのだ。この後、6月にアメリカ国務省の外交官50名以上がオバマ政権のシリア政策に不満を表明、アサド大統領を排除するために空爆を実施、つまりロシアと戦争をしろと主張している。 歴史的に金融資本と深い関係にあるCIAの幹部はヒラリーを支持、トランプ支持派が少なくないFBIと対立する構図になっていた。ジェームズ・コミーFBI長官が7月5日、クリントンが機密情報の取り扱いに関する法規に批判した可能性があることを認めたうえで、司法省に対して彼女の不起訴を勧告したが、その決定に少なからぬFBI職員が怒ったと言われている。 この決定に怒るのは当然。ヒラリーが法規に違反したことをFBI長官は認められているのだ。しかもヒラリーは証拠となる万2000件近い電子メールを削除している。本当に調査する意思があるなら電子情報機関のNSAへ行けば手に入る。何しろ彼らは世界規模で通信を傍受、全ての電子メールが記録されているとも言われているのだ。ヒラリーは証拠隠滅、FBI長官は職務怠慢だ。 ウクライナ情勢を考える上で忘れてならないことは、2014年2月22日のクーデターで合法的に選ばれたビクトル・ヤヌコビッチ大統領を暴力で排除したのはネオ・ナチを中核とする勢力であり、その背後にはアメリカのビクトリア・ヌランド国務次官補やジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使がいたということだ。ジョン・マケイン上院議員もクーデターを扇動するためにウクライナ入りしていた。 ヤヌコビッチはアメリカやイギリスの支配層から嫌われていたが、2010年2月の選挙で勝ってしまう。彼の支持基盤は東部と南部だった。その政権を倒すためにアメリカ政府はNGOを使って抗議活動を演出、2013年11月にはキエフのユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)へ約2000名の反ヤヌコビッチ派が集めることに成功した。そこからクーデター劇は始まる。 その後、ネオ・ナチが前面に出て広場で棍棒、ナイフ、チェーンなどを手にしながら石や火炎瓶を投げ、ピストルやライフルで銃撃を始める。2月中旬には2500丁以上の銃をネオ・ナチは持ち込み、狙撃も始めた。 当初、西側の政府やメディアは狙撃をヤヌコビッチ政府側によるものだと宣伝したが、2月25日にキエフ入りしたエストニアのウルマス・パエト外相は事実が逆だということを知り、その結果を26日にEUの外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)だったキャサリン・アシュトンへ電話で報告する。 「全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新連合(暫定政権)が調査したがらないほど、本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合の誰かだというきわめて強い理解がある。」狙撃手は反ヤヌコビッチ派の中にいるということだが、アシュトンは「議会を機能させなければならない」と応じた。つまり事実を隠せというわけだ。 このクーデター政権を拒否したのが東部や南部の人びとであり、最も早く動いたのがクリミア。3月16日にロシアの構成主体としてロシアに加盟するかどうかを問う住民投票が実施され、圧倒的多数が賛成している。投票率は80%を超え、そのうち95%以上が加盟に賛成したのだ。 動きが少し遅れた地域は厳しい状況に陥る。例えば、5月2日にウクライナ南部、黒海に面したオデッサでは住民がネオ・ナチのグループに虐殺され、ドンバスではいまだに平和が訪れず、ここにきてキエフ軍が攻撃を強めている。 CIAや国務省は勿論、FBIや軍の一部もトランプ大統領と敵対関係にある。NATOはアメリカ軍における関東軍のような存在で、不安定材料だ。ネオコン/好戦派を後ろ盾とするヒラリーが大統領選挙で敗れて核戦争勃発の可能性は小さくなったが、消えたわけではない。そうした勢力が今後もロシアとアメリカとの関係を悪化させようと仕掛けてくるだろう。
2017.02.02
アメリカは「移民の国」だと言う人がいる。有り体に言えば、ヨーロッパから渡ってきた移民が先住民(いわゆるインディアン)を虐殺し、融合して確立した国だ。アメリカではパレスチナと似たようなことが行われたとも言えるだろう。 遺伝子レベルで調べればインディアンの末裔という人も外見上はヨーロッパ系と言うことも多い。圧倒的にヨーロッパ系の遺伝子が強いとことだ。例えば、最近は「反ドナルド・トランプ」ということでジョージ・ソロスと組んでいるエリザベス・ウォーレンは32分の1だけチェロキーの血が入っていることから、トランプに「ポカホンタス」と言われたことがある。 ポカホンタスはポーハタン族の族長の娘だった人物で、ヨーロッパ系移民による侵略を正当化するために使われてきた。ディズニーの映画でも彼女をモデルにした映画を制作している。トランプはウォーレンを侮辱したということだ。 1492年にコロンブス(クリストバル・コロン)がバハマ諸島に到着する前、北アメリカには210万人とも1800万人とも言われる先住民が生活していた。数値が明確でないのは、「移民」が自分たちの殺した先住民の数を記録しなかったからだ。天然痘などの病気に原因を求める人もいるが、それも意図的に広められた疑いがある。つまり細菌戦。 勿論、武力による殺戮も繰り広げられた。先住民を虐殺しながら移民は東海岸から西へ向かって侵略を続け、その先住民を「保留地」に強制収容して土地を奪っていく。その最終局面、1864年にはシャイアン族とアラパホー族に対して「サンドクリークの虐殺」を行い、1890年にはサウスダコタ州で行われたスー族に対して「ウンデッドニーの虐殺」を実行している。こうした虐殺はアメリカという国を象徴しているとも言えるだろう。
2017.02.01
移民や難民が問題になっている。ドナルド・トランプ米大統領はそうした人びとのアメリカへの流入を規制しようとしているのだが、それをネオコンなど反トランプ派は「人権問題」だとして激しく批判、大統領の命令を無視したとして司法長官代理が解任される事態に発展した。これに対し、トランプ大統領はツイッターで、32万5000人のうち109名が引き留められて質問を受けただけであり、空港で生じた大きな問題の原因はデルタのコンピュータ、抗議活動、そしてシュマー上院議員の涙だとしている。 バラク・オバマ政権の時代にはEUへ「難民」が殺到して大混乱になった。西側の有力メディアが大きく取り上げるようになったのは2015年9月。トルコ政府が難民のヨーロッパ行きを認めたことが引き金になったと言われている。その難民を生み出した最大の要因はアメリカ、イギリス、フランス、トルコ、サウジアラビア、カタール、イスラエルといった国々が始めたリビアやシリアに対する侵略戦争だ。 西側メディアは海岸に横たわる3歳の子どもの遺体の写った画像を利用して難民受け入れをEUに迫った。この子どもが乗っていた船が沈没、溺死して遺体が流れ着いたとされたが、身体の位置が海岸線と垂直の方向になっていることから誰かによって置かれたのではないかとも指摘されていた。後に子どもの父親が難民の密航を助ける仕事をしていたという話も出てくる。 ユーゴスラビア攻撃の前、1990年代から西側の有力メディアはアメリカの侵略を正当化するために偽報道を続けてきた。イラク攻撃前の「大量破壊兵器」話は悪名高いが、それだけではない。嘘が発覚してもメディアは平然、その嘘が自分に心地良い人びとは知らぬ振りをしている。これは本ブログで繰り返し、書いてきたことである。 中東/北アフリカからの違法難民の問題は2015年4月にECIPS(情報政策安全保障欧州センター)が警鐘を鳴らしていたが、西側の政府やメディアはそれを無視していた。それを急にメディアが取り上げるようになったのはなぜか? 難民の中には戦闘訓練を受けたダーイッシュ(IS、ISIS、ISILなどとも表記)の戦闘員が潜り込んでいるとする情報も流れていた。難民を送り出しているトルコはアル・カイダ系武装集団やダーイッシュの拠点があり、トルコ政府からの支援を受けていた。 2005年7月8日付けのガーディアン紙でロビン・クック元英外相が明らかにしたように、「アル・カイダ」とはCIAから訓練を受けた「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイル。1970年代の終盤にズビグネフ・ブレジンスキー国家安全保障担当補佐官(当時)が計画した秘密工作に基づいて編成された武装集団の戦闘員を供給するための仕組みとして作られた。 ユーゴスラビア、アフガニスタン、イラクはアメリカ軍やNATO軍が先制攻撃したが、イラクで行き詰まってしまう。そこで、オバマ大統領は自分の師匠にあたるブレジンスキーの手口を真似し、アル・カイダ系武装集団をリビアやシリアでは投入した。 リビアではNATOとアル・カイダ系のLIFGの連携がうまくいったが、シリアでは失敗する。アル・カイダ系武装集団を危険視していたマーチン・デンプシー大将が統合参謀本部議長を辞めた5日後、2015年9月30日にロシア軍はシリア政府の要請を受けて空爆を始めた。デンプシーが議長を辞め、ロシアが空爆を始める直前に難民問題が急浮上したことになる。オバマ政府は難民の原因をシリア政府に押しつけ、軍事介入するつもりだった可能性もあるが、そうだったなら、ロシア軍の介入で難しくなった。 移民や難民を利用して意に沿わない体制を揺さぶるのはネオコンの常套手段だと言えるだろう。当然、その中には自分たちが訓練した戦闘員が紛れ込んでいる。中東や北アフリカで侵略軍の末端で戦っている兵士はサウジアラビアなどの資金で雇われているのだが、兵士になる大きな理由のひとつは、アメリカによる破壊と殺戮で中東/北アフリカの経済が破綻したことにある。稼ごうと思ったら、戦闘員になるか国外へ移り住むしかない。そうした原因を作ったネオコンの後始末をトランプは押しつけられているとも言えるだろう。 ちなみに、今回、入国を禁止された難民の出身国はシリア、イラン、イラク、リビア、ソマリア、スーダン、イエメンというネオコンに破壊された国々。「テロリスト」の黒幕的な存在であるサウジアラビアが含まれていない。
2017.02.01
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