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アメリカは4月25日に抗議活動の中、THAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムのレーダー、ランチャー、通信機器を含む機器を6台のトレーラーでゴルフ場の「ロッテスカイヒル星州カントリークラブ」へ運び込んだ。このシステムの配備に韓国政府は難色を示していたが、そうした意向を無視、強引に配備したわけだ。その上、アメリカ大統領は韓国に対し、貿易交渉に絡めて10億ドルを「用心棒代」としてよこせと言った。アメリカとの貿易協定で韓国経済は悲惨な状況に陥り、中国へ接近する一因になっている。自分たちが望んでいなかったTHAADの費用はアメリカが出すべきだと韓国政府が主張したのは当然だろう。そうした遣り取りの中、アメリカ軍は朝鮮半島の近くで韓国軍と合同軍事演習を実施する。生産能力を放棄、庶民から富を収奪することで国を弱体化、ドルが基軸通貨の地位から陥落しそうなのがアメリカ。かつて、中国との貿易で完敗したイギリスは軍事力を使って麻薬を売りつけ、略奪することで大儲けした。が、現在の米英は高額兵器によるカネ儲けで目が眩んで軍事力も低下している。ウラジミル・プーチンが実権を握ってから再独立したロシアは急速に国力を回復したが、1991年12月にソ連を消滅させたボリス・エリツィン時代と同じ感覚で、2006年の段階でもネオコンはアメリカが「唯一の超大国」だと思い込んでいたようだ。例えば、フォーリン・アフェアーズ誌(CFR/外交問題評議会が発行)の3/4月号には、ロシアと中国の長距離核兵器をアメリカの先制第1撃で破壊できるようになるとするキール・リーバーとダリル・プレスの論文が掲載されている。それから2年後、2008年8月にグルジア(ジョージア)は南オセチアを奇襲攻撃した。イスラエルとアメリカ、特にイスラエルが武器/兵器を供給し、将兵を訓練していた。侵攻作戦はイスラエルが立てたとも言われている。その侵攻作戦はロシア軍の反撃で粉砕されてしまった。この段階でアメリカもロシア軍が強いということを認識したはずだが、それを再確認させたのが2015年9月30日にロシア軍がシリア政府の要請で始めた空爆。戦闘機による攻撃以上にアメリカ側がショックを受けたのは、カスピ海から発射された巡航ミサイルがシリアのターゲットへ正確に命中した事実だと言われている。潜水艦からもミサイルが発射された。S-300やS-400といった防空システム、マッハ6から7で飛行する弾道ミサイルのイスカンダルは西側にとって脅威だ。また、海底1万メートルを時速185キロメートルで進むことができ、射程距離は1万キロに達し、遠隔操作が可能な戦略魚雷の存在もロシア軍はリークし、キール・リーバーとダリル・プレスの論文は戯言だとアメリカに警告している。ネオコンを含むアメリカの好戦派は凶人、あるいは狂犬を装って相手を屈服させてきた。脅せば屈するという戦法だが、ロシアや中国は脅しても屈しない。通常兵器で勝てない相手を脅そうとエスカレートさせていけば、核戦争の到達する。ヒラリー・クリントンはそうした方向へ進もうとしていた。ドナルド・トランプはそうした狂気の戦法を放棄する姿勢を見せていたが、大統領就任から100日も経たないうちにクリントンと同じようになった。ポール・ウォルフォウィッツは喜んでいるようだが、世界は非常に危険な状況に陥った。
2017.04.30
アメリカのレックス・ティラーソン国務長官からの求めに応じ、ロシアはシリアにおける航空機の衝突を防ぐ覚書を復活させたという。アメリカ政府はロシア政府に対し、シリアへの攻撃を繰り返さないと約束したと見られている。この覚書は2015年10月20日に署名された。9月30日にロシア軍がシリア政府の要請でアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)に対する空爆を開始、それを受けてのことである。当時、すでにアメリカ軍はシリア政府の承認を受けずに空爆を実施していたので、米露の軍事衝突が懸念される事態になっていた。そうした事態を恐れ、ロシアは軍事介入しないとネオコンは思い込んでいた可能性がある。「唯一の超大国幻想」を捨てられないでいたということだ。4月7日にアメリカ軍がシリアの軍事施設を巡航ミサイル(トマホーク)で攻撃した直後、ロシア政府はこの覚書の無効を宣言していた。地中海に展開していた駆逐艦のポーターとロスが59発のトマホーク巡航ミサイルを発射したのだが、ロシア側の発表によると目標であるシャイラット基地に到達したのは23発に過ぎない。アメリカは巡航ミサイルのルートをレバノン経由にしたが、5発は途中で地上に落下、残りは地中海に落ちたと見られている。レバノンを経由させたのは高性能の防空システムS-300やS-400を避けるためだったというが、ECM(電子対抗手段)で落とされた可能性が高い。S-300やS-400は配備されている数が多くない上、このシステムを操作できる要員がシリア軍には少ないようで、ロシア軍を守るために使われているだけだと見られている。こうした情報が正しいとするならば、巡航ミサイルによる攻撃はシリア政府やロシア政府に対する恫喝にはならず、むしろアメリカ軍の弱さを示すことになったと言える。アメリカが「張り子の虎」に過ぎないことを世界に示してしまったということだ。ロシア軍とアメリカ軍が戦闘になった場合、アメリカは厳しい状況に陥る。デビッド・ペトレイアスの子分として知られるH. R. マクマスター国家安全保障補佐官はユーフラテス川の周辺へ数万人とも15万人とも言われる規模の軍隊を送り込もうとしていたと言われているが、そうしたことは自殺行為だ。マクマスターの前任者、マイケル・フリンが局長だった2012年8月にDIAはバラク・オバマ政権の政策がワッハーブ派/サラフィーヤを中心とする「過激派」の勢力を拡大させると警告していた。フリンはロシアとの関係修復を主張していたことでも知られている。ネオコンは東アジアでも軍事的な緊張を高めてきたが、最近は朝鮮半島周辺で挑発的な動きを見せていた。中国との協力関係を演出したかったのだろうが、その中国は習近平の親書を栗戦書がモスクワでウラジミル・プーチンへ渡したと伝えられている。中国とロシアとの関係に変化がないことを確認する内容だったようだ。
2017.04.29
フランス大統領は5月7日に実施される第2回目の投票で決まる。候補者は「前進」のエマニュエル・マクロンと「国民戦線」のマリーヌ・ル・ペン。マクロンは「中道」、ル・ペンは「極右」というタグをメディアはつけている。マクロンが圧勝する見込みだというが、この人物は2006年から09年まで社会党に所属、その間、08年にロスチャイルド系投資銀行へ入り、200万ユーロという報酬を得ていたといわれている。2009年から16年の間は無所属だったというが、12年から14年にかけて大統領府副事務総長、14年から16年にかけては経済産業デジタル大臣を務めた。言うまでもなく、この時の大統領はアメリカ支配層の操り人形に過ぎなかったフランソワ・オランドだ。この経歴で「中道」とは到底言えない。マクロンが社会党を離れた2年後、社会党の大統領候補になると見られていたドミニク・ストロス-カーンIMF専務理事がニューヨークのホテルで逮捕されている。その前月、つまり2011年4月にストロス-カーンはブルッキングス研究所で演説、失業や不平等は不安定の種をまき、市場経済を蝕むことになりかねないとし、その不平等を弱め、より公正な機会や資源の分配を保証するべきだと主張していた。しかも、進歩的な税制と結びついた強い社会的なセーフティ・ネットは市場が主導する不平等を和らげることができ、健康や教育への投資は決定的だと語っただけでなく、停滞する実質賃金などに関する団体交渉権も重要だと語っている。アメリカ支配層を怒らせたことは想像に難くない。後にストロス-カーンの容疑は限りなく冤罪に近いということが判明するが、IMF専務理事は辞めさせられ、大統領候補にもなれなくなった。アメリカ支配層から見れば、目障りな人物を排除できたということだ。フランスの大統領選挙に介入したと言われても仕方がないだろう。オランドはフランスの有権者に嫌われているようだが、大統領に選ばれる可能性が高いというマクロンはオランドと同じ勢力に操られている。マクロンが勝利するということは、オランド政権の政策を継続することにほかならない。
2017.04.28
アル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)が侵略のための傭兵集団であり、その集団を背後にアメリカ、サウジアラビア、イスラエルを中心とした国々の支配層が存在していることは本ブログで何度も指摘してきた。シリアへ侵攻、政府軍と戦っているのもそうした集団で、それ以外の「穏健派」が存在しないことは、2012年8月にDIA(国防情報局)が作成した報告書でも指摘されている。そこには、東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告されている。こうした構図があるため、中東/北アフリカで続いている戦乱の中でアル・カイダ系武装集団やダーイッシュは基本的にイスラエルを攻撃しない。アメリカ軍の攻撃でそうした武装集団が弱体化しない理由も同じだ。例えば、シリアでアメリカ軍が攻撃してきた目標はインフラ。シリア政府軍に対する「誤爆」もある。そうした中、昨年11月にゴラン高原でダーイッシュとイスラエル軍が交戦したと伝えられている。非常に珍しいことなのだが、4月22日にイスラエルのモシェ・ヤーロン国防相はこの戦闘について興味深いことを話している。交戦の後にダーイッシュ側からイスラエルへ謝罪があったというのだ。詳細は明らかにされていないが、間違って攻撃したということだろう。このヤーロンは昨年1月19日、INSS(国家安全保障研究所)で開かれた会議で、イランとダーイッシュならば、ダーイッシュを選ぶと発言したという。イスラエルとダーイッシュとの関係を示す発言だが、そうしたことを主張するイスラエル人は彼以外にもいる。例えば、2013年9月には駐米イスラエル大使だったマイケル・オーレンはシリアのアサド体制よりアル・カイダの方がましだと語っている。オーレンはベンヤミン・ネタニヤフ首相の側近だ。イスラエルの戦闘機がシリアを何度も空爆していることも知られている。最近の例では、今年3月17日未明にも4機のイスラエル軍戦闘機がシリア領空を侵犯、空爆を実施した。今回はシリア軍が旧型の防空システムS-200で反撃、4機のうち1機を撃墜、別の1機に損傷を与えたと言われている。2015年1月18日に行われた空爆の場合、ダーイッシュを追い詰めていたシリア政府軍とヒズボラの部隊をイスラエル軍は攻撃し、イラン革命防衛隊のモハメド・アラーダディ将軍を含む幹部を殺している。その一方、負傷した侵略軍の戦闘員をイスラエルは救出、治療しているとも報道されている。イスラエルに限らず、アメリカ政府もシリアでアル・カイダ系武装集団やダーイッシュを敵だと考えていない。統合参謀本部議長だったマーチン・デンプシー大将やDIA局長だったマイケル・フリン中将のように、アル・カイダ系武装集団やダーイッシュを危険な存在だと認識していが人物もいたが、排除されてきた。こうした人びとを排除するという点でドナルド・トランプもバラク・オバマも同じだ。
2017.04.27
沖縄県名護市辺野古にアメリカ軍の基地が建設されようとしているが、そのための埋め立て工事が4月25日から始まっている。その工事とタイミングを合わせたかのように韓国では26日未明、ゴルフ場の「ロッテスカイヒル星州カントリークラブ」へTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムの機器が運び込まれ始めたようだ。朝鮮のミサイル実験は環境作りとして役に立っている。アメリカと韓国はTHAADについて朝鮮の弾道ミサイル攻撃に備えてのことだと主張しているが、実際は中国を攻撃する能力を高めることにあるだろう。ロシア周辺にミサイルを配備する口実にイランを持ち出したのと似ている。そうしたこともあり、韓国政府はTHAADの配備に難色を示していたが、韓国の政界が混乱する中、配備は決定された。1991年12月にソ連が消滅した直後、92年2月にネオコンは国防総省のDPG草案として世界制覇プランを作成した。いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンだ。これに基づき、2000年にはネオコン系シンクタンクのPNACは「米国防の再構築」という報告書を公表した。戦略上の重点地域をヨーロッパから東アジアへ移動するとしたうえで、オスプレイやTHAADが取り上げられている。2000年の選挙で大統領に選ばれたジョージ・W・ブッシュは当初、中国脅威論に基づいて動いていたが、その背後には国防総省内部のシンクタンクONA(ネット評価室)のアンドリュー・マーシャル室長がいた。マーシャルは冷戦時代にソ連脅威論を発信していた人物だが、ドナルド・ラムズフェルドはマーシャルに軍事戦略と軍再編の見直しを任せていたのだ。マーシャルは中国の地対地ミサイルなどが東アジアの基地や空母にとって脅威になるとしてミサイル防衛の必要性を強調、中国脅威論を主張したのだが、米太平洋軍の司令官だったデニス・ブレア提督はその主張に反論している。アメリカ軍を攻撃するためには長距離ミサイルだけでなく偵察通信システムを開発しなければならず、OTH(超水平線)目標システムも必要だが、当時の中国はそうした段階になかったというわけだ。ブッシュ・ジュニア政権はマーシャルの主張に基づく政策を推進するが、そうした中、衝撃的な出来事が引き起こされる。2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントン郡にある国防総省の本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されたのである。それを切っ掛けにして中東/北アフリカで戦乱が拡がった。アメリカ支配層はこの出来事を利用し、国内では憲法の機能を停止させて人びとから権利を奪い、国外では侵略戦争を始めて破壊、殺戮、略奪を繰り広げている。そうしたアメリカの行動は中国とロシアを強く結びつけることになり、中国の軍事的な能力も急速に高まっているようだ。ウォルフォウィッツ・ドクトリンが作成されてから日本でも戦争の準備が進められ、東アジアの平和を訴えていた鳩山由紀夫は2010年6月、首相の座から引きずり下ろされ、替わって菅直人が首相になる。その3カ月後、尖閣諸島(釣魚台群島)の付近で操業していた中国の漁船を海上保安庁が「日中漁業協定」を無視する形で取り締まり、それまで「棚上げ」になっていた尖閣列島の領有権問題を引っ張り出して日中関係を悪化させ、東アジアの軍事的な緊張を高めた。EUとロシアが結びつくことをアメリカの支配層は嫌がり、ウクライナでネオ・ナチを手先に使ってクーデターを実行したが、同じように東アジアでは日本、中国、韓国を含む国々の連携を妨害している。中国侵略のチャンスもうかがっているだろう。こうしたアメリカの戦略の中に辺野古やTHAADの問題もある。
2017.04.26
ロシア政府はシリアへ地上軍を派遣する用意ができているとモスクワからダマスカスへ伝えられているとイランで報道されている。シリア軍からの情報だという。この情報が事実だとするなら、アメリカ軍の直接的な介入に対抗することが目的だろう。ドナルド・トランプ政権は4月7日、地中海に展開していた駆逐艦のポーターとロスに59発のトマホーク巡航ミサイルを発射させ、シリア政府軍の航空基地を攻撃した。ロシア側の発表によると、目標に到達したのは23発。ただ、この攻撃より前からアメリカ軍はシリアへの直接的な侵略を本格化させている。シリアやイラクでアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)が敗走する中、アメリカ軍はそうした傭兵集団に替わってシリアへ侵攻、その地域を反シリア政府軍へ引き渡そうとしているようだ。占領者をダーイッシュからクルドへ交代させようとしていると見ている人もいる。支配地を拡大しようとするだけでなく、分割して統治するという手法は今でも生きている。その前段階としてアメリカは特殊部隊をシリアへ潜入させて拠点を築いていたが、今年に入って第11海兵遠征部隊がシリアで戦闘態勢を整えたという。ロン・ポール元下院議員(1997年〜2013年)はシリア北東部の要衝ラッカをシリア政府軍より先にアメリカ軍が制圧することだと推測、軍事的エスカレーションだと批判していた。また、アレッポのマンビジにはアメリカ陸軍の第75歩兵連隊の車列が入ったと伝えられている。アレッポは現在、ロシア軍の支援を受けたシリア軍が制圧寸前。アメリカ軍としては完全に抑えられる前に部隊を送り込んだのだろう。勿論、この軍事作戦をシリア政府が承認したわけでなく、シリアに対する侵略にほかならない。その一方、アメリカ軍はイラクのモスルやシリアのデリゾールでダーイッシュの指揮官たちをヘリコプターで救出しているとイランのメディアは伝えていた。
2017.04.26
「国連婦人の地位委員会」のメンバーにサウジアラビアが選ばれたようだ。「人権委員会」にも選ばれているので驚きではないが、あきれられている。この国は奴隷制度が今も存在、女性や外国から働きに来ている人びとの人権が軽視されていることでも知られているからだ。また、中東や北アフリカで破壊と殺戮を繰り返しているアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)、あるいはチェチェンの反ロシア武装勢力のスポンサーでもある。西側の政府や有力メディアは侵略の口実に「人権」を掲げた来た。その犠牲になった国にはユーゴスラビア、アフガニスタン、リビア、シリアなどが上げられる。ロシアや中国も攻撃の対象だが、攻撃している国々、例えばアメリカは世界的な規模で人びとの「生きる権利」を奪ってきた。アメリカを拠点とする巨大資本のカネ儲けにとって不都合な規制、法律などを破壊する仕組み、例えばTPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新サービス貿易協定)の3点セットは大多数の人びとから主権を奪うことにある。つまりファシズム化の仕組みであり、「自由貿易」は実態を隠す空疎な看板にすぎない。こうしたファシズム化を進めている国が奴隷国家を「婦人の地位委員会」や「人権委員会」のメンバーに選んでも不思議ではない。
2017.04.25
朝鮮の核兵器開発、ミサイル発射などのおかげでアメリカ支配層は東アジアにおける支配体制を立て直しつつある。朝鮮という「脅威」を利用し、アメリカの求心力を強めることに成功したと言えるだろう。台湾の政権交代や韓国の政変もアメリカの支配層にとっては追い風になった。少し長いスパンで見ると、日本で小沢一郎と鳩山由紀夫が失脚したことも大きい。その日本では治安体制の強化が図られている。アメリカの支配層が東アジアで本当に警戒している相手は中国。その中国は経済発展の基本プランとして「一帯一路」、つまり「シルク・ロード経済ベルトと21世紀海のシルク・ロード」を打ち出している。その海上ルートを破壊するため、出発点である南シナ海で軍事的な緊張を高めてきた。韓国へ配備するTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムも中国がターゲットだと見るのが常識的。ベニグノ・アキノ3世がフィリピン大統領だった当時、アメリカの手先としてフィリピン、ベトナム、韓国、インド、オーストラリア、そして日本を結びつけ、中国やロシアに対抗する「東アジア版NATO」を構築しつつあった。このプランはフィリピンでロドリゴ・ドゥテルテが大統領になるまでは順調に進むが、新大統領は自国がアメリカの属国であることを拒否したことで揺らいでしまう。ドゥテルテはアメリカのバラク・オバマ大統領に対して「あの野郎(son of a bitch)」という表現も使ったこともある。こうした表現の問題だけでなく、アキノ3世が冷え込ませていた中国との関係を修復するためにフィデル・ラモス元大統領を中国へ派遣、中国はフィリピンのインフラを整備するために多額の投資を提案するという展開になった。ベニグノ・アキノ3世の父親は1983年8月にマニラ国際空港で殺されたベニグノ・アキノ・ジュニアで、母親は86年2月から92年6月まで大統領を務めたコラソン・アキノ。アキノ3世がフィリピンの大統領に就任した3カ月後、2010年9月に海上保安庁は日中漁業協定を無視する形で尖閣諸島の付近で操業していた中国の漁船を取り締まり、田中角栄と周恩来が修復した日本と中国との関係を悪化させている。第2次世界大戦後、アメリカは東アジアをコントロールするため、1951年9月にふたつの軍事同盟、ANZUS条約と日米安保条約をサンフランシスコにあるプレシディオ(第6兵団が基地として使っていた)で結んだ。ANZUSはオーストラリア(A)、ニュージーランド(NZ)、アメリカ(US)という「英語圏」の国。この3カ国にイギリス、カナダ、そしてイスラエルを加えた6カ国は一心同体の関係にある。日本はその属国だ。安保条約が調印されたその日、対日平和条約も結ばれている。サンフランシスコのオペラハウスで開かれた講和会議には日本を含む52カ国が出席したが、中国の代表は招請されず、インド、ビルマ(現在のミャンマー)、ユーゴスラビアの3カ国は出席せず、ソ連、ポーランド、チェコスロバキアは調印式に欠席した。1991年12月にソ連が消滅するとネオコンはアメリカが唯一の超大国になったと認識、ソ連に参加していた国々を分裂させ、ユーゴスラビアを破壊した。その過程で傀儡政権を樹立するために「カラー革命」が実行されている。その「革命」の有力スポンサーが投機家のジョージ・ソロスだ。この手法が機能しなくなると、破綻国家にしてしまう。例えば、ネオ・ナチを使ってクーデターを実行したウクライナ、中東/北アフリカではアフガニスタン、イラク、リビア、シリアなどがターゲットになった。イランに対する秘密工作も進められてきた。ネオコンは1980年代からイラクのサダム・フセイン体制を倒すと主張していたが、その目的はイラクに親イスラエル体制を築き、ヨルダン、イラク、トルコの親イスラエル国帯でシリアとイランを分断して弱体化させることにあった。アフリカ統合の中心国だったリビアも破壊された。シリア攻撃にはパイプラインの建設も深く関係しているが、シリア東部からイラク西部にかけてダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)の支配地が作られてシリアとイランを分断する形になったのもアメリカのプランに合致している。こうした状況ができあがることを2012年8月の段階で予測していたのがアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)。バラク・オバマ政権へ提出された文書によると、反シリア政府軍の主力はサラフ主義者/ワッハーブ派、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIで、シリアのアル・ヌスラはAQIの別名だともしている。オバマ政権は穏健派を支援するとしていたが、穏健派は存在しないと指摘していた。2012年8月当時、DIAを率いていた人物がマイケル・フリン中将。ドナルド・トランプ大統領が安全保障担当補佐官に選び、すぐに追放された人物である。朝鮮がアメリカに攻撃された場合、ここも無政府状態になる可能性があり、周辺国は難民問題を抱えることになるだろう。アメリカは武装集団を送り込み、山岳地帯でゲリラ戦を続けさせるということもできる。アメリカにとって最大のメリットは韓国や日本と中国やロシアを分断できるということだ。
2017.04.24
マザーリシャリーフにあるアフガニスタン政府軍の基地へ政府軍の制服を着た10名のタリバン兵が4月21日に侵入、戦闘になり、タリバン兵のほか約140名の政府軍兵士が殺されたと伝えられている。政府軍の弱さを強調、アメリカ軍などの占領体制の強化が必要であるかのように伝えているマスコミもあるようだが、それはアメリカの支配層が望んでいることだろう。しかし、アフガニスタンではアメリカを嫌っている人が少なくない。攻撃の犠牲になってきた庶民は勿論、アメリカの傀儡と言われていたハミド・カルザイ元大統領もそうしたひとり。本ブログですでに書いたことだが、リビアもロシアに接近している。タリバンによる攻撃の2日前に出たVOAのインタビュー記事によると、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)はアメリカの道具だと言い切っている。実際、その通りなのだが、かつてアメリカの手先として動いていた人物にもアメリカは見切りをつけられている。13日にアメリカ軍はアフガニスタンにGBU-43/B(大規模爆風爆弾/MOAB)を投下、かつてCIAの資金でムジャヒディン(ワッハーブ派/サラフ主義者やムスリム同胞団を中心とする傭兵集団)のために作られたトンネルを破壊したとからかわれた。この爆撃でダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)の戦闘員36名以上を殺害したというが、イラクやシリアではダーイッシュやアル・カイダ系武装集団の幹部をアメリカ軍は救出していると言われ、蛻の殻だった可能性もある。ダーイッシュ側は誰も死傷していないと主張しているようだ。ちなみに、2016年9月17日にアメリカ軍はデリゾールでシリア政府軍を空爆、80名以上の政府軍兵士を殺している。この時はF-16戦闘機2機とA-10対地攻撃機2機で攻撃したのだが、こうしたことを考えてもMOAB投下がダーイッシュを目標にしたものだとは思えない。アメリカではトランプ大統領の影が薄くなるにつれ、戦争の臭いが強まっている。そうした中、今月24日から26日にかけてアメリカのマンハッタン島とニュージャージーで核爆発を想定した訓練が予定されているが、これを気にしている人がいる。FEMA(連邦緊急事態管理局)、国土安全保障省、国防総省、エネルギー省、FBIなどを含む政府機関が参加するという。少なからぬ人が指摘しているが、2001年9月11日にはアメリカのニューヨークで世界貿易センターやバージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された際、複数の軍事演習が行われていた。例えば、NRO(国家偵察局)は航空機がビルに突入した場合の対応をテスト、レーダー・スクリーン上に偽のブリップ(光点)を表示させる「ノーザン・ビジランス作戦」、旧ソ連の爆撃機による攻撃を想定した演習「ビジラント・ガーディアン」などだ。その年の5月から6月にかけてNORAD(北米航空宇宙防衛司令部)が巡航ミサイルでアメリカの東海岸が攻撃されるという設定の演習「アマルガム・バーゴ」を実施していた。2013年4月のボストン・マラソンにおける爆破事件でもその現場で訓練が行われていた。また、アメリカでは2007年8月に核弾頭を搭載した巡航ミサイル6機が「間違って」保管されていた基地から持ち出されるという出来事があった。核兵器を盗み出し、実際に使われる可能性があるのだ。9/11でアメリカは憲法の機能が停止、国外では侵略戦争を世界規模で始めることができた。新たな「国会議事堂放火」が準備されているかもしれない。
2017.04.23
4月8日にシンガポールを出港した後に南下、15日にスマトラとジャワの間にあるスンダ海峡を通過したアメリカの空母カール・ビンソンはオーストラリアへ向かっていたが、その一方でアメリカのマイク・ペンス副大統領は朝鮮半島や日本に乗り込み、「戦う用意はできている」と大見得を切っていた。この矛盾を解消させるため、ペンスの周辺から軍へ圧力があったようで、空母は半島へ向かいはじめたという。1週間後の4月末には到着すると見られているようだ。その朝鮮半島の北には中国軍とロシア軍が部隊を集結させているといわれている。今回、戦争の旗振り役は大統領でなく副大統領。3月14日にWikiLeaksのジュリアン・アッサンジはペンス副大統領を大統領にする計画が推進中だと書いていた。ドナルド・トランプを排除してペンスを後釜に据えようということだ。 アッサンジによると、こうした動きをヒラリー・クリントンは歓迎、水面下で支援しているとも書いている。ペンスの動きは予想可能で、打ち負かすことができることが理由だとしている。
2017.04.23
海上自衛隊の駆逐艦2隻、「あしがら」と「さみだれ」が長崎県の佐世保基地を出港したと報道されている。空母カール・ビンソンを中心とする艦隊に合流して共同訓練を行うことが検討されているとしているが、この空母は4月8日にシンガポールを出港してから南下し、15日にスマトラとジャワの間にあるスンダ海峡を通過、オーストラリアへ向かっていると見られている。当然、こうした情報を日本のマスコミも知っているだろう。防衛省はアメリカの空母の北上に合わせて共同訓練を行うことを検討しているというが、これが事実ならかなり先の話になる。空母カール・ビンソンが「来週前半にも日本海に入り朝鮮半島周辺の海域で活動する」とは思えない。これまで日米メディアは朝鮮に対するアメリカ政府の強硬姿勢を宣伝してきたが、空母カール・ビンソンの動きからホワイトハウスが人びとをミスリードしているという批判が出ている。「アメリカの空母は8日に西太平洋への展開が公表されて以降、時間をかけて航行している様子が見られ」、防衛省幹部の話として「北朝鮮が挑発に出なければ抑制的に対応するというアメリカ側の意図ではないか」とNHKは伝えているが、アメリカ政府の主張、そして自分たちの「報道」の間違い、あるいは嘘を取り繕う布石のようにも思える。なお、中国軍に続いてロシア軍も万一の場合に備え、部隊を朝鮮との国境近くへ移動させているとも伝えられている。
2017.04.22
シリア軍が戦闘機などをロシア軍の使用しているフメイミム基地へ移動させているとアメリカで報道されている。いわゆる未確認情報だが、アメリカ軍からのさらなる攻撃を避けるために移動させても不思議ではない。シリア国内に配備されている高性能の防空システムS-300やS-400は基本的にロシア軍を守るために使われ、アメリカ軍が4月7日未明に59発の巡航ミサイルのトマホークを駆逐艦のポーターとロスから発射、そのうち23発が到達したというシリア軍のシャイラット基地にはなかっただろう。アメリカ軍はS-400の迎撃をさけるため、トマホークをレバノン領空経由で撃ち込んだと考えられているが、それでも5発は途中で地上に落下、残りは地中海に落ちたと見られている。2013年にも話題になったECM(電子対抗手段)が使われた可能性が高い。これまでシリアでの空爆を繰り返してきたイスラエル軍もロシア軍を巻き込まないようにしてきたが、その一因はS-300やS-400を避けるためだったと推測する人もいる。しかし、3月17日未明にシリア軍は領空を侵犯して空爆した4機のイスラエル軍機のうち1機を撃墜、別の1機に損傷を与えたと言われている。撃墜をイスラエル側は否定しているものの、事実である可能性が高い。アル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)など反シリア政府軍を支援する目撃で空爆したと見られている。イスラエル軍機を撃墜したS-200はS-300やS-400に比べると性能が低い。それでも撃墜できるということだ。このイスラエル軍機撃墜に対する報復という見方もある4月7日の攻撃を受け、ロシアやシリアはECMや長距離の防空システムを強化するだけでなく、中距離や短距離の防空システム、携帯型のシステム、あるいは機銃などの配備を進めると見られている。そうした対策の一環としてシリア軍機をロシア軍が使っている基地周辺へ移動させても不思議ではない。
2017.04.21
安倍晋三政権は「共謀罪」を強引に成立させようとしている。現在、日本を支配している権益システムにとって目障りな人びとを弾圧する道具として使われることは間違いないだろう。こうした政策は日本の支配層をコントロールしているアメリカの支配層が推進してきたことでもある。アメリカの支配層は民主主義を破壊するために「テロリズム」を口実として使ってきた。2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎が攻撃された直後、詳しい調査もせずにジョージ・W・ブッシュ政権は実行犯を「アル・カイダ」だと断定、その「アル・カイダ」を匿っているという名目でアフガニスタンのタリバーン政権を批判、同国に対する軍事侵攻を開始しているが、その一方でアメリカの憲法を麻痺させる愛国者法を成立させた。それ以降、「アル・カイダ」は「テロリスト」の象徴的な存在になったが、1997年5月から2001年6月までイギリスの外務大臣を務めた故ロビン・クックは2005年7月、アメリカがイラクを先制攻撃した2年後に「アル・カイダ」が「テロ組織」でない事実をガーディアン紙に書いている。アル・カイダはCIAが訓練した「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイルにすぎないのだ。アル・カイダはアラビア語でベースを意味するが、「データベース」の訳語としても使われる。この指摘をした翌月、クックは保養先のスコットランドで心臓発作に襲われて死亡している。享年59歳だった。この傭兵リストを使って武装集団が編成されるのだが、そうしたひとつがリビア侵略で登場したLIFG。リビアのムアンマル・アル・カダフィ体制を倒すため、NATOはこの集団と手を組んでいた。2011年10月にカダフィが惨殺された後、反カダフィ勢力の拠点だったベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられた。その様子はYouTubeにアップロードされ、デイリー・メイル紙も伝えている。この出来事は西側支配層と「テロリスト」の関係を象徴している。アメリカの情報機関が自分たちのヨーロッパにおける支配システムを強化、目障りな勢力を弾圧するために「テロリスト」を使ったことも知られている。コミュニストが強かったイタリアでは1960年代から80年代にかけて「爆弾テロ」が繰り返され、極左グループ」が実行したと宣伝されていたが、実際はNATOの内部に作られた秘密部隊(イタリアではグラディオと呼ばれている)だった。この事実を認める報告書をジュリオ・アンドレオッチ政権が1990年10月に公表している。(Daniele Ganser, “NATO’s Secret Armies”, Frank Cass, 2005)ギリシアのアンドレア・パパンドレウ元首相もNATOの秘密部隊が同国にも存在したことを確認、ドイツでは秘密部隊にナチスの親衛隊に所属していた人間が参加していることも判明した。この3カ国だけでなく、ほかのNATO加盟国にも同じような部隊が存在、結びついていることが明らかになっている。オランダやルクセンブルグでは首相が、またノルウェーでは国防大臣が、トルコでは軍の幹部がそれぞれ秘密部隊の存在を認めている。スペインの場合、「グラディオは国家だった」と1980年代の前半に国防大臣を務めたアルベルト・オリアルトは言っている。(前掲書)アメリカの愛国者法が戦争に反対する人びとや団体を弾圧するために使われていることも指摘されているが、この国の支配層は以前から戦争に反対し、平和を求める人びとを敵視してきた。例えば、FBIが1950年代に始めた「COINTELPRO」も、CIAが1967年に始めたMHケイアスも、戦争に反対する人物を監視することが目的だった。アメリカの支配層にとって、反戦/平和運動は「テロ行為」なのである。反体制派、人権擁護や環境運動の活動家、ジャーナリスト、学生指導者、少数派、労働運動の指導者、政敵も監視のターゲットになる。監視システムは電子技術の進歩にともない、「ビッグ・ブラザー」の度合いを強めてきた。アメリカや日本のようにコンピュータ化の進んだ社会では、個人の学歴、銀行口座の内容、ATMの利用記録、投薬記録、運転免許証のデータ、航空券の購入記録、住宅ローンの支払い内容、電子メールに関する記録、インターネットでアクセスしたサイトに関する記録、クレジット・カードのデータなど個人情報の収集と分析は難しくない。街中に設置されたCCTVやICカードの普及は個人情報の一括管理を可能にし、GPSつきの携帯電話は個人の行動を追跡するためにも利用できる。住基ネットはそうした監視システムとして使うために導入されたのだろう。アメリカの場合、スーパー・コンピュータを使って膨大な量のデータを分析、「潜在的テロリスト」を見つけ出そうともしている。どのような傾向の本を買い、借りるのか、どのようなタイプの音楽を聞くのか、どのような絵画を好むのか、どのようなドラマを見るのか、あるいは交友関係はどうなっているのかなどを調べ、分析しようというのだ。イギリスでは監視システムを強化するため、2012年のロンドン・オリンピックが利用された。元々イギリスは監視社会だったが、このオリンピックはそうした仕組みを強化するために使われたのである。顔の識別も可能な監視カメラを張り巡らせ、無人機による監視も導入、通信内容の盗聴、携帯電話やオイスター・カード(イギリスの交通機関を利用できるICカード)を利用した個人の追跡も実用化させた。海兵隊や警察の大規模な「警備訓練」も実施され、本番では警備のために軍から1万3500名が投入されたという。盗聴法、特定秘密保護法、安保関連法、緊急事態条項、そして共謀罪の創設、日本で進められている監視システムの強化、弾圧体制の整備といった政策はアメリカ支配層が進めてきたものにほかならないが、単に後を追いかけてきただけでもない。例えば、1910年に「テロの共謀」を理由にして幸徳秋水など社会主義者や無政府主義者が処刑された「大逆事件」、1949年7月から8月にかけて国鉄を舞台にして引き起こされた「テロ」も左翼と呼ばれる人びとの弾圧に使われた。「下山事件」、「三鷹事件」、「松川事件」だ。いずれもでっち上げだった可能性がきわめて高い。1952年6月に大分県直入郡菅生村(現竹田市菅生)で駐在所が爆破された「菅生事件」では、共産党に潜入していた戸高公徳(市木春秋という偽名を使っていた)が「テロ」を演出するために実行している。戸高が真犯人だった。その後、戸高は有罪判決を受けるが、判決から3カ月後に警察庁は彼を巡査部長から警部補に昇任させ、そのうえで復職させている。最終的に彼は警視長まで出世、警察大学の術科教養部長にもなっている。退職後も天下りで厚遇された。共謀罪であろうと何であろうと、支配層が示す「限定」などは何の意味もない。
2017.04.20
空母カール・ビンソンを中心とする艦隊が朝鮮半島へ向かっているという話に疑問が出てきた。4月8日にシンガポールを出港、そこから朝鮮半島周辺へ向かい、そこで朝鮮を恫喝するための示威行動、場合によっては軍事作戦も実行すると言われていたのだが、15日にスマトラとジャワの間にあるスンダ海峡を通過、つまり南下している。アメリカにしろ日本にしろ、その支配層が本気で朝鮮を脅威だと考えているとは思えない。もし朝鮮が破壊活動をはじめるとするならば、それはアメリカ側の意向によるだろう。アル・カイダ系武装集団、あるいはそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)と同じように傭兵的な役割を果たすということだ。何らかの攻撃、あるいは工作で原発が破壊された場合、日本は破滅する可能性が高いが、朝鮮半島で戦争が勃発、あるいは朝鮮の体制が崩壊した場合に発生するであろう難民の問題も無視できない。これは中東/北アフリカ/ウクライナにおける出来事でも明らか。朝鮮半島を南下、あるいは船で日本列島へ向かう人も少なくないだろう。朝鮮がそうしたリスクを冒してまで攻撃するような国だとは思えない。本ブログでは何度か書いているが、朝鮮戦争やベトナム戦争はアメリカの対中国戦の一環である可能性が高い。これは今でも同じ。ヨーロッパでアメリカ/NATOはイランを口実に使い、ロシアとの国境周辺にミサイル・システムを配備してきたが、この点、朝鮮はイランと似た役割を演じている。中国との関係を重視する韓国の反対を押し切り、アメリカはTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムを韓国に配備するが、勿論、これは朝鮮でなく中国がターゲットだ。韓国では金泳三が大統領に就任した1993年に済州島での海軍基地建設が発表された。候補地が江汀(カンジョン)に絞られたのは2007年のこと。その翌年、2008年の2月に大統領だった盧武鉉は辞任に追い込まれてしまう。現在、アメリカは最新鋭のミサイル駆逐艦ズムウォルトを済州島の基地へ配備したい意向を示しているが、これも中国を睨んでのことだ。朝鮮の核兵器開発、ミサイルの発射実験などもアメリカの中国戦略と深く結びついているだろう。
2017.04.19
アメリカ国防総省は空母カール・ビンソン中心とする艦隊に続き、空母ロナルド・レーガンと空母ニミッツを朝鮮半島周辺の海域へ向かわせるという。これが事実なら3空母が集結することになる。カール・ビンソンを中国やロシアの情報収集船が監視しているようだが、こうしたアメリカの動きは朝鮮でなく、中国やロシアに対する挑発だと見ることができる。アメリカは1983年の4月から5月にかけて西太平洋に3空母を集めたことがある。この時、アメリカ海軍はエンタープライズ、ミッドウェー、コーラル・シーを中心とする機動部隊群を千島列島エトロフ島の沖で合流させ、大艦隊演習「フリーテックス83」を実施したのだ。この演習では空母を飛び立った艦載機がエトロフ島に仮想攻撃をしかけ、志発島の上空に侵入して対地攻撃訓練を繰り返したと言われている。(田中賀朗著『大韓航空007便事件の真相』三一書房、1997年)日本以外ではアメリカの危険な挑発だと話題になっていた。(Far Eastern Economic Review, June 16, 1983)その年の8月31日から9月1日にかけて大韓航空007便が通常の航路を大幅に逸脱、アメリカが設定した緩衝空域、飛行禁止空域を通過し、カムチャツカとサハリンでソ連領空を侵犯、その際に重要な軍事基地の上空を飛行した。結局、サハリンで撃墜されたとみられている。NORAD(北米航空宇宙防衛軍)のアラスカ航空指揮規則によると、飛行禁止空域に迷い込みそうな航空機を発見したならすぐに接触を試み、またFAA(連邦航空局)へ連絡しなければならない。にもかかわらず、アメリカ軍は撃墜も予想される飛行禁止空域へ向かう民間機に対して何もアクションを起こしていない。担当者が怠慢だったのか、事前に飛行を許可されていたのか、どちらかだろう。アメリカ軍が何らかの目的で民間機をソ連の領空へ侵入させ、軍事基地の上空を飛行させたということになると深刻な事態になる。侵入した航路はアメリカ軍がソ連を攻撃する予行演習にも見え、軍事衝突から全面戦争に発展しても不思議ではない。この時、ソ連は軍事衝突を回避する道を選んだ。しかし、同じ年の11月にNATO(北大西洋条約機構)軍はヨーロッパで軍事演習「エイブル・アーチャー83」を計画、当初の予定では国防長官や統合参謀本部議長が参加し、核攻撃のシミュレーションも行われることになっていた。春に行われた艦隊演習や大韓航空機の領空侵犯を考え合わせると、このNATO軍の演習は実戦のカモフラージュだと思われても仕方がない。実際、この時にソ連は応戦の準備に入っている。1991年12月にソ連が消滅、翌92年の2月にアメリカ国防総省では単独行動主義を宣言、世界制覇を目指したプランをDPG草案という形で作成している。これは3月にリークされて問題となり、書き直された。が、その思想が消えたわけではなかった。草案を作成した中心人物がポール・ウォルフォウィッツ国防次官だったことからウォルフォウィッツ・ドクトリンとも呼ばれている。そのドクトリンが作成された3年後に「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」が発表され、日本もアメリカの戦争マシーンに組み込まれていく。そうした流れの中、1998年にアメリカでは金正日体制を倒し、朝鮮を消滅させて韓国が主導する新たな国を建設することを目的とした作戦、OPLAN(作戦計画) 5027-98が作られた。この年の8月、朝鮮は太平洋に向かって「ロケット」を発射、翌年の3月には海上自衛隊が能登半島の沖で「不審船」に対し、規定に違反して「海上警備行動」を実行している。日本で「周辺事態法」が成立した1999年になると、金体制が崩壊、あるいは第2次朝鮮戦争が勃発した場合に備える目的でCONPLAN 5029が検討され始めた。2005年にOPLANへ格上げされたと言われている。このほか、朝鮮への核攻撃を想定したCONPLAN 8022も作られた。その間、2003年3月にアメリカ軍はイラクを先制攻撃しているが、同じ頃に空母カール・ビンソンを含む艦隊が朝鮮半島の近くに派遣されている。さらに6機のF117が韓国に移動し、グアムには24機のB1爆撃機とB52爆撃機が待機、緊迫した状況になった。最近殺された金正男が国外へ脱出したのはこの頃だとされている。2003年には開戦の可能性があったと言われているが、こうした動きを韓国の盧武鉉やアメリカ支配層の一部がブレーキをかけたと言われている。その盧大統領はスキャンダル攻勢にあい、2004年3月から5月にかけて大統領の権限が停止になり、08年2月には収賄容疑で辞任に追い込まれた。なお、2005年には「日米同盟:未来のための変革と再建」が署名されている。2009年10月に朝鮮は韓国に対し、韓国軍の艦艇が1日に10回も領海を侵犯していると抗議する。11月には韓国海軍の艦艇と朝鮮の警備艇が交戦し、10年3月には、韓国と朝鮮で境界線の確定していない海域で韓国の哨戒艦「天安」が爆発して沈没した。2010年5月頃から韓国政府は朝鮮軍の攻撃で沈没したと主張し始め、11月に韓国軍は領海問題で揉めている地域において軍事演習を実施、朝鮮軍の大延坪島を砲撃につながる。2010年11月にWikiLeaksが公表した2009年7月付けの文書によると、韓国の玄仁沢統一相はカート・キャンベル米国務次官(当時)と会談、朝鮮の金正日総書記の健康状態や後継者問題などについて説明している。 金総書記の健康は徐々に悪化、余命はあと3年から5年だと低いとしたうえで、息子の金正恩への継承が急ピッチで進んでいると分析していた。確かに金総書記の健康状態は悪かったようで、2011年8月に死亡している。この会談で玄統一相は朝鮮が11月に話し合いへ復帰すると見通していたのだが、実際は10月に韓国の艦艇が1日に10回も領海を侵犯、11月に両国は交戦、話し合いどころではなくなった。玄統一相の分析が正しいなら朝鮮が自ら軍事的な行動に出る可能性は小さく、同相もそうした流れを望んでいるように読めるのだが、そうした流れを止めるようなことを韓国軍はしている。2011年夏、金正日は死亡する直前にシベリアでロシアのドミトリ・メドベージェフ首相らと会談し、朝鮮がロシアに負っている債務の90%(約100億ドル)を帳消しにし、10億ドルの投資をすることで合意した。15年の対ドイツ戦勝利70周年記念式典へ金正日が出席することも決まっていたが、その前に死亡、実現していない。なお、2014年にロシア議会はこの合意を承認した。2011年の夏、朝鮮の経済を好転させることが期待できる大きな出来事があったことがわかる。つまり、朝鮮政府にとって軍事的な緊張を高めたくない状況だった。2012年にはリチャード・アーミテージやジョセフ・ナイの「日米同盟:アジア安定の定着」が発表されている。2013年に朝鮮では大きな出来事があった。中国派の重鎮で金正日の妹である金敬姫の夫、張成沢が処刑されたのだ。その際、張の親族を含む周辺も粛清されたと言われ、金敬姫も毒殺されたと見られている。朝鮮に対する中国の影響力が大きく低下したことは間違いないだろう。裏では中国でもロシアでもない国が暗躍している可能性がある。
2017.04.19
アメリカのドナルド・トランプ政権は好戦的な色彩を強めている。上院議員時代から軍需産業のロッキード・マーチンを後ろ盾にしていることで知られているヒラリー・クリントンと同じ道を歩み始めたとも言えるだろう。クリントンを支援していた人物の中には、インタビュー番組の中でロシア人やイラン人を殺すと公言したマイク・モレル元CIA副長官も含まれている。ジョン・マケイン上院議員が2月中旬にシリアへ違法入国したことを同議員のオフィスは認めた。シリア政府の承認を受けずに入り込んでいるアメリカ軍の部隊に会ったとしているのだが、2013年5月にシリアへ違法入国したときには、後にダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)のリーダーになるアブ・バクル・アル-バグダディを含む反シリア政府軍の幹部たちと会談している。そのほかマケインはウクライナで政権転覆を扇動するなど露骨な内政干渉を行うが、大して問題になっていない。現在のアメリカではアメリカ支配層にとって目障りな主権国家に対する内政干渉や侵略、そうした敵対行為の手先になっている「テロリスト」への支援は容認されている。マケインの密入国など問題ではないのだろう。議会の中にも、こうした行為を批判する人はほとんどいないが、例外的なひとりがタルシ・ガッバード下院議員。2004年には州兵としてイラクで戦っている。戦争の実態を知っているということだ。そのガッバード議員はCNNのインタビューで、シリアのアサド政権を倒すという違法で非生産的な戦争をアメリカやCIAは止めるべきであり、イスラム過激派との戦いに集中するべきだと語っている。本ブログでは繰り返し書いてきたが、バラク・オバマ政権はアサド政権を倒すためにイスラム過激派、つまりワッハーブ派/サラフィーヤやムスリム同胞団を中心とするアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を「穏健派」と称して支援してきた。マケインやクリントンもオバマの仲間であり、最近はトランプ大統領も引き込まれている。アメリカ軍の情報機関DIAは2012年8月の段階でオバマ政権に対し、シリアにおける反乱の主力はサラフィーヤ、ムスリム同胞団、そしてAQI(アル・カイダ系武装集団)だとしたうえで、政府が方針を変えなければシリア東部にサラフィーヤの支配地が作られると予測していた。言うまでもなく、これはダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実になる。この報告書が作成された当時のDIA局長がマイケル・フリン中将で、トランプ大統領が最初に国家安全保障補佐官として選んだ人物である。DIA局長時代、フリンはオバマ政権の周囲とこの件で対立、2014年8月に退役に追い込まれた。このフリンを選んだトランプ政権は、少なくとも発足当時、侵略戦争に消極的だったと言える。退役後、この文書に記載されたダーイッシュ出現の警告ともとれる部分についてアル・ジャジーラの番組で質問されたフリン中将は、そうした情報に基づいてオバマ大統領の決めた政策がダーイッシュを出現させたとしている。つまりオバマ政権の決定がダーイッシュの広大な地域を支配させることになったと言ったのだ。このフリンを国家安全保障補佐官に選んだ時点のトランプ大統領はネオコンからの攻撃もあり、戦争へと舵を切る。その象徴的な出来事がフリンの排除。彼は2月13日に辞任させられてしまうのだ。フリンの後任であるH. R. マクマスターはクリントンに近いデビッド・ペトレイアスの子分。このコンビはシリアへ数万人とも15万人とも言われる規模のアメリカ軍をユーフラテス川の渓谷へ侵攻させようと目論んでいると報道された。ただ、軍の幹部にもこうした軍事介入に反対する人は少なくないようで、マクマスターもごり押しできなさそうだが、諦めているわけでもないだろう。トランプ政権は4月7日、地中海に展開していた駆逐艦のポーターとロスに59発のトマホーク巡航ミサイルを発射させた。シリア政府軍の航空基地を破壊する目的だったが、ロシア側の発表によると、目標に到達したのは23発。ECMという電子的な妨害装置が使われたと言われている。攻撃を正当化するため、アメリカ政府はシリア政府軍が化学兵器を使ったと主張したが、シリア政府軍が化学兵器を2013年に破棄している。これは国連も熟知している事実だ。しかもアメリカは詳しい調査を拒否している。シリアで化学兵器を保有しているのはアメリカが支援してきたアル・カイダ系武装集団やダーイッシュのような傭兵部隊。2011年10月のリビアでムアンマル・アル・カダフィ体制が倒されるとCIAはアメリカ国務省の協力を受けて武器/兵器を戦闘員と一緒にトルコ経由でシリアへ運んでいた。そうした武器/兵器の中に化学兵器も含まれていた。当時のCIA長官がペトレイアスであり、国務長官がクリントンだ。シリアの反政府軍に穏健派は存在しないとDIAから警告された2012年8月、オバマ大統領はシリアに対する直接的な軍事介入のレッド・ラインは生物化学兵器の使用だと発言するが、その時点で反政府軍が化学兵器を保有していることを彼は知っていたはずだ。その年の12月にクリントンは、自暴自棄になったシリアのアサド大統領は化学兵器を使う可能性があると主張する。クリントンも反政府軍が化学兵器を保有していること知っていただろう。翌年の1月、イギリスのデイリー・メール紙はオバマ政権の偽旗作戦に関する記事を載せている。シリアで化学兵器を使い、その責任をアサド政権になすりつけて非難、国際的な軍事行動を誘発しようという作戦をオバマ政権は許可したというのだ。そして3月と8月に化学兵器が使用されるが、その嘘はすぐに発覚する。3月の場合、イスラエルのハーレツ紙は状況から反政府軍が使ったと分析、マケインがシリア入りした5月に国連独立調査委員会メンバーのカーラ・デル・ポンテは反政府軍が化学兵器を使った疑いが濃厚だと表明している。状況から考え、デル・ポンテの見方は正しいと推測する人は少なくない。その5月にマケインはシリアへ密入国したわけだ。8月21日にはダマスカス郊外が化学兵器で攻撃され、西側の政府やメディアはシリア政府軍が使ったと宣伝、NATOを軍事介入させようとするのだが、これも嘘を指摘する報道や報告が相次いだ。ガッバード下院議員の主張は当然なのだが、現在、議会で彼女は孤立無援だ。有力メディアも敵に回している。
2017.04.18
4月7日の攻撃でアメリカ軍は駆逐艦のポーターとロスからシリア軍の航空基地に向けて59発のトマホーク巡航ミサイルを発射、ロシア側の主張によると、23発が目標に到達した。攻撃の直後、サウジアラビアのサルマン・ビン・アブドゥルアジズ・アル・サウド国王はドナルド・トランプに電話し、さらなる攻撃のための資金提供をアメリカ政府に申し入れたとイランでは伝えられている。2007年3月5日付けニューヨーカー誌で調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュはアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの「三国同盟」がシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラに対する秘密工作を開始した書いている。その秘密工作が顕在化したのが2011年春だった。ハーシュによると、工作の中心にはリチャード・チェイニー米副大統領、ネオコン/シオニストのエリオット・エイブラムズ国家安全保障問題担当次席補佐官、ザルメイ・ハリルザド、そしてバンダル・ビン・スルタンだという。シリアの場合、この3カ国だけでなくカタール、トルコ、イギリス、フランス、イスラエルなども侵略に参加している。2012年8月の段階でアメリカ軍の情報機関DIAは反シリア政府軍の主力がサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIであり、そうした勢力を西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコの支援を受けているとバラク・オバマ政権へ報告している。。オバマ政権は「穏健派」を支援すると主張していたが、そうした「穏健派」は存在しないと指摘し、その政策を続ければシリアの東部(ハサカやデリゾール)にはサラフ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告していた。それはダーイッシュという形で現実のものになる。この警告を発した当時のDIA局長がマイケル・フリン中将で、トランプは国家安全保障担当の補佐官に指名した。アル・カイダ系武装集団やダーイッシュを危険だとトランプ大統領は認識していると見られたが、2月に辞任に追い込まれた。フリンの後任はデビッド・ペトレイアス元CIA長官の子分と言われているH. R. マクマスターで、このコンビはシリアへ数万人とも15万人とも言われる規模のアメリカ軍をユーフラテス川の渓谷へ侵攻させようと目論んでいると報道されている。シリアへアメリカ軍を侵攻されればロシア軍と衝突する可能性が高い。イラク侵攻の時もネオコンは甘い見通しを振りまいていたが、シリアの場合はイラクで必要だった戦力で済むとは思えない。オバマ政権の政策によって勢力を拡大させたアル・カイダ系武装集団やダーイッシュにとってアメリカが行った巡航ミサイルによる攻撃は精神的な支えにもなっているだろう。そうした武装勢力を資金面から支えてきたのがサウジアラビアやカタールのようなペルシャ湾岸産油国にほかならない。本気で中東の「テロリスト」を根絶する気持ちがあるなら、サウジアラビアを押さえ込まなければならないのだが、石油産業が見え隠れするトランプ政権には難しいだろう。基軸通貨のドルを発行する特権でアメリカは生きながらえているが、サウジアラビアはドルを吸収する仕組みに組み込まれているということも無視できない。サウジアラビアは世界が抱える最大の問題だともいえる。そのサウジアラビアをロシア上院のワレンチナ・マトビエンコ議長を中心とするグループが訪問、サウジアラビア国王は「国際テロリズム」と戦うために協力する必要性を確認したという。「テロリスト支援」を続けているサウジアラビアをロシアが押さえ込めない場合、世界はきわめて危険な状態になるだろう。
2017.04.17
フランスでは4月23日に大統領選挙の第1回投票が予定されている。その投票で過半数の支持を得れば大統領に選出されるが、誰も過半数を獲得できない場合は上位2名補による決選投票が5月7日に実施される。有力候補とされているのは「前進」のエマニュエル・マクロン(社会党のフランソワ・オランド大統領の側近だった人物)、「左翼党」のジャン-リュック・メランション(2008年に社会党から離脱)、「共和党」のフランソワ・フィヨン、「国民戦線」のマリーヌ・ル・ペン。アメリカの軍事侵略、反ロシア政策を支援してきた「社会党」のブノワ・アモンが勝ち残ることは厳しい状況だ。現段階で上位2候補に入る可能性の高い候補は社会党の別働隊的なマクロンと欧米支配層から憎悪されているル・ペン。ここにきて急伸しているメランションを「極左」と表現する人もいるが、かつての社会党に近いと言うべきだろう。極右、極左、中道右派、改革派といったタグは人心を惑わす道具にすぎない。その大統領選で大きな「不手際」が指摘されている。エキスプレス紙によると、フランス国外に住む約50万人が第1回目に2回投票できるという。この「不手際」が注目されている一因は、外国に居住しているフランス人の大半はル・ペンに投票しないと見られているからだ。少なくとも結果として、今回の「不手際」は欧米支配層にとって好ましい出来事だと言えるだろう。
2017.04.16
アメリカ軍は4月13日にアフガニスタンでGBU-43/B(大規模爆風爆弾)を投下、かつてCIAの資金でムジャヒディン(ワッハーブ派/サラフ主義者やムスリム同胞団を中心とする傭兵集団)のために作られたトンネルを破壊したとエドワード・スノーデンに皮肉られている。この爆撃でダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)の戦闘員36名以上を殺害したというが、イラクやシリアではダーイッシュやアル・カイダ系武装集団の幹部をアメリカ軍は救出していると言われ、蛻の殻だった可能性もある。ちなみに、2016年9月17日にアメリカ軍はデリゾールでシリア政府軍を空爆、80名以上の政府軍兵士を殺している。この時はF-16戦闘機2機とA-10対地攻撃機2機が使われた。今回の攻撃の直前、4月11日から12日にかけてアメリカのレックス・ティラーソン国務長官がモスクワを訪問している。ロシア側の説明によると、59発のトマホーク巡航ミサイルで行った攻撃のようなことを繰り返さないと約束したという。もし事実なら、国家安全保障担当補佐官のH・R・マクマスターやその親分にあたるデイビッド・ペトレイアスたちは怒ったことだろう。ティラーソンのモスクワ訪問直後にGBU-43/Bのような爆弾を投下したのはロシアや中国を威嚇すること目的だったように見える。勿論、ロシアや中国がこうしたことで怖じ気づくとは思えないが、ネオコンの発想はおそらく今でも「脅せば屈する」だ。シリア情勢はネオコンの目論見通りに進まず、リビアまでがロシアに助けを求めている。それに対してアメリカは南シナ海、そして朝鮮半島で軍事的な緊張を高めてきた。東アジアでダーイッシュ的な役割を果たしているのは朝鮮。その朝鮮を操って緊張を高めてきたわけだ。その朝鮮を潰すのはアメリカにとって大きな損失だが、破綻国家にして「テロリストの温床」にしようとしている可能性もある。
2017.04.15
アメリカ軍は4月11日、シリア政府軍を「誤爆」、18名の兵士を殺害したという。アメリカ側の説明によると、連携している軍からの要請だったというが、アメリカが連携している国はアル・カイダ系武装勢力やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を支援してきたわけで、「誤爆」ではなかっただろう。12日にアメリカ軍はデリゾールの近くにあったダーイッシュの兵器庫を空爆したが、その際に毒ガスが漏れたとシリア軍は主張している。アメリカ軍はそうした事実はないとしているようだが、ロシア軍はドローンを飛ばして調査しているようだ。本ブログでは繰り返し書いてきたが、2011年10月にリビアではアル・カイダ系のLIFGと連携したアメリカ/NATO軍はムアンマル・アル・カダフィ体制を倒した後、その兵器庫から化学兵器を含む武器/兵器をトルコ経由でシリアへ運び、反政府軍に渡している。アメリカ政府はシリアの「穏健派」を支援してきたと今でも言い張っているが、そうした集団が存在しないことは2012年8月にアメリカ軍の情報機関DIAがホワイトハウスに報告していた。その当時のDIA局長がマイケル・フリン中将である。その8月、バラク・オバマ大統領はシリアに対する直接的な軍事介入のレッド・ラインを生物化学兵器の使用だと宣言した。自分たちが化学兵器をアル・カイダ系武装集団やダーイッシュへ渡していることを知った上での発言だ。リビアからシリアへ武器や戦闘員を運ぶ工作はCIAが主導、国務省が協力していた。その当時のCIA長官は、デイビッド・ペトレイアス、国務省長官はヒラリー・クリントンである。当然のことながら、このふたりは近い関係にある。2012年9月11日にベンガジのアメリカ領事館が襲撃され、クリストファー・スティーブンス大使も殺された。襲撃の前日に大使は武器輸送の責任者だったCIAの人間と会談、襲撃の当日には武器を輸送する海運会社の人間と会っている。つまり大使も工作の当事者だった。襲撃事件から3カ月後、自暴自棄になったシリアのアサド大統領は化学兵器を使う可能性があるとクリントン長官は主張、その翌月、つまり2013年1月29日にデイリー・メール紙はアメリカの偽旗作戦を記事にしている。シリアで化学兵器を使い、その責任をアサド政権に押しつけて非難、国際的な軍事行動へ結びつける作戦をオバマ政権が許可したとするものだった。そして、2013年の3月と8月にそうしたシナリオに近いことが引き起こされる。シリアで化学兵器が使われ、西側の政府やメディアはアサド政権を激しく批判、アメリカ/NATOは直接的な軍事介入をしようとしたのだ。その間、シリア軍が化学兵器を使ったという話は否定され、発射されたミサイルは海中へ落下してしまった。今回、アメリカ軍は調査、取材が始まる前にシリア軍を攻撃した。4月4日に化学兵器が使用されたとされているが、攻撃は7日未明。化学兵器の使用を主張したのはイギリスの情報機関と関係が深い「SOHR(シリア人権監視所)」とアル・カイダ系武装集団やダーイッシュと連携している白ヘルだという。攻撃までの期間が余りに短かったことから、攻撃の準備は4日より前に始まったと思っている人は少なくない。4月11日から12日にかけて、アメリカのレックス・ティラーソン国務長官はロシアを訪問した。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と数時間にわたって話し合った後、ウラジミル・プーチンと2時間ほど会ったようだが、「こうしたことは2度と起こらないようにしろ」と釘を刺されただけのようだ。その前にティラーソンはG7の会議に出席、そこでイギリスのボリス・ジョンソン外相とロシアに対する制裁を強化する演出を目論んだが、失敗したと伝えられている。トランプはネオコンを含むアメリカ支配層の好戦派に妥協、有力メディアや民主党などから歓迎されているが、世界では孤立の度合いを強めている。アメリカ帝国の足下は崩れ始めているように見える。
2017.04.14
シリア軍が化学兵器を使ったとドナルド・トランプ政権は証拠を示すことなく主張、いつものように「自分たちを信じろ」と威圧している。NSC(国家安全保障会議)のスタッフが作成したという4ページの文書をアメリカ政府は公表したが、そこにも証拠、根拠は示されていない。証拠は持っているとも宣伝されているが、公表しない。2003年にイラクを先制攻撃する際に証拠らしきものが示されたが、その結果、嘘が発覚してしまった。そうしたことを反省してのことだろう。だからこそ、アメリカは公正な調査を嫌がる。本ブログでも紹介したが、トランプ政権が持っているという証拠は上空から撮影した写真だと言われているが、傍受された音声だとする話も伝わっている。2013年にもアメリカ政府は化学兵器の使用を理由にして調節的な軍事介入を目論み、その時も通信の音声を示したが、これもインチキだということが明らかになったと言われている。岩や切り株などを装った電子機器の存在は昔から指摘されている(例えばココ)が、2013年には中継器が使われていたという。そうした機器を使い、シリア軍が化学兵器を使ったような偽会話を流して「確かな証拠」にしようとしたのだが、この中継器は発見され、国連にも提出されたと言われている。そうした機器をシリア国内に設置した工作員を乗せた潜水艦をシリア軍が沈没させたと主張する人びともいる。今回も2013年と同じ手口が使われ、NATO加盟国にはそうした音声が示されたという情報も流れている。情報機関の内部から漏れてきた情報によると、衛星写真はシリア軍が化学兵器を使っていないことを示しているようで、それを「証拠」とするにはフォトショップあたりで加工する必要がある。中継器を使って作成した音声が「証拠」として使われたとしても、NATOの幹部は嘘を見抜くだろう。そのうえで信じた振りをする。そうでなければ収入と地位、場合によっては命を失ってしまうからだ。他国における破壊と殺戮より、そうした個人的な利益が大事だと考えている「エリート」は少なくないだろう。
2017.04.13
レックス・ティラーソン国務長官のロシア訪問に合わせ、シリア軍が化学兵器を使ったとする4ページの文書をアメリカ政府は公表した。NSC(国家安全保障会議)のスタッフが作成したとされているが、いつものように証拠は示されていない。情報源や情報の収集法法を隠すためだというのだが、その主張の根拠とされているのは上空から撮影した写真だとされ、隠す理由はない。実際、これまでは公表されてきた。ジャーナリストのロバート・パリーによると、彼の情報源からその写真に写っているのは戦闘機でなくドローンだという説明を受けたという。そのドローンが飛び立った場所はヨルダンの基地。そこはサウジアラビアとイスラエルによる作戦の拠点になっている。3月にドナルド・トランプ政権がバシャール・アル・アサド大統領の排除する目論見を放棄すると表明したことが毒ガス攻撃の理由だと疑われているようだ。この文書が公表された後、ロシアのウラジミル・プーチン大統領は証拠が示されていないと発言、イタリアのセルジョ・マッタレッラ大統領と行った共同記者会見では、4月4日の有毒ガス流出事件を偽旗作戦だと言い切り、さらなる化学兵器による攻撃が計画されていることをつかんでいると語っている。プーチン大統領はアメリカ政府に強い不快感を表明、ロシアを訪れたティラーソン長官に対してセルゲイ・ラブロフ外務大臣も厳しく対応、ティラーソン長官と会わないのではないかとも見られていたが、最終的に会談したようだ。ネオコンは2014年にソチで開催された冬期オリンピックに合わせ、ウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを実行したが、その前年の7月、プーチン大統領をオリンピック絡みで脅した人物がいる。サウジアラビアの総合情報庁長官を務めていたバンダル・ビン・スルタンだ。プーチン大統領との会談でスルタンはロシアにシリアから手を引かせようとする。手を引けば、つまりバシャール・アル・アサドを見捨てればオリンピックの安全を保証できると持ちかけたというのだ。当時、チェチェンの反ロシア武装グループはオリンピックでの破壊活動を行うとしていた。シリアから手を引かなければオリンピックを攻撃させるとスルタンは脅したとプーチンは理解、その提案を拒否した上で、「ここ10年の間、チェチェンのテロリスト・グループをあなたたちが支援していることを知っている」と言い放ったという。ロシアに対する脅しは逆効果になる。それをトランプ政権は学ばず、今回も武力で脅したわけである。そしてロシア政府を怒らせた。シリアを攻撃する一方、アメリカ政府は朝鮮を威嚇するために空母カール・ビンソン中心とする艦隊を朝鮮半島の近くへ派遣したが、海上自衛隊はその艦隊に数隻の駆逐艦を合流させようとしていると伝えられている。中国も朝鮮の行動に怒っているようだが、アメリカと中国が本当に見ているのは朝鮮でないだろう。両国が朝鮮を本気で相手にしているとは思えない。アメリカは中国を挑発している可能性が高い。そこへ自衛隊が入っていく危険性を認識しているのだろうか?
2017.04.13
アメリカのレックス・ティラーソン国務長官がロシアを訪問する直前、ロシアのウラジミル・プーチン大統領はイタリアのセルジョ・マッタレッラ大統領との共同記者会見に臨んでいる。その席上、4月4日の有毒ガス流出事件は偽旗作戦だと明言、さらなる化学兵器による攻撃が計画されていると語っている。今回の毒ガス事件にシリア政府は責任がなく、それに続いて4月7日に実行されたアメリカ軍によるシリア軍の空軍基地攻撃に正当性がないことはCIAも認めていることだが、それをプーチンが口にしたことは興味深い。プーチンはティラーソン長官と会談もしない。ジャーナリストのロバート・パリーによると、マイク・ポンペオCIA長官は分析部門の評価に基づき、4月6日、つまり巡航ミサイルによる攻撃の前日に、バシャール・アル・アサド大統領は致死性毒ガスの放出に責任はなさそうだとドナルド・トランプ大統領に説明していたという。化学兵器がシリアの反政府軍、つまりアメリカなどNATO諸国、サウジアラビアなどペルシャ湾岸産油国、そしてイスラエルなどが送り込んだアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)が保有するようになるのは遅くとも2011年10月にリビアのムアンマル・アル・カダフィ政権が倒された後。CIAはリビアから武器をトルコ経由でシリアの反政府軍へ秘密裏に運ぶのだが、その中に化学兵器も含まれていた。そうした工作の拠点がベンガジにあるCIAの施設で、アメリカ領事館も重要な役割を果たし、2012年9月10日にはクリストファー・スティーブンス大使がCIAの工作責任者と会談、その翌日には海運会社の代表と会っている。その直後にベンガジの領事館が襲撃されて大使は殺されたわけだ。その当時のCIA長官がデイビッド・ペトレイアスであり、国務長官がヒラリー・クリントンだった。襲撃の前月、つまり2012年8月にバラク・オバマ大統領はシリアに対する直接的な軍事介入のレッド・ラインは生物化学兵器の使用だと宣言、その年の12月にクリントンは「自暴自棄になったシリアのアサド大統領は化学兵器を使う可能性がある」と主張、13年1月になると、イギリスのデイリー・メール紙はアメリカの偽旗作戦に関する記事を掲載している。シリアで化学兵器を使い、その責任をアサド政権になすりつけて非難、国際的な軍事行動につなげようという作戦をオバマ政権が許可したというのだ。そして2013年3月と8月に化学兵器が使われたと西側の政府や有力メディアは叫び、軍事介入へ突き進もうとする。勿論、この時に化学兵器を使ったのは反政府軍だった可能性がきわめて高い。その辺の事情は本ブログでも繰り返し書いてきたことなので、今回は割愛する。イワンカの影響で攻撃を命じたとトランプの息子、エリックは語っているのだが、CIAが責任はないとしているシリア軍を娘の頼みで攻撃したということになってしまう。大統領がそれほど愚かだとは思えない。安全保障に関係した情報をトランプ大統領に説明しているのはH. R. マクマスター国家安全保障補佐官。大統領にシリアを攻撃させたのはこの人物だろう。前にも書いたが、マクマスターはペトレイアス元CIA長官(2011年9月〜12年11月)の子分だと言われている。このペトレイアスはエル・サルバドルの汚い戦争に影響を受けている人物で、中央軍司令官、ISAF司令官兼アフガニスタン駐留アメリカ軍司令官、そしてCIA長官に就任した。リチャード・チェイニー元副大統領やヒラリー・クリントンに近いことでも知られ、現在でもNSC(国家安全保障会議)に大きな影響力を持っているという。しかも、マクマスターとペトレイアスはシリアへ15万人規模のアメリカ軍を侵攻させようと目論んでいると言われているのだ。しかし、この侵略計画が成功する可能性は小さい。通常兵器の戦争ではロシアが圧倒すると言われているからだ。プーチン体制になってロシアの軍事力が立て直されているのに対し、アメリカではソ連消滅で自分たちが唯一の超大国になったと思い込み、軍事力は単なるカネ儲けの仕組みになってしまった。その象徴が「空飛ぶダンプカー」とも呼ばれるF-35戦闘機だろう。開発コストはうなぎ登りだが、模擬空中戦でF-16に完敗したと伝えられている。戦術も戦争ビジネスを儲けさせるように変更された。そうした現実が明確になったのは2015年9月30日以降。ロシア軍がシリア政府の要請で軍事介入、アメリカ、サウジアラビア、イスラエルなどが支援しているアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を敗走させているのだが、その中でロシア軍の戦闘力が高いことを見せつけているのだ。ロシア軍はシリアで軍事作戦を始めた直後、カスピ海の艦船から26基の巡航ミサイルを発射、全てのミサイルが約1500キロメートル離れた場所にあるターゲットに2.5メートル以内の誤差で命中したとされている。その後、地中海に配置されている潜水艦からもミサイル攻撃を実施したという。ロシア軍がこうした兵器を保有していることを知らなかったようだ。こうした兵器を使用したひとつの理由は、戦争でアメリカは勝てないということを示すことにあったと見られている。そのほか、海底1万メートルを時速185キロメートルで進み、射程距離は1万キロに達するという戦略魚雷に関する情報が「誤って」外部に漏れるということもあった。この新型魚雷は空母を沈められるだけでなく、海岸線にある都市を破壊することができる。勿論、日本の原発はひとたまりもない。S-300やS-400といったロシアの防空システム、あるいはマッハ6.2で飛行し、命中精度は5〜7メートルという地対地ミサイルのイスカンダル、亜音速から最終的にはマッハ2.5から2.9という超音速でターゲットへ向かうカリブル巡航ミサイルも話題になっている。4月7日の攻撃でアメリカ軍は駆逐艦のポーターとロスから59発のトマホーク巡航ミサイルを発射、ロシア側の主張によると、23発が目標に到達したという。この数字は正しいようだ。つまり36発は途中で消えた。アメリカ軍はS-400の迎撃をさけるため、トマホークはレバノン上空を通過させたようだが、そのうち5発は途中、地上に落下、残りは地中海に落ちたと見られている。ECM(電子対抗手段)や防空システムが使われたようだ。S-300やS-400などはロシア軍の防衛を優先していると言われ、今回はシリア軍の施設が攻撃されたことから、実際に使われたかどうかは不明だ。2013年の場合はこれほど多くのミサイルは発射されなかったのでシリアへ到達しなかった可能性が高い。今後、ロシアやシリアはECMや長距離の防空システムを強化するだけでなく、中距離や短距離の防空システム、あるいは携帯型のシステム、機銃などの配備を進めると言われている。そこで、ネオコンはロシアや中国を相手に、核戦争のチキン・ゲームを行っている。狂犬を装って恐怖を感じさせたり、暴力的な手段で脅せば屈すると彼らは信じている。拳銃やナイフを振りかざせば誰でも言うことを聞くという三文ドラマのようなシナリオだが、ロシアや中国には通用しない。
2017.04.12
東京琉球館で4月15日18時からCOGプロジェクトについて話す予定ですが、その前に最近の国際情勢に触れたいと思っています。ドナルド・トランプ政権内の権力バランスが変化していることに加え、シリアに対する直接的な軍事介入を実行するという事態になっているからです。なお、予約制とのことですので、興味のある方は下記まで連絡してください。東京琉球館住所:東京都豊島区駒込2-17-8電話:03-5974-1333http://dotouch.cocolog-nifty.com/
2017.04.11
ドナルド・トランプ大統領はCIAの分析部門が提供した情報を無視してシリアに対する直接的な軍事介入を始めた。そのトランプに偽情報を提供しているのが国家安全保障担当補佐官のH. R. マクマスターのようである。バラク・オバマ政権の政策はワッハーブ派/サラフ主義者やムスリム同胞団、つまりアル・カイダ系武装集団を育て、シリア東部をその支配地にすると警告していたマイケル・フリンの後任だ。マクマスターはデビッド・ペトレイアスの子分として有名で、このコンビはシリアへ15万人規模のアメリカ軍を侵攻させようと目論んでいると言われている。当然、ロシア軍と全面衝突になり、核戦争になる可能性は小さくない。そうしたビジョンを実現するため、彼らにとって都合良く加工された情報をマクマスターはトランプに提供しているようだ。フリンの解任は人類の運命を左右する大きな出来事だったと言えるかもしれない。ペトレイアスは中央軍司令官、ISAF司令官兼アフガニスタン駐留アメリカ軍司令官、そしてCIA長官に就任した軍人でリチャード・チェイニー元副大統領やヒラリー・クリントン元国務長官に近い。つまりネオコン。現在でもNSC(国家安全保障会議)に大きな影響力を持っているという。そのペトレイアスはエル・サルバドルの「汚い戦争」から大きな影響を受けている。1986年に同国を訪問、そこで特殊部隊のジェームズ・スティールと出会うのだが、この人物はアメリカ支配層にとって都合の悪い人物を殺していた「死の部隊」の黒幕だった。スティールはネオコンのポール・ウォルフォウィッツともつながりがあり、2003年にアメリカがイラクを先制攻撃、サダム・フセイン体制を倒した後からイラクへ渡っている。チェイニーと近いドナルド・ラムズフェルド国防長官(当時)が彼を派遣、ジョン・ネグロポンテ駐イラク大使(同)の下で特殊警察コマンドの訓練をするようになる。ネグロポンテは1981年から85年にかけてホンジュラス駐在の大使を務めているが、この国は中央アメリカでCIAが行っていた秘密工作の拠点だった。アメリカはエル・サルバドルとイラクで同じことを行っている。両者で違うのはイメージ戦略にすぎない。
2017.04.11
シリアのイドリブで毒ガスが4月4日に漏れたと言われている。アメリカ政府は証拠を示すことなく、調査もせず、シリア政府軍が化学兵器を使ったと叫びながら7日にはホムスにあるシリア軍の航空基地をトマホーク巡航ミサイルを攻撃した。59発のミサイルが2隻の駆逐艦、ポーターとロスから発射され、ロシア側の主張によると、23発が目標に到達したという。2013年にもアメリカ政府はシリア軍による化学兵器の使用を口実にして直接的な軍事介入を目論んでいる。アメリカ/NATOとアル・カイダ系武装集団の連携で体制を転覆させるというシナリオで、9月3日には地中海からシリアへ向かって2発のミサイルが発射されている。そのミサイルは途中で海中へ落下、後にイスラエル国防省はアメリカと合同で行ったミサイル発射実験だったと主張したが、実際に攻撃を始めたとも見られている。事前に通告はなく、発射実験だとする主張に説得力がないからだ。ジャミングなど何らかの手段で落とされたと推測する人もいる。今回、アメリカ軍は59発のミサイルをほぼ一斉に発射している。ロシアの説明が正しいならば、その半数以上が目標に到達できなかったわけだ。2013年の反省から、シリア側の防空システムをかいくぐるため、60発近いミサイルを一気に発射した可能性がある。かつてシリア軍も化学兵器を保有していたが、2013年に廃棄したことは国連の査察官も認めていること。それ以降、シリアで化学兵器を保有しているのはアメリカ/NATO、サウジアラビア/ペルシャ湾岸産油国、イスラエル、トルコなどが支援してきたアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)。アル・カイダ系武装集団やダーイッシュの戦闘員の主体はワッハーブ派/サラフ主義者やムスリム同胞団だが、シリア政府軍と戦っている相手はこうした集団だとする報告書をマイケル・フリンが局長だった時代のDIAはホワイトハウスへ報告している。2012年8月のことだ。2013年12月に公表された調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュの記事によると、反シリア政府軍(国外から侵入した戦闘集団)はサリンの製造能力を持ち、実際に使った可能性があるとしている。それだけでなく、2011年10月にリビアでムアンマル・アル・カダフィ体制が倒された後、戦闘員だけでなく武器/兵器がトルコ経由でシリアへ運び込まれたとハーシュは報告している。その工作の拠点がベンガジにあったCIAの施設で、クリストファー・スティーブンス大使も工作に参加していた。2012年9月11日にベンガジのアメリカ領事館が襲撃され、大使も殺されているが、その前日にスティーブンスは武器輸送の責任者だったCIAの人間と会談、襲撃の当日には武器を輸送する海運会社の人間と会っていたという。その当時、CIA長官だったのがデイビッド・ペトレイアスであり、国務長官はヒラリー・クリントンだ。ペトレイアスもクリントンも化学兵器が反シリア政府軍の手に渡ったことを知っていたはずで、オバマも自分たちが支援している戦闘集団がアル・カイダ系武装集団やダーイッシュだということを2012年8月に知らされていた。そのオバマは2012年8月20日、シリアに対する直接的な軍事介入のレッド・ラインは生物化学兵器の使用だと発言している。その年の12月5日にクリントンは、自暴自棄になったシリアのバシャール・アル・アサド大統領が化学兵器を使う可能性があると主張している。そして2013年1月29日、イギリスのデイリー・メール紙は興味深い記事を掲載している。シリアで化学兵器を攻撃に使い、その責任を政府軍になすりつけ、国際的な軍事行動に拍車をかける作戦はホワイトハウスは承認したというのだ。これはイギリスを拠点とするブリタム防衛なる会社のデイビッド・グールディング部長から同社を創設したフィリップ・ダウティへ宛てた電子メールの中に書かれていたという。そして同年3月と8月に西側の政府やメディアはシリアで化学兵器が使用されたと宣伝、その嘘が暴露されたわけだ。この辺の事情は本ブログでも採算書いてきたので、今回は割愛する。それから4年、アメリカは同じことを繰り返したように見える。ただ、修正した点はあるようだ。シリア政府軍側で使わず、ロシア側に衛星写真を撮られてしまうので自分たちのミサイルは使わっていない。それでもアメリカ側の主張に説得力はない。この問題に少しでも興味のある人なら、アメリカ側の説明を信じないだろう。それでも強行した。そうした行動に駆り立てた一員はリビア情勢にあるかもしれない。イラクを先制攻撃する口実に大量破壊兵器(核兵器)という作り話が使われたが、今回は化学兵器だ。そうした演出をするのは、自分たち(アメリカ、イギリス、フランス、トルコ、サウジアラビア、カタール、イスラエルなど)が編成、訓練し、武器や資金を提供してきたアル・カイダ系武装集団やダーイッシュでは体制を転覆させられないからだ。イラクは勿論だが、ウクライナと同様、リビアもシリアもアメリカなどの侵略であり、これを「内戦」と表現すること自体が犯罪的である。2017年4月5日、リベラル派の権威、あるいはスターとして知られているノーム・チョムスキーのインタビューをデモクラシー・ナウは流したが、その中で彼はアサド体制は道徳的に不健全だとしたうえで、彼らは恐ろしいことを行い、ロシアが手を貸していると主張した。カタールやサウジアラビアが「聖戦グループ」を支援していることには触れたが、アメリカやイスラエルなどとの関係は語らない。つまり戦争の本質から目をそらしていたチョムスキーが振らなかった侵略の黒幕はシリアをリビアと同じような状態にしようとしている。そのリビアはカダフィ体制が破壊されてから破綻国家になり、ダーイッシュが跋扈している。そうした中、リビアのカリファ・ハフター司令官はロシアを訪問、ダーイッシュと戦うための支援を要請、今年の3月にはロシア軍の特殊部隊がエジプトのリビアに近い地域に派遣されたと伝えられた。カダフィ体制の破壊に成功したと思っていたリビアでロシアが影響力を強める可能性が出てきたのだ。強引であろうと、ロシアの動きを止めなければならないとアメリカの支配層が考えたとしても不思議ではない。アメリカの支配層は追い詰められているとも言える。
2017.04.11
アメリカ軍がシリアの軍事空港をトマホーク巡航ミサイルで攻撃したのは4月7日。その時の様子を見ているドナルド・トランプたち政府の幹部の写真が公表されている。誰かと誰かがにらみ合っている、といったことも話題になっているようだが、それ以上に深刻な話がこの写真には隠されているようだ。マイク・ポンペオCIA長官やダン・コーツ国家情報長官の姿が見えないのはなぜか、ということだ。かつてコントラの麻薬取引を明るみに出したことで有名なジャーナリスト、ロバート・パリーによると、彼の情報源は次のように語っている:4月6日にポンペオCIA長官は分析部門の評価に基づき、致死性の毒ガスが環境中に放出された事件にバシャール・アル・アサド大統領は責任がなさそうだとトランプ大統領に説明していた。その情報を知った上でトランプ大統領はロシアとの核戦争を招きかねない攻撃を命令したわけである。リビアやシリアの体制を転覆させるため、アメリカ、サウジアラビア、イスラエルをはじめとする国々は1980年代の戦術を採用した。アル・カイダ系武装集団を編成、侵略の手先として使うというものだ。リビアの場合、そのアル・カイダ系武装集団LIFGをNATOが空爆で支援、目論見は成功した。同じようにシリアの体制も倒そうとしたようだが、その前にロシアが立ちふさがる。そして登場してくるのがダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)だ。2014年1月にファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にファルージャやモスルを制圧して名を知られるようになった。その際、トヨタ製の真新しい小型トラック「ハイラックス」を連ねた「パレード」を行い、その様子を撮影した写真が配信されたことも有名になった一因である。2012年8月の段階でダーイッシュ的な武装集団の出現と勢力拡大をバラク・オバマ政権に警告していたのがアメリカ軍の情報機関DIA。当時の局長がマイケル・フリン中将だ。報告書では東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフ主義者の支配国が作られる可能性があると書かれている。オバマ政権は「穏健派」が相手だとして反シリア政府軍への支援を続けていたが、反シリア政府軍の主力はサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIだとDIAは報告している。ダーイッシュを生み出し、勢力を拡大させたのはオバマ政権の政策だとフリンもアル・ジャジーラの番組で語っている。DIAやCIAの報告を大統領に無視させたのはネオコンだと言えるだろう。今回の巡航ミサイルによる攻撃もジョン・マケインやヒラリー・クリントン、あるいは有力メディアは歓迎しているが、彼らは事実を尊重しない。欲望に任せて侵略を続けるだけだ。理性に訴えようとしても無駄だということでもある。これまで粘り強く話し合いで問題を解決しようとしてきたウラジミル・プーチン露大統領だが、限界が近づいているだろう。
2017.04.10
アメリカ軍がシリアの軍事空港を59発の巡航ミサイル(トマホーク)で攻撃した後、ロシア、シリア、イランは防空体制の強化に乗り出したようだ。S-300やS-400のような長距離対空ミサイル・システムだけでなく、中距離や短距離の防空システム、あるいは携帯型のシステム、機銃などの配備を進めるようだ。シリアの北部ではすでに政府軍がアメリカ軍の偵察機を領空外へ追い出すため、警告の銃撃掃射を行ったとも伝えられている。こうした攻撃の口実としてアメリカ政府はシリア政府軍による化学兵器の使用を主張していた。当初、ロシア側はシリア軍がアル・ヌスラ(アル・カイダ系武装集団)の倉庫を爆撃、そこに保管されていたガスが漏れたと説明したが、シリア政府側は攻撃していないと主張、爆発の後に偵察機を飛ばしただけだとしていた。本当に化学兵器が漏れたのかどうかも含め、本来なら詳しい調査をしなければならないのだが、その前にアメリカは攻撃した。これまでアメリカは「化学兵器」をシリア攻撃の口実に使おうとしてきた。例えば、本ブログではすでに紹介済みだが、2013年1月29日にイギリスのデイリー・メール紙は、「シリアにおいて化学兵器を使い、アサド政権を非難、国際的な軍事行動に拍車をかける作戦をオバマ政権は認めた」と伝えている。その2カ月後、アレッポで化学兵器が使われたが、攻撃から間もない段階でイスラエルのハーレツ紙は状況から反政府軍が使ったと分析、また国連独立調査委員会メンバーのカーラ・デル・ポンテも反政府軍が化学兵器を使用した疑いは濃厚だと発言している。その5カ月後、8月にはダマスカスの郊外が化学兵器で攻撃され、例によって西側の政府やメディアはシリア政府軍が使ったと宣伝、NATOを軍事介入させようとするのだが、ロシア政府がすぐ反論したほか、化学兵器とサウジアラビアを結びつける記事が現れ、ゴータで化学兵器を使ったのはサウジアラビアがヨルダン経由で送り込んだ秘密工作チームだという話も流れた。その年の12月になると、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュもこの問題に関する記事を発表、反政府軍はサリンの製造能力を持ち、実際に使った可能性があるとしている。国連の元兵器査察官のリチャード・ロイドとマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授も化学兵器をシリア政府軍が発射したとするアメリカ政府の主張を否定する報告書を公表している。ミサイルの性能を考えると、科学的に成り立たないという。さらに、こうした化学兵器の使用について、トルコの国会議員エレン・エルデムらは捜査記録などに基づき、トルコ政府の責任を追及している。化学兵器の材料になる物質はトルコからシリアへ運び込まれ、そこでIS(ISIS、ISIL、ダーイシュなどとも表記)が調合して使ったというのだ。この事実を公表した後、エルデム議員らは起訴の脅しをかけられている。アメリカ軍がシリアを巡航ミサイルで攻撃したのは4月7日のことだったが、その2日前、リベラル派として知られているノーム・チョムスキーはデモクラシー・ナウに出演、アサド体制は道徳的に不健全だ。彼らは恐ろしいことを行い、ロシアが手を貸していると主張した。カタールやサウジアラビアが「聖戦グループ」を支援していることには触れたが、アメリカやイスラエルなどとの関係は語らない。つまり戦争の本質から目をそらしていた。シリアでの戦争は「内戦」でなく「侵略」であり、侵略の中心がアメリカにほかならない。ホワイトハウスの報道官、シーン・スパイサー説明によると、事前にロシアへ攻撃を通告したのは軍のチャンネルだった。アメリカ政府でロシアとの核戦争を避けようとしているのは軍だけのようだが、「リベラル派文化人」も好戦派に仲間入りしたのだろうか?
2017.04.10
アメリカ軍がシリアの空軍基地をトマホーク巡航ミサイルで攻撃した後、ニッキー・ヘイリー国連大使はさらにシリアを空爆する用意があると国連で発言した。例によってアメリカは証拠を示すことなく「自分を信じろ」と言うだけ。説得力はない。2013年にシリア政府が化学兵器を廃棄したことは国連の調査官も認めていることで、化学兵器を使用する理由もない。本ブログでも紹介したように、現在、化学兵器を保有しているのはアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)。アメリカ、サウジアラビア、イスラエルなどが支援する勢力だ。ちなみに、今回の攻撃で最初に歓迎の意を示したのはサウジアラビア、次いでイスラエルとトルコだった。ジョン・マケインやリンゼー・グラハムのような民主党のネオコン議員は今回の攻撃を賞賛しているが、ヒラリー・クリントンの場合、攻撃の数時間前、トランプ大統領に対してシリア政府軍が使っている空港を使えなくするように要求していたという。クリントンが望むことをトランプは実行したことになる。これまでロシア政府はアメリカ側の挑発に乗らず、自重してきた。そこで侮っているのかもしれないが、それはいつか限界がくる。今回、ロシアの国防省とアメリカのペンタゴンとを結んでいたホットラインは切られた状態のようで、地中海に入ったロシア海軍のフリゲート艦「グリゴロビチ提督」もアメリカ海軍の艦船と対峙することになるだろう。このフリゲート艦に積まれたカリブル巡航ミサイルは亜音速から最終的にはマッハ2.5から2.9という超音速で飛行、アメリカの艦船にとっては脅威になる。ところで、アメリカによる巡航ミサイルの攻撃に対し、シリア側の防空システムは機能していない。目標になった空軍基地にS-300やS-400は配備されていなかったというが、イスラエル空軍による攻撃に対しても稼働していない。役立たずなのか、スイッチが切られているのだろうが、スイッチが切られていたのなら、今後は侵入機を撃墜する可能性がある。1991年1月にアメリカ軍主導でイラクを先制攻撃、2月まで戦争は続いた。この際、ジョージ・H・W・ブッシュ政権はサダム・フセインを排除せずに停戦、ポール・ウォルフォウィッツ国防次官などネオコンは怒るが、その際にソ連軍が出てこなかったことから単独で軍事力を行使できると考えるようになった。ソ連消滅後、核兵器は「使える兵器」になったとも考えたようだ。1992年2月、ウォルフォウィッツたちネオコンは国防総省のDPG草稿という形で世界制覇プランを作成する。いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンだ。アメリカは「唯一の超大国」であり、どの国も脅せば屈するという発想で動き始める。1990年代、ボリス・エリツィン時代のロシアは西側巨大資本の属国だったが、21世紀になるとウラジミル・プーチンが再独立に成功、ウォルフォウィッツ・ドクトリンの基盤は崩れる。それにもかかわらずネオコンはドクトリンを推進、核戦争の危機が高まっているわけである。そうした状況を危険だと考える人はアメリカ支配層の内部にも現れたが、ドナルド・トランプ政権はネオコンに制圧されたようで、危機は再び高まっている。ヘイリー大使の発言はそれを象徴している。
2017.04.09
アメリカ軍は4月7日、シリアの軍事施設に59発の巡航ミサイル(トマホーク)を撃ち込んで23発が目標に命中、シリア軍にダメージを与えた。そうした状況を利用し、パルミラ周辺ではダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)が反撃に出ていると伝えられている。2015年9月30日にロシア軍が空爆を始めてからアル・カイダ系武装勢力やダーイッシュの支配地域は急速に縮小、戦争の終結も近づいたと見られていた。そこでアル・カイダ系武装勢力やダーイッシュに替わってアメリカ軍が要衝へ入ってシリア軍の進撃を阻止する体制を整えていた。CIAが新たな戦闘集団を編成しているとも伝えられていたが、今回の巡航ミサイルによる攻撃は、そうした動きに連動している可能性がある。シリア政府軍が化学兵器を保有していないことは西側の政府もメディアも承知しているはずで、今回のシナリオは嘘がばれることを承知で叫んでいる。2013年にも化学兵器の使用を口実にシリアへアメリカ/NATOは直接的な軍事介入をしようと試みたが、その時は攻撃から1週間ほどでアメリカ側の嘘が指摘されはじめた。今回、化学兵器使用が話題になってすぐにアメリカ軍は攻撃した理由はその辺にあるだろう。本ブログでも紹介したように、昨年8月、マイク・モレル元CIA副長官(2011年7月1日から9月6日、12年11月9日から13年3月8日の期間は長官代理)はチャーリー・ローズのインタビューでロシア人やイラン人に代償を払わせるべきだと語り、司会者からロシア人とイラン人を殺すという意味かと問われるとその通りだと答えている。この発言の後、射殺を含め、ロシアの幹部外交官が相次いで急死、ウラジミル・プーチンの専属ドライバーは尋常でない交通事故で死亡している。乗っていた大統領専用車は大破した。この段階でアメリカの支配層はロシアと戦争を始めたと見る人もいる。すでにアメリカはドルという基軸通貨を発行する特権で生きながらえる国になっている。その地位を維持するためにドルを回収する仕組みとして産油国にドル決済を要請、そうした国々を軍事的に守り、その支配層の地位を保証するという取り引きをしている。いわゆるペトロダラーだ。さらに、金融の規制緩和で投機市場を肥大化させ、ドルを吸収してきた。その仕組みが中国やロシアのドル離れで揺らいでいる。サウジアラビアは原油価格の下落や軍事侵略で財政赤字が深刻化、アメリカは救済せざるをえない。そのサウジアラビアがカネと戦闘員を供給、アメリカ/NATOが兵器を提供して戦闘員を訓練してきたのがアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ。イスラエルも支援してきた。政権が交代してもアメリカはロシアや中国との戦争へ向かわざるをえなくなっている。
2017.04.08
シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すため、シリア国内で化学兵器を使用し、その責任をシリア政府になすりつけて軍事侵略を正当化しようという偽旗作戦をバラク・オバマ政権が許可したとイギリスのデイリー・メール紙が報道したのは2013年1月29日のことだった。3月中旬になると、アメリカ、イギリス、フランスが反アサド軍の戦闘員を集め、ヨルダンで訓練していると報道されているが、その直後の3月19日にアレッポで化学兵器が使用されたと言われている。ところが、その5日後になるとイスラエルのハーレツ紙は化学兵器を使ったのは政府軍ではなく反政府軍だった可能性が高いと報道、5月になると攻撃を調べていた国連の独立調査委員会のメンバー、カーラ・デル・ポンテも政府軍でなく反政府軍が使用した可能性が高いと発言する。それほど3月の偽旗作戦は稚拙だったということだ。最初の攻撃から5カ月後、8月21日にダマスカスに近いゴータで再び化学兵器が使用され、アメリカをはじめとする西側の政府や有力メディアはシリア政府に責任をなすりつける宣伝を展開したが、29日にはサウジアラビアが化学兵器を反政府軍に提供したと報道されている。その間、ロシア政府はロシアのビタリー・チュルキン国連大使は反シリア政府軍が支配しているドーマから2発のミサイルが発射され、ゴータに着弾したと国連で説明、その際に関連する文書や衛星写真が示されたとジャーナリストがフェースブックに書き込んでいる。このチュルキンは今年2月20日、心臓発作で急死している。その後も調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュ、あるいは国連の元兵器査察官のリチャード・ロイドとマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授たちがアメリカ政府の主張を否定する報告をした。ハーシュのレポートによると、マーチン・デンプシー議長時代の統合雄参謀本部やマイケル・フリン局長時代のDIAはアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を危険な存在だと認識、そうした勢力を支援していたオバマ政権と対立していたことも明らかにしている。そのフリンは2014年8月7日、デンプシーは15年9月25日に任を解かれた。ネオコンなど好戦派は軍を押さえ込み、ロシアとの戦争へ驀進している。すでにアメリカはドルという基軸通貨を発行する特権で生きながらえている状態で、そのドルを支える仕組みに組み込まれているサウジアラビアは石油価格の下落や侵略戦争の泥沼化で財政は厳しい状況になっている。このまま進めばアメリカにしろサウジアラビアにしろ、支配システムが崩壊するのは時間の問題になっている。19世紀にイギリスは経済の破綻を中国への軍事侵略(アヘン戦争)で何とか乗り切ったが、アメリカも同じことを目論んでいるのだろう。
2017.04.07
シリアのイドリブで化学兵器が使われ、多くの住民が殺されたという話の出所は「西側御用達」の白ヘルと「SOHR(シリア人権監視所)」のようだ。白ヘルの責任者であるラエド・サレーはアメリカへの入国を拒否された人物で、創設者のジェームズ・ル・メジャーはイギリスの元軍人で、傭兵会社のブラックウォーター(後にXe、さらにアカデミへ名称変更)で働いていたことがあり、アメリカ政府やイギリス政府から資金が提供されている。2016年4月27日、アメリカ国務省の副スポークスパーソンだったマーク・トナーは白ヘルがUSAIDから2300万ドル受け取っていることを認めている。またSOHRは2006年にイギリスで設立された小規模な「団体」で、設立当時からCIAやイギリスの情報機関MI6が背後にいると指摘されていた。この白ヘルがアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)と緊密な関係にあることも有名だ。(例えば、ココやココやココ)白ヘルの「医療行為」に疑問を表明している医師もいる。もし生きている人間に行ったら殺してしまうようなことをしているというのだ。2013年の時にも言われたが、アメリカなどの支援を受けたアル・カイダ系武装集団は子どもを拉致、それを犠牲者に仕立て上げている疑いもある。
2017.04.07
ヒラリー・クリントンが2013年にゴールドマン・サックスで発言:朝鮮がミサイル開発を進めたなら中国へアメリカはミサイルの標的にする。中国を標的にするため、朝鮮にミサイル開発を進めさせるとも聞こえる。イラクを先制攻撃する口実にするため、アメリカの有力メディアは「大量破壊兵器」という嘘を広めた。そうした記事を書いたひとり、ニューヨーク・タイムズ紙のマイケル・ゴードンは調査もせず、シリア政府が化学兵器を使用したとする話を垂れ流し。
2017.04.07
ドナルド・トランプ大統領は4月5日、首席戦略官のステファン・バノンをNSC(国家安全保障会議)から追い出した。メディアからは「極右」のタグをつけられていたが、そうしたタグが当てにならないことは言うまでもない。これまでバノンはグローバル化、つまり資本の移動制限をなくし、生産拠点を労働環境の劣悪、つまり生産コストが安い国々へ移動させてきた勢力を批判、こうした主張が支配層から嫌われる原因になっていた。「極右」というタグで何かを理解した気になるのは危険だ。トランプ政権ではロシアとの関係正常化を訴えいてたマイケル・フリン国家安全保障担当補佐官が2月13日に辞任、その一方でネオコンとの関係を強めているようだ。例えば、イスラエルと緊密な関係にあり、ロシアへの憎悪を剝き出しにしているニッキ・ハーレーを国連大使に据え、筋金入りの親イスラエル派でヨルダン川西岸への入植を支援してきたデイビッド・フリードマンをイスラエル駐在大使に指名した。そうした中、シリアではイドリブで化学兵器が使われ、アメリカ、イギリス、フランス、イスラエルといった国々は調査もしない段階でシリア政府を激しく罵倒、ハーレー大使は国連に対し、アメリカの命令に従わなければ単独行動に出ると脅した。これは1992年2月に作成されたウォルフォウィッツ・ドクトリンの考え方だ。本ブログでも紹介したが、少し前に新たな戦闘集団をCIAは編成しているという話が流れていたが、そうした動きと今回の化学兵器の問題は関係しているかもしれない。現在、流れている未確認情報によると、4月2日頃、トルコからシリアのハマへ向かった車列があり、そこには対戦車ミサイルTOWのほか、ガスマスクを含む化学戦用の防護服が積まれていたという。その途中、イドリブに立ち寄り、そこの武器庫に保管されていた化学兵器を積み込んでハマへ向かい、そこで使用する予定だったともされている。ロシアの説明では、その武器庫をシリア軍が空爆したとしているが、シリア軍は爆発に自分たちは無関係だと主張、現場を飛んだ航空機は爆発後に派遣した偵察機だけだとしている。こうしたことも含め、詳しい調査が必要なのだが、アメリカなど西側の支配層としては、調査が進む前にシリア政府やロシア政府の悪いイメージを作り上げたいのだろう。何か衝撃的な出来事が引き起こされ、調査しない段階で事件のシナリオを宣伝、人びとを守るという口実で軍事侵攻し、ターゲットになった国を破壊し、人びとを虐殺するということをアメリカの支配層は繰り返してきたが、今回もそうしたことを目論んでいるように見える。ユーゴスラビア、南オセチア、アフガニスタン、イラク、リビア、シリア、ウクライナなど、アメリカの主張はいずれも嘘だということが後に判明している。判明した時には破壊と殺戮が進み、取り返しはつかない。そうしたことを経験しながらアメリカの新たな嘘に乗る責任は重い。
2017.04.07
シリアのイドリブで政府軍が化学兵器を使ったと西側の政府や有力メディアが再び叫んでいる。2013年にアメリカ/NATOは同じことを主張し、自らが軍事侵攻しようと目論んでいるが、このときは西側の嘘が明らかにされたこともあり、失敗に終わった。ここにきてドナルド・トランプ政権はネオコン色が強まっているが、それにともない、昔のシナリオを持ち出してきた可能性がある。シリア政府は化学兵器の使用を否定、ロシア国防省は反政府軍の武器庫を通常の兵器で攻撃、その武器庫に保管されていた化学兵器が破壊されて環境中へ毒ガスが流れ出たと説明しているようだ。前回の化学兵器騒動の際、西側が侵略する口実をなくすため、ロシア政府が主導してシリア軍が保有していた化学兵器は全て処分した。現在、持っているのは反政府軍(アル・カイダ系武装集団やダーイッシュ)。ムアンマル・アル・カダフィ体制が倒された後、アメリカ/NATOなどがリビアからシリアへ化学兵器を持ち込んだほか、トルコが提供したとも言われている。2013年の化学兵器使用は3月と8月の2回。3月はアレッポで使われ、シリア政府はすぐに調査を要請、西側の政府やメディアは政府軍が使ったと宣伝した。そのとき、アメリカのジョン・ケリー国務長官がイラン側との秘密交渉を始めている。そうした動きをネオコンたち好戦派は嫌っていた。この攻撃について、イスラエルのハーレツ紙は状況から反政府軍が使ったと分析、国連独立調査委員会メンバーのカーラ・デル・ポンテも反政府軍が化学兵器を使用した疑いは濃厚だと発言している。3月の攻撃に関する国連の調査が始まる中、8月21日にはダマスカスの郊外が化学兵器で攻撃された。例によって西側の政府やメディアはシリア政府軍が使ったと宣伝、NATOを軍事介入させようとするが、現地からそうした宣伝を否定する情報が流れていた。今年2月20日に心臓発作で急死したロシアのビタリー・チュルキン国連大使は当時、アメリカ側の主張を否定する情報を国連で示して報告書も提出している。その中で反シリア政府軍が支配しているドーマから2発のミサイルが発射され、ゴータに着弾していることを示す文書や衛星写真が示されたとジャーナリストがフェースブックに書き込んでいる。そのほか、化学兵器とサウジアラビアを結びつける記事も書かれ、10月に入ると「ロシア外交筋」からの情報として、ゴータで化学兵器を使ったのはサウジアラビアがヨルダン経由で送り込んだ秘密工作チームだという話が流れた。12月になると、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュもこの問題に関する記事を発表、反政府軍はサリンの製造能力を持ち、実際に使った可能性があるとしている。国連の元兵器査察官のリチャード・ロイドとマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授も化学兵器をシリア政府軍が発射したとするアメリカ政府の主張を否定する報告書を公表している。ミサイルの性能を考えると、科学的に成り立たないという。また、こうした化学兵器の使用について、トルコの国会議員エレン・エルデムらは捜査記録などに基づき、トルコ政府の責任を追及している。化学兵器の材料になる物質はトルコからシリアへ運び込まれ、そこでIS(ISIS、ISIL、ダーイシュなどとも表記)が調合して使ったというのだ。この事実を公表した後、エルデム議員らは起訴の脅しをかけられている。今回も西側の政府やメディアはシリア政府が化学兵器を使用したと批判しているが、そうした宣伝記事を書いているひとり、ニューヨーク・タイムズ紙のマイケル・ゴードンはアメリカがイランを先制攻撃する前、ジュディス・ミラーと一緒に原爆話を流していた人物。ミラーは現在、CFR(外交問題評議会)のメンバーであり、ゴードンは軍事担当記者として「活躍」している。ふたりともアメリカ支配層の覚えがめでたいようだ。ゴードンはウクライナの問題でもロシア軍が軍事侵攻したという偽情報を流している。日本にはこうしたアメリカの有力メディアを有り難がっている人が今でもいるようだ。おそらく確信犯であるだろうマスコミはともかく、ほかの人びとはいい加減、目を覚ましてもらいたいものである。
2017.04.06
大統領選からドナルド・トランプが大統領に就任するまでの間、トランプやその側近たちの通信が傍受され、その一覧表も作成されていたことが確認された伝えられている。情報機関に傍受を指示していたのはバラク・オバマ大統領の国家安全保障問題担当補佐官だったスーザン・ライスだとされ、ランド・ポール上院議員はライスに宣誓証言を求めている。オバマ前大統領が彼女に命令したのかどうかを確認する必要があるということのようだ。ライス本人は全面的に否定している。通信をめぐる騒動は2013年3月、ヒラリー・クリントンと親しいシドニー・ブルメンソールのメール・アカウントがハッキングされ、4通のメールがロシア系メディアのロシア・トゥデーにリークされたころから始まる。2012年9月12日付け、同年10月6日付け、同年12月10日付けだが、2013年2月16日付けの4通。ヒラリーは2009年1月21日から13年2月1日まで国務長官を務めていたので、最後の1通は「私人」になってから。しかし、その4通目に重要な情報が含まれていた。2012年9月11日にベンガジの領事館が襲撃されてクリストファー・スティーブンス大使を含むアメリカ人4名が殺された事件についての情報が含まれていた。フランスの情報機関からの情報として、その襲撃に必要な資金を提供したのはサウジアラビアの富豪だとメールには書かれているのだ。なお、襲撃したのはサラフ主義者/ワッハーブ派の武装集団、アンサール・アル・シャリアだと言われている。その後、ヒラリーは公務の通信に個人用の電子メールを使っていたことが発覚、機密情報の取り扱いに関する法規に批判した可能性があり、また、そうした情報をきわめて軽率に扱っていたことをFBIも認めたのだが、それでもジェームズ・コミーFBI長官は昨年7月5日、不起訴の勧告をしたと発表している。その電子メールをヒラリーは消去していたので中身を確認できないことをFBIは理由しにしていたが、NSAの内部告発者であるウィリアム・ビニーも指摘しているように、NSAは全ての電子メールを記録しているので消去されてもFBIがその気になればメールも入手できる。しかも、消したはずのメールがWikiLeaksなどによって公表され、ヒラリーは頻繁にリン・フォレスター・ド・ロスチャイルドと連絡を取り合っていることも判明した。本来なら大きな問題になる事実が明らかになったのだが、それをオバマ政権、民主党、有力メディアなどは「ロシアのハッキング」、さらに「ロシアの選挙戦介入」という話を作り上げ、証拠を示すこともなく叫び続けてきた。問題をすり替え、トランプ攻撃の使ってきたわけだが、そうした「幻術」が崩れ始めた可能性がある。
2017.04.05
ドナルド・トランプ政権の国連大使、ニッキ・ハーレーは4月2日にアメリカのネットワーク局へ登場し、ロシアを叩きのめすのを止めろと大統領から言われなかったと語った。ロシアとの関係改善を主張していたマイケル・フリン国家安全保障担当補佐官が2月13日に辞めさせられ、その一方でこうした人物が国連大使になったわけだ。ハーレーは2011年から17年までサウスカロライナ州の知事だった人物で、熱烈なイスラエル支持者として知られている。1982年にイスラエル軍がレバノンに侵攻、その際にパレスチナ難民キャンプのサブラとシャティーラで数百人とも3000人とも言われる難民が殺されている。実際に手を下したのはイスラエルの傀儡、ファランジスト(キリスト教マロンの武装集団で、アラブ民族主義に反対。スペインのファシスト政党のファランヘ党と同じ思想だった)だが、その殺戮をイスラエル軍は周囲から見守っていた。それ以降、ヨーロッパでもイスラエルに対する反発が強まり、親イスラエルだったイギリス労働党もイスラエルを批判するようになる。それを親イスラエルへ引き戻したのがトニー・ブレアだ。西側の支配層ではイスラエルを支持する人が多いようだが、一般的には違い、BDS(ボイコット、資本の引き揚げ、制裁)運動が展開されている。そのBDSにハーレーは反対を表明している。トランプがイスラエル駐在大使に据えたデイビッド・フリードマンも筋金入りの親イスラエル派で、ヨルダン川西岸への入植を支援する運動に参加してきた。仕事は破産法を専門にする弁護士で、1994年からトランプとビジネス上の関係がある。トランプの義理の息子もユダヤ系で、入植を支持している。昨年11月13日に放送された番組の中でロシア外務省の広報担当者、マリア・ザハロバはアメリカの大統領選挙でドナルド・トランプが勝利した理由をユダヤ人の資金だと語っていた。9月にニューヨークで会ったユダヤ系の人物から聞いた話として、自分たちはヒラリー・クリントンに寄付しているが、その倍をトランプに提供していることを明らかにされたというのだ。その背景にはトランプのユダヤ人脈があったということだる。しかし、親イスラエル派のネオコンは今でもトランプを攻撃している。そのネオコンの意思をハーレーは口にしたということだ。トランプを支持した親イスラエル派はパレスチナの殲滅が最も重要で、クリントンを支持した親イスラエル派はシリアやイランだけでなくロシアや中国の殲滅を望んでいる。(入植に軽くブレーキをかけている程度だが。)ハーレーは両方の主張をしているようだ。ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官によると、1991年にネイコンのポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)はイラク、シリア、イランを殲滅すると口にし、その翌年に国防総省のDPG草稿という形で世界制覇プラン(ウォルフォウィッツ・ドクトリン)を作成している。2001年9月11日の攻撃から10日後にはイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイランをドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺は攻撃予定国リストに載せていた。(ココやココ)これにロシアや中国が加わったのは、21世紀に入ってウラジミル・プーチンがロシアを再独立させたからにほかならない。ボリス・エリツィン時代のロシアはアメリカの属国と化していた。プーチンによってウォルフォウィッツ・ドクトリンは破綻、それを強引に推進しようとしてネオコンは迷走、全面核戦争の危機が高まっているのだ。1991年のソ連消滅で自分の「立ち位置」を修正、「唯一の超大国アメリカ」を体制内へ自分を組み込んだ人びとも迷走しているようだ。
2017.04.04
免責を条件にマイケル・フリンは上院と下院の情報委員会で証言すると提案しているという。フリンは理由にならない理由で今年2月に国家安全保障担当補佐官を辞任、2014年8月にはアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)をバシャール・アル・アサド政権を打倒するための手先として使っているバラク・オバマ政権と対立してDIA局長を解任されている人物だ。フリンは退役後の2015年8月、アル・ジャジーラの番組に登場し、ダーイッシュが占領地を拡大できたのはオバマ政権の政策によると語っている。フリンがDIA局長だった2012年8月に作成されたDIAの報告書は、シリアで政府軍と戦っている勢力の中心をサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてAQI(アル・ヌスラというタグをシリアでは使っていたが、実態はAQIと同じだとしている)、つまり「穏健派」は存在しないとしたうえで、オバマ政権の「穏健派支援」が続けば東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフ主義者の支配国が作られる可能性があると指摘していた。この警告通り、2014年1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国が宣言され、6月にダーイッシュはイラクのファルージャやモスルを制圧している。このとき、アメリカ軍はダーイッシュの制圧作戦、示威行進を黙認していた。ファルージャやモスルが制圧された2カ月後にフリンがDIA局長の職を解かれた理由は改めて言うまでもないだろう。アル・ジャジーラの番組でフリンがオバマ政権の政策に触れることができたのは、2012年の報告書がすでに情報公開法に基づいて明らかにされ、秘密でなくなっていたからだ。職務上、機密情報を知りうる立場にある人物が機密情報を明らかにすることは禁じられている。当然、フリンはオバマ、ヒラリー・クリントン、CIAなど情報機関などロシアとの関係を悪化させようとしている勢力にとって都合の悪い情報をまだ持っているはずだが、それらを口にすれば刑事罰が待っている。それがネオコンをはじめとする好戦派を守っているのだが、もしフリンが免責を認めえられたなら、アメリカの支配システムを揺るがす事態に発展しかねない。裏取引か脅しか、何らかの手を講じた上でなければ、上院や下院がフリンの提案を受け入れることはないだろう。議会は難しい決断を迫られていると見ている人もいる。
2017.04.03
CIAによるハッキングに関する文書をWikiLeaksは公開しているが、3月31日には新しいシリーズが始まった。ウィルス対策ソフトを回避して侵入、アメリカ以外の国がハッキングしたと誤認させるとしている。アメリカ、イギリス、イスラエルの電子情報機関は強く連携、さまざまなコンピュータに侵入し、情報を盗んできた。例えば、1970年痔亜にINSLAW社が開発した不特定多数のターゲットの情報を集め、蓄積、分析するPROMISというシステムにアメリカの情報機関はトラップドアを仕込み、各国の政府機関、国際機関、金融機関などに売りさばき、情報を入手していた。この工作を実行するため、アメリカの司法省はINSLAW社を倒産に追い込んでいる。この倒産劇は裁判になり、1988年2月にワシントン破産裁判所、89年11月にはワシントン連邦地裁がそれぞれ会社側の言い分を認め、司法省がシステムを盗んだと認める判決を言い渡している。さらに、1992年9月には下院の司法委員会も両判決と基本的に同じ結論の報告書を出した。そのほか、1997年にはロータスのノート・システムにトラップドアが組み込まれていることをスウェーデン政府が発見して話題になり、マイクロソフトの開発したWINDOWSに「秘密のカギ」が組み込まれているとも指摘されていた。イギリスのジャーナリストで電子情報機関の活動を追いかけているダンカン・キャンベルによると、1998年にWINDOWSのセキュリティ機能をコントロールするソフトウェアに2種類のカギが存在していることを発見した。ひとつはマイクロソフトが作業に使う合法的なカギだったが、もうひとつは情報機関が侵入するためのものだと疑われている。マイクロソフトの開発者が削除を忘れたカギのラベルも発見されている。ひとつのカギには「KEY」、もうひとつには「NSAKEY」と書かれていたのだ。素直に読めば「NSAのカギ」だ。さらに、WINDOWS2000では3種類のカギが発見された。第1のカギはマイクロソフト用で、もうひとつはアメリカ政府の「合法的合い鍵」だと解釈できるが、第3のカギは説明不能だ。(Duncan Campbell, "Development of Surveillance Technology and Risk of Abuse of Economic Information Part 4/4: Interception Capabilities 2000," April 1999)こうした疑惑をマイクロソフト側は一切否定したが、会社側の主張を裏付ける証拠は示されていない。こうした仕掛けはあらかじめ組み込まれたものだが、そうした仕掛けがなくても、痕跡を残さないだけでなく、別の国を侵入者に仕立てる技術をアメリカの情報機関は持っているというわけだ。アメリカのNSAやCIA、イギリスのGCHQ、あるいはイスラエルの8200部隊は強く結びついているので、こうした機関でも同じことが言えるだろう。この8200部隊とNSAはイランの核関連施設を攻撃するためにコンピュータ・ウィルス、つまり侵入したコンピュータ・システムに関する情報を入手して外部に伝えるFlameとそのプラグインであるStuxnetを感染させたことがある。アメリカやイギリスの情報機関がこうした技術を開発してきた主な理由は国民の監視であある。FBIが1950年代に始めたCOINTELPRO、CIAが1967年に始めたMHケイアスはアメリカ国内で戦争に反対している人びとや団体だった。反核運動や環境保護運動も監視リストに載っているだろう。情報機関や治安機関が国民を監視する目的は今でも基本的に変化していない。現在の技術水準から考えて、監視対象は全国民になっているはずだ。アメリカの属国である日本も当然、国民監視の目的は同じだ。21世紀に入ると、アメリカでは個人の学歴、銀行口座の内容、ATMの利用記録、投薬記録、運転免許証のデータ、航空券の購入記録、住宅ローンの支払い内容、電子メールに関する記録、インターネットでアクセスしたサイトに関する記録、クレジット・カードのデータなどあらゆる個人データが収集、分析されている。膨大な個人情報を分析、どのような傾向の本を買い、借りるのか、どのようなタイプの音楽を聞くのか、どのような絵画を好むのか、どのようなドラマを見るのか、あるいは交友関係はどうなっているのかなどを調べ、分析し、国民ひとりひとりの思想、性格、趣味などを推測して「潜在的危険人物」を探り出そうという研究も進んでいるようだ。最近、人間の頭脳とコンピュータをつなぐ技術が話題になっているが、もしそうした技術が実現したなら、頭脳をハッキングし、コントロールすることにつながるだろう。思想統制を超える領域へ支配層は足を踏み入れようとしている。
2017.04.02
ウラジミル・プーチン大統領がロシア国内で抱えている最大の問題は経済部門を支配している親西側派だと言われている。そうした一派に属すドミトリ・メドベージェフ首相に対し、汚職追放を掲げるグループが抗議活動を展開しているようだ。昨年11月にはメドベージェフの仲間と見られていたアレクセイ・ウルカエフ経済開発相が収賄の容疑で逮捕されている。その際、メドベージェフは寝耳に水だったという。親西側派の中で最も注目されているひとりがアナトリー・チュバイス元第1副首相。ボリス・エリツィンによって経済政策の中心に据えられた人物で、CIAと関係が深いHIID(国際開発ハーバード研究所)なる研究所と連携、JPモルガン・チェースの顧問会議のメンバーで、CFR(外交問題評議会)の顧問も務めている。(Natylie Baldwin & Kermit Heartsong, “Ukraine,” Next Revelation Press, 2015)このチュバイスとビジネスの上で深く結びついているひとりがロシアのアルミニウム産業に君臨しているオリガルヒのオレグ・デリパスカ。この人物はイギリスのナット・ロスチャイルドから「助言」を受ける一方、ロスチャイルド系の情報会社ディリジェンスの助けで世界銀行から融資を受け、政治面でも西側との関係を強めている。デリパスカの妻、ポリナの父親バレンチン・ユマシェフが結婚した相手がボリス・エリツィンの娘タチアナ。ユマシェフはエリツィンの側近だった。タチアナはエリツィンが大統領だった時代からクレムリン内外の腐敗勢力と手を組んでロシアを食い物にして富を築いてきた人物で、ウラル・エネルギーのCEOだったアレクセイ・ドゥヤチェンコと結婚していた。ウラジミル・プーチンの登場でドゥヤチェンコの立場が揺らぐと離婚、2001年にユマシェフと再婚している。メドベージェフやデリパスカをプーチンに近いと言う人もいるようだが、これは正しくない。西側巨大資本がロシアに残した「トロイの木馬」と言うべきだろう。その「木馬」を速やかに処分できるかどうかにロシアの将来はかかっていると考えている人もいる。メドベージェフの動向は注目し続ける必要があるだろう。
2017.04.01
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