全29件 (29件中 1-29件目)
1
ロシアのウラジミル・プーチン大統領は同国に駐在しているアメリカの外交官を455名まで減らさせると語った。現在、ロシアのアメリカ大使館には1210名の外交官がいるようなので、755名を追放することになる。これはアメリカのロシアに対する「制裁」法への報復で、昨年12月にバラク・オバマ大統領がアメリカとロシアとの関係悪化を狙って行った外交官35名を含むロシア人96名を追放した行為への対抗措置は保留したままだ。アメリカの大使館は情報活動や破壊活動の拠点であり、相当数の外交官は情報機関のオフィサーやエージェント。通信傍受のための施設もあると見られている。日本のアメリカ大使館も巨大だが、ロシアで活動している「外交官」も多い。
2017.07.31
ロシア、イラン、朝鮮に対する「制裁」法案を下院は7月25日に419対3で、上院は27日に98対2で可決、ドナルド・トランプ大統領は署名する意向だと伝えられている。ロシアとイランはアメリカの支配層にとって邪魔な存在。朝鮮は東アジアの軍事的な緊張を高めるため、アメリカにとって欠かすことのできない国であり、対象国に含めておく必要がある。本来なら中国も入れたいのだろうが、現在の経済状況を考えるとアメリカ自身を制裁しなければならなくなるので無理だ。法案が成立した場合、ロシアは報復を考えているようだ。この「制裁」でロシアより厳しい状況に陥るのはEU。ドイツやフランスなどから反発の声が挙がっている。2014年にフランスのBNP-パリバはアメリカの制裁対象国との取り引きでドルを使ったとして90億ドル近い課徴金を払わされたが、この屈服は批判されていた。フランスの法体系の下で、この取り引きは合法だったのである。トランプが反対したTPP(環太平洋連携協定)はISDS(国家投資家紛争処理)条項によって参加国の政策が「国境なき巨大資本」にとって利益になるかどうかで決められる。EUとアメリカで進められてきたTTIP(環大西洋貿易投資協定)も同じこと。この2協定とTiSA(新サービス貿易協定)によってアメリカの巨大資本は自分たちが国のような公的権力を上回る力を持とうとしてきた。つまり、フランクリン・ルーズベルトが言うところのファシズムだ。今回、EUが反発している最大の理由はバルチック海とドイツをつなぐ天然ガスのパイプライン、ノード・ストリーム2の建設だろう。ウクライナ、ポーランド、ルーマニア、ブルガリア、ギリシャはアメリカに隷属、ロシアとEUとをつなぐパイプラインの建設を止めている。残されたルートは北回りのノード・ストリーム、そしてノード・ストリーム2。アメリカはロシアに対する制裁という形でこれを潰しにかかっている。アメリカ、サウジアラビア、イスラエルの3国同盟を中心としたシリア侵略が思惑通りに進まず、これまで3国同盟に協力していたカタールやトルコは離反する動きを見せている。カタールとイランが共同で生産した天然ガスをシリアとトルコを経由してEUへ運ぶというプランが浮上しているが、これも3国同盟は潰しにかかっている。3国同盟側はイスラエル、キプロス島、クレタ島、ギリシャ、イタリアというルートを考えているとも言われているが、バラク・オバマ政権からアメリカはシェール・ガス/オイルを戦略の中心に置いてきた。これをポーランドへ運び、そこから旧ソ連圏の国々へというプランなのだが、これには大きな問題がある。まず、原油価格が大幅に下落しているときから言われていたが、シェール・ガスやオイルは生産コストが高く、必然的に販売価格は高くなる。しかも、生産を持続できるのは4、5年程度で、7、8年経つと8割程度下落すると言われている。つまり、シェール・ガスやオイルに頼るわけにはいかないのだ。EUも中国もこれはわかっているはず。しかも、この採掘方法は地下水を汚染するが、そうなると地下水に頼っているアメリカの農業は壊滅的な打撃を受ける。アメリカに食糧を頼っている国にとっては深刻な事態で、早めに手を打つ必要がある。もしアメリカの命令に従い、ロシアやイランとの関係を断ったなら、EUはエネルギー源をサウジアラビアとイスラエルに頼らざるをえなくなる。これは受け入れられないはずで、今回のアメリカ議会による制裁法案の可決はEUをロシアへ追いやることになりかねない。中国とロシアを戦略的なパートナーにしてしまったのと同じ間違いをアメリカの支配層は犯している。こうした間違いを軍事力で解決しようとしているのがネオコンを含む好戦派だが、その考え方も成功しないだろう。その先にあるのは全面核戦争である。かつて、ある国の人からこんなことを言われた:日本人は毒蛇のいる場所を目隠ししながら歩いているようで、見ていられない。
2017.07.31
マイク・ポンペオCIA長官は7月20日、アスペン治安フォーラムでベネズエラの「移行」が期待できると語っている。その中でメキシコやコロンビアが協力しているかのようなことも口にしたが、両国は否定した。ジョージ・W・ブッシュ政権が中東侵略に気をとられていた頃、ラテン・アメリカではアメリカから自立する動きが出ていた。アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、エクアドル、ホンジュラス、ニカラグア、ベネズエラなどだが、その中でも産油国のベネズエラは中心的な存在だった。ベネズエラを自立した国にしたのはウーゴ・チャベス。1999年に大統領へ就任、それに対してブッシュ・ジュニア政権はクーデター計画を始動させる。2002年のことだ。その黒幕と指摘されているのはイラン・コントラ事件でも登場するエリオット・エイブラムズ、キューバ系アメリカ人で1986年から89年にかけてベネズエラ駐在大使を務めたオットー・ライヒ、そしてジョン・ネグロポンテ国連大使だ。ネグロポンテは1981年から85年まで、つまりCIAがニカラグアの反革命ゲリラを支援して政権転覆を目論んでいた時期に工作の拠点になっていたホンジュラス駐在大使を務め、2001年から04年にかけては国連大使、04年から05年まではイラク駐在大使。その後、国家情報長官や国務副長官に就任している。2002年のクーデター計画は、事前にOPECの事務局長を務めていたベネズエラ人のアリ・ロドリゲスからチャベスへ知らされたため、失敗に終わるが、それで終わらなかった。例えば、WikiLeaksが公表したアメリカの外交文書によると、2006年にもクーデターが計画されている。「民主的機関」、つまりアメリカの支配システムに操られている機関を強化し、チャベスの政治的な拠点に潜入、チャベス派を分裂させ、それによってアメリカの重要なビジネスを保護し、チャベスを国際的に孤立させるとしている。チャベスは2013年3月、癌のため、58歳の若さで死亡した。バラク・オバマが大統領に就任して間もない2009年6月、ネグロポンテが大使を務めたこともあるホンジュラスでマヌエル・セラヤ政権がクーデターで倒された。約100名の兵士が大統領官邸を襲い、セラヤ大統領を拉致してコスタ・リカへ連れ去ったのである。アメリカ政府はホンジュラスのクーデター政権を容認しているが、当時、現地のアメリカ大使館は国務省に対し、クーデターは軍、最高裁、そして国会が仕組んだ陰謀であり、違法で憲法にも違反していると報告している。つまり、ヒラリー・クリントン国務長官も実態を知っていた。この正当性のない政権は翌2010年、最初の半年だけで約3000名を殺害したという報告がある。クーデターを支援していたひとり、ミゲル・ファクセが麻薬取引が富の源泉であることもアメリカ側は認識していた。ちなみに、ミゲルの甥にあたるカルロス・フロレス・ファクセは1998年から2002年にかけてホンジュラスの大統領だった人物である。クーデターの中心になったロメオ・バスケスが卒業したSOA(現在の名称はWHINSEC)はアメリカ支配層がラテン・アメリカ諸国の手先を育成するため、1946年にパナマで設立された施設。対反乱技術、狙撃訓練、ゲリラ戦、心理戦、軍事情報活動、尋問手法などの訓練を実施する。1984年にSOAはパナマを追い出され、アメリカのジョージア州フォート・ベニングへ移動、2001年には「治安協力西半球研究所(WHISCまたはWHINSEC)」と名称を変更したが、行っていることは基本的の同じだと言われている。ラテン・アメリカは15世紀からスペインやポルトガルに略奪されている。金や銀をはじめとする資源が豊富で、「十字軍」による略奪と並び、近代ヨーロッパの基盤を築く上で大きな役割を果たした。18世紀までにボリビアのポトシ銀山だけで15万トンが運び出されたとされているが、この数字は「少なくとも」である。19世紀になるとアメリカの巨大資本がラテン・アメリカで大規模農業を展開、「バナナ共和国」と呼ばれるようになる。その巨大資本がラテン・アメリカからスペインを追い出す戦争の引き金になった出来事が1898年のメイン号爆沈事件。アメリカの軍艦メイン号が停泊中に沈没したのだが、アメリカ側はこれをスペインの破壊工作だと主張、戦争を始めたのだ。その戦争で勝利したアメリカはフィリピンも手に入れることに成功、中国を侵略する橋頭堡にしている。1900年の大統領選挙で再選されたウイリアム・マッキンリーが翌年に暗殺され、副大統領のセオドア・ルーズベルトが跡を継ぐ。その新大統領は「棍棒外交」を展開し、ベネズエラ、ドミニカ、キューバを次々と「保護国化」していった。こうした巨大資本の利権をまもるために海兵隊が使われている。第2次世界大戦後、民主化の波がラテン・アメリカへも押し寄せるが、それをアメリカはクーデターなどで潰していく。例えば、1954年のグアテマラ、64年のボリビア、ブラジル、71年のボリビア、73年のチリなどだ。そして現在、自立の波を潰すため、ブラジル、アルゼンチン、ベネズエラなどでクーデターを進めている。
2017.07.29
米太平洋艦隊のスコット・スウィフト司令官は7月27日、ドナルド・トランプ大統領が中国に対する核攻撃を命じたら実行すると語った。オーストラリアの大学で行われた会議での仮定に基づく質問に答えたのだ。本ブログでも指摘しているように、現在、アメリカの軍や情報機関をトランプ大統領はコントロールできていない。それでもルール上は軍が大統領の命令に従うことになっているわけで、当然の回答のように思える。しかし、他国を核攻撃するというような話は国際関係に影響を及ぼすわけで、通常は仮定に基づく質問には答えないと言い方で回答を拒否する。スウィフト司令官の口が滑ったわけではないだろう。中国に対する威嚇と見る人もいる。先日、青島から約150キロメートルの地点まで近づいたアメリカの電子偵察機EP-3に対して中国軍は2機のJ-10戦闘機を緊急発進させ、そのうち1機はアメリカ軍機から90メートル近くまで接近したと伝えられている。アメリカ側は公海上だと開き直ったが、青島は中国北海艦隊の司令部があり、中国を刺激することを狙った可能性は高い。中国の防空システムの穴をEP-3は探っていたのかもしれないが、挑発という意味もあるだろう。東/東南アジアではアメリカの思惑通りに動かない国が増えている。そうした国々に対する威嚇という側面があるかもしれない。
2017.07.28
イラクのヌーリ・アル・マリキ副大統領は7月23日から4日間にわたってロシアを訪問、ウラジミル・プーチン大統領、セルゲイ・ラブロフ外相、ロシア議会のバレンティナ・マトビエンコ議長らと会談した。議長と会った際、「ロシアは歴史的にイラクと強く結びついている」とした上で、イラクにおいてロシアが政治的かつ軍事的に強い存在になることを望んでいると語ったと伝えられている。25日に行われたマリキとプーチンの会談ではT-90戦車について触れられたというが、イラクはロシアからそのタイプの戦車を73両、購入するとも報道された。アメリカ製の主力戦車、M1A1 エイブラムズがダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)との戦闘で保有していた140両のうち28両が対戦車ミサイルで破壊され、その脆弱性が問題になったようだ。マリキは首相だった2014年3月、アメリカの同盟国であるサウジアラビアやカタールがイラクの反政府勢力へ資金を提供していると批判、ロシアへ接近する姿勢を見せていた。その翌月に行われた議会選挙では彼が党首を務める法治国家連合が第1党になっている。本来なら彼が首相を続けるのだが、指名されない。アメリカ政府が介入したと見られている。首相に選ばれたのはハイデル・アル・アバディだった。2015年9月30日にロシア軍がシリア政府の要請で空爆を始めると、このアバディもロシアに空爆を頼もうとする。ロシア軍の戦闘能力が高く、アメリカ主導軍と違って本当にダーイッシュを攻撃するのを見たからだろう。そうした動きを見たバラク・オバマ政権は10月20日にジョセフ・ダンフォード米統合参謀本部議長をイラクへ送り込み、ロシアへ支援要請をするなと恫喝したようだ。ダーイッシュがファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言したのは2014年1月。6月にはモスルを制圧、その際にトヨタ製の真新しい小型トラック「ハイラックス」を連ねてパレードしている。その様子は撮影され、世界に配信された。その写真を見て少なからぬ人が疑問を持ったはず。アメリカ軍はスパイ衛星、偵察機、通信傍受、人からの情報などでダーイッシュの動きを把握していたはずで、ダーイッシュのパレードは絶好の攻撃目標。攻撃しなかったのはおかしいのだ。ダーイッシュが売り出される前、マリキはすでにその回答を口にしている。本ブログでは何度も指摘しているように、こうした展開を2012年の段階で予測していたのがアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)。その年の8月に作成、オバマ政権へ提出された報告書の中でシリアにおける反乱の主力はサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてAQI(アル・カイダ系武装集団)だと指摘、つまりオバマ政権が主張する「穏健派」は存在せず、アメリカ政府が政策を変えなければ東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告していた。この報告書が作成された当時のDIA局長がマイケル・フリン中将。ダーイッシュが売り出された後、2014年8月7日にオバマ大統領の周辺と対立していたフリンはDIA長官を辞めざるをえなくなる。退役後、この文書に記載されたダーイッシュ出現の警告ともとれる部分についてアル・ジャジーラの番組で質問されたフリン中将は、そうした情報に基づいて政策を決定するのはオバマ大統領が行うことだと答えている。つまりオバマ政権の決定がダーイッシュの広大な地域を支配させることになったと言ったのだ。この説明はマリキの主張と矛盾しない。このフリンをドナルド・トランプ大統領は国家安全保障担当補佐官に選んだが、有力メディアからの激しい攻撃もあり、2月13日に辞任することになる。フリンがDIA長官を辞めた8月にはダーイッシュが拘束していたジェームズ・フォーリーの首を切り落とした場面だとする映像が流れる。これはフェイクだった可能性が高いが、これを利用してアメリカ主導軍は9月にシリアで空爆を始めるが、その時に現地で取材していたCNNのアーワ・デイモンは翌日朝の放送で、ダーイッシュの戦闘員は空爆の前に極秘情報を入手、攻撃の15から20日前に戦闘員は避難して住民の中に紛れ込んでいたと伝えている。その後、アメリカ主導軍はシリアの重要な施設を破壊、非武装の人々を殺しているが、ダーイッシュやアル・カイダ系武装集団にダメージを与えることはできず、そうした勢力の支配地は拡大していく。このままシリアのバシャール・アル・アサド政権を倒し、傀儡政権を樹立させるつもりだったのだろうが、これは2015年9月30日にロシア軍がシリア政府の要請で軍事介入したことから失敗に終わった。今ではアメリカを中心にした侵略勢力の中からカタールやトルコが離脱し、アメリカ主導軍の手先になってきたダーイッシュやアル・カイダ系武装勢力の敗北は明白。そこでアメリカ政府はCIAによる反シリア政府軍への支援を止めると言い始めたのだが、その一方でアメリカ軍自身がシリアへ侵攻している。先日、トルコ政府はロシアに対し、シリア北部に展開しているアメリカ軍が拠点にしている10基地の位置をロシアへ知らせたと伝えられた。現在、イラクはアメリカ軍に占領されている状態だが、それでもアメリカの属国にはなっていない。残っている主要国は、1970年代終盤に形作られたアメリカ、サウジアラビア、イスラエルの3国同盟、そしてサイクス・ピコ協定のイギリスやフランスだ。中東でアメリカはアメリカ軍とロシア軍との直接的な衝突へ向かって動き始めたわけだが、ウクライナ、ポーランド、バルト諸国を使ってロシアへ軍事的な圧力を強めてもいる。アジア大陸の東岸でもアメリカから離反する動きがあるが、それを力で押さえ込み、中国やロシアを威嚇しようとしている。その一環として、中東/北アフリカと同じようにダーイッシュやアル・カイダ系武装集団(つまり傭兵)を使って破壊活動を始めている。アメリカにとって都合の良い動きをしているのは朝鮮くらいだろう。
2017.07.27
アメリカの国内における収容所化と国外における軍事侵略の本格化は2001年9月11日に始まった。その日、ニューヨークの世界貿易センターの3棟とバージニア州アーリントンにある国防総省の本部庁舎が攻撃されたのだが、それを利用したのだ。収容所化と軍事侵略へアメリカを向かわせたジョージ・W・ブッシュ大統領は2000年の選挙で当選したのだが、この選挙では投票の妨害や票数の操作が指摘されていた。それでも民主党は就任式の前に矛を収めている。ドナルド・トランプに対する民主党や有力メディアの執拗な攻撃は尋常でない。そうした中、ジョン・ブレナン前CIA長官とジェームズ・クラッパー元国家情報長官は7月21日にアスペン治安フォーラムでCNNのウルフ・ブリッツァーと対談、もしトランプ政権が特別検察官のロバート・ミューラーを解任したなら官僚は大統領の命令を無視するべきだとし、クラッパーはロシアが大統領選挙に介入したと再び主張した。また、7月23日に民主党のチャック・シューマー上院議員はABCの番組で、もしミューラーが解任されたなら、ワシントンで「大変動」を引き起こすと語っている。いずれもクーデターを示唆していると話題だ。ワシントン・ポスト紙によると「ロシア疑惑」のキーパーソンはブレナンとクラッパーなのだが、このふたりは嘘をつき続けてきたことでも知られている。これは同紙も承知している話。昨年6月から「Guccifer 2.0」が民主党のコンピュータをハッキング、情報を公開したと民主党は主張してきた。今年3月にはアダム・シッフ下院議員(民主党)がロシア疑惑劇の幕開けを宣言しているが、その宣言の元になったのはクリストファー・スティールなる人物が作成した報告書。スティールはイギリスの対外情報機関MI6の元オフィサーで、オービス・ビジネス・インテリジェンスという民間情報会社を経営している。スティール自身、報告書の根拠は薄弱だと認めているのだが、そうしたことはお構いなしにトランプを大統領の座から引きずり下ろすキャンペーンは続けられてきた。この問題について、かつてNSAの中枢にいた人物を含め、インターネットを介したハッキングではなく、内部の人間によるリークだと主張する人は少なくない。この問題を調査したIBMの元プログラム・マネージャー、スキップ・フォルデンも内部の人間が行ったとしている。例えば、推測される23 MB/sという転送速度はインターネットでは無理な数字だという。民主党や有力メディアが主張しているロシア疑惑には説得力がないのだが、大声で叫び続けている。その勢力が手にした攻撃の武器が特別検察官。ミューラーだが、この人物は世界貿易センターとペンタゴンが攻撃される1週間前、2001年9月4日から13年9月4日までFBI長官を務めている。その間、FBIは攻撃に関する捜査をしたとは言えない。「アル・カイダ」という印象は広まっているのだが、実行犯が誰なのかは明らかにされていない。重要な容疑者と言われたサウジアラビアやイスラエルの工作を調べたようには見えない。炭疽菌の話も尻切れトンボに終わった。その結果、中東、北アフリカ、ウクライナなどは破壊と殺戮の場になったのである。それを是正するとしていたトランプを追い出すためにミューラーは再登場してきたわけだ。
2017.07.26
中国北海艦隊の司令部がある青島から約150キロメートルの地点をアメリカの電子偵察機EP-3が飛行、それに対して中国軍は2機のJ-10戦闘機を緊急発進させた。そのうち1機はアメリカ軍機から90メートル近くまで接近したと伝えられている。中国の防空システムの穴をEP-3は探っていたのかもしれないが、挑発という意味もあるだろう。相手が応じれば、それを「危険な行為」だと宣伝するのはアメリカの常套手段だ。今回、EP-3は中国軍機に接近されただけで済んだが、2001年4月1日には中国の海南島から約110キロメートル、中国の軍事施設がある西沙諸島の近くではJ-8戦闘機と空中衝突、中国側のパイロットが行方不明になり、EP-3は海南島へ緊急着陸している。この時より今回は中国が警戒している空域であり、緊迫した事態になることをアメリカ側は予測していたはずだ。空中衝突が引き起こされたのはジョージ・W・ブッシュが大統領に就任してから3カ月後で、中国脅威論を叫んでいた。その主張の発信元は国防総省内部のシンクタンクONAのアンドリュー・マーシャル室長だった。(Robert Dreyfuss, “Devil’s Game”, Henry Holt, 2005)マーシャルはシカゴ大学で経済学を学んだ後、1949年に国防総省系のRANDへ入って核戦争について研究、1973年にONAが創設されると室長に就任している。スキャンダルで失脚したリチャード・ニクソン大統領を継いだジェラルド・フォードの時代にデタント派が粛清されているが、CIAの内部ではソ連の脅威を宣伝する目的でBチーム(またはチームB)が始動、その際にONAは側面から協力したと言われている。このBチームを率いていたハーバード大学のリチャード・パイプス教授は後にネオコンと呼ばれるグループを育成する上で重要な役割を果たした人物。ネオコンの中心人物のひとりになるポール・フォルフォウィッツもチームのメンバーだった。そうしたつながりもあり、1992年に国防総省でDPGの草案をウォルフォウィッツが中心になって作成された際にはマーシャルも関わっていた。この草案では、アメリカを唯一の超大国と位置づけ、アメリカ中心の世界に刃向かう国々を潰し、新たなライバルの出現を阻止することが謳われている。1991年にソ連が消滅、ボリス・エリツィン時代のロシアはウォール街やシティの属国になり、マーシャルは中国に矛先を向ける。すでに新自由主義を浸透させ、中国の若手エリートを洗脳する工作は始められていたが、やはり潜在的なライバルと認識していたようだ。マーシャルは中国の長距離兵器、つまり地対地ミサイルなどの開発が東アジアの基地や空母にとって脅威だとし、ミサイル防衛の必要性を強調する。韓国や日本などへのミサイル配備はその延長線上にある。ウォルフォウィッツたちネオコンは1992年に作成されたDPG草案に基づく報告書「米国防の再構築」をPNACから2000年に出しているが、その中でも東アジア重視が主張されていた。2000年の大統領選挙で大統領に選ばれたジョージ・W・ブッシュは就任後、この報告書に基づく政策を推進、中国脅威論につながったのだ。こうした状況の中、EP-3はJ-8と衝突したのだが、その年の9月11日にニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された後、アメリカはアフガニスタン、そしてイラクを先制攻撃し、中東から北アフリカにかけての地域を戦乱で破壊しはじめる。この攻撃は1991年に国防次官だったウォルフォウィッツが口にしたイラク、シリア、イランを殲滅するという話に合致する。エネルギー資源を産出する中東/北アフリカもアメリカの支配システムを維持、強化するために重要な場所だ。この地域を東アジアより先に始末することになった。しかし、シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒し、傀儡体制を樹立させるという目論見は失敗、今ではこの地域における影響力をアメリカはなくしつつある。そこで始めているのがウクライナ、ポーランド、バルト諸国、そして東/東南アジアでの工作。6月からアメリカ/NATOはロシアとの国境近くに電子偵察機を頻繁に飛ばし、6月21日にはロシア国防相が乗った航空機にF-16戦闘機を接近させて威嚇、Su-27に追い払われるということも引き起こしている。崩れ始めた自分たちの支配システムを維持するため、軍事力を使うしかなくなっているようだ。
2017.07.25
ロシアの弁護士、ナタリヤ・ベセルニツカヤを主人公としたニューヨーク・タイムズ紙の記事は勿論、ドナルド・トランプ大統領を攻撃することが目的だったのだろうが、この話はアメリカの支配システムの暗部を暴くことになりかねない。前にも書いたように、ベセルニツカヤは2016年6月9日、ドナルド・トランプ・ジュニアたちと会ったその日にデニス・カツィーフなるクライアントとも会っていた。この人物はプレベゾン・ホルディングスという持ち株会社を所有、マネー・ロンダリングの容疑がかけられている。その弁護のため、アメリカ司法省の特別の計らいでビザ無し入国が許されたのだ。当時の司法長官はロレッタ・リンチ。プレベゾンとの関係から浮上するフュージョンGPSは情報戦を仕掛ける傭兵的な会社で、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の記者や編集者だった3名によって設立された。今年3月にアダム・シッフ下院議員(民主党)は声明を発表、そのなかでロシア疑惑劇の幕開けを宣言したが、その宣言の元になった報告書を作成したクリストファー・スティールの会社、オービス・ビジネス・インテリジェンスを雇ったのがフュージョンだ。スティールはイギリスの対外情報機関MI6の元オフィサーで、アレキサンダー・リトビネンコのケース・オフィサーだったと言われている。スティールの報告書が根拠薄弱だということは本人やシッフ議員もすぐに認めたが、開幕したロシア疑惑劇や西側の有力メディアが進めている。そのプロパガンダはロシアとの核戦争へと続いているが、目先の利益に気をとられている彼らは心配していないようだ。リトビネンコはソ連/ロシアの情報機関、KGB/FSBに所属していた人物で、ボリス・エリツィン時代の終焉に伴い、2000年にイギリスへ渡っている。彼を雇うことになるオリガルヒのボリス・ベレゾフスキーも2000年からロシアへ戻らず、2003年にはイギリスが政治亡命を認めた。このベレゾフスキーについてはフォーブス誌の編集者だったアメリカ人のポール・クレブニコフが記事や著作(Paul Klebnikov, “Godfather of the Kremlin: Boris Berezovsky and the looting of Russia,” 2000, Harcourt)で詳しく報告している。なお、クレブニコフは2004年7月、チェチェンのヤン・セルグーニン副首相(親ロシア派)がモスクワで殺害された翌月にモスクワで射殺された。クレイブニコフ殺害では、2004年11月にベラルーシのミンスクでふたりのチェチェン系ロシア人が逮捕され、このふたりを含む3名の裁判が2006年1月に始まる。その直後に裁判官のマリヤ・コマロワが「病気」になってウラヂミール・ウソフに交代、5月には無罪評決が出た。この評決を出した8名の陪審員はセルグーニン殺害事件の裁判でも無罪評決を出している。エリツィン時代のロシアは政府が腐敗、西側巨大資本やその手先になっていた現地のオリガルヒが国を支配、国民と富を略奪していた。この時代、ロシアから流れ出た違法資金は約1兆3000億ドルに達するとも言われている。当然、マネーロンダリングが行われる。私的権力が公的権力を支配していたわけで、フランクリン・ルーズベルトの定義によるとファシズムだ。当時、オリガルヒは背後に犯罪組織を従えていたが、ベレゾフスキーの場合はチェチェン・マフィア。シリアへの侵略戦争ではサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心とする武装勢力がアメリカ、サウジアラビア、イスラエルを中心とする勢力の手先として戦ってきたが、その中へチェチェン人も入っている。チェチェンの反ロシア武装勢力はグルジアのパンキシ渓谷を拠点にしてきた。そこでCIAは戦闘員の候補者をリクルート、訓練している。そこからシリアへも戦闘員は送り込まれていたのだ。そうした工作の資金を提供してきたのはサウジアラビアである。クリストファー・スティールの元でMI6の協力者、あるいはエージェントとしても働いていたアレクサンドル・リトビネンコは2006年11月に放射性物質のポロニウム210で毒殺されたとされている。通常、毒殺は痕跡が残らない薬物を使うのだが、このケースでは痕跡を鮮明に残す放射性物質が使われたことになる。リトビネンコの父親や弟はイギリス当局の説明に納得せず、遺体からポロニウムが検出されるかどうかを再調査するように求めていたが、この要求は拒否された。2016年1月20日付けテレグラフ紙によると、リトビネンコは2006年に死ぬ直前、ウラジミル・プーチンについて語っている。プーチンはウクライナの犯罪組織のボス、セミオン・モギレビッチと「良好な関係」だったが、この人物はアル・カイダに武器を売っていたと主張している。また、リトビネンコは同僚だった元KGBエージェントがチェチェンの反ロシア勢力に影響を及ぼし、アラビアのテロリストと結びついていたとしている。プーチンとアル・カイダを結びつけたかったのだろうが、それには無理がある。例えば、リトビネンコの音声が記録される前年、2005年にロビン・クック元英外相はガーディアン紙に、アル・カイダはCIAから軍事訓練を受けた「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイルだと書いている。この戦闘員の歴史は1970年代の終盤、ズビグネフ・ブレジンスキーのプランに従って編成された武装集団から始まる。アメリカの情報機関や軍が武器/兵器を供給して戦闘員を訓練、サウジアラビアが資金を出し、イスラエルやパキスタンが協力していた。この構図は現在まで続いている。なお、この事実を明らかにした翌月、クックは保養先のスコットランドで心臓発作に襲われて急死した。享年59歳。リビア侵攻作戦ではアル・カイダ系武装集団とNATOとの連携が明確になり、後に売り出されたダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)と同じように、アメリカ、イギリス、フランス、イスラエル、サウジアラビア、カタール、トルコが黒幕だということは公然の秘密だ。MI6はリトビネンコに語らせすぎたように思えるが、それにもかかわらず、その音声をイギリスの情報機関は2016年の段階でリークした。嘘を人々に信じさせる自分たちの能力に自信があるのだろう。暗黒街のボス、モギレビッチはマネーロンダリングの中心的な人物だとされ、麻薬密売や売春組織を動かしていたとされている。女性をビジネスの道具に使った人物としてはミハイル・ホドルコフスキーも知られている。ベレゾフスキーと違い、自分の権力を過信していたのか、ロシアに留まったため、脱税などで実刑判決を受けて収監されたオリガルヒのひとりだ。ソ連時代、ホドルコフスキーはコムソモール(全ソ連邦レーニン共産主義青年同盟)の指導者を務めているが、そのときにロシアの若い女性を西側の金持ちに売り飛ばしていたと疑いをもたれている。ロシアの「モデル」をニューヨークへ送り出すというビジネスに加担していたというのだ。その際、彼はKGB人脈を利用して出国ビザを取得していたとされている。そうして稼いだカネを元手にメナテプ銀行を設立してマネーロンダリングなどに使い、石油会社のユーコスを買収した。モスクワ・タイムズやサンクトペテルブルグ・タイムズを出している会社の大株主にもなっている。ユーコスは西側の銀行や投資ファンドのカーライル・グループから巨額の資金を調達していた。リトビネンコは死の数週間前、イスラエルを訪れているのだが、そこで会った相手はユーコスの元幹部レオニド・ネフツーリン。裏でホドルコフスキーと手を握っていたのはアメリカの支配層で、ユーコスの発行済み株式のうち25から40%をアメリカの巨大石油会社、エクソン・モービルとシェブロンへ売り渡されようとしていた。つまり、彼らはロシアのエネルギー資源をアメリカが支配する仕組みを作り上げようとしていたのだ。(Natylie Baldwin & Kermit Heartsong, “Ukraine,“ Next Revelation Press, 2015)それをプーチン政権は阻止した。ホドルコフスキーはジョージ・ソロスを尊敬しているのか、2001年にオープン・ロシア基金をアメリカで創設、ヘンリー・キッシンジャーやジェイコブ・ロスチャイルド卿を雇っている。2006年に一旦閉鎖しているが、14年に再設立した。ベレゾフスキーもロスチャイルドとは親しかった。ロシアのマネーロンダリングはエリツィン時代にシステム化され、ロシア国内に張り巡らされた西側巨大資本のネットワークと結びつき、プーチン体制を揺るがしかねない力を今でも持っている。資金の違法な流出を止めることもロシア政府にとって重要な課題だ。そのプーチン攻撃の道具としてアメリカ議会が作ったのがセルゲイ・マグニツキー法。2億3000万ドルの脱税容疑で逮捕されていたマグニツキーという弁護士が獄死したことに対する報復だとされた。このマグニツキーを雇っていたのがビル・ブロウダー。すでに書いたことだが、ブロウダーは自分の会社を乗っ取ったロシア政府高官が不正を働き、マグニツキーはその犠牲になったという自分の主張を宣伝するため、反ウラジミル・プーチンで知られている映画監督のアンドレー・ネクラソフを雇ったのだが、その主張が事実でないことに気づいてしまう。つまり、不正を内部告発したのはブロウダーの会社で働いていた女性で、脱税はブロウダーが行っていたことをつかんだのだ。しかも、その不正にマグニツキーは金庫番として関わっていたことも判明した。ネクラソフはその事実をドキュメンタリーの中に盛り込んだため、ブロウダーと対立しただけでなく、作品を公開することが困難になった。そのドキュメンタリーが事実なら、アメリカの有力メディアや議会がロシア攻撃の道具として使っているマグニツキー法は嘘の上に築かれた法律だということになってしまう。作品が葬り去られようとしているということは、映画の内容は事実だということなのだろう。
2017.07.23
ポール・セルバ統合参謀本部副議長は7月18日、ウクライナのキエフ政権へ武器/兵器を供給するかどうかを決める必要があると語った。3月にカーチス・スカパロッティ米欧州軍司令官も殺人兵器を渡すことを考えるべきだと語っている。スカパロッティの前任者であるフィリップ・ブリードラブはネオコン/シオニストと強く結びつき、軍事的な緊張を高めるために偽情報を発信していた。その考え方をスカパロティは引き継いだようだ。セルバやブリードラブが支援するキエフ政権は2014年2月23日にクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ大統領を倒して成立している。勿論、憲法の規定に違反した行為だ。そのクーデターの最前線で活動していたのがアメリカ/NATOの支援を受けたネオ・ナチ。そのクーデター政権を拒否したのがヤヌコビッチの支持基盤だった南部や東部の住民だった。クリミアは動きが速かったこともあり、戦乱で破壊されることは免れたが、東部のドンバス(ドネツクやルガンスク)は破壊と殺戮の対象になる。2014年5月2日には、南部の港湾都市オデッサで反クーデター派の住民がネオ・ナチのグループに虐殺されるということもあった。キエフ政権からの離脱を明確にするため、そのドンバスを独立させるとドネツクを率いているアレクサンドル・ザハルチェンコは宣言している。クーデターでEUとロシアの分断をある程度は実現したが、それが一因になってロシアは中国との関係を緊密化、今では戦略的パートナーだと宣言、バルト海で両国が合同艦隊演習を行うまでになった。現在のアメリカには中長期の戦略を立てる能力が欠落、中東でもアメリカの支配基盤はイスラエルとサウジアラビアに振り回され、崩れ始めている。中東や北アフリカを戦争で破壊、多くの人々を殺してきたのはイスラエルやサウジアラビアと密接に結びついているネオコン。ウクライナに破壊と殺戮を持ち込んだのもネオコンだ。ウクライナの体制転覆ではビクトリア・ヌランド米国務次官補が中心的存在。2014年2月上旬、つまり政権転覆の少し前、ヌランドがジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使と電話で相談している音声がインターネット上にアップロードされた。話の内容はウクライナの「次期政権」の閣僚人事で、ヌランドはアルセニー・ヤツェニュクを高く評価、実際、クーデター後、首相に選ばれた。クーデター前、EUは混乱を終息させるため、ヤヌコビッチと話し合いを進めていた。その姿勢に激怒したのがヌランドで、「EUなんかくそくらえ(F*ck the EU)」と言う発言につながる。彼女は暴力的にヤヌコビッチを排除すべきだと考えていたわけだ。つまり、「EUなんかくそくらえ発言」を品の問題にして論じるのは正しくない。おそらく、アメリカが暴力を志向している事実から人々の目をそらさせようとしていたのだろう。アメリカ/NATOの好戦的な姿勢はウクライナに留まらない。ロシアを屈服させるため、核戦争も辞さないという態度だ。そうした好戦派の中にセルバ、スカパロッティ、ブリードラブといった軍人も含まれている。ロシアとの国境近くへのミサイル配備、電子戦用の航空機を国境近くへ飛ばしてロシア側の防空の穴を見つける動きもロシアを挑発、あるいは恫喝する意味があるだろう。それに対し、ロシアのウラジミル・プーチン大統領はアメリカをロシアに対する脅威だとする新しい海軍の戦略を承認した。アメリカは物事を話し合いで解決できる国ではないことに気づいたのかもしれない。シリアなどでロシア製兵器の性能を見せつけているのはアメリカに対する牽制だろう。そうした中、チェチェンの指導者、ラムザン・カディロフはロシアの「最終装置」が稼働していると語った。これは1980年代にソ連が建設した防御戦システムを指していると見られているが、これはモスクワが核攻撃されたと装置が判断した場合、自動的に全ての核ミサイルが発射されるというもの。アメリカでも似たシステムが開発されていたが、機械が判断ミスする危険性が指摘されている。アメリカは一気にロシアの核兵器を無力化できると考えているかもしれないが、富裕層はすでに超豪華なシェルターを建設している。
2017.07.22
イラクがロシアから73両のT 90戦車を購入すると伝えられている。イラク軍が保有するアメリカ製M1A1 エイブラムズ戦車140両のうち28両がダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)の対戦車ミサイルで破壊され、その脆弱性が問題になったようだ。2003年3月にアメリカ主導軍がイラクを先制攻撃してサダム・フセイン体制を倒して以来、イラクはアメリカの強い支配下にある。2009年2月、大統領に就任して間もないバラク・オバマは翌年の8月までにイラクにおける軍事作戦を終え、5万名までの部隊をイラクの治安部隊を「訓練」するため残すだけにすると宣言した。それに対し、イラクの首相だったヌーリ・アル・マリキは訓練のためのアメリカ軍も不要だとしていた。調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュが2007年3月5日付けのニューヨーカー誌に書いた記事によると、その段階でジョージ・W・ブッシュ大統領はイスラエルやサウジアラビアと手を組んでシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラをターゲットにした秘密工作を始めると決断している。その記事に登場するジョンズホプキンス大学高等国際関係大学院のディーンで外交問題評議会の終身メンバーでもあるバリ・ナスルはサウジアラビアが「ムスリム同胞団やサラフ主義者と深い関係がある」と指摘したうえで、「サウジは最悪のイスラム過激派を動員することができるが、箱を開けて彼らを外へ出したなら、2度と戻すことはできない」と警告している。この工作が戦闘という形で明確になったのは2011年春。リビアとシリアで戦闘が始まり、リビアのムアンマル・アル・カダフィ政権は倒された。アメリカ/NATOとアル・カイダ系武装集団のLIFGが連携しての攻撃だったが、それにはイギリス、フランス、サウジアラビア、カタールなども参加している。カダフィが惨殺された直後、ベンガジの裁判所にはアル・カイダの旗が掲げられ、その映像がYouTubeにアップロードされ、イギリスのデイリー・メイル紙も伝えていた。リビアでの任務を終えたアル・カイダ系武装集団の戦闘員は武器/兵器と共にシリアへ運ばれるが、その工作を実行したのはCIAとアメリカの国務省。その際に化学兵器も運ばれている。この当時のCIA長官はデイビッド・ペトレイアス、国務長官はヒラリー・クリントンだ。ペトレイアスは中央軍司令官、ISAF司令官兼アフガニスタン駐留アメリカ軍司令官、そしてCIA長官に就任した軍人でリチャード・チェイニー元副大統領やヒラリー・クリントンに近い。戦闘員と武器の輸送はこの人脈が実行したとも言える。こうした輸送が進められていた2012年8月、アメリカ軍の情報機関DIAはシリア情勢に関する報告書を作成、反シリア政府軍の主力がサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQI(DIAによると、アル・ヌスラとはAQIがシリアで使っていた名称)で、西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコの支援を受けているとしている。シリアで政府軍と戦っている集団に事実上、穏健派はいないということだ。この報告書が作成された翌月、ベンガジのアメリカ領事館が襲撃されてクリストファー・スティーブンス大使も殺されている。ハーシュによると、襲撃の前日、スティーブンスは武器輸送の責任者だったCIAの人間と会談、襲撃の当日には武器を輸送する海運会社の人間と会っていた。これと並行して西側の有力メディアはリビアのようなNATOの直接的な軍事介入を正当化するための偽情報を流すが、その嘘は発覚、13年には化学兵器を政府軍が使ったする話も伝えるが、これも嘘だということが明らかにされた。(この内容は本ブログで繰り返し書いてきたので、今回は割愛する。)そして2014年3月、イラクの首相だったヌーリ・アル・マリキはアメリカの同盟国であるサウジアラビアやカタールがイラクの反政府勢力へ資金を提供していると批判、ロシアへ接近する姿勢を見せる。4月に行われた議会選挙ではマリキが党首を務める法治国家連合が第1党になり、本来なら彼が首相を続けるのだが、指名されない。アメリカ政府が介入したと見られている。首相に選ばれたのはハイデル・アル・アバディだった。その年の1月にファルージャで「イスラム首長国」の建国が宣言され、6月にはモスルを制圧している。その際にトヨタ製の真新しい小型トラック「ハイラックス」を連ねてパレード、その様子は撮影され、世界に配信された。ダーイッシュの登場だ。その写真を見て少なからぬ人が疑問を持っただろう。アメリカ軍はスパイ衛星、偵察機、通信傍受、人からの情報などでダーイッシュの動きを把握していたはずで、ダーイッシュのパレードは絶好の攻撃目標。8月にダーイッシュは拘束していたジェームズ・フォーリーの首を切り落としたと宣伝、映像が公開される。ところが、その映像では首の前で6回ほどナイフが動いているものの、実際に切っていないうえ、血が噴き出していない。つまり、少なくともカメラの前で彼は殺されていない可能性が高い。この行為がひとつの切っ掛けになり、アメリカ軍を中心とする連合軍は2014年9月にシリアで攻撃を始めるが、その時に現地で取材していたCNNのアーワ・デイモンは翌日朝の放送で、ダーイッシュの戦闘員は空爆の前に極秘情報を入手、攻撃の15から20日前に戦闘員は避難して住民の中に紛れ込んでいたと伝えている。その後、ダーイッシュは支配地を拡大していく。ところが、2015年9月30日にロシア軍がシリア政府の要請で空爆を始めると戦況は一変してダーイッシュは劣勢になる。ロシアの戦闘能力と反ダーイッシュの意思を見たアバディはイラクもロシアに空爆を頼もうとした。そうした動きを見たアメリカ政府は10月20日にジョセフ・ダンフォード米統合参謀本部議長をイラクへ送り込み、ロシアへ支援要請をするなと恫喝したようだ。しかし、イラクはロシア、シリア、イランとの関係を断ったわけでなく、今回のT 90戦車購入につながった。シリア侵略に参加した国のうち、トルコやカタールは離脱、トルコ政府はロシアに対し、シリア北部に展開しているアメリカ軍が拠点にしている10基地の位置をロシアへ知らせたとも言われている。
2017.07.21
西側、特にアメリカの有力メディアは自分たちが創り出した「ロシア疑惑」を語り続けている。ロシア政府が2016年のアメリカ大統領選挙に介入したとする主張を裏付ける証拠はなく、民主党や有力メディアは自分たちを信じろと教祖のようなことを言うだけ。現在のステージで中心に据えられている人物はナタリヤ・ベセルニツカヤなるロシアの弁護士。2016年6月9日にシカゴのトランプ・タワーでドナルド・トランプ大統領の息子、ドナルド・トランプ・ジュニアと会ったことがロシア政府とトランプ大統領の「共謀」を立証する証拠であるかのように宣伝しているのだ。ベセルニツカヤはフェースブックにトランプ大学に関する疑惑を書き込み、ほかの書き込みや写真を見ても反ウラジミル・プーチンであると同時に、反ドナルド・トランプ。彼女の顧客の中にはマネー・ロンダリングの容疑がかけられているキプロスの不動産会社の所有者も含まれ、その弁護活動をしているときにニューヨークの検事と取り引きした経験もある。つまり、経済犯罪が専門の弁護士だろう。その後、その会談には選挙戦を指揮していたポール・マナフォート、大統領の義理の息子であるジャレッド・クシュナー、ポップシンガーのエミン・アガラロフ、その父親の会社の幹部であるアイク・カベラッツェも出席していた。ベセルニツカヤはトランプ・ジュニアらと会ったその日、デニス・カツィーフと会っていたことは本ブログでも書いたとおり。この人物はアメリカでマネー・ロンダリングの容疑がかけられている。その弁護活動のためにアメリカへ来たのだが、ビザ無し入国。それを可能にしたのは、ロレッタ・リンチが長官だった当時の司法省が特別に認めたからだ。デニスはプレベゾン・ホルディングスという持ち株会社を所有しているが、その会社とつながっているフュージョンという会社はマグニツキー法を廃止させるためのロビー活動をしていたとされているが、ロシア疑惑に関する怪しげな報告書を作成した元MI6(イギリスの対外情報機関)オフィサーのクリストファー・スティールを雇った会社でもある。マグニツキー法とは、ロシアで2億3000万ドルの脱税したとされて逮捕されたセルゲイ・マグニツキーという弁護士が獄死、それに対する報復としてアメリカ議会が成立させた法律である。その立法で中心的な役割を果たしたのがビル・ブロウダーで、その人物の下で働いていたのがマグニツキーだ。ブロウダーは自分の会社を乗っ取ったロシア政府高官が不正を働き、マグニツキーはその犠牲になったと主張している。その主張を宣伝するため、反ウラジミル・プーチンで知られている映画監督のアンドレー・ネクラソフを雇う。ところが、取材の過程でネクラソフはブロウダーの会社で働いていた女性が本当の内部告発者で、脱税はブロウダーが行っていたことをつかむ。しかも、その不正にマグニツキーは金庫番として関わっていたことも判明した。ネクラソフはその事実をドキュメンタリーの中に盛り込んだためにブロウダーと対立、作品を公開することが困難になった。つまり、アメリカの有力メディアや議会がロシア攻撃の道具として使っているマグニツキー法は嘘の上に築かれた法律。その法律を使ったロシア攻撃を正当化するためにはネクラソフの作品は抹殺するしかない。アメリカの有力メディアが中東、北アフリカ、ウクライナなどでの侵略戦争を正当化するための偽報道を続けている最中、プロジェクト・ベリタスというグループが隠し撮りでCNNのプロデューサーたちが自分たちの「報道」はインチキだと語る様子を撮影、インターネット上に公開し、CNNの視聴率は大きく下がったと伝えられている。(ココやココやココやココ)CNNに限らず、有力メディアの信頼度は低下している、つまり有力メディアの「報道」は怪しいと考える人が増えている。CNNと同じようにアメリカとロシアとを対立させようとしているワシントン・ポスト紙は「ロシア疑惑」のキーパーソンがジョン・ブレナン前CIA長官やジェームズ・クラッパー元国家情報長官だということを明らかにした。このふたりは公的な席で嘘をついてきたことで有名で、自分たちの報道が信頼できないことを自らが明らかにしたとも言える。が、それでも疑惑を語り続けなければならない状況に陥っている。
2017.07.20
8月12日18時から東京琉球館で愛国者法や緊急事態条項を生み出したプロジェクトについて話します。予約制とのことですので、興味のある方はあらかじめ下記まで連絡してください。東京琉球館住所:東京都豊島区駒込2-17-8電話:03-5974-1333Eメール:dotouch2009@ybb.ne.jphttp://dotouch.cocolog-nifty.com/そのプロジェクトは1982年に出されたNSDD(国家安全保障決定指令)55で始まるのですが、そのベースになる仕組みはドワイト・アイゼンハワー政権の時に作られました。その当時、アメリカの軍や情報機関の好戦派はソ連に対する先制核攻撃を計画、核戦争で政府の機能が麻痺した場合に備えるという名目で地下政府を設置しました。いわゆるアイゼンハワー・テンです。この延長線上にFEMAがあり、その次の段階としてCOGが始まりました。そのCOGは1988年の大統領令12656で対象が核戦争から国家安全保障上の緊急事態に変更され、2001年9月11日の「事態」で始動、愛国者法につながります。日本の緊急事態条項を考える上でもこの問題は考えておく必要があるでしょう。日本の共謀罪は予防拘束を可能にしますが、アメリカにもそうした法律がありました。1950年に発行したマッカラン治安法です。スパイ活動や破壊活動を企む恐れがあると判断された人物を逮捕、拘留する権限を大統領に与えることが定められていました。ハリー・トルーマン大統領は拒否権を行使しますが、議会がこれを翻しました。1971年に成立した反拘留法で廃止されるまで続きます。その前年、1970年に作成されたヒューストン計画はマッカラン治安法を強化するようなないようでした。憲法が認めていないような行為、例えば令状なしの盗聴、信書の開封、さまざまな監視、予防拘束などをFBIやCIAなどの機関に許しています。それを知ったジョン・ミッチェル司法長官は怒り、リチャード・ニクソン大統領を説得して公布の直前、廃案にしています。(Len Colodny & Tom Schachtman, “The Forty Years Wars,” HarperCollins, 2009)アメリカで自国を収容所化する動きは第2次世界大戦の直後に始まり、その流れは途絶えることなく現在まで続いています。それが「自由と民主主義の国」の実態なのです。それに抵抗した大統領や議員もいましたが、さまざまな形で排除されてきました。そうしたアメリカの後を追いかけているのが日本です。
2017.07.18
マイク・ポンペオCIA長官は7月11日、INSA(情報国家安全保障連合)の夕食会で4月6日の出来事について語った。ドナルド・トランプ大統領から4月4日の攻撃について質問されたポンペオは6日、閣僚が集まった会合の席で攻撃に化学兵器が使われ、シリアの体制側が使ったというCIAの結論を伝えたとしている。その報告に基づいてトランプは攻撃を決断、6日の夜、アメリカ海軍の駆逐艦、ポーターとロスから巡航ミサイル(トマホーク)59機がシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射され、少なくとも数機は目標へ到達したという。しかし、シリア政府軍は化学兵器を2013年に廃棄、現在、そうした兵器を保有しているのはアメリカが支援してきた反シリア政府軍だ。ロシア政府が現地での厳密な調査を求めたが、西側は拒否している。以前にも書いたが、ジャーナリストのロバート・パリーは攻撃の直後、ポンペオ長官の主張とは全く違う話を伝えている。4月6日の早朝、ドナルド・トランプ大統領はマイク・ポンペオCIA長官から私的に化学兵器の使用を否定する説明を受けていたとする内部からの情報があるというのだ。6月25日には、ジャーナリストのシーモア・ハーシュが同じ内容の記事をドイツのメディアに書いている。ハーシュによると、4月4日に聖戦主義者の幹部が会議を開くという情報をつかんだロシアとシリアは攻撃計画を立て、その内容をアメリカ側へ伝えたとしている。CIAにも直接、ロシアから攻撃に関する情報が伝えられていた。攻撃の前からアメリカ側はロシアから情報を知らされていたのだ。その記事が出る3日前、6月22日にはフランスのエマニュエル・マクロン大統領がシリア政府による化学兵器の使用は根拠がないと話している。パリーは1980年代の前半にCIAを後ろ盾とするニカラグアの反革命ゲリラ、コントラのコカイン取引を初めて明らかにしたジャーナリストであり、ハーシュはベトナム戦争の際に非武装の住民がアメリカ軍の部隊に虐殺されたソンミ(ミライ)事件を明らかにしたことで知られている。こうしたジャーナリストやマクロン仏大統領の話は、トランプ大統領がシリア政府軍による化学兵器の使用を否定するCIAの情報を無視する形でシリアをトマホークで攻撃したことになる。そうしたことを否定する役割を負っているポンペオとしては、INSAでの発言のように主張するしかなかったのだろう。CIAの歴史を振り返ると、事実を正確に分析する仕組みが破壊されてきたことがわかる。まず1950年10月に破壊活動を目的とする秘密機関のOPCに潜り込まれ、計画局が設置された。計画局の秘密工作の一端が露見したことから1973年3月に計画局は作戦局へ名称が変更され、9/11後の2005年10月にはNCS(国家秘密局)になった。この間、1970年代の半ばにはCIAの内部にソ連の脅威を誇大に宣伝する目的でチームBが活動している。このチームBには後にネオコンと呼ばれる人物が含まれている。この時期、つまりジェラルド・フォード政権でデタント派を粛清した黒幕はポール・ニッツェやアルバート・ウールステッターだが、ニッツェはチームBのメンバー。ウーステッターの教え子で後にネオコンの中心的な存在になるポール・ウォルフォウィッツも加わっていた。このチームを率いていたのはハーバード大学の教授でネオコンと呼ばれるようになるリチャード・パイプス教授だ。9/11の後、この攻撃と無関係のイラクをネオコンは攻撃しようとするが、統合参謀本部の反対もあって軍事侵攻を予定通りには始められなかった。そうしたこともあり、2002年にジョージ・W・ブッシュ政権は偽情報を広めるため、ネオコンのダグラス・フェイス国防次官が国防総省の内部にOSP(特別計画室)という部署を設置した。その室長に任命されたのがウォルフォウィッツと同じようにウーステッターの教え子であるエイブラム・シュルスキー。そのメンバーは4、5名で、「陰謀団」と自称していた。その後もCIAの分析部門は偽情報を広める上で邪魔な存在。そうしたこともあってか、トランプ政権になってCIAの組織見直しが言われるようになった。ネオコンの宣伝媒体になっているニューヨーク・タイムズ紙は見直しの責任者としてケルベロス・キャピタルという投資会社の共同創設者、ステファン・フェインバーグの名前を挙げている。ケルベロスはダインコープという傭兵会社を所有している。現在、アメリカではアフガニスタンへ数千人規模のアメリカ軍部隊を送り込むと言われているが、正規軍ではなくアメリカの傭兵会社に任せるという話も出ている。そのためにトランプ政権はブラックウォーター(Xe、アカデミへ名称変更)の創設者であるエリック・プリンス、そしてフェインバーグを雇ったとも伝えられている。1980年代にアメリカ政府は軍や情報の分野を含めてアウトソーシングを進めたが、今では政府自体の私有化が進んでいるようだ。
2017.07.17
サウジアラビアはモスクの建設などによって、ヨーロッパに「過激主義」を広めているとウィリアム・パティーというイギリスの外交官は語った。勿論、モスク自体が危険なわけではない。モスクを拠点にして活動する人々が危険なのである。パティーはスーダン、イラク、サウジアラビア、アフガニスタンの大使を務め、イスラムの事情には精通しているはず。スーダン、イラク、アフガニスタンはアメリカのネオコンが2001年秋の段階で侵略予定国のリストに載せられていた。イスラム系の過激派と見なされているのはサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団だが、ワッハーブ派はサウジアラビアの国教だ。サウジアラビアが「テロリスト集団」へ直接資金を提供しているとは考えていないとしているが、サウジアラビアが「テロリスト集団」のスポンサーだということは公然の秘密。アメリカでは軍の元幹部や元副大統領なども「アメリカの友好国」という表現で認めている。この「テロリスト」を雇っている現在のサウジアラビア国王や皇太子はイスラエルやネオコンの強い影響下にある。デイビッド・キャメロン政権はジハード集団、つまりサラフィ主義者やムスリム同胞団などに対する外国勢力の支援についての調査を承認したが、テレサ・メイ政権はその報告書を公表しない可能性が出てきた。報告書にはサウジアラビアやカタールといったペルシャ湾岸の産油国の名前が出ていることは間違いなく、それが報告書を封印する理由ではないかと見られている。サウジアラビアが傭兵を雇い、アメリカが武器/兵器を提供して戦闘員を訓練、イスラエルが工作に協力するという構図は1970年代の終盤、アフガニスタンへソ連軍を誘い込むというズビグネフ・ブレジンスキーの戦略が作成された当時から続いている。この当時、戦闘員をリクルートしていたのがオサマ・ビン・ラディンであり、ロビン・クック元英外相によると、CIAがアフガニスタンで訓練したムジャヒディン(聖戦士)のコンピュータ・ファイルがアル・カイダ。ちなみにアル・カイダとは「ベース」を意味、データベースの意味でも使われる。1970年代から80年代にかけてアメリカ政府はこうした戦闘集団を「自由の戦士」と呼んでいたが、2001年9月11日以降は「テロリスト」の象徴になった。2003年にはアメリカ主導軍がイラクを先制攻撃、その国土を破壊し、100万人とも言われる人々を殺している。そのとき、前面に出ていたのは正規軍や特殊部隊のほか、傭兵会社の戦闘員だった。その方法が修正されたのは2011年。「独裁者に対する民衆の蜂起」というシナリオでリビアやシリアで侵略戦争が始まったのだ。そうした「民衆の蜂起」が起こるような状況にはなく、民衆役を演じたのが外国から送り込まれた傭兵、つまりアル・カイダ系武装集団だった。リビアではこうした集団をNATOが空爆で支援、ムアンマ・アル・カダフィ政権を倒すことに成功、今は暴力が支配する破綻国家になっている。この侵略の黒幕は、アメリカ、サウジアラビア、イスラエル、さらにイギリス、フランス、トルコ、カタールといった国々だ。シリアでもアル・カイダ系武装集団、そこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)による侵略戦争が展開され、アメリカ主導軍の支援もあってジハード集団は勢力を拡大、ダマスカス陥落の可能性も高まっていた。そうした流れを一気に断ち切り、侵略軍を壊滅寸前まで追い込んだのがロシア軍。自分たちの手先が総崩れになるのを見て、今ではクルド軍を支援するだけでなく、アメリカ軍もシリアへ侵攻させ、基地を建設している。その一方、アメリカ、サウジアラビア、イスラエルなどの支援を受けてきた戦闘集団の中枢にはカルトの信者がいる。1970年代終盤、サウジアラビア王室も手を焼く存在だった。そうした集団をアフガニスタンへ送り出した理由のひとつは、彼らを国外へ追い出す意味もあった。そうした人々がヨーロッパへ入り、ネットワークを作りつつある。しかも、そうした人々を各国の情報機関が守ってきた。コントロールできると考えたのだろうが、いつ暴走を始めても不思議ではない。アメリカはそれも計算済みかもしれない。ネオコンにとってEUも警戒すべき潜在的ライバルなのである。
2017.07.16
ニューヨーク・タイムズ紙は7月9日、ナタリヤ・ベセルニツカヤなるロシアの弁護士がドナルド・トランプ大統領の息子、ドナルド・トランプ・ジュニアと2016年6月9日に会ったと伝えた。それがロシア政府とトランプ大統領との謀議であるかのように宣伝しているのだが、そうした証拠は示されていない。トランプ・ジュニアと会ったその日、彼女はデニス・カツィーフと会っている。この人物はいわゆる実業家で、父親はロシア国営鉄道のペトロ・カツィーフ副総裁。アメリカでマネー・ロンダリングの容疑がかけられているのだが、ロシアにおける脱税と結びついている。そのデニスの弁護のためにベセルニツカヤはアメリカへ入国したのだが、彼女はビザがなかった。司法省の特別の計らいでビザ無しでアメリカへ入れたのだ。当時の司法長官はロレッタ・リンチ。バラク・オバマ政権の友好的な姿勢が感じられる。しかし、カツィーフとある3日前、ベセルニツカヤはフェースブックにトランプ大学に関する疑惑を書き込んでいる。そのほかの書き込みや写真を見ても、彼女は反ウラジミル・トランプであると同時に、反ドナルド・トランプ。デニスはプレベゾン・ホルディングスという持ち株会社を所有しているが、その会社とつながっているフュージョンという会社はマグニツキー法を廃止させるためのロビー活動をしていたとされている。2億3000万ドルの脱税容疑で逮捕されていたセルゲイ・マグニツキーという弁護士が獄死したことに対する報復だが、ロシア政府にとって大きな痛手ではない。このフュージョンはロシア疑惑に関する怪しげな報告書を作成した元MI6(イギリスの対外情報機関)オフィサーのクリストファー・スティールを雇った会社でもある。ロシア疑惑を仕掛けた会社だとも言えるだろう。プーチンは西側の巨大資本の手先になっている勢力を摘発するため、汚職など刑事事件を利用してきた。ボリス・エリツィン時代、巨大資本が政府を支配していたことから、オリガルヒと呼ばれる人々は法律を守るという意識がほとんどなかった。つまり法律を犯していた。そこを突いたのだ。そこで、脱税の摘発は今も続いている。6月24日にベセルニツカヤは外交委員会のロシアやウクライナに関する公聴会を傍聴しているのだが、彼女の隣に元ロシア大使のマイケル・マクフォールが座っていたこと。マクフォールが大使だったのは2012年1月から14年2月。就任直後に反プーチン派の活動家がアメリカ大使館を訪問している。その活動家とは、「戦略31」のボリス・ネムツォフとイーブゲニヤ・チリコーワ、「モスクワ・ヘルシンキ・グループ」のレフ・ポノマレフ、選挙監視グループ「GOLOS」のリリヤ・シバノーワたち。マクフォールが大使を辞めた2014年2月は、ウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターをアメリカが成功させた頃だ。
2017.07.15
デリゾールでの戦闘でもダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)は敗走していると伝えられている。こうした状況を見て住民の一部も立ち上がってダーイッシュのリーダーたち数人を殺害、副司令官を含む幹部3名は脱出したという。2015年にロシア軍がシリア政府の要請で軍事介入して以来、アメリカ、サウジアラビア、イスラエルを中心とする侵略勢力に雇われた傭兵集団は押されはじめ、兵力の集中が図られてきた。去年の10月、モスルからダーイッシュの部隊が逃げ出した際、アメリカやサウジアラビアはその「ムジャヒディン」を攻撃せず、シリアのデリゾールやパルミラへ安全に移動させることで両国はダーイッシュと合意していた。アメリカ側は9000人程度の戦闘員を移動させるつもりだったようだが、思惑通りに進んだかどうかは不明。こうしたアメリカ主導軍の姿勢にイラク政府軍側は不満を抱いていたと言われている。しかし、デリゾールでの戦況が悪くなった今年3月にアメリカ軍はヘリコプターを使い、モスルやデリゾールからダーイッシュの指揮官たちを救出している。(ココやココ)その後、ダーイッシュはラッカに集結して政府軍による制圧を防ぐ形になった。アメリカ軍が到着するとデリゾールへ向かうが、残った部隊はアメリア主導軍に攻撃されている。ダーイッシュやアル・カイダ系武装集団の敗色が濃厚になった2016年9月、バラク・オバマ政権は特殊部隊をシリア北部にある7つの基地へ派遣、今年に入って第11海兵遠征部隊がシリアで戦闘態勢を整えたと報道されている。傭兵に頼れなくなり、自国軍を投入したということだ。シリアの南部にはイスラエルがあるが、ヨルダンにはアメリカとイギリスが拠点を築き、そこからシリア政府の承認をえないまま特殊部隊をシリア領内、バグダッドとダマスカスを結ぶ幹線が通るアル・タンフへ侵入させ、シリア政府軍を攻撃している。7月に入るとアメリカ軍とイスラエル軍は共同でシリアを攻撃する予定だったが、それを察知したロシアは高性能の防空システムS-400を稼働させ、攻撃計画を中止させたと言われている。現在もアル・タンフはアメリカ軍とイギリス軍が制圧しているが、それより南の地域では傭兵部隊が壊滅、米英軍は囲まれた形になった。アメリカ軍としては、何らかの口実を作ってシリア政府軍を叩きたいところだろうが、そこにはロシア軍がいる。
2017.07.14
イラクのハイデル・アル・アバディ首相がモスルでダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)に勝利したと宣言、西側メディアは大きく取り上げている。ダーイッシュの支配地が縮小しはじめたのはロシア軍がシリア政府の要請で軍事介入した2015年9月30日以降のこと。その前、アメリカ軍がシリア政府の承認を得ないまま勝手に空爆を始めてからは支配地を広げていた。モスルのダーイッシュが制圧したのは2014年1月にファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言してから5カ月後のことだった。その際、武装勢力はトヨタ製小型トラック「ハイラックス」を連ねて走行、自分たちの存在をアピールしていたが、アメリカ軍はそのパレードに手を出していない。アメリカにはスパイ衛星、偵察機、通信傍受、そしてエージェントによる情報網などで動きはつかんでいたはずで、知らなかったという言い訳は通用しない。こうした状況の中、イラクの首相だったヌーリ・アル・マリキは2014年3月にサウジアラビアやカタールが反政府勢力へ資金を提供していると批判、ロシアへ接近する姿勢を見せていた。サウジアラビアやカタールだけでなく、アメリカがダーイッシュの黒幕だと認識していたのだろう。そして4月に議会選挙があり、マリキが党首を務める法治国家連合が第1党になった。本来ならマリキが首相を続けることになるのだが、指名されていない。アメリカ政府が選挙に介入したと見られている。マリキはペルシャ湾岸産油国を批判しただけでなく、アメリカ軍の永続的な駐留やアメリカ兵の不逮捕特権を認めなかった人物で、アメリカ支配層には嫌われていた。しかし、新しく首相になったハイデル・アル・アバディ首相もアメリカに背き、ロシアがシリア政府の要請で空爆を始めると、イラクもロシアに空爆を頼みたいという意思を示した。ロシア軍が本当にダーイッシュやアル・カイダ系武装集団、つまりサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を主力とする侵略勢力を攻撃するのを見て、心が動いたのだろう。それに対し、アメリカはジョセフ・ダンフォード米統合参謀本部議長を10月20日にイラクへ送り込む。同議長はイラク政府からロシアへ支援要請をするなと恫喝したようだが、その後もロシア、シリア、イランとの連携は続く。ダーイッシュが売り出される2年前の時点で、アメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)は反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団だと指摘、バラク・オバマ政権が宣伝していた「穏健派」は存在しないとする報告書をホワイトハウスへ提出している。その中で東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告されている。それがダーイッシュという形で現実になった。そうした経緯があったこともあり、2014年にダーイッシュが登場するとオバマ政権の内部で激しい対立が起こり、その年の8月にDIA局長だったマイケル・フリン中将は解任されている。ファルージャやモスルをダーイッシュに支配させることはオバマ政権の主流派が望んでいたことだと言えるだろう。その翌月、マーティン・デンプシー統合参謀本部議長(当時)はアラブの主要同盟国がダーイッシュに資金を提供していると議会で証言している。退役から1年後の2015年8月、フリン元DIA局長はアル・ジャジーラの番組へ出演、その際に自分たちの任務は提出される情報の正確さをできるだけ高めることにあり、情報に基づく政策の決定はバラク・オバマ大統領が行うと指摘している。つまり、オバマ政権の決定がダーイッシュの勢力を拡大させたというわけだ。これは事実である。フリンと同じようにダーイッシュやアル・カイダ系武装集団を危険だと考えていたデンプシー統合参謀本部議長は2015年9月25日に退役、その5日後にロシア軍はシリアで空爆を始めた。オバマ政権のメッセージに対する回答だ。その後、ダーイッシュやアル・カイダ系武装勢力は急速に弱体化、アメリカやサウジアラビアは約9000名の「ムジャヒディン」をモスルからシリアのデリゾールやパルミラへ安全に移動させることで合意していたとされているが、一部はシリアへは向かわずに出身国へ戻ったようである。この段階でバシャール・アル・アサド政権を倒して傀儡体制を樹立するという当初の目論見は蜂起、シリア北部を切り取る方針に切り替えたのだろう。そのプランでもラッカやデリゾールは重要。ラッカはアメリカ軍が制圧、デリゾールへ戦闘員を集中させる。そのデリゾールへ向かっていたシリア政府軍をアメリカ主導軍のF-16戦闘機2機とA-10対地攻撃機2機が攻撃したのは2016年9月17日のことだった。空爆の7分後にダーイッシュの部隊が地上でシリア政府軍に対する攻撃を開始していることから、両者は連携していると見られている。28日には2つの橋を、30日にも別の橋2つをそれぞれ爆撃して破壊した。攻撃された当時、シリア政府軍はダーイッシュに対する攻撃を準備していた。また、アメリカ軍の偵察衛星のつかんだ情報が反政府軍へ渡されていた可能性が高いとする分析もある。そうした流れの中でモスルをイラク政府軍が奪還したと宣伝されているのだが、アメリカはイラクの北部も切り取ろうとするはず。ダーイッシュにしろ、アル・カイダ系武装勢力にしろ、傭兵にすぎない。サウジアラビアなどが資金を出し、アメリカやイギリスが武器や兵器を提供、軍事訓練をするという仕組みが残っている限り、これからも出現する。タグが付け替えられるだけだ。
2017.07.13
7月4日に朝鮮はICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験に成功したと発表、アメリカのレックス・ティラーソン国務長官は「アメリカや同盟国、地域への脅威を高める」と非難していた。が、発射直後にアメリカ太平洋軍やロシア軍は中距離弾道ミサイルだと分析。日本の稲田朋美防衛相も5月14日に発射したのと同じ中距離弾か、その派生型だと語っている。聯合ニュースによると、韓国の国家情報院もICBMではないと判断しているようだ。ロシアは現在も判断を変えていない。朝鮮がミサイルを発射したその日、中国の習近平国家主席とロシアのウラジミル・プーチン大統領はモスクワで会談、天然ガスのパイプラインや高速鉄道の建設など経済的な強い結びつきを示し、両国は戦略的なパートナーだと宣言している。アメリカは中国を甘い餌で引き戻し、中国とロシアを分断させるという「楽観的な見方をする親米派」もいたが、そうしたことにはなっていない。それに対し、アメリカ海軍は7月2日、駆逐艦のステセムを西沙諸島のトリトン島から12海里(22キロメートル)のあたりを航行させて中国を挑発、中国側が軍艦と軍用機を派遣するということもあった。アメリカ政府にとって朝鮮のミサイル発射は願ってもないことであり、中距離弾道ミサイルよりICBMだとした方が良いだろう。アメリカはロシアや中国との国境周辺にミサイルを配備、東アジアでは韓国にTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムをすでに持ち込み、日本は地上配備型イージスシステム「イージス・アショア」を導入するようだ。いずれも攻撃用ミサイルを発射することもできる。1971年8月にリチャード・ニクソン米大統領が金とドルとの交換停止を発表した時点でアメリカ経済は破綻、それ以来、基軸通貨を発行する特権で生き延びてきた。発行したドルを回収するためにペトロダラーやそれに類する仕組みを作り、それでもだぶつくドルを吸い上げるために金融規制を大幅に緩和して投機市場を育成してきた。バブルとハイパーインフレの本質は同じだ。その詐欺的な手法が限界に達し、ロシアや中国を中心にドル離れが起こっている。ドルが基軸通貨でなくなったなら、アメリカは破綻国家になる。世界的に見て彼らが比較的優位に立っているのは軍事力だけであり、それで支配システムを維持しようとしている。それもロシアに比べると見劣りするのだが、他の国に比べれば強力。それを使ったり、傭兵を投入してアフガニスタン、イラク、リビア、シリア、ウクライナなどを破壊、多くの人々を殺してきた。同じことをユーラシア大陸の東岸で行っても不思議ではない。朝鮮半島をリビアやシリアのようにすれば、中国は疲弊する。勿論、そうなれば日本も甚大な被害を受ける。戦争で破壊されるだけでなく、難民が押し寄せるだろう。そうした事態を防ぐためなら、早い段階でロシアや中国が朝鮮を攻撃する可能性もある。秘密保護法にしろ、盗聴法にしろ、共謀罪にしろ、そうした状況へ突入することを反対させないためには必要な法律だ。
2017.07.12
アメリカでは民主党や有力メディアがロシアによる選挙への介入が宣伝され、ドナルド・トランプ大統領を攻撃する材料になってきた。そうした勢力が創り出した「疑惑」を調べるため、特別検察官に任命されたのがロバート・ミュラー。2001年9月4日から13年9月4日にかけてFBI長官を務めた人物だ。FBI長官に就任した1週間後、ニューヨークの世界貿易センターの3棟とバージニア州アーリントンにある国防総省の本部庁舎が攻撃されている。この事件の真相を上手に隠蔽したと陰口をたたかれているのがミュラーだ。トランプを追い詰める役割を負っているミューラーだが、ロシアのハッキングされたと民主党が主張するコンピュータを調べていない。民主党が調査を拒否しているのだ。実際に調べたとされているのはサイバーセキュリティー会社のクラウドストライクだけ。この事実が問題になっている。バラク・オバマ政権の国土安全保障長官だったジェー・ジョンソンによると、民主党は同省の協力も拒否している。2014年にソニー・ピクチャーズの情報が漏れた際、朝鮮が盗んだと主張したのもクラウドストライク。後に内部の人間が外へ出したことが判明している。民主党や有力メディアは証拠を示すことなくトランプのロシア疑惑を叫んでいたが、今年3月に報告書らしきものが公表される。イギリスの対外情報機関、MI6の元オフィサーで民間情報会社を経営するクリストファー・スティールが作成したのだが、根拠薄弱だということは本人も認めている。そのスティールが作成した報告書を元にロシア疑惑劇の開幕を下院情報委員会で告げたのがアダム・シッフ下院議員だ。こうした反トランプ・キャンペーンの一環でジェームズ・コミー前FBI長官は6月8日に上院情報特別委員会の公聴会へ出席、証言したのだが、トランプ大統領に打撃を与えられなかっただけでなく、自らが機密情報を漏らしたことを明らかにしてしまった。最悪の場合、懲役35年を言い渡される可能性がある。ロシア攻撃を始める前の民主党は、WikiLeaksが公表したヒラリー・クリントンらの電子メールで窮地に陥っていた。そうしたメールの中には2015年5月の段階で民主党の幹部たちがヒラリー・クリントンを同党の候補者にすることを内定していたことを示唆するものが含まれていた。実は、この電子メールが公表されなくても民主党でそのようなことが決められていたことは推測されていた。2015年6月11日から14日かけてオーストリアで開かれたビルダーバーグ・グループの会合にジム・メッシナというヒラリー・クリントンの旧友が出席していたからだ。この段階でアメリカの大統領選挙はクリントンが軸になると少なからぬ人は見ていた。こうした流れに変化が生じたのは2016年2月10日のこと。ヘンリー・キッシンジャーがロシアを訪問してウラジミル・プーチン露大統領と会談、22日にはシリアで停戦の合意が成立したのだ。停戦はアメリカが配下の武装集団の体勢を立て直すときに使われる常套手段ではあるが、支配層の内部にもクリントン周辺の好戦的な姿勢に危機感を抱く人がいても不思議ではない。共和党ではトランプ、民主党ではバーニー・サンダースが人気になる。ふたりの共通点は戦争や新自由主義経済に反対していたこと。民主党の幹部たちはさまざまな手段を講じてサンダースを押さえ込むことに成功した。最終的には予備選の前夜にAPが「クリントン勝利」を宣告して止めを刺した。スーパー代議員(上位代議員、あるいは特別代議員と訳されている)の投票予測でクリントンが圧倒し、勝利は確定していると宣伝、そうした雰囲気を作ったのだ。7月12日にサンダースはロシアや中国との軍事的な緊張を高め、巨大資本のカネ儲けに奉仕するクリントンを支援すると表明するが、今年に入り、FBIはサンダースを捜査のターゲットにしている。支配層の邪魔をしたトランプとサンダースをFBIが懲罰しようとしているようにも見える。
2017.07.11
G20の会合に欠席したサウジアラビアのサルマン国王がロシアを訪問するという話が流れている。ネオコンやイスラエルと緊密な関係にあるサウジアラビアだが、ロシアと話し合う必要性を感じているのだろう。ただ、これまでは買収、あるいは脅しでロシアを操ろうとして逆効果だった。もし実際に訪問した場合、きちんと話し合いができるかどうかが問題になる。そのサウジアラビアは6月5日にカタールとの外交関係を断絶すると発表、バーレーン、エジプト、アラブ首長国連邦も同調、このうちエジプトを除く4カ国はカタールとの陸、海、空の移動も禁止した。この強硬策を主導したのは副皇太子だったモハンマド・ビン・サルマン。その月の21日には皇太子に就任した。モハンマド・ビン・サルマンは24時間でカタールは屈服すると見通していたとする情報も流れているが、1カ月以上を経過した今でも屈服していない。見通しを誤ったと言えるだろう。シリアへの侵略が当初の思惑通りに進まないこともあり、カタールはすでにアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの3国同盟から離れ、すでにイラン、トルコ、そしておそらくロシアとも接触、今回の兵糧攻めへの対策もできていたようだ。食糧や水を確保するためにカタールはイランやトルコと交渉、トルコはサウジアラビアの軍事侵攻に備え、軍隊を派遣している。ロシアも支援を申し入れた。こうした展開もサウジアラビア国王の目をロシアへ向けさせた一因かもしれない。この皇太子がネオコンやイスラエルの影響下にあるだけでなく、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)やアル・カイダ系武装集団を雇っている人物だということは公然の秘密だが、その証拠になる文書を入手したとエジプトの日刊紙が報道している。サウジアラビア国内では国王親子に対する反発は強まっているようで、そうしたルートから情報が漏れている可能性がある。この話が広まると、国王就任は難しくなるかもしれない。
2017.07.10
サウジアラビアのサルマン国王と息子のムハンマド・ビン・サルマン皇太子がG20の会合に欠席したことから、サウジアラビアが不安定化しているのではないかと推測する人もいるが、中東では国王の交代が噂されている。皇太子のムハンマド・ビン・サルマンが新国王になるのではないかというのだが、この皇太子がイスラエルと緊密な関係にあることは有名。6月21日にサルマン国王が皇太子を甥のムハンマド・ビン・ナーイフから息子のムハンマド・ビン・サルマン交代させた後、イスラエル軍がF16やF15といった戦闘機、電子戦用の航空機など18機をサウジアラビアへ派遣したとイランのメディアは伝えていたが、ありえない話ではない。国王の交代が現実になれば、中東や北アフリカでの体制転覆計画を推進してきたアメリカ(ネオコン)、サウジアラビア、イスラエルの3国同盟は強化され、経済の新自由主義化も進みそうだ。現在、シリアへの侵略作戦はロシア軍の介入もあって破綻状態にあるが、戦争をエスカレートさせることで逆転を図ろうとする可能性も出てくる。今年2月下旬から約1カ月にわたってサルマン国王はマレーシア、インドネシア、ブルネイ、日本、中国、モルディブを歴訪したが、その地域でダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)の活動が目立つようになり、フィリピン南部のミンダナオ島にあるマラウィ市では、5月23日にマウテ・グループやアブ・サヤフ、つまりダーイッシュとつながる武装集団が制圧し、ロドリゴ・ドゥテルテ政権は同島に戒厳令を敷いた。その日、ドゥテルテはモスクワでウラジミル・プーチン露大統領と両国の関係を強めるための話し合いをしている最中だった。こうした武装蜂起とサウジアラビア国王の訪問を関連づける人もいる。G20ではドナルド・トランプ米大統領とウラジミル・プーチン露大統領が事前に言われていたより友好的な雰囲気の中で会談しているが、大統領は安全保障分野をコントロールできていないようで、トランプとプーチンとの関係を悪化させようと何かを仕掛けてくる可能性がある。そうしたことはバラク・オバマ政権で引き起こされている。
2017.07.09
ドナルド・トランプ米大統領とウラジミル・プーチン露大統領はG20出席するためにドイツを訪問、ふたりは7月7日に会談した。アメリカ国内ではアメリカとロシアとの関係修復を嫌う勢力がバラク・オバマ政権の時代から有力メディアを使い、ロシアを「悪魔化」するキャンペーンを展開してきたが、予想以上に友好的な雰囲気で始まった。今回の会談を壊すことはできなかったようだが、アメリカとロシアとの間で軍事的な緊張が高まっている状況に変化はない。ところが、その宣伝をしていた有力メディアのひとつ、CNNのプロデューサーなどロシアの選挙介入を宣伝していた人々の本音をプロジェクト・ベリタスというグループが隠し撮りで撮影、自分たちの番組がインチキだということを語らせている。(ココやココやココやココ)また、CNNをチャカしたGIFがインターネットに流れるとCNNはその制作者を特定、脅して逆に問題化した。隠し撮りされたプロデューサーは視聴率のために偽報道をしていると口にしているが、その視聴率はここ1カ月の間に急落している。CNNと同じようにアメリカとロシアとを対立させようとしているワシントン・ポスト紙はすでに「ロシア疑惑」のキーパーソンがジョン・ブレナン前CIA長官やジェームズ・クラッパー元国家情報長官だということを明らかにしているが、このふたりは公的な席で嘘をついてきたことで有名。自分たちの報道が信頼できないことを自らが明らかにした。もうひとつG20で注目されていたのはサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が出席するかどうかということ。結局、サルマン国王と息子の皇太子は出席せず、G20に出向いたのは金融大臣のモハメド・アル・ジャダーン。サウジアラビア国内が不安定化しているという情報は確かなようだ。サウジアラビア国内が不安定化した最大の理由はムハンマド・ビン・サルマン皇太子の好戦的な戦略。この人物はネオコン/イスラエルの強い影響下にあり、リビアやシリアだけでなくイエメン侵略も主導したと言われている。経済的には新自由主義に心酔している。リビアやシリアの侵略には手先としてサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心に編成された傭兵集団、つまりアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を使っていたが、こうした武装勢力はロシア軍が介入してから敗走、総崩れの状態。そこでアメリカ軍がその幹部を救出していたが、ダーイッシュを率いているとされるアブ・バクル・アル・バグダディは5月28日にロシア軍がラッカ近くで実施した空爆で殺害された可能性が高まっている。次のリーダーはサダム・フセイン時代にイラク軍の軍人だった人物だとも噂されているが、その一方、バグダディの死を口にしたダーイッシュの幹部が拘束、あるいは処刑されているという情報を流れている。アル・バグダディの死は侵略軍の内部を動揺させているからだと見られている。さまざまなタグをつけたアル・カイダ系武装集団にしろ、ダーイッシュにしろ、アメリカ、サウジアラビア、イスラエルと中心とする勢力の傭兵にすぎない。ひとつのプロジェクトが駄目になったら、別のプロジェクトを始めるだけいのことで、実際、シリアでもそうしたことが試みられているが、そうしたことが行われても、アメリカ側が厳しい状況にあることには変化がない。これまでサウジアラビアと一緒に傭兵を雇っていたカタール、あるいはシリアを侵略する拠点を提供してきたトルコが侵略勢力から離脱したことも侵略勢力にはダメージだった。シリア周辺の拠点はヨルダンとイスラエルくらい。そうした状況に対処するため、アメリカ軍はクルド軍を支援するだけでなく、自国の特殊部隊や海兵隊を地上部隊として投入、シリア政府軍の進撃を止めようとしている。それに留まらず、アメリカの好戦派はシリア領内に侵入させた地上部隊、地中海や周辺国に配置した戦闘機などを使ってアメリカ軍/NATO軍にシリア政府軍を本格的に攻撃させようとしている。そのために流されているのが「政府軍による新たな化学兵器の使用」というプロパガンダ。イラク攻撃の前に宣伝された大量破壊兵器の話と同じ。2013年にも同じようなことをしていたが、すぐ嘘だということがばれている。それでもシリアを破壊した勢力は「政府軍による新たな化学兵器の使用」を演出、本格的な戦闘を始めると脅している。トランプもこれに同調するような発言をしていたが、プーチンとの会談でどうなるかが注目されていた。アメリカ政府は証拠を示すことなく、シリア政府軍が4月4日に化学兵器を使ったと主張して4月6日夜に駆逐艦のポーターとロスから巡航ミサイルのトマホーク59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射させ、少なくとも数機は目標へ到達したと言われている。しかし、4月6日早朝、マイク・ポンペオCIA長官はトランプ大統領に対してシリア政府側は化学兵器を使用していないと説明していたと伝えられている。攻撃の直後、ロバート・パリーがCIAの内部情報として伝えたほか、6月25日にシーモア・ハーシュも同じ内容の記事をドイツのメディアに書いている。ハーシュによると、4月4日に聖戦主義者の幹部が会議を開くという情報をつかんだロシアとシリアは攻撃計画を立てたのだが、その内容をアメリカ側へ知らせている。CIAにも直接、ロシアから攻撃に関する情報が伝えられていた。そこでアメリカ側は攻撃前から監視していたはずで、CIAもシリア政府軍が化学兵器を使っていないことを知っていた。この一件はCIAの内部にも危機感を呼び起こした可能性がある。事実に基づかずに戦争へ突入する危険性が高まったということだ。そしてまた、トランプ政権は「政府軍による新たな化学兵器の使用」を演出、本格的な戦闘を始めると脅していた。それに対し、ロシア軍は6月23日に地中海の東側にいるロシア海軍の2フリゲート艦と潜水艦から発射された6機のカリバル巡航ミサイルでダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)の司令部や兵器庫を破壊、7月5日にはハマにあった侵略軍の司令部をTu-95長距離爆撃機から発射されたKh-101巡航ミサイルで攻撃した。カリバルとKh-101は新型兵器で、アメリカ軍が警戒している。カリバルは2015年にロシア軍が攻撃を始めて間もない頃、カスピ海に浮かぶ艦船から26機が発射され、1500キロメートル離れた11のターゲットへ正確に命中、アメリカ軍を震撼させた。アメリカ支配層の内部で危機感が広がれば、ロシアとの戦争が回避できるかもしれないが、好戦派はそれを受け入れられないだろう。中東や北アフリカだけでなく、東アジアから南アジアにかけての地域でダーイッシュ的な武装集団を暴れさせるかもしれない。そうした兆候は見られる。
2017.07.08
7月7日にドナルド・トランプ米大統領はウラジミル・プーチン露大統領と会談する予定になっている。その前、7月3日から4日にかけてプーチンはモスクワで中国の習近平国家主席と会い、両国が戦略的な協力関係にあることを宣言、エネルギーの取り引きを中心とする貿易が急速に膨らんでいることを強調している。勿論、中国とロシアは軍事面での連携も強まっている。中国とロシアが戦略的な同盟国になった最大の原因はアメリカの軍事的な圧力。冷戦時代の両国には西側を民主主義が機能していると信じていた人、あるいはアメリカ流の社会にすれば全員がブルジョアになれるという幻想を抱いていた人もいたようだが、ソ連消滅から四半世紀以上を経た現在、そうした人はほとんどいないだろう。ウォルフォウィッツ・ドクトリンに基づいてアメリカは侵略戦争を繰り返し、その矛先が自分たちに向けられていることを中国もロシアも認識している。アメリカは中国を懐柔してロシアを孤立化させようとしていると語る人もいるが、そうした状況ではない。そうした見方が出てくるのはアメリカに希望をもっているからだろうが、ロシアや中国がそうした希望を持っているようには見えない。ウォルフォウィッツ・ドクトリンという世界制覇プロジェクトは破綻している。それにもかかわらず世界制覇を未だに夢見ているのがアメリカだ。その夢は人類を滅亡させかねない悪夢でもある。
2017.07.07
シリアの東部、クルド軍が支配している地域にアメリカ軍は新たに7つの軍事基地を建設したと伝えられている。手先の武装集団に任せていられない状況になってきたのだろう。2016年9月、バラク・オバマ政権は特殊部隊をシリア北部にある7つの基地へ派遣、今年に入って第11海兵遠征部隊がシリアで戦闘態勢を整えたと報道されているほか、アメリカの特殊部隊がクルド軍とラッカへ入ったとも言われているが、アメリカのロン・ポール元下院議員は第11海兵遠征部隊の動きをラッカをシリア政府軍より先に占領することが目的だろうと推測していた。アメリカ、サウジアラビア、イスラエル、イギリス、フランス、トルコ、カタールなどの外国勢力が送り込んだサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心に編成された傭兵集団が急速に支配地域を縮小させる中、アメリカはクルド軍への支援を強化するだけでなく、自国軍を送り込んでシリアの領土を奪い取ろうとしている。侵略国の中心はアメリカ、サウジアラビア、イスラエルで、カタールは天然ガスを輸送するパイプラインの建設計画に関するシリアのバシャール・アル・アサド政権との話し合いが不調に終わった後、侵略に加わった国。カタールとの関係が強いトルコも後から参加した国だ。そのカタールとトルコが侵略作戦から離脱、侵略している傭兵への支援を止め、トルコからシリアへ延びていた侵略軍の兵站線も細ってしまった。2015年9月30日にシリア政府の要請を受けたロシア軍が侵略軍への攻撃を始めたことが最も大きな要因で、カタールやトルコの戦線離脱にもつながった。おそらく、当初の予定ではリビアと同じように途中からNATO軍、あるいはアメリカ主導軍の本格的な軍事侵攻を行い、アサド体制を倒す予定だったのだろうが、ロシアによって阻止されてきた。そこでアメリカ政府はイラクを侵略した時と同じように、「大量破壊兵器」を持ち出している。例によって証拠を示すことなく、シリア政府軍が4月4日に化学兵器を使ったと西側の政府や有力メディアは主張、アメリカ軍は4月6日夜に駆逐艦のポーターとロスから巡航ミサイルのトマホーク59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射させ、少なくとも数機は目標へ到達したと言われている。しかし、この主張は証拠が示されていないと言うことだけでなく、マイク・ポンペオCIA長官が4月6日の早朝、ドナルド・トランプ大統領に対してシリア政府側は化学兵器を使用していないと説明していたと伝えられている。攻撃の直後、ロバート・パリーがCIAの内部情報として伝えている。さらに、6月25日、シーモア・ハーシュも同じ内容の記事をドイツのメディアに書いている。彼によると、4月4日に聖戦主義者の幹部が会議を開くという情報をつかんだロシアとシリアは攻撃計画を立てたのだが、その内容をアメリカ側へ知らせている。CIAにも直接、ロシアから攻撃に関する情報が伝えられていた。そこでアメリカ側は攻撃前から監視していたはずで、CIAもシリア政府軍が化学兵器を使っていないことを知っていたわけである。そうした情報が流れているにもかかわらず、アメリカ政府は現在、「政府軍による新たな化学兵器の使用」を演出、本格的な戦闘を始めると脅しているが、それに対し、ロシア軍は6月23日に地中海の東側にいるロシア海軍の2フリゲート艦と潜水艦から発射された6機のカリバル巡航ミサイルでダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)の司令部や兵器庫を破壊、7月5日にはハマにあった侵略軍の司令部をTu-95長距離爆撃機から発射されたKh-101巡航ミサイルで攻撃した。カリバルとKh-101は新型兵器で、アメリカ軍が警戒しているもの。カリバルは2015年にロシア軍が攻撃を始めて間もない頃、カスピ海に浮かぶ艦船から26機が発射され、1500キロメートル離れた11のターゲットへ正確に命中、アメリカ軍を震撼させた。ロシアがそうした兵器を持っていると考えていなかったのだ。こうした最新型兵器による攻撃はアメリカ側に対する警告だと見られている。アメリカが地上軍を使って本格的な戦闘を始めたなら、ロシアがどのように攻撃するかを知らせたということだ。ネオコンとイスラエルはアメリカとロシアを軍事衝突させる方向へ導こうとしているが、そうなるとアメリカは一気に崩壊する可能性がある。アメリカの中東や北アフリカにおける立場を悪くさせている国のひとつ、サウジアラビアではサルマン国王が6月21日に皇太子を甥のムハンマド・ビン・ナーイフから息子のムハンマド・ビン・サルマン交代させた。このビン・サルマン新皇太子は安全保障の分野を取り仕切っているが、ネオコンやイスラエルの影響下にあることでも知られている。すでにサウジアラビアは財政の赤字化など支配システムが揺らいでいるが、ビン・ナーイルの解任は国内をさらに不安定化させることになった。クーデターに備え、イスラエル軍がF16やF15といった戦闘機、電子戦用の航空機など18機をサウジアラビアへ派遣したとも中東では伝えられている。ビン・サルマン皇太子がドイツで開かれるG20に出席するかどうかも注目されている。
2017.07.06
中国の習近平国家主席とロシアのウラジミル・プーチン大統領が7月4日にモスクワで会談、両国の関係が緊密であることを示す直前、南シナ海ではアメリカ海軍が駆逐艦のステセムが7月2日に西沙諸島のトリトン島から12海里(22キロメートル)のあたりを航行させ、中国は対抗して軍艦と軍用機を派遣した。韓国軍によると、4日には朝鮮が同国の西部から東海岸へ向けて弾道ミサイルを発射したという。例によって、アメリカ側が軍事的な緊張を高めたいと願うタイミングでのミサイル発射だったアメリカから脅された結果、ロシアと中国は急速に関係を深め、今では完全な同盟国。中露を威圧するためにアメリカは両国の国境周辺にミサイルを配備している。東アジアでは韓国にTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムをすでに持ち込み、日本は地上配備型イージスシステム「イージス・アショア」を導入するようだ。いずれも防衛名目だが、攻撃用ミサイルを発射することもできる。こうしたミサイルが中国やロシア、特に中国を狙ったものであることは明白。THAAD2基は前の朴槿恵政権が機能不全の状態になったどさくさに紛れて搬入したが、さらに新大統領の文在寅に通告しないで4基が持ち込まれたと伝えられている。事情はどうであれ、中国やロシアは対抗措置をとる。ドイツのハンブルグで7月7日から8日にかけて開催されるG20サミットでドナルド・トランプ米大統領はウラジミル・プーチン露大統領と会談、ネオコンたちはトランプにプーチンを脅すように求めていることだろう。トランプは中国、韓国、日本の首脳とも会う予定で、朝鮮の核兵器やミサイルの開発への対応を協議すると西側メディアは報道しているが、中国が問題にしているのはTHAAD、そして南シナ海におけるアメリカ側の挑発だろう。アメリカのターゲットはあくまでも中国とロシアだ。【追加】ロイターによると、5日に韓国とアメリカは朝鮮指導部を狙った攻撃的な弾道ミサイルの演習を実施した。
2017.07.05
中国の習近平国家主席は7月3日にモスクワへ到着、ウラジミル・プーチンとの会談に臨むという。ドイツのハンブルグで7月7日から8日にかけて開催されるG20サミットを前にしてのことで、両国の関係が強まっていることを示す出来事だ。サミットでドナルド・トランプ米大統領がウラジミル・プーチン露大統領に最後通牒を突きつけ、それが不調に終われば戦争になるとも予想されているが、そうした動きに対抗する打ち合わせをするのかもしれない。現在、アメリカはシリアや南シナ海で軍事的な挑発を続け、サミットの前後に何らかの軍事作戦を実行するとも懸念されている。イラクやシリアではアメリカがイスラエルやサウジアラビアと共同で使ってきた傭兵集団のアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュの壊滅が近い状態。しかも途中まで同盟関係にあったカタールやトルコがここにきて離反、イランやロシアへ接近している。ネオコン、イスラエル、サウジアラビアは軍事的な威圧を強め、ロシアや中国を脅そうとしているのだろうが、この脅しは通用しない。通用しないにもかかわらず脅しをエスカレートしてきた結果、核戦争の危険性が過去に例がないほど高まっている。現在、アメリカでは有力メディアや「市民」による示威行動でドナルド・トランプを脅しているが、これはヒラリー・クリントン的な政策を実行させようとしているのだろう。すでにアメリカとイギリスは特殊部隊をシリアの南部へ侵入させて拠点を築き、新ダーイッシュを訓練している。北部へは特殊部隊のほか海兵隊の部隊も入れてシリア政府軍の動きを封じようとしているが、その北ではトルコ軍が活動中で、アメリカ支配層の思惑通りに進むかどうかは不明。ロシア国内にまだ西側巨大資本の手先になっている人々のネットワークが残っているように、中国国内にもそうした人脈が存在している。1980年代に新自由主義を導入している中国はロシアより強い影響下にあるだろう。プーチンはそうしたネットワークを潰すために法律を利用した。ボリス・エリツィン時代には西側巨大資本の手先になっている私的権力、いわゆるオリガルヒが政府を支配、法律を無視して国民資産の略奪を続けていた。つまり、法律を犯していた。そこを突いたのである。アメリカをはじめとする勢力がシリアやリビアへの侵略戦争を始めた2年後、2013年に中国では習近平が「大トラもハエも一緒にたたけ」と号令をかけていた。すでに中国もアメリカの支配層がロシアや中国を属国化しようとしていることに気づいていただろう。そこで、プーチンと同じことを計画した可能性がある。ロシアと中国の長距離核兵器を先制第1撃で破壊する能力をアメリカは近いうちに持てるとするフォーリン・アフェアーズ誌の2006年3/4月号へ掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文「未来のための変革と再編」くらいは中国側も読んでいただろう。そうした中、中国のホテルでニール・ヘイウッドなるイギリス人が死亡、谷開来なる女性弁護士に殺されたとされている。この女性の夫は重慶市に君臨していた薄煕来。この一家とヘイウッドが結びつく切っ掛けは息子の薄嚝逸のイギリス留学だったようだ。この息子は12歳の時からイギリスの学校へ通い、オックスフォード大学やハーバード大学で学んでいる。プレーボーイ的なライフスタイルだったようだが、その間、薄嚝逸の面倒を見ていたのがヘイウッドだったとされている。このイギリス人は薄夫妻の国外投資にも関与していたようで、それに関する書類をイギリスの弁護士に預けていたと伝えられている。しかも、ヘイウッドはMI6(イギリスの対外情報機関)の協力者だとする証言がある。
2017.07.04
7月2日に実施された東京都議会議員選挙の結果、127議席のうち自民党23議席と都民ファーストの会55議席を会わせて78議席になった。選挙前はそれぞれ57議席と6議席で合わせると63議席。この2党の実態は同じであり、タグの付け替えで人心を操作しているにすぎない。人心操作はうまくいったようだ。この結果はフランスの大統領選挙と議会選挙を連想させる。大統領選挙では共和国前進のエマニュエル・マクロンが当選、議会選挙ではマクロンの与党が577議席のうち308議席を獲得している。圧勝だ。このマクロンは2006年から09年まで社会党に所属、その間、08年にロスチャイルド系の巨大投資銀行へ入り、重役として200万ユーロという報酬を得ていたという人物。ロスチャイルド資本の代理人だ。2012年から14年にかけてマクロンはフランソワ・オランド政権の大統領府副事務総長を務め、14年に経済産業デジタル大臣に就任すると巨大資本のカネ儲けを支援する新自由主義的な政策を推進した。私的権力が公的権力を支配するシステムを実現しようとしている、つまりファシスト。マクロンは「イスラエル・ファースト」でも知られ、イスラエルに対するBDS(ボイコット、資本の引き揚げ、制裁)運動に強く反対している。このマクロンもタグの付け替えで人びとを誑かして勝利した。小池百合子やその周辺も同じ手法を採用して成功したわけだ。有権者もそうした実態を理解、安心して自民党とは別のタグをつけた体制派に投票したのだろう。
2017.07.03
インドとパキスタンが6月9日にSCO(上海協力機構/上海合作組織)のメンバーになった。すでに中国、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタンは加盟済みで、アフガニスタン、ベラルーシ、イラン、モンゴルはオブザーバー国。さらに対話パートナーとしてスリランカ、アゼルバイジャン、アルメニア、カンボジア、ネパール、そしてトルコが名を連ねている。犬猿の仲と見られているインドとパキスタンが同時にメンバー国になったのは興味深い。アメリカ、サウジアラビア、イスラエルを中心とする侵略戦争に対抗する形でロシア、中国、シリア、イランが強く結びついているが、ここにきてトルコやカタールも接近してきた。サウジアラビアは親イスラエル色を強めているが、それに伴って国内は不安定化、ここにきて治安部隊と武装グループの銃撃戦も伝えられている。インドはBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)のひとつでロシアや中国との友好的な関係を築いてきたが、ロシア主導で中国とパキスタンの関係が強化されてくると、インドの情報機関RAW(調査分析局)はアメリカのCIA、イスラエルのモサドなどとパキスタンに対する破壊活動を始めたとする話が流れてくるようになった。東南アジアでは5月23日にフィリピン南部、ミンダナオ島のマラウィ市でマウテ・グループやアブ・サヤフ、つまりダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)とつながる武装集団が制圧し、ロドリゴ・ドゥテルテ政権は同島に戒厳令を敷いて制圧に乗り出しているが、それだけでなく、インドネシア、マレーシア、タイなどでサラフィ主義者が活発に動き始め、ミャンマーでアウン・サン・スー・チー派から弾圧されているロヒンギャと呼ばれるイスラム教徒の中へ潜り込み始め、中国では新疆ウイグル自治区でもサラフィ主義者が破壊活動を準備ているとする話も伝わっている。ロシアや中国は経済的なネットワークを張り巡らせ、アメリカを中心とする勢力は孤立しつつある。それをサラフィ主義者やネオ・ナチといった勢力を使った軍事侵略で破壊しようとしているが、それも限界に近づいている。
2017.07.02
アメリカ軍はシリア沖に2機のRC-135と海軍のP-8ポセイドンを飛行させ、電子情報を収集する一方、空母ジョージ・H・W・ブッシュをイスラエルへ寄港させると伝えられている。6月26日にホワイトハウスの広報担当、シーン・スパイサーはシリア政府が化学兵器を計画、もし攻撃したなら報復すると発言したが、この主張が戯言だということは明らかで、単にシリアに対する本格的な攻撃を予定していると脅していると理解している人は少なくない。アメリカとイスラエルの同盟国、サウジアラビアではサルマン国王が6月21日、甥のムハンマド・ビン・ナーイフを解任、息子で副皇太子だったムハンマド・ビン・サルマンの皇太子への昇格させている。新皇太子はすでに国防大臣で、軍事部門や情報部門に大きな影響力を持っているのだが、その兄弟も要職についている。今年4月にエネルギー担当大臣へ就任したアブドラジズ・ビン・サルマンや駐米大使になったハリド・ビン・サルマンだ。その一方、解任されたナーイフ元皇太子が自宅で何記されているという情報も流れている。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子はネオコンの強い影響下にあり、武力で物事を解決したがる傾向が顕著。イエメンへの軍事侵略やカタールに対する兵糧攻めを指揮しているとも言われているが、イエメンの件にしろカタールの件にしろ、いずれも思惑通りには進んでいない。それどころか、ネオコン流の「脅せば屈する」という遣り方は同盟国を離反させている。24時間でカタールは屈服すると新皇太子は見通していたとする話が伝わっているが、事前にカタールはイラン、トルコ、おそらくロシアとも話し合いを進め、対策を練っていた。トルコは防衛のために軍隊をカタールへ派遣、天然ガスの輸送でイランと連携する可能性がある。ロシアも食糧や飲料水などを提供する用意があると表明している。すでにサウジアラビアは原油価格の下落で財政赤字に陥り、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の稚拙な政策がさらに国内を不安定化させているが、そのサウジアラビアへイスラエルが18機の戦闘機を送り込んだとも伝えられているが、この情報が事実なら、これ自体が新たな不安定要因になる。また、シリアではバシャール・アル・アサド政権を倒して傀儡体制を樹立するという目論見も失敗、手先として送り込んだサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心とする傭兵集団が壊滅するのは時間の問題で、アメリカ軍は自国の地上軍を送り込み、クルド軍に対する支援を強化している。この結果、クルドと敵対関係にあるトルコはアメリカからさらに離れることになった。表面的な兵力の差を利用してネオコンはロシアを脅すつもりかもしれないが、ロシアも対策はできている。すでに巡航ミサイルなどでアメリカに警告しているが、追い詰められているネオコンは軍事力に訴える可能性もある。ドイツのハンブルグで開かれるG20サミットが開かれる7月7日から8日の前後はアメリカの動きから目を離せない。
2017.07.01
全29件 (29件中 1-29件目)
1