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東京琉球館で10月14日18時(午後6時)から東京琉球館で「なぜアメリカはロシアとの戦争をはじめたのか」というテーマで話をします。予約制とのことですので、興味のある方はあらかじめ下記まで連絡してください。東京琉球館住所:東京都豊島区駒込2-17-8電話:03-5974-1333http://dotouch.cocolog-nifty.com/アメリカではネオコンや有力メディアを中心にしてロシアに対する偽情報攻撃を展開、経済戦争を仕掛け、外交官を追放、サンフランシスコにあるロシア領事館とワシントンDCやニューヨーク市にある関連施設を閉鎖させ、そのスタッフを追い出しています。マイク・モレル元CIA副長官は昨年8月にテレビ番組でロシア人やイラン人を殺すと明言し、その後11月から今年2月までの間にロシアの幹部外交官6名が射殺されたり心臓発作などで急死した事実は本ブログでも指摘しました。9月19日にはアル・ヌスラ(アル・カイダ系武装勢力)が停戦合意に違反し、戦闘縮小地帯をパトロールしていた29名のロシア軍憲兵隊を襲撃、それに対してロシア軍とシリア軍は航空機からの攻撃と特殊部隊によって反撃、襲撃側の戦闘員850名を死亡させ、多くの戦闘車両を破壊したとロシア国防省から発表されました。ロシア側は攻撃の背後にアメリカの情報機関が存在していると明言しています。アル・カイダとはCIAの訓練を受けた戦闘員の登録リストであり、アル・ヌスラもダーイッシュもアメリカの好戦派が手先として使ってきました。これは本ブログで繰り返し書いてきたことです。CIAとセットになっている特殊部隊も関与しているということでしょう。22日にはイスラエルの航空機が自国領内からミサイルでダマスカスの空港を攻撃、24日にロシア国防省はダーイッシュの陣地にアメリカ軍の特殊部隊が使う装甲車や装備が写っている衛星写真を公表、その地域をクルド系のSDF(シリア民主軍)が安全に通過していることも明らかにしました。アメリカ軍、クルド、ダーイッシュが同盟関係に入っているとする情報と合致します。その24日、ダーイッシュの砲撃でロシア軍事顧問団のバレリー・アサポフ中将とふたりの大佐が砲撃が殺されました。正確な情報がアメリカ側からダーイッシュへ流れていたと見られています。ロシア政府はこれまでアメリカ軍とロシア軍との衝突を避けようとしてきました。そのためロシア軍は計画している軍事作戦の内容を通告してきたのですが、その情報はアル・ヌスラやダーイッシュへ筒抜けだということでしょう。ハリウッドで成功したアフリカ系俳優、モーガン・フリーマンはアメリカがロシアと戦争状態にあると宣伝していますが、それは事実です。ただ、攻撃を仕掛けているのはロシアでなくアメリカの好戦派ですが。
2017.09.30
民進党が希望の党へ吸収されるようだ。民進党の代表を務める前原誠司は野田佳彦幹事長を同じ松下政経塾の出身。経済問題は新自由主義(ニューリベラル)、国際問題は新保守(ネオコンサーバティブ/ネオコン)。希望の党は東京都知事の小池百合子で、日本会議国会議員懇談会の副会長を務めていた人物。この懇談会と一心同体の関係にある日本会議は安倍晋三首相を支える柱だ。タグの付け替えで演出しているようだが、実態は似たようなものだ。前原が菅直人政権の国土交通大臣だった2010年9月、同省の外局である海上保安庁は日中漁業協定を無視して尖閣諸島付近で操業中の中国漁船を取り締まり、船長を逮捕して中国との関係を悪化させている。1970年代に田中角栄と周恩来とが棚上げで合意していた尖閣諸島の領有権問題に火をつけたのである。本来なら外務省が関係の修復を図るものだが、2010年9月に前原が外務大臣に就任するという茶番劇があった。その後、2011年3月11日に東北の太平洋側で起こった巨大地震、東京電力福島第一原発の炉心溶融事故で日本と中国の対立は緩和されそうになるが、そうした雰囲気を石原親子が消し去ってしまった。つまり、2011年12月に石原伸晃が「ハドソン研究所で講演、尖閣諸島を公的な管理下に置いて自衛隊を常駐させ、軍事予算を大きく増やすと発言したのである。この背後にはネオコンの大物でポール・ウォルフォウィッツの弟子にあたるI・ルイス・リビーがいたと言われている。リビーはハドソン研究所の上級副所長だった。さらに、2012年4月に石原伸晃の父親、石原慎太郎知事(当時)が「ヘリテージ財団」主催のシンポジウムで尖閣諸島の魚釣島、北小島、南児島を東京都が買い取る意向を示して中国との関係は決定的に悪くなる。安倍晋三もハドソン研究所と関係が深いが、そのつながりを築いたのもリビーだ。現在、ネオコンをはじめとするアメリカの好戦派はロシアや中国との対立を深め、シリアではアメリカの特殊部隊がロシア軍を直接攻撃しはじめた可能性が高い。アメリカが傭兵として使ってきたアル・カイダ系武装勢力やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)をロシア軍が打ち破ってしまったことが直接攻撃の一因になっている。デリゾールの近くではロシア軍のバレリー・アサポフ中将とふたりの大佐がダーイッシュの砲撃で死亡した。詳しい情報がアメリカ側からダーイッシュ側へ伝えられたと見られている。2015年9月から統合参謀本部議長を務めているジョセフ・ダンフォード大将は中国脅威論を主張しているが、これは1991年12月にソ連が消滅して以来、ネオコンが宣伝してきたこと。2001年1月から大統領を務めたジョージ・W・ブッシュも当初、中国脅威論を主張していた。好戦派として知られているダンフォードの前任者はサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心とする武装集団、つまりアル・カイダ系グループやダーイッシュを危険だと考え、シリア政府とも協力していたマーティン・デンプシー大将。シリアで政府軍と戦っている中心はサラフィ主義者だと指摘、その危険性を警告していたマイケル・フリンDIA局長は2014年8月に追い出され、戦争には消極的だったチャック・ヘイゲル国防長官は15年2月に解任されている。アメリカ政府が好戦的な方向へ舵を切った直後、2015年9月30日にロシア軍はシリア政府の要請を受けて軍事介入、アル・カイダ系武装集団やダーイッシュを壊滅寸前まで追い込んでいる。そこでイスラエル政府はパニック状態で、アメリカのネオコンは軍事的な緊張を高めてロシアや中国を脅そうとしている。つまり、核戦争が勃発する可能性が高まった。アメリカの好戦派に支配されている日本の支配層が臨戦態勢に入るのは必然だ。
2017.09.29
朝鮮半島の危機とはアメリカの中国に対する軍事的な恫喝を意味しているが、今、最も危険な状態にあるのは中東。戦争ビジネスのカネ儲けに気をとられている場合ではない。アメリカ、イスラエル、サウジアラビアを中心とする勢力はアル・カイダ系武装集団を使ってアフリカを欧米から自立させようとしたリビアを破壊することに成功したが、シリアではロシア軍の介入で失敗、手駒のアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)は敗走した。イスラエル政府はパニック状態で、同国のアーイェレット・ジャーケド司法大臣は「もしアサドが生き延びたいならイランをシリアへ入れてはならない」と口にしている。イランやロシアがいてはバシャール・アル・アサドを排除できないという苛立ちから出た発言だろう。イスラエルやその同盟者が新たに使っている手駒は言うまでもなくクルド。すでにシリアではアメリカ、ダーイッシュ/アル・カイダ系武装集団、クルドのトライアングルができあがっている。元々イラクのクルドはイスラエルの指揮下にあるが、シリアのクルドも侵略勢力に付いたようだ。中東に住んでいる人々ではなく、中東を植民地として食い物にしてきた欧米列強と手を組んだということになるだろう。ロシアの憲兵隊を含む部隊に対する攻撃やロシア軍事顧問団のバレリー・アサポフ中将を殺した作戦にアメリカの特殊部隊が関与している可能性は高く、この新体制はすでにロシアと戦争を始めていると言える。「朝鮮半島の危機」とは比較にならないほど危険な状態になっている。その状態を創り出しているのはアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟だ。
2017.09.28
アメリカが掲げる「テロとの戦争」は「テロリストを使った侵略戦争」を意味している。最初から「知る人ぞ知る」話だったが、リビアでムアンマル・アル・カダフィ体制を倒した際にアメリカ/NATOとアル・カイダ系武装集団との連携が明確になり、2014年には「ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)」というタグをつけた集団を売り出したが、これもアメリカ、イスラエル、サウジアラビアを中心とする勢力の傭兵に過ぎないことが明らかにされてきた。最近では、アメリカの特殊部隊に守られる形でクルド系武装集団がダーイッシュの支配地を通過している衛星写真をロシア国防省が公表している。この段階になってもアメリカがダーイッシュやアル・カイダ系武装集団のタグをつけた集団と戦っていると主張する神経は相当図太い。クルド系の部隊がダーイッシュの支配地を抜けて向かった先にはデリゾールがあり、ユーフラテス川をシリア政府軍が渡るのを阻止しようとしている。デリゾールの東南、ユーフラテス川沿いには油田が広がり、そこをクルドも政府も押さえようとしている。そのデリゾールでロシア軍事顧問団の幹部、バレリー・アサポフ中将が戦死した。アル・カイダ系武装集団やダーイッシュはこれまでできなかったような作戦を成功させたのだが、その背後にはアメリカの特殊部隊が存在、情報が伝えられていたと推測する人は少なくない。これまでロシア軍はアメリカ軍との直接的な衝突を避けるため情報を伝えてきたが、それが漏れている可能性は小さくない。その直前、ハマの北東部ではアメリカを後ろ盾とする武装勢力がシリア政府軍とロシアの憲兵隊を攻撃して包囲するということがあった。これはロシアの空軍と特殊部隊が救援に向かい、アメリカ側の戦闘員850名が死亡、多くの戦闘車両が破壊されている。当初の作戦が成功したならば、ロシア軍の兵士を処刑しながら交渉するつもりだったとも言われている。この作戦もアメリカの特殊部隊が立てた疑いがある。現在、アメリカ中央軍を指揮しているジョセフ・ボーテルは特殊部隊の出身で、イランを軍事的な手段で不安定化させるべきだと主張している。2016年7月にトルコでクーデター未遂があったが、その際、ボーテルはジョン・キャンベルISAF司令官と共に黒幕だと指摘されていた。アメリカの好戦派にはさまざまな勢力が含まれているが、中長期の戦略を立てているのはシオニストのネオコン。1991年12月にソ連が消滅するとアメリカが唯一の超大国になったと考えて世界制覇プランを国防総省のDPG草案という形で作成した。いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンだ。1990年代のロシアは西側の傀儡であるボリス・エリツィンが大統領を務め、腐敗したクレムリンの住人と手を組んだ一部の人間が国の資産を略奪、庶民は貧困化し、ロシアは疲弊した。21世紀に入り、そうした状況を変えたのがウラジミル・プーチンを中心とするグループで、国力を急速に回復させていく。その動きにアメリカ支配層はついていけなかったようで、フォーリン・アフェアーズ誌(CFR/外交問題評議会が発行)の2006年に3/4月号に掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文には、アメリカ軍の先制第1撃によってロシアと中国の長距離核兵器を破壊できるようになる日は近いと主張している。その論文が出た翌年にアメリカ軍はアフリカ大陸を担当する統合軍AFRICOMを創設、核弾頭W80-1を搭載した6基の巡航ミサイルAGM-129が「ミス」でB-52H爆撃機へ積み込まれ、ノース・ダコタ州のミノ空軍基地からルイジアナ州のバークスデール空軍基地へ運ばれるという事件も引き起こされている。軍の実態を知っている人は、これをミスだと考えない人もいる。2008年7月10日にはアメリカのコンドリーサ・ライス国務長官がジョージア(グルジア)を訪問、8月7日にミヘイル・サーカシビリ大統領は分離独立派に対して対話を訴え、その8時間後の深夜に南オセチアを奇襲攻撃した。2001年以降、イスラエルの軍事会社がジョージア(グルジア)へ無人飛行機、暗視装置、対航空機装置、砲弾、ロケット、電子システムなどを含む武器/兵器を提供、軍事訓練も行っている。この間、イスラエルは南オセチアへの軍事侵攻を準備していたとも言えるだろう。イスラエルがサーカシビリ政権へ食い込んでいたことは当時の閣僚を見てもわかる。流暢にヘブライ語を話せる閣僚がふたりいたのだ。ひとりは奇襲攻撃の責任者とも言える国防大臣のダビト・ケゼラシビリであり、もうひとりは南オセチア問題で交渉を担当していた再統一担当大臣のテムル・ヤコバシビリだ。ウォルフォウィッツ・ドクトリンを見ても推測できるように、ネオコンはキール・リーバーやダリル・プレスのように考えていた可能性が高い。ジョージア侵攻作戦はイスラエルの作戦であり、ロシア軍に完敗したショックは大きかっただろう。強い相手にはゲリラ戦。ゲリラ部隊としてアル・カイダ系武装集団が活発に動き始めるのはこの後だ。こうした戦術の変更はあっても、ネオコンは世界制覇を諦めず、ロシアや中国を核戦争で脅している。狂気を演じているつもりだろうが、演技ではなくなっている。
2017.09.28
イラクのクルド組織が「独立」を問う住民投票を実施、圧倒的な多数が賛成したようだ。アメリカに侵略されて破壊されたイラクの現状、投票の仕組みを考えれば当然の結果だろう。圧倒的な多数が独立に賛成したという点はクリミアに似ているが、両者は決定的に違う。クリミアはキエフでネオ・ナチが成功させたクーデターに反対しての行動だったが、クルドの場合はアメリカやイスラエルの中東支配のために行動しているからだ。前者は侵略に反対してのことであり、後者は侵略の一環だ。クルドの独立国家ができたなら「第2のイスラエル」になる。前にも書いたが、イラクのクルドは遅くとも1960年代からイスラエルの支配下にある。当時の指導者、ムラー・バルザニはイスラエルの情報機関、モサドのオフィサーになったとも言われている人物だが、その息子、マスード・バルザニは現在の指導者。イスラエルはクルドを支援する目的でクルドが盗掘した石油を買っている。西側の政府や有力メディアはイスラエルの利益になる組織や人物は実態に関係なく、好意的に扱う。そのため、クルドも英雄的なおとぎ話の主人公として語られてきた。21世紀だけでもイラクやシリアをはじめとする中東、リビアがある北アフリカ、ロシアに接したウクライナなどを侵略、破壊と殺戮を繰り広げてきたアメリカはイスラエルの強い影響下にある。議員の圧倒的多数はイスラエルの忠実な僕だ。アメリカがイスラエルに逆らわなくなるのは1967年からだと言えるだろう。1963年11月22日に暗殺されたジョン・F・ケネディ大統領は生前、イスラエルの核兵器開発には厳しい姿勢で臨んでいる。同国のダビッド・ベングリオン首相と後任のレビ・エシュコル首相に対し、半年ごとの査察を要求する手紙をケネディ大統領は送りつけているのだ。核兵器開発疑惑が解消されない場合、アメリカ政府のイスラエル支援は危機的な状況になると警告していた。(John J. Mearsheimer & Stephen M. Walt, “The Israel Lobby”, Farrar, Straus And Giroux, 2007)それだけでなく、ケネディ大統領は「イスラエル建国」のために故郷を追われて難民化したパレスチナ人の苦境に同情、住んでいた家へ戻り、隣人と平和的に暮らす意思のある難民の帰還を認めた国連決議194号の履行を支持していた。(Seymour M. Hersh, “The Samson Option,” Random House, 1991)ケネディ暗殺を受け、副大統領から昇格したリンドン・ジョンソンは上院議員の時代から親イスラエルで知られ、そのスポンサーはイスラエルの建国や核兵器開発のスポンサーだった富豪のエイブ・フェインバーグ。ハリー・トルーマンのスポンサーでもあった。フェインバーグと並ぶイスラエルの後ろ盾と言える人物はフランスを拠点にしていたエドモンド・アドルフ・ド・ロスチャイルド。そのシオニズム信仰は祖父譲りのようだ。親イスラエルのジョンソンが大統領だった1967年6月8日、アメリカ海軍の情報収集船、リバティがイスラエル軍に攻撃されている。乗組員のうち34名が死亡、171名が負傷しているが、イスラエル軍の執拗な攻撃は船を沈没させ、乗組員を皆殺しにすることが目的だった可能性がきわめて高い。アメリカとイスラエルはこれを「誤爆」で処理したが、アメリカの艦船だと報告、命令に背いて攻撃しなかったイスラエル軍のパイロットは処罰されている。状況から考えてもアメリカの情報収集戦だということをわかった上での攻撃だった。この攻撃で沈没を免れたリバティは壊された通信機器を修理、第6艦隊へ救援を要請、すぐに空母サラトガから複数の戦闘機が向かおうとしたのだが、艦隊司令官やホワイトハウスは引き返すように命令している。救援に向かうのはその約1時間後だった。この時の遣り取りは近くにいたアメリカ海軍の潜水艦や上空を飛んでいた電子偵察機が記録していたが、命令でデータは破棄され、リバティの乗組員には沈黙が命じられた。そうした隠蔽工作の責任者だった人物はジョン・マケイン・ジュニア(ジョン・マケイン上院議員の父親)だ。実は、攻撃の2カ月前、ジョンソン政権で秘密工作を統括していた303委員会がフロントレット 615という計画を始めている。イスラエル政府の一部と手を組み、アメリカ軍がエジプトとの戦争に介入する口実を作ることが目的だった。その一部、サイアナイド(シアン化合物)作戦でリバティを沈没させようとしたと言われている。しかし、リバティを沈没させられず、生存者がいたことから作戦は破綻してしまった。もし、計画通り沈没させていたなら、ソ連とアメリカとの核戦争が始まっていただろう。イスラエルはアメリカ支配層の弱みを握ったとも言える。
2017.09.27
シリアで活動しているロシア軍事顧問団の幹部、バレリー・アサポフ中将がダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)の砲撃により、デリゾールで死亡したと9月25日に発表された。そばにいたふたりの大佐も死亡したという。ロシアのセルゲイ・リャブコフ副外務大臣はアメリカの二面政策に責任があると語ったようだ。ダーイッシュは2014年の初頭から売り出された戦闘集団だが、AQIやアル・ヌスラといったアル・カイダ系武装集団と同じで、アメリカ、サウジアラビア、イスラエルを中心とする勢力の傭兵部隊。1997年から2001年までイギリスの外相を務めたロビン・クックはアル・カイダについて、CIAがアフガニスタンでロシア軍を潰すために雇い、訓練した数千名に及ぶムジャヒディン(聖戦士)のコンピュータ・ファイルだと説明している。また、マイケル・フリン中将が局長だった時代のDIA(国防情報局)は2012年に反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団だと指摘、バラク・オバマ政権のシリア侵略政策を変更しないと東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があると警告、それがダーイッシュという形で現実になったわけだ。ダーイッシュが売り出された直後にフリンはDIA局長を解任されるが、2015年8月に彼はアル・ジャジーラの番組へ出演、ダーイッシュが勢力を拡大できたのはオバマ政権の政策によると発言している。そのダーイッシュの陣地にアメリカ軍の特殊部隊が使う装甲車や装備が写っている衛星写真を公表、戦闘態勢にあるダーイッシュ部隊の中をその特殊部隊がクルド系のSDF(シリア民主軍)を平和裏に通過させていたという。クルドはダーイッシュに支配されていた油田を押さえると同時に、シリア政府軍がユーフラテス川を渡ることを阻止しようとしている。そこでダムから放水して水位を上昇させている。このクルドは一枚岩でなく、イラクやイランを拠点にする集団とシリアやトルコを拠点にする集団では全く違う。1960年代からイスラエルの指揮下に入っているイラクのクルドはソラニをいう言語を使い、文字はアラビア文字。シリアのクルドはクルマンジと呼ばれる言語でラテン文字。こうした違いはあるが、最近はイラク系もシリア系も石油をイスラエルへ売却して儲けるという共通項があり、シリア系もアメリカなどの影響下に入っている。ハマの北東部ではアメリカを後ろ盾とする武装勢力がシリア政府軍を攻撃して包囲、ロシアの空軍と特殊部隊が反撃してアメリカ側の戦闘員850名が死亡、多くの戦闘車両が破壊されたという出来事があったことも本ブログでは伝えた。包囲された部隊にはロシア軍の兵士もいたようで、アサポフ中将の件にしろ、ハマ北東部での戦闘にしろ、アメリカ軍はロシア軍を狙い始めているように見える。
2017.09.26
ロシア国防省がアメリカ軍の特殊部隊とダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)との関係を示す衛星写真を公表した。同省によると写真は9月8日から12日にかけてデリゾールの北にあるダーイッシュの陣地を撮影したもので、そこにはアメリカ軍の特殊部隊が使う装甲車や装備が写っていると説明されている。アメリカ軍とダーイッシュとの関係は知られている話。それ自体は驚きでないが、ロシア軍が今の時点で公表したことは興味深い。本ブログでも指摘しているようにダーイッシュの敗北は決定的だが、この戦闘集団はあくまでもアメリカ、イスラエル、サウジアラビアを中心とする勢力が編成した傭兵にすぎない。そこで、この3国同盟は新たなプロジェクトをスタートさせた。クルドを使った新たな侵略戦争だ。イラクのクルドは遅くとも1960年代からイスラエルの指揮下にあり、その関係は今でも続いている。さらに、今年6月頃からはシリアのクルドがアメリカの影響下に入ったと伝えられてきたが、その情報は正しかったようだ。現在、クルドはアメリカを後ろ盾にしてユーフラテス川より北の部分を支配、シリア政府軍の渡河を妨害している。クルド系のSDF(シリア民主軍)はシリア政府軍のユーフラテス川渡河を妨害するためにダムから放水、ハマの北東部ではアメリカを後ろ盾とする武装勢力がシリア政府軍を攻撃して包囲、ロシアの空軍と特殊部隊が反撃してアメリカ側の戦闘員850名が死亡、多くの戦闘車両が破壊されたという出来事があったことも本ブログでは伝えた。リビアやシリアに対する侵略を始めたのはバラク・オバマ政権。2011年春のことだが、その翌年にはアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)が反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団だと指摘する報告書をホワイトハウスへ提出している。オバマ政権が主張していた「穏健派」は事実上、存在しないということだ。その中で、東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告されていた。それがダーイッシュという形で現実になったのは2014年前半のことである。こうした事態が影響したのか、報告書が作成された当時のDIA局長がマイケル・フリン中将はダーイッシュが売り出された直後の2014年8月に退役させられてしまう。そのフリンは翌年の8月にアル・ジャジーラの番組へ出演、ダーイッシュが勢力を拡大できたのはオバマ政権の政策によると発言したが、これは事実である。2015年9月30日にシリア政府の要請で軍事介入したロシア軍はダーイッシュやアル・カイダ系武装勢力を本気で攻撃、こうした傭兵部隊は劣勢になった。あくまでもシリア政府軍を叩き、バシャール・アル・アサド政権を倒すことを目的にしていたアメリカ軍とは戦争の目的が根本的に違ったのだ。手駒の傭兵が劣勢になるのを見て、オバマ政権は特殊部隊をシリア北部にある7つの基地へ派遣する。トルコ政府によると、アメリカはクルドが支配している地域に10カ所以上の軍事基地を建設済みだという。サラフィー主義者が支配していた地域を現在、クルドが制圧しようとしているが、そのクルドにはアメリカのほかイスラエルとサウジアラビアが存在していることも公然の秘密。クルドの「独立国」が誕生したなら、そこは3国同盟の「満州国」になるだろう。そのためにもデリゾールでの戦闘は重要だった。その戦闘を優位にするため、アメリカを後ろ盾とする武装勢力がハマの北東部でシリア政府軍を攻撃して包囲、ロシアの空軍と特殊部隊の反撃で多くの死傷者を出したわけだが、この戦闘はロシア軍とアメリカ軍が直接、衝突する可能性が高まったことを示している。そこで、両軍の幹部が中東で差しの話し合いをしたのだろう。これまでロシア軍はイスラエル軍との交戦を避けてきたが、そうした状態が今後も続く保障はない。中東では圧倒的な軍事力を持つイスラエルだが、ロシアが相手ではひとたまりもないだろう。そこでイスラエルにアメリカは恒久的な軍事基地を建設、ロシアはシリアに基地を作るようだ。ネオコンをはじめとするアメリカの好戦派は1992年にたてた世界制覇計画を強引に進めようとしている。日本にもアメリカ軍の恒久的な軍事基地がいくつもあるが、これは中国やロシアを締め上げるための出撃基地。明治時代から日本はダーイッシュと同じように、アングロ-シオニストの傭兵として扱われてきた。例外はアメリカでウォール街と対立していたニューディール派がホワイトハウスの主導権を握っていた期間だけだ。
2017.09.25
イラクのクルド勢力は9月25日に独立の是非を問う住民投票を強行するようだ。アメリカを後ろ盾とするクーデターによって憲法を無視して成立したウクライナのキエフ政権とは違い、イラクの現政権は合法的に成立している。イラクの住民投票は新たな戦争を始める切っ掛けになるかもしれない。その戦争でアメリカ軍とロシア軍が衝突する可能性を否定できない。そのイラクで住民投票を強行する背景にはアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟が存在することは言うまでもないだろう。イラクのクルド勢力は冷戦時代からイスラエルの影響下にあり、住民投票の後にイスラエルは20万人ほどを移住させ、サウジアラビアは軍事基地を建設する意向をそれぞれ示している。イスラエルの手先として動いてきたのはイラクのクルドだが、ここにきてシリアのクルドもアメリカの影響下に入り、シリア政府軍との本格的な戦争の準備中。武器/兵器をクルド勢力へ供給されている。すでにバラク・オバマ政権は特殊部隊をシリア北部にある7つの基地へ派遣、トルコ政府によると、アメリカはクルドが支配している地域に10カ所以上の軍事基地を建設済みだという。イスラエルはこれまでもシリアを何度か空爆しているが、ここにきてダマスカスの空港を攻撃、その際にシリア軍の反撃で戦闘機が撃墜されたとも伝えられている。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は頻繁にロシアを訪問してきたが、8月23日にはロシアのソチでウラジミル・プーチン露大統領に対し、シリアでイランの影響力が拡大していくならバシャール・アル・アサド大統領の官邸を爆破、大統領本人を殺害すると恫喝したが、ロシア側は相手にしなかったとされている。「脅して屈服させる」というイスラエルやアメリカの手口が通用していない。アメリカなど三国同盟は2011年春からサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心とするアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)に攻撃させてきたが、2015年9月30日にシリア政府の要請で軍事介入したロシア軍によって叩きのめされてしまった。そこで三国同盟は侵略軍をクルド勢力へ切り替えたのだが、それに反発したトルコがアメリカと対立、NATO分裂の様相を呈している。クルド系のSDF(シリア民主軍)はシリア政府軍のユーフラテス川渡河を妨害するためにダムから放水、ハマの北東部ではアメリカを後ろ盾とする武装勢力がシリア政府軍を攻撃して包囲、ロシアの空軍と特殊部隊が反撃するという出来事があった。この反撃でアメリカ側の戦闘員850名が死亡、多くの戦闘車両が破壊されたという情報は本ブログでも伝えた。アメリカ軍とロシア軍が直接交戦する可能性が高まったわけで、両軍の幹部が中東で差しの話し合いをしたと伝えられている。ロシア外務省は両国の連携を訴えているが、手先のアル・カイダ系武装集団やダーイッシュが崩壊したイスラエルは戦乱を激化させようと必死のようだ。1991年にアメリカの国防次官だったネオコンのポール・ウォルフォウィッツはイラク、シリア、イランを殲滅すると語ったとウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官は2007年に語っている。(3月、10月)その年の12月にソ連が消滅、ウォルフォウィッツは1992年2月に国防総省のDPG草案という形で世界制覇プランを作成、「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。そのドクトリンはロシアが21世紀に入って再独立したことで破綻したのだが、ネオコンは強引に計画を進めている。そしてアフガニスタン、イラク、リビア、シリアを破壊したが、支配には成功していない。シリアでは手駒の傭兵が倒されてしまった。ネオコンやイスラエルは「追い詰められたネズミ」のような状態だ。アメリカと朝鮮との茶番劇よりシリア情勢に注目する必要がある。安倍晋三政権もアメリカから何らかの情報を伝えられているか、あるいは命令を受けているかもしれない。
2017.09.24
首席戦略官を解任されて間もないスティーブ・バノンが香港から北京へ入り、中央規律検査委員会書記の王岐山と会談したとイギリスのフィナンシャル・タイムズが伝えている。解任される直前、バノンは朝鮮の核問題で「軍事的な解決はない。忘れろ」と発言していた人物でネオコン的な「狂気戦略」とは一線を画していた人物だが、経済面では中国と対決する姿勢を見せていた。バノンの元ボス、ドナルド・トランプ大統領は実業家時代、ロシア・マフィア(イスラエル系犯罪組織)と関係していたという噂があるが、そうした方面の話をしたと可能性は小さいだろう。このところ退任説が流されている王岐山の健在ぶりを宣伝することが目的ではないかと推測する人もいる。中国支配層の人事はアメリカにとって重要な意味を持っている。1970年代から生産を放棄、資金を転がすことで生きながらえているアメリカの生命線は基軸通貨の発行権。ドルが基軸通貨である限り、ドルを発行して回収、つまり循環させることで表面的には豊かに見える。循環のエンジン役がサウジアラビアをはじめとする産油国で、循環し仕組みをペトロダラーと呼ぶことは広く知られている。発行したドルを回収する別の仕組みが投機市場。投機資金という形で吸い上げるのだが、そのためには相場を上昇させ続ける必要がある。その点、日銀の功績は大きい。投機資金を提供し、アメリカの財務省証券を購入するという形でドルの回収に協力してきたのである。アメリカの財政赤字は他の追随を許さないほど膨らんでいるが、多くの人は気づかない振りをしているようだ。今、その仕組みが揺らいでいる。その震源地は中国とロシア。この2カ国を中心にして、新たな通貨制度が築かれつつあるのだ。アメリカは経済的に破綻しつつある。帝国の崩壊を防ぐため、彼らは軍事力に頼るしかない。脅して屈服させ、屈服しない国はテロなり、クーデターなり、軍事侵略なりで破壊してきた。その手口を中国とロシアにも使っているのだが、この2カ国は屈しない。キール・リーバーとダリル・プレスはフォーリン・アフェアーズ誌(CFR/外交問題評議会が発行)の2006年に3/4月号で、アメリカ軍の先制第1撃によってロシアと中国の長距離核兵器を破壊できるようになる日は近いと主張した。ソ連が消滅し、ボリス・エリツィンが大統領だった時代のロシアのイメージが強く残っていたのだろうが、ウラジミル・プーチンが大統領になってから状況は大きく変化していた。アメリカの軍需産業が高額の欠陥兵器を開発している間にロシアは高性能兵器を開発していた。それがシリアでの戦闘で明確になっている。アメリカとしては中国やロシアのエリート層に築いた人脈を使い、両国を内部崩壊させようと目論んでいるだろう。中国とロシアにしてみると、そうした人脈をどのように処分するかが今後の課題になる。その動向次第で全面核戦争の可能性が高まる。
2017.09.23
アメリカ軍を後ろ盾とするクルド系のSDF(シリア民主軍)はユーフラテス川にあるダムから放水、水位を上げてシリア政府軍の渡河を妨害、またハマの北東部ではやはりアメリカを後ろ盾とする武装勢力がシリア政府軍を攻撃して包囲、ロシアの空軍と特殊部隊が反撃するという出来事があった。この反撃でアメリカ側の戦闘員850名が死亡、多くの戦闘車両が破壊されたとされている。シリア政府軍がユーフラテス川を渡ったことでアメリカとロシアは難しい決断を迫られると本ブログでも書いたが、アメリカはユーフラテスの北にクルドの支配地を作る決意を示し、それをロシアが拒否したということだ。ハマでの攻撃はアメリカの情報機関が計画したとロシア軍は断定、SDF支配地から攻撃があれば必要なあらゆる手段を使って反撃すると通告した。本ブログでは何度も書いてきたが、バラク・オバマ政権は特殊部隊をシリア北部にある7つの基地へ派遣、トルコ政府によると、アメリカはクルド支配地に10カ所以上の軍事基地を建設済みだという。NATOやアメリカ中央軍なども存在、中東ではロシア軍を圧倒しているように見えるが、すでにロシア軍はカリバル(巡航ミサイル)やイスカンダル(弾道ミサイル)の威力を見せつけ、S-300、S-400、パーンツィリ-S1といった防空システムを配備、さらにECM(電子対抗手段)も始動しているようだ。このECMはアメリカの巡航ミサイル(トマホーク)を無力化、イージス艦の機能を停止させられる可能性がある。ネオコンの基本的な考え方は「脅せば屈する」。自分たちが望む方向へ世界を導くためにアメリカは何をしでかすかわからない国だと思わせなければならないと同国のリチャード・ニクソン大統領は考え、イスラエルのモシェ・ダヤン将軍は狂犬のように振る舞わなければならないと語った。そうした考え方を踏襲しているのだが、本ブログでは何度も書いているように、ロシアや中国には通じない。
2017.09.22
ドナルド・トランプ米大統領は国連で朝鮮を壊滅させると恫喝、ハリウッドで成功したアフリカ系俳優のモーガン・フリーマンはアメリカがロシアと戦争状態にあると宣伝した。トランプによると、アメリカは7000億ドルの軍事予算を投入するらしい。それだけドルを発行するということだが、ドルが基軸通貨の地位から陥落すれば、全てがのしかかってくる。トランプ政権で首席戦略官を務めていたステファン・バノンは朝鮮の核問題で「軍事的な解決はない。忘れろ」と発言、ソウルに住む1000万人が開戦から最初の30分で死なないことを示されない限り軍事作戦には賛成しないという姿勢を示したが、その直後に解任された。国家安全保障担当補佐官だったマイケル・フリンが局長を務めていた2012年にDIA(国防情報局)は2012年8月、シリアで政府軍と戦っているのはサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQI(DIAはアル・ヌスラと実態は同じだとしている)だと指摘していた。つまり、バラク・オバマ大統領が言うところの「穏健派」は存在しないということであり、オバマ政権の政策が継続されると東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告していた。退役後、この問題をアル・ジャジーラの番組で問われたフリン中将は、ダーイッシュの勢力が拡大したのはオバマ政権が決めた政策によると語っている。本ブログでは何度も指摘してきたが、この警告は2014年1月、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)がファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言して現実になった。その年の6月にモスルを制圧したが、その際にトヨタ製の真新しい小型トラック「ハイラックス」を連ねた「パレード」を行い、その様子を撮影した写真が配信されたことも有名になった。言うまでもなくパレードを含め、ダーイッシュの行動をアメリカの軍や情報機関はスパイ衛星、偵察機、通信傍受、人から情報を把握していたはずだが、静観していた。トランプはフリンから「テロリスト」の正体を詳しく聞き、アメリカ、サウジアラビア、イスラエルを中心とする勢力がリビアやシリアを制圧するために送り込んだ傭兵集団だということを理解しているはずである。もしフリンか聞かなかったとしても、2007年3月5日付けのニューヨーカー誌に掲載されたシーモア・ハーシュの記事を読めば、今、中東で起きていることの本質は推測できるだろう。アメリカがイランとシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラをターゲットにした秘密工作を開始、イスラエルとサウジアラビアが工作に参加しているとハーシュは指摘している。この工作の中心的なグループにはリチャード・チェイニー副大統領(当時。以下同じ)、ネオコンのエリオット・エイブラムズ国家安全保障問題担当次席補佐官、ザルメイ・ハリルザド、そしてサウジアラビアのバンダル・ビン・スルタン国家安全保障問題担当顧問(元アメリカ駐在大使、後に総合情報庁長官)だとしている。そのうえ、「サウジは相当な金融資産があり、ムスリム同胞団やサラフ主義者と深い関係があ」り、「サウジは最悪のイスラム過激派を動員することができた。一旦、その箱を開けて彼らを外へ出したなら、2度と戻すことはできない。」とするバリ・ナスルの発言を引用している。この人物はジョンズホプキンス大学高等国際関係大学院のディーンで、外交問題評議会の終身メンバーでもある。つまり、この工作を懸念する人がアメリカ支配層の内部にもいたということだ。2016年の大統領選挙が始まる前、支配層による投票数の操作疑惑が膨らみ、イスラエル・ロビーによる選挙介入が問題になっていた。買収や恫喝が行われていると疑っている人は少なくない。その仕組みが昨年、ネオコンが計画したようには機能しなかった。そこで選挙結果を思惑通りに軌道修正しようと形振りを構わずに行動している。その道具が有力メディアやハリウッドだ。
2017.09.21
デリゾールを制圧することにほぼ成功したシリア政府軍はユーフラテス川を渡り、対岸のダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)に対する攻撃を始めた。シリア政府軍がユーフラテス川を渡ったことでアメリカとロシアは難しい決断を迫られようとしている。16日にその地域をロシア軍は空爆している。その攻撃で指揮下にある戦闘員(クルド系戦闘集団SDF)が負傷したとアメリカ軍は主張しているが、ロシア軍によると、ダーイッシュをピンポイントで攻撃、その際にダーイッシュとSDFは交戦状態になかった。それに対し、アメリカ軍主導軍は昨年9月17日、F-16戦闘機2機とA-10対地攻撃機2機を使ってデリゾールでダーイッシュを攻撃する準備をしていたシリア政府軍を空爆、80名以上の政府軍兵士を殺害している。空爆から7分後にダーイッシュの部隊が地上でシリア政府軍に対する攻撃を開始していることから、両者は連携していた可能性が高い。つまりアメリカ側が主張するような「誤爆」ではなかった可能性が高い。その後、9月28日にアメリカ主導軍は2つの橋を、30日にも別の橋2つをそれぞれ爆撃しているが、その目的はシリア政府軍の渡河を妨害することにあったのだろう。2006年にアメリカ軍のラルフ・ピータース中佐はシリア、トルコ、イラクをまたぐ地域にクルド系国家(クルディスタン)を作るという計画を明らかにしている。中東に「満州国」を作ろうということだろう。イラクのクルドは冷戦時代からイスラエルの傀儡となり、最近ではシリアやトルコのクルドもアメリカの影響下に入ったようだ。アメリカ軍はクルド勢力を使ってシリアやイラクの北部に居座るつもりで、サウジアラビアもクルドの支配地に影響力を及ぼそうとしている。イラクの前首相で現在は副大統領を務めているノウリ・アル・マリキはイラク北部に「第2のイスラエル」が出現することを許さないと語り、シリアやイランとの連携を強めている。バラク・オバマ政権は特殊部隊をシリア北部にある7つの基地へ派遣、トルコ政府によると、アメリカはクルドが支配している地域に10カ所以上の軍事基地を建設済みだという。シリア政府軍やロシア軍に対する威嚇のつもりだろうが、政府軍の進撃を止められるかどうかは不明。トルコも北から攻めてくる可能性があるのだが、トルコはNATO加盟国。そのトルコがロシアから防空システムS-400を購入することで契約が成立したと伝えられているが、このシステムが「クルドの空軍」、つまりアメリカ主導軍に対して使われてNATOが揺らぐ可能性もある。NATOはヨーロッパを支配するためにアメリカが創設した仕組みであり、これが揺らぐことは避けたいだろう。
2017.09.20
シリアの戦況は新たな段階へ入った。戦略的に重要な場所と認識されているデリゾールはこれまでも政府軍が押さえていたが、周囲をダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)に囲まれていた。その孤立した状況が解消されたのである。アメリカはシリアやイラクにいるダーイッシュの戦闘員をデリゾールへ集中させていたので、ここでの敗北は決定的だと言えるだろう。今後、政府軍/ロシア軍とクルド勢力/アメリカ軍が対峙する展開になる。アメリカもデリゾールを重要だと考えていた。昨年9月17日、アメリカ主導軍のF-16戦闘機2機とA-10対地攻撃機2機がデリゾールでシリア政府軍を攻撃、80名以上の政府軍兵士を殺害した理由もそこにあるのだろう。「誤爆」ではない。アメリカ軍が空爆した7分後にダーイッシュの部隊が地上でシリア政府軍に対する攻撃を開始していることから、両者は連携していた可能性が高い。その後、28日には2つの橋を、30日にも別の橋2つをそれぞれ爆撃、シリア政府軍がユーフラテス川を渡る手段を破壊した。当時、ロシア政府のマリア・ザハロワ広報官はデリゾールでの空爆について「ホワイトハウスはダーイッシュを守っているのだ。疑いようがない。」と語っているが、その通りである。そのダーイッシュが使い物にならなくなったことからクルド系戦闘集団のSDFへ切り替えたのだ。勿論、アル・カイダ系武装勢力やダーイッシュは「タグ」にすぎず、クルド系の戦闘集団SDFにも合流している可能性がある。この頃、バラク・オバマ政権は特殊部隊をシリア北部にある7つの基地へ派遣、今年に入って第11海兵遠征部隊がシリアで戦闘態勢を整えたと報道されているほか、アメリカの特殊部隊がクルド軍とラッカへ入ったとも言われている。トルコ政府によると、アメリカはシリア領内に10カ所以上の軍事基地を建設済みだという。国家安全保障補佐官のH. R. マクマスターはネオコンとして有名で、ヒラリー・クリントンにも近いデビッド・ペトレイアスの子分だ。そのマクマスターはユーフラテス川の周辺へ数万人とも15万人とも言われる規模の軍隊を送り込もうとしていたと言われている。ネオコンはシリア、イラク、イラン、トルコをまたぐクルドの「満州国」をでっち上げるつもりだろう。今年5月18日、6月6日、そして6月8日にシリア南部のアル・タンフでアメリカ主導軍はシリア政府軍を攻撃、6月18日にシリアの要衝ラッカ近くでシリア政府軍のSu-22戦闘爆撃機がアメリカ主導軍のF/A-18E戦闘機に撃墜されている。こうしたシリア政府軍側に対する攻撃にもかかわらず、ダーイッシュの敗北は確定的。アメリカ軍はデリゾールにいた反シリア政府軍の幹部をヘリコプターで何度か運び去ったとも伝えられている。態勢立て直しのためだけでなく、その中にはアメリカが知られたくない人々も含まれているのだろう。イラクにもクルド系の武装勢力が存在しているが、この勢力とシリアのクルドは別だと考えられている。イラクのクルドは1960年代からイスラエルの勢力下へ入り、サダム・フセイン体制を揺さぶる道具として機能してきた。アメリカ軍はイラクの北部もクルド勢力を使って居座るつもりで、サウジアラビアもクルドの支配地に影響力を及ぼそうとしている。イラクの前首相で現在は副大統領を務めているノウリ・アル・マリキはイラク北部に「第2のイスラエル」が出現することを許さないと語っている。しかし、シリアのクルドもアメリカの影響下に入った。シリアでは政府軍がユーフラテス川を渡り、北からトルコ軍が攻め込んでくることも予想される。クルドの「満州国」をアメリカ軍は守りたいだろうが、彼らにとってロシア軍の空爆や巡航ミサイルのカリバルは脅威。建設済みの基地は破壊されてしまうと見られている。そうした中、アメリカ軍はロシア軍がSDFを空爆していると主張しているが、これは自分たちが行ったことを相手にぶつけるというアメリカの得意技だ。ロシアの姿勢を和らげるために「交渉」、つまり、また騙そうとしているのだろうが、ロシア軍はアメリカ側の主張を否定、最近、SDFとダーイッシュは戦っていないとも指摘している。
2017.09.18
ロシア主催のEEF(東方経済フォーラム)が9月6日から7日にかけてウラジオストックで開かれたが、このイベントに朝鮮も韓国や日本と同様、代表団を送り込んだ。その前、9月4日から5日に中国の厦門でBRICSの会議が開催されている。EEFへ朝鮮が代表団を送ってきたことは緊張緩和という側面からすると良い兆候だが、そうした流れを断ち切ろうとするかのように朝鮮は9月15日にIRBM(中距離弾道ミサイル)を発射した。朝鮮の内部にも対立がありそうだ。アメリカはこれを利用して東アジアを準戦争状態にしようと目論んだが、これが実行されたらアメリカ経済が崩壊することは間違いない。アメリカ支配層の内部でも反対の声は出ただろう。すでに韓国はロシアとの関係強化に積極的で、昨年1月にはロシアが発注した砕氷能力のある天然ガス輸送船を韓国が建造、この夏に北極海を試験航行している。北極海の氷が薄くなっていることを利用して新たな航路を切り開こうとしているのだが、両国や中国は鉄道や天然ガス輸送用パイプラインの建設も推進しようとしている。そのプロジェクトで最大の障害になっている朝鮮を取り込むことに成功すれば、東アジアに強大な経済圏が登場することになる。アメリカ支配層にとっては見逃すことのできない事態だ。1991年12月にソ連が消滅、旧ソ連圏を属国化したと考えたアメリカ支配層は新たなターゲットを東アジアへ切り替えた。19世紀からアングロサクソン系の国、つまりイギリスやアメリカに操られてきた日本はともかく、中国も1980年代から新自由主義(強者総取り)を導入させることに成功、そのエリートの子どもをアメリカへ留学させて洗脳を進めてきた。だからこそ中国でアメリカ系巨大企業が工場を建設してきたのだろうが、アメリカの好戦派が中東、北アフリカ、ウクライナを破壊、ラテン・アメリカも再制圧しようとしていることを見た中国はロシアとの関係を強化している。1992年2月、国防次官だったポール・ウォルフォウィッツを中心とするグループが作成した国防総省のDPG草案は潜在的なライバルを潰すという方針を打ち出していたが、その方針が裏目に出た形だ。少なくとも結果として、東アジアにおけるアメリカ支配層の政策を支えているのは朝鮮。この国では2013年に金正日の妹である金敬姫の夫で中国との関係が深い張成沢が処刑され、その人脈も粛清された。金敬姫も毒殺されたと見られている。また、昨年12月19日にトルコのアンカラで射殺されたロシアのアンドレイ・カルロフ駐トルコ大使はトルコとロシアが陥っていた難しい状況を平和的に処理したと言われているが、朝鮮半島にロシアで最も強い人脈を持っている人物だということでも知られていた。中国やロシアは朝鮮人脈にダメージを受けたが、そうした中、ロシアのウラジミル・プーチン大統領はビジネス関係を強化することで軍事的な緊張を緩和させようとしている。それに対してアメリカは軍事的な緊張を高め、それに呼応する形で朝鮮は核爆発やミサイル発射の実験を繰り返してきた。その技術取得に疑惑があることは本ブログでも指摘した通りだ。ネオコンをはじめと知る好戦派は行き詰まっている。ネオコン系シンクタンクPNACが2000年に発表した報告書「米国防の再構築」が言うところの「新たなパール・ハーバー」を目論んでいる可能性は否定できない。
2017.09.17
9月15日に朝鮮がIRBM(中距離弾道ミサイル)を発射したのだという。東アジアの軍事的な緊張を緩和させようとしていた韓国の文在寅大統領も朝鮮のICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験や水爆の爆破実験などでアメリカや日本の好戦派に押されているが、そうした流れを加速させるような動きだ。本ブログでは何度も指摘しているが、朝鮮の軍事的な行動を最も喜んでいるのは日米好戦派にほかならない。ロシアや中国は経済発展を推進するために戦争を嫌い、そうした中露の計画を妨害しようとしているアメリカにとっては好都合ということだ。朝鮮は講和条約の締結を望み、アメリカ支配層がそれを拒否するという構図があったが、中国やロシアを睨んで東アジアの軍事的な緊張を高めたいアメリカ、軍事技術を手に入れたい朝鮮、両国の利害が一致しているように見える。朝鮮の新しいミサイルが搭載しているエンジンはウクライナから持ち込まれた可能性が高いとする分析結果が8月14日、ミサイル防衛を専門にしているマイケル・エルマンによって明らかにされた。ウクライナで西側の専門家が目撃した情報とも合致しているという。ウクライナから朝鮮への技術移転にイスラエルが関与しているとする情報もある。この推測が正しければ、アメリカも関与している可能性が高い。調査ジャーナリストのロバート・パリーによると、エンジンの出所だと疑われている工場の所在地はイゴール・コロモイスキーという富豪(オリガルヒ)。ウクライナ、キプロス、イスラエルの国籍を持つ人物で、2014年2月のクーデターを成功させたネオ・ナチのスポンサーとしても知られている。勿論、その背後にはアメリカのネオコンがいる。2014年7月17日にマレーシア航空17便を撃墜した黒幕だとも噂されている人物だ。ウクライナはアメリカの好戦的な親イスラエル派、つまりネオコンがネオ・ナチを使ったクーデターで乗っ取られた国だが、アメリカはシリアの体制を転覆させるために送り込んだアル・カイダ系傭兵集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)へも武器を供給してきた。ダーイッシュが売り出される2年前、2012年にアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)は反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団だと指摘、バラク・オバマ政権が宣伝していた「穏健派」は存在しないとする報告書をホワイトハウスへ提出している。その中で東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告されているが、それはダーイッシュという形で現実になった。この報告書が作成された当時のDIA局長がマイケル・フリン中将。ダーイッシュが売り出された直後の2014年8月に退役させられているが、翌年の8月にアル・ジャジーラの番組へ出演、ダーイッシュが勢力を拡大できたのはバラク・オバマ政権の政策があったからだと指摘している。そのフリンをドナルド・トランプ大統領は国家安全保障補佐官に据えるが、有力メディアを含む支配システムが総攻撃してホワイトハウスから追い出されてしまった。シリアの侵略軍へ物資を運ぶルートの中心はトルコからのものだったが、そこへ運び込むルートをブルガリアのジャーナリストが7月2日、明らかにした。公文書を根拠にした記事で信頼できる。アメリカ、イスラエル、サウジアラビアなどが購入した武器をアゼルバイジャンの国営航空会社がさまざまなルートでアル・カイダ系武装集団、ダーイッシュやクルドなどへ運んでいるとしている。なお、この大スクープをものにしたジャーナリストは8月24日に解雇された。ドイツの基地も武器密輸に利用されていたとする報道もある。
2017.09.16
ベネズエラのニコラス・マドゥロ政権は石油取引の決済に人民元を主とする通貨バスケット制を採用するとしていたが、石油の取引にドルは使わず、ユーロに切り替えるとも報道されている。前にも書いたが、中国は石油の支払を金に裏付けられた人民元で支払う方針を打ち出している。その仕組みが実現した場合、人民元は上海と香港の取引所で金に換金することが可能だ。ベネズエラがドル離れを推進する引き金はアメリカによる「制裁」、つまり経済戦争の開始。これまでもアメリカは戦術として「制裁」を使ってきた。例えば、7月25日に下院で419対3、27日に上院で98対2という圧倒的な賛成を得てロシア、イラン、朝鮮に対する「制裁」法案が可決されている。しかし、制裁の対象になっている国を支援することもある。例えば、中東のアパルトヘイト国家、イスラエルに対するボイコット(Boycott)、投資撤退(Divestment)、制裁(Sanctions)、いわゆるBDS運動が2005年7月から展開されているが、それを禁止しようという法案がアメリカ議会で浮上している。また、現在、ロシアを挑発する発言を続けている国連大使のニッキー・ヘイリーはサウス・カロライナ州知事だった当時、BDS運動に反対していた。BDS運動が始まる前からイスラエルに対する批判は高まっていた。その切っ掛けは1982年に引き起こされたサブラとシャティーラ(パレスチナ難民キャンプ)における虐殺。その年の1月にアリエル・シャロン国防相がベイルートを極秘訪問、親イスラエル派とイスラエル軍が軍事侵攻した際のことについて話し合い、その直後にペルシャ湾岸産油国の国防相とも秘密裏に会合、そして9月にファランジスト党のメンバーがイスラエル軍の支援を受けながらサブラとシャティーラで数百人、あるいは3000人以上の難民を殺したのである。それはともかく、石油取引のドル決済はアメリカの支配システムを維持する上で非常に重要。1970年頃になるとアメリカ経済は破綻、71年8月にはリチャード・ニクソン大統領がドルと金との交換停止を発表している。ドルの下落を食い止めるためにさまざまな政策が打ち出されたが、その中で最も重要なものがペトロダラー。サウジアラビアなどの産油国に石油取引の決済をドルに限定させ、その代償として各国の防衛、そうした国々を支配する人々の地位と収入を保障した。ドルを貯め込んだ産油国はアメリカの財務省証券や高額兵器を購入してドルをアメリカへ循環させたのである。日本もドルの循環と凍結に協力してきた。ドルの循環を効率的に行うため、石油相場の上昇が図られる。1973年10月に勃発した第4次中東戦争の直後にOPECは価格を4倍に引き上げたのだが、サウジアラビアのファイサル国王の腹心で、その当時に石油鉱物資源相を務めたシェイク・ヤマニによると、1973年5月にスウェーデンで開かれた秘密会議でアメリカとイギリスの代表が400%の原油値上げを要求、それで値上げが決まったという。その秘密会議はスウェーデンで開催されたビルダーバーグ・グループの会合。その後、巨大な投機市場を創設してドルを吸い上げるようになるが、それでもペトロダラーの仕組みはアメリカ支配層にとって重要だ。すでにロシアや中国もドル離れを進めているが、そこへ産油国のイランが加わる可能性は高い。そこにベネズエラも加わるわけで、アメリカにとっては深刻な事態だと言えるだろう。この苦境から脱することは容易でない。アメリカに残された手段は限られている。つまり軍事力だが、それも怪しい。正規軍が衝突した場合、アメリカ軍がロシア軍に勝てないことはジョージア(グルジア)やシリアで明確になっている。そこで、かつて作った傭兵の仕組みを利用したが、これもシリアで粉砕された。
2017.09.15
原子力規制委員会は東京電力柏崎刈羽原発の6、7号機を再稼働させる方向で動いている。言うまでもなく、東電は福島第一原発の炉心溶融事故を引き起こし、環境中に膨大な放射性物質を放出させ続けている会社。しかもその責任が事実上、問われていない。原子力規制委員会、経済産業省(2001年1月まで通商産業省)、原子力安全保安院(2012年9月に廃止)は勿論、警察、検察、裁判所も責任を果たしたとは言えない。その検察は福島県知事として原発に慎重な姿勢を見せていた佐藤栄佐久を事故の5年前、スキャンダルで失脚させている。そうした無責任集団がまた無責任なことをしているわけだ。原発の専門家であるアーニー・ガンダーセンも指摘(アーニー・ガンダーセン著『福島第一原発』集英社新書)しているように、福島第一原発から環境中へ放出された放射性物質の総量はチェルノブイリ原発のそれを大幅に上回ることは間違いない。当初、チェルノブイリ原発事故の1割程度、あるいは約17%だとする話が流されたが、福島のケースでは圧力容器が破損、燃料棒を溶かすほどの高温になっていたので放射性物質を除去することになっている圧力抑制室(トーラス)の水は沸騰、しかも急上昇した圧力のためトーラスへは爆発的な勢いで気体と固体の混じったものが噴出したはずである。トーラスで99%の放射性物質が除去されるという計算の前提は成り立たない。少なくともチェルノブイリ原発事故で漏洩した量の2〜5倍の放射性物質を福島第一原発は放出した。十数倍に達した可能性もある。放出された放射性物質について政府や電力会社は情報を隠しているが、そうした中、漏れてきた情報もある。例えば、2011年4月17日に徳田毅衆議院議員は「オフィシャルブログ」(現在は削除されている)で次のように書いていた:「3月12日の1度目の水素爆発の際、2㎞離れた双葉町まで破片や小石が飛んできたという。そしてその爆発直後、原発の周辺から病院へ逃れてきた人々の放射線量を調べたところ、十数人の人が10万cpmを超えガイガーカウンターが振り切れていたという。それは衣服や乗用車に付着した放射性物質により二次被曝するほどの高い数値だ。」12日に爆発したのは1号機で、14日には3号機も爆発している。政府や東電はいずれも水素爆発だとしているが、3号機の場合は1号機と明らかに爆発の様子が違い、より深刻なものだった。15日には2号機で「異音」、また4号機の建屋で大きな爆発音があったという。こうした爆発が原因で建屋の外で燃料棒の破片が見つかったと報道され、2011年7月28日にはアメリカのNRC(原子力規制委員会)の会合でこの問題が取り上げられた。新炉局のゲイリー・ホラハン副局長は、発見された破片が炉心にあった燃料棒のものだと推測している。その会議の直後、8月1日に東京電力は1、2号機建屋西側の排気筒下部にある配管の付近で1万ミリシーベルト以上(つまり実際の数値は不明)の放射線量を計測したと発表、2日には1号機建屋2階の空調機室で5000ミリシーベル以上を計測したことを明らかにしている。ダメージコントロールのために発表したようにも思える。徳田のブログは重要な情報が含まれているが、その徳田をスキャンダルが襲う。彼の姉などを徳洲会グループ幹部6人を東京地検特捜部は2013年11月に公職選挙法違反事件で逮捕、徳洲会東京本部や親族のマンションなどを家宅捜索した。2006年11月に行われた沖縄県知事選との関連が指摘されているが、原発事故の問題も関係している可能性がある。また、事故当時に双葉町の町長だった井戸川克隆は心臓発作で死んだ多くの人を知っていると語っている。福島には急死する人が沢山いて、その中には若い人も含まれているとも主張、東電の従業員も死んでいるとしているのだが、そうした話を報道したのは外国のメディアだった。この井戸川元町長を作品の中で登場させた週刊ビッグコミックスピリッツ誌の「美味しんぼ」という漫画は、その内容が気に入らないとして環境省、福島県、福島市、双葉町、大阪府、大阪市などが抗議、福島大学も教職員を威圧するような「見解」を出し、発行元の小学館は「編集部の見解」を掲載、この作品は次号から休載すると決めたという。福島県の調査でも甲状腺癌の発生率が大きく上昇していると言わざるをえない状況。少なからぬ子どもがリンパ節転移などのために甲状腺の手術を受ける事態になっているのだが、原発事故の影響を否定したい人びとは「過剰診療」を主張している。事故直後、福島の沖にいたアメリカ海軍の空母ロナルド・レーガンに乗船していた乗組員にも甲状腺癌、睾丸癌、白血病、脳腫瘍といった症状が出ているようで、放射線の影響が疑われ、アメリカで訴訟になっている。カリフォルニアで先天性甲状腺機能低下症の子どもが増えているとする研究報告もある。ロシア科学アカデミー評議員のアレクセイ・V・ヤブロコフたちのグループがまとめた報告書『チェルノブイリ:大災害の人や環境に対する重大な影響』(日本語版)によると、1986年から2004年の期間に、事故が原因で死亡、あるいは生まれられなかった胎児は98万5000人に達する。癌や先天異常だけでなく、心臓病の急増や免疫力の低下、あるいは知能の問題が報告されている。日本ではそれ以上に深刻な事態が生じている疑いが濃厚だ。どこかの国が核実験したといって放射性物質を気にしてみせる日本の政府やマスコミだが、自国の原発事故が引き起こした環境汚染は見て見ぬ振り。機械に故障はつきものであり、原発事故の場合は国どころか生物の存亡に関わる事態になりかねない。そうしたことを気にしない人々なら、アメリカの好戦派がロシアや中国との全面核戦争に向かって突き進むことも気にならないのだろう。
2017.09.14
アメリカ主導軍がデリゾールの近くでシリア政府軍とイランの支援軍を攻撃、犠牲者が出たと伝えられている。シリア政府軍がユーフラテス河を超え、アメリカ軍とクルド軍が占領している地域へ入ることを嫌っているとする見方が常識的だろう。デリゾールでは昨年9月17日にもアメリカ主導軍のF-16戦闘機2機とA-10対地攻撃機2機がシリア政府軍を攻撃、80名以上の政府軍兵士を殺害している。空爆の7分後にダーイッシュの部隊が地上でシリア政府軍に対する攻撃を開始していることから、両者は連携していた可能性が高い。その後、28日には2つの橋を、30日にも別の橋2つをそれぞれ爆撃して破壊した。シリア政府軍が河を渡ることを嫌ったことは間違いない。今年に入ると、アメリカ主導軍は5月18日、6月6日、そして6月8日にシリア南部のアル・タンフでシリア政府軍を攻撃、6月18日にシリアの要衝ラッカ近くでシリア政府軍のSu-22戦闘爆撃機がアメリカ主導軍のF/A-18E戦闘機に撃墜されている。現在、デリゾールはシリア政府軍によってほぼ制圧されたが、そうした中でのアメリカ主導軍による攻撃ということになる。その間、アメリカ軍はデリゾールにいた反シリア政府軍の幹部をヘリコプターで何度か運び去ったとも伝えられている。アメリカ軍はイラクの北部もクルド勢力を使って居座るつもりで、イラク政府軍側を攻撃しているという。イラクのクルドはサダム・フセイン時代からイスラエルの支援を受けてきた勢力。サウジアラビアもクルドの支配地に影響力を及ぼそうとしている。こうした動きにトルコは反発、新たな戦闘が始まる可能性も否定できない。
2017.09.13
アメリカは世界有数の産油国であるベネズエラのニコラス・マドゥロ政権を倒し、傀儡体制を再建しようとしている。アメリカに反旗を翻したウーゴ・チャベスのようなカリスマ性はないものの、マドゥロは彼の志を引き継いでいる人物だ。中国やロシアはベネズエラがアメリカに蹂躙されることを望んでいない。そのマドゥロは9月7日、ドルの束縛から解放されると語っていたが、予想通り、人民元を主とする通貨バスケット制を採用することが明らかにされた。ベネズエラの動きはロシアや中国のドル離れ政策と符合、中国は石油の支払を金に裏付けられた人民元で支払う方針を打ち出している。その仕組みが実現した場合、人民元は上海と香港の取引所で金に換金することが可能だ。生産を放棄したアメリカは現在、基軸通貨を発行する特権で生きながらえているにすぎない。発行したドルを回収するため、アメリカの支配層はサウジアラビアなど主要産油国に対して決済をドルでするように求め、その代償として軍事力による支配体制の保護(支配者の地位と富の保障)を約束した。集まったドルはアメリカの財務省証券、高額兵器などを購入させて回収するという仕組みだ。これがペトロダラー。カネを回転させるだけのマルチ商法だ。そのほか、金融取引の規制を大幅に緩和して投機市場を育て、そこへ資金を吸い込むという仕組みも作られた。石油取引の決済をドル以外の通貨で行うようになると、ドルを循環させる仕組みが破綻してしまい、アメリカを中心とする支配システムは崩れてしまう。石油取引の決済をドルからユーロへ変えると発表したイラクのサダム・フセイン体制、金貨ディナールをアフリカの基軸通貨にし、石油取引の決済に使おうとしたリビアのリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制はともにアメリカが軍事的に破壊した。7月20日にはマイク・ポンペオCIA長官はベネズエラの「移行」が期待できるとアスペン治安フォーラムで語り、ドナルド・トランプ大統領はベネズエラを軍事侵攻する可能性があると8月11日に述べ、25日にニッキー・ヘイリー国連大使はベネズエラに対して「独裁制」を許さないと主張している。ネオコンのH・R・マクマスター国家安全保障補佐官はベネズエラへ近い将来に軍事侵攻することを計画していないと語っているが、軍事侵攻しないということではない。トランプ大統領の過激発言によって軍事侵攻しにくくなったという側面もある。奴隷国家のサウジアラビアやアパルトヘイト国家のイスラエルをアメリカは決して非難しんない。アメリカに「独裁制」と呼ばれた国は自立した国だということを意味している。ベネズエラを自立させたのは1999年から大統領を務めたチャベス。アメリカで2001年に誕生したジョージ・W・ブッシュ政権はアフガニスタンやイラクを先制攻撃したが、その間、チャベスの排除も試みている。2002年にクーデター計画が始動したが、その黒幕と指摘されているのはイラン・コントラ事件でも登場するエリオット・エイブラムズ、キューバ系アメリカ人で1986年から89年にかけてベネズエラ駐在大使を務めたオットー・ライヒ、そして1981年から85年までのホンジュラス駐在大使で、後に国連大使にもなるジョン・ネグロポンテ。クーデターの際、アメリカ海軍がベネズエラ沖で待機、新政権は実業家のペドロ・カルモナを中心に組閣されることになっていたというが、この計画は事前にOPECの事務局長を務めていたベネズエラ人のアリ・ロドリゲスからチャベスへ知らされたため、失敗に終わっている。WikiLeaksが公表したアメリカの外交文書によると、2006年にもクーデターが計画されている。「民主的機関」、つまりアメリカの支配システムに組み込まれた機関を強化し、チャベスの政治的な拠点に潜入、チャベス派を分裂させ、アメリカの重要なビジネスを保護し、チャベスを国際的に孤立させるというのだ。そのチャベスは2013年3月、癌のため、58歳の若さで死亡した。癌の原因が人為的なものかどうかは不明だが、生前、キューバのフィデル・カストロから暗殺に気をつけるよう、経験に基づいて警告されていたことは確か。2015年2月にもクーデター未遂があったと言われている。この政権転覆作戦を指揮していたのはNSC(国家安全保障会議)で、それを許可したのはリカルド・ズニーガ。CIAの人間で、対キューバ工作の責任者でもある。2月12日にはベネズエラ軍を装った航空機で傭兵会社のアダデミ(かつてのブラックウォーター)が大統領官邸を爆撃、マドゥーロを殺害することになっていた。軍事行動の責任者はSOUTHCOM(アメリカ南方軍)で情報部門を統括していたトーマス・ゲリー准将(当時)とアダデミのレベッカ・チャベス。例によって作戦の司令部はアメリカ大使館で、NEDなどを介して現地のNGOを動かしていた。
2017.09.12
9月11日には世界の流れを決める大きな出来事が引き起こされている。そのひとつが1973年9月11日にチリであったヘンリー・キッシンジャーを黒幕とする軍事クーデター。アメリカの巨大資本はラテン・アメリカを植民地化、「バナナ共和国」と呼ばれる略奪システムを作り上げていたが、その仕組みを揺るがす民主的なサルバドール・アジェンデ政権が誕生、それを潰したのである。言うまでもなく、アメリカは民主主義の「伝道者」ではなく、「破壊者」だ。このクーデターでアジェンデ大統領は死亡、多くのチリ国民が殺された。後に設置される「チリ真実と和解委員会」によると、軍事政権の時代に殺されたり行方不明になった人は少なくとも2025名、一説によると約2万人に達する。この粛清後、ピノチェト体制に逆らう人はいなくなり、強者総取りの新自由主義経済が導入されている。社会的な弱者から搾り取り、強者を富ませるこのシステムを導入することは容易でない。少なからぬ人々がこの不公正な仕組みに反対することが予想されるからだが、クーデターによってそうした人々は排除された。チリへこのシステムを導入するにあたり、中心的な役割を果たしたのはシカゴ大学のミルトン・フリードマン教授やアーノルド・ハーバーガー教授、そしてその弟子たち、いわゆる「シカゴ・ボーイズ」だ。彼らは賃金は引き下げ、労働者を保護する法律を廃止、労働組合を禁止、つまり労働環境を劣悪化、1979年には健康管理から年金、教育まで、全てを私有化しようと試みている。国有企業の私有化とは、国民の資産を略奪することにほかならない。こうした政策を賞賛する人が日本には少なくなかった。1979年から82年にかけてチリ政府は自国の通貨を過大に評価させて輸入を奨励、そのために国産製品が売れなくなり、国内の生産活動は破綻してしまう。1980年代の後半になると人口の45%が貧困ラインの下に転落してしまった。1980年代の半ばから日本でも円高、国内産業の衰退というチリと同じようなことを行っている。日本で貧富の差が拡大したのは日米支配層の政策だということだ。チリのクーデターは国内で富を収奪しやすくする仕組みを導入するために使われたが、国外への侵略、略奪、破壊、殺戮をもたらす流れを作ったのが2001年9月11日の出来事にほかならない。その日、ニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されて国内は混乱、それに乗じてネオコンがホワイトハウスの主導権を握り、1992年2月に国防次官だったポール・ウォルフォウィッツが中心になって作成されたドクトリンを実行に移し始めたのである。
2017.09.11
クリストファー・ノーランが監督した映画「ダンケルク」が話題になっているようだ。タイトルから容易に推測できるが、フランスの港町ダンケルクから1940年5月下旬から6月上旬にかけてイギリス軍とフランス軍34万人が撤退した作戦を映画化したものだ。第1次世界大戦の後にドイツは多額の賠償金支払いを強要され、領土を削られた。その際に東プロイセンが飛び地になり、さまざまな問題が生じる。その領土問題を解決するためにドイツはポーランドと交渉を続けていたが、イギリスを後ろ盾とするポーランドは強硬姿勢を崩さず、業を煮やしたドイツが1939年9月1日にポーランドへ軍事侵攻した。それを見たイギリスとフランスがドイツに宣戦布告するが、この段階でドイツは大規模な戦争を想定していない。そこで半年ほど本格的な戦闘は行われず、イギリスやフランスも動かなかったので「奇妙な戦争」と呼ばれる状況になったわけだ。つまり、イギリス軍やフランス軍はドイツ軍の電撃作戦で敗北したわけではない。当時、ポーランド軍を指揮していたブワディスワフ・シコルスキは筋金入りの反ソ連(反ロシア)派で、1939年9月30日にパリで亡命政権を作っている。翌年6月19日にシコルスキーはイギリスのウィンストン・チャーチルと会談、ポーランドがイギリスと一緒に戦うことを約束、亡命政権はロンドンへ移動する。シコルスキーの側近のひとりだったユセフ・レッティンゲルは大戦の前からヨーロッパをイエズス会の指導の下で統一しようと活動していた。戦争が終わった後、1952年になるとレッティンゲルはオランダのベルンハルト(ユリアナ女王の夫)に接近、その人脈でアメリカのハリー・トルーマン政権やドワイト・アイゼンハワー政権につながり、54年5月にビルダーバーグ・グループと呼ばれる組織を作っている。アメリカがヨーロッパを支配するため、1948年にACUE(ヨーロッパ連合に関するアメリカ委員会)が創設されているが、レッティンゲルはそのメンバー。その仲間にはウィンストン・チャーチル、OSS長官だったウィリアム・ドノバン、CIAに君臨するアレン・ダレスも含まれている。ビルダーバーグ・グループはその関連組織だ。本ブログでは何度か指摘したが、チャーチルはドイツが1945年5月に降伏した直後、JPS(合同作戦本部)に対し、ソ連への軍事侵攻作戦を作成するように命令している。そして5月22日に提出されたのが「アンシンカブル作戦」。7月1日に米英軍数十師団とドイツの10師団が「第3次世界大戦」を始める想定になっていた。この作戦は参謀本部に拒否され、チャーチルは7月26日に下野するのだが、ソ連との戦いは続けている。翌年の3月5日にアメリカのミズーリ州フルトンで「バルト海のステッティンからアドリア海のトリエステにいたるまで鉄のカーテンが大陸を横切っている」と演説して冷戦の開幕を告げ、1947年にアメリカのスタイルズ・ブリッジス上院議員に対し、ソ連を核攻撃するようハリー・トルーマン大統領を説得して欲しいと頼んだと伝えられている。ダンケルクの撤退後、ドイツ軍は1941年6月に東へ向かって進撃を開始する。バルバロッサ作戦だ。7月にドイツ軍はレニングラード(現在のサンクトペテルブルク)を包囲、9月にはモスクワまで80キロメートルの地点まで迫り、その一方でドイツ軍はカスピ海周辺の油田地帯へも軍隊を進める。そして1942年8月にドイツ軍はスターリングラード市内へ突入して市街戦が始まった。ここまではドイツ軍が圧倒的に優勢だったが、1942年11月にソ連軍が猛反撃を開始、ドイツ軍25万人を完全に包囲して43年1月に生き残ったドイツの将兵9万1000名は降伏する。ここでドイツの敗北は決定的になった。慌てた米英両国は1943年5月にワシントンDCで会談して善後策を協議、7月にアメリカ軍はイギリス軍と共にシチリア島に上陸した。ハスキー計画だ。このとき、アメリカ軍はマフィアと手を組んでいる。9月にはイタリア本土を占領、イタリアは無条件降伏した。ハリウッド映画で有名になったオーバーロード(ノルマンディー上陸)作戦は1944年6月になってからのことである。この上陸作戦の相手はドイツでなく、ソ連だったと言うべきだろう。ドイツとの戦闘を避け、ダンケルクで撤退して兵力を温存、ソ連との戦闘に備えたということになる。バルバロッサ作戦の際、ドイツ軍の首脳は西部戦線防衛のために大軍を配備するべきだと主張したが、アドルフ・ヒトラーがそれを退けたとされている。この非常識な「判断」との関連で注目されているのがヒトラーの側近だったルドルフ・ヘスの動き。1941年5月10日にヘスは単身飛行機でスコットランドへ飛んでいる。バルバロッサ作戦が開始されたのはその直後、6月のことだ。スターリングラードでドイツ軍が壊滅した後、アレン・ダレスなどアメリカ支配層はフランクリン・ルーズベルト大統領には無断でナチスの幹部たちと接触を始めている。例えば、1942年の冬にナチ親衛隊はアメリカとの単独講和への道を探るために密使をOSSのダレスの下へ派遣、ドイツ降伏が目前に迫った45年初頭にダレスたちはハインリッヒ・ヒムラーの側近だった親衛隊の高官、カール・ウルフに隠れ家を提供、さらに北イタリアにおけるドイツ将兵の降伏についての秘密会談が行われている。(Christopher Simpson, “The Splendid Blond Beast”, Common Courage, 1995 / Eri Lichtblau, “The Nazis Next Door,” Houghton Mifflin Harcourt, 2014)イタリアとスイスとの国境近くでウルフがパルチザンに拘束された際にはダレスが部下を派遣して救出している。(Eri Lichtblau, “The Nazis Next Door,” Houghton Mifflin Harcourt, 2014)その後もアメリカの支配層はナチスの高官や協力者を逃走させ、匿い、雇用している。逃走にローマ教皇庁の一部が協力していたことは広く知られている。それだけでなく、アドルフ・ヒトラーが敗戦直前に死亡したことを示す証拠はなく、南アメリカで目撃されたとする話も語られてきた。アメリカ政府もそうした報告を受けている。
2017.09.10
国連のシリア・アラブ共和国に関する独立国際調査委員会が9月6日に報告書を公表、その中で、今年4月4日の明け方にイドリブのカーン・シェイクンでシリア政府軍がサリンを搭載した爆弾を投下したとその中で主張している。この委員会は2011年8月、国連人権委員会の下に設置された。すでに国連のOPCW(化学兵器禁止機関)は午前11時〜11時半まで現地へ航空機は飛来していないと発表しているが、それを無視、アル・カイダ系武装集団の「証言」を全面的に採用した形だ。4月29日から30日かけてアル・タマナでシリア政府軍が塩素ガスを攻撃に使ったとする主張はアル・カイダ系工作員らが計画したものだとOPCWは報告している。すでにアメリカ政府は証拠を示すことなく、調査もせず、シリア政府軍がカーン・シェイクンで化学兵器を使ったと断定、ドナルド・トランプ大統領は4月5日に首席戦略官のステファン・バノンをNSC(国家安全保障会議)から追い出し、4月7日にはホムスにあるアシュ・シャイラト空軍基地をトマホーク巡航ミサイル59発で攻撃している。ミサイルは2隻の駆逐艦、ポーターとロスから発射されたが、ロシア側の主張によると、23発が目標に到達しただけだ。この攻撃の8日前、ドナルド・トランプ政権の国連大使はバシャール・アル・アサドの排除に執着しないと語っていた。4日の出来事はアメリカ政府の政策をバラク・オバマ政権のそれへ引き戻したと言えるだろうが、カーン・シェイクンでシリア政府軍がサリンを使ったという主張が疑わしいということになると、アメリカと国連幹部との関係は難しいことになっただろう。アメリカをはじめとする西側の有力メディアはアサド政権に責任をなすりつける宣伝を繰り広げてきた。その宣伝に根拠がないことは少なからぬ人が指摘している。アメリカ、サウジアラビア、イスラエルを中心とする国々がアサド体制を転覆させるために送り込んだアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)の敗北は決定的。現在、クルドを使ってシリア占領、分割を狙っているが、クルドと敵対関係にあるトルコが北から攻撃する姿勢を見せている。今後、アメリカによるシリア侵略の責任が問われる可能性もあるが、今回の報告書はその際にアメリカが防衛のために使うこともできそうだ。カーン・シェイクンは現在でもアル・カイダ系武装集団が支配しているが、他の地域で政府軍が優勢になっていることもあり、住民の一部がアル・カイダに反対する意思表示をするようになっているようだ。先日、シリアの国旗を掲げた教師とその兄弟が首を切り落とされ、それに反発した人々が立ち上がったという話も流れている。この地域からアル・カイダ系武装集団が一掃される前に独立調査委員会は報告書を出したかったのかもしれない。
2017.09.08
現在、アメリカ支配層はロシアと中国の封じ込めに躍起である。1991年12月にソ連が消滅、ロシアは傀儡のボリス・エリツィンを大統領に据えて属国化、中国は1980年代からエリート層を懐柔しているつもりで、残された「雑魚」を潰していけば良いとネオコンは考えた。国務次官だったポール・ウォルフォウィッツが1991年、シリア、イラン、イラクを殲滅すると口にしたのは、そうした理由からだ。そうした計画を1992年2月、ウォルフォウィッツたちは国防総省のDPG草案という形で文書化した。2003年にアメリカはイラクを先制攻撃してサダム・フセイン体制を倒し、リビアやシリアはサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を主力とする傭兵集団を侵略軍として送り込んでいる。アル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)だ。この計画を狂わせたのがロシアのウラジミル・プーチン。アメリカの属国担ったはずのロシアを再独立させ、国力も回復させてしまったのである。そのロシアをもう一度つぶすためにウクライナでネオナチを使ったクーデターを実行、原油相場を急落させて経済的に圧力を加えようとしたのだが、クーデターでクリミアを制圧することに失敗、ロシアと中国を戦略的同盟国にしてしまった。原油相場の急落はアメリカと同盟関係にあるサウジアラビアを苦境に陥れ、アメリカのシェール・ガス/オイル業界にも大きなダメージを与えることになった。封じ込めの一環として、アメリカの属国である日本はインドを巻き込んでAAGC(アジア・アフリカ成長回廊)を打ち出し、中国が打ち出している一帯一路(陸のシルクロードと海のシルクロード)に対抗しようとしている。インドのナレンドラ・モディ首相はイスラエルとも緊密な関係にある人物で、アメリカの計画に乗ったのだろうが、その一方でインドはロシアや中国と同じBRICSの一員。今年5月末にモディは一帯一路を拒否する意思を示したが、これはBRICSからの離脱にもつながる発言で、実現は容易でない。海のシルクロードの出発点は南シナ海。だからこそ、アメリカや日本はその海域における中国の自由な航行を妨害するため、軍事的な緊張を強めてきた。朝鮮半島の軍事的緊張もロシアや中国の経済戦略を潰すことが目的のひとつだろう。中東/北アフリカやウクライナのように戦乱で破壊と殺戮の地になれば、ロシアや中国を苦しめることになる。それに対し、中国は南シナ海やマラッカ海峡を通過せずに石油を輸送するため、ミャンマーにパイプラインを建設した。その契約は軍事政権の時代、2005年に結んでいる。その軍事政権を倒すために行われた「サフラン革命」は2007年に始まっている。この「革命」はアメリカやイギリスの支援を受け、CIAの資金を扱っているNEDからも資金が流れ込んでいた。この時の主力になった仏教徒はイスラム教徒のロヒンギャを差別、革命で実権を握ってからロヒンギャの集落を襲撃して多くの住民を殺害している。かつてシオニストがパレスチナで行ったように、虐殺で恐怖心を煽り、国外へ逃げ出すように仕向けているとも見られている。実際、今年1月までに6万5000人がバングラデシュ、マレーシア、インドネシア、タイなどへ難民として出国している。襲撃したグループのリーダーはウィラトゥなる人物で、「ビルマのビン・ラディン」とも呼ばれている。その集団はアウンサンスーチーを支持している「民主化運動」の活動家たちでもあり、ミャンマーの最高権力者、人によっては独裁者と呼ぶアウンサンスーチーは虐殺を容認してきた。このロヒンギャにも魔の手は伸びている。サウジアラビアがワッハーブ派の広めてきた。パキスタンも協力しているようだ。アウンサンスーチー派による弾圧はロヒンギャへ憎しみの種をまくことになり、戦闘員を集めやすくする。勿論、アメリカとサウジアラビアは同盟関係にあり、中東や北アフリカではこの2カ国とイスラエルが中心になって戦乱を広めてきた。ミャンマーもそうならないとは言えない。
2017.09.07
アメリカの支配層は世界の富を独り占めにするため、各国を属国化してきた。ターゲット国のエリートを買収、それが無理なら暗殺、クーデター、軍事侵略。ズビグネフ・ブレジンスキーは1970年代の終盤、サウジアラビアの協力でサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を集め、軍事訓練、武器/兵器を与えてソ連軍と戦わせた。バラク・オバマ政権はその傭兵部隊をリビアやシリアへ送り込み、政権転覆を目論んだわけだ。その活動範囲は中東や北アフリカを超えて広がりつつある。勿論、そうした動きを支援しているのはアメリカである。ウクライナではネオ・ナチを同じように使ってクーデターを成功させた。シリアでアメリカは体制転覆に失敗したが、国を破壊、国力を弱めることには成功している。イラクはサダム・フセイン体制が倒されたが、最近はロシアへ接近、イランやシリアなどとも手を組みつつある。アフガニスタン、リビア、イエメン、ウクライナなどは破綻国家だ。現在、ドナルド・トランプ政権は「朝鮮の脅威」を利用して東アジアの軍事的な緊張を高めつつあるが、本ブログでは何度も指摘しているように、アメリカの目標はロシアや中国の制圧。中国がアメリカ軍の朝鮮侵略を阻止するとしている理由もそこにあるだろう。朝鮮半島や東南アジアを中東、リビア、ウクライナのようにすれば、中国の一帯一路プロジェクトは機能しない。中国を疲弊させることもできると計算している可能性がある。朝鮮はアメリカに操られていると見れば行動を予測しやすい。アフガニスタン、イラク、リビア、シリア、ウクライナといった国々への侵略は有力メディアを使った嘘の流布から始まったが、過去を振り返ると偽旗作戦も多用されている。中国東北部の制圧するための軍事作戦を正当化するために日本軍が1931年9月の行った南満州鉄道の線路爆破も偽旗作戦だが、アメリカの手口でもある。キューバを軍事侵略する口実にしようとしたノースウッズ作戦はジョン・F・ケネディ大統領の反対で実行されなかったが、次のリンドン・ジョンソン政権はベトナムを侵略するためにトンキン湾事件をでっち上げている。このでっち上げは1964年7月30日に始まる。南ベトナムの哨戒魚雷艇が北ベトナムの島を攻撃したのだ。その翌日に米海軍の特殊部隊SEALsの隊員が率いる20名の南ベトナム兵がハイフォン近くにあるレーダー施設を襲撃、8月2日に北ベトナムは報復として情報収集活動中だった米海軍のマドックスを攻撃、それをアメリカ側は先制攻撃だと主張したと言われている。8月7日にアメリカ議会は「東南アジアにおける行動に関する議会決議(トンキン湾決議)」を可決、本格的な軍事介入をはじめたのだ。(Douglas Valentine, "The Phoenix Program," William Morrow, 1990)失敗した偽旗作戦もある。アメリカ支配層の中にはイスラエルがシリアやエジプトとの戦争で勝利し、領土を拡大させることを望む人たちがいた。そのひとりが秘密工作で名前がしばしば出てくるCIAのジェームズ・ジーザス・アングルトンだ。ジョンソン政権当時、秘密工作を統括していたのは「303委員会」だった。1967年4月に開かれたこの委員会の会議で「フロントレット615」という計画について米空軍の准将から説明があった。情報収集船のリバティを潜水艦と一緒に地中海の東岸、イスラエル沖へ派遣するというもの。実際に派遣されたのは6月8日。6月5日から10日にかけてイスラエルはエジプトやシリアと戦争している。第3次中東戦争だ。戦争の勃発をアメリカ政府は「予見」していたように見える。この戦争ではアメリカ空軍からイスラエルへ4機の偵察機が貸し出され、ペイントをイスラエル軍のものに塗り替えて戦争に使われたと2002年に放送されたBBCのドキュメンタリーでは指摘されている。その日、リバティに対する最初の偵察飛行は8日の午前6時に行われている。10時には2機のジェット戦闘機が飛来、10時半、11時26分、12時20分にも低空で情報収集戦に近づいている。当然、船がアメリカの情報収集戦だということを確認できたはずだ。そして午後2時5分、3機のミラージュ戦闘機がリバティ号への攻撃を開始、ロケット弾やナパーム弾を発射した。ナパーム弾を使ったということは、乗員を皆殺しにするつもりだということを意味する。イスラエル機はまず船の通信設備を狙って破壊するのだが、2時10分に通信兵は寄せ集めの装置とアンテナで第6艦隊に遭難信号を発信することに成功。これに気づいたイスラエル軍はジャミングで通信を妨害した。その数分後には3隻の魚雷艇が急接近して20ミリと40ミリ砲で攻撃、さらに魚雷が命中し、さらに傾いた船に銃撃を加えている。その結果、乗組員9名が死亡、25名が行方不明、171名が負傷した。そこへ大型ヘリコプター、SA321シュペル・フルロンが2機近づいて、船の上空を旋回し始める。中にはイスラエルの特殊部隊員が乗っていた。リバティの乗組員はイスラエルが止めを刺しに来たと思ったようだ。3時36分には魚雷艇とマークの入っていないジェット戦闘機が現れたのだが、すぐに姿を消してしまう。(Alan Hart, “Zionism Volume Three”, World Focus Publishing, 2005)遭難信号を受信した時、第6艦隊の空母サラトガはリバティから航空機で約30分程度の場所で訓練中。サラトガのジョー・タリー大佐によると、攻撃を知るとすぐに12機の戦闘機や爆撃機が救援のために離陸しているのだが、第6艦隊のローレンス・ゲイス司令官は航空機に帰還するよう命令している。また、リバティが攻撃されたことはジョンソン大統領へすぐに報告されたが、動きは鈍い。ロバート・マクナマラ国防長官は第6艦隊に対し、戦闘機をすぐに引き返させるようにと叫んでいたという。(Alan Hart, “Zionism Volume Three”, World Focus Publishing, 2005)第6艦隊の司令官やホワイトハウスはリバティの沈没を願っていたように見える。遭難信号を発信したことが計算外だったのかもしれない。そうした連絡なしに船が沈没したならば、その責任をエジプト、あるいはソ連に押しつけることが可能。アメリカ軍が戦争に参加する口実にするため、リバティを犠牲にしようとしたのではないかと疑う人もいる。ソ連に責任を押しつければ米ソ開戦だろうが、その当時、ソ連軍はアメリカ軍が介入したならエジプト側について戦うとガマル・ナセル大統領へ伝えていたと言われ、エジプトに責任を押しつけても第3次世界大戦に発展していたということ。朝鮮半島でも似たようなことをアメリカが目論んでいても不思議ではない。朝鮮がアメリカに操られているとしても、最後には裏切られる。それがアメリカの手口だ。
2017.09.06
アメリカでドナルド・トランプ大統領が軟禁状態になっているという噂が流れている。これが事実かどうかは不明だが、2015年の段階でヒラリー・クリントンの大統領就任を内定していた勢力がトランプの周辺を固めたことは間違いないだろう。トランプに信頼され、ロシアとの関係改善を主張していたマイケル・フリン国家安全保障補佐官は2月に政府から追い出され、8月には朝鮮半島の核問題で「軍事的な解決はない。忘れろ」と発言したステファン・バノンも首席戦略官を辞めさせられた。フリンが辞めさせられた時点でトランプは死に体になっていたが、バノンがいなくなったことで政権は完全に乗っ取られたと見る人もいる。2016年の大統領選でクリントンを勝たせることを支配層が決めたと言われた理由のひとつは、15年6月11日から14日かけてオーストリアで開かれたビルダーバーグ・グループの会合にヒラリーの旧友であるジム・メッシナが参加していたこと。2015年5月26日の時点で民主党幹部たちがヒラリー・クリントンを候補者にすると決めていたことを示唆している電子メールも存在している。ビルダーバーグ・グループは欧米支配層の利害調整機関とも言われているが、その歴史をたどると、1922年に作られたPEU(汎ヨーロッパ連合)までさかのぼることができるだろう。ウィンストン・チャーチルやオットー・フォン・ハプスブルクなどが中心的な存在だった。第2次世界大戦後、アメリカはヨーロッパを支配する目的でACUE(ヨーロッパ連合に関するアメリカ委員会)を設置するが、その中核にはチャーチル、OSS長官だったウィリアム・ドノバン、ドノバンと同じウォール街の弁護士でCIAを動かすことになるアレン・ダレス、あるいはポーランド出身のヨセフ・レティンガーがいる。ビルダーバーグ・グループはACUEの関連組織。EUもこの流れの中で生まれた。WikiLeaks以外のルートでも電子メールは漏れているが、そうした中には、2015年5月26日の時点で民主党幹部たちがヒラリー・クリントンを候補者にすると決めていたことを示唆している電子メールの存在している。こうした勢力の描く道筋が大統領選では壊れ、トランプが大統領に就任する。国家安全保障補佐官に就任したフリンは元DIA(国防情報局)局長で、局長時代の2012年にDIAは反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団であり、バラク・オバマ政権が宣伝していた「穏健派」は存在しないとする報告書をホワイトハウスへ提出している。その中で東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告されている。実際、その警告通りになった。フリンも言っているように、オバマ大統領の政策がダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)の勢力を拡大させたのだ。そのダーイッシュは2015年9月30日にシリア政府の要請でロシア軍が介入してから劣勢になり、崩壊状態。つまり、アル・カイダ系武装勢力やダーイッシュ(タグの違いだけで中身は大差がない)をシリアの体制を転覆させるために送り込んだアメリカ、イスラエル、サウジアラビアなどにとっても深刻な事態。破壊と殺戮の舞台をアフガニスタンや東/東南アジアへ移動させようとしている。リビアへ逃げ込んだ戦闘員も少なくないと言われている。
2017.09.06
ドナルド・トランプ米大統領は朝鮮とビジネス上の関係がある国との取引中止を考えているとツイッターに書き込んだが、これはロシアや中国との貿易を止めるということを意味する。アメリカの属国である日本もロシアや中国、特に中国なしに経済は成り立たない。アメリカには基軸通貨を発行するという特権があるものの、生産を放棄しているため、そうしたことをすれば物が手に入らなくなる。ロケットも飛ばせない。アメリカが頼れるのは軍事力だけだが、その軍事力もロシアより見劣りするのが現実だ。高額兵器の開発に集中した結果である。
2017.09.05
少し前まで原爆の爆破実験やミサイルの発射実験に四苦八苦していた朝鮮が、これだけ短期間にICBMを開発し、水爆の爆破実験を成功させた可能性があるという。外部から技術や部品を持ち込まずにそうしたことが可能だろうか?ミサイルのエンジンについて、イギリスを拠点にするシンクタンク、IISS(国際戦略研究所)のマイケル・エルマンは朝鮮がICBMに使ったエンジンはソ連で開発されたRD-250がベースになっていると分析、朝鮮が使用したものと同じバージョンのエンジンを西側の専門家がウクライナの工場で見たという。ジャーナリストのロバート・パリーによると、エンジンの出所だと疑われている工場の所在地はイゴール・コロモイスキーという富豪(オリガルヒ)が知事をしていたドニプロペトロウシク(現在はドニプロと呼ばれている)にある。コロモイスキーはウクライナ、キプロス、イスラエルの国籍を持つ人物で、2014年2月のクーデターを成功させたネオ・ナチのスポンサーとしても知られている。2014年7月17日にマレーシア航空17便を撃墜した黒幕だとも噂されている人物だ。国籍を見てもわかるようにコロモイスキーはイスラエルに近く、アメリカの親イスラエル派(シオニスト)であるネオコンと連携していたのは必然だろう。本ブログでも指摘してきたことだが、朝鮮はイスラエルと武器の取り引きをした過去がある。1980年のアメリカ大統領選挙で共和党はイランの革命政権に人質解放を遅らせるように要求、その代償としてロナルド・レーガン政権はイランへ武器を密輸した。その際、イランは大量のカチューシャロケット弾をアメリカ側へ発注、アメリカはイスラエルに調達を依頼した。イスラエルは朝鮮から購入、イランへ売っている。その後も朝鮮とイスラエルとの関係は続き、イスラエルには朝鮮のエージェントがいるようだ。そのエージェントがエンジンの件でも重要な役割を果たしたという情報も流れている。そのイスラエルは中東で唯一の核兵器保有国である。1976年から85年までイスラエルの核兵器製造施設で技術者として働き、86年にサンデー・タイムズ紙で内部告発したモルデカイ・バヌヌによると、その当時でイスラエルの核弾頭保有数は150から200。水素爆弾や中性子爆弾の製造も始め、中性子爆弾は実戦で使う準備ができていたという。ウルスター大学のクリストファー・バスビー教授によると、ファルージャでは人の髪の毛や土の中から濃縮ウランが発見されている。ファルージャやバスラでは新生児に奇形や脳の障害などが多発しているという報告があるのだが、劣化ウラン弾ではない未知の兵器が2005年から使われたということだ。中性子爆弾が使われた可能性があるという。こうした濃縮ウランはファルージャだけで発見されているわけではない。2006年7月にイスラエル軍が軍事侵攻した後のレバノンに入ったバスビーはクレーターを調査、濃縮ウランを見つけたという。レバノンやガザを走っていた自動車のフィルターからもそうした物質が発見されたともしている。アフガニスタンでも濃縮ウランを残す兵器が使われ、バルカン半島でも使用された可能性があるという。最近では、シリアで小型の中性子爆弾が使われた可能性が高いと主張する核兵器の専門家もいる。2013年5月や14年12月にあった爆発は地震のような揺れがあり、「巨大な金色のキノコに見える炎」が目撃されるほど大きなものだった。爆発の様子を撮影したCCDカメラに画素が輝く現象(シンチレーション)もあり、そうした推測にたどり着いたようだ。そのほか、ウクライナのドネツク、イエメン、中国の天津でも使われた疑いがある。
2017.09.05
1945年9月2日に日本政府全権の重光葵と軍全権の梅津美治郎が降伏文書に調印、第2次世界大戦は終わった。8月10日夜半に同盟通信の海外向け放送でポツダム宣言受諾の決定を明らかにし、14日には最終的な受諾通告し、15日には終戦勅語、そして16日に日本軍は停戦命令を出している。この敗北について、生産力など国力で日本を圧倒しているアメリカと戦争を始めたことに原因を求める意見がある。無謀な戦争だったというのだが、その戦争とはハワイの真珠湾を1941年12月7日(現地時間)に奇襲攻撃して始まったものを指している。いわゆる太平洋戦争だ。つまり、大陸で行われていた侵略戦争は無視されている。この侵略戦争は1872年から始まる。その前年7月に明治政府は廃藩置県を実施するのだが、72年に琉球国を廃して琉球藩を設置、つまり併合したのだ。本ブログでは何度か指摘しているが、明治政府が琉球国を日本領だと考えていたなら、あるいは日本領にしたかったのなら、琉球藩をでっち上げてから廃藩置県だろう。明治政府は当初、琉球国を日本領だとは考えていなかった。その矛盾を解くカギが1871年10月に起こった宮古島漁民の難破事件。台湾に漂着した漁民の一部が殺されたとして日本政府は清に抗議、被害者に対する賠償や謝罪を要求したのだ。1874年には台湾へ派兵している。実は1872年に興味深い人物が日本へ来ている。厦門にいたアメリカ領事のチャールズ・リ・ジェンダーだ。外務卿だった副島種臣に台湾への派兵を勧め、それ以降、75年まで外務省の顧問を務めることになる。その1875年に明治政府は李氏朝鮮の首都を守る要衝、江華島へ軍艦が派遣して挑発、「日朝修好条規」を結ばせて清国の宗主権を否定させることに成功した。イギリスの外交官、アーネスト・サトウは薩摩や長州に働きかけ、徳川との内戦へ導こうとしていたが、彼以外にも日本人を戦争へ向かわせようとした外国人がいるということである。サトウは平和的な体制の移行に同意していた西郷隆盛を軍事クーデター派へ変えている。関良基が指摘しているように、西郷はサトウの挑発に乗せられてしまったのだ。(関良基著『赤松小三郎ともう一つの明治維新』作品社、2016年)サトウの盟友だったというトーマス・グラバーはアヘン戦争で大儲けしたジャーディン・マセソン商会が1859年に日本へ送り込んだエージェント。1861年に彼はグラバー商会を設立、武器取引を始める。グラバーの下へは坂本龍馬、後藤象二郎、岩崎弥太郎たちも出入りしていた。1863年にはグラバーの手配で長州藩が井上聞多(馨)、遠藤謹助、山尾庸三、伊藤俊輔(博文)、野村弥吉(井上勝)をイギリスへ送り出している。渡航にはジャーディン・マセソン商会の船が使われた。勿論、物見遊山での渡英ではない。ジャーディン・マセソン商会の共同創設者であるウィリアム・ジャーディンの姉、ジーン・ジャーディン・ジョンストンの孫にあたるウィリアム・ケズウィックはグラバーと同様、1859年に日本へ渡り、横浜でジャーディン・マセソン商会のオフィスを開いている。1862年には香港へ戻り、アヘン取引の資金を扱っていた香港上海銀行で働くのだが、そうした関係もあり、ケズウィックは青幇の杜月笙と親しかった。杜月笙は麻薬取引の大物で、蒋介石の側近だ。
2017.09.04
ICBMへ搭載できる水爆の開発に成功したとしていた朝鮮は9月3日、水爆の爆破実験に成功したと発表した。日本のマスコミは大騒ぎで、政府は軍事力の増強、治安体制の強化に利用しようとしている。9月4日から5日に中国の厦門で開かれるBRICSの会議、9月6日から7日にかけてロシアのウラジオストックで開かれるEEF(東方経済フォーラム)を意識している可能性は高い。EEFでは340億ドルを超す商取引が成立するとされている。ところで、ビル・クリントン政権の第2期目からバラク・オバマ政権に至るまで、アメリカは侵略戦争を繰り返してきた。2001年9月11日の出来事はそうした動きを加速、今ではロシアや中国と核戦争も辞さないという姿勢を見せている。そうした好戦的な政策に反発した人々の声がドナルド・トランプを大統領にする大きな要因になったが、トランプに対する攻撃は大統領就任前から続いている。アル・カイダ系武装集団を使った侵略に批判的だったマイケル・フリン前DIA局長をトランプ大統領は国家安全保障補佐官に据えたが、政権が誕生して間もない2017年2月に追い出され、最近では朝鮮半島の核問題で「軍事的な解決はない。忘れろ」と発言していたステファン・バノンも首席戦略官を辞めさせられた。しかし、世界的に見るとアメリカ支配層の好戦的な政策に反対する人はいて、例えば、韓国の文在寅大統領は朝鮮半島での戦争を許さないという姿勢を鮮明にしていた。韓国政府は中国やロシアへ接近しているが、その中国やロシアも朝鮮のミサイル発射や核実験には反対している。つまり、今回の実験を最も喜んでいるのは東アジアの軍事的な緊張を高めたがっているアメリカであり、そのアメリカの属国である日本のマスコミは、はしゃいでいる。アメリカが世界制覇に向かい、暴走を始めたのは1992年の初頭。1991年12月に西側支配層はボリス・エリツィンを使ってソ連を消滅させることに成功、その後はエリツィンを操ってロシアの資産を搾り取り始めたのだが、その段階でネオコンはアメリカが唯一の超大国になったと考え、イラク、シリア、イランといった国々を軍事的に屈服させようとしている。その計画がウォルフォウィッツ・ドクトリンだが、それは21世紀に入ってウラジミル・プーチンがロシアを再独立させたことで破綻する。そこで、中東や北アフリカを侵略する一方、ロシアや中国に対する経済戦争、外交戦争、宣伝戦争、あるいは軍事力を使った恫喝につながった。そうした対中露戦争の一環として、アメリカ国務省は8月31日、サンフランシスコのロシア領事館とワシントンDCやニューヨーク市にある関連施設から9月2日までに立ち退くように命令、その領事館や館員の自宅をFBIなど当局が捜索すると発表した。40時間足らずで明け渡せということ。明らかに敵対的な挑発行為だ。バラク・オバマ政権の時代からアメリカではネオコンなど好戦的な勢力が有力メディアと手を組んで反ロシア・プロパガンダを続けてきた。トランプを当選させるために選挙へ介入したという主張が中心だが、その証拠は全く示されていない。民主党の電子メールをハッキングしたとも主張しているが、この場合、証拠は内部からのリークだったことを示している。本ブログでは何度も書いているように、ロシアや中国に恫喝は通じない。中東への侵略は破壊と殺戮をもたらしたが、アメリカの支配力は弱まっている。そのため、軍隊を入れ、力で押さえつけるしかないのだが、それも機能していない。アメリカと同盟関係にあるイスラエルやサウジアラビアも揺らいでいる。現在、アメリカ支配層の思惑通りに動いているのは日本と朝鮮くらいだろう。
2017.09.03
アメリカ国務省は8月31日、サンフランシスコにあるロシア領事館とワシントンDCやニューヨーク市にある関連施設から9月2日までに立ち退くように命令、その領事館や館員の自宅をFBIなど当局が捜索するともしている。40時間足らずで明け渡せということで、一般社会でも許されない行為だ。言うまでもなく、この動きは2016年12月にバラク・オバマ大統領(当時)が外交官35名を含むロシア人96名を追放したことから始まる。アメリカとロシアとの関係を改善すると宣言していたドナルド・トランプ次期大統領(当時)に対する置き土産だった。それに対し、ロシア側は米露の駐在外交官数を均衡させるとしてロシアで活動しているアメリカ外交官を455名まで減らさせた。ロシアのアメリカ大使館には1210名の外交官がいたようで、755名が追放するたことになる。アメリカ大使館は各国で破壊活動の拠点に使われていることは公然の秘密で、以上に多いアメリカの「外交官」がそうした活動に従事していることも明らかだ。通信傍受のための施設もあると見られている。アメリカでは外交官を追放するだけでなく、殺すべきだと主張する人もいる。例えば、ヒラリー・クリントンに近いマイク・モレル元CIA副長官(2011年7月1日から9月6日、12年11月9日から13年3月8日の期間は長官代理)は2016年8月、チャーリー・ローズのインタビューでロシア人やイラン人に代償を払わせるべきだと語った。司会者からロシア人とイラン人を殺すという意味かと問われると、その通りだと答えている。わからないようにと付け加えることも忘れなかった。この発言だけでも大きな問題だが、それだけではなかった。例えば、2016年11月8日にニューヨークのロシア領事館で副領事の死体が発見され、12月19日にはトルコのアンカラでロシア大使が射殺され、12月20日にはロシア外務省ラテン・アメリカ局の幹部外交官が射殺され、12月29日にはKGB/FSBの元幹部の死体が自動車の中で発見され、17年1月9日にはギリシャのアパートでロシア領事が死亡、1月26日にはインドでロシア大使が心臓発作で死亡、そして2月20日にはロシアの国連大使だったビタリー・チュルキンが心臓発作で急死した。こうした外交官はモレル発言の後の死者だが、2015年11月5日にはアメリカ政府が目の敵にしてきたRTを創設した人物がワシントンDCのホテルで死亡している。 例えば、昨年12月19日にトルコのアンカラでアンドレイ・カルロフ駐トルコ大使が美術展覧会場で射殺され、今年1月9日にギリシアのアパートで54歳のアンドレイ・マラニン領事が変死、1月26日にはインド駐在のアレキサンダー・カダキン大使が心臓発作で死亡している。
2017.09.03
前原誠司が民進党の代表に選ばれたそうだ。野田佳彦幹事長と同じ松下政経塾の出身で、考え方は似ている。経済問題は新自由主義(ニューリベラル)、国際問題は新保守(ネオコンサーバティブ/ネオコン)。リベラルとコンサーバティブは正反対のようだが、実態は同じで、強者総取り、巨大資本が世界を支配する体制の構築を目標にしている。こうした人物を党代表にしたり幹事長にする政党が庶民の利益を考えているわけがない。有権者もその程度のことは理解しているだろう。前原は鳩山由起夫内閣と菅直人内閣で国土交通大臣(2009年9月〜10年9月)、菅内閣で外務大臣(2010年9月〜11年3月)などを、野田は菅内閣で財務大臣(2010年6月〜11年9月)、そして内閣総理大臣(2011年9月〜12年12月)を務めた。2011年12月に野田は炉心溶融という大事故を引き起こし、全く機能していない東京電力福島第1原子力発電所の原子炉が冷温停止状態を達成したという戯言を主張、11年12月には内閣総辞職して安倍晋三政権誕生への道を作った。その間、菅直人政権はTPPへの参加を、また野田政権は消費税増税を打ち出している。いずれも弱者から搾り取り、強者を裕福にする政策で、日米の支配層が望んでいたものだ。1991年12月にソ連が消滅、西側支配層の傀儡、ボリス・エリツィンがロシア大統領として新自由主義経済を導入、ロシア国民の資産を西側巨大資本とその手先が略奪する手助けをするようになると、中国脅威論が唱えられ始めた。国防総省のシンクタンクONA(ネット評価室)で室長を務めていたアンドリュー・マーシャルが発信源だ。マーシャルは中国の地対地ミサイルなどが東アジアの基地や空母にとって脅威になるとしてミサイル防衛の必要性を強調、中国脅威論を主張した。ジョージ・W・ブッシュ政権で国防長官を務めたドナルド・ラムズフェルドが軍再編の見直しを任せた人物はこのマーシャルである。冷戦時代、マーシャルはソ連脅威論を主張、それを正当化するために偽情報を流していたのがCIA内に設置され、ジョージ・H・W・ブッシュが長官だった時期に活動したチームB(あるいはBチーム)。このチームの中心には後にネオコンと呼ばれる人物がいた。中国を締め上げる最前線は言うまでもなく日本。両国の間には尖閣諸島の領有権問題があるのだが、これは1970年代に田中角栄と周恩来とが「棚上げ」で合意していた。この問題を棚上げにして両国の友好を推進、経済関係を強めようとしたわけだ。この問題を棚から引きずり下ろしたのが民主党の菅直人政権だった。2010年9月、菅政権の時に海上保安庁は尖閣諸島付近で操業していた中国の漁船を取り締まり、漁船の船長を逮捕しているが、これは「日中漁業協定」を無視する行為。当然、海上保安庁は協定を熟知しているはず。海上保安庁は国土交通省の外局で、その当時の国土交通大臣は前原。大臣の意思がなければ不可能な行為だ。つまり、前原は田中と周による棚上げ合意を壊し、日本と中国との関係悪化を図ったのである。実際、この逮捕で日本と中国との関係は悪化するが、2011年3月11日に東北の太平洋側で巨大地震が起こり、日本と中国の対立は緩和されそうになる。そうした雰囲気を消し去って関係悪化の方向へ戻したのが石原親子だ。2011年12月に石原伸晃が「ハドソン研究所で講演、尖閣諸島を公的な管理下に置いて自衛隊を常駐させ、軍事予算を大きく増やすと発言した。この背後にはネオコンの大物でポール・ウォルフォウィッツの弟子にあたるI・ルイス・リビーがいたと言われている。リビーはハドソン研究所の上級副所長だった。さらに、2012年4月に石原伸晃の父親、石原慎太郎知事(当時)が「ヘリテージ財団」主催のシンポジウムで尖閣諸島の魚釣島、北小島、南児島を東京都が買い取る意向を示して中国との関係は決定的に悪くなる。安倍晋三もハドソン研究所と関係が深いが、そのつながりを築いたのもリビーだ。
2017.09.02
1983年8月31日から9月1日にかけて大韓航空007便が航路を大幅に逸脱、NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)が定める緩衝空域と飛行禁止空域を通過、カムチャツカ半島を横切り、サハリン上空で撃墜されたとされている。その際、007便はソ連の重要な軍事基地の上を飛行した。この後、1983年から84年にかけてアメリカとソ連は全面核戦争の一歩手前まで進んでいる。NORADのアラスカ航空指揮規則によると、飛行禁止空域に迷い込みそうな航空機を発見した場合はすぐに接触を試み、FAA(連邦航空局)へ連絡しなければならないと定められているのだが、アメリカ軍は撃墜も予想される飛行禁止空域へ向かう民間機に対して何もアクションを起こしていない。アメリカ軍のスタッフが信じがたいほど怠慢だったのか、NORAD側を誤認させる機材が搭載されていたのか、事前に飛行許可を受けていたということになる。この撃墜を利用し、アメリカをはじめ西側の政府やメディアはソ連を激しく非難するのだが、その時点でアメリカ支配層はソ連との戦争を始めていた。パキスタンのバナジル・ブット首相の特別補佐官を務めていたナシルラー・ババールによるとアメリカは73年からアフガニスタンを不安定化させるため、反体制派へ資金を援助している(Robert Dreyfuss, “Devil’s Game”, Henry Holt, 2005)のだが、ジミー・カーター政権で国家安全保障担当補佐官だったズビグネフ・ブレジンスキーは1979年4月からCIAはイスラム武装勢力への支援プログラムを開始、その年の12月にはソ連軍をアフガニスタンへ誘い込むことに成功する。 このソ連軍と戦うためにサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心に戦闘集団が編成され、その戦闘員にCIAが武器/兵器を供給、軍事訓練も行っている。ロビン・クック元英外相も指摘したように、こうした戦闘員、いわゆるムジャヒディンのコンピュータ・ファイルがアル・カイダ。ちなみにアル・カイダとは「ベース」を意味し、データベースの訳としても使われる。戦闘員を雇うカネを負担したのはサウジアラビアで、責任者は同国の総合情報庁長官を務めていたタルキ・アル・ファイサル。その下で戦闘員を集めていた人物がオサマ・ビン・ラディンだ。アル・カイダは戦闘組織ではなく、オサマ・ビン・ラディンが戦闘を指揮しているわけではない。アフガニスタンでの秘密工作はアメリカやサウジアラビアのほか、パキスタン、王政時代のイラン、イスラエルが参加しているが、そのうちアメリカとイスラエルの情報機関関係者は1979年7月にエルサレムで「国際テロリズム」に関する会議を開いている。会議を主催したのはジョナサン研究所というイスラエルのシンクタンク。情報機関との関係が深いとされている。その名称は1976年7月、ウガンダのエンテベ空港襲撃の際に死亡したイスラエルの特殊部隊員、ヨナタン・ネタニアフに由来している。後にイスラエルの首相となるベンヤミン・ネタニアフは弟であり、研究所が創設された時に所長を務めたベンシオン・ネタニアフはふたりの父親。このベンシオンはジャボチンスキーの秘書を務めていた人物だ。この会議にはジョージ・H・W・ブッシュ元CIA長官(後の大統領)、ブッシュ長官時代にソ連の脅威を宣伝していたチームB(またはBチーム)を率いていたネオコンのリチャード・パイプス、あるいはCIA台湾支局長を経て副長官を務め、シンクタンクのCSISの創設に参加したレイ・クラインも含まれていた。クラインは席上、「テロの原因」を抑圧された人々の怒りでなく、ソ連政府の政策、あるいはその陰謀にあると主張する。会議後、アメリカの政府や有力メディアはソ連を国際テロリズムの黒幕だとするキャンペーンを展開した。1981年5月にはローマ教皇ヨハネ・パウロ2世がサンピエトロ広場で銃撃されたが、引き金を引いたモハメト・アリ・アジャはトルコの「灰色の狼」に所属していたが、この結社はNATOの秘密部隊の一部だと言われている。この事件も反ソ連キャンペーンに利用された。ジャーナリストのカール・バーンシュタインによると、その翌年の7月、教皇はロナルド・レーガン大統領とバチカンで会談、ソ連に対する秘密工作について話し合っている。(Carl Bernstein, “The Holy Alliance”, TIME, Feb. 24, 1992)
2017.09.01
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