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7月10日前後にシリアでアメリカ軍が大規模な軍事作戦を始めるという見方がある。6月26日にホワイトハウスの広報担当、シーン・スパイサーはシリア政府が化学兵器を計画している可能性があるとしたうえで、もし攻撃したなら報復すると発言したが、いつものように証拠や根拠の類いは示されていない。シリアを攻撃するという脅しにしては唐突で、何者からか攻撃命令が出たのかもしれない。7月7日から8日にかけてドイツのハンブルグで開かれるG20サミットでドナルド・トランプ米大統領がウラジミル・プーチン露大統領に最後通牒を突きつけ、それが不調に終われば戦争になるとも予想されているが、そうした脅しにシリアやロシアが屈するとは考え難く、バラク・オバマ政権が2013年に計画した侵攻作戦を実行するのではないかと懸念されている。トランプ政権は4月6日夜、駆逐艦のポーターとロスから巡航ミサイルのトマホーク59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射させ、少なくとも数機は目標へ到達したと言われている。これが次の攻撃をトランプにさせる仕掛けだったと考える人もいる。この攻撃は4月4日にシリア政府軍が化学兵器を使ったという口実で実行されたのだが、現地の様子を撮影した映像を見て嘘だと考えた人は少なくない。理由のひとつは、現場にいる人物が防護服を着ていないことだ。そもそもシリア政府に化学兵器を使う理由がない。ジャーナリストのロバート・パリーは攻撃の直後、4月6日の早朝にドナルド・トランプ大統領がマイク・ポンペオCIA長官からシリア政府軍による化学兵器の使用を否定する説明を受けていたとする内部情報を伝えている。6月25日にはジャーナリストのシーモア・ハーシュが同じ内容の記事をドイツのメディアに書いた。ハーシュによると、4月4日に聖戦主義者の幹部が会議を開くという情報をつかんだロシアとシリアは攻撃計画を立て、その内容をアメリカ側へ伝えている。CIAにも直接、ロシアから攻撃に関する情報が伝えられていた。攻撃の前からアメリカ側はロシアから情報を知らされ、監視していた。ハーシュの記事が出た翌日、スパイサーの荒唐無稽な話が飛び出したのだが、こうした動きを察知してハーシュへ国家安全保障の事情に精通した人物からリークがあった可能性も否定できない。これまでネオコンは自分たちに都合の良い展開を予想して仕掛けてきたが、いずれも失敗している。見込み違いだ。プーチンはネオコンが願うようには動いてこなかった。もしアメリカ軍がシリア政府軍に対する本格的な戦争を始めたなら、同じ運命が待っているだろう。ただ、その結果は深刻なものになる。アメリカは早い段階から特殊部隊をシリアへ潜入させてきた。2016年9月にはバラク・オバマ政権は特殊部隊をシリア北部にある7つの基地へ派遣したと伝えられ、クルド軍とラッカへ入ったともいう。当初はトルコが拠点だったが、そのトルコがアメリカ、サウジアラビア、イスラエルの3国同盟から離れたことから北の兵站線が細り、ヨルダンにアメリカはイギリスと拠点を築いている。そこからシリア政府の承認をえないまま特殊部隊をシリア南部、バグダッドとダマスカスを結ぶ幹線が通るアル・タンフへ侵入させた。そこで反シリア政府軍、つまり新ダーイッシュを訓練しているのだが、そこへ近づいているとしてアメリカ主導軍の航空機が5月18日に政府軍のT-62戦車2輌を破壊、6名の兵士を殺害、何人かを負傷させている。さらに6月6日と8日に同じくアル・タンフでシリア政府軍を攻撃、6月18日にはシリアの要衝、ラッカ近くでシリア政府軍のSu-22戦闘爆撃機をアメリカ主導軍のF/A-18E戦闘機が撃墜、19日には米軍のF-15戦闘機がシリア政府軍のドローンを撃ち落としている。アル・タンフにはHIMARS(高機動ロケット砲システム)を持ち込んでシリア政府軍との戦闘に備えている。このほか、シリア北部には今年に入り、第11海兵遠征部隊が戦闘態勢を整えたと報道され、アレッポのマンビジにはアメリカ陸軍の第75歩兵連隊の車列が入ったとも伝えられている。実は、ロシア側も特殊部隊をシリア領内で活動させはじめている。特殊部隊に限らず、ロシア軍は強い。これを示したのは2008年にジョージア(グルジア)が南オセチアに対して行った奇襲攻撃。ジョージアはイスラエル軍から武器/兵器を提供され、将兵を訓練され、おそらく作戦も提供されていた。そのジョージア軍がロシア軍に惨敗しているのだ。そうしたことを考えると、アメリカの地上部隊が苦しめられることは間違いない。航空兵力を比較すると、アメリカ軍が恐れるロシアの最新鋭戦闘機は10機程度であるのに対し、アメリカ側はステルス戦闘機のほか数十機のF-15、F-16といった戦闘機、さらにB-1やB-52といった爆撃機を配備している。戦力的にはアメリカ軍が圧倒しているというように見える。しかし、こうした戦闘機はロシアが配備したS-300、S-400、パーンツィリ-S1に苦しめられることになる。スペンサーが攻撃予告する3日前、ロシア軍は地中海の東側にいる2フリゲート艦と潜水艦から6機の巡航ミサイル、カリバルを発射、侵略部隊の司令部や兵器庫を破壊している。このミサイルは超音速で飛行することができ、命中精度が高く、アメリカ軍がシリア領内で勝手に建設した基地がターゲットになる可能性がある。状況によってはカスピ海の艦船から巡航ミサイルを発射したり、マッハ6から7で飛行する弾道ミサイルのイスカンダルが使われることもありえるだろう。ハーシュの記事によると、アメリカ軍はロシア軍が張り子の虎ではなく、反撃してくることを認識しているが、トランプ政権、つまりネオコンは本当に理解していない可能性がある。サウジアラビアやイスラエルの動きもきな臭い。
2017.06.30
奄美空港でバニラ・エアの関西空港行き航空機へ搭乗しようとした両下肢麻痺の男性が階段式のタラップを腕の力で自力で上らざるを得なくなったことが明るみに出て問題になっている。この事態を受け、同航空では14日からストレッチャー(座った状態で運ぶ担架)を使用、29日からは階段昇降機を導入するという。この程度のことをケチることが会社にどれだけダメージを与えるかを理解できない人間が経営者だということは恐ろしい。格安航空会社はコストを削減することで価格を低く抑えるわけだが、本来、それは贅沢なサービスを止めるということで、必要な経費を削減して良いわけではない。どうしても設備が間に合わなかったならば、客が航空会社を選ぶ段階でわかるようにする義務がある。広告やパンフレットなどに、車いすの人は奄美空港を利用できない旨を明記するべきだということだ。カウンターで説明すれば良いというものではない。もっとも、アメリカの航空業界は遥かに恐ろしい。例えば、2015年6月にメンフィスの空港で18歳の女性が逮捕されたケース。この女性は片方の目が見えず、片方の耳が聞こえず、脳腫瘍の治療を終えて帰るところだった。ボディ・スキャナーを通ったときにアラームが鳴ってパニックになり、付き添っていた母親が係員に優しく接してくれるように頼むが、そこで拡声システムで呼ばれた武装した警備員がやって来て両腕をつかみ、組み伏せた。その際に負傷して血を流しているが、その治療をした後に留置されている。今年も話題になった出来事がある。アメリカではキャンセルを見込んで定員を上回るブッキングをしているが、往々にして定員オーバーになる。そうした場合、誰かを降ろさなければならないのだが、4月には69歳になるベトナム系アメリカ人医師がユナイテッド航空の客室から引きずり下ろされている。本人は用事があるので降りたくないと抗議、抵抗したことから流血の事態になった。その直後、やはりユナイテッド航空の旅客機でトラブルが発生している。コスタリカで結婚式を挙げるために搭乗したカップルが、大きなトラブルにはならなかったものの、降ろされているいずれも乱暴な規制緩和、価格競争が招いた事態である。ここで問題になっている出来事は目立つことなので発覚したが、人々の目に触れない場所ではさらにコスト削減が進んでいるだろう。例えば整備費。
2017.06.29
アメリカのニュース専門テレビ局、CNNでプロデューサを務めているジョン・ボニフィールドは同局のロシア話について、CNNのジェフ・ザッカーCEOの視聴率を高めたいという意向に基づくと語った。会話を隠し撮りした映像がインターネット上に流れているのだが、これを撮影したのはジェームズ・オキーフが組織したプロジェクト・ベリタスの潜入ジャーナリストだ。ボニフィールドに言われるまでもなく、CNNを含む西側有力メディアのロシアやウラジミル・プーチンを悪魔化して描く「報道」に根拠がないことは明確で、ユーゴスラビア、アフガニスタン、イラク、リビア、シリア、ウクライナなどを侵略する前に展開された「報道」の嘘も次々に暴かれてきた。例えばシリアの場合、西側の政府や有力メディアの宣伝とは違って市民の蜂起などはなく、したがって政府による弾圧もなかった。西側の宣伝では2011年3月にそうした蜂起があり、多くの市民が殺されたことになっているのだが、2010年からシリアで活動を続けているベルギーの修道院のダニエル・マエ神父もそうした蜂起はなかったと語っている。実は、そうした情報は戦乱が始まった当時から流れていた。当時、リビアも似たような状況になり、2011年10月にはNATO軍がアル・カイダ系武装集団LIFGと連携してムアンマル・アル・カダフィの体制を倒し、カダフィを惨殺するが、その後に戦闘員、武器、兵器がトルコ経由でシリアへ運ばれている。その後、シリアでの戦闘が激しくなったことは言うまでもない。西側の有力メディアがシリア政府軍の残虐な攻撃を伝えるために使っていた情報源がシリア系イギリス人のダニー・デイエムやSOHR(シリア人権監視所)。デイエムの場合、現地からの報告だということで、その話に飛びついた人は少なくなかったようだ。シリア政府の弾圧を訴え、外国勢力の介入を求める発言を続けていたのだ。シリアへの軍事介入を望む西側諸国、ペルシャ湾岸産油国、あるいはトルコの支配層にとって好都合な訴えで、西側メディアは盛んに彼の話を伝えていた。(例えば、ココ、あるいはココ)しかし、2012年3月1日にダニーや彼の仲間が「シリア軍の攻撃」を演出する様子が流出して彼の情報がインチキだということが判明するが、CNNを含む西側メディアは偽情報を大々的に「報道」しつづけている。そして2012年5月にホムスで住民が虐殺される。反政府勢力や西側の政府やメディアはシリア政府軍が実行したと宣伝、これを口実にしてNATOは軍事侵攻を企んだが、宣伝内容は事実と符合せず、すぐに嘘だとばれてしまう。その嘘を明らかにしたひとりが現地を調査した東方カトリックの修道院長だった。その修道院長の報告をローマ教皇庁の通信社が掲載したが、その中で反政府軍のサラフィ主義者や外国人傭兵が住民を殺したとしている。その修道院長は「もし、全ての人が真実を語るならば、シリアに平和をもたらすことができる。1年にわたる戦闘の後、西側メディアの押しつける偽情報が描く情景は地上の真実と全く違っている。」と語っている。また、現地で宗教活動を続けてきたキリスト教の聖職者、マザー・アグネス・マリアムも外国からの干渉が事態を悪化させていると批判していた。こうした状況の中、バラク・オバマ政権は「穏健派」を支援していると主張していたが、アメリカ軍の情報機関DIAはこれを否定する報告を2012年8月にホワイトハウスへ提出している。反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIであり、オバマ政権が主張するところの「穏健派」は事実上、存在しないというわけだ。また、オバマ政権が政策を変更しなかったならば、シリアの東部(ハサカやデリゾール)にはサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告、それは2014年にダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実のものになった。この報告書が書かれた当時のDIA局長がトランプ政権で安全保障担当補佐官に就任、1カ月足らずで辞任させられたマイケル・フリン中将だ。こうしたことに限らず、CNNを含む西側有力メディアはアメリカによる軍事侵略を正当化するための偽情報を流し続けてきた。ドナルド・トランプとロシアとの問題だけではないのだ。その背景にはCIAと有力メディアの緊密な関係がある。本ブログで説明してきたように、CIAの背景には金融資本が存在しているので、金融資本と有力メディアの関係と言うこともできる。CIAは第2次世界大戦が終わって間もない1948年頃、報道をコントロールするためのプロジェクトを始めている。いわゆるモッキンバードだが、その中心にはアレン・ダレス、フランク・ウィズナー、リチャード・ヘルムズというCIAの大物やワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムがいた。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979)ワシントン・ポスト紙の記者としてウォーターゲート事件を明らかにしたことで有名なカール・バーンスタインは1977年に同紙を辞め、その直後に「CIAとメディア」という記事をローリング・ストーン誌に書いている。それによると、400名以上のジャーナリストがCIAのために働き、1950年から66年にかけて、ニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供しているとCIAの高官は語ったという。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977)最近では、ドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙(FAZ)の元編集者、ウド・ウルフコテもメディアとCIAとの関係を告発している。彼によると、ジャーナリストとして過ごした25年の間に教わったことは、嘘をつき、裏切り、人びとに真実を知らせないことで、多くの国のジャーナリストがCIAに買収されているとしている。その結果、ヨーロッパの人びとはロシアとの戦争へと導かれ、引き返すことのできない地点にさしかかっているとしていた。そして2014年2月、この問題に関する本を出したという。CNNが偽報道をする理由として視聴率が挙げられているが、これはダメージ・コントロールの可能性もある。アメリカの有力メディアは支配層が情報をコントロールするための機関にすぎない。「言論の自由」や「社会の木鐸」を彼らに期待するのは無理なのだ。これだけ騙されているのに、まだ西側の有力メディアを信じている人がいるとするならば、よほど愚かなのか、騙されたがっているのか、騙された振りをしているのかだろう。
2017.06.28
ホワイトハウスの広報担当、シーン・スパイサーは6月26日、シリア政府が化学兵器を計画している可能性があるとしたうえで、もし攻撃したなら報復すると主張したが、それに対してウラジミル・プーチンの広報担当であるドミトリー・ペスコフはシリアの合法的な指導者に対するそうした脅しは受け入れられないと応じた。アメリカは4月6日夜にアメリカ軍は駆逐艦のポーターとロスから巡航ミサイルのトマホーク59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射、少なくとも数機は目標へ到達したと言われている。バシャール・アル・アサドはシリアの防空システムは半分以上が破壊されていると語っているので、ロシア軍によるジャミングでミサイルを落とした可能性がある。この攻撃はCIAの説明を無視して実行された。4月6日の早朝にマイク・ポンペオCIA長官はドナルド・トランプ大統領に対し、シリア政府側は化学兵器を使用していないと説明している。それにもかかわらず、アメリカ政府がバラク・オバマ政権の政策を変更、アサド大統領の排除を止めたと発表した直後の4月4日にシリア政府軍が化学兵器を使ったとしてアメリカ軍は攻撃したいうのだ。現地の様子から化学兵器が使われたとする話に疑問を持つ人は少なくなかった。理由のひとつは、現場にいる人物が防護服を着ていないこと。そもそもアメリカ側の主張には、いつものことだが、証拠が示されていない。巡航ミサイルによる攻撃の後、ロシアのウラジミル・プーチン大統領はイタリアのセルジョ・マッタレッラ大統領との共同記者会見で、4月4日の有毒ガス流出事件は偽旗作戦だと明言、さらなる化学兵器による攻撃が計画されていると語っているが、これは最悪の展開を避ける狙いがあったのだろう。本ブログでも紹介したが、ジャーナリストのロバート・パリーは攻撃の直後、4月6日の早朝にドナルド・トランプ大統領がマイク・ポンペオCIA長官から化学兵器の使用を否定する説明を受けていたとする内部からの情報を伝えている。そして、6月25日にはジャーナリストのシーモア・ハーシュが同じ内容の記事をドイツのメディアに書いている。ハーシュによると、4月4日に聖戦主義者の幹部が会議を開くという情報をつかんだロシアとシリアは攻撃計画を立て、その内容をアメリカ側へ伝えている。CIAにも直接、ロシアから攻撃に関する情報が伝えられていた。攻撃の前からアメリカ側はロシアから情報を知らされていたのだ。その情報が何者かによって現地のアル・カイダ系武装集団へ伝えられた可能性は高い。また、6月22日にはフランスのエマニュエル・マクロン大統領がシリア政府による化学兵器の使用は根拠がないと話している。マクロンはロスチャイルド資本の代理人であり、ヨーロッパの支配層がネオコンと距離を置き始めた可能性がある。4月4日の有毒ガス流出騒動は偽旗作戦だという情報が流れた直後、アメリカ政府はシリア政府を恫喝したわけだ。アメリカ支配層の悪事を暴こうとするとロシアと戦争を始めるぞと脅しているようにも聞こえる。ハーシュが明らかにしたアメリカの安全保障担当者の発言を借りると、トランプの周辺はロシア軍が張り子の虎でないことを理解していない。
2017.06.28
4月6日夜にアメリカ軍は駆逐艦のポーターとロスから巡航ミサイルのトマホーク59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射、ロシア政府によると目標に到達したのは23機で、36発は途中で消えたという。24機は目標を見失い、基地へ到達したのは数機だという話も伝わっている。攻撃はシリアのバシャール・アル・アサド政権が化学兵器を使ったことに対する報復だとされたが、現場にいる人物が防護服を着ていないことなどからサリンの使用に懐疑的な人が少なくなかった。ジャーナリストのロバート・パリーは攻撃の直後、4月6日の早朝にドナルド・トランプ大統領がマイク・ポンペオCIA長官から化学兵器の使用を否定する説明を受けていたとする情報を伝えている。6月25日にはジャーナリストのシーモア・ハーシュが書いた同じ内容の記事をドイツのメディアが掲載した。ハーシュによると、軍や情報機関の内部には証拠を無視するトランプ大統領を懸念する人もいるという。化学兵器が使われたと宣伝した人々の中には「白いヘルメット」も含まれていた。本ブログでは何度も指摘したように、この「人権団体」はアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)と行動を共にしている。(例えばココやココ)4月4日に聖戦主義者の幹部が会議を開くという情報をつかんだロシアとシリアは攻撃計画を立て、その内容をアメリカ側へ伝えている。CIAにも直接、ロシアから攻撃に関する情報が伝えられていた。Su-24戦闘機による通常兵器の空爆で4名程度の幹部を含む反政府軍の戦闘員が殺されたと推測されている。そして6日にトランプはフロリダで国家安全保障の担当者と会議を開いているが、そのときにはCIAからシリア軍による化学兵器の使用は否定されていたわけだ。しかし、例によって白ヘルと西側有力メディアのタッグチームが化学兵器話を宣伝、トランプ政権はどのように対応するかを検討した。ハーシュによると、オプションは4つ。まずひとつ目は何もしない。第2はロシアに警告した上で飛行場を爆撃、第3は2013年のバラク・オバマ政権が計画したような飛行場や司令部などに対するB1やB52を使った大規模な空爆、第4がダマスカスを攻撃してアサドを殺すというものだった。まず第1と第4のオプションは除外されたが、軍事力を誇示する必要があるとトランプは考える。そこで巡航ミサイルを使った攻撃を選んだのだろうが、アル・カイダ系武装集団やダーイッシュが偽旗作戦を繰り返せば攻撃をエスカレートする必要が生じ、最終的にはロシアとアメリカの軍事衝突になる。巡航ミサイルによる攻撃の後、ロシアのウラジミル・プーチン大統領はイタリアのセルジョ・マッタレッラ大統領との共同記者会見で、4月4日の有毒ガス流出事件は偽旗作戦だと明言、さらなる化学兵器による攻撃が計画されていると語っているが、これは最悪の展開を避ける狙いがあったのだろう。化学兵器による攻撃という話が嘘だというCIAの報告を無視してトランプ大統領が巡航ミサイルによる攻撃を承認したことは早い段階に指摘されていたが、その話をドイツのメディアが伝えたことは興味深い。6月22日にはフランスのエマニュエル・マクロン大統領がシリア政府による化学兵器の使用は根拠がないと話している。マクロンはロスチャイルド資本の代理人であり、ヨーロッパの支配層がネオコンと距離を置き始めた可能性がある。
2017.06.27
ワシントン・ポスト紙は「ロシア疑惑」のキーパーソンがジョン・ブレナン前CIA長官やジェームズ・クラッパー前国家情報長官だということを明らかにした。「我々を信じろ」が通じなくなったため、「お上を信じろ」へ切り替えたのだろうが、これは墓穴を掘る行為だ。2000年の大統領選挙からアメリカでは投票操作が問題になり、昨年の選挙では民主党の候補者選びでヒラリー・クリントンを勝たせるために不公正なことが行われていたことを示す電子メールが明るみに出ているが、こうした問題には触れず、証拠を示すことなくアメリカの有力メディアはウラジミル・プーチン露大統領が選挙に介入していると叫んできたが、それも限界に近い。そこで「お上」を持ち出したのだろうが、その「お上」が大嘘つき。その嘘つきが証拠もなしに主張していることを信じるほどワシントン・ポスト紙はお人好しなのだろうか?ちなみに、ウォーターゲート事件で活躍したカール・バーンスタイン記者は1977年にワシントン・ポスト紙を辞め、その直後に「CIAとメディア」という記事をローリング・ストーン誌に書いている。それによると、400名以上のジャーナリストがCIAのために働き、1950年から66年にかけて、ニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供しているとCIAの高官は語ったという。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977)第2次世界大戦後、アメリカでは報道をコントロールするプロジェクト、モッキンバードを始めているが、その中心メンバーはアレン・ダレス、フランク・ウィズナー、リチャード・ヘルムズというCIAの大物のほか、ワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムだ。ここにきて国際情勢はアメリカ支配層にとって好ましくない方向へ動いている。アメリカ、サウジアラビア、イスラエルは1970年代の終盤に始まったアフガニスタンでの秘密工作から同盟関係にあり、シリアやリビアへの侵略でも中心的な役割を果たしてきた。しかし、その侵略にはイギリス、フランス、トルコ、カタールなどもそれぞれの思惑から参加した。例えば、カタールとトルコは天然ガスのパイプライン建設が関係している可能性が高いといわれている。2009年3月にカタールの首長はシリアの大統領と会談、サウジアラビアとシリアを経由してトルコへ運ぶパイプラインを建設、そこからEU市場へという計画を示したのだが、シリア側はイランやロシアとの関係を考えて断っている。これがカタールがシリア侵略に加担した大きな要因だと見られているのだ。ところがシリアでの戦闘がアメリカなどの思惑通りには進まず、カタールはイランとパイプライン建設で協力する道を探り、合意に達したようだ。その代償としてカタールはシリアで戦うアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)への支援を止めると伝えられている。トルコもカタールに同調しているようだ。しかも、カタールは中国との取り引きで人民元が使われているともいう。ドル決済を止めることをアメリカは許さない。支配システムの根幹に関わるからだ。それだけでなく、ロスチャイルド資本の代理人であるフランスのエマニュエル・マクロン大統領がシリアの体制転覆プロジェクトから離脱する意思を示した。アメリカの政府や有力メディアが主張してきたシリア政府による化学兵器の使用も根拠がないとしている。これは事実なのだが、フランス大統領が事実を認めた意味は小さくない。アメリカ支配層は強引に中央突破しようと考えているようだが、失敗した場合は支配システムが一気に崩壊する可能性がある。
2017.06.25
シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すためにアメリカ、サウジアラビア、イスラエルを中心とする勢力が送り込んだ傭兵部隊の劣勢は隠しようがない状態だ。その傭兵部隊の中核はサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団で、アル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)というタグが付けられてきた。そうした傭兵部隊の司令部や兵器庫をロシア軍は6月23日に破壊した。地中海の東側にいるロシア海軍の2フリゲート艦と潜水艦から発射された6機の巡航ミサイル、カリバルが使われたという。このミサイルは高速で飛行、正確に命中することで知られている。ターゲットを破壊することだけでなく、アメリカ側への示威行動でもあっただろう。最近、アメリカ主導軍は5月18日、6月6日、そして6月8日にシリア南部のアル・タンフでシリア政府軍を攻撃、6月18日にはシリアの要衝、ラッカ近くでシリア政府軍のSu-22戦闘爆撃機をアメリカ主導軍のF/A-18E戦闘機が撃墜、19日には米軍のF-15戦闘機がシリア政府軍のドローンを撃ち落としている。タンフにはHIMARS(高機動ロケット砲システム)を持ち込んだ。シリアを属国化する当初の目論見はロシア軍の介入もあって破綻、傭兵部隊だけには頼れない状況。アメリカやイギリスは正規軍や特殊部隊がシリアの北部や南部に築いた基地を使り、クルド軍と利用してシリアを分割しようとしているようだ。ラッカで会議を開いていたダーイッシュの幹部たちをロシア軍は5月28日に空爆、出席していた約30名を殺害、ロシア国防省によると、その中にダーイッシュを率いているとされるアブ・バクル・アル・バグダディが含まれていた可能性が高い。傭兵部隊は黒幕国家のうちトルコやカタールが離脱、その配下の部隊も離脱している可能性があるが、バグダディが殺されたという情報は戦闘員に動揺をさせていると見られ、そうした戦闘員を落ち着かせるためにもアメリカは自分たちの「強さ」をアピールする必要があったのだろう。それに対し、Su-22が撃墜された後、ロシア側はロシアとアメリカが偶発的な軍事衝突を避けるために結んだ覚書を6月19日以降、無効にすると発表、ユーフラテス側の西側で発見された航空機や無人機はロシア軍の地対空ミサイル・システムがターゲットとして追いかけるとしている。S-300やS-400で狙うということだ。
2017.06.24
サウジアラビアではサルマン国王の親子へ権力が集中しつつある。その象徴的な出来事が皇太子の交代。国王は6月21日、甥のムハンマド・ビン・ナーイフを解任し、息子で副皇太子だったムハンマド・ビン・サルマンを皇太子へ昇格させたのだ。この新皇太子は国防大臣で、すでに軍事部門や情報部門へ大きな影響力を持っている。しかも、その兄弟も要職についている。今年4月にエネルギー担当大臣へ就任したアブドラジズ・ビン・サルマンや駐米大使になったハリド・ビン・サルマンだ。現在、アル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を動かしているのは新皇太子。イエメンへの軍事侵略やカタールに対する兵糧攻めを指揮しているとも言われている。ネオコンの影響を強く受けているようで、経済的にはサウジアラビアを巨大ファンドにしようと目論んでいるとも言われている。国王親子への権力集中は親子の孤立と裏腹の関係にある。サラ・ビント・タラル・ビン・アブドラジズが2012年にイギリスへ亡命しているが、昨年12月には数十名の王子や王女が国外へ脱出、カタールに対する兵糧攻めに反対した人々は逮捕されたともいう。1970年代からサウジアラビア国内は不安定化していたが、ここにきて原油相場の下落で財政赤字が深刻化、カネの力で押さえていた体制批判の声が高まる可能性がある。資金力が低下してサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を傭兵として雇いきれなくなると、CIAの訓練を受けた人々が国内へ戻り、反乱の原因になる事態もありえる。皇太子の交代は支配層の内部での反発を強めただろうが、そうした中、イスラエル軍が18機の戦闘機を含む航空機をサウジアラビアへ派遣したとイランのメディアが伝えている。塗装でアラブ諸国の航空機を装ったイスラエルの戦闘機がイエメンで攻撃に参加したとも言われているので、荒唐無稽とは言い切れない。もし、この報道が事実なら、サウジアラビア国内が混乱へ向かう可能性がある。
2017.06.23
NATOのF-16戦闘機がロシアの国防相が乗った航空機に近づいて威嚇、その戦闘機をロシア軍のSu-27が追い払うという出来事が6月21日にあった。国防相は会議に出席するため、カリーニングラードに向かっていた。カリーニングラードへは19日にアメリカの電子戦用航空機RC-135が接近、Su-27が緊急発進している。
2017.06.22
6月11日と18日に行われたフランスの議会選挙でエマニュエル・マクロン大統領の与党、共和国前進が577議席のうち308議席を獲得した。投票率は第1回目が48.7%、第2回目が42.64%。フランスにしては低い数字だが、圧勝は圧勝。さすが、ロスチャイルド資本を後ろ盾とする政党である。この政党をメディアは「中道」に分類した。前にも書いたが、マクロンは2006年から09年まで社会党に所属、その間、08年にロスチャイルド系の巨大投資銀行へ入り、重役として200万ユーロという報酬を得ていたといわれている人物。ロスチャイルド資本の代理人にほかならない。その後、マクロンは2012年から14年にかけてフランソワ・オランド政権の大統領府副事務総長を務め、14年に経済産業デジタル大臣に就任すると巨大資本のカネ儲けを支援する新自由主義的な政策を推進した。私的権力が公的権力を支配するシステムを実現しようとしている、つまりファシストだ。このマクロンは「イスラエル・ファースト」でも知られ、イスラエルに対するBDS(ボイコット、資本の引き揚げ、制裁)運動に強く反対している。この点、イギリス労働党のジェレミー・コルビンとは全く違う。マクロンはイスラエルを後ろ盾にしていたトニー・ブレアに近いと言えるだろう。イスラエルはブレアを動かしていただけではない。アメリカにおけるイスラエル・ロビーの影響力は有名だ。昨年の大統領選で民主党の候補者だったヒラリー・クリントンは戦争ビジネスや巨大金融資本を後ろ盾にし、「イスラエル第1」を公然と主張、ロシアとの戦争に突き進む姿勢を示していた。クリントンのライバルだったドナルド・トランプが多額の寄付を受け取っていたシェルドン・アデルソンはカジノの経営者で、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と親しい関係にある。歴史を振り返ると、ハリー・トルーマン米大統領やリンドン・ジョンソン大統領のスポンサーだった富豪、エイブ・フェインバーグはイスラエルの政治家ダビド・ベングリオンの信頼厚い人物で、フランスのエドムンド・ド・ロスチャイルドと同じように、イスラエルの核兵器開発を支援していた。イスラエル・ロビーの影響力は一部の大統領だけに及んでいるわけでなく、今では議会の大半がその影響下にある。有力メディアも同じだ。そうしたメディアのひとつ、CBSの番組、レイト・ショーに映画監督のオリバー・ストーンが先日、出演した。ロシアのウラジミル・プーチンをインタビューしたドキュメントの紹介が目的だったのだろうが、ホストのステファン・コルバートは作品とは直接関係のない「ロシアの選挙への介入」を質問、ストーンはイスラエルの選挙介入を問題にしないのはなぜかと応じたのだが、このストーンの発言は削除されて放送された。選挙に興味があるならば、イスラエルの話も聞くべきだ。勿論、このロシア・スキャンダルはアメリカの巨大メディアた創り出した話で、根拠、証拠は全く示されていない。選挙を問題にしたいなら、焦点を当てる場所は別にある。何年も前からアメリカでは支配層が投票結果を操作している疑いが指摘され、昨年の選挙では民主党の候補者選びに疑惑が持ち上がっていた。途中から人気が出てきたバーニー・サンダースを潰し、予定通り、クリントンにしようとする工作があったのではないかと疑われているのだ。ロシア・スキャンダルはそうした疑惑を封印するためにも使われている。外部へ漏れた電子メールによって、民主党の幹部たちは2015年5月26日の時点でクリントンを候補者にすると決めていた可能性があることが露見、16年7月22日にWikiLeaksが公表したDNC(民主党全国委員会)の電子メールには民主党の幹部へサンダースが同党の大統領候補になることを妨害するよう求めるものも含まれていた。(例えばココ)その電子メールをWikiLeaksが公表する12日前、つまり7月10日にDNCでコンピュータを担当していたスタッフのセス・リッチが背中を2度撃たれて殺された。発見されたときには息があり、病院で死亡したという。警察は強盗にあったと発表したが、リッチのガールフレンドによると、顔、手、膝に擦り傷があって争った形跡はあるのだが、金目のものは盗まれていない。警察の発表に納得できなかったリッチの両親は元殺人課刑事の私立探偵リッチ・ウィーラーを雇って調査を始める。調査の結果、DNC幹部の間で2015年1月から16年5月までの期間に遣り取りされた4万4053通の電子メールと1万7761通の添付ファイルをWikiLeaksへ渡したのはセス・リッチだということが判明したという。ウィーラー自身、その話を確認していたが、その後、セス・リッチの遺族からウィーラーや話を伝えたFOXニュースへ抗議があり、ウォーラーは発言を撤回した。アメリカ支配層が外国の選挙に介入していることも有名だ。第2次世界大戦後、最初の介入はイタリアの総選挙で、工作資金はナチスが略奪したナチ・ゴールドが使われたと言われている。こうした介入だけでなく、アメリカの巨大資本にとって目障りな政権は暗殺、クーデター、軍事侵略も使われている。そうした工作でメディアや労働組合は重要な役割を果たしてきた。
2017.06.22
アメリカのレックス・ティラーソン国務長官はロシアとの関係を修復するために動いているようだが、少なくともアメリカ軍はロシアとの関係修復が不可能な状況を作りたがっている。アメリカ軍はロシアとの戦争を勃発させかねない非常に危険の状況を作ろうとしていると言えるだろう。アメリカ主導軍は5月18日、6月6日、そして6月8日にシリア南部のアル・タンフでシリア政府軍を攻撃、アメリカ軍はそこへHIMARS(高機動ロケット砲システム)を持ち込み、シリア政府軍を攻撃する能力を高めている。そして19日には米軍のF-15戦闘機がシリア政府軍のドローンを撃墜した。アル・タンフはバグダッドとダマスカスを結ぶ幹線の通過地点で、シリアとイラクの連携を嫌うアメリカとしては重要な場所だ。6月18日にはシリアの要衝、ラッカ近くでシリア政府軍のSu-22戦闘爆撃機がアメリカ主導軍のF/A-18E戦闘機に撃墜されている。撃墜されたシリア軍機のパイロットは救出されたようだ。アメリカ側はそのシリア軍機が自分たちの配下にある部隊を攻撃したとしているが、確かにダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)にしろアル・カイダ系武装集団にしろ、彼らの手先に過ぎない。しかし、ここにきて伝えられている情報によると、シリア軍機は離陸から15分後に撃ち落とされているので、まだ攻撃する前だった。つまり、アメリカ側の弁明を全面否定している。Su-22が撃墜された後、ロシア政府はロシアとアメリカが偶発的な軍事衝突を避けるために結んだ覚書を6月19日以降、無効にすると発表、ユーフラテス側の西側で発見された航空機や無人機はロシア軍の地対空ミサイル・システムがターゲットとして追いかけるとしている。ラッカにしろアル・タンフにしろシリア領であり、そこに存在しているアメリカ主導軍は侵略部隊。その侵略部隊がシリア政府軍を攻撃することは侵略行為以外の何ものでもないわけで、ロシアの対応は穏やかなものだ。それで甘く見たのか、アメリカ軍はドローンを撃墜した。日本人はそうした危険な国と「同盟」を結んでいることを知る必要がある。
2017.06.21
ロシア政府はアメリカ主導軍によるシリア政府軍機の撃墜を受け、ロシアとアメリカが偶発的な軍事衝突を避けるために結んだ覚書を6月19日以降、無効にすると発表した。ロシアの説明によると、シリア軍機はダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)の部隊を攻撃していたのだが、アメリカ側の攻撃は事前の警告もなく行われた。ダーイッシュはラッカからデリゾールへ向かおうとしていた可能性がある2015年9月30日にロシア軍がシリア政府の要請で軍事介入、アル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュに対する空爆を始めた翌月、10月20日に署名されているのだが、今年4月7日にアメリカ軍がシリアの軍事施設を巡航ミサイル(トマホーク)59発で攻撃した直後、ロシア政府はこの覚書の無効を宣言している。この時はアメリカ側の要請で覚書を復活させたが、今回の決定が翻る可能性は小さい。サラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を主力とする武装勢力への支援に反対していたマイケル・フリンはドナルド・トランプ政権で国家安全保障補佐官に就任したが、有力メディアの反フリン・キャンペーンもあって2月13日に辞任、その後任になったH. R. マクマスターはデビッド・ペトレイアスの子分として知られるネオコンで、ユーフラテス川の周辺へ数万人とも15万人とも言われる規模の軍隊を送り込むというプランを持っていた。シリアの北部を奪い取り、クルドの国という形で支配しようと考えたのだろう。アメリカはフィリピンを不安定化させて政権を揺さぶるため、アメリカの海兵隊や特殊部隊が派遣しているミンダナオ島でダーイッシュ系の武装集団が活動することを許してきた。その島のマラウィ市をマウテ・グループやアブ・サヤフ、つまりダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)とつながる武装集団が5月23日に制圧、ロドリゴ・ドゥテルテ政権は同島に戒厳令を敷く。その日、ドゥテルテはモスクワでウラジミル・プーチン露大統領と両国の関係を強めるための話し合いをしていた。制圧した勢力は当初の推計より多い500名ほどで、チェチェン、サウジアラビア、イエメンなど外国人戦闘員も少なくないとも伝えられている。マラウィ市が制圧された直後にアメリカの特殊部隊が派遣されたが、ドゥテルテ政権の要請ではないという。傭兵部隊を暴れさせ、それを口実に軍隊を入れて占領するというアメリカの常套手段のようにも見える。中東と東南アジア、アジア大陸の西と東でアメリカは力業を使おうとしているようだ。
2017.06.20
シリアの要衝、ラッカ近くでダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を攻撃していたシリア政府軍のSu-22戦闘機をアメリカ主導軍のF/A-18E戦闘機が撃墜した。これはシリア軍とアメリカ軍、双方から発表されている。アメリカやイギリスはヨルダンに拠点を築き、シリア政府の承認をえないまま特殊部隊をシリア南部、バグダッドとダマスカスを結ぶ幹線が通るアル・タンフへ侵入させ、拠点を構えた。そこで「新ダーイッシュ」を訓練、デリゾールへ送り込もうとしている。シリアとイラクとを結ぶ幹線を復活させることはダーイッシュやアル・カイダ系武装勢力と戦う上で重要。そこでその道を国境へ向かっていたシリア政府軍をアメリカ主導軍は5月18日、6月6日、そして6月8日に攻撃している。シリアとイラクとの間にもアメリカの傀儡勢力が支配する地域を作りたのだろう。アメリカ軍はそこへHIMARS(高機動ロケット砲システム)を持ち込み、シリア政府軍を攻撃する能力を高めている。現在、サラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を主力とするダーイッシュやアル・カイダ系武装勢力は兵力をデリゾールに集結させている。イラクのモスルやラッカから移動しているのだが、アメリカ主導軍はデリゾールへ向かう部隊を攻撃していない。ラッカで会議を開いていたダーイッシュの幹部たちをロシア軍は5月28日に空爆、出席していた約30名を殺害、その中にダーイッシュを率いているとされるアブ・バクル・アル・バグダディが含まれていた可能性があるとロシア国防省は発表している。バグダディは現場の責任者にすぎないものの、ダーイッシュやアル・カイダ系武装勢力の間に動揺が広がったとも伝えられている。そうした動揺を抑えるためにもアメリカ軍の強さを誇示する必要があったのかもしれない。アメリカ軍の情報機関DIAの局長だった当時からサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を主力とする武装勢力への支援に反対していたマイケル・フリンはドナルド・トランプ政権で国家安全保障補佐官に就任したが、2月13日に辞任させられ、その後のトランプ政権はバラク・オバマやヒラリー・クリントンと同じような政策を推進しはじめている。2015年9月30日にロシア軍が空爆を始めてからそうした武装勢力は支配地域を縮小させられ、体勢を立て直さざるをえなくなった。その一環として今年3月、アメリカ軍はヘリコプターを使い、イラクのモスルやシリアのデリゾールからダーイッシュの指揮官たちを救出、その後にダーイッシュはラッカに集結していた。アメリカ軍がクルド軍とラッカへ到着すると、ダーイッシュはシリア政府軍が制圧しているデリゾールへ向かい始めたわけで、これはアメリカ側の作戦だと考えるべきだろう。ダーイッシュにしろ、アル・カイダ系武装勢力にしろ、その実態はアメリカ、サウジアラビア、イスラエルを中心とする勢力の傭兵にすぎないことは公然の秘密。シリアの場合、この三国同盟にアメリカ、フランス、トルコ、カタールなどが加わっていたが、ここにきてカタールやトルコが離れた。この2カ国が離脱したことからムスリム同胞団も侵略作戦から離れ始めている可能性がある。本ブログでは何度か書いていることだが、アメリカにはシリア、トルコ、イラン、イラクを含む地域にクルドの国(クルディスタン)を作るというプランがある。シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒して傀儡国家を作るという当初の計画が破綻した今、そのプランに切り替えている可能性が高い。イラクのクルドは以前からイスラエルの傀儡として有名で、クルディスタン全体をアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの属国にしたいのだろう。サウジアラビアはヨルダンやアラブ首長国連邦と一緒に、独立を支援する代償としてクルディスタンに自分たちの軍事基地を作らせるようKRG(クルディスタン地域政府)に求めている。イラン、イラク、シリアを分断し、いつでも侵略できる態勢を整えたいというネオコン臭の強いことを考えているように見える。追加イランの革命防衛隊は同国内での破壊活動への報復だとして、デリゾールに集結しているダーイッシュをミサイルで攻撃したと伝えられている。アメリカがクルディスタンの建国へ動いたとするならば、イランも侵略されることになるので、そうしたことも影響しているかもしれない。
2017.06.19
シリア政府の要請でロシア軍が2015年9月30日に空爆を始めて以来、中東や北アフリカで猛威を振るっていたアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)の支配地は急速に縮小、戦闘員の移動が伝えられているが、その一方でアジア大陸の東岸地域での活動が目立つようになった。今年2月下旬から約1カ月にわたってサウジアラビアのサルマン・ビン・アブドゥルアジズ・アル・サウド国王は1000名以上の人間を引き連れてマレーシア、インドネシア、ブルネイ、日本、中国、モルディブを歴訪、その時から東/東南アジアの中東化を懸念する声が出ていたが、それが現実になった形だ。そうした動きを象徴するような出来事が5月23日にあった。フィリピンのミンダナオ島にあるマラウィ市でマウテ・グループやアブ・サヤフ、つまりダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)とつながる武装集団が制圧し、ロドリゴ・ドゥテルテ政権は同島に戒厳令を敷いたのだ。その日、ドゥテルテはモスクワでウラジミル・プーチン露大統領と両国の関係を強めるための話し合いをしている最中だった。インドネシアでは普通のイスラム教徒をワッハーブ派へ改宗させる工作が数十年にわたって続けられ、2016年1月14日には首都のジャカルタで何回かの爆破と銃撃戦があり、攻撃グループの5名を含む7名が死亡している。その実行グループもダーイッシュを名乗っていた。アル・カイダ系武装勢力にしろダーイッシュにしろ、主力はサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団だが、チェチェンや中国の新疆ウイグル自治区を含む地域からも戦闘員は入っていた。インドネシアからは約700名がシリアへ渡り、ダーイッシュに加わったと言われている。そうした人々が帰国している可能性はある。1965年9月30日にインドネシアでは小規模な若手将校グループが武装蜂起してジャカルタの主要箇所を占拠、その反乱を利用してスハルト将軍を中心とする軍の一部がアーメド・スカルノ政権を倒している。その前からCIAはスカルノ政権を倒す目的で秘密工作を開始、フィリピン、台湾、シンガポール、そして沖縄に訓練や兵站の拠点にしている。1958年にはCIAの爆撃機やアメリカ海軍の潜水艦の支援を受けてクーデターを試みたが失敗したが、65年には成功したわけだ。クーデター後、9月から10月までの間に30万人から100万人が殺害されたと推測されている。1965年のクーデターでは、イスラム勢力やインドネシアからの留学生を手先として利用された。留学生は貴族階級の若者たちで、カリフォルニア大学バークレー校、マサチューセッツ工科大学、ハーバード大学、コーネル大学などが含を含む大学へ送り込まれ、後にバークレー・ボーイズとかバークレー・マフィアと呼ばれているようになる。(スーザン・ジョージ著、小南祐一郎、谷口真里子訳『なぜ世界の半分が飢えるのか』朝日選書、1984年)その後、インドネシアでサウジアラビアは普通のイスラム教徒をワッハーブ派へ改宗させる工作を数十年にわたって続けてきたが、フィリピンの南部での武装闘争を支援している。マレーシアのナジブ・ラザク首相は2013年に再選される直前、タックスヘイブンの英領バージン諸島からスイスの銀行のシンガポール支店へというルートでサウジアラビア王室から6億8100万ドルを受け取ったことが判明している。ちなみに、MH370が行方不明になったのはラザク首相が再選された直後だ。
2017.06.18
アル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)の移動が目につく。アメリカの特殊部隊がクルド軍とラッカへ入ったと伝えられているが、そのアメリカ軍とクルド軍を中心とする攻撃では化学兵器と見なされている白リン弾が使われ、ラッカの少なからぬ市民が殺されたと国連が非難している。ラッカで殺された市民は300名以上だというが、そこにいたダーイッシュの戦闘員はアメリカ主導軍から攻撃を受けることなくデリゾールへ向かったと伝えられている。デリゾールはシリア政府軍が押さえているものの、飛び地のような状態。そこを制圧するのがダーイッシュの役割なのだろう。去年の10月、モスルからダーイッシュが追い出される際もアメリカやサウジアラビアはムジャヒディンを攻撃していない。シリアのデリゾールやパルミラへ9000人程度の戦闘員を安全に移動させることで両国はダーイッシュと合意していたという。こうしたアメリカ主導軍の姿勢にイラク政府軍側は不満を抱いたようだ。ラッカの場合、シリア政府軍が到達するのは時間の問題。そこでアメリカ軍が占領したと見られている。当然、アメリカ軍は居座るつもりだろう。シリアの北部をクルドに制圧させ、それをイラク北部に作られているクルドの支配地と合体させてクルドの独立国を作り、それを操ろうと考えている可能性が高い。イラク北部を支配しているKRG(クルディスタン地域政府)はイラクからの独立を目指し、住民投票を実施する意向を示しているが、そうした動きに合わせ、サウジアラビアはヨルダンやアラブ首長国連邦と一緒に、独立を支援する代償としてクルディスタンに自分たちの軍事基地を作らせるように求めている。クルドの国を自分たちの傀儡国家にしようというのだろう。アメリカ主導軍が攻撃しないダーイッシュの戦闘員をロシア軍は空爆してきた。先月28日にも空爆しているが、その際にダーイッシュを率いているとされるアブ・バクル・アル・バグダディが約30名の幹部と殺害された可能性があるとロシア国防省は発表している。バグダディは現場の責任者にすぎないが、それだけダーイッシュが追い詰められているとは言えそうだ。6月に入り、アメリカ軍はダーイッシュの戦闘員50名以上をアフガニスタンの東部へ運んだという情報が流れる中、アメリカ軍は約4000名の兵士をアフガニスタンへ増派するという。アメリカ離れが進むアフガニスタンを押さえ込むつもりかもしれないが、その前には泥沼が広がっている。東京琉球館で本日(6月17日)18時から東京琉球館で現在のアメリカを創り出したCOGプロジェクトについて話します。予約制とのことですので、興味のある方はあらかじめ下記まで連絡してください。東京琉球館住所:東京都豊島区駒込2-17-8電話:03-5974-1333http://dotouch.cocolog-nifty.com/
2017.06.17
安倍晋三政権は6月15日に参院本会議で共謀罪(テロ等準備罪)を強行採決、自民・公明・日本維新の会など賛成多数で可決、成立した。与党は委員会の採決というプロセスを省略するために中間報告という手法を使っている。共謀罪を正当化するため、安倍首相たちは東京オリンピックにおける「国際テロ対策」で治安立法が必要になったと主張していた。東京オリンピックは「国際テロ」を日本へ招き入れると認めているわけだが、そのオリンピックを招致するために安倍首相は大嘘をついている。2013年9月8日にアルゼンチンで開かれた国際オリンピック委員会の総会で、安倍首相は東電福島第1原発の過酷事故にともなう汚染水について、状況はコントロールされていると発言、東京で開催しても問題ないと宣言している。2015年3月28日にイギリスのタイムズ紙は福島第1原発を廃炉するまでに200年は必要だと推定していたが、遅くともこの段階で安倍首相の発言が嘘だと同紙は認識していたことになる。しかし、事故が起こってから溶融した燃料棒を含むデブリがどこにあるか特定できていないわけで、2013年9月の段階で安倍首相の安全宣言が嘘だと認識していた国際オリンピック委員会の委員は少なくなかっただろう。原発事故について興味があり、思考力があればそういう認識になるはずだ。日本政府は2051年、つまり34年後までに廃炉させるとしているが、これは非常識なおとぎ話にすぎない。タイムズ紙の推定は楽観的で、廃炉まで数百年はかかると言われている。勿論、コントロールなどできていない。その間に新たな大地震、台風などによって原発が破壊されてより深刻な事態になることも考えられる。その間、放射性物質による太平洋の汚染を止めることは困難だ。盗聴法、秘密保護法、安保関連法、共謀罪が成立、緊急事態条項が視野に入っている。その一方で監視システムも導入も進み、個人情報を集約するために住民基本台帳ネットワークも作られた。街に出ればCCTVが人びとを監視、ICカードの普及は個人情報の一括管理を可能にする。IC乗車券(PASMOやSUICAなど)やGPS(全地球測位システム)つき携帯電話は個人の行動を追跡する道具としての側面があり、自動車に乗ればNシステム(車両認識システム)に見張られる。スマートTV、スマートメーター、パソコンは室内の監視に使われ、フリーハンドで通話できるシステムが導入された自動車内は盗聴される可能性がある。情報機関がスマートフォン、パソコン、あるいはWi-Fiルーターに侵入して情報を入手しているいることも判明している。通話の傍受は有名だが、全ての電子メールも米英の情報機関は記録している。少なくとも米英の情報機関は不特定多数のターゲットを追いかけ、分析するシステムを1970年代から開発、遅くとも90年代には学歴、銀行口座の内容、ATMの利用記録、投薬記録、運転免許証のデータ、航空券の購入記録、住宅ローンの支払い内容、電子メールに関する記録、インターネットでアクセスしたサイトに関する記録、クレジット・カードのデータなどあらゆる個人データを収集、分析することが可能だった。さらに、スーパー・コンピュータを使って膨大な量のデータを分析、「潜在的テロリスト」を見つけ出そうとする取り組みもなされている。どのような傾向の本を購入し、借りているのか、どのようなタイプの音楽を聞くのか、どのような絵画を好むのか、どのようなドラマを見るのか、あるいは交友関係はどうなっているのかなどを調べ、分析し、国民ひとりひとりの思想、性格、趣味などを推測しようというのだ。第2次世界大戦後、アメリカの情報機関や治安機関、つまりCIA、NSA、FBIなどが監視してきたターゲットは平和を愛し、戦争に反対する人びと。ソ連との平和共存を訴えたジョン・F・ケネディ大統領は暗殺され、ベトナム戦争に反対したマーチン・ルーサー・キング牧師も暗殺され、ケネディ大統領の弟でキング牧師と親しかったロバート・ケネディ上院議員も殺され、デタント(緊張緩和)政策を打ち出したリチャード・ニクソン大統領はスキャンダルで失脚した。そして今、ロシアとの関係修復を訴えるドナルド・トランプが有力メディアの総攻撃を受けている。見事な偶然!盗聴法にしろ、秘密保護法にしろ、安保関連法にしろ、共謀罪にしろ、緊急事態条項にしろ、目的は平和を愛し、戦争に反対する人びとの弾圧だろう。歴史はそう語っている。日米支配層にとっての犯罪者、テロリストとはそういう人びとのことである。つまり、戦争を愛し、平和に反対する人びとは心配する必要がない。
2017.06.16
ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)とつながる武装集団との戦闘に協力すると称し、アメリカ軍の特殊部隊がフィリピンではロドリゴ・ドゥテルテ政権に無断で活動、クーデターを目論んでいるのではないかと推測する人がいる。ベニグノ・アキノ3世前大統領はアメリカ支配層の覚えがめでたい人物だった。フィリピン、ベトナム、韓国、インド、オーストラリア、そして日本を結びつけ、中国やロシアに対抗する「東アジア版NATO」を築くというアメリカの戦略に従い、中国との関係を悪化させていたのだ。前大統領の父親は1983年8月にマニラ国際空港で殺されたベニグノ・アキノ・ジュニア、母親は86年2月から92年6月まで大統領を務めたコラソン・アキノである。アキノ3世がフィリピンの大統領に就任した3カ月後、2010年9月に海上保安庁は日中漁業協定を無視する形で尖閣諸島の付近で操業していた中国の漁船を取り締まり、田中角栄と周恩来が修復した日本と中国との関係を悪化させている。こうした動きとアキノ3世の政策は連動していうるように見える。アメリカから台湾経由でフィリピンへ戻ったアキノ・ジュニアは空港で殺されたが、その後にフィリピンは不安定化、1986年2月にはアメリカ軍に国外へ連れ出された。この拉致作戦の黒幕はネオコンの大物、ポール・ウォルフォウィッツだと言われている。マルコスに替わって大統領となったのはアキノ・ジュニアの妻、コラソン・アキノだ。アメリカ支配層と強く結びついているアキノ家はアメリカ巨大資本が望む政策を推進、一般民衆の不満は膨らんでいく。フィリピン国軍にはアメリカの特殊部隊から指導を受けているSOT(特殊作戦チーム)と呼ばれる部隊があり、心理作戦部隊、直接軍事作戦部隊、そしてCAFGU(市民武装地域部隊)の3部門で編成されている。マルコス政権時代に暗殺や拷問を担当していたCHDF(民間郷土防衛隊)を新政権が改組して作られた部隊がCAFGU。ロドリゴ・ドゥテルテ政権になってもフィリピン軍とアメリカ軍との結びつきに変化はなく、フィリピン軍がクーデターに動いても不思議ではない。
2017.06.15
サウジアラビアは軍事的な圧力で自分たちの欲望を実現させようとしている。その中心にいる人物が国王の息子で副皇太子のモハンマド・ビン・サルマン国防大臣だ。経済面では新自由主義に毒され、コンサルタント会社だというマッキンゼーの提案に基づいて「ビジョン2030」を作成した。それによると、私有化や弱者切り捨てを促進、また石油産業への依存を弱め、国をヘッジファンド化しようとしている。そうした政策はことごとく失敗、ロシアを弱体化させるはずだった石油相場の急落はサウジアラビアの財政を赤字に転落させ、巨大建設企業へ代金、あるいは兵士や労働者への賃金の支払いが滞っているという話も伝わっている。サウジアラビアの兵士はインド、パキスタン、スリランカの出身者が多く、労働者の大半も出稼ぎだ。本ブログでは何度も書いてきたが、サウジアラビアはイスラエルやアメリカと同盟関係にあり、イギリス、フランス、トルコ、カタールなどを巻き込んで軍事侵略を繰り返してきた。その手先として利用されてきたのがサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心に編成された傭兵集団。その傭兵の登録リストがアル・カイダである。現在、アメリカはシリアからイラクにかけての地域にクルド系の国を作ろうとしていると見られている。その下地を作ったのがダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)。イラク系のクルドはサダム・フセイン体制の時代からイスラエルの支援を受けていたが、その関係は今も続いている。その地域を支配しているKRG(クルディスタン地域政府)はイラクからの独立を目指し、住民投票を実施する意向を示している。アメリカにはシリア、トルコ、イラク、イランをまたがる地域にクルド系の国を作るという計画があり、その第一歩ということかもしれない。そうした動きに合わせ、サウジアラビアはヨルダンやアラブ首長国連邦と一緒に、独立を支援する代償としてクルディスタンに自分たちの軍事基地を作らせるように求めている。かつてアメリカは「スペインからの独立」を口実にしてラテン・アメリカを侵略していったが、似たことを目論んでいる可能性がある。クルディスタンをサウジアラビアとイスラエルの傀儡国にするつもりではないかということだ。1980年代、アメリカ支配層の内部でネオコンと非ネオコンがイラクの扱いをめぐって対立していた。非ネオコンはイラクをペルシャ湾岸産油国の防波堤と位置づけていたのに対し、ネオコンはイラクからサダム・フセインを排除し、ヨルダン、イラク、トルコの親イスラエル国帯を作ってシリアとイランを分断し、弱体化させようと考えていたのだ。1991年にポール・ウォルフォウィッツがイラク、イラン、シリアを殲滅すると口にしたのは、そうした戦略に基づいている。イラクを親イスラエルの傀儡国家にすることは失敗、シリアの体制転覆も難しい状況になっている中、アメリカ、サウジアラビア、イスラエルの三国同盟どはダーイッシュから引き継いだ地域にクルディスタンを作り、それを傀儡国家にしようとしても不思議ではない。しかし、三国同盟のクルドに対する肩入れはトルコの反発を招いた。すでにクーデター騒動からトルコのアメリカ離れは進んでいるが、NATOとの関係も悪化、ドイツ軍はトルコにあるインシルリク基地からヨルダンの基地へ移動しつつある。三国同盟はイランの体制転覆を目指しているが、その戦略に消極的なカタールをサウジアラビアは兵糧攻めで脅し、イスラエルからも支持されている。カタールやトルコと緊密な関係にあるムスリム同胞団はサウジアラビアの国教、ワッハーブ派から強い影響を受けている。ムスリム同胞団は1954年にエジプトのガマール・アブデル・ナセルを暗殺しようとして失敗、非合法化されたムスリム同胞団のメンバーの多くがサウジアラビアへ逃げ込み、ワッハーブ派の強い影響を受けたのだ。そこでサラフィ主義者とムスリム同胞団は連携してきたのだが、サルマンの政策によって亀裂が入ったようだ。カタールへの恫喝計画を命じたモハンマド・ビン・サルマンは24時間でカタールは屈すると予想していたようだが、そうした兆候は見られない。兵糧攻めを受け、カタールはイランやロシアへ接近、カタールに重要な軍事基地を持つアメリカとしては好ましくない展開だ。カタールと関係の深いトルコは軍隊を派遣、サウジアラビアからの軍事侵攻にも備えているそのカタールに対する計画を無謀たこ考えた人がサウジアラビア支配層の内部にもいたようだが、サルマンに反対した要人は収監されたとも伝えられている。サルマンに処刑されることを恐れた少なからぬ王子や王女が国外へ脱出したとも昨年末には報道されていた。そうしたサウジアラビアが戦乱を広げようとしている場所が東南アジア。インドネシアでは普通のイスラム教徒をワッハーブ派へ改宗させる工作が数十年にわたって続けられてきたほか、フィリピンの南部での攻勢を強め、マレーシアでは政府を買収、タイでも活動が激しくなっている。三国同盟は同じ間違いを繰り返そうとしているようだが、そうなると東南アジアも殺戮と破壊の場所になってしまう。安倍晋三政権が本当にテロに反対しているのなら、アメリカ、サウジアラビア、そしてイスラエルに立ち向かわなければならない
2017.06.14
シリア政府軍がイラクとの国境に近づき、イラクから3万〜5万名のバドル旅団がシリアへ入ったようだ。バドル旅団はイランの革命防衛隊の訓練を受けている。それに対し、アメリカやイギリスはヨルダンに拠点を築き、シリア政府の承認をえないまま特殊部隊をシリア南部、バグダッドとダマスカスを結ぶ幹線が通るアル・タンフへ侵入させている。そこで反シリア政府軍を訓練しているのだが、そこへ近づいているとしてアメリカ主導軍の航空機が5月18日、そして6月6日にシリア政府側の部隊を空爆した。5月18日には政府軍のT-62戦車2輌を破壊、6名の兵士を殺害、何人かを負傷させている。それに対し、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相はシリア政府軍に対する攻撃は受け入れられないとレックス・ティラーソン国務長官へ電話で伝えたという。言葉だけでアメリカ政府が言うことを聞くとは思えないが、ともかく懸念は伝えた。アメリカ軍の存在によって拘束されているイラク政府だが、すでにアメリカ離れは始まっている。イラクでは2014年4月に選挙が予定されていたが、その前月、マリキは反政府勢力へサウジアラビアやカタールが資金を出していると非難、その一方でロシアへの接近を図っていた。選挙ではそのマリキを支える「法治国家連合」が第1勢力になり、全328議席のうち92議席を獲得している。本来ならマリキが首相を続けるはずだったのだが、議会の第1勢力から首相を指名することをフアード・マアスーム大統領は拒否した。アメリカの圧力があったと見られている。そうした最中、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)が売り出される。まず2014年1月にファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはモスルを制圧したが、その際にトヨタ製の真新しい小型トラックのハイラックスを連ねてパレード、その後継を撮影した写真が世界規模で流れて広く知られるようになったのだ。アメリカ軍はスパイ衛星、偵察機、通信傍受、人からの情報などでダーイッシュの動きを把握していたはずだが、反応していない。パレードしている車列などは格好の攻撃目標のはずなのだが、アメリカ軍は何もしていない。ファルージャやモスルが制圧された2カ月後に解任されたマイケル・フリンDIA局長の下、DIAは2012年8月にDIA(国防情報局)が作成した報告書で反シリア政府軍の主力はサラフ主義者(ワッハーブ派)、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQI(イラクのアル・カイダ)であり、アル・ヌスラはAQIの別名だと指摘している。バラク・オバマ政権が主張するような穏健派は存在しないということだ。その報告書では、東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告されているのだが、それは2014年にダーイッシュという形で現実になった。そこでオバマ政権の内部でフリンは他のメンバーと対立、解任されたと言われている。現在、アメリカはシリア、イラク、トルコ、イランの一部を含む地域にクルドの国を作り、シリアとイランを分断しようとしているが、イラクがアメリカから離れることに成功すれば、クルドの国を作っても意味はなくなる。ただトルコとの関係を悪化させ、NATOを揺るがすだけだ。
2017.06.13
ミンダナオ島のマラウィ市にアメリカの特殊部隊が派遣されたと伝えられている。ここは5月23日にマウテ・グループやアブ・サヤフ、つまりダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)とつながる武装集団が制圧し、ロドリゴ・ドゥテルテ政権は同島に戒厳令を敷いて制圧に乗り出した場所。フィリピン政府から要請に基づいてその作戦にアドバイするとアメリカ大使館は説明しているのだが、ドゥテルテ大統領はアメリカ側に支援を頼んでいないとしている。ダーイッシュの背後にアメリカ、イギリス、フランス、トルコ、サウジアラビア、カタール、イスラエルといった国々が存在していることはフィリピン政府は承知しているはず。ここにきてトルコやカタールが離脱しているが、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの枢軸に変化はない。リビアやシリアで何が起こっているかを見れば、ダーイッシュを口実にしてアメリカ軍が侵略していることを知る人は少なくない。もしドゥテルテが本当にアメリカ側へ助けを求めたのだとするならば、フィリピン政府はアメリカに降伏したことを意味するが、そうしたことはないだろう。今回、ダーイッシュがマラウィ市を攻撃したのはドゥテルテ大統領がロシアのウラジミル・プーチン大統領と会談していたとき。その会談では、経済の結びつきを強めるだけでなく軍事的なつながりを強化し、訓練の実施、情報の共有などでも合意していた。すでに中国との関係を修復、ロシアとの関係を強めようとしていた最中のダーイッシュによる攻撃だ。中国やロシアとの関係を強めるドゥテルテ政権を脅し、フィリピンを不安定化させ、アメリカがヘゲモニーを再び握ろうとしているのだろう。
2017.06.12
アメリカの特殊部隊がクルド軍とラッカへ入ったという。2016年9月、バラク・オバマ政権は特殊部隊をシリア北部にある7つの基地へ派遣したと伝えられたが、その延長線上にある作戦だろう。今年に入って第11海兵遠征部隊がシリアで戦闘態勢を整えたと報道されたが、これについてロン・ポール元下院議員(1997年〜2013年)は、ラッカをシリア政府軍より先にアメリカ軍が制圧することが目的だと推測していたが、その通りの展開になった。ラッカにダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を終結させていたのはアメリカ軍だった可能性が高い。今年3月、アメリカ軍はヘリコプターを使い、イラクのモスルやシリアのデリゾールからダーイッシュの指揮官たちを救出、その後にダーイッシュはラッカに集結していたのだ。アメリカ軍部隊が到着する前にシリア政府軍が制圧しないようにすることが目的だったとも考えられる。アメリカ軍とクルド軍はラッカの制圧作戦を進める際、ラッカからデリゾールへ向かうダーイッシュの戦闘員を攻撃していない。つまり、アメリカ側はダーイッシュを新たな任務のために送り出したということだ。その一方、アメリカ軍とイギリス軍はシリア南部へ侵攻、そうした動きに対応して出てきたシリア政府軍をアメリカ主導軍の戦闘機が爆撃している。5月18日にアメリカ主導軍の航空機がヨルダン領内からシリア領空へ侵入、シリア南部のアル・タンフ近くで政府軍を攻撃、T-62戦車2輌を破壊、6名の兵士を殺害、何人かを負傷させたが、6月6日にも同じようにシリア政府側の部隊を空爆している。アル・タンフにある基地ではアメリカとイギリスの特殊部隊が反シリア政府軍を訓練、その部隊もデリゾール攻撃に使う計画だと見られている。アメリカは昨年9月17日にもシリア政府軍を空爆している。デリゾールでシリア政府軍をアメリカ主導の連合軍がF-16戦闘機2機とA-10対地攻撃機2機で攻撃、80名以上の政府軍兵士を殺害したのだ。空爆の7分後にダーイッシュの部隊が地上でシリア政府軍に対する攻撃を開始していることから、両者は連携していると見られている。28日には2つの橋を、30日にも別の橋2つをそれぞれ爆撃して破壊した。アメリカ軍の偵察衛星のつかんだ情報が反政府軍へ渡されていた可能性が高いとする分析もある。シリアのバシャール・アル・アサド政権を武力で倒すことが難しくなり、シリアとイランを分断していた「サラフィ主義者の支配国」が崩壊、それに替わってクルドが支配する「クルディスタン」を作り上げることにしたように見える。その副作用がトルコの離反。サウジアラビアはトルコとの関係が強いカタールを属国化しようとしたが、目論見通りには進んでいないようだ。こうした対立は手先として戦ってきたサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心に編成された戦闘集団を分裂させることになり、アメリカは戦闘集団の再編成を強いられている。戦闘の長期化は中東を制圧するプランを変更させたが、それだけでなくサウジアラビアの財政赤字を深刻化させた。サウジアラビアはアメリカにとって石油取引のパートナーであると同時に、ドルを循環させる重要なポンプでもある。サウジアラビアを切り捨てるわけにはいかないだろう。これまでアメリカを支配してきたネオコンは「脅せば屈する」というチンピラ的な手段を使ってきた。狂犬、凶人戦略だが、今、アメリカの前にはそうした脅しでは屈しないロシアや中国がいる。ネオコンに担がれたヒラリー・クリントンは民主党の大統領候補選びで不適切な手段を使ってバーニー・サンダースを退けたが、共和党のドナルド・トランプに負けてしまった。が、トランプはネオコンの逆襲で厳しい状況に陥っている。狂犬、凶人戦略に執着するネオコンはNATOの部隊をロシアとの国境に近づけてミサイルを配備、東アジアでは韓国にTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムを配備、日本では地上配備型イージスシステムのイージス・アショアを導入するようだ。韓国政府は抵抗しているようだが、屈するまで朝鮮はミサイルを発射し続けるかもしれない。サウジアラビア国王が東アジアを歴訪した後、フィリピン、インドネシア、タイ、マレーシアでダーイッシュの活動が激しくなったが、これは東アジアを中東のようにするというアメリカやサウジアラビアの意思の表れかもしれない。核戦争で脅せばロシアも中国も屈するとネオコンやその追随者は信じているのか、今でもアメリカは圧勝できると思い込んでいるのかはわからないが、危険な状態になっていることは間違いない。
2017.06.10
アメリカの上院情報特別委員会の公聴会にジェームズ・コミー前FBI長官が登場した。6月8日のことだ。ドナルド・トランプが国家安全保障補佐官だったマイケル・フリンへの捜査を中止するように指示したというストーリーを期待していた人は少なくないだろうが、そうなったとは言い難い。コミーによると、フリンはロシア側との電話会談で何か悪いことをしたわけでなく、副大統領を騙したたことにあるとしたうえで、トランプは彼にこの件をやり過ごして欲しいと語ったという。この発言がFBIが影響を与えていないようで、司法手続きも始まっていない。コミー本人はまだFBI長官だった5月3日、上院司法委員会で宣誓の上で証言しているが、その際、捜査を打ち切るように圧力を受けた経験はないと述べている。その発言から5日後に彼は解任され、アンドリュー・マッカビ副長官が長官代理になった。解任されたときにコミーは寝耳に水で驚いたようで、解任を予想させるような出来事は事前になかったということだろう。6月8日の証言で興味深いのはむしろ、ヒラリー・クリントンの電子メールに関するロレッタ・リンチの電子メールに関する発言に関するもの。リンチはバラク・オバマ政権で司法長官を務めた人物で、コミーによると、彼女はヒラリーの電子メールに関するスキャンダルを小さく扱うように頼んだという。この問題に近づきすぎると辞任しなければならなくなると確信したとも語っている。ヒラリーの電子メールの問題ではリンチとビル・クリントンが空港で会っていたことが発覚して批判されたが、コミーもこの会談を知って不安になったようだ。コミーの証言が正しいなら、彼はトランプよりリンチから圧力を感じていたことになるが、メモを作成したのはトランプのケースだけだという。アメリカでは今回のコミー証言について、トランプへの援護射撃だと言う人もいる。そう解釈されても仕方のない証言だったとは言える。相変わらずロシア話は話にならないのだが、その話を有力メディアが宣伝し始める切っ掛けはヒラリー・クリントンの電子メールが外部へ漏れ、民主党の大統領候補選びで不正があることが発覚したこと。民主党幹部たちが2015年5月26日の時点でヒラリー・クリントンを候補者にすると決めていたことを示唆している電子メールの存在している。その年の6月11日から14日かけてオーストリアで開かれたビルダーバーグ・グループの会合にヒラリーの旧友であるジム・メッシナが参加していたことから欧米支配層はバラク・オバマの次はヒラリーを大統領すると決めたと推測されていたが、その推測が正しかったことを裏付けるものだと解釈された。しかし、血まみれのヒラリーを脅かす人物が登場してきた。バーニー・サンダースだ。WikiLeaksが公表したメールの中には、サンダースが候補者に選ばれることを妨害するよう求める電子メールも存在する。昨年7月10日に民主党全国委員会(DNC)でコンピュータを担当していたスタッフのセス・リッチが背中を2度撃たれて殺された時、WikiLeaksに電子メールを渡したのはこのリッチではないかと推測する人がいた。警察は強盗で処理したが、リッチのガールフレンドによると、顔、手、膝に擦り傷があって争った形跡はあるのものの、金目のものは盗まれていない。警察の発表に納得できなかったリッチの両親は元殺人課刑事の私立探偵リッチ・ウィーラーを雇って調査を始めたのだが、その探偵はセスがWikiLeaksと連絡を取り合っていたことを確認、しかも警察の内部で捜査打ち切りが指示されていたと語っている。事件の翌月、WikiLeaksのジュリアン・アッサンジはリッチについてDNCの電子メールを提供した人物だと示唆、射殺事件に関する情報提供者に2万ドルを提供するとツイッターに書き込んでいる。ヒラリー・クリントンは機密情報の取り扱いに関する法規に違反した可能性があり、またそうした情報をきわめて軽率に扱っていたことを認めたとFBIのジェームズ・コミー長官は認め、その上で彼女を不起訴にしている。リッチが殺される5日前のことだ。ヒラリーの件にメスを入れると、リビアやシリアへの軍事侵攻、あるいはホンジュラスのクーデターに関連した情報が噴出してくる可能性がある。ここにきてサウジアラビアがカタールを兵糧攻めにしているが、この両国はともにダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)やほかのスンニ系過激派(アル・カイダ系武装集団)を資金や物資の秘密援助をしていることをヒラリーが2014年8月の時点で知っていたことを示すメールもある。本当のスキャンダルだが、アメリカでは司法省もFBIも有力メディアも、そして「リベラル派」も見て見ぬ振りだ。
2017.06.09
東京琉球館で6月17日18時から東京琉球館で現在のアメリカを創り出したCOGプロジェクトについて話します。予約制とのことですので、興味のある方はあらかじめ下記まで連絡してください。東京琉球館住所:東京都豊島区駒込2-17-8電話:03-5974-1333http://dotouch.cocolog-nifty.com/前回、COGについて話す予定でしたが、ドナルド・トランプ政権の内部で大きな変動があり、シリアに対するミサイルによる攻撃も行われたこともあり、このテーマについてほとんで触れられませんでした。今回はまずこの問題を話し、時間があれば最近の国際情勢について触れたいと思います。COGとは「Continuity of government(政府の継続)」の略称で、憲法の機能を停止させる一種の戒厳令計画です。このプロジェクトは秘密にされていましたが、1980年代からメディアが取り上げ、1987年7月には「イラン・コントラ事件」の公聴会においてジャック・ブルックス下院議員がプロジェクトに参加していたオリバー・ノース中佐に質問しました。その光景は映像に残っています。この質問は委員長のダニエル・イノウエ上院議員が「高度の秘密性」を理由にして質問を遮ってしまい、内容に立ち入ることはできませんでしたが、その後の調査で徐々に明らかにされてきました。アメリカはこのプロジェクトで緊急事態条項を導入しています。
2017.06.08
サウジアラビアが6月5日、突如としてカタールとの外交関係を断絶すると発表、バーレーン、エジプト、アラブ首長国連邦も同調した。このうちエジプトを除く周辺の4カ国はカタールとの陸、海、空の移動も禁止している。それに対し、食糧や水を確保するためにカタールはイランやトルコと交渉に入ったが、そのトルコはカタールに対する今回の決定を厳しく批判した。2011年春にアメリカ、イギリス、フランス、トルコ、サウジアラビア、カタール、イスラエルなどが始めたリビアやシリアへの侵略では、手先の傭兵としてサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団が主に使われている。これはアメリカ軍の情報機関DIAも2012年8月の報告書で認めている事実だ。つまり、アル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を編成、支援しているのはこうした国々だということ。ムスリム同胞団は緩やかな集合体でさまざまな人びとが参加しているが、侵略戦争に参加している人びとの多くはサラフィ主義の影響を強く受けている。1954年にエジプトのガマール・アブデル・ナセルを暗殺しようとして失敗、非合法化されたムスリム同胞団の少なからぬメンバーがサウジアラビアへ逃げ込み、そこでサウジアラビアの国教であるワッハーブ派の影響を強く受けたのだ。しかし、ムスリム同胞団はサウジアラビアよりカタールやトルコの現体制との関係の方が強いようだ。そのため、カタールとトルコは軍事的なつながりも強化、基地も建設している。サウジアラビアを意識してのことだったようだ。地理的な状況からカタールがイランに接近することも必然。トルコもロシアやイランに近づいていたことを考えると、カタール、トルコ、イランの結びつきは強化され、そこへロシアが関係してきても不思議ではない。カタールからシリア経由でトルコへ石油を運ぶパイプライン建設をシリアが拒否したことからカタールはシリア侵略作戦に参加したという見方もある。そうした見方をしているひとりが1968年6月6日に暗殺されたロバート・ケネディ(RFK)の息子だ。カタールはシリアのバシャール・アル・アサド体制を倒して傀儡政権を樹立、パイプラインを建設しようとしたのかもしれないが、アサド体制はリビアと違って倒れない。2015年9月30日にロシア軍がシリア政府の要請で軍事介入してからは政府軍が優勢で、アサド体制の打倒は難しくなってしまった。カタールがサウジアラビアから離れようとしても不思議ではない。サウジアラビアはカタールを締め上げて属国にしようとしたのだろうが、簡単に屈しそうにはない。サウジアラビアの副皇太子で国防相でもあるモハンマド・ビン・サルマンたちは24時間でカタールは屈服すると見通していたとする話が流れているが、この見通しは狂った。ちなみに、サウジアラビアで最も強くアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)のような傭兵集団と結びついていると言われているのはこのモハンマド・ビン・サルマンだ。このサルマンに今回の決定をさせたのはドナルド・トランプ米大統領のサウジアラビア訪問だったと見る人もいる。そこでアメリカからの支援を取り付けたと考え、カタールを脅しにかかったのだが、見通しを誤った可能性がある。そうした中、7日の早朝にサウジアラビアのアベル・アル・ジュベイル外相がイランは罰せられなければならないと発言、その数時間後にイラン議会などで襲撃事件が引き起こされている。
2017.06.08
2011年春に開始されたシリアに対する侵略戦争は大きな節目を迎えている。当初から侵略の最前線にはサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心に編成された戦闘集団がいて、その背後にはアメリカ、イギリス、フランス、トルコといったNATO加盟国、サウジアラビアやカタールのようなペルシャ湾岸産油国、そしてイスラエルなどが存在していたのだが、この構図が崩れつつあるのだ。以前から「新たなダーイッシュ」が編成されていると言われていたが、ここにきて侵略の拠点はトルコからヨルダンへ移動、アメリカはクルド勢力への支援を強化している。ここにきて注目されているのはシリア北東部にあるデリゾールの攻防戦。現在はシリア政府軍が押さえているが、ここにきてダーイッシュが攻勢に出ている。一時期、アメリカをはじめとする侵略勢力の支援を受けたアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)が支配していたが、2015年9月30日にシリア政府の要請でロシア軍が空爆を始めてから戦況が一変、デリゾールも政府軍が奪還していた。政府軍がデリゾールに迫っていた2016年9月17日、アメリカ主導軍のF-16戦闘機2機とA-10対地攻撃機2機が政府軍の部隊を攻撃して80名以上の兵士を殺している。そのときに政府軍はダーイッシュを攻撃していた。空爆から7分後にダーイッシュの部隊がシリア政府軍に対する攻撃を開始、空と陸で連携していた可能性が高い。そのことから、ロシア政府の広報担当官、マリア・ザハロワは「どのように考えても、私たちは恐ろしい結論に到達してしまう。つまり、ホワイトハウスはダーイッシュを守っているのだ。疑いようがない。」と語っている。その可能性は高いだろう。今年1月にダーイッシュがデリゾールを攻撃した際、アメリカ軍は偵察衛星からの情報を反政府軍へ渡している可能性が高いとシリア政府側は分析していた。そのため、政府軍の位置を正確に把握した上で攻撃していたという。ダーイッシュ側の置かれた状況が厳しくなった今年3月、イランのメディアによると、アメリカ軍はヘリコプターを使い、イラクのモスルやシリアのデリゾールからダーイッシュの指揮官たちを救出している。その後、ダーイッシュはラッカに集結していたようだが、そこはアメリカ軍やクルド勢力が押さえたようだ。バラク・オバマ政権は特殊部隊をシリア北部にある7つの基地へ派遣したと2016年9月に伝えられた。そのうちマブロウカには少なくとも45名、アイン・イッサには100名以上、コバネには300名以上、タル・アブヤダには少なくとも200名だとされているが、勿論、シリア政府軍の承認は受けていない。今年に入って第11海兵遠征部隊がシリアで戦闘態勢を整えたと報道されたが、これについてロン・ポール元下院議員(1997年〜2013年)はラッカをシリア政府軍より先にアメリカ軍が制圧することが目的だと推測、軍事的エスカレーションだと批判していた。アレッポのマンビジにはアメリカ陸軍の第75歩兵連隊の車列が入ったとも伝えられていた。以前からアメリカ軍は要衝を制圧する際、そこにいたアル・カイダ系武装集団やダーイッシュの戦闘員を安全に脱出させ、次の制圧予定地へ送り出していたが、ラッカの場合もアメリカ軍とクルド勢力はラッカからデリゾールへ向かうダーイッシュの戦闘員を攻撃していない。ダーイッシュはデリゾールを「首都」にするつもりなのだという。シリア軍は南部からイラクとの国境周辺を北上、またシリアとイラクを結ぶ幹線道路を制圧しようとしているが、アメリカ側はそれを嫌い、6月6日には同国が主導する連合軍の航空機がシリア政府側の部隊を空爆している。すでにアメリカ主導軍はヨルダンからシリアの南部へ侵攻しつつあり、5月18日にはその軍用機がヨルダン領内からシリア領空へ侵入、シリア南部のアル・タンフ近くで政府軍を攻撃、T-62戦車2輌を破壊、6名の兵士を殺害、何人かを負傷させていた。アル・タンフにある基地でアメリカとイギリスの特殊部隊は反シリア政府軍を訓練、その部隊もデリゾール攻撃に使う計画だと見られている。勿論、この反政府軍の戦闘員も主力はサラフィ主義者のはずだ。そうした戦闘員しかいないことは2012年8月の段階で、アメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)がホワイトハウスに報告している。アル・カイダ系武装集団やダーイッシュなどの戦闘員をサウジアラビアやカタールなどが雇ってきたことはアメリカの政府高官や軍人も認めてきたこと。例えば2014年9月、空軍のトーマス・マッキナニー中将はアメリカがダーイッシュを作る手助けしたとテレビで発言、マーティン・デンプシー統合参謀本部議長(当時)はアラブの主要同盟国がダーイッシュに資金を提供していると議会で発言、同年10月にはジョー・バイデン米副大統領がハーバーバード大学で中東におけるアメリカの主要な同盟国がダーイッシュの背後にいると語り、2015年にはウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官もアメリカの友好国と同盟国がダーイッシュを作り上げたと述べている。そして2015年8月、マイケル・フリン元DIA局長はアル・ジャジーラの番組へ出演した際、自分たちの任務は提出される情報の正確さをできるだけ高めることにあり、情報に基づく政策の決定はバラク・オバマ大統領が行うと指摘している。つまり、オバマ政権の決定がダーイッシュの勢力を拡大させたというわけだ。一連の発言では重要な国が抜け落ちているが、嘘は言っていない。サウジアラビアの王室が「テロ対策」を口にするのはお笑い種であり、その事実から目を背ける有力メディアは醜悪だ。ちなみに、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュは2007年3月5日付けニューヨーカー誌で、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアがシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラに対する秘密工作を開始した書いている。
2017.06.07
2016年に行われたアメリカの大統領選でロシア軍の情報機関GRUはハッキングを試みたとするNSAの秘密文書に関する記事をインターセプトが掲載した。記事を読んだ限りでは具体的な証拠が提示されているわけでなく、その信憑性は不明だ。この記事を掲載したインターセプトはグレン・グリーンワルド、ベッツィー・リード、ジェレミー・スケイヒルが2014年2月にスタートさせたメディア。アメリカの情報機関による国民監視システムの現状を明らかにする資料を外部へ持ち出したエドワード・スノーデンからその資料を前年6月に受け取ったのがグリーンワルドで、その資料がインターセプトの重要な資産であることは間違いない。資産ということは、公表された資料が全体の数パーセントにすぎないことを意味している。インターセプトへNSAの資料を渡したと言われる人物は記事が掲載された数時間後、FBIによって逮捕されている。その人物の名前はリアリティー・ウィナー。できすぎだが、本名のようだ。インターセプトから5月30日に連絡を受け、問題の資料のコピーを渡されたアメリカの政府機関は資料をプリントした6名を特定、そのひとりであるウィナーがインターセプトへ電子メールを送っていることを確認したという。6名の使っているコンピュータを調べて判明したというが、全ての電子メールは記録されている。NSAならそうしたことをするまでもなく判明したはずだ。個人的な話で恐縮だが、今から20年ほど前、NSAの元分析官を取材した際、その人は決して電子メールや電話を使わなかった。ウィナーは素人のように思えるのだが、経歴をみるとそうでもない。高校を卒業した後に軍隊へ入り、2011年3月に空軍の基礎訓練を終了、13年1月に空軍へ入り、秘密情報利用許可を受けている。NSAの仕事をしているプルリバス・インターナショナルへ入社したのが2017年2月13日で、その翌日にデイビッド・パードゥー上院議員のオフィスを訪問している。もっとも、パードゥー議員を支持していたとは言えない。彼女が支援していたのはバーニー・サンダース上院議員で、ドナルド・トランプを嫌っていた。ロシアとの核戦争に向かって突進していたヒラリー・クリントンを支援している「リベラル派」とは違い、アメリカ社会について真剣に考えてはいたのだろう。しかし、CNNのアンカー、アンダーソン・クーパーのファンでもある。CNNを含むアメリカの有力メディアは嘘を誤魔化すために嘘を塗り重ねてきた。嘘がばれたらさらなる嘘を大声で叫ぶという繰り返しで、巨大資本や富豪たちの単なるプロパガンダ機関だということを最近は隠そうともしていない。それでも有力メディアを信奉している人は少なくないのだが、そうしたひとりがウィナーだ。機密情報を扱えるような人間には思えないのだが、秘密情報の利用許可を受けている。パシュトー語(アフガニスタンの公用語のひとつ)、ダーリ語(アフガニスタンで話されているペルシャ語)、ペルシャ語を話せるというが、それだけで許可がでるのだろうか?
2017.06.06
シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すという外国勢力の思惑は失敗に終わりそうだが、この国を侵略しようという目論見は何十年も前から続いている。ここで終わるということもないだろう。トルコからシリアへ伸びていた侵略勢力の兵站ライン、ヨルダンの拠点化、イラクからの侵入、地中海からの攻撃、そしてゴラン高原でも戦闘は行われてきた。ゴラン高原ではシリア軍との戦闘で負傷した傭兵たちをイスラエル軍が救出、治療してきたことも知られている。ゴラン高原はシリア領なのだが、西側3分の2はイスラエルが占領している。1967年6月5日から10日にかけて行われた第3次中東戦争から50年間、こうした状態が続いている。この侵略を「国際世論」、つまり西側の有力メディアは黙認してきた。戦争の最中、6月8日にアメリカ海軍の情報収集船リバティーがイスラエル軍の攻撃され、乗組員のうち34名が死亡、171名が負傷している。リバティーはアメリカの船であることを示す旗を掲げ、攻撃の前にイスラエル軍は少なくとも8回にわたって偵察飛行を実施していることからアメリカの船であることを知った上で攻撃したことは間違いないだろう。攻撃した目的は明確でないが、イスラエルのモシェ・ダヤン国防相はアメリカ政府の意向を無視してゴラン高原の占領を決めていることから、そうした動きを察知されたくなかったという見方は否定できない。戦争を始める数日前、イスラエルの外相はワシントンで攻撃計画を説明しているが、あくまでもエジプトが相手だとしていた。逆に、アメリカ軍はイスラエルのために情報収集する目的でリバティーを派遣したと推測する人もいる。ところが、その時に約1000名のパレスチナ人とエジプト兵をイスラエル軍は処刑しているので、戦争犯罪に問われることを嫌った可能性はある。実は、6月6日に統合参謀本部からジョン・シドニー・マケイン提督(ジョン・マケイン上院議員の父親)へリバティーをガザの海岸線から100マイル(約160キロメートル)以上離れるように緊急の指示が届いているのだが、これをマケインは艦船へ伝えなかった。6月7日になるとアメリカの情報機関はイスラエルが8日にリバティーを攻撃するつもりだと言うことを知る。その攻撃はモシェ・ダヤン国防相が独断で決めたとされている。この人物はゴラン高原の占領も決めていた。イスラエル軍はまず船の通信設備を破壊、さらにジャミングで交信を妨害している。戦闘機による攻撃ではロケット弾やナパーム弾が使われたが、ナパーム弾を使ったことから皆殺しにするつもりだったと見られている。それでもリバティーの通信兵は何とか攻撃されていることを第6艦隊へ伝えることに成功した。攻撃開始から15分足らずの時点で空母サラトガはすぐ離陸できる状態のA1スカイホーク4機を艦長は離陸させている。ところが、もう1隻の空母アメリカは戦闘機を発信させず、国防長官だったロバート・マクナマラは第6艦隊のローレンス・ガイズ少将に対し、ジョンソン大統領は一握りの水兵のためにアメリカの同盟国と戦争したり困らせたりしたくないと語ったことが明らかになった。第6艦隊の第60任務部隊が空母サラトガと空母アメリカに対して8機をリバティ救援のために派遣、攻撃者を破壊するか追い払うように命令したのは攻撃開始から1時間11分後。それから二十数分後にイスラエルは最後の攻撃をしている。この出来事の際の交信をNSAは傍受、記録していたはずだが、明らかにされることはなかった。交信を記録したテープは大量に廃棄したとされているが、複数の大統領へのブリーフィングを担当した経験を持つCIAの元分析官、レイ・マクガバンもこうした隠蔽工作があったとしている。
2017.06.05
イギリスの総選挙を5日後に控えた6月3日午後10時過ぎ、ロンドン橋で殺傷事件があった。乗せた白いバンが複数の通行人をはねた後、中から飛び出した3人がナイフで人びとを襲撃し、6人以上が死亡、30名医以上が負傷したと伝えられている。事件を起こした3名は射殺されたという。当局が実行犯のストーリーをすぐに語るかどうかは注目しておく必要がある。5月22日にはマンチェスターの競技場で開かれたコンサートで爆破事件があり、23名が死亡したとされている。実行犯だとされているサルマン・アベディは自爆、つまり死んでいるので証言を聞くことは不可能。そうしたこともあり、真相の究明にはほど遠い状況だ。いくつかの報道をつきあわせると、サルマン自身はイギリスで生まれたが、父親のラマダン・アベディはリビアの情報機関に所属していた。何らかの事情でラマダンはイギリスへ移住したが、2011年にラマダンはイギリスの情報機関MI6の命令でリビアへ戻り、モハンマド・アル・カダフィ暗殺計画に協力している。1994年にもラマダンはリビアへ渡り、1995年のLIFG(2011年にNATOと組んでカダフィ体制を倒したアル・カイダ系武装集団)の創設に関わった。LIFGは96年にカダフィ暗殺を試みて失敗している。アル・カイダ系武装集団が弾圧されていたイラクでサダム・フセイン体制がアメリカ主導軍に倒されるとラマダンはイラクでアル・カイダ系武装集団の編成に参加、2011年春にリビアに対する侵略戦争が始まると、それにも加わっている。2011年にリビアへの侵略を始めた国にはフランス、イギリス、アメリカ、サウジアラビア、カタールなどが含まれているが、本ブログでも書いたように、ここにきてサウジアラビアとカタールとの間で対立が生じている。必然的に、こうした国々の影響を受けている武装集団の間でも対立が生じているだろう。ラマダンは息子がマンチェスターの事件を起こしたのではないと主張しているようで、何者かがアベディ一家、そしてMI6を巻き込もうとした可能性も排除できない。今のところつながりは不明だが、6月8日に投票が予定されているイギリスの総選挙では保守党が圧勝すると伝えられていたが、ここにきて労働党を支持する人の率が高まり、両党は競っているとも推測されている。ジェレミー・コルビンが率いる現在の労働党はトニー・ブレア時代と違い、かつての労働党に近く、ウォール街やシティの支配者には嫌われている。フランスではロスチャイルド系投資銀行の重役だったエマニュエル・マクロンが大統領に選ばれたが、支配層に対する反発は強い。
2017.06.04
シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すため、いくつもの国が傭兵や自国の部隊を侵入させてきた。2007年3月5日付けニューヨーカー誌でシーモア・ハーシュが挙げたアメリカ、イスラエル、サウジアラビアが中心だが、そのほかイギリス、フランス、トルコ、カタールといった国々が参加している。目的はさまざまで同床異夢なため、シリア政府の要請でロシア軍が2015年9月30日から軍事介入して侵略計画に狂いが生じてから分裂が進み、ここにきてサウジアラビアとカタールとの対立が話題になっている。5月下旬にサウジアラビアのリアドでペルシャ湾岸産油国(サウジアラビア、バーレーン、カタール、クウェート、オマーン、アラブ首長国連邦)の首脳はアメリカのドナルド・トランプ大統領と会談したのだが、イランに対する攻撃的な姿勢を打ち出したサウジアラビアにカタールが異を唱える形で対立が表面化した。ハーシュの記事によると、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの3カ国が始めた秘密工作のターゲットはシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラで、計画の中心人物としてリチャード・チェイニー、エリオット・エイブラムズ、ザルメイ・ハリルザド、バンダル・ビン・スルタンの名前が挙げられている。サウジアラビアにとっても、シリアの次にイランを破壊するのは侵略戦争を始める前から既定の方針だ。シリアより1カ月早く、2011年2月からリビアに対する侵略戦争が開始され、ムアンマル・アル・カダフィ体制はその年の10月に崩壊、その時にカダフィは惨殺された。体制崩壊の直後、ベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられ、NATOとアル・カイダ系武装グループLIFGとの関係が印象づけられた。その映像はYouTubeにアップロードされ、イギリスのデイリー・メイル紙も伝えている。リビアで仕事を終えた傭兵たちは武器/兵器と一緒にトルコ経由でシリアへ運ばれるが、その拠点になったのはベンガジにあったCIAの施設。そうした武器/兵器の中には化学兵器も含まれていた。そうした工作をアメリカの国務省は黙認している。その時のCIA長官がデイビッド・ペトレイアスであり、国務長官はヒラリー・クリントンだ。リビア駐在のアメリカ大使だったクリストファー・スティーブンスは2012年9月11日にベンガジのアメリカ領事館が殺されているが、その前日に大使は武器輸送の責任者だったCIAの人間と会談、襲撃の当日には武器を輸送する海運会社の人間と会っていたという。バラク・オバマ政権は一貫して「穏健派」を支援しているだけだと主張していたが、アメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)は2012年8月に作成した報告書に、シリアにおける反乱の主力をサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてAQI(アル・カイダ系武装集団)だと書いている。「穏健派」などはいないということ。当然、今もいない。この報告書が作成された当時のDIA局長がマイケル・フリンであり、後にドナルド・トランプ政権の国家安全保障補佐官に選ばれた彼が有力メディアから攻撃され、辞任に追い込まれる一因になった。2012年から13年にかけて西側の政府や有力メディアは政府軍による虐殺、化学兵器の使用といった偽情報を発信するが、いずれも嘘が発覚してしまった。そして2014年に売り出されたのがダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)。1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはファルージャやモスルを制圧、その際にトヨタ製の真新しい小型トラック「ハイラックス」を連ねたパレードしているが、その様子を撮影した写真が伝えられて有名になったのだ。2012年8月の報告書には、オバマ政権の政策が続けられると東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があると指摘されていたが、それがダーイッシュという形で現実になったわけだ。そこでフリンとオバマ大統領の周辺は激しく対立したようで、2014年8月にフリンは解任された。LIFGやアル・ヌスラのようなアル・カイダ系武装集団にしろ、そこから派生したダーイッシュにしろ、侵略国の傭兵にすぎないが、その雇い主はサウジアラビアのほかにも存在する。トルコやカタール、おそらくイスラエル系も存在しているのだが、シリア情勢が侵略国の思惑とは違う展開にあってから分裂しはじめている。すでにトルコは離脱してロシアに接近、ここにきてカタールも離れ始めたわけだ。1968年6月6日に暗殺されたロバート・ケネディ(RFK)の息子、RFKジュニアは、カタールからシリア経由でトルコへ石油を運ぶパイプライン建設がアサド体制を倒す動きと関係していると指摘している。そのパイプラインの建設をシリアのアサド大統領が拒否したことからシリア攻撃に参加したということだが、アサド政権の打倒が難しくなった現在、戦争を続けることは得策でないとカタールは考えている可能性がある。サウジアラビア単独でイランとの戦争に勝てる可能性はほとんどなく、アメリカやイスラエルが軍事侵攻すればロシアと衝突する可能性が高い。中東全域が火の海になり、カタールも破滅だ。軍事的な緊張を高めることは危険だということである。
2017.06.03
アメリカは韓国にTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムを設置している。2基はスキャンダルで朴槿恵政権が機能不全の状態になっているどさくさ紛れに搬入したのだが、さらに新大統領の文在寅に通告しないで4基をさらに設置したいう。日本では地上配備型イージスシステム「イージス・アショア」を優先的に導入する方針だと伝えられている。使われている発射システムが巡航ミサイルのトマホークと同じで、中国の沿岸やロシアのサハリンが射程圏内に入る。THAADにしてもイージス・アショアにしてもアメリカの戦略に基づくもので、ターゲットは中国とロシアだ。朝鮮が相手だというのは戯言。当然、中国やロシアは対抗措置をとる。ロシアのウラジミル・プーチン大統領はその意思を明確に示した。日本はミサイル・システムを配備するだけではない。2015年に就航したヘリコプター護衛艦の「いずも」は艦首から艦尾まで平らな「全通甲板」を有し、垂直離着陸が可能なMV22オスプレイや戦闘機F35Bも離発着できると言われ、その外観は2014年にアメリカ海軍が就航させた強襲揚陸艦「アメリカ」を連想させる。「いずも」も強襲揚陸艦と考えるべきだろう。海上自衛隊はアメリカ軍の上陸作戦に組み込まれた可能性がある。アメリカ国防総省は朝鮮半島周辺へ3空母を終結させようとしている。つまりカール・ビンソンとロナルド・レーガンに加えてニミッツも西太平洋へ向かわせているようだ。そうした中国やロシアを挑発する行為に日本も参加している。日本が憲法第9条を無視している以上、中国やロシアも憲法第9条があるからといって特別扱いはしないだろう。戦争になっても相手は海岸線に並ぶ原発を攻撃しないお人好しだと期待することもできない。それだけでなく、「テロリスト」の動きも活発化している。そうしたテロリストの雇い主であるサウジアラビアのサルマン・ビン・アブドゥルアジズ・アル・サウド国王は今年2月下旬から約1カ月にわたりマレーシア、インドネシア、ブルネイ、日本、中国、モルディブを歴訪、中東のようになることを懸念する人もいた。そうした懸念の通り、5月23日にフィリピン南部、ミンダナオ島のマラウィ市がダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)に制圧された。ロドリゴ・ドゥテルテ大統領はミンダナオ島に戒厳令をしいているが、インドネシア、タイ、マレーシアでも活発に動き始め、ミャンマーへも侵入していると言われている。アメリカやサウジアラビアは東アジアを破壊と殺戮の舞台にしようと目論んでいる可能性があるのだが、それに安倍晋三政権も同調しているようだ。
2017.06.02
朝鮮の弾道ミサイル攻撃に備えると称し、アメリカ軍はTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムの機器を韓国へ持ち込みつつある。朝鮮のミサイル発射実験もアメリカにとってありがたいことだったはずだ。スキャンダルで朴槿恵政権が機能不全の状態になっているのを利用し、アメリカ軍はシステムを2基搬入したのだが、その後、新大統領の文在寅に知らせることなく、さらに4基を設置したことが判明した。新大統領の反対を予想し、勝手に持ち込んだということだ。そこで調査が開始されたようだ。アメリカの好戦派を引っ張ってきたネオコンは1991年12月にソ連が消滅した段階でアメリカが唯一の超大国になったと信じ、翌年の2月に国防総省内でDPGの草案という形で世界制覇のプランを作成した。ボリス・エリツィンを使ってロシアは属国化、中国はカネで懐柔済みで、自立した国は簡単に屈服させられると判断、また西ヨーロッパ、アジア全域、旧ソ連圏を潜在的なライバルだとみなし、ライバルとして成長しないように押さえ込むことにする。その段階で核兵器は使える兵器になったと考えるようになったとも言われている。21世紀に入ってロシアではウラジミル・プーチンがロシアを再独立させたが、国力の回復は先だと推測していたようで、例えば、CFR/外交問題評議会が発行しているフォーリン・アフェアーズ誌の2006年3/4月号に掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文では、アメリカ軍の先制第1撃でロシアと中国の長距離核兵器を破壊できるようになる日は近いと主張している。アメリカはロシアと中国との核戦争で一方的に勝てると見通しているのだ。そうした分析は間違っていることをロシア政府はさまざまな方法で示してきたが、ネオコンは後へ引けない状態。イスラエルと共にネオコンの同盟相手であるサウジアラビアはサラフィ主義者(ワッハーブ派、クフィール主義者)のスポンサー、つまりアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)の黒幕。そのサウジアラビアの国王が3月、約1カ月に渡ってマレーシア、インドネシア、ブルネイ、日本、中国などを歴訪、アジアの東岸に戦乱を広めるつもりではないかと懸念する人は少なくなかった。東南アジアではインドネシア、マレーシア、タイなどでサラフィ主義者が活発に動き始め、ミャンマーでアウン・サン・スー・チー派から弾圧されているロヒンギャと呼ばれるイスラム教徒の中へ潜り込み始めているようだが、5月23日にはフィリピン南部、ミンダナオ島のマラウィ市がダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)に制圧されたと伝えられている。安倍晋三政権の動きもこうした東アジア情勢と無関係ではないだろう。
2017.06.01
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