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インド、ブータン、中国が接しているドクラム高地は領有権をめぐる対立の地だ。ブータンはインドの影響下にあり、事実上、インドと中国とが争っている。そのドクラム高地へインド軍が6月上旬にインド領へ入り、中国の進めていた道路の建設工事を妨害したと中国側は説明していた。日本政府は今回、インド側についている。この出来事が原因で両国の軍隊は対峙、軍事的な緊張が高まっていたのだが、8月下旬に両国はそれぞれの部隊を速やかに撤退させることで合意、軍事的な緊張は緩和されたようだ。インドと中国はブラジル、ロシア、南アフリカとBRICSに参加、9月には第9回目の首脳会議が中国の厦門で開催される。このグループから何らかの働きかけがあったのかもしれない。インド軍が中国との軍事的緊張を高める動きを見せた直後、6月27日にインドのナレンドラ・モディ首相はワシントンでドナルド・トランプ大統領と会談、7月7日にはイスラエルでベンヤミン・ネタニヤフ首相と会っていた。ドクラム高地におけるインドの軍事行動はアメリカやイスラエルの意向が反映されていると見る人は少なくない。シリアでロシアに敗北した両国としては、別の場所で中露を揺さぶりたいはずだ。インドの行動を支持した日本政府は、言うまでもなく、アメリカ支配層の傀儡。安倍晋三首相は2016年11月、中国の一帯一路に対抗するため、モディ首相とAAGC(アジア・アフリカ成長回廊)を誕生させた。今年5月末にモディは一帯一路を拒否する意思を示しているが、これはBRICSからの離脱にもつながる発言だが、そうなるとインド国内で反発が出てくるだろう。それだけでなく、2016年11月に日本からインドへ核燃料のほか原子力発電に関する施設や技術を提供することで両国は合意、今年5月に衆議院はこれを承認している。原発だけではなく、核兵器の開発に関係している可能性もあるだろう。また、日本、インド、アメリカは今年、インド洋で合同艦隊演習を実施している。9月6日から7日にかけてロシア主催のEEF(東方経済フォーラム)がウラジオストックで開かれ、340億ドルを超す商取引が成立するとされている。このフォーラムには韓国の文在寅大統領も出席、6日にはウラジミル・プーチン露大統領と会談が予定されている。その準備のため、康京和外相が24日にモスクワでセルゲイ・ラブロフ露外相と会談した。康外相は7月上旬、ロシアとの戦略的な関係を深めたいと発言している。韓国は政権に関係なく中国やロシアとの関係改善に動いている。朴槿恵前大統領の父親、朴正熙は暗殺される直前、ソ連に接近していた。昨年1月にはロシアが発注した砕氷能力のある天然ガス輸送船を韓国が建造、この夏、その船が北極海を航行しているのは象徴的な出来事だ。現在、東アジアはロシアや中国を中心に動き始めている。それに抵抗しているのが日本や朝鮮だと言えるだろう。インドの場合、アメリカやイスラエルから何らかの影響を受けたようで、中国との関係を悪化させる動きを見せたが、早くも軌道修正した可能性がある。
2017.08.31
8月23日にロシアのソチでウラジミル・プーチン露大統領と会談した際、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はシリアでイランの影響力が拡大していくなら、バシャール・アル・アサド大統領の官邸を爆破、大統領本人を殺害すると警告していたという。イランやヒズボラがシリアに恒久的な基地を建設するなら軍事侵攻の可能性もあると前の国家安全保障会議議長が7月17日に語っているが、ネタニヤフは今回、アサド殺害を鮮明に示したということだ。それに対し、プーチンはイランが中東における戦略的な同盟国だと言い、イスラエルはロシアにとって重要なパートナーだと表現したということになる。前にも指摘したように、プーチン大統領は友好的でない重要な関係国をパートナーと呼ぶ。前にも書いたように、ロシアは特殊部隊をシリア領内で活動させ、防空システムのS-300、S-400、パーンツィリ-S1を配備しているが、シリアとロシアはさらに一歩進めて統合防空システムを作り上げられたようだ。またヒズボラが使っている対戦車兵器のRPG-29、AT-14コルネット、メティスMでイスラエルの最新戦車、メルカバ4は破壊されている。また、状況によっては地中海にいる艦船からカリバル(巡航ミサイル)を発射するだろう。カスピ海から長距離を飛行できる巡航ミサイルで正確に攻撃できることはすでに証明済み。さらに長距離爆撃機やマッハ6から7で飛行する弾道ミサイルのイスカンダルが使われることもありえる。イスラエルは簡単にシリアへ軍事侵攻できない。イスラエルが強い影響力を及ぼしているクルド勢力との結びつきをアメリカも強めている。クルドが支配しているシリアの北部に建設されていた7つの基地へバラク・オバマ政権は昨年9月に特殊部隊を派遣したが、今年に入って第11海兵遠征部隊もシリアで戦闘態勢を整えたと報道されている。かつてはアメリカのシリア侵略に協力していたトルコ政府によると、アメリカはシリア領内に10カ所以上の軍事基地を建設済みだともされている。今回、ネタニヤフはプーチンを脅して譲歩させようと目論んだのだろう。2013年7月にモスクワを訪問したサウジアラビアのバンダル・ビン・スルタン総合情報庁長官(当時)と同じことをしたわけだ。その際、スルタンはプーチン大統領に対し、シリアから手を引けばソチ・オリンピックの安全を保証できると持ちかけたとされている。当時、チェチェンの反ロシア武装グループはオリンピックでの破壊活動を行うとしていた。シリアから手を引かなければオリンピックを攻撃させるとスルタンは脅したとプーチンは理解、その提案を拒否した上で、「ここ10年の間、チェチェンのテロリスト・グループをあなたたちが支援していることを知っている」と言い放ったという。プーチン政権に脅しは通じないのだ。それをネタニヤフは理解できていない・・・威圧して屈服させるということしかできないのかもしれないが。
2017.08.30
朝鮮がまた弾道ミサイルを発射、北海道の東側海上へ落下したという。アメリカや日本の好戦派にとって願ってもない好タイミングだ。朝鮮半島で戦争が始まれば韓国も破滅することを理解している文在寅大統領は朝鮮半島におけるあらゆる軍事行動は韓国政府の承認が必要だとしたうえで、彼は戦争を阻止すると発言している。同じ頃、プロスペクトが掲載した記事の中でドナルド・トランプ政権の首席戦略官だったステファン・バノンも朝鮮の核問題で「軍事的な解決はない。忘れろ」と発言している。ソウルに住む1000万人が開戦から最初の30分で死なないことを示されない限りバノンは軍事作戦には賛成しないという姿勢だった。そして彼は首席戦略官を解任される。バノンを追い出したはずのトランプ大統領もその後、朝鮮半島の軍事的な緊張を緩和させるような発言をしている。朝鮮政府はアメリカに敬意を払い始めたと語っているのだ。8月14日にはミサイル防衛の専門家、マイケル・エルマンが朝鮮の新しいミサイルが搭載しているエンジンはウクライナから持ち込まれた可能性が高いとする分析結果を明らかにしている。ウクライナでの目撃談とも合致しているという。ジャーナリストのロバート・パリーによると、エンジンの出所だと疑われている工場の所在地はイゴール・コロモイスキーという富豪(オリガルヒ)。ウクライナ、キプロス、イスラエルの国籍を持つ人物で、2014年2月のクーデターを成功させたネオ・ナチのスポンサーとしても知られている。勿論、その背後にはアメリカのネオコンがいる。2014年7月17日にマレーシア航空17便を撃墜した黒幕だとも噂されている人物だ。本ブログでも何度か指摘したが、1980年代にアメリカやイスラエルはイランへ武器を密輸しているが、その際に朝鮮から相当数のカチューシャ・ロケット弾を仕入れたのはイスラエル。その後も関係が続いたとしても不思議ではない。実際、今回のケースでもイスラエルのエージェントが介在しているという情報が流れている。ウクライナに限らず、旧ソ連圏の国で今はアメリカの属国になっている国々は武器/兵器の密輸の拠点だと指摘されている。7月2日にはブルガリアのジャーナリストが公文書を根拠にして、その密輸ルートを明らかにした。アメリカ、イスラエル、サウジアラビアなどが購入、アゼルバイジャンの国営航空会社がアル・カイダ系武装集団、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)、クルドなどへ運んでいるとしている。こうした密輸ルートの存在は以前から指摘されていたが、今回は公文書という証拠が示され、その内容も詳しい。この大スクープをものにしたジャーナリストは8月24日に解雇された。アメリカ、イスラエル、サウジアラビアは「テロリスト」と戦っているという戯言を主張している人々にとって好ましくない情報は封印され、そうした情報を明らかにしようとする人は弾圧を受ける。これが西側で言われる「言論の自由」だ。
2017.08.29
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は8月23日にロシアのソチでウラジミル・プーチン露大統領と会談した。その際にネタニヤフはモサド(対外情報機関)長官と国家安全保障会議の議長を伴い、シリアからイランやヒズボラの部隊を引き揚げさせるように求めたと見られている。イランやヒズボラがシリアに恒久的な基地を建設するなら軍事侵攻の可能性もあると前の国家安全保障会議議長が7月17日に語っている。8月23日の会談でプーチンはイランを中東におけるロシアの戦略的な同盟国だとし、イスラエルは重要なロシアのパートナーだと表現した。プーチンは友好的でない関係国をパートナーだと呼ぶ。ネタニヤフの要求をはねつけたと言えるだろう。アル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)のようなアメリカ、イスラエル、サウジアラビアを中心とする勢力がシリアへ送り込んだ傭兵部隊は壊滅状態と言われ、アメリカの軍や情報機関は傭兵の幹部をヘリコプターなどで救出しているとも伝えられている。1997年から2001年までイギリスの外相を務めたロビン・クックはアル・カイダについて、CIAがアフガニスタンでロシア軍を潰すために雇い、訓練した数千名に及ぶムジャヒディン(聖戦士)のコンピュータ・ファイルだと説明したが、これは基本的に正しいだろう。アラビア語でアル・カイダとはベースを意味し、データベースの訳として使われる。そうした訓練を受けた傭兵、、あるいはサウジアラビアやイスラエルの軍人を助け出しているのだろう。こうした展開を受け、アメリカとイスラエルはクルドを前面に出し、イラクやシリアの北部、トルコの南部を占領、アメリカ軍はいくつもの大規模な基地を建設、居座るつもりだと見られている。2016年9月にバラク・オバマ政権は特殊部隊をシリア北部にある7つの基地へ派遣、今年に入って第11海兵遠征部隊がシリアで戦闘態勢を整えたと報道されているほか、アメリカの特殊部隊がクルド軍とラッカへ入ったとも言われている。トルコ政府によると、アメリカはシリア領内に10カ所以上の軍事基地を建設済みだという。国家安全保障補佐官のH. R. マクマスターはデビッド・ペトレイアスの子分だが、このペトレイアスはネオコン。つまり昨年の大統領選挙ではヒラリー・クリントンに近かった。マクマスターはユーフラテス川の周辺へ数万人とも15万人とも言われる規模の軍隊を送り込もうとしていたと言われている。ネオコンはシリア、イラク、イラン、トルコをまたぐクルドの「満州国」をでっち上げるつもりだろう。これに対し、ロシアは特殊部隊をシリア領内で活動させ、防空システムのS-300、S-400、パーンツィリ-S1を配備しているが、シリアとロシアはさらに一歩進めて統合防空システムを作り上げたようだ。またヒズボラが使っている対戦車兵器のRPG-29、AT-14コルネット、メティスMでイスラエルの最新戦車、メルカバ4は破壊されている。このほか、状況によっては地中海にいる艦船からカリバル(巡航ミサイル)を発射するだろう。カスピ海から長距離を飛行できる巡航ミサイルで正確に攻撃できることはすでに証明済み。さらに長距離爆撃機やマッハ6から7で飛行する弾道ミサイルのイスカンダルが使われることもありえるだろう。現在、イスラエルはサウジアラビアと連携、シリアに対する直接的な軍事侵攻を目論んでいるとも言われているが、成功する確率は高くない。しかも、イラン、イラク、レバノン、シリア、ロシア、中国の軍事的なつながりも強まっている。当初、アメリカなど侵略勢力側についていたトルコやカタールもロシア側へ接近している。
2017.08.28
アメリカはベネズエラの体制転覆を目論んでいる。ドナルド・トランプ大統領はベネズエラを軍事侵攻する可能性があると8月11日に語り、25日にニッキー・ヘイリー国連大使はベネズエラに対し、「独裁制」を許さないと語った。7月20日にはマイク・ポンペオCIA長官がベネズエラの「移行」が期待できるとアスペン治安フォーラムで語っている。そうした動きに対抗、ベネズエラ政府は中国から融資を受け、ロシアの企業へ石油を売却、石油生産設備を外国へ売ることでアメリカの石油企業や銀行に乗っ取られることを防ごうとしている。ここでもアメリカは中国やロシアと衝突しそうだ。世界を股にかけて侵略戦争を繰り返し、殺戮と破壊を続けている自分たちの「帝国」にとって目障りな政府は公正な選挙で選ばれていても「独裁政権」というタグが付けられる。タグの付け替えで人心を操作しようというワンパターンの手口。そのタグを信じる、あるいは信じている振りをする人も少なくない。世界有数の産油国であるベネズエラはラテン・アメリカ自立のカギを握る国で、ここを制圧すれば残る国を屈服させることは容易になる。アフリカ大陸におけるリビアがそうだったのと同じような立場だ。そのベネズエラをアメリカから自立させたのが1999年から大統領を務めたウーゴ・チャベス。アメリカで2001年に誕生したジョージ・W・ブッシュ政権はアフガニスタンへの先制攻撃を実施、03年にはイラク侵略を先制攻撃したが、その間、チャベス排除も試みている。2002年にクーデター計画が始動したのだが、その黒幕と指摘されているのはイラン・コントラ事件でも登場するエリオット・エイブラムズ、キューバ系アメリカ人で1986年から89年にかけてベネズエラ駐在大使を務めたオットー・ライヒ、そして1981年から85年までのホンジュラス駐在大使で、後に国連大使にもなるジョン・ネグロポンテ。クーデターの際、アメリカ海軍がベネズエラ沖で待機、新政権は実業家のペドロ・カルモナを中心に組閣されることになっていたというが、この計画は事前にOPECの事務局長を務めていたベネズエラ人のアリ・ロドリゲスからチャベスへ知らされたため、失敗に終わっている。WikiLeaksが公表したアメリカの外交文書によると、2006年にもクーデターが計画されている。「民主的機関」、つまりアメリカの支配システムに組み込まれた機関を強化し、チャベスの政治的な拠点に潜入、チャベス派を分裂させ、アメリカの重要なビジネスを保護し、チャベスを国際的に孤立させるというのだ。そのチャベスは2013年3月、癌のため、58歳の若さで死亡した。癌の原因が人為的なものかどうかは不明だが、生前、キューバのフィデル・カストロから暗殺に気をつけるよう、経験に基づいて警告されていたことは確か。さまざまな暗殺手段が存在するが、癌を引き起こすウイルスも使われていると言われている。「疑惑の人」も指摘されている。チャベスの側近として食べ物やコーヒーなどを運んでいたレムシー・ビリャファニャ・サラサールだ。この人物は後にアメリカへ亡命、保護されている。カリスマ性のあったチャベスの死はアメリカの支配層にとってありがたいこと。それでも選挙でチャベスの政策を引き継ぐという立場のニコラス・マドゥーロが勝利、アメリカ支配層は社会不安を煽る御得意の工作を始めた。2015年2月にもクーデター未遂があったと言われている。この政権転覆作戦を指揮していたのはNSC(国家安全保障会議)で、それを許可したのはリカルド・ズニーガ。CIAの人間で、対キューバ工作の責任者でもある。2月12日にはベネズエラ軍を装った航空機で傭兵会社のアダデミ(かつてのブラックウォーター)が大統領官邸を爆撃、マドゥーロを殺害することになっていた。軍事行動の責任者はSOUTHCOM(アメリカ南方軍)で情報部門を統括していたトーマス・ゲリー准将(当時)とアダデミのレベッカ・チャベス。例によって作戦の司令部はアメリカ大使館で、NEDなどを介して現地のNGOを動かしていた。アメリカの支配層がベネズエラを「バナナ共和国」へ逆戻りさせたい理由のひとつはシェール・ガス/オイルを軸にした戦略の破綻。アメリカはロシアの重要な収入源である石油や天然ガスの輸出ルートを断ち切ってロシアを乗っ取る一方、自国のシェール・ガス/オイルを売りつけようと目論んでいたのだが、大きな問題が浮上している。ひとつは生産コストの高さ。2014年の原油相場急落はロシア経済を破綻させることに失敗、イギリスの北海油田にダメージを与え、サウジアラビアを財政赤字に陥らせた。そしてシェール・ガス/オイルの採算割れだ。もうひとつは短い生産持続可能期間。当初の生産両を維持できるのは4、5年程度で、7、8年経つと8割程度下落すると言われている。また、シェール・ガス/オイルの採掘方法は地下水を汚染し、地下水に頼っているアメリカの農業の死滅を早めることになる。つまりシェール・ガスやオイルに頼るわけにはいかないのだ。ロシアで産出される天然ガスや石油の主要マーケットはEUであり、その主要な輸送ルートであるウクライナを属国化することで輸送を断ち切ろうとしたのがアメリカの好戦派。2014年2月にネオコンはネオ・ナチを手先に使い、ウクライナでクーデターを成功させるのだが、思惑通りには進まなかった。EUは窮地に陥ったが、ロシアは東を向き、中国と結びついたのだ。両国は戦略的なパートナーになった。ウクライナのクーデターから間もなくして原油相場が急落したが、これはアメリカやサウジアラビアが仕掛けたと言われている。2014年9月11日にアメリカのジョン・ケリー国務長官とサウジアラビアのアブドラ国王が紅海の近くで会談しているが、これは相場下落の謀議だったとも噂された。ネオコンのH・R・マクマスター国家安全保障補佐官はベネズエラへ近い将来に軍事侵攻することを計画していないと語っているが、軍事侵攻しないということではない。トランプ大統領の過激発言によって軍事侵攻しにくくなったという側面もある。
2017.08.27
8月も終わり、9月を迎えようとしている。1923年9月1日、日本にとって大きな節目になる出来事が起こった。相模湾を震源とする巨大地震が関東地方を襲い、10万5000名以上の死者/行方不明者を出し、その損害総額は55億から100億円に達したのだ。震災対策の責任者は朝鮮の独立運動を弾圧したコンビ、水野錬太郎内相と赤池濃警視総監だった。震災当日の夕方、赤池総監は東京衛戍(えいじゅ)司令官の森山守成近衛師団長に軍隊の出動を要請、罷災地一帯に戒厳令を布くべきだと水野内相に進言しているが、その頃、「社会主義者や朝鮮人の放火が多い」、「朝鮮人が来襲して放火した」といった流言蜚語が飛び交いはじめ、翌日の夜に警視庁は全国へ「不定鮮人取締」を打電した。そうした中、朝鮮人や社会主義者が虐殺され、千駄ヶ谷では伊藤圀夫という日本人が朝鮮人に間違われて殺されそうになる。伊藤圀夫はその後「千駄ヶ谷のコリアン」をもじり、千田是也と名乗るようになった。アナーキストの大杉栄が妻の伊藤野枝や甥の橘宗一とともに憲兵大尉の甘粕正彦に殺されたのもこの時だ。一連の虐殺には治安当局が関係している疑いがあり、その意味でもこの時の犠牲者を追悼するという姿勢を東京都知事は見せてきた。それを止めるという意味は対外的にも重い。震災後、山本権兵衛内閣の井上準之助蔵相は銀行や企業を救済するために債務の支払いを1カ月猶予し、「震災手形割引損失補償令」を公布している。すでに銀行が割り引いていた手形のうち、震災で決済ができなくなったものは日本銀行が再割引して銀行を救済するという内容だった。震災手形で日銀の損失が1億円を超えた場合は政府が補償することも決められたが、銀行は地震に関係のない不良貸付、不良手形をも再割引したために手形の総額は4億3000万円を上回る額になり、1926年末でも2億円を上回る額の震災手形が残った。しかもこの当時、銀行の貸出総額の4割から7割が回収不能の状態だ。復興に必要な資金を調達するため、日本政府は外債の発行を決断、それを引き受けることになったのがJPモルガン。この金融機関の総帥はジョン・ピアポント・モルガン・ジュニアだが、大番頭として銀行業務を指揮していたのはトーマス・ラモントだ。このラモントは3億円の外債発行を引き受け、それ以降、JPモルガンは日本に対して多額の融資を行うことになる。この巨大金融機関と最も強く結びついていた日本人のひとりが井上準之助。1920年に対中国借款の交渉をした際にこの巨大金融機関と親しくなったという。ラモントは日本に対して緊縮財政と金本位制への復帰を求めていたが、その要求を浜口雄幸内閣は1930年1月に実行する。そのときの大蔵大臣が井上だ。金解禁(金本位制への復帰)の結果、1932年1月までに総額4億4500万円の金が日本から流出、景気は悪化して失業者が急増、農村では娘が売られるなど一般民衆には耐え難い痛みをもたらすことになる。そうした政策の責任者である井上は「適者生存」、つまり強者総取りを信奉、失業対策に消極的で労働争議を激化させることになる。こうした社会的弱者を切り捨てる政府の政策に不満を持つ人間は増えていった。1932年にはアメリカでも大きな出来事が引き起こされている。巨大企業の活動を制限し、労働者の権利を認めるという政策を掲げるニューディール派のフランクリン・ルーズベルトがウォール街を後ろ盾とする現職のハーバート・フーバーを選挙で破ったのだ。フーバーはスタンフォード大学を卒業した後、鉱山技師としてアリゾナにあるロスチャイルドの鉱山で働いていた。利益のためなら安全を軽視するタイプだったことから経営者に好かれ、ウォール街と結びついたという。(Gerry Docherty & Jim Macgregor, “Hidden History,” Mainstream Publishing, 2013)このフーバーは1932年、駐日大使としてジョセフ・グルーを選び、日本へ送り込んだ。この人物のいとこにあたるジェーン・グルーはジョン・ピアポント・モルガン・ジュニア、つまりJPモルガンの総帥の妻。またグルーが結婚していたアリス・ペリーは幕末に「黒船」で日本にやって来たマシュー・ペリー提督の末裔で、少女時代を日本で過ごしている。その際、華族女学校(女子学習院)へ通っているのだが、そこで親しくなったひとりが九条節子、後の貞明皇后である。グルーの皇室人脈をそれだけでなく、松平恒雄宮内大臣、徳川宗家の当主だった徳川家達公爵、昭和天皇の弟で松平恒雄の長女と結婚していた秩父宮雍仁親王、近衛文麿公爵、貴族院の樺山愛輔伯爵、当時はイタリア大使だった吉田茂、吉田の義父にあたる牧野伸顕伯爵、元外相の幣原喜重郎男爵らにもつながっていた。(ハワード・B・ショーンバーガー著、宮崎章訳『占領 1945〜1952』時事通信社、1994年)そうした人脈を持つグルーだが、個人的に最も親しかったひとりは松岡洋右だと言われている。松岡の妹が結婚した佐藤松介は岸信介や佐藤栄作の叔父にあたる。1941年12月7日(現地時間)に日本軍はハワイの真珠湾を奇襲攻撃、日本とアメリカは戦争に突入するが、翌年の6月までグルーは日本に滞在、離日の直前には岸信介とゴルフをしている。(Tim Weiner, "Legacy of Ashes," Doubledy, 2007)当時、アメリカの大統領就任式は3月に行われていた。その前、2月15日にルーズベルトはフロリダ州マイアミで開かれた集会で狙撃事件に巻き込まれている。ジュゼッペ・ザンガラなる人物が32口径のリボルバーから5発の弾丸を発射、ルーズベルトの隣にいたシカゴのアントン・セルマック市長に弾丸が命中して市長は死亡した。群衆の中、しかも不安定な足場から撃ったので手元が狂い、次期大統領を外した可能性があり、本来なら事件の背景を徹底的に調査する必要があるのだが、真相は明らかにされなかった。ザンガラは3月20日に処刑されてしまったのである。そして1934年、名誉勲章を2度授与された伝説的な軍人、海兵隊のスメドレー・バトラー退役少将がアメリカ下院の「非米活動特別委員会」でウォール街の大物たちによるクーデター計画を明らかにしている。少将の知り合いでクーデター派を取材したジャーナリストのポール・フレンチは、クーデター派が「コミュニズムから国家を守るため、ファシスト政府が必要だ」と語っていたと議会で証言している。バトラーに接触してきた人物はドイツのナチスやイタリアのファシスト党、中でもフランスの「クロワ・ド・フ(火の十字軍)」の戦術を参考にしていた。彼らのシナリオによると、新聞を利用して大統領を健康問題で攻撃し、フランスの「クロワ・ド・フ(火の十字軍)」のような50万名規模の組織を編成して大統領をすげ替えることにしていたという。クーデター計画と並行する形で、ニューディール政策に反対する民主党の議員は「アメリカ自由連盟」を設立している。活動資金の出所はデュポンや「右翼実業家」だった。それに対し、50万人の兵士を利用してファシズム体制の樹立を目指すつもりなら自分は50万人以上を動かして対抗するとバトラーは応じた。内戦を覚悟するように警告したわけだ。そうしたこともあり、クーデターは実行されていない。クーデターを計画したとされた人々は誤解だと弁明、非米活動特別委員会はそれ以上の調査は行われず、メディアもこの事件を追及していない。捜査当局も動かなかった。言うまでもなくジョセフ・グルーは第2次世界大戦後にジャパンロビーの中心的な存在となり、日本で進んでいた民主化の流れを断ち切り、天皇制官僚国家を継続させている。大戦前、思想弾圧の中心になった思想検察や特高警察の人脈は戦後も生き残った。これが「戦後レジーム」の実態であり、「戦前レジーム」とはウォール街の属国になることを意味している。そうした意味で、安倍晋三の言動は矛盾していない。
2017.08.26
選挙キャンペーン中の公約を忘れたわけではないだろうが、ドナルド・トランプ大統領はヒラリー・クリントンのような好戦的政策を打ち出している。ジャック・キーン退役大将は6月にアフガニスタンへ1万から2万人の部隊を送り込むべきだと語っていたが、そうした圧力に流されているようにも見える。2011年当時、ISAF(国際治安支援部隊)として国外からアフガニスタンへ入っていたのは約14万名で、そのうち約10万人がアメリカ兵。それをバラク・オバマ大統領は撤退させると言っていたのだが、2014年5月に9800名は残すと発表した。こうした流れの中、ニューヨーク・タイムズ紙はアフガニスタンが資源の宝庫で、「リチウムのサウジアラビア」だとする記事を掲載する。アフガニスタンに手つかずの鉱物があることは以前から知られていた話。つまり「ニュース」ではない。アメリカ軍を撤退させるべきでないという宣伝だと見なされている。8月には同じ主張をISAF司令官だったデイビッド・ペトレイアスがテレビの番組で語っている。アフガニスタンの近くを中国が計画している「陸のシルクロード」が通ることを指摘、アメリカ軍が撤退すると、そうした資源が中国に支配されるとしている。それ以外にも、アメリカ軍を投入する理由があるとする人もいる。麻薬の原料になるケシの畑をアメリカ兵が守っているというのだ。1970年代の終盤にアメリカがアフガニスタンで秘密工作を始めてからアフガニスタンとパキスタンをまたぐ山岳地帯は世界最大のケシ栽培地になっている。ベトナム戦争の時にはCIA、地元の武装勢力、そしてアメリカの犯罪組織が連携して東南アジアの山岳地帯、いわゆる黄金の三角地帯が最大のケシ産地だったが、アフガニスタンで戦争が始まると産地も移動したわけだ。ちなみに、ケシの子房に浅く傷を入れて流れ出た乳液の固まったものが生アヘン。これを乾燥させたものがアヘンで、その主成分がモルヒネ。このモルヒネをジアセチル化したものがヘロインだ。
2017.08.25
8月17日にカタルーニャ自治州の州都バルセロナのラ・ランブラでバンが歩行者に突入、13名を殺害して130名以上を負傷させた。その自動車を運転していたとされるヨウネス・アボウヤーコウブが警官に射殺されたようだ。ラ・ランブラの事件から6時間後にカンブリスで5名の男性が自動車で歩行者を轢いてひとりを殺害、6名を負傷させているが、この5名も射殺されている。殺された容疑者6名は偽物の自爆ベルトを身につけていたという。自動車を使った「テロ」が実行される前、8月16日にやはりカタルーニャのアルカナーで家が爆発によって破壊されるという出来事があり、少なくとも2名が死亡している。当初、警察はガス爆発事故だと主張していたが、爆弾を製造中の事故だったことが後に判明している。アルカナー、ラ・ランブラ、カンブリスの出来事はリンクしていると見られているが、現地の報道によると、事前にCIAがスペイン当局に対し、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)がバルセロナで攻撃を計画していると警告、ラ・ランブラがターゲットになる可能性が高いとしていたようだ。ダーイッシュはアル・カイダ系武装集団から派生したが、このアル・カイダとはロビン・クック元英外相が2005年にガーディアン紙で指摘したように、CIAから軍事訓練を受けた「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイル、つまり傭兵の登録リスト。ちなみにアル・カイダはアラビア語でベースを意味し、データベースの訳語としても使われている。ズビグネフ・ブレジンスキーの計画に基づいてCIAがスンニ派を中心とする戦闘集団を編成したのは1970年代の終盤、アフガニスタンにおいてだった。その主力はサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団。武器/兵器の提供や軍事訓練はアメリカが担当したが、資金や戦闘員を提供したのはサウジアラビアで、イスラエルが工作に協力している。アメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)が2012年8月に作成、ホワイトハウスへ提出された報告書によると、反シリア政府軍の主力はサラフ主義者やムスリム同胞団で、バラク・オバマ大統領が言うような「穏健派」は存在しないとされている。これは事実。そして、西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコの支援を受けているともされていた。こうした実態のため、東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるともDIAは警告している。この報告書が作成された当時のDIA局長がネオコンなど好戦派に憎悪されているマイケル・フリン中将。ダーイッシュが売り出された直後の2014年8月に退役させられているが、その後、アル・ジャジーラのテレビ番組に出演してダーイッシュの勢力が拡大したのはオバマ政権が決めた政策によると語っている。つまり、CIAとダーイッシュは非常に緊密な関係にある。ダーイッシュがバルセロナで爆弾攻撃を計画していることをCIAが知り、それを阻止したいなら、その関係を使えば可能だろう。CIAがスペイン当局に「テロ」計画を事前に警告していたとする報道が正しいなら、その「テロ」がダーイッシュによるものだと信じさせる演出だとも考えられる。ところで、過去の「テロリスト」で裁判まで生き延びられなかった人は少なくない。例えば、エイブ・リンカーン大統領を暗殺したジョン・ブースは事件の12日後に死体となって発見され、1933年2月、前年の大統領選で勝利し、就任間近だったフランクリン・ルーズベルトと並んで立っていたシカゴのアントン・セルマック市長を射殺したジュゼッペ・ザンガラは3月20日に処刑されてしまった。ジョン・F・ケネディ大統領暗殺では容疑者とされたリー・ハーベイ・オズワルドは警察で射殺され、その射殺犯だとされるジャック・ルビーもテキサス州で事実を語るチャンスが与えられないまま死亡した。9/11をはじめ、21世紀に入ってから続いた「テロ」の容疑者も殺されている。
2017.08.24
ステファン・バノン首席戦略官が解任された。グローバル化を批判するバノンをアメリカの支配層が排除したということだろう。バラク・オバマ政権がダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を生み出したと語っていた元DIA局長のマイケル・フリン国家安全保障担当補佐官をホワイトハウスから追い出した段階で道筋は決まっていたとも言える。バノンの政策を「保護主義」と表現してきた日本のマスコミなどは今回の解任を肯定的に伝えている。確かに問題のある人物ではあるが、巨大資本が全てを支配するシステムに異を唱え、戦争に反対していたことは事実。それを大手メディアは嫌っている。中国との経済戦争をバノンは望んでいたが、朝鮮の核兵器開発問題では軍事的な解決を否定、「忘れろ」と語っていた。しかし、ネオコンをはじめとするアメリカの好戦派は軍事的な手段しか思い浮かばないようだ。19世紀に経済破綻を侵略戦争(幸徳秋水が言うところの切取強盗)と麻薬でイギリスは乗り切ろうとしたが、アメリカは同じことをしようとしている。日本を含む西側のメディアはアメリカの巨大資本が君臨する世界を夢想している。政府、議会、司法を上回る権力をアメリカの巨大資本に与えるISDS(国家投資家紛争処理)条項を含むTPP(環太平洋連携協定)を推進してきたのはそのためだ。こうした夢想を実現できると彼らに思わせる出来事が1991年12月に起こっている。ソ連が消滅したのだ。これによってアメリカは「唯一の超大国」になったと認識したネオコンは残された服わぬ国々を武力で制圧しようとする。それが1992年2月に作成されたウォルフォウィッツ・ドクトリンだ。1991年のうちにポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)はイラク、シリア、イランを殲滅すべき国として挙げていた。イラクは2003年に侵略されたが、その前にアフガニスタンが攻撃されている。自分たちが作り上げたタリバン政権がコントロールできなくなり、破壊しようとしたのである。アメリカの傀儡として大統領に就任したのがハミド・カルザイだが、今はアメリカに批判的で、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)はアメリカが作った道具だとしている。1997年から2001年までイギリスの外相を務めたロビン・クックはアル・カイダについてCIAから訓練を受けた戦闘員のデータベースだと説明したが、その戦闘員の多くはサウジアラビアが雇い、送り込んだサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団で、アフガニスタンでソ連軍と戦わせることが目的だった。イラクでサダム・フセイン体制が倒された後、アメリカは親イスラエル政権を樹立しようとして失敗、ヌーリ・アル・マリキが首相になる。この人物もアメリカの影響下にあったはずだが、2014年3月にアメリカの同盟国であるサウジアラビアやカタールが反政府勢力へ資金を提供していると語り、ロシアへ接近する姿勢を見せた。21世紀に入ってウラジミル・プーチンが大統領になると、ロシアは再独立して国力を急速に回復させていたのだ。その年の4月に実施された議会選挙でマリキが党首を務める法治国家連合が第1党になるのだが、マリキは首相になれなかった。アメリカ政府が介入したと見られている。マリキはペルシャ湾岸産油国を批判しただけでなく、アメリカ軍の永続的な駐留やアメリカ兵の不逮捕特権を認めなかった人物で、アメリカ支配層に嫌われたようだ。しかし、新しく首相になったハイデル・アル・アバディ首相もアメリカに背く。2015年9月30日にロシアがシリア政府の要請で空爆を始め、その成果を見た彼はイラクもロシアに空爆を頼みたいという意思を示したのだ。そこでジョセフ・ダンフォード米統合参謀本部議長がイラクへ乗り込み、ロシアへ支援要請をするなと恫喝したようだ。そうした状態であるため、アフガニスタンでもロシアや中国の存在感が強まっている。戦略的に重要な場所にあるだけでなく、アヘン戦争以来、米英がカネ儲けに使っているケシ(アヘンやヘロインの原料)の産地。ケシの畑を守ることもアメリカ/NATOの役割だと言う人もいる。
2017.08.23
アメリカ軍と韓国軍は大規模な軍事演習を8月21日から31日にかけて実施するようだ。ドナルド・トランプ政権へ潜り込んだネオコンのひとり、H・R・マクマスター国家安全保障補佐官は朝鮮半島で「予防戦争」を含むオプションの準備をしていると語っているが、本ブログでは何度も書いているように、アメリカが見ている相手は朝鮮でなく中国だ。実際、東アジアの軍事的な緊張を高めてきたアメリカでは議会が中国との経済戦争をトランプ大統領に強要、この動きの中で日本が果たした役割は大きい。2009年9月にアメリカを訪問した鳩山由起夫首相(当時)は中国の胡錦濤国家主席に対し、東シナ海を「友愛の海にすべきだ」と語り、「東アジア共同体」構想を示したという。その鳩山首相を日本のマスコミと検察は共同で引きずり下ろし、菅直人が10年6月から首相になる。その3カ月後、尖閣諸島付近で操業していた中国の漁船を海上保安庁が「日中漁業協定」を無視する形で取り締まり、漁船の船長を逮捕。この逮捕劇の責任者は国土交通大臣だった前原誠司だ。漁業協定に従うならば、日本と中国は自国の漁船を取締り、相手国漁船の問題は外交ルートでの注意喚起を行わなければならなかった。この出来事によって日本と中国との関係は悪化するが、2011年3月11日に東日本の太平洋側で巨大地震が発生、東電の福島第一原発が過酷事故を起こした。好運が重なって東日本が全滅するという事態は避けられたが、国が滅亡する可能性はあった。そこで日中の関係悪化どころの話ではなくなる。しかし、原発事故の実態隠しに成功した支配層は中国との関係悪化を再び画策する。例えば、2011年12月に石原慎太郎都知事(当時)の息子、石原伸晃がハドソン研究所で講演、尖閣諸島を公的な管理下に置いて自衛隊を常駐させ、軍事予算を大きく増やすと発言したのだ。2012年4月には石原知事がヘリテージ財団主催のシンポジウムで尖閣諸島の魚釣島、北小島、南児島を東京都が買い取る意向を示し、中国で日本に対する反発が強まる。中国に対する攻撃にインドを引き込む上でも日本は重要な役割を果たした。アメリカの支配層が恐れる中国の一帯一路政策に対抗するために安倍晋三首相とインドのナレンドラ・モディ首相は2016年11月にAAGC(アジア・アフリカ成長回廊)を生み出している。今年5月末にモディは一帯一路を拒否する意思を明確にした。その一方、2016年11月に日本からインドへ核燃料のほか原子力発電に関する施設や技術を提供することで両国は合意、今年5月に衆議院はこれを承認している。原発だけではなく、核兵器の開発に関係している可能性もあるだろう。AAGCと同じように、核技術の移転をアメリカ支配層の承認無しに日本政府が実行できるとは思えない。世界的に評判が悪いアメリカは背後に隠れ、日本にやらせたということだろう。モディ首相は南アジアで最もイスラエルに近いと言われている人物だが、そのモディは今年2月末、あるいは3月の初めに腹心で情報機関のトップだったこともある人物をイスラエルへ派遣した。モディ本人は6月下旬にアメリカでトランプ大統領と会った後、7月上旬にイスラエルを訪問している。その間、6月中旬にインド軍部隊が中国の道路建設を止めるためにドクラムへ侵入、両国の軍事的な緊張は一気に高まった。軍事衝突に発展する可能性は否定できない。また、アメリカ支配層は新疆ウイグル自治区にアル・カイダ系武装集団、あるいはダーイッシュを侵入させている可能性が高く、ここでも何らかの破壊活動を始めるかもしれない。AAGCを考えた大きな理由は資源の宝庫であるアフリカ大陸の支配。欧米の植民地として食い物にされてきたアフリカを自立させようとしたリビアのムアマル・アル・カダフィ体制を倒し、カダフィ本人を惨殺、リビアを破綻国家にした理由もそこにある。
2017.08.22
このブログは読者の方々に支えられています。ブログを存続させるため、カンパ/寄付をお願い申し上げます。アメリカや日本の支配層にとって都合の悪い情報を西側の大手メディアは伝えようとしません。1988年にノーム・チョムスキーとエドワード・ハーマンは「Manufacturing Consent(同意の製造)」という本を出し、メディアはプロパガンダ機関にすぎないと主張しましたが、そうした傾向は強まり続け、今では「報道」の中から事実を見つけ出すことが困難なほどです。日本のマスコミは当然ですが、そうしたアメリカの有力メディアに情報を頼ることもできないのです。フランクリン・ルーズベルトやジョン・F・ケネディのように、巨大資本から目障りだと思われる人物がアメリカ大統領に就任したことはありますが、この国の政治、経済、軍事は基本的にウォール街を拠点とする巨大資本が支配してきました。そのネットワークを最近では深層国家(Deep State)と呼ぶ人もいます。アメリカは「自由と民主主義」の国であり、「言論の自由」が保障されていると信じている日本人もいるようですが、そうした妄想を抱いていない日本人もいます。例えば、幸徳秋水はそうでした。彼は1901年に『廿世紀之怪物 帝国主義』を発表しましたが、その中でアメリカのキューバ侵略が取り上げられ、「それ他の人民の意思に反して、武力暴力をもって弾圧し、その地を奪い富を掠めんとす」と指摘しています。また幸徳はアメリカの軍事介入について「初め自由と人権とを呼号し、忽ち変じて国家生存の必要に藉口す」とも書いています。自由や人権を口実にして侵略を始めるアメリカ支配層の行動パターンは今でも変化していません。そうした行為は「切取強盗の所行にあらざるや」とも幸徳は書いていますが、全くその通りです。そうした切り取り強盗団が「自由と民主主義」の象徴であるかのように信じる日本人が少なくないようですが、そう信じさせる仕組みが教育と報道です。支配層は被支配者を教育で洗脳し、メディアを使って支配層が望む方向へ誘導していくのですが、その先には地獄が待ち受けています。すでに地獄の中へ足を踏み入れているかもしれませんが、事実を知ることで引き返すことも不可能ではないでしょう。本ブログが事実を知る一助になればと願っています。櫻井 春彦振込先巣鴨信用金庫店番号:002(大塚支店)預金種目:普通口座番号:0002105口座名:櫻井春彦
2017.08.21
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は8月23日にロシアのソチでウラジミル・プーチン露大統領と会談するようだ。ロシア軍がシリア政府の要請で2015年9月30日に軍事介入した後、ここ16カ月で4回目のロシア訪問。シリア情勢が話し合いの重要なテーマになるのだろう。シリアではアメリカ、イスラエル、サウジアラビアを中心とする国々がバシャール・アル・アサド政権の打倒を目指してサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心とする武装勢力を送り込んだが、トルコやカタールの離脱でムスリム同胞団の影は薄くなった。その武装勢力はアル・カイダやダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)といったタグをつけているが、ロシア軍とシリア政府軍との連携で敗走している。現在の問題はユーフラテスより北を支配しているクルド勢力とアメリカ軍。バラク・オバマ大統領はシリアへ地上軍を送り込まないと言っていたが、行動は伴わず、今ではいくつもの大規模な基地を建設中だ。クルドはイスラエルと緊密な関係にある。こうした状況の中、サウジアラビアの王室はイスラエルと善後策を協議、インドも情報機関の大物をイスラエルへ派遣、そしてイスラエルの首相はロシア訪問を繰り返している。イスラエルはアメリカのネオコンと深いつながりがあることは言うまでもない。ドナルド・トランプ政権で最も重要なネオコン派は国家安全保障担当補佐官のH. R. マクマスター。戦闘員と武器/兵器をリビアからシリアへ運ぶ工作が盛んだった当時にCIA長官を務めていたデビッド・ペトレイアスの子分として知られている。マクマスターはユーフラテス川の周辺へ数万人とも15万人とも言われる規模の軍隊を送り込もうとしていたと言われている。ペトレイアスがCIA長官だったときの大統領はバラク・オバマ。工作には国務省が協力していたが、その当時の長官はヒラリー・クリントンだ。つまり、マクマスターはオバマやクリントンにつながる好戦派である。アメリカが地上軍をシリアへ侵入させたのオバマ政権の時代。ダーイッシュやアル・カイダ系武装集団の敗色が濃厚になった2016年9月、バラク・オバマ政権は特殊部隊をシリア北部にある7つの基地へ派遣、今年に入って第11海兵遠征部隊がシリアで戦闘態勢を整えたと報道されている。トルコからの情報によると、アメリカ軍はシリアに10カ所以上の軍事基地を建設済みだ。そのほか、イラクのモスルに近いニネベ地方でアメリカ軍は大規模な軍事基地を建設していると伝えられている。現在建設中の基地のほか、さらに4基地をこの地方に作る予定だという。ネタニヤフ首相はシリアにイラン人が入ってくることを嫌がっているというが、すでにイスラエルは特殊部隊などをシリアへ侵入させ、シリア政府軍に対する越境攻撃を繰り返してきた。ヒラリー・クリントンを操っているグループの中に投機家のジョージ・ソロスも含まれているが、少し前からネタニヤフとソロスとの関係が悪化していると言われている。プーチン登場後、ロシアから逃げ出したオリガルヒはロンドンやイスラエルへ逃げ込んだが、そうした人々はソロスとの関係が深い。アメリカの支配層はロシアでの選挙に当然、介入するが、ソロスの対ロシア工作情報もネタニヤフはプーチンとの取り引き材料にする可能性があるだろう。
2017.08.21
カタルーニャ自治州の州都バルセロナで8月17日にバンが歩行者に突入して13名以上が死亡、約100名が負傷した。容疑者のうち5名が射殺され、3名が逮捕されたが、運転していたとされるモロッコ生まれのヨウネス・アボウヤーコウブは逃走中だという。現場で発見されたスペインのパスポートからドリス・オウカビルが逮捕されたが、身分証明書は盗まれたと主張、当初、運転していたのはモウッサ・オウカビルなる人物だとされていた。それがアボウヤーコウブだということになったわけだ。少なからぬ人が今回もパスポートが現場で発見されたことに注目している。2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンにある国防総省の本部庁舎が攻撃された際、突入した航空機のブラックボックスも大半の遺体も見つからないにもかかわらず、パスポートは発見されている。そのときから続く「テロ」のパターンだ。いずれもケースでもパスポートが示す人物は死亡している。今回、当初の容疑者は逮捕され、つまり生きている。そして実行者ではないとされた。アボウヤーコウブは生きているのだろうか?今回の事件では、カタルーニャ独立をめぐる住民投票が10月1日に予定されていることも注目されている。スペイン政府だけでなくNATO諸国も住民投票で独立賛成が多数を占めること懸念、裏で何らかの工作をしている可能性は否定できない。実行者としてダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)が名乗りを上げているようだが、この集団はアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの3国同盟を中心に編成された傭兵集団。これは本ブログでも再三、指摘してきた。アメリカやイギリスの支配層はヨーロッパを自分たちに都合良く作り替えるため、NATOの内部に秘密工作部隊を編成している。そうした組織の存在をイタリア政府は1990年に認めている。当時の首相はジュリオ・アンドレオッティだ。1972年2月にイタリア北東部の森で子どもが偶然、秘密部隊の武器庫を発見したことから調査は始まるのだが、警察は捜査を中断して有耶無耶にされる。そうした事態にひとりの判事が1984年になって気づいて捜査を再開、背後にNATOが存在し、100カ所以上の武器庫があることも判明した。この秘密組織がグラディオ。直接的にはイタリアの情報機関が動かしていたが、その上にはNATO、そしてイギリスとアメリカの情報機関が存在する。グラディオは1969年4月にパドゥア大学とミラノの産業フェアで、同年12月にはミラノのフォンタナ広場にある国立農業銀行で爆破事件を引き起こし、80年のボローニャ駅まで工作は続いた。その間、アルド・モロが誘拐され、殺されている。この暗殺ではヘンリー・キッシンジャーの名前が出てくる。つまり、アメリカやイギリスの支配層は「テロ」を利用してきた。目障りな人や団体を抹殺するだけでなく、国の進む方向をコントロールしたり、体制を作り替えることも行われる。アル・カイダ系武装集団やダーイッシュにもそうした側面がある。
2017.08.20
シリアにおけるアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)の壊滅は時間の問題だと見られている。アメリカ政府も「ダーイッシュ後」の準備を進めている。ユーフラテス川の北へアメリカ軍が侵攻、イスラエルの影響下にあるクルド勢力と連携して「数十年」の間、占領すると伝えられている。いわば「満州国」の樹立だ。本ブログでは繰り返し書いてきたが、シリアの戦乱は「内戦」でなく「侵略」だ。侵略の黒幕はアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの3国同盟が中心で、イギリス、フランス、トルコ、カタール、ヨルダンなどが協力する布陣。こうした国々が侵略の先兵として送り込んだのがアル・カイダ系の武装集団。リビアでアル・カイダ系武装集団とNATOの連携が明確になったこともあり、2014年からダーイッシュが前面に出てきた。「民主主義を望むシリア市民が独裁者の打倒を目指して蜂起した」という一般受けしそうなシナリオを侵略国の支配者は配下のメディアを使って宣伝していたが、その嘘は早い段階から明らかにされている。2011年10月にリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制が倒され、カダフィ自身は惨殺されているが、その後、CIAは国務省の協力を得てアル・カイダ系武装集団を武器/兵器と一緒にシリアへ運んだ。輸送拠点のひとつがベンガジのアメリカ領事館で、クリストファー・スティーブンス大使も関係、2012年9月10日に大使は領事館でCIAの工作責任者と会談、その翌日には海運会社の代表と会っている。その直後に領事館が襲撃され、大使は殺された。その当時、CIA長官だったのがデイビッド・ペトレイアスで、国務長官がヒラリー・クリントン。このふたりがこうした工作を知らなかったとは思えない。シリア政府を倒すために戦闘員や武器/兵器が送り込まれている最中、西側の有力メディア「市民の蜂起」というおとぎ話を宣伝していた。そうした宣伝の「情報源」とされたのがシリア系イギリス人のダニー・デイエムやSOHR(シリア人権監視所)。シリア政府の弾圧を訴え、外国勢力の介入を求める発言を続けていた。しかし、2012年3月1日にダニーや彼の仲間が「シリア軍の攻撃」を演出する様子を含む映像が流出し、彼の情報がインチキだということが判明する。が、CNNを含む西側メディアはこうした事実を無視、偽情報を大々的に「報道」しつづけた。そして2012年5月、ホムスで住民が虐殺される。反政府勢力や西側の政府やメディアはシリア政府軍が実行したと宣伝、これを口実にしてNATOは軍事侵攻を企んだが、宣伝内容は事実と符合せず、すぐに嘘だとばれてしまう。その嘘を明らかにしたひとりが現地を調査した東方カトリックの修道院長だった。その修道院長の報告をローマ教皇庁の通信社が掲載したが、その中で反政府軍のサラフィ主義者や外国人傭兵が住民を殺したとしている。その修道院長は「もし、全ての人が真実を語るならば、シリアに平和をもたらすことができる。1年にわたる戦闘の後、西側メディアの押しつける偽情報が描く情景は地上の真実と全く違っている。」と語っている。また、現地で宗教活動を続けてきたキリスト教の聖職者、マザー・アグネス・マリアムも外国からの干渉が事態を悪化させていると批判していた。その後もシリアで戦闘が続き、侵略軍が優勢になる理由のひとつは、西側の有力メディアが真実を語らなかったことにあると言えるだろう。2012年にはアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)が反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心に編成された戦闘集団だと指摘する報告書をホワイトハウスに提出している。報告書の中で、東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告されている。この警告は2014年、ダーイッシュという形で現実になった。ダーイッシュの出現を口実にしてアメリカは2014年9月に連合軍を組織、アサド体制の打倒を目指す。連合軍に参加したのはサウジアラビア、カタール、バーレーン、アラブ首長国連合のペルシャ湾岸産油国、ヨルダン、トルコ、さらにイギリス、オーストラリア、オランダ、デンマーク、ベルギー、フランス、ドイツなど。この連合軍は2014年9月23日に攻撃を始めるが、その様子を取材したCNNのアーワ・デイモンは翌朝、最初の攻撃で破壊されたビルはその15から20日前から蛻の殻だったと伝えている。その後、アル・ヌスラやダーイッシュはシリアで勢力を拡大していくが、その理由は連合軍が本気で攻撃していなかったからだ。主なターゲットはシリアのインフラや市民だったようである。その後、アル・カイダ系武装集団やダーイッシュは支配地を拡大していく。そうした流れを変えたのが2015年9月30日に始まったロシア軍の空爆。アメリカ主導軍と違い、ロシア軍はシリア政府の要請に基づいての軍事介入だった。そして戦況は一変、侵略軍は押され始め、今では崩壊寸前になっている。そこでアメリカは地上軍を軍事侵攻させざるをえなくなった。イスラエルはモサド(対外情報機関)の長官、アマン(軍の情報機関)の長官、国防省の高官をワシントンへ派遣、国家安全保障担当補佐官のH・R・マクマスター、副補佐官のダイナ・パウエル、そしてジェイソン・グリーブラットと会談するというが、「ダーイッシュ後」のシリアについても話し合うだろう。
2017.08.19
ジョン・マケイン上院議員が8月12日に発表した声明の中で「白人至上主義者やネオ・ナチは明らかにアメリカの愛国主義や理想に反している」と主張している。バージニア州シャーロッツビルの公園に設置されているロバート・エドワード・リー将軍の像を撤去するという市の方針に抗議する人々と抗議に反発した人びとが衝突、反抗議派の集団に「極右」の人物が自動車で突入、死傷者がでる事態になったことを受けての声明だ。本ブログでは何度も書いてきたが、マケインはシリアへは2013年4月に違法入国し、体制転覆を目指す人々と会談しているのだが、その中には後にダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を率いることになるアブ・バクル・アル・バグダディ、あるいはアル・ヌスラ(アル・カイダ系)のモハンマド・ノールも含まれていた。2013年12月にはウクライナでクーデターを扇動、その際にネオ・ナチの幹部と会っている。2014年に入るとダーイッシュが活動を本格化させ、まず1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはモスルを制圧した。ダーイッシュの名が知られるようになったひとつの要因は、モスル制圧の際に行われたトヨタ製小型トラック「ハイラックス」を連ねての走行。こうした示威行動をアメリカの軍や情報機関は黙認していた。バラク・オバマ政権の政策はこうした事態を招くと2012年の段階で警告していたのが軍の情報機関DIA(国防情報局)。反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団だと指摘、オバマ政権が宣伝していた「穏健派」は存在しないとする報告書をホワイトハウスへ提出しているのだ。その報告書の中で、東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告されている。この時のDIA局長がマイケル・フリン中将で、ダーイッシュ売り出しの直後、2014年8月に退役させられている。
2017.08.18
アメリカは朝鮮のミサイル開発を口実にして中国に対する圧力を強め、経済戦争へ向かいつつあるのだが、本ブログでも紹介したように、朝鮮はミサイルのエンジンをウクライナの会社から手に入れているとする報道がある。ウクライナ(キエフ政権)のステパン・ポルトラク国防大臣や国家安全保障国防会議のオレクサンドル・トゥルチノフ議長は報道を否定しているが、非合法のルートで売却された可能性はある。好戦派の宣伝媒体として偽情報を流し、ロシアとの軍事的な緊張を高めてきたニューヨーク・タイムズ紙の記事をロシアの陰謀だと主張するトゥルチノフはネオコンの手先として2014年2月23日にクーデターを成功させたひとり。クーデター政権は5月2日にオデッサでクーデターに抗議する住民をネオ・ナチのグループに虐殺させた。その直前に開かれたオデッサ工作に関する会議にトゥルチノフも出席している。ネオ・ナチを雇っている富豪のひとりで、ウクライナのほかキプロスとイスラエルの国籍を持つイゴール・コロモイスキーも会議にオブザーバーとして出席していた。トゥルチノフはこの人物をドニエプロペトロフスク(現在はドニプロ)の知事に任命した。朝鮮へエンジンを売却した疑いが持たれている会社はこのドニプロにある。本ブログでも何度か書いたが、1980年代にイスラエルはアメリカの注文で、朝鮮からイラン向けのカチューシャ・ロケット弾を仕入れている。つまり、遅くともこの時からイスラエルと朝鮮とはつながりがある。今回もイスラエルの工作員数名が介在したという噂も流れている。朝鮮半島で軍事的な緊張を高めようとするアメリカ政府の政策に韓国政府は反発しているが、戦争になった場合の惨状を考えれば当然だろう。そうしたことに鈍感な日本が異常なのである。安倍晋三政権は中国を包囲、圧力を加えるというアメリカの戦略に協力している。インドはアジア-アフリカ成長回廊(AAGC)構想文書を公表したが、これは日本との共同プロジェクトで、中国が進める一帯一路に対抗することが目的。インドはパキスタンと同様、6月9日にSCO(上海協力機構/上海合作組織)のメンバーになっているが、中国やロシアと手を組む意思はないようだ。ジャーナリストのウィリアム・イングダールによると、ヒマラヤで中国とインドとの戦争があるだろうとトランプ陣営の上級情報顧問が昨年11月、ドナルド・トランプが大統領選挙で勝利した直後に話していたとインド軍の内情に詳しい人物から知らされたという。インドのナレンダ・モディ首相は今年2月末、国家安全保障顧問のアジット・ドバルをイスラエルに派遣、5月14日にインド政府は中国が開催した一帯一路に関する会議への参加を拒否すると発表、6月27日にモディはアメリカでトランプ大統領と会い、7月7日にはイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談している。その間、6月初旬にインド軍はドラクム高地で境界を越えて中国領へ入ったという。その後、パンゴン湖でインドと中国のパトロール・ボートが衝突するなど両国の緊張は続いている。朝鮮半島よりヒマラヤで戦争が勃発する可能性が高いかもしれない。
2017.08.17
シリアではアメリカ軍とクルド軍がユーフラテス川の北を、シリア政府軍が南を押さえる流れになっている。北部に侵攻していたアメリカ軍は大規模な基地を建設、シリアを分割する意思が鮮明だ。その境界線上にあるデリゾールでもアメリカ、サウジアラビア、イスラエルを中心とする勢力が侵略の手先として使ってきたサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を中心とする戦闘集団、つまりアル・カイダ系やそこから派生した(タグを変えた)ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)は劣勢。中東での報道によると、アメリカ軍はデリゾールで戦うダーイッシュの幹部をヘリコプターで救出する一方、逃亡を図った傭兵が処刑されていると伝えられている。侵略勢力はシリアのバシャール・アル・アサド政権の打倒をあきらめ、ターゲットを東/東南アジア、特に中国へ切り替えた。
2017.08.17
ロシア軍の支援を受け、シリア政府軍の支配地域がここ2カ月の間に3.5倍に拡大したという。アメリカ、サウジアラビア、イスラエルの3国同盟を中心とする侵略勢力の手先、アル・カイダ系武装勢力やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)が敗走している。5月28日にロシア軍はダーイッシュの幹部がラッカの近くに集まるという情報を得て空爆、その際にこの武装集団を率いていたアブ・バクル・アル・バグダディを含む約30名の幹部が殺された可能性が高く、内部崩壊しているように見える。また、3国同盟に協力していたトルコやカタールは侵略軍から離脱、バシャール・アル・アサド大統領を排除するという侵略側の目論見は崩れた。そこで、アメリカ政府はクルド勢力を使ってユーフラテス川より北の地域を占領、その状態を維持するために自国軍の軍事基地を建設中だ。調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュは2007年3月5日付けニューヨーカー誌で、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアがシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラに対する秘密工作を開始した書いている。その記事の中でジョンズホプキンス大学高等国際関係大学院のディーンで外交問題評議会の終身メンバーでもあるバリ・ナスルはサウジアラビアが「ムスリム同胞団やサラフ主義者と深い関係がある」と指摘、その「イスラム過激派」が手先だとしている。ハーシュの記事が出る前年、2006年7月から8月にかけてイスラエルはレバノンに軍事侵攻、ヒズボラと戦っているが、その際、イスラエル海軍のコルベット艦がヒズボラの対艦ミサイルで損傷を受けたるなど予想外の苦戦。イスラエルにとってヒズボラはシリアやイランと同じように目障りな存在になった。イスラエルと緊密な関係にあるネオコンは遅くとも1991年の段階でイラク、シリア、イランを殲滅するとつもりだった。欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)で最高司令官を務めたウェズリー・クラークによると、国防次官だったネオコンのポール・ウォルフォウィッツはその年、イラク、シリア、イランを殲滅すると口にしているのだ。そのうちイラクは2003年に侵略し、殺戮、破壊、略奪を繰り広げている。そして2011年春、アメリカ/NATOなどはリビアとシリアに対する侵略を本格化させた。リビアが狙われた大きな理由はムアンマル・アル・カダフィがアフリカを自立させようとしたからだと見られているが、シリアはネオコンの予定通り。ネオコン/イスラエルの戦略を知っているヒズボラはシリアへの侵略戦争でシリア政府軍側について戦ってきたが、その間に戦闘能力を高めている。ヒズボラが使っている対戦車兵器のRPG-29、AT-14コルネット、メティスMでイスラエルの最新戦車、メルカバ4は破壊されたことは象徴的だ。中東におけるアメリカやイスラエルの軍事的優位が揺らいでいる。
2017.08.16
ドナルド・トランプ政権は中国に対する経済戦争を正当化するひとつの理由として朝鮮のミサイル発射実験を挙げている。アメリカと朝鮮との間での非難合戦がヒートアップする引き金になる基地を掲載したのは、8月8日にワシントン・ポスト紙が掲載した記事。その1週間前にレックス・ティラーソン国務長官は朝鮮の体制転覆の推進は考えていないと発言しているが、そうした軍事的な緊張を緩和させようとする動きはダメージを受けた。ワシントン・ポスト紙の記事はミサイルに搭載できる小型化された核弾頭を開発したとする内容で、それを受けてトランプ大統領は世界が見たことのないような炎と猛威を目にすることになると朝鮮を恫喝、朝鮮はグアム攻撃に言及、ジェームズ・マティス国防長官は朝鮮との戦いは大半の人の人生の中で最悪の種類のものになるだろうと脅した。マイク・ポンペオCIA長官は差し迫った危機の存在を否定しているが、軍事的な緊張を高めようとする力は強い。そうした中、ニューヨーク・タイムズ紙は興味深い情報を伝えている。朝鮮はミサイルのエンジンをウクライナから入手している疑いがあるというのだ。この新聞はワシントン・ポスト紙と同じように偽情報の発信源で信頼度は低いのだが、これまでの情報と照らし合わせるとありえない話ではない。日本の場合、ロケット(ミサイル)開発はアメリカの支援を受けていた。1977年に通信衛星を打ち上げ、静止軌道に乗せているが、この打ち上げで使ったN-Iもアメリカの援助で実現したものだ。アメリカの支援を受けても日本のロケットには正確さで問題があったが、それを解決したのはソ連/ロシアの技術。ソ連が消滅して混乱する中、ロシアのミサイルSS-20(RSD-10)の設計図とミサイルの第3段目の部品を日本は入手、ミサイルに搭載された複数の弾頭を別々の位置に誘導する技術を学んだと言われている。ところで、ウクライナは2014年2月23日、アメリカ/NATOを後ろ盾とするネオ・ナチが主力の勢力がクーデターを成功させ、ビクトル・ヤヌコビッチ大統領は排除された。勿論、憲法の規定に反している。ネオ・ナチの戦闘員をイスラエル系の富豪が雇っていたことも知られている。最近はアメリカ軍がウクライナに恒久的な基地を建設するという情報も伝わっている。キエフのクーデター政権はネオ・ナチに支えられ、その政権には西側から携帯型の対戦車擲弾発射器であるPSRL-1などの武器が供給されている。3月にカーチス・スカパロッティ米欧州軍司令官も殺人兵器を渡すことを考えるべきだと語り、7月18日にポール・セルバ統合参謀本部副議長はウクライナのキエフ政権へ武器/兵器を供給するかどうかを決める必要があると語っているが、すでにそうした兵器を裏で供給されていた。クーデター政権が誕生した際、首相に選ばれたたアルセニー・ヤツェニュクはネオコンでヒラリー・クリントンと親しいビクトリア・ヌランド国務次官補(当時)から遅くとも2月上旬の段階で「次期政権」を率いる人物とされていた。クーデター後、金融大臣にはシカゴ生まれでアメリカの外交官だったナタリー・ヤレスコ、経済大臣にはリトアニアの投資銀行家だったアイバラス・アブロマビチュス、保健相にはジョージア(グルジア)で労働社会保護相を務めたことのあるアレキサンドル・クビタシビリが就任した。またジョージア大統領だったのミヘイル・サーカシビリが大統領顧問やオデッサの知事になっている。このサーカシビリは2003年の「バラ革命」で実権を握ったのだが、その背後にはグルジア駐在アメリカ大使だったリチャード・マイルズがいた。ベルグラード駐在大使としてユーゴスラビアのスロボダン・ミロシェビッチを倒した後、2003年にジョージアへ移動した人物で、体制転覆の仕掛け人と見られている。ジョージアはウクライナと同じようにイスラエルとの関係が深い。例えば、2001年からガル・ヒルシュ准将が経営する「防衛の盾」が予備役の将校2名と数百名の元兵士を教官としてジョージアへ送り込み、無人飛行機、暗視装置、対航空機装置、砲弾、ロケット、電子システムなども提供している。ロシア軍の副参謀長を務めていたアナトリー・ノゴビチン将軍によると、イスラエルの専門家は2007年からグルジアの特殊部隊を訓練し、重火器、電子兵器、戦車などを供給する計画を立てていたという。また、ロシア軍の情報機関GRUのアレキサンダー・シュリャクトゥロフ長官は、イスラエルのほか、NATOの「新メンバー」やウクライナも兵器を提供していると主張していた。新しくNATOのメンバーになった東ヨーロッパの国々は小火器を、イスラエルは無人機を、ウクライナは重火器や対空システムをジョージアへ渡しているという。サーカシビリ政権とイスラエルの関係は閣僚を見てもわかる。イスラエル系の閣僚がふたりいたのだ。ひとりは国防相だったダビト・ケゼラシビリ、もうひとりは南オセチア問題で交渉を担当していた大臣のテムル・ヤコバシビリだ。ふたりはヘブライ語を流暢に話せるという。2008年1月にはサーカシビリが大統領に再選されるが、その年の8月にジョージア軍は南オセチアを奇襲攻撃した。まず南オセチアの分離独立派に対して対話を訴え、その約8時間後に攻撃を始めたのである。イスラエルのアドバイスを受け、十分に準備して望んだ作戦だったはずだが、この攻撃はロシア軍が素早く反撃、ジョージア軍は惨敗した。ロシア軍を過小評価していたということである。アメリカ/NATO軍はバイオ研究所をウクライナ、ジョージア、カザフスタンなどロシア周辺で建設していることもロシア政府は懸念している。生物兵器の研究、開発、生産、散布の拠点になっている可能性があるからだ。ジョージアと同じように、ウクライナはアメリカやイスラエルの強い影響下にある。そのウクライナから朝鮮がエンジンを入手しているとする情報が事実だとするならば、朝鮮をめぐる動きのシナリオはアメリカやイスラエルが書いている可能性がある。ちなみに朝鮮とイスラエルには1980年代からパイプがある。1980年の大統領選挙で共和党はジミー・カーターの再選を阻止するため、イランで人質になっていたアメリカ大使館員らの解放を遅らせる工作をしていたことが明らかにされている。その工作に協力した代償としてアメリカの共和党政権はイランへ武器を密輸したのだが、そのイランからアメリカは大量のカチューシャ・ロケット弾の注文を受ける。そのロケット弾を探したのがイスラエルの情報機関。その購入先は朝鮮だった。
2017.08.15
2014年6月からダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)に制圧されていたモスルをイラク政府軍が奪還したが、その近く、ニネベ地方にアメリカ軍は大規模な軍事基地を建設していると伝えられている。現在建設中の基地のほか、さらに4基地をこの地方に作る予定だという。占領の永続化。イラクの自立を許さないための仕組み作りだと言えるだろう。イラク北部を支配しているKRG(クルディスタン地域政府)はイラクからの分離独立を目指しているが、そうした動きに合わせ、サウジアラビアもヨルダンやアラブ首長国連邦と一緒に独立を支援、その代償としてクルディスタンに自分たちの軍事基地を作らせるように求めていた。マスード・バルザニに率いられているイラクのクルドは1960年代からイスラエルの支援を受けていることで知られている。イスラエルの傀儡になった当時、クルドを率いていたのはマスードの父親、ムラー・ムスタファ・バルザニだ。その後、バルザニの勢力は一貫してイスラエルと手先としてイラクを不安定化させる活動を続けてきた。シリアのクルドは少し違うのだが、2015年9月30日にシリア政府の要請を受けたロシア軍が空爆を始めてからダーイッシュやアル・カイダ系武装勢力の支配地域は縮小、今では崩壊寸前になっている。そうした武装勢力のうち幹部はすでにアメリカ軍が救出したようだが、替わってシリア政府軍と戦い始めたのがクルド勢力。アメリカへ寝返ったようだ。現在、シリアのクルド勢力はアメリカから武器を供給され、空からの支援も受けている。このシリアにアメリカ軍は10カ所以上の軍事基地を建設済みだと言われている。ところで、モスルをダーイッシュが制圧したのは2014年6月。ファルージャで「イスラム首長国」の建国が宣言されてから5カ月後のことだった。モスル制圧の際、ダーイッシュの部隊はトヨタ製小型トラック「ハイラックス」を連ねて走行、その光景は写真に撮られて世界に発信された。パレードは勿論、ダーイッシュの動きをアメリカの軍や情報機関はスパイ衛星、偵察機、通信傍受、あるいはエージェントによる人的な情報網などで把握していたはずだが、全く動いていない。ダーイッシュの軍事作戦を傍観していたのだ。モスル制圧の2年前、2012年にアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)は反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団だと指摘、バラク・オバマ政権が宣伝していた「穏健派」は存在しないとする報告書をホワイトハウスへ提出している。その中で東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告されている。2012年の報告書が書かれた当時のDIA局長、マイケル・フリン中将はダーイッシュが売り出された直後の2014年8月に退役させられているが、その翌年の8月、アル・ジャジーラの番組へ出演、ダーイッシュが勢力を拡大できたのはバラク・オバマ政権の政策があったからだと指摘している。これは事実だ。モスルがダーイッシュに制圧される直前、2014年3月にイラク首相だったヌーリ・アル・マリキは、アメリカの同盟国であるサウジアラビアやカタールがイラクの反政府勢力へ資金を提供していると批判、ロシアへ接近する姿勢を見せていた。その翌月に行われた議会選挙では彼が党首を務める法治国家連合が第1党になり、本来なら彼が首相を続けるのだが、指名されない。アメリカ政府が介入したと見られている。首相に選ばれたのはハイデル・アル・アバディだ。マリキは副大統領を務めているが、7月23日から4日間にわたってロシアを訪問し、ウラジミル・プーチン大統領、セルゲイ・ラブロフ外相、ロシア議会のバレンティナ・マトビエンコ議長らと会談した。議長と会った際、「ロシアは歴史的にイラクと強く結びついている」とした上で、イラクにおいてロシアが政治的かつ軍事的に面で強い存在になることを望んでいると語ったと伝えられている。25日に行われたマリキとプーチンの会談ではT-90戦車について触れられたというが、イラクはロシアからそのタイプの戦車を73両、購入するとも報道された。アメリカ製の主力戦車、M1A1 エイブラムズが性能面でT-90より劣っているということもあるだろうが、ロシアとの関係強化もその目的のひとつだろう。
2017.08.14
ドナルド・トランプ米大統領は中国との経済戦争へ突入するという話が流れている。数週間前からこうした動きは指摘されていたが、アメリカでの報道(例えばココやココ)によると、週明け後の8月14日に大統領はUSTR(米通商代表部)のロバート・ライトハイザー代表に対し、通商法301条に基づいて中国の違法行為を調べるよう指示するようだ。この動きはロシアに対する「制裁」と同じで、アメリカ支配層の戦略に沿うもの。朝鮮問題はせいぜい出しにされているだけだろう。中東や北アフリカ、最近では東南アジアでサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心とする戦闘集団、つまりアル・カイダ系武装勢力やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)をターゲット国へ送り込んで戦乱へ導き、それを口実にして軍事侵略しているが、その手口と基本的に同じだ。1960年代から80年代にかけてアメリカはイタリアでグラディオ(NATOの秘密部隊)を使った爆弾攻撃など「テロ」を繰り返し、アメリカ支配層にとって好ましくない勢力にダメージを与え、治安体制を強化したが、それとも似ている。ロシアに対する経済戦争で最も大きなダメージを受けるのはEU。その目的のひとつはロシアからの天然ガス購入を止め、アメリカの高いエネルギー源を買わせることにあるとも指摘されている。アメリカのシェール・ガス/オイルは高いだけでない。生産を維持できるのは4、5年程度で、7、8年経つと8割程度下落すると言われているのだ。つまり、こうしたエネルギー源に頼ることは自殺行為だが、アメリカ自身にとってもシェール・ガス/オイルの生産は危険。この採掘方法は地下水を汚染するが、そうなると地下水に頼っているアメリカの農業は壊滅的な影響を受ける。勿論、アメリカに食糧を頼っている国にとっては深刻な事態だ。ところで、ライトハイザー代表は巨大企業を顧客にする弁護士で、特に鉄鋼産業と強く結びついていることで知られている。今年3月、このUSTR代表は中国について、「国家の支えがなければ生き残れないほどの膨大な生産能力を抱えており、とりわけ鉄鋼とアルミニウムではアメリカへのダンピングにつながった」とし、「貿易法を強化することが必要だ」と主張している。日本との関係も浅くはなく、1980年代の日米貿易摩擦では、USTR次席代表として日本に鉄鋼製品の輸出自粛を認めさせ、その後は中国との鉄鋼をめぐる争いに関わっている。しかし、中国との経済戦争はアメリカにもダメージを与える。例えば、アップルのように生産拠点を中国に置き、その中国を重要なマーケットにいている企業。大豆を扱うアグリビジネスや航空機産業にとっても厳しい状況になる。こうしたアメリカと中国との経済的なつながりから両国の関係が悪化することはないと言う人もいたが、そうしたことを無視してロシアや中国を威圧、核戦争も辞さない姿勢を見せてきたのがネオコンを含むアメリカの好戦派だ。その好戦派の意向に沿う形でバラク・オバマも動き、ヒラリー・クリントンの支持母体もそうした勢力。そして、その宣伝機関が有力メディアにほかならない。その勢力にトランプは大統領に就任して間もない頃から引きずられている。
2017.08.13
日本航空123便が群馬県南西部の山岳地帯、「御巣鷹の尾根」に墜落したのは今から32年前、つまり1985年の8月12日のことだった。羽田空港を離陸して伊丹空港へ向かっていたこの旅客機には乗員乗客524名が搭乗、そのうち520名が死亡している。この墜落に関して運輸省航空事故調査委員会が出した報告書によると、「ボーイング社の修理ミスで隔壁が破壊された」ことが原因だとされている。隔壁が破壊されたなら急減圧があったはずだが、異常が発生してから約9分後でも123便の機長は酸素マスクをつけていないが、それでも手の痙攣や意識障害はなかった可能性が高い。その当時に出されていた運輸省航空局(現在は国土交通省航空局と気象庁)監修のAIM-JAPAMによると、2万フィートでは5から12分間で修正操作と回避操作を行う能力が失われ、間もなく失神してしまうとされているが、そうしたことは起こっていない。つまり、急減圧はなかった可能性が高い。調査で急減圧実験を担当した自衛隊の航空医学実験隊に所属していた小原甲一郎は、急減圧があっても「人間に対して直ちに嫌悪感や苦痛を与えるものではない」と主張しているが、全く説得力はない。戯言だ。この墜落から10年後の1995年8月、アメリカ軍の準機関紙である「星条旗」は日本航空123便に関する記事を掲載した。墜落の直後に現場を特定して横田基地へ報告したC-130の乗組員、マイケル・アントヌッチの証言に基づいている。大島上空を飛行中にJAL123の以上に気づいたC-130のクルーは横田基地の管制から許可を受けた上で日航機に接近を図り、墜落地点を19時20分に特定、報告している。運輸省に捜索本部が設置されたのはそれから25分後の19時45分であり、捜索を始めた時点で日本政府は日航機の墜落現場を正確に把握していたはずだ。C-130からの報告を受け、厚木基地から海兵隊の救援チームのUH-1ヘリコプター(ヒューイ)が現地に向かい、20時50分には現地へ到着、隊員を地上に降ろそうとしたのだが、このときに基地から全員がすぐに引き上げるように命令されたという。日本の救援機が現地に急行しているので大丈夫だということだった。21時20分に航空機が現れたことを確認、日本の救援部隊が到着したと判断してC-130はその場を離れるのだが、日本の捜索隊が実際に墜落現場に到着したのは翌日の8時半。10時間以上の間、自衛隊は何をしていたのだろうか。アメリカ軍の内部では、この墜落に関する話をしないように箝口令が敷かれたというのだが、墜落から10年後にアメリカ軍の準機関紙はその話を掲載した。軍の上層部が許可したのだろうが、箝口令を解除させる何らかの事情が生じた可能性がある。墜落から10年だからということではないだろう。1992年2月にアメリカ支配層は国防総省のDPG草案という形で世界制覇プロジェクトを作成している。1991年12月にはソ連が消滅するとネオコンたちはアメリカが「唯一の超大国」になったと思い込み、潜在的ライバルを潰して「パクスアメリカーナ」を実現しようとしたのだ。この草案は国防次官だったポール・ウォルフォウィッツを中心に作成されたことからウォルフォウィッツ・ドクトリンとも呼ばれている。ウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官によると、ウォルフォウィッツは1991年の段階でイラク、シリア、イランを殲滅すると口にしていた。(3月、10月)このドクトリンを実行するのはアメリカの戦争マシーン。当然、日本もこのマシーンに組み込まれる。1994年8月に細川護煕政権の諮問機関「防衛問題懇談会」は「日本の安全保障と防衛力のあり方(樋口レポート)」を作成するが、これはネオコンの意図するものとは違っていた。そこで1995年2月にジョセフ・ナイ国防次官補は「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を公表する。星条旗紙がJAL123に関する記事を掲載したのはその半年後のことだった。その後、1996年4月に橋本龍太郎首相はビル・クリントン大統領と会談、「日米安保共同宣言」が出されて安保の目的は「極東における国際の平和及び安全」から「アジア太平洋地域の平和と安全」に拡大する。1997年の「日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」で「日本周辺地域における事態」で補給、輸送、警備、あるいは民間空港や港湾の米軍使用などを日本は担うことになり、1999年には「周辺事態法」が成立する。2000年にナイとリチャード・L・アーミテージ元国防副長官を中心とするグループは「米国と日本-成熟したパートナーシップに向けて(通称、アーミテージ報告)」を作成・・・というように日本はアメリカの戦争マシーンに引きずり込まれていく。そして2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンのペンタゴンが攻撃され、アメリカは侵略戦争を本格化させる。それと並行する形でジョージ・W・ブッシュ政権は「国防政策の見直し」によってアメリカ軍と自衛隊との連携強化を打ち出し、キャンプ座間にアメリカ陸軍の第1軍団司令部を移転、陸上自衛隊の中央即応集団司令部と併置させ、横田基地には在日米空軍司令部と航空自衛隊総隊司令部を併置させることになった。2002年4月には小泉純一郎政権が「武力攻撃事態法案」を国会に提出、03年にはイラク特別措置法案が国会に提出され、04年にアーミテージは自民党の中川秀直らに対して「憲法9条は日米同盟関係の妨げの一つになっている」と言明、05年には「日米同盟:未来のための変革と再編」が署名されて軍事同盟の対象は世界へ拡大、安保条約で言及されていた「国際連合憲章の目的及び原則に対する信念」は放棄された。2012年にもアーミテージとナイが「日米同盟:アジア安定の定着」を発表している。アジア安定とはアジア全域を屈服させてアメリカに従わせるということであり、その戦略に日本は協力するということにほかならない。軍事力を使った脅しで屈服させるだけでなく、場合によっては侵略戦争を実行するだろう。バラク・オバマ政権は侵略のためにアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を傭兵として使ったが、東南アジアでもそうした動きがある。中東、北アフリカ、ウクライナで行ったような侵略をアメリカは東/東南アジアでも実行、アメリカ軍や自衛隊が直接、戦争を始めることもありえる。橋本政権から安倍晋三政権に至るまで、その準備が進められてきた。
2017.08.12
東芝の会計処理が問題になっている。2009年3月期から14年第1~3四半期までの約7年間に1518億円という利益の水増しをしていたことが発覚、田中久雄社長、佐々木則夫副会長、西田厚聡相談役の歴代3社長が2015年7月21日付けで辞任しているが、その後始末ができないでいるわけだ。不正会計を始める2年前、東芝はイギリスの核関連会社でMOXを製造していたBNFLからウェスチングハウスを54億ドルで買収している。BNFLは1971年に創設されているが、その前、1960年代にイギリスは核兵器用のプルトニウムをイスラエルへ秘密裏に供給していた。東芝を破綻させた原因が原子力分野にあることを指摘する人は少なくない。日本の原子力政策の根っこに核兵器開発願望があることは本ブログでも指摘してきた。東芝のケースも、核兵器開発が重要なファクターだ。こうした日本の願望にとってロナルド・レーガン政権の核政策は大きな意味を持つことになる。レーガン政権は新型核弾頭の設計や、増殖炉の推進に力を入れ、テネシー州のクリンチ・リバー渓谷にあるエネルギー省のオークリッジ国立研究所の実験施設では増殖炉を組み立てていた。増殖炉は発電をしながら、従来の使用済み核燃料を純粋なプルトニウムに転換するとされ、エネルギー省は多額の資金をこの分野に投入したが、1980年代の半ばになると議会は増殖炉計画の予算を打ち切ってしまった。計画を成功させることは困難だと判断したわけだ。アメリカの経済的な苦境も影響しただろう。東芝の問題でも登場するウェスティングハウスは1984年、100億ドルにのぼる原子炉を中国に供給する契約を結んだが、その直後に日本が登場してくる。エネルギー省の一部や増殖炉派はクリンチ・リバーで開発された技術を日本の電力会社へ格安の値段で移転する契約が持ち上がったのだ。レーガン政権が増殖炉の開発を進めていた時期から日本の科学者たちが大挙してクリンチ・リバーの施設を訪れていたという。アメリカの増殖炉計画に必要な資金を日本の電力会社が賄うようになると、日本側は核兵器開発に必要な技術を求めるようになるが、そのリストのトップにはプルトニウム分離装置があった。その装置が送られた先は、東海再処理工場のRETF(リサイクル機器試験施設)。プルトニウムを分離/抽出する目的で建設されたこの施設は日本における増殖炉計画の中心的存在だ。東海再処理工場は1977年に試運転を始めているが、78年6月に開かれた「科学技術振興対策特別委員会」でこの施設について、山川暁夫は「核兵器への転化の可能性の問題が当然出てまいるわけであります」と発言、アメリカ政府はそこを見過ごさないと指摘した。1969年にアメリカ大統領となったリチャード・ニクソン大統領の補佐官、ヘンリー・キッシンジャーは彼のスタッフに対し、日本もイスラエルと同じように核武装をすべきだと語ったという(Seymour M. Hersh, “The Samson Option,” Random House, 1991)が、ジミー・カーター政権は日本の核開発には神経質になっていた。カーター大統領だけが日本の核開発を注目していたわけではない。CIAは日本が核兵器の開発をしていると確信、日本に監視システムを設置している可能性が高い。そうしたことからレーガン政権では増殖炉の問題でCIAは排除されたのだ。日本の施設でも核兵器クラスのプルトニウムを製造できるが、イギリスやフランスで処理され、日本へ引き渡されるプルトニウムも核兵器クラスで、1980年から2011年3月にかけての期間、日本で蓄積された同クラスのプルトニウムは70トンに達するとジャーナリストのジョセフ・トレントは主張している。しかし、1995年に高速増殖炉「もんじゅ」が、また97年4月に東海村再処理工場で大きな事故が起こる。「もんじゅ」では2次冷却系のパイプが破裂、そこから2〜3トンと推定される放射性ナトリウムが漏出、当然のことながら火災が発生して運転を休止した。その際に動力炉・核燃料開発事業団(動燃)は事故原因が写ったビデオ映像を隠そうとしている。2010年には原子炉容器内に筒型の炉内中継装置(重さ3.3トン)が落下するという事故も引き起こした。2011年3月11日に東電福島第1原発が過酷事故を起こり、大量の放射性物質を環境中に放出した。その総量はチェルノブイリ原発事故の1割程度、あるいは約17%だとする話が流されたが、算出の前提条件に問題があり、元原発技術者のアーニー・ガンダーセンは少なくともチェルノブイリ原発事故で漏洩した量の2〜5倍の放射性物質を福島第一原発は放出したと推測している。(アーニー・ガンダーセン著『福島第一原発』集英社新書)放出量を算出する際、漏れた放射性物質は圧力抑制室(トーラス)の水で99%を除去できるとされていたようだが、実際はメルトダウンで格納容器の圧力は急上昇、気体と固体の混合物は爆発的なスピードでトーラスへ噴出したはず。トーラス内の水は吹き飛ばされ、放射性物質を除去できなかっただろう。また、燃料棒を溶かすほどの高温になっていたわけで、当然のことながら水は沸騰していたはずで、やはり放射性物質を除去できなかったと考えねばならない。そもそも格納容器も破壊されていたようで、環境中へダイレクトに放射性物質は出ていたはず。ガンダーセンが示した放出量の推定値は控えめだと言わざるをえない。チェルノブイリ原発の放出推定量が正しいとして、その10倍以上だった可能性がある。福島第1原発事故の3日前、3月8日にイギリスのインデペンデント紙は石原慎太郎都知事(当時)のインタビュー記事を掲載した。その中で彼は核兵器を作るべきだとおだをあげ、1年以内に核兵器を保有できると語っている。石原によると、核兵器を持てば、中国、朝鮮、ロシアを恫喝でき、全世界に対して「強いメッセージ」を送ることになる。彼が考える「理屈」によると、外交の交渉力とは核兵器なのであり、核兵器を日本が持っていれば中国は尖閣諸島に手を出さないと語っている。「脅せば屈する」という発想はネオコンのそれと同じだ。福島第1原発で大事故を引き起こした電力会社を日本やアメリカの支配層は守り、そのツケを庶民に回した。東電の内部にメスが入ったなら、核兵器開発の闇が暴かれる可能性があり、そうした事態は避けたかったのだろう。それだけでなく、原発は巨万の富を原発関係者にもたらしてきた。原発で被曝しながら働かされる労働者の写真を撮り続けた樋口健二はローリングストーン誌の日本語版で次のように語っている。「原発には政治屋、官僚、財界、学者、大マスコミが関わってる。それに司法と、人出し業の暴力団も絡んでるんだよ。電力会社は、原発をできればやめたいのよ。危ないし、文句ばっかり言われるし。でもなぜやめられないかといえば、原発を造ってる財閥にとって金のなる木だから。」「東芝はウェスティングハウスを買収、日立はGE、三菱はアレバとくっついて、『国際的に原発をやる』システムを作っちゃったんだ。電力会社からの元請けを三井、三菱、日立、住友と財閥系がやってて、その下には下請け、孫請け、ひ孫請け、人出し業。さらに人出し業が農民、漁民、被差別部落民、元炭坑労働者を含む労働者たちを抱えてる」「原発労働は差別だからね。」
2017.08.11
アメリカ政府は朝鮮のミサイル実験を口実にして東アジアの軍事的な緊張を高めようとしている。シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒し、傀儡体制を樹立するという目論見は失敗、ウクライナでも何か目論んでいる可能性があるが、東/東南アジアでは動きが具体的になっている。リビアと同じように、シリアでもアメリカはサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を主力とする傭兵部隊を地上軍として使い、アメリカ/NATOの航空機で支援すると戦術を使おうとしたが、ロシア軍がシリア政府の要請で介入したことから計画は失敗、「転進」を図っている。フィリピン、インドネシア、マレーシア、タイなどでサラフィ主義者が活発に動き始め、ミャンマーは米英の傀儡、アウン・サン・スー・チーが君臨し、ロヒンギャと呼ばれるイスラム教徒を弾圧、そうした状況を利用してロヒンギャの中へサラフィ主義者が潜り込み始めていると言われている。勿論、中国の新疆ウイグル自治区にもシリアなどで戦闘の経験を積んだサラフィ主義者が戻っている可能性も高い。フィリピンでは5月23日にミンダナオ島のマラウィ市でマウテ・グループやアブ・サヤフ、つまりダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)とつながる武装集団が制圧、市民を人質に立てこもっている。ミンダナオ島でダーイッシュ系の集団が活動していることをアメリカ軍は知っていたが、何もしてこなかった。そのフィリピンでCIAとフィリピン軍はコミュニスト党の指導者、ホセ・マリア・シソンを暗殺し、ロドリゴ・ドゥテルテ政権を倒そうとしていると民族民主戦線(毛沢東主義)は主張している。アメリカ軍の動きが胡散臭いことは事実だ。例えば、マラウィ市が制圧された後、アメリカ軍は特殊部隊を派遣、フィリピン政府から要請に基づいてその作戦にアドバイするとアメリカ大使館は説明しているのだが、ドゥテルテ大統領はアメリカ側に支援を頼んでいないとしていた。ドゥテルテは朝鮮のミサイル発射実験を批判しているが、その実験がどのような状況を生み出すかを考えれば、当然だろう。朝鮮のICBM(大陸間弾道ミサイル)発射実験をアメリカや日本では宣伝している。まず7月4日、中国の習近平国家主席とロシアのウラジミル・プーチン大統領はモスクワで会談していたときに朝鮮はICBMの発射実験に成功したと発表したが、アメリカ太平洋軍やロシア軍は発射直後、中距離弾道ミサイルだとしていた。日本の稲田朋美防衛相も5月14日に発射したのと同じ中距離弾かその派生型だと語り、聯合ニュースによると、韓国の国家情報院もICBMではないと判断しているようだ。そして7月29日、朝鮮中央通信はICBMの発射実験に成功したと伝えた。発射されたのは28日の深夜。「火星14」の改良型で、998キロメートル飛行、最高高度は3724.9キロメートルに到達、アメリカ本土の全域が射程に入ったと主張されている。が、アメリカのミサイル専門家、マイケル・エルマンによると、映像からミサイルの本体は再突入の後、高度4〜5キロメートルで分解しているように見え、まだ再突入の技術を獲得できていない。この2回のミサイル発射がICBMの実験だったとするならば、両方とも失敗だったと言えるだろう。ロシアや中国と核戦争しようとしているアメリカの好戦派だが、朝鮮の失敗したICBMの実験には騒いで見せている。H. R. マクマスター国家安全保障補佐官は8月5日に「予防的戦争」、つまり先制攻撃を含むオプションがあると口にし、ドナルド・トランプ大統領は8日、世界が見たことのないような火と猛威を目にすることになると脅した。その8日には自衛隊のF-2戦闘機2機がアメリカのB-1爆撃機2機と演習のために九州の周辺を一緒に飛行したという。なお、マクマスターはネオコンのデビッド・ペトレイアスの子分、つまりヒラリー・クリントンに近い。こうした脅しを受けた挑戦はグアム攻撃の可能性に言及したが、それ以上に注目すべきことは中国の艦隊演習。黄海で演習を繰り返し、バルト海ではロシアと合同艦隊演習を行っている。中国もアメリカが狙っている相手が自分たちやロシアだということを承知しているだろう。
2017.08.10
イラク政府軍と連携している義勇軍のサイード・アル・シュハダは8月7日、基地をアメリカ軍に攻撃に攻撃されて数十名が殺されたと発表、調査を要求している。この武装勢力は昨年11月にイラク議会から正式に法的な地位が認められて人民動員軍(PMU、PMFとも表記)に所属、その司令官は今回の攻撃を意図的なものだとしている。アメリカに批判的なイラクのヌーリ・アル・マリキ副大統領もアメリカ軍を非難、調査を求めている。これまでアメリカ軍はイラクやシリアの政府軍を「誤爆」する一方、侵略軍のアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)に対して物資を「誤投下」してきた。例えば、昨年9月17日にシリア政府軍をデリゾールでアメリカ主導軍がF-16戦闘機2機とA-10対地攻撃機2機で攻撃、80名以上の政府軍兵士を殺害している。その7分後にダーイッシュの部隊が地上でシリア政府軍に対する攻撃を開始していることから、両者は連携していたと見られている。その後、28日には2つの橋を、30日にも別の橋2つをそれぞれ爆撃して破壊し、シリア政府軍がユーフラテス川の北へ進撃するのを止めようとしたとも見られている。また、5月18日にアメリカ主導軍の航空機がヨルダン領内からシリア領空へ侵入、シリア南部のアル・タンフ近くで政府軍を攻撃、T-62戦車2輌を破壊、6名の兵士を殺害、何人かを負傷させたが、6月6日と8日にもシリア政府側の部隊を空爆した。今回、アメリカ軍に攻撃されたイラクの義勇軍はシリアでもサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心とする戦闘集団、つまりアル・カイダ系武装勢力やダーイッシュと戦っている。こうした部隊がイラク、シリア、イランの結びつきを強めていると言えるだろう。シリア侵略を始めたのはアメリカ、サウジアラビア、イスラエルの3国同盟のほか、イギリス、フランス、トルコのNATO加盟国、そしてカタールなどだが、このうちトルコとカタールはすでに離脱している。
2017.08.09
ビクトル・ヤヌコビッチ大統領が2014年2月22日にクーデターで排除されてからウクライナの状況は悪化の一途をたどり、今では破綻国家だ。そのクーデターの主力だったグループはアメリカ/NATOを後ろ盾とするネオ・ナチ。このグループは今でも大きな影響力を持っているが、そうしたネオ・ナチ系の部隊を含むクーデター軍へ武器/兵器が西側から供給されているが、そのひとつが携帯型の対戦車擲弾発射器、PSRL-1。これはAirtronic-USAがロシアの開発したRPG-7を改良したもので、性能は大幅に向上している。7月18日にアメリカのポール・セルバ統合参謀本部副議長はウクライナのキエフ政権へ武器/兵器を供給するかどうかを決める必要があると語り、3月にはカーチス・スカパロッティ米欧州軍司令官も殺人兵器を渡すことを考えるべきだと語っているが、すでにそうした兵器を裏で供給しているということだ。クーデターの黒幕はネオコンをはじめとするアメリカの好戦派。現場で指揮していたグループにはジョン・マケイン上院議員も動いていたが、中心的な役割を果たしたのは国務次官補だったビクトリア・ヌランド。この人物はヒラリー・クリントンと親しく、ケイガン家の一員でもある。ネオ・ナチが暴力をエスカレートする中、ジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使と電話で次期政権(クーデター後)の人事について話し合っている音声が2014年2月上旬、インターネット上で公開された。このクーデターでロシアとEUとの関係を壊すことに成功したが、完全ではない。まだ天然ガスの取り引きは続き、新たなパイプラインの建設も進んでいる。アメリカ議会が圧倒的多数で可決し、ドナルド・トランプ大統領が署名したロシアへの「制裁法」はこのパイプライン計画もターゲットにしている。アメリカのマイク・ペンス副大統領はジョージア(グルジア)のNATO加盟にも前向きで、ロシアに対する戦争の恫喝を強めている。このクーデターに東部や南部の住民は反発、クリミアではいち早くウクライナからの離脱を決めた。オデッサではそうした人々がネオ・ナチに虐殺されたが、東部のドンバス(ドネツクやルガンスク)では戦いが続き、ドネツクを率いているアレクサンドル・ザハルチェンコは独立を宣言、クーデター政権の攻撃に備えている。
2017.08.08
広島が原子爆弾で破壊されたのは72年前の8月6日のことだった。64キログラムのウラニウム235を使った原子爆弾「リトル・ボーイ」をアメリカ軍の爆撃機が投下、兵士2万人以上のほか、市民7万人から14万6000人が殺された。合計すると9万人から16万6000人に達する。勿論、その後も環境中に放出された放射性物質によって人間を含む生物が殺され続けてきた。8月9日には長崎にも原爆が投下されている。広島と長崎のほか、日本の大都市は焼夷弾で焼かれた。破壊された都市のひとつが東京。1945年3月9日から10日にかけて約300機と言われるB29爆撃機が深川、城東、浅草などを中心に空爆した。その際、そうした地域の周囲に焼夷弾を落として火の壁をつくって逃げ道を奪い、それから攻撃している。10万人、あるいはそれ以上とも言われる住民が殺された。こうした住民逆去るを目的にした空爆を指揮した人物がアメリカ空軍のカーチス・ルメイ少将(当時)。アメリカが負けたなら、確実に戦争犯罪人として裁かれたと言われている人物だ。この軍人による非武装の住民虐殺は第2次世界大戦の後も続く。1948年にSAC(戦略空軍総司令部)の司令官に就任したルメイは1950年に勃発した朝鮮戦争でも同じような空爆を朝鮮半島の北部で実施、3年間に人口の20%を殺したと本人も認めている。アメリカ軍が日本へ投下した爆弾は約16万トン、朝鮮戦争では63万5000トンだと言われている。ルメイがSACの司令官になった1948年、「ロバート・マックルア将軍は、統合参謀本部に働きかけ、ソ連への核攻撃に続く全面的なゲリラ戦計画を承認させ」(クリストファー・シンプソン著、松尾弌訳『冷戦に憑かれた亡者たち』時事通信社、1994年)、翌年に出されたJCS(統合参謀本部)の研究報告では、ソ連の70都市へ133発の原爆を落とすという内容が盛り込まれていた。(Oliver Stone & Peter Kuznick, “The Untold History of the United States,” Gallery Books, 2012)1954年になると、ルメイが指揮するSACはソ連に600から750発の核爆弾を投下、118都市に住む住民の80%、つまり約6000万人を殺すという計画を作成した。この年の終わりにはヨーロッパへ核兵器を配備している。1956年にSACは核攻撃計画に関する報告書(SAC Atomic Weapons Requirements Study for 1959)とその分析を作成した。それによると、ソ連、中国、東ヨーロッパの最重要目標には水爆が使われ、ソ連圏の大都市、つまり人口密集地帯に原爆を投下することになっていた。1957年初頭に作成されたドロップショット作戦も先制攻撃が想定され、300発の核爆弾をソ連の100都市で投下、工業生産能力の85%を破壊することを予定している。(Oliver Stone & Peter Kuznick, “The Untold History of the United States,” Gallery Books, 2012)こうした先制核攻撃計画がアメリカで練られているころ、沖縄では「銃剣とブルドーザー」で土地が強制接収され、軍事基地化が推し進められていた。1953年4月に公布/施行された布令109号「土地収用令」に基づく暴力的な土地接収で、武装米兵が動員されている。1955年の段階で沖縄本島の面積の約13%が軍用地になった。1955年から57年にかけて琉球民政長官を務めた人物がライマン・レムニッツァー。この軍人は決して有能ではないのだが、第2次世界大戦の終盤、シチリア島上陸作戦を指揮したイギリスのハロルド・アレグザンダーに取り入ることに成功してから要職に就くようになった。アレグザンダーはイギリス女王エリザベス2世に近い人物で、上陸作戦の際、下にいたのはイギリス軍のバーナード・モントゴメリーとアメリカ軍のジョージ・パットン。モントゴメリーはウィンストン・チャーチルに近い。アレグザンダーはモントゴメリーに花を持たせようとしたことから連絡将校だったアメリカの軍人が怒って対立、替わってそのポストに就いたのがレムニッツァー。この人物は貴族が大好きで、伯爵だというアレグザンダーの操り人形になる。レムニッツァーとアレン・ダレスを引き合わせたのは、このアレグザンダーだという。そして、レムニッツァーとダレスはフランクリン・ルーズベルト大統領に無断でナチスの幹部と秘密交渉を始めた。サンライズ作戦だ。(アレン・ダレスなどウォール街の住人は1933年から34年にかけてルーズベルトを排除してファシズム体制を樹立するクーデターを計画していた。)1945年5月にドイツが降伏した直後、チャーチル英首相はJPS(合同作戦本部)に対してソ連へ軍事侵攻するための作戦を立案するように命令、そして作成されたのがアンシンカブル作戦。7月1日に米英軍数十師団とドイツの10師団が「第3次世界大戦」を始める想定になっていたが、これは参謀本部の反対で実現していない。その直後にチャーチルは下野する。首相でなくなってもチャーチルは大きな影響力を維持、1946年3月にはアメリカのミズーリ州フルトンで演説し、その中で「鉄のカーテン」が降りていると発言、冷戦の幕開けを宣言している。そして1947年、彼はアメリカのスタイルス・ブリッジス上院議員と会った際、ソ連を核攻撃するようハリー・トルーマン大統領を説得して欲しいと頼んだと伝えられている。そのトルーマンはルーズベルト大統領の急死を受け、副大統領から昇格したのだが、このふたりは親しくなかった。トルーマンのスポンサーだったアブラハム・フェインバーグはシオニスト団体へ法律に違反して武器を提供し、後にイスラエルの核兵器開発を資金面から支えた富豪のひとりだ。アレン・ダレスやライマン・レムニッツァーと同じようにソ連を先制核攻撃しようと目論んでいたひとりがカーティス・ルメイ。この好戦派グループとケネディ大統領は対立、キューバ侵攻作戦ではアメリカ軍が軍事侵攻することを認めず、ミサイル危機を話し合いで解決する。つまり、ソ連を攻撃するチャンスを潰してしまった。アメリカ軍がキューバ軍を装って「テロ」を繰り返し、キューバに軍事侵攻するというストーリーのノースウッズ作戦も拒否した大統領はダレスをはじめとするCIA幹部を解任、レムニッツァーの議長再任を認めない。レムニッツァーはNATOを指揮するようになるが、NATOには秘密部隊が存在、イタリアやフランスで要人暗殺や擬装テロを繰り返すことになる。テキサス大学のジェームズ・ガルブレイス教授によると、レムニッツァーやルメイを含む好戦派は1963年の終わりにソ連を奇襲攻撃する予定だったという。その頃になればアメリカはICBMを配備でき、しかもソ連は配備が間に合わないと見ていたのだ。そのために偽旗作戦のノースウッズも作成されたのだが、1963年6月にケネディ大統領はアメリカン大学の学位授与式(卒業式)でソ連との平和共存を訴える。そして11月22日にテキサス州ダラスで暗殺された。その翌年、日本政府はルメイに対し、勲一等旭日大綬章を授与している。アメリカの支配層にとって核兵器は一貫して攻撃のためのもの。これが「抑止力」や「核の傘」の実態だ。守りという点から考えると沖縄に基地を集中させるのは得策でないが、使い捨ての出撃基地だと考えれば納得できる。
2017.08.07
シリアではユーフラテス川沿いにある要衝、ラッカやデリゾールで戦闘が続いているが、アメリカ、サウジアラビア、イスラエルを中心とする勢力がシリアへ送り込んだ傭兵軍は敗走、壊滅は時間の問題だと見られている。そうした状況を受け、ドナルド・トランプ大統領はシリアにおけるCIAによる反シリア政府軍への支援工作を止めると発表した。ダーイッシュが売り出されたのは2014年で、その直後にアメリカ軍がシリアを攻撃しはじめたが、シリアの重要な施設が破壊されて市民の犠牲者が増える一方、ダーイッシュはダメージを受けずに勢力を拡大させていた。そうした戦況を一変させたのがロシア軍。シリア政府の要請で2015年9月30日に軍事介入すると、急速に傭兵軍は支配地を縮小させはじめた。その傭兵軍に見切りをつけざるをえなくなったアメリカ政府は自国の軍隊をシリアへ侵攻させる一方、侵略の手先をクルド軍に切り替えている。イラクのクルド勢力はイスラエルの傀儡だが、トランプ米大統領は5月にシリアのクルド勢力(YPG)に対する武器供給を承認した。SDF(シリア民主軍)はYPGの指揮下にある。このアメリカ政府の決定がトルコ政府を刺激し、両国の関係を悪化させる一因になった。5月にはダーイッシュにとって大きな出来事があった可能性が高い。この月の28日にロシア軍はダーイッシュの幹部がラッカの近くに集まるという情報を得て空爆しているが、その際にアブ・バクル・アル・バグダディを含む約30名の幹部が殺されたことはほぼ間違いない。これ以降、ダーイッシュは混乱、崩壊の速度が速まった。その後もラッカ周辺でロシア軍の支援を受けたシリア政府軍はダーイッシュなどの武装勢力を攻撃しているが、アメリカ軍やクルド軍もラッカ制圧を目指している。シリアの赤新月社(イスラム国以外の赤十字に相当)の幹部でラッカで活動しているディナ・アル・アッサドによると、アメリカ主導軍はラッカの病院を化学兵器と見なされている白リン弾で攻撃、病院自体だけでなく、発電施設や救急車が破壊された。ラッカをクルドの都市にしようとしているアメリカにとって、元々の住民は邪魔な存在。ちなみに、西側で宣伝されている白ヘルはダーイッシュやアル・カイダのために働いている。イラクではモスルでダーイッシュは敗北したが、その前にアメリカやサウジアラビアは約9000名の「ムジャヒディン」をデリゾールやパルミラへ安全に移動させようとしている。ただ、一部はシリアへは向かわずに出身国へ戻ったと見られている。モスルに残った戦闘員はこうした移動に参加しなかった人たちだ。ラッカやデリゾールの近くを流れているユーフラテス川より北をアメリカはクルドの支配地にしようとしている。シリアを分割しようとしているわけだが、イスラエルには、ナイル川からユーフラテス川まで、地中海から東はヨルダン川までをイスラエルの領土にするという「大イスラエル構想」が存在する。イスラエルは今でもシリア南部で侵略戦争を継続中だ。
2017.08.06
AI(人工知能技術)の研究をしている会社は少なくない。Facebookもそうした会社のひとつだが、開発の過程でふたつのAIを使ったチャットボットが自分たちで人間には理解できない言語を作り上げて会話を開始、Facebookは機能を停止させたという。将棋や囲碁の相手としても取り上げるAIだが、数年前、その危険性を指摘する科学者やエンジニアが現れた。テスラ社のCEOを務めるエロン・ムスク、カリフォルニア大学バークレー校の研究者で、AIのパイオニアとして知られているスチュアート・ラッセル教授、あるいは天文学者のステファン・ホーキング教授も警鐘を鳴らしている。核エネルギーとAIとの類似性も指摘されている。兵器への転用だ。無制限のエネルギーは核兵器の開発へつながったが、無制限の情報も兵器として使われるようになることは不可避。すでにAIを使った殺人ロボットは開発されている。現在、非武装の住民を殺戮していることで問題になっているドローンだが、それもAIで動かそうとする人もいる。こうした警告がある一方、AIでカネ儲けを狙っているベンチャー・キャピタルの経営者などは危険性はないと主張している。原発は安全だと言い張っている人は今でもいるので不思議ではない。グーグルもAIの研究開発を進めているが、この会社はFacebookと同じようにアメリカの情報機関と緊密な関係にある。グーグルは今年4月、検索アルゴリズムを変更した。同社のガイドラインに照らし、「好ましくない」と判断された情報にユーザーがアクセスしにくくしたのだ。「偽情報」の影響を弱めるためだとしているが、実態は有力メディアが流す偽報道の嘘を暴く情報を排除することが目的である。つまり、インターネットの検閲を強化したということ。こうした検閲を正当化する口実として「陰謀論」なるタグが使われるが、こうした表現が現れたのはジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された直後から。リー・ハーベイ・オズワルドという個人が単独で実行したとする公式見解に対する疑問を表明したり、独自の調査でそれに異を唱えたりする人々の話に対する信頼度を下げることが目的だった。こうした情報操作を支配者は遙か昔から行ってきた。第2次世界大戦の後、報道をコントロールする目的でアメリカ支配層がモッキンバードというプロジェクトを始めたことは本ブログでも何度か指摘した。デボラ・デイビスの著作(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979)、ワシントン・ポスト紙の記者としてウォーターゲート事件を調査したカール・バーンスタインの記事(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977)、最近ではフランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)紙の編集者だったウド・ウルフコテも有力メディアがCIAに支配されている実態を暴く本を2014年2月にドイツで出版した。その英語版が今年5月に出されたはずだが、事実上、流通していない。これも一種の情報統制だろう。そうした情報統制に協力している企業が開発するAIにバラ色の未来はない。
2017.08.05
調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュが民主党全国委員会(DNC)から漏れた電子メールについて電話で語った音声がインターネット上で公開されている。彼はワシントンDC警察やFBIの報告書を見たとしたうえで、電子メールをWikiLeaksへ渡したのはDNCのコンピュータ担当スタッフだったセス・リッチだとしている。また、その漏洩した電子メールはロシア政府がハッキングしたとする偽情報を流し、ロシアとアメリカとの関係悪化を目論んだのはCIA長官だったジョン・ブレナンだとも語っている。同じ趣旨のことはリッチの両親が雇った元殺人課刑事の私立探偵リッチ・ウィーラーも主張していた。この探偵はセスがWikiLeaksと連絡を取り合い、DNC幹部の間で2015年1月から16年5月までの期間に遣り取りされた4万4053通の電子メールと1万7761通の添付ファイルがセスからWikiLeaksへ渡されているとしていた。WikiLeaks以外のルートでも電子メールは漏れているが、そうした中には、2015年5月26日の時点で民主党幹部たちがヒラリー・クリントンを候補者にすると決めていたことを示唆している電子メールの存在している。その年の6月11日から14日かけてオーストリアで開かれたビルダーバーグ・グループの会合にヒラリーの旧友であるジム・メッシナが参加していたことから欧米支配層はバラク・オバマの次はヒラリーを大統領すると決めたと推測されていたが、その推測と符合する。電子メールの扱いに関し、国務長官だったヒラリー・クリントンは機密情報の取り扱いに関する法規に批判した可能性があり、またそうした情報をきわめて軽率に扱っていたことをFBIのジェームズ・コミー長官は認めている。それにもかかわらず、FBIは彼女を不起訴にしたわけだ。サウジアラビアやカタールはともにダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)やほかのスンニ系過激派(アル・カイダ系武装集団)を資金や物資の秘密援助をしてきたが、この事実をヒラリーが2014年8月の時点で知っていたことを示すメールもある。ヒラリーの件にメスを入れると、リビアやシリアへの軍事侵攻、あるいはホンジュラスのクーデターに関連した情報が噴出してくる可能性がある。WikiLeaksがクリントンに関した電子メールを公開した後、セス・リッチは2016年7月10日、背中を2度撃たれて死亡している。この殺人事件の捜査を担当したのがワシントンDC警察だが、ウィーラーによると、捜査は途中で打ち切られている。その当時のワシントンDC警察長、キャシー・ラニエーは8月16日、9月で辞職してナショナル・フットボール・リーグの保安責任者に就任すると発表、実際に転職している。ウィーラーがそうした話を記者にした直後、セス・リッチの遺族からウィーラーや話を伝えたFOXニュースへ抗議があり、ウォーラーは発言を撤回する。遺族のスポークスパーソンに就任したブラッド・バウマンの発表だが、この危機コンサルタントが所属するPR会社のパストラム・グループは民主党も顧客だ。事件の翌月、WikiLeaksのジュリアン・アッサンジはリッチについてDNCの電子メールを提供した人物だと示唆、射殺事件に関する情報提供者に2万ドルを提供するとツイッターに書き込んでいる。今回、WikiLeaksはハーシュの発言をツイッターで紹介、事実上、電子メールをWikiLeaksへ渡したのはセス・リッチだと認めている。1991年12月にはソ連が消滅するとネオコンたちはアメリカが「唯一の超大国」になったと思い込み、目前に「パクスアメリカーナ」の時代があると認識、自立した「雑魚」を潰しにかかる。その基本プランが1992年2月に国防総省で作成されたDPGの草案、いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリン。そのドクトリンに基づき、アメリカはイラク、シリア、イランを殲滅しようとしてきた。そのドクトリンに基づき、サラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心とする傭兵集団、つまりアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を使って中東/北アフリカを侵略、ネオ・ナチを使ってウクライナでクーデターを実施してきたアメリカの好戦派だが、いずれも成功とは言い難い。ロシアや中国を武力で脅して屈服させるという目論見も失敗だ。そんなことでロシアや中国が屈服するはずがないのだが。それを好戦派は理解していなかったのだろう。そして現在、好戦派はロシアを「悪魔化」して描くプロパガンダを展開、かつての封じ込め政策を真似しようとしているが、それによってEUは苦境に陥り、アメリカ離れの動きを見せている。中国とも経済戦争を始めると言われているが、そうしたことはアメリカにとって自殺行為だ。生産活動を弱体化させ、基軸通貨のドルを発行する特権だけで生き延びているのがアメリカ。発行したドルを回収するためにペトロダラーの仕組みを作り、吸収するために投機の規制を大幅に緩和させているが、これもドルが基軸通貨として認められているので機能してきただけ。ドルが基軸通貨の地位から陥落すれば、アメリカの支配システムは崩壊する。新封じ込め政策を実施する口実として「ロシアゲート事件」をでっち上げたわけだが、それによってロシアや中国との核戦争が勃発する危険性が高まった。それでも彼らは軍事力を使ってロシアや中国を屈服させ、世界制覇を実現しようともがいている。その計画を実現できなかった場合、自分たちの支配システムは崩壊、これまでの悪事の責任をとらされる可能性がある。それだけは避けたいだろう。電子メールの話も封印しなければならない。
2017.08.04
ロシア、イラン、朝鮮に対する「制裁」法案にドナルド・トランプ大統領は署名した。この法案は7月25日に下院で419対3、27日に上院で98対2という圧倒的な賛成を得て可決されていた。この法律はEUを厳しい状況に陥らせるため、ドイツやフランスなどから反発の声が挙がっているが、大統領は無視したわけだ。その一方、アメリカ議会ではBDS運動を禁止する法案が浮上している。BDSとはイスラエルに対するボイコット(Boycott)、投資撤退(Divestment)、制裁(Sanctions)。この運動は2005年7月に始まり、世界的な広がりを見せていた。そうした状況に危機感を持ったと思われる民主党のベン・カーディン上院議員を中心に作成され、多くの議員が同調している。イスラエルは侵略、破壊、殺戮、略奪を繰り返してきた国で、現在はガザを攻撃、ヨルダン川西岸へ違法移住、そして巨大な分離壁(堀、有刺鉄線、電気フェンス、幅60~100メートルの警備道路、コンクリート壁で構成)を建設してパレスチナ人の居住地区を収容所化している。BDS運動が始まったのは2005年だが、イスラエルに対する批判がヨーロッパで強まったのは1982年に引き起こされたサブラとシャティーラ(パレスチナ難民キャンプ)における虐殺が切っ掛け。虐殺は周到な準備のうえで行われた。まず、その年の1月にアリエル・シャロン国防相がベイルートを極秘訪問、親イスラエル派とイスラエル軍が軍事侵攻した際のことについて話し合っている。その直後にペルシャ湾岸産油国の国防相とも秘密裏に会い、石油を武器として使わないことで合意した。6月には、PLOのヤセル・アラファト議長と対立していたアブ・ニダル派がイギリス駐在のイスラエル大使暗殺を試みているが、実際はアブ・ニダル派に潜り込んでいたイスラエルのエージェントが仕掛けたものだった。この事件を口実にしてイスラエルはレバノンへ軍事侵攻、1万数千人の市民を殺した。つまり偽旗作戦。8月にイスラエル軍は撤退、その直後にPLOもレバノンを離れる。その際、アメリカはパレスチナ難民の安全を保証していたが、PLOの撤退が完了した直後、9月14日にファランジスト党のバシール・ジェマイエル党首が爆殺され、その報復だとしてファランジスト党のメンバーがイスラエル軍の支援を受けながらサブラとシャティーラの難民キャンプを制圧、数百人、あるいは3000人以上の難民が殺されたと推測されている。この虐殺はイスラエルが黒幕だと考えるのが自然だが、実際、イスラエルの責任を問う声が世界的に高まり、親イスラエル派だったイギリス労働党もイスラエルに批判的な姿勢を強める。その流れを変える出来事が1994年5月に起こった。労働党の党首だったジョン・スミスが心臓発作で急死したのだ。その1カ月後に行われた新党首を決める投票で勝利したのがトニー・ブレア。この人物はスミスが急死する4カ月前の1994年1月、妻のチェリー・ブースと一緒にイスラエル政府の招待で同国を訪問、帰国して2カ月後、ブレアはロンドンのイスラエル大使館で富豪のマイケル・レビーを紹介された。その後、レビーはブレアの重要なスポンサーになった。レビーのほか、イスラエルとイギリスとの関係強化を目的としているという団体LFIを資金源にしていたブレアはその後、労働組合の意向を気にすることなく行動することになり、マーガレット・サッチャーの後継者と言われるようになる。それが「ニュー・レーバー」だ。外交面では労働党を親イスラエルへ引き戻した。ニュー・レーバーを支援した団体のひとつがBAPだが、そこにはメディアの人間が多く参加、人々に知られずに活動することができたと言われている。勿論、イギリスだけでなくアメリカの議会や有力メディアも筋金入りの親イスラエル派。アングロ・サクソン系の両国はイスラエルと緊密な関係にあるとも言える。そのアングロ・サクソン系の両国に支配されてきたのが日本だ。より正確に言うと、日本は米英の金融資本の属国。本ブログでは何度か指摘したが、こうした状況は明治維新から続いている。
2017.08.03
朝鮮がICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験に成功したと朝鮮中央通信は7月29日に伝えた。発射されたのは28日の深夜。「火星14」の改良型で、998キロメートル飛行し、最高高度は3724.9キロメートルに到達、アメリカ本土の全域が射程に入ったと主張されているのだが、アメリカのミサイル専門家、マイケル・エルマンによると、映像からミサイルの本体は再突入の後、高度4〜5キロメートルで分解しているように見え、まだ再突入の技術を獲得できていない、つまり今回の実験は失敗だったようだ。中国の習近平国家主席とロシアのウラジミル・プーチン大統領はモスクワで会談していた7月4日にも朝鮮はICBMの発射実験に成功したと発表している。本ブログで指摘したように、アメリカ太平洋軍やロシア軍は発射直後、中距離弾道ミサイルだとしていた。日本の稲田朋美防衛相も5月14日に発射したのと同じ中距離弾かその派生型だと語っている。聯合ニュースによると、韓国の国家情報院もICBMではないと判断しているようだ。ロシアは一貫して中距離ミサイルだとしている。一説によると、前回の実験ではロケットの推進力が足りなかったため、今回は弾頭部分の軽量化を図ったのだが、それによって脆弱化、再突入に耐えられなかった可能性がある。そうした実態はともかく、アメリカ側は今回の実験を脅威だと宣伝、THAAD(終末高高度地域防衛)の韓国配備を促進する口実にし、東アジアの軍事的な緊張を高めようとしている。つまり、このシステムは中国を威嚇することが目的だ。アメリカ海軍は7月2日、駆逐艦のステセムを西沙諸島のトリトン島から12海里(22キロメートル)のあたりを航行させて中国を挑発、中国側が軍艦と軍用機を派遣したが、その後、7月10日から17日にかけて艦隊演習「マラバル」を。アメリカはインドや日本と実施した。7月20日には電子偵察機EP-3を青島から約150キロメートルの地点に派遣、中国軍は2機のJ-10戦闘機を緊急発進させている。その際、中国軍機1機はアメリカ軍機から90メートル近くまで接近したという。青島は中国北海艦隊の司令部がある。中国の防空システムの穴をEP-3は探っていたのかもしれない。28日に朝鮮がミサイルを発射した直後、アメリカ軍はグアムに配備されていた2機のB-1爆撃機を朝鮮半島へ飛ばしたが、途中、日本と韓国の戦闘機が合流して行動を共にしている。アメリカの朝鮮、あるいは中国への空爆に日本も参加するという意思を示したといわれても仕方がないだろう。アメリカの好戦派にとって朝鮮の好戦的な姿勢は願ってもないことだ。アメリカの好戦派に属すネオコン、その中心的グループのひとりであるポール・ウォルフォウィッツは1991年にイラク、シリア、イランを殲滅すると口にしていた。当時、ウォルフォウィッツは国防次官だ。この話を明らかにしたのは欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)の元最高司令官、ウェズリー・クラークだ。すでにイラクとシリアは侵略して破壊したが、イランに対しては秘密工作の段階。そのイランを攻撃する口実としてアメリカ側はイランの核兵器開発を主張してきたが、説得力はない。イランが核兵器の開発を始めてほしいとアメリカの好戦派は願っているのだろう。ビル・クリントン大統領は核兵器の部品に関する「欠陥設計図」をイランへ渡すという「マーリン作戦」を承認、次のジョージ・W・ブッシュ大統領も認めている。この作戦はイランの核兵器開発を失敗させることが目的だとされたが、核兵器に詳しい科学者やエンジニアが見れば修正は難しくない。イランに核兵器を開発させ、それを口実にして軍事侵攻しようとしたのではないかとも言われている。内部告発に基づき、この作戦の危険性を明らかにした記事をニューヨーク・タイムズ紙は2003年に掲載しようとしたが、これは国家安全保障補佐官だったコドリーザ・ライスの介入でボツになった。その話を同紙の記者だったジェームズ・ライゼンが2006年に出された著作の中で書いて問題になり、情報源のCIAオフィサー、ジェフリー・スターリングは2015年1月、懲役3年半の判決を言い渡されている。イランはアメリカの秘密工作に乗らなかったが、それを利用する国が現れても不思議ではない。
2017.08.02
西側メディアはCIAにコントロールされている。その実態を明らかにした本をフランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)紙の元編集者、ウド・ウルフコテがドイツで出したのは2014年2月のことだった。それから3年を経た今年5月、英語版が出版されたはずだが、事実上、流通していない。どこからか出版社のネクスト・レバレイション・プレスに圧力をかけたのだろうと話題になっている。ウルフコテは本を出す前から有力メディアとCIAとの関係を告発していた。彼によると、ジャーナリストとして過ごした25年の間に教わったことは、嘘をつき、裏切り、人びとに真実を知らせないこと。ドイツだけでなく多くの国のジャーナリストがCIAに買収され、最近では人びとがロシアに敵意を持つように誘導するプロパガンダを展開、人びとをロシアとの戦争へと導き、引き返すことのできない地点にさしかかっていることに危機感を抱いたという。今年1月、心臓発作によって56歳で死ぬまで警鐘を鳴らし続けていた。CIAが情報をコントロールするためのプロジェクトをスタートさせたのは第2次世界大戦が終わって間もない1948年頃のことである。いわゆるモッキンバードだが、その中心にいた人物はアレン・ダレス、フランク・ウィズナー、リチャード・ヘルムズという破壊活動を指揮していた大物やワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハム。その妻はウォーターゲート事件で有名になったキャサリン・グラハム。この女性の実父は世界銀行の初代総裁、ユージン・メイヤーだ。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979)1963年になるとフィリップとキャサリンの関係は破綻、フィリップは家を出て友人には離婚すると語っていたという。再婚の準備も進めていたようだが、「鬱病」のため自宅へ戻り、チェスナット・ロッジ(精神科病院)へ入院、躁鬱病(双極性障害)と診断された。1963年8月に一時退院するが、その時に自殺したとされている。ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺される3カ月前の出来事だ。ちなみに、この病院はCIAのマインド・コントロール・プロジェクトMKULTRAと密接な関係にあるとされている。フィリップに替わって社主になったのがキャサリン。ウォーターゲート事件を指揮することになるが、その取材で中心的な役割を果たしたのは若手記者だったカール・バーンスタインとボブ・ウッドワード。ウッドワードは海軍の元情報将校だ。ウォーターゲート事件でリチャード・ニクソン大統領が辞任した3年後の1977年、バーンスタインはワシントン・ポスト紙を辞め、その直後に「CIAとメディア」という記事をローリング・ストーン誌に書いている。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977)それによると、その時点までの20年間にCIAの任務を秘密裏に実行していたジャーナリストは400名以上。そのうち200名から250名が記者や編集者など現場のジャーナリストで、残りは、出版社、業界向け出版業者、ニューズレターで働いていた。1950年から66年にかけて、ニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供しているとCIAの高官は語ったという。CIAの仕事をしていたジャーナリストは400名以上だというが、そのうちCIAとの秘密合意に署名しているか、雇用されているジャーナリストは200名以上。残りは本人がCIAに操られていることに気づいていないか、単なる協力者だということだろう。こうしたCIAと有力メディアとの緊密な関係が露見した1970年代からメディアに対する管理が強化される。経営に対する規制の緩和はそうした言論弾圧の一環。その後、気骨あるジャーナリストは排除されてきた。当然、日本もアメリカの政策に従っている。日本では自国のマスコミを信頼できないと批判する際、欧米の有力メディアを褒め称える人がいる。言論の自由を守っているというわけだが、これは戯言。言論弾圧はアメリカが先行している。ただ、そうした弾圧に抵抗するジャーナリストが日本よりいるというだけのことだ。
2017.08.01
朝鮮のミサイル発射実験はTHAAD(終末高高度地域防衛)の韓国への配備を促進する役割を果たしているようだが、本ブログで再三指摘しているように、このシステムは中国が主なターゲットで、攻撃的な兵器として利用可能。日本が導入する地上配備型イージスシステム「イージス・アショア」についても同じことが言える。ミサイル発射後、それを口実にしてアメリカは2機のB-1爆撃機をグアムから朝鮮半島へ飛ばしたが、途中、日本と韓国の戦闘機が合流している。日本は海でもアメリカ軍に従い、インドと同じように軍事演習「マラバル」に参加した。日本はアメリカの侵略軍に加わったようだ。東アジアにおけるアメリカのターゲットは中国である。これはアヘン戦争からの一貫した戦略だ。軍事侵略を狙うだけでなく、「友好」という形で内部へネットワークを張り巡らせと乗っ取ろうともしてきた。その戦略がネオコンなど好戦派の行動によって崩れつつある。中国なしに経済が成り立たなくなっている日本では、宗主国であるアメリカと中国が今でも強く結びついていると妄想したいだろうが、そうした状況ではなくなっている。生産を依存している中国との間で軍事的な緊張を高めるという無謀なことをしているのがネオコンだ。ロシアと核戦争しようという連中なので、驚きではないが。その中国は7月の下旬、艦船をバルト海へ派遣してロシア海軍と合同演習を実施した。すでに中国はシリア沖へ軍艦を派遣してロシアに協力しているが、その関係が強まっている。中東ではアメリカの影響力が低下、逆に中露が存在感を増している。その中露へEUも軸足を移動させつつある。アメリカは巨大資本という私的な権力が公的な権力を支配することで国の基盤が崩れている。経済力も外交力も衰退、それを軍事力で挽回しようとしているのだが、それも失敗した。このまま進めば核戦争を始めることになりかねない。アメリカは核兵器を手にして以来、この兵器を使いたがっている。1957年にはアメリカ軍の内部でソ連に対する先制核攻撃を準備しはじめ、この年の初頭にはソ連への核攻撃を想定した「ドロップショット作戦」を作成している。それによると、300発の核爆弾をソ連の100都市で使い、工業生産能力の85%を破壊する予定になっていたという。(Oliver Stone & Peter Kuznick, “The Untold History of the United States,” Gallery Books, 2012)テキサス大学のジェームズ・ガルブレイス教授によると、1960年10月から62年9月まで統合参謀本部の議長を務めたリーマン・レムニッツァーやSAC(戦略空軍総司令部)司令官だったカーティス・ルメイを含む好戦派は1963年の終わりに奇襲攻撃を実行する予定だったという。その計画を実行する上で最大の障害だと見られていたジョン・F・ケネディ大統領は1963年11月22日にテキサス州ダラスで暗殺され、その直後にCIAは暗殺の背後にキューバやソ連が存在するという宣伝を行ったが、思惑通りには進まなかった。CFR/外交問題評議会が発行しているフォーリン・アフェアーズ誌の2006年3/4月号に掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文では、アメリカ軍の先制第1撃でロシアと中国の長距離核兵器を破壊できるようになる日は近いと主張されている。アメリカはロシアと中国との核戦争で一方的に勝てると見通していた。その後、ロシアは自分たちの戦闘能力が高いことをシリアなどで示し、アメリカの好戦派を牽制してきたが、それでもアメリカは軍事力を使わざるをえない。ドルが基軸通貨から陥落するのは時間の問題であり、そうなるとドルを支えてきた投機市場の崩壊も不可避。「唯一の超大国」という夢想をやめるか、軍事力に頼るしかないが、まだアメリカの支配層は軍事力に頼ろうとしている。そのアメリカに付き従って自らも戦争への道を進んでいるのが日本だ。
2017.08.01
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