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このブログは読者の方々に支えられています。心苦しいのですが、ブログを存続させ、大手メディアが触れようとしない情報を発信するため、カンパ/寄付をお願い申し上げます。このところ、深層国家(Deep State)という表現をよく目にするようになりました。国と呼ばれる仕組みではなく、人びとに知られないよう闇の中に存在している私的権力による支配システムです。かつて、安倍清張が『深層海流』という小説を書いていますが、これは日本とアメリカを結ぶ闇の支配システムをテーマにしていましたが、両者の概念は重なります。ドナルド・トランプ大統領が離脱を宣言したTPP(環太平洋連携協定)に安倍晋三政権は執着していますが、その後ろには深層国家が存在しているのでしょう。TPPのISDS(投資家対国家紛争解決)条項は、巨大なカネ儲け集団と国の利害が対立した場合に正体不明の法律家が紛争を解決するというもので、その法律家はカネ儲け集団と密接な関係にある人びとになるはずです。このTPPは英米法に基づいているので、この協定を導入すると大陸法を採用している日本の法律体系は根本的に変えざるを得なくなるそうです。似たことは共謀罪でも言えるようで、菅直人政権や安倍晋三政権はクーデターを行っているように見えます。ISDS条項は私的権力(アメリカの巨大資本)に公的権力(各国の政府、議会、司法)を上回る力を与えることが目的であり、人びとが見慣れている国家を破壊し、深層国家を表の世界へ浮上させることが目的なのではないでしょうか?核戦争を前提にして地下政府の設立が計画されたのは1958年のことでした。秘密政府の閣僚10名(省の数は9ですが、ひとり辞任したので10名になりました)が決められ、アイゼンハワー・テンとも呼ばれています。第2次世界大戦で疲弊したソ連に新たな戦争を遂行する力はないと判断していたアメリカの好戦派はドワイト・アイゼンハワー政権時代、ソ連に対する先制核攻撃が計画されていたことが明らかになっています。自分たちには核兵器があり、その運搬手段である戦略爆撃機やICBMの数でも圧倒していると考え、一方的な勝利を手にできると信じていたようです。テキサス大学のジェームズ・ガルブレイス教授(経済学者ジョン・ケネス・ガルブレイスの息子)によりますと、1961年7月、ケネディ大統領に対して軍や情報機関の幹部は先制核攻撃計画について説明し、63年の後半にソ連を核攻撃する準備が整うというスケジュールを示したようです。(James K. Galbraith, “Did the U.S. Military Plan a Nuclear First Strike for 1963?”, The American Prospect, September 21, 1994)ロナルド・レーガン政権が始めたCOGプロジェクトはその延長線上にあり、1988年に出された大統領令12656で秘密政府の始動は核戦争から「国家安全保障上の緊急事態」に変更され、その緊急事態は2001年9月11日に引き起こされました。盗聴法、秘密保護法、安保関連法、緊急事態条項、共謀罪、TPP、いずれも私的権力が世界を支配する仕組みを作ることが目的でしょう。この仕組みはファシズムにほかなりません。安倍政権は大手メディアの協力で日本にファシズム体制を導入しようとしています。未来を切り開くためには事実を知ることが必要であり、本ブログがその一助になればと心から願っています。櫻井 春彦振込先巣鴨信用金庫店番号:002(大塚支店)預金種目:普通口座番号:0002105口座名:櫻井春彦
2017.05.31
ズビグネフ・ブレジンスキーが5月26日に死んだ。1928年3月28日にポーランドのワルシャワで外交官の息子として誕生したが、一族の出身地はガリツィアのブレザニー(現在はウクライナ)だという。1938年に父親の仕事でカナダのモントリオールで生活を始め、1953年にはハーバード大学で博士号を取得、後にコロンビア大学で教えるようになる。このころかCIAと関係ができたと見られているが、その一方でデイビッド・ロックフェラーと親しくなる。ベトナム戦争への本格的な軍事介入に反対、ソ連との平和共存を売ったいていたジョン・F・ケネディ大統領、ベトナム戦争へ反対していたマーチン・ルーサー・キング牧師、ケネディ大統領の弟でキング牧師と親しかったロバート・ケネディーが暗殺される一方、アメリカは戦争へとのめり込むが、国内では反戦運動が活発化、1972年の大統領選挙で民主党の候補は反戦の意思を明確にしていたジョージ・マクガバンが選ばれた。しかも、共和党のリチャード・ニクソンもデタント(緊張緩和)を考えていた。ブレジンスキーはマクガバンやニクソンに敵対する。選挙戦の最中、民主党の内部ではヘンリー・ジャクソン上院議員を中心に反マクガバン派がCDMを結成している。ジャクソン議員のオフィスは後にネオコンの幹部になる人たちが送り込まれ、教育の場になっていた。その中にはポール・ウォルフォウィッツ、リチャード・パール、ダグラス・フェイスも含まれていた。ニクソン失脚後にジェラルド・フォードが大統領になるとデタント派が粛清され、CIA長官はウィリアム・コルビーからジョージ・H・W・ブッシュへ、国防長官はジェームズ・シュレシンジャーからドナルド・ラムズフェルドへ交代になる。また、リチャード・チェイニーが大統領首席補佐官に就任、ウォルフォウィッツやジャクソン議員の顧問だったリチャード・パイプスはCIAの内部でソ連脅威論を正当化するための偽情報を発信するチームBのメンバーに選ばれている。1976年の大統領選挙で勝ったジミー・カーターはブレジンスキーとデイビッド・ロックフェラーが後ろ盾になっていた人物。ブレジンスキーはその政権で安全保障補佐官に就任した。1978年にCIAとイランの情報機関SAVAKはエージェントをアフガニスタンへ派遣、軍内部の左派将校を排除し、左翼政党を弾圧するように工作(Diego Cordovez and Selig S. Harrison, “Out of Afghanistan”, Oxford University Press, 1995)、79年4月にはNSC(国家安全保障会議)でアフガニスタンの「未熟な抵抗グループ」に対する同情を訴え、CIAはゲリラへの支援プログラムを開始している。5月にはCIAイスタンブール支局長がアフガニスタンのリーダーたちと会談している。こうした工作が功を奏し、1979年12月にソ連の機甲部隊がブレジンスキーの思惑通りに軍事介入してくる。そのソ連軍と戦わせるために彼はCIAに戦闘員を訓練させているが、その戦闘員を雇っていたのがサウジアラビア。CIAは対戦車ミサイルのTOWや携帯型地対空ミサイルのスティンガーを供給している。サウジアラビアで教鞭を執っていたアブドゥラ・アッザムが戦闘員を集める工作を始めるのだが、そのアッザムの教え子のひとりがオサマ・ビン・ラディン。ふたりは1984年にパキスタンへ行き、そこでMAK(礼拝事務局)を創設する。アル・カイダの前身になる団体だ。このアル・カイダを戦闘集団だと誤解している人もいるようだが、実際は違う。ロビン・クック元英外相が指摘しているように、CIAから軍事訓練を受けた「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイル、つまり傭兵の登録リスト。ちなみにアル・カイダはアラビア語でベースを意味し、データベースの訳語としても使われている。 アル・カイダに登録されている戦闘員を中心に武装集団を編成、さまざまなタグをつけて侵略の手先にするという仕組みを作り上げたのはブレジンスキーだということ。後にフランスのヌーベル・オプセルヴァトゥール誌からブレジンスキーはインタビューを受け、こうした戦闘集団を作り、戦乱を広めたことを後悔していないかと聞かれているが、それに対して後悔はしていないとした上で、「秘密工作はすばらしいアイデアだった」と答えている。(Le Nouvel Observateur, January 15-21, 1998)ブレジンスキーは地上に破壊と殺戮を広めたひとりだった。
2017.05.30
朝鮮南東部の江原道元山付近から「弾道ミサイルとみられる飛翔体」が発射されたとマスコミは騒いでいる。森友学園や加計学園の問題で窮地に陥る中、目障りな人びとを一網打尽にすることができる共謀罪(テロ等準備罪)を強引に成立させようとしている安倍晋三首相にとって朝鮮のミサイルは援護射撃と言えるだろう。これまで似たような光景を何度も見た気がする。カール・ビンソン中心とする艦隊に続いて5月23日に空母ロナルド・レーガンが横須賀から出港、さらに空母ニミッツも西太平洋へ向かうという状況の中、朝鮮が空威張り、それを利用してアメリカや日本が東アジアの軍事的な緊張を高めようとしているようにも見えるが、朝鮮が計算でミサイルを発射している可能性もある。5月14日から15日かけて中国は北京でBRF(一帯一路フォーラム)を開催、29カ国が参加している。この一帯一路はユーラシア大陸における経済システムのプランで、アメリカのヘゲモニーを揺るがす可能性が高い。その背景には、アメリカ中心のシステムが破綻状態だということがある。一帯一路とは、シルク・ロード経済ベルトと21世紀海のシルク・ロードを意味し、海のシルク・ロードの東端は南シナ海。その出発点を不安定化させることをアメリカは目論み、南シナ海の軍事的な緊張を高めてきた。その作戦に日本も関与している。東アジアの平和を訴えた鳩山由紀夫が首相の座から引きずり下ろされた後を引き継いだ菅直人政権は1970年代に田中角栄と周恩来との間で「棚上げ」になっていた尖閣諸島の問題に火をつけ、日中関係を悪化させたが、これが始まり。2010年9月に海上保安庁は「日中漁業協定」を無視して尖閣諸島付近で操業していた中国の漁船を取り締まり、漁船の船長を逮捕したのだ。海上保安庁は協定を熟知しているはずで、国土交通大臣だった前原誠司の意思がなければ不可能な行為だろう。その後、問題が沈静化しそうになったところで再び火をつけたのが石原伸晃と石原慎太郎の親子だ。こうした動きを背後から操っていたとされているのがポール・ウォルフォウィッツの教え子、I・ルイス・リビーだ。東アジアの緊張を高める朝鮮の行動は中国の戦略を妨害するものであり、今回もロシア外務省も朝鮮を批判している。韓国にとっても好ましくない。それに対し、ありがたいと感じているのはアメリカや日本だろう。
2017.05.29
すでに言われていたことだが、アメリカ国防総省は朝鮮半島周辺へ3空母を集結させるようだ。カール・ビンソン中心とする艦隊に続いて5月23日に空母ロナルド・レーガンを横須賀から出港させたが、さらに空母ニミッツも西太平洋へ向かわせるようだ。朝鮮を挑発、それに朝鮮が応じているようにも見えるが、アメリカの視線は中国に向けられているだろう。5月14日から15日かけて中国は北京でBRF(一帯一路フォーラム)を開催、29カ国が参加している。そのうち首相が出席したのはポーランド、ハンガリー、セルビア、ギリシャ、イタリア、スペイン、エチオピア、パキスタン、スリ・ランカ、モンゴル、カンボジア、マレーシア、フィジー、大統領はフィリピン、ベトナム、インドネシア、ラオス、ケニア、ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、トルコ、チェコ、スイス、アルゼンチン、チリ、そしてミャンマーは最高実力者のアウン・サン・スー・チーだ。国連、世界銀行、IMFなどもトップを送り込んできた。経済相を送り込んできたドイツはコミュニケに署名しなかったが、ハンガリーのビクトル・オーバン首相はアメリカが主導する古いグローバル化モデルは時代遅れだと明言、同国のブカレストとセルビアのベルグラードを結ぶ鉄道の近代化を含む金融経済分野で中国と合意している。オーバン首相はトルコとの関係を強化するとも語った。トルコと歴史的なライバル関係にあるギリシャに対し、中国はインフラ、エネルギー、通信などで協力すると提案、ギリシャ側も中国の提案を受け入れる方向で動いている。ギリシャはロシアの有利な提案を蹴ってEUに留まり、予想通り経済は破綻した。ギリシャを破綻させ、甘い汁を吸おうとしていたのが西側の巨大資本やその手先になっていたギリシャの支配層であり、必然的な結果だ。トルコ、ハンガリー、ギリシャが連携した場合、ウクライナがロシアとEUとがつながることを妨害しても意味はなくなる。ネオコンを黒幕とし、ネオ・ナチが主導してクーデターを成功させたウクライナはすでに破綻国家と化しているが、ロシアを攻撃する前進基地、地域を不安定化させる核として機能するだけになりそうだ。ウクライナの状況は、西側巨大資本の命令に従うとどうなるかを周辺国に知らせることになり、アメリカ離れを促進させることになった。そうした離反を防ぐため、アメリカはエリート層に対する買収と恫喝、飴と鞭を駆使するしかない。最終的には核戦争の脅しだが、本ブログでは何度も書いているように、中国やロシアには通じない。通じないのだが、それでもアメリカ政府は朝鮮半島周辺へ3空母を終結させている。脅しの通じない相手を脅すためにエスカレートさせていくと最終的には核戦争しかなくなる。アメリカ支配層は核戦争時に逃げ込む施設を地下に建設しているが、大半のアメリカ人は見捨てられる。勿論、他国の人間のことなど考えていないだろう。その狂気につきあい、戦争の準備をしているのが安倍晋三政権だ。
2017.05.28
ジャレット・クシュナー大統領上級顧問がロシア政府と裏のルートを作っていたとワシントン・ポスト紙が伝えている。こうしたことは一般的に行われていることを同紙も認めているが、「ロシア政府によるアメリカ大統領選挙への介入」という同紙を含むアメリカの有力メディアが証拠を示すことなく「我々を信じろ」という形で主張してきたことを前提にして、問題にしている。安全保障補佐官だったマイケル・フリンを排除した時とパターンは一緒だ。本ブログでは何度も書いていることだが、ワシントン・ポスト紙は2016年7月10日に殺されたDNC(民主党全国委員会)のスタッフがDNC幹部の間で遣り取りされた電子メールをWikiLeaksへ渡したとする話を必死に封印しようとしてきた。そのスタッフ、セス・リッチの両親は強盗事件として処理した警察の説明に納得できず、ワシントンDC警察で殺人課刑事だった私立探偵リッチ・ウィーラーを雇って調査を始めていた。そのウィーラーは先日、DNC幹部の間で2015年1月から16年5月までの期間に遣り取りされた4万4053通の電子メールと1万7761通の添付ファイルをセス・リッチがWikiLeaksへ渡したという情報を得たとFOXニュースに話している。その話をウィーラーが公表した直後、セス・リッチの遺族からウィーラーや話を伝えたFOXニュースへ抗議があり、ウォーラーは発言を撤回する。遺族のスポークスパーソンに就任したブラッド・バウマンの発表だが、この危機コンサルタントが所属するPR会社のパストラム・グループは民主党も顧客だ。さらに、息子の殺人事件の政治化を止めてほしいという両親の主張が5月23日付けのワシントン・ポスト紙に掲載された。息子のパソコンを詳しく調べた結果、息子がWikiLeaksと通信していた証拠は見つからなかったとする警察の説明に納得、息子とWikiLeaksが関係しているとする話は「陰謀論」だと言いたいようだ。ウィーラーはセス・リッチが殺された事件で警察の幹部やFBIが捜査を打ち切らせたとしていたが、この事件を担当したワシントンDCで警察長を務めていたキャシー・ラニエーは事件の翌月、8月16日に9月で辞職してナショナル・フットボール・リーグの保安責任者に就任すると発表している。セス・リッチが殺された翌月、WikiLeaksのジュリアン・アッサンジはDNCの電子メールを提供した人物はリッチだと示唆、射殺事件に関する情報提供者に2万ドルを提供するとツイッターに書き込んだこともそうした疑いを強めていた。状況証拠はセス・リッチが情報提供者だった可能性が高いことを示している。ワシントン・ポスト紙がセス・リッチの話に反発している大きな要因は、これまで同紙を含むアメリカの有力メディアが展開してきた「ロシア疑惑」が揺らいでしまうからだ。この疑惑に証拠はなく根拠薄弱。1990年代からひどくなっている西側有力メディアの偽報道は極致に達したとも言えそうだ。アメリカ有力メディアの腐敗、堕落も極致に達している。
2017.05.27
5月23日にフィリピン南部、ミンダナオ島のマラウィ市がダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)に制圧されたようだ。この地域は以前からダーイッシュの活動が活発で、市内には500名程度の戦闘員がいると見られている。こうした事態を受け、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領はミンダナオ島に戒厳令をしいた。東南アジアではインドネシア、マレーシア、タイなどでサラフィ主義者が活発に動き始め、ミャンマーでアウン・サン・スー・チー派から弾圧されているロヒンギャと呼ばれるイスラム教徒の中へ潜り込み始めているとする話も伝わっている。ちなみに、ロヒンギャを弾圧している仏教を率いているウィラトゥは「ビルマのビン・ラディン」とも言われている人物だ。ロヒンギャが住む山岳地帯では中国がパイプラインの建設を進めていた。南シナ海からマラッカ海峡を抜ける航路はアメリカが軍事的に妨害する動きを見せていることから、そうした地域を避けて石油を輸送することが目的だったが、2011年3月に「レジーム・チェンジ」して現体制になると、銅山開発やミッソン・ダムの建設と同じように止まった。この地域でダーイッシュが戦乱を広める可能性は以前から指摘されていた。シリアでアメリカ、イスラエル、サウジアラビアなどの手先として侵略戦争を戦ってきたアル・カイダ系武装集団やダーイッシュは2015年9月末にロシアがシリア政府の要請で空爆を始めてから支配地域が狭まり、壊滅は時間の問題だと見られている。すでに、そうした武装グループの幹部はアメリカ軍が救出、戦闘員は北アフリカだけでなく東南アジアへ移動していると言われている。EUとロシアとの関係を断つため、アメリカのバラク・オバマ政権はウクライナでクーデターを実行したが、それを切っ掛けにしてロシアは中国との関係を強め、アジア大陸の東岸諸国とのつながりを強めつつある。その地域をアメリカは中東と同じように、破壊にかかる可能性がある。新疆ウイグル自治区も狙われているだろう。アル・カイダ系武装集団にしろ、ダーイッシュにしろ、武器や兵器を提供して戦闘員を訓練しているのはアメリカなど、戦闘員を雇い、戦費を負担しているのはサウジアラビアなどペルシャ湾岸の産油国。そのサウジアラビアの国王一行が3月、約1カ月に渡ってマレーシア、インドネシア、ブルネイ、日本、中国などを歴訪した。日本ではカネに目が眩んだような「報道」もあったが、「テロリストの親玉」が東南アジアから東アジアにかけての国々を訪れたことは不気味だ。インドネシアでは1965年にクーデターがあり、アメリカ支配層にとって目障りな人びとが虐殺され、スハルトが実権を握った。その前からアメリカはスカルノ体制の転覆を目指す秘密工作を推進していた。その勢力は生き残っている。マレーシアの場合、2009年から現在まで首相を務めているナジブ・ラザクはアメリカの強い影響下にあり、2013年に再選される直前、タックスヘイブンの英領バージン諸島からスイスの銀行のシンガポール支店へというルートでサウジアラビア王室から6億8100万ドルの受け取っていたことが判明している。MH370が行方不明になったのはラザク首相が再選された直後だ。
2017.05.27
2016年7月10日に殺されたDNC(民主党全国委員会)のスタッフ、セス・リッチはDNC幹部の間で遣り取りされた電子メールをWikiLeaksへ渡した人物ではないかと言われてきた。事件の翌月、WikiLeaksのジュリアン・アッサンジはDNCの電子メールを提供した人物はリッチだと示唆、射殺事件に関する情報提供者に2万ドルを提供するとツイッターに書き込んだこともそうした疑いを強めることになった。それに対し、セス・リッチの両親は5月23日付けのワシントン・ポスト紙で、息子の殺人事件の政治化を止めてほしいと主張している。息子のパソコンを警察が詳しく調べた結果、息子がWikiLeaksと通信していた証拠は見つからなかったとし、息子とWikiLeaksが関係しているとする話は陰謀論だと言いたいようだ。勿論、名義が両親だったというだけで、実際にその文章を誰が書いたかは不明だ。こうした両親の話を同紙が掲載した理由は、その両親が雇った私立探偵の発言をFOXニュースが報道したことにあるだろう。報道の直後、セス・リッチの遺族からウィーラーやFOXニュースへ抗議があり、ウォーラーは発言を撤回したという。ウィーラーはDNC幹部の間で2015年1月から16年5月までの期間に遣り取りされた4万4053通の電子メールと1万7761通の添付ファイルをセス・リッチがWikiLeaksへ渡したという情報を警察内部の情報源から得たとしていた。パソコンを詳しく調べた結果、そのように判明したということだ。その捜査を警察の幹部やFBIが打ち切らせたとウィーラーは主張しているが、そうしたことを疑わせる出来事もある。事件当時にワシントンDC警察長だったキャシー・ラニエーは8月16日、9月で辞職してナショナル・フットボール・リーグの保安責任者に就任すると発表したのだ。収入は大幅に増えるだろう。両親の主張を載せたワシントン・ポスト紙はロシアを悪魔化するキャンペーンの中心グループに位置している。例によって証拠は示さず、「我々を信じろ」と言うばかりだ。ユーゴスラビア、アフガニスタン、リビア、シリア、そしてイラクを先制攻撃する際にもアメリカの有力メディアは偽情報を流していた。イラクの場合、政府も嘘だったことを認めざるをえなくなっている。そうしたことをワシントン・ポスト紙も気にしていない。認めてしまえば、嘘で築き上げた幻影が全て崩壊してしまう。
2017.05.26
6月8日に総選挙が予定されているイギリスで5月22日に爆破事件があった。マンチェスターの競技場で「自爆攻撃」があり、23名が死亡したとされている。事件と選挙との間に何らかの関係があるのかどうか不明だが、自爆したとされるサルマン・ラマダンは興味深い人物である。ラマダンの両親はリビアで治安関係の仕事をしていたが、何らかの理由で母国を逃げ出してイギリスへ難民として移り住んでいる。ラマダン自身はイギリスで生まれたが、2011年にフランス、イギリス、アメリカ、サウジアラビア、カタールなどが中心になってムアンマル・アル・カダフィ体制を倒した際、リビアへ入ったと言われている。リビアではLIFGと呼ばれる武装集団に参加しているようだが、この組織は本ブログで何度も書いているようにアル・カイダ系で、NATOと連携していた。2011年10月にカダフィが惨殺された直後、ベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられていた。その映像はYouTubeにアップロードされ、イギリスのデイリー・メイル紙も伝えている。その後、侵略軍に破壊されたリビアは無政府状態で、少なからぬLIFGの戦闘員たちはCIAやNATOによって兵器/武器を一緒にトルコ経由でシリアへ運び込まれた。ラマダンもそうした動きをしている。リビアに残った戦闘員たちはダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)というタグをつけているようだ。シリアやイラクでアメリカ軍はアル・カイダ系武装集団やダーイッシュの幹部は救出しているが、末端の戦闘員は見捨てられている。傭兵の雇い止めのようなもので、暴走することはありえるが、ラマダンの父親は息子を無実だと主張している。
2017.05.25
安倍晋三政権は共謀罪(テロ等準備罪)を強行採決した。今回も朝鮮のミサイル発射実験が露払いのような役割を果たしている。韓国だけでなくフィリピンやベトナムも中国へ接近する最近の東アジア。韓国の新大統領はこの地域の軍事的な緊張を緩和したいと考えているのだが、軍事的な緊張を高めてこの地域をバラバラにしたいアメリカ支配層の戦略に反する。アヘン戦争で中国に対する侵略を本格化させたイギリスだが、彼らの世界制覇戦略を実現するためには兵力が足りなかった。そこで目をつけられたのが日本であり、だからこそ戦費を融資、軍事力の増強にも協力したと言える。そして今、日本はアメリカの傭兵になる準備を進めている。戦争を進める上でアメリカの支配層が最も嫌い、弾圧してきたのは反戦平和運動だ。第2次世界大戦の終盤、1945年4月にフランクリン・ルーズベルトが急死、大統領がハリー・トルーマンへ交代してからウォール街が実権を掌握、中国では国民党への肩入れを強化していった。本ブログでは何度か紹介したアメリカの破壊工作機関のOPCも上海を拠点にして活動していたが、国民党と戦っていた相手の解放軍が1949年1月に北京へ無血入城、コミュニストの指導部も北京入りし、5月には上海を支配下におく。中華人民共和国が成立するのはその年の10月のことだ。当然、OPCはその前に撤退、日本へ拠点を移した。その中でも中心的な存在だったのが厚木基地だと言われている。敗戦直後の日本では労働運動が盛んだったが、そうした動きを一気に潰す出来事が1949年7月と8月に引き起こされる。7月5日から6日の下山事件、7月15日の三鷹事件、8月17日に松川事件だ。いずれも舞台は国鉄で、当局は共産党が実行したと宣伝、これは効果があった。そして1950年6月に朝鮮戦争が勃発する。現在、東アジアを爆発させかねない火種は朝鮮。その朝鮮では2013年に中国派の重鎮で金正日の妹である金敬姫の夫、張成沢が処刑されている。その際、張の親族を含む周辺も粛清され、金敬姫も毒殺されたと見られている。朝鮮に対する中国の影響力が大きく低下したことは間違いないだろう。ロシアで朝鮮にパイプを持っていた外交官として知られている人物はアンドレイ・カルロフ。トルコ軍機がロシア軍機を撃墜、軍事的な緊張が高まる中、外交的に問題を解決した立役者で、2016年12月にトルコのアンカラで開かれていた美術展覧会場で射殺されたトルコ駐在ロシア大使だ。伝えられるところによると、彼は平壌のソ連大使館で1976年から81年、そして84年から90年まで勤務、92年から97年までは韓国のロシア大使館にいたのだ。カルロスが殺された3カ月後、金正恩の兄で張成沢に近かったといわれる金正男がマレーシアで殺された。中国とロシア以外の国が朝鮮で影響力を強め、軍事的な緊張を高めようとしている可能性がある。そうした状況の中、アメリカの好戦派は日本人を傭兵として使うための準備を急がせているのだろうが、日本側は富と権力を維持拡大することが目的だろう。国連から届いた懸念の書簡など彼らにとって問題ではない。今回の法律、名前はどうであれ、天皇制官僚国家の支配グループが目障りな団体や人間を排除する新たな手段を手に入れたいということだ。
2017.05.24
ドナルド・トランプ米大統領は訪問先のサウジアラビアで5月21日に演説、その後イスラエルへ向かった。ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)などを撲滅する必要があると語ったと報道されているが、ダーイッシュやアル・カイダ系武装集団と呼ばれているサラフィ主義者/ワッハーブ派やムスリム同胞団を中心とする武装勢力の戦闘員を雇い、戦費を負担してきたのはサウジアラビアやカタールといったペルシャ湾岸産油国だ。この関係はトランプも2014年9月にツイッターで書いている。アメリカの「同盟国」がアル・カイダ系武装集団やダーイッシュと連携していることはトランプだけがいっている話ではない。アメリカの政府高官や軍人も認めてきた事実だ。例えば、2014年9月にトーマス・マッキナニー空軍中将はアメリカがダーイッシュを組織する手助けをしたと発言、マーティン・デンプシー統合参謀本部議長(当時)はアラブの主要同盟国がダーイッシュに資金を提供していると議会で語っている。同じ年の10月にはジョー・バイデン米副大統領がハーバーバード大学で中東におけるアメリカの主要な同盟国がダーイッシュの背後にいると述べた。2015年にはウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官もアメリカの友好国と同盟国がダーイッシュを作り上げたと語っている。そしてフリン元DIA局長は2015年8月、アル・ジャジーラの番組へ出演した際にダーイッシュが勢力を拡大できたのはバラク・オバマ政権の政策があったからだと指摘しているのだが、その発言はフリンが局長時代、2012年8月にDIAがバラク・オバマ政権へ出した報告書に絡んで質問を受けて出てきた。その中で、反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIだと指摘している。オバマ政権が主張するところの「穏健派」は存在しないと指摘しているのだ。さらに、オバマ政権が政策を変更しなかったならば、シリアの東部(ハサカやデリゾール)にはサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告していた。オバマ政権で国務長官だったジョン・ケリーもアメリカが反シリア政府軍に武器を提供し、戦闘員を訓練していることも認めている。その発言は2016年9月のもので、その音声が後にインターネット上へアップロードされた。シリアやリビアに対する侵略戦争が顕在化する4年前の段階で、アメリカ、サウジアラビア、そしてイスラエルがシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラに対する秘密工作を開始したと指摘されている。同年3月5日付けニューヨーカー誌で調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュが書いた、そうした内容の記事が掲載されたのだ。その中で、ジョンズホプキンス大学高等国際関係大学院のディーンで外交問題評議会の終身メンバーでもあるバリ・ナスルの発言をハーシュは引用、「サウジは相当な金融資産があり、ムスリム同胞団やサラフ主義者と深い関係がある」としたうえで、「サウジは最悪のイスラム過激派を動員することができた。一旦、その箱を開けて彼らを外へ出したなら、2度と戻すことはできない。」と警告している。言うまでもなく、外交問題評議会は欧米支配層と深い関係にある団体で、支配層の内部にもネオコン、サウジアラビア、イスラエルの侵略計画を懸念する人がいたということだ。イスラエル政府は自分たちのアル・カイダ系武装集団に対する好意的な見方を隠していない。例えば、2013年9月には駐米イスラエル大使だったマイケル・オーレンはシリアのアサド体制よりアル・カイダの方がましだと語っている。またモシェ・ヤーロンは2016年1月19日、INSS(国家安全保障研究所)で開かれた会議で、イランとダーイッシュならば、ダーイッシュを選ぶと発言したと伝えられている。アメリカをはじめとする侵略国とアル・カイダ系武装集団との関係を象徴する光景が2011年10月、リビアのムハンマド・アル・カダフィ体制が倒された直後に見られた。反カダフィ勢力の拠点だったベンガジで、裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられたのだ。その様子はYouTubeにアップロードされ、デイリー・メイル紙も伝えている。ダーイッシュは2014年1月にファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはイラクのファルージャやモスルを制圧し、トヨタ製の真新しい小型トラック「ハイラックス」を連ねた「パレード」を行って広く知られるようになった。当然、そうした動きをアメリカの軍や情報機関は知っていた。彼らは偵察衛星、無人機、通信傍受を保有、人間による情報活動のネットワークもある。小型トラックのパレードは格好の攻撃目標だったはずだが、何もしていない。イラクの首相だったヌーリ・アル・マリキは2014年3月、サウジアラビアやカタールを反政府勢力へ資金を提供していると批判、ロシアへ接近する姿勢を明確にしていた。アメリカ政府も反政府武装勢力の仲間だと認識していたということだ。イラクでは2014年4月に議会選挙があり、マリキを支えるシーア派聯合が328議席のうち157議席を獲得している。マリキが首相を続ければ、イラクはロシアへ接近する。そうした状況の中、フアード・マアスーム大統領はマリキを首相に指名することを拒否、アル・アバディが9月から首相を務めることになった。アメリカ政府からの圧力があったということだろう。1997年から2001年までイギリスの外相を務めたロビン・クックも指摘しているように、アル・カイダとはCIAがアフガニスタンでロシア軍を潰すために雇い、訓練した数千名に及ぶムジャヒディン(聖戦士)のコンピュータ・ファイル。アラビア語でアル・カイダとは「ベース」を意味し、「データベース」の訳として使われる。戦闘集団にはさまざまなタグが付けられるが、その実態は同じ。「アル・カイダ」からピックアップされた戦闘員が中心になった武装集団にすぎない。そうしたアル・カイダ系武装集団やダーイッシュに最も大きな影響力を持っていると言われているのがサウジアラビアの副皇太子で国防相でもあるモハンマド・ビン・サルマン。そのサルマンは今年3月にホワイトハウスでトランプと会談、アメリカのインフラを整備するために400億ドルを投資する計画だと語ったという。今回の演説でトランプはイランに対する軍事的な圧力を強める発言をする一方、サウジアラビアがアル・カイダ系武装勢力やダーイッシュのスポンサーだという事実、あるいは2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎に対する攻撃にサウジアラビアが関係している疑惑には触れなかったようだ。シリアやイエメンへの侵略で苦境に立ち、自らが仕掛けた原油相場の暴落で自国の財政が厳しい状況に陥っているサウジアラビアとしては、軍事的な緊張の高まりで原油価格が上昇することを願っているとも推測されている。
2017.05.23
アメリカが主導する同盟軍がヨルダンからシリアの南部へ侵攻しつつある。5月18日にはアメリカが主導する同盟軍の軍用機がヨルダン領内からシリア領空へ侵入、シリア南部のアル・タンフ近くで政府軍を攻撃、T-62戦車2輌を破壊、6名の兵士を殺害、何人かを負傷させたとされている。2015年9月30日にシリア政府の要請でロシア軍が空爆を始めてからアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)が劣勢になり、ここにきて政府軍はイラクとの国境近くも制圧しそうな勢いだ。トルコとの関係が悪化して北部からの侵略ルートをこれまでのように使えなくなっているが、イラクとの国境線をシリア政府軍が押さえたなら、侵略軍はイラクとの行き来も困難になる。そこでイギリス軍やアメリカ軍はヨルダンで同国軍と共同で拠点を築き、そこからシリアへ侵入している。アル・タンフの周辺では米英の特殊部隊が反シリア政府軍を訓練しているのだが、そこへ政府軍が迫り、アメリカ主導軍による空爆につながった。そうした動きに対応してロシア軍は空挺部隊と特殊部隊をシリア南部のスワイダーへ軍事顧問団として派遣、アル・タンフへ向かっているシリア政府側の部隊にはロシアのSu-30戦闘機が支援のためについたとも伝えられている。反シリア政府軍はどのような名称で呼ばれようとその内情に変化はない。2012年8月にアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)がバラク・オバマ政権へ報告したように、サラフィ主義者/ワッハーブ派、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団だ。アル・カイダ系武装集団とは集合体につけられたタグであり、サラフィ主義者/ワッハーブ派やムスリム同胞団は戦闘員の出身母体の呼び名だ。つまり、現在、アメリカやイギリスの特殊部隊が訓練している戦闘員もそうした人びとだ。しかし、アメリカ側はそうした戦闘集団の幹部をシリアのデリゾールやイラクのモスルから救出する一方、アメリカ陸軍の第75歩兵連隊がアレッポのマンビジへ入り、アメリカの第11海兵遠征部隊がジブチからクウェート経由でシリアのラッカへ侵攻したとも伝えれていた。
2017.05.22
6月11日に玉川学園コミュニティーセンターで「私的権力が公的権力を支配するアメリカ」について話をします。そうした仕組みをフランクリン・ルーズベルトはファシズムだと定義しました。TPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新サービス貿易協定)はそれをさらに進めるものでした。その目論見は消えないでしょう。侵略戦争や監視/治安体制の強化は私的権力のために行われています。興味のある方は主催者まで連絡してください:tokyo2014a@gmail.com
2017.05.21
アメリカの有力メディアは正体不明の情報源が語ったという真偽不明の話で世界を戦争へと導き、今はドナルド・トランプ大統領を攻撃している。デニス・クシニッチ元下院議員もFOXニュースの番組で指摘しているが、深層国家がアメリカの政治システムを攻撃している。マイケル・フリン国家安全保障担当補佐官が2月13日に辞任した直後、ジャーナリストのグレン・グリーンワルドはクーデターという表現を使っていた。現在、トランプ攻撃の最前線にいるのがジェームズ・コミー前FBI長官だ。CNNやNBCを含むメディアによると、フリンに関する調査を中止するようにトランプ大統領が自分に言ったとコミーはメモに書いたと情報源が語っているらしい。その情報源が何者かはわからない。これは本人が語ったわけでないのだが、コミー本人は長官だった5月3日に宣誓の上で証言した際、捜査を打ち切るように圧力を受けたことはないと述べている。その発言から5日後に彼は解任され、アンドリュー・マッカビ副長官が長官代理になった。解任されたとき、コミーは寝耳に水で驚いたようで、解任を予想させるような出来事はなかったということだろう。その後、CNNが伝えたところによると、コミーの考えに精通している人物の話だとして、ドナルド・トランプ大統領がロシアに関する調査についてコミーの判断に影響を及ぼそうとしたと信じるようになったが、犯罪的な気持ちで手続きを妨害する意思を持っていたかどうかは証明することが難しいらしい。フリンに関する調査を中止するようにといった具体的なことを言われたようには思えない。この話を本当にコミーがしたかどうかもわからない。ユーゴスラビアにしろ、アフガニスタンにしろ、イラクにしろ、リビアにしろ、シリアにしろ、ウクライナにしろ、アメリカをはじめとする西側の有力メディアは侵略の前に偽情報を大々的に流してきた。それほど時をおかずに嘘がばれることも珍しくないが、それでも公然と嘘をつき続け、多くの人はその嘘を事実だとして受け入れてきた。トランプ攻撃でも同じことが繰り返されている。
2017.05.21
DNC(民主党全国委員会)のスタッフだったセス・リッチが殺されたのは2016年7月10日のことだった。背中を2度撃たれていたが、発見されたときには息があり、病院で死亡したという。警察は強盗にあったと発表したが、金目のものは盗まれていない。警察の発表に納得できなかったリッチの両親はワシントンDC警察で殺人課刑事だった私立探偵リッチ・ウィーラーを雇って調査を始め、そのウィーラーはDNC幹部の間で2015年1月から16年5月までの期間に遣り取りされた4万4053通の電子メールと1万7761通の添付ファイルをセス・リッチがWikiLeaksへ渡したという情報を得た。その話をウィーラーが公表した直後、セス・リッチの遺族からウィーラーや話を伝えたFOXニュースへ抗議があり、ウォーラーは発言を撤回する。遺族のスポークスパーソンであるブラッド・バウマンの発表だが、この危機コンサルタントが所属するPR会社のパストラム・グループは民主党も顧客だとWikiLeaksが指摘。民主党、あるいはその関係者がセナ・リッチに関する話を封印しようとしているように見える。ウィーラーはセス・リッチが殺された事件で警察の幹部やFBIが捜査を打ち切らせたとしていたが、ワシントンDC警察長だったキャシー・ラニエーは8月16日、9月で辞職してナショナル・フットボール・リーグの保安責任者に就任すると発表している。
2017.05.20
アメリカが主導する同盟軍がシリアの南部、アル・タンフ近くで政府軍を攻撃したという。アル・タンフではアメリカとイギリスの特殊部隊が反シリア政府軍を訓練、その侵略部隊はそこからデリゾールを攻撃しようと計画、そうした動きを懸念したシリア政府軍は部隊を派遣したと見られている。シリア側の説明では、アメリカが主導する同盟軍の軍用機がヨルダン領内からシリア領空へ侵入、T-62戦車2輌が破壊され、6名の兵士が死亡、3名が負傷したようだ。2011年3月からアメリカを中心とする侵略勢力はトルコを軍事作戦の最重要拠点にしてきた。そうした侵略勢力が手先として使ってきたアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)は2015年9月30日にロシア軍がシリア政府の要請で空爆を開始してから劣勢になり、バシャール・アル・アサド政権の打倒は困難な状況だ。そこでアメリカはクルド勢力への肩入れを強めているのだが、それによってトルコとの関係が悪化してしまった。そこで新たな戦線として浮上しているのが南部、ヨルダンやイスラエルとの国境地帯だ。5月に入り、アメリカ、イギリス、ヨルダンの軍隊がシリア侵略の準備を進め、アメリカ軍の部隊が侵攻しているとも伝えられていた。アメリカ軍の侵攻は「自由シリア軍」を訓練することが目的だとされているが、その実態はアル・カイダ系武装集団やダーイッシュと同じ。つまり傭兵だ。シリア国内には侵略軍と連携する勢力がほとんど存在しなかったため、当初からサラフィ主義者(ワッハーブ派)やムスリム同胞団を中心とする傭兵が使われていた。バラク・オバマ政権はシリアの戦乱を「内戦」だと強弁、反政府軍の「穏健派」を支援するとしていたが、2012年8月にアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)が作成した報告書はそうした実態はないことが報告されている。反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIだということだ。ほかの情報と照らし合わせても、この報告は正しい。報告書の中でシリアの東部(ハサカやデリゾール)にはサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告されているが、これはダーイッシュという形で現実になった。この報告書が書かれた当時のDIA局長がドナルド・トランプ政権で安全保障担当補佐官に就任する予定のマイケル・フリン中将。オバマやヒラリー・クリントンを含む侵略勢力がフリンを嫌うのは当然。ここにきてシリア国内の蜂起軍が出現した可能性はゼロに近く、これまでと同じように国外で雇われた傭兵の部隊をアメリカ、イギリス、ヨルダンが支援しているということだろう。今回のアメリカ側の攻撃をロシア政府は批判しているが、アメリカの好戦派はロシア政府が核戦争を恐れ、アメリカの軍事作戦を妨害できないと今でも信じている可能性はある。その「信仰」が崩れたなら、彼らが1992年2月に立てた世界制覇プランは崩壊、戦争責任を問われる事態も想定できる。アメリカは何をしでかすかわからない国だと思わせれば自分たちが望む方向へ世界を導けるとリチャード・ニクソンは考え、イスラエルのモシェ・ダヤン将軍はイスラエルも狂犬のようにならなければならないと語ったが、ネオコンも脅せば屈すると考えている。アメリカ政府が機能不全になっている間に軍事的な緊張を一気に高めようとしているのかもしれない。安倍晋三政権が戦争の準備を急ぐのはそうした背景があるからだろう。
2017.05.20
FBI長官だったジェームズ・コミーは5月3日、捜査を打ち切るように圧力を受けたことはないと宣誓の上で発言、その映像がインターネット上にアップロードされている。その発言から5日後に彼は解任され、アンドリュー・マッカビ副長官が長官代理になった。この人物の妻であるジル・マッカビは2015年3月にバージニア州上院議員選挙への出馬を表明、67万5000ドル以上をクリントンと親しいテリー・マコーリフなどから受け取っていた。問題はその時の夫の立場。2015年当時、アンドリューはFBIのワシントンDC担当で、クリントンの電子メール捜査を指揮する立場にあったのだ。本来ならこの件を担当してはならなかった。コミーを解任し、アンドリュー・マッカビを長官代理にする人事はロッド・ロゼンスタイン司法副長官が行ったとも伝えられている。ロバート・マラーが特別検察官に任命される際にもロゼンスタインが中心的な役割を果たした。コミーはヒラリー・クリントンに近い人物だが、クリントンが国務長官時代に電子メールの遣り取り絡み、機密情報の取り扱いに関する法規に批判した可能性があり、またそうした情報をきわめて軽率に扱っていたことを認めている。その上で司法省に対して彼女の不起訴を決めていた。コミーの声明が発表された5日後、2016年7月10日にDNC(民主党全国委員会)のスタッフだったセス・リッチが殺された。背中を2度撃たれていたが、発見されたときには息があり、病院で死亡したという。警察は強盗にあったと発表したが、金目のものは盗まれていない。警察の発表に納得できなかったリッチの両親はワシントンDC警察で殺人課刑事だった私立探偵リッチ・ウィーラーを雇って調査を始める。調査の結果、DNC幹部の間で2015年1月から16年5月までの期間に遣り取りされた4万4053通の電子メールと1万7761通の添付ファイルをWikiLeaksへ渡したのはセス・リッチだということが判明たという。ウィーラー自身、その話を確認していたが、その後、セス・リッチの遺族からウィーラーや話を伝えたFOXニュースへ抗議があり、ウォーラーは発言を撤回する。トランプを攻撃していた勢力にとって都合の悪い話だ。セス・リッチとWikiLeaksとの関係はセスが殺された直後から指摘されていた。事件の翌月、WikiLeaksのジュリアン・アッサンジはDNCの電子メールを提供した人物はリッチだと示唆、射殺事件に関する情報提供者に2万ドルを提供するとツイッターに書き込んでいる。そうしたことから、ウィーラーに関するウィーラーの話は驚きでなかった。ウィーラーの話が伝えられる直前、つまり5月15日にワシントン・ポスト紙は機密情報がドナルド・トランプ米大統領からセルゲイ・ラブロフ露外相へ伝えられたと報道、それ以降、有力メディアは反露ドグマに基づいてトランプを攻撃し、ロバート・マラーが特別検察官に任命された。ワシントン・ポスト紙によると、その機密情報とはイスラム国(ダーイッシュ。IS、ISIS、ISILとも表記)情報の重要な情報源を危険にさらすもので、アメリカの「同盟国」と共有している情報も含まれているという。本ブログでは繰り返し書いてきたように、アル・カイダ系武装集団にしろダーイッシュにしろ、背後にはアメリカの好戦派やアメリカの同盟国がいるわけで、ダーイッシュを敵と考えることは、そうした黒幕にとって都合の悪いことだ。トランプとラブロフの会議録をアメリカの議会へ提供する用意があるとウラジミル・プーチン大統領は記者会見で語っているが、アメリカの一部議員は即座に拒否していた。
2017.05.19
イスラエルの情報機関モサドを1990年代に率いていたシャブタイ・シャビトは5月17日、ドナルド・トランプ大統領を懲罰すべきだと語った。トランプがロシアのセルゲイ・ラブロフ外相へイスラム国(ダーイッシュ。IS、ISIS、ISILとも表記)に関する重要な情報源を危険にさらす情報を伝えたとワシントン・ポスト紙が15日に報じたことを受けてそのように発言したようだ。イスラエルはサウジアラビアと同じように、1970年代の終盤からムスリム同胞団やサラフィ主義者を戦闘員の中心とする戦闘集団の編成、訓練、武器/兵器の提供などを行ってきた。当初の目的はソ連軍との戦闘だが、今では中東や北アフリカを侵略、支配する手先として使っている。2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された際、ジョージ・W・ブッシュ政権はアル・カイダが実行したと詳しい調査をせずに断定、中東を侵略する雰囲気を作っていった。しかし、アル・カイダという武装集団が存在しないことは本ブログで何度も指摘してきた。ロビン・クック元英外相も指摘しているように、アル・カイダとはCIAがアフガニスタンでロシア軍を潰すために雇い、訓練した数千名に及ぶムジャヒディン(聖戦士)のコンピュータ・ファイル、つまり傭兵のデータベースを意味している。5月16日、イスラエルで住宅建設大臣を務めているヨアブ・ガラントはシリアのバシャール・アル・アサドを暗殺するべき時がきたと主張した。2016年8月8日にはヒラリー・クリントンを支援していたマイク・モレル元CIA副長官(2011年7月1日から9月6日、12年11月9日から13年3月8日の期間は長官代理)も似たことを公言している。チャーリー・ローズの番組で、ロシア人やイラン人に代償を払わせるべきだと語ったのだ。それについてローズはロシア人とイラン人を殺すという意味かと質問、モレルはその通りだと答えている。その前、2015年11月5日にロシアのメディアRTを創設、ウラジミル・プーチン露大統領の顧問も務めていたミハイル・レシンがワシントンDCのホテルで死亡した際も殺人説が出ていたが、モレルの殺害発言後、2016年11月8日にアメリカのロシア領事館で副領事が死亡、12月19日にはトルコの美術館でトルコ駐在大使が射殺され、12月20日にはロシア外務省のラテン・アメリカ局幹部がモスクワの自宅で射殺され、12月29日にはKGB/FSBの元幹部の死体が自動車の中で発見され、17年1月9日にはギリシャ駐在のロシア領事がギリシャのアパートで死亡、1月26日にはインド駐在大使が心臓発作で死亡、そして2月20日にはビタリー・チュルキン国連大使が心臓発作で急死している。2016年9月6日にはプーチン大統領の公用車を運転していた人物がモスクワで交通事故のために死亡しているが、ガラント発言からプーチン暗殺を連想した人もいるようだ。こうしたことを考えると、イスラエルやアメリカの手先として戦ってきたアル・カイダ系武装集団やダーイッシュがイスラエルを攻撃せず、侵略戦争を推進してきたアメリカの要人たちが身の危険を感じずに生活していることは不思議でない。しかし、イスラエルとダーイッシュが全く戦わないというわけでもない。昨年11月、ゴラン高原でダーイッシュとイスラエル軍が交戦したと伝えられているのだが、4月22日にイスラエルのモシェ・ヤーロン国防相は交戦の後にダーイッシュ側から謝罪があったと語っている。詳細は明らかにされていないが、間違って攻撃したということだろう。このヤーロンは昨年1月19日、INSS(国家安全保障研究所)で開かれた会議で、イランとダーイッシュならば、ダーイッシュを選ぶと発言したという。イスラエルとダーイッシュとの関係を示す発言だが、そうしたことを主張するイスラエル人は彼以外にもいる。アメリカではイスラエルを批判することは即、キャリアの崩壊を意味する。トランプの周辺にはイスラエル人脈が張り巡らされているが、それにもかかわらず、ここにきてイスラエル政府はトランプを嫌っている。
2017.05.18
ドナルド・トランプ米大統領からセルゲイ・ラブロフ露外相へ機密情報が伝えられたとアメリカの有力メディアは主張、反露ドグマに基づいてトランプを攻撃している。ワシントン・ポスト紙によると、その機密情報とはイスラム国(ダーイッシュ。IS、ISIS、ISILとも表記)情報の重要な情報源を危険にさらすもので、アメリカの「同盟国」と共有している情報も含まれているという。本ブログでは何度も繰り返し書いてきたが、ダーイッシュはアル・カイダ系武装集団から派生している。1997年から2001年までイギリスの外相を務めたロビン・クックも指摘しているように、アル・カイダとはCIAがアフガニスタンでロシア軍を潰すために雇い、訓練した数千名に及ぶムジャヒディン(聖戦士)のコンピュータ・ファイル。アラビア語でアル・カイダとは「ベース」を意味し、「データベース」の訳として使われる。CIAは訓練した戦闘員へ対戦車ミサイルTOWや携帯型地対空ミサイルのスティンガーを含む武器/兵器を供給してきたが、戦闘員を雇い、戦費を負担してきたのはサウジアラビアを中心とするペルシャ湾岸の産油国であり、イスラエルも協力してきた。この構図はイラク侵攻制圧作戦が泥沼化した後に復活する。2007年3月5日付けニューヨーカー誌で調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュはアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの「三国同盟」がシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラに対する秘密工作を開始、サウジアラビアはムスリム同胞団やサラフィ主義者を戦闘員として使ったが、それが深刻な事態を招くことを警告する意見も紹介している。その秘密工作は2011年春に顕在化した。イスラエルがアル・カイダ系武装勢力やダーイッシュを助けるためにシリアを空爆したり負傷した戦闘員を治療していることは知られているが、それだけではない。例えば、2013年9月には駐米イスラエル大使だったマイケル・オーレンはシリアのアサド体制よりアル・カイダの方がましだと語っている。オーレンはベンヤミン・ネタニヤフ首相の側近。また国防長官だったモシェ・ヤーロン国防相(当時)は2016年1月19日、INSS(国家安全保障研究所)で開かれた会議で、イランとダーイッシュならば、ダーイッシュを選ぶと発言したという。アメリカの「同盟国」がアル・カイダ系武装集団やダーイッシュと連携していることはアメリカの政府高官や軍人も認めてきた。例えば、2014年9月にトーマス・マッキナニー空軍中将はアメリカがダーイッシュを組織する手助けをしたと発言、マーティン・デンプシー統合参謀本部議長(当時)はアラブの主要同盟国がダーイッシュに資金を提供していると議会で語っている。また、同じ年の10月にはジョー・バイデン米副大統領がハーバーバード大学で中東におけるアメリカの主要な同盟国がダーイッシュの背後にいると述べ、2015年にはウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官もアメリカの友好国と同盟国がダーイッシュを作り上げたと語った。そしてマイケル・フリン元DIA局長は2015年8月、アル・ジャジーラの番組へ出演した際にダーイッシュが勢力を拡大できたのはバラク・オバマ政権の政策があったからだと指摘している。国務長官だったジョン・ケリーは2016年9月、シリア情勢について語っているのだが、その音声がインターネット上にアップロードされた。その中で、ロシアは正当な政権に招き入れられたが、われわれは招かれていないとしている。これは事実だ。アメリカが反シリア政府軍に武器を提供し、戦闘員を訓練していることも認めている。その結果、ダーイッシュは強くなり、ロシア軍を軍事介入させることになり、状況は一変した。ケリーはロシアが方程式を変えてしまったと表現している。アメリカやその同盟国がアル・カイダ系武装集団と連携していることを象徴する出来事がリビアのムハンマド・アル・カダフィ体制が倒された直後に見られた。反カダフィ勢力の拠点だったベンガジで、裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられたのだ。その様子はYouTubeにアップロードされ、デイリー・メイル紙も伝えている。もしトランプ大統領が本当にダーイッシュに関する情報をロシア外相へ伝えたのならば、その武装集団を操ってきたアメリカの同盟国に敵対する行為というだけでなく、アメリカの好戦派に対する挑戦であり、そのプロパガンダ機関である有力メディアにとっても許しがたい行為。これまでそうした武装勢力を使って侵略戦争を繰り広げてきた勢力にとっては深刻な事態になる。アメリカ側でそうした仕組みの中心にいるのがネオコンであり、アメリカの議員大半も「ムジャヒディン」を使った侵略に賛成してきた。
2017.05.18
アメリカでは「ロシア」をキーワードにして2001年9月11日から続く国外での侵略戦争と国内の治安体制強化を進めようとする勢力が存在している。手口は1950年代にジョセフ・マッカーシー上院議員の「レッド・パージ」と同じ。大々的なプロパガンダで創り出した幻影で人びとを操り、自分たちが思い描く体制を作り上げようというわけだ。その幻影を作り上げる仕掛けの中心には有力メディアとハリウッドの映画界が存在している。ネオコンなどヒラリー・クリントンを担いでいた勢力は軍事的に世界を制覇するというプランに固執、リビアやシリアをアル・カイダ系の傭兵集団で侵略、ウクライナではネオ・ナチでクーデターを実行した。さらに、脅して屈服させるというネオコンの基本戦術を脅しに屈しないロシアや中国に対しても使い、核戦争の危険性を高めてきた。ドナルド・トランプを担いだ勢力は、その狂気から離れようとしているのだろう。しかし、ネオコンの陣営は強固だ。有力メディアは彼らのプロパガンダ手段であり、議会の大半も買収されている可能性が高い。そこで「ロシア」というタグでトランプを攻撃、それに合わせて話も作ってきた。外部に漏れた電子メールは内容に触れず、ロシアがハッキングして漏らしたと主張、トランプやマイケル・フリンはロシアとつながっている叫んでいるが、そうした主張に根拠や証拠といった類いのものはなく、信仰を求めている。しかし、電子メールを流している人物は情報機関の内部、あるいは民主党の内部にいると言われ、ロシア政府とトランプ陣営の話に問題はないとも指摘されてきた。DNC(民主党全国委員会)に関係した電子メールの場合、2016年7月22日にWikiLeaksが公表しているが、その12日前、DNCでコンピュータを担当していたスタッフのセス・リッチが背中を2度撃たれて殺されている。事件の翌月、WikiLeaksのジュリアン・アッサンジはリッチについてDNCの電子メールを提供した人物だと示唆していた。前回も書いたように、リッチのガールフレンドによると、彼の顔、手、膝には擦り傷があるのだが、金目のものは盗まれていない。警察の発表に納得できなかったリッチの両親が雇ったは元殺人課刑事の私立探偵リッチ・ウィーラーによると、彼がWikiLeaksと連絡を取り合っていたことを確認、しかも警察の内部で捜査打ち切りが指示されていたとする話が出て来た。ウィーラーが接触した警察内部の人物が正しいなら、FBI内部でも殺人の真相は知られている。FOXニュースはそのFBIの情報源からリッチからWikiLeaksへDNC幹部間で遣り取りされた4万4053通の電子メールと1万7761の添付文書が渡ったとする証言を得たとしている。また、トランプがロシアのセルゲイ・ラブロフ外相へ伝えてはならない機密情報を伝えたという根拠不明の話をアメリカの有力メディアは流しているが、それに対してウラジミル・プーチン露大統領はふたりの会議録をアメリカ政府から要請があれば公表する用意があると記者会見で明言している。この提案を受け入れたくないアメリカの共和党議員はプーチンの出すものは信用できないと逃げいている。信用できるかどうかをチェックしたくないということだ。ユーゴスラビアやイラクを先制攻撃する前もそうだったが、信用すべき情報はアメリカの支配層が発表するものだけだという姿勢。こうなるとカルトの信者と同じ。かつてアメリカの好戦派はベトナムに対する本格的な軍事介入を実現するため、トンキン湾事件をでっち上げた。ベトナムからアメリカ軍を撤退させることを決めていたジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された翌年、1964年の7月30日に南ベトナムの哨戒魚雷艇が北ベトナムの島を攻撃、翌31日に米海軍の特殊部隊SEALsの隊員が率いる20名の南ベトナム兵がハイフォン近くにあるレーダー施設を襲撃したのがはじまり。ケネディ大統領暗殺の公式見解には全く説得力がなく、独自の調査で真相に迫った人たちがいる。そうした調査結果を封印するため、1964年頃から使われ始めたタグが「陰謀論」だ。攻撃を受けた北ベトナムは8月2日、近くで情報を収集していたアメリカ海軍のマドックスを攻撃、それをアメリカ側は先制攻撃だと主張し、8月7日に議会は「東南アジアにおける行動に関する議会決議(トンキン湾決議)」を可決したのだ。そうしてベトナムへの本格的な軍事介入が始まる。1965年2月には北ベトナムに対する空爆も開始した。(Douglas Valentine, "The Phoenix Program," William Morrow, 1990)1999年にアメリカはNATOを使ってユーゴスラビアを先制攻撃、ロボダン・ミロシェビッチの自宅や中国大使館も爆撃している。ビル・クリントン政権が戦争へ舵を切ったのはヒラリー・クリントンと親しく、ズビグネフ・ブレジンスキーの教え子であるマデリーン・オルブライトが国務長官に就任した1997年から。このユーゴスラビア攻撃はソ連消滅後の東ヨーロッパを制圧する一環だった。その制圧計画のベースは1992年2月に国防総省のDPG草案(いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリン)という形で作成された作成された計画。当時の大統領はジョージ・H・W・ブッシュだった。その前年、1991年の12月にソ連が消滅、アメリカが唯一の超大国になったという前提でそのプロジェクトはできあがっている。その計画が一気に進むのは2001年9月11日の出来事から。この日、たニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎に対する攻撃。この攻撃の真相は明らかになっていないが、公式見解に説得力がないことは確かだ。説得力はないのだが、有力メディアのプロパガンダに踊る人もいて、アメリカでは憲法の機能が停止、侵略戦争、治安強化、国の私有化が推進される。侵略の手始めはアフガニスタン、さらにイラクが先制攻撃で破壊され、多くの人が虐殺された。
2017.05.18
民主党全国委員会(DNC)でコンピュータを担当していたスタッフのセス・リッチが背中を2度撃たれて殺されたのは昨年7月10日のこと。発見されたときには息があり、病院で死亡したという。警察は強盗にあったと発表した。しかし、リッチのガールフレンドによると、顔、手、膝に擦り傷があって争った形跡はあるのだが、金目のものは盗まれていない。警察の発表に納得できなかったリッチの両親は元殺人課刑事の私立探偵リッチ・ウィーラーを雇って調査を始めたのだが、その結果、セスがWikiLeaksと連絡を取り合っていたことを確認、しかも警察の内部で捜査打ち切りが指示されていたとする話が出て来た。事件の翌月、WikiLeaksのジュリアン・アッサンジはリッチについてDNCの電子メールを提供した人物だと示唆、射殺事件に関する情報提供者に2万ドルを提供するとツイッターに書き込んでいる。リッチが殺される5日前、ジェームズ・コミーFBI長官はヒラリー・クリントンが国務長官だった時代の電子メールに関する声明を発表している。その中で彼女は機密情報の取り扱いに関する法規に批判した可能性があり、またそうした情報をきわめて軽率に扱っていたことを認めているのだが、その上で司法省に対して彼女の不起訴を勧告していた。法律に従って電子メールを送ると公務ということで記録に残され、情報公開の対象になるため、クリントンは指摘にサーバーを用意して電子メールを遣り取りしていたと言われている。そうした電子メール3万2000件近くをクリントンは削除、その削除された電子メールを持っていないこともクリントンを起訴しない理由だとされている。サウス・カロライナ州選出の下院議員トレイ・ゴウディによると、クリントンは削除のためにブリーチビットというソフトウェアを利用しているが、これを使うと削除した文書を回復させられないだけでなく、削除した痕跡を消すこともできるという。しかし、NSAの不正を内部告発したウィリアム・ビニーも指摘しているように、アメリカの電子情報機関NSAは全ての電子メールを記録しているので、FBIがその気になれば入手できる。FBI長官はクリントンを法律から守ったのだ。2015年5月26日の時点で民主党幹部たちはヒラリー・クリントンを候補者にすると決めていたことを示唆する電子メールが露見、16年7月22日にはWikiLeaksがハッキングされたDNCの電子メールを公表する。その中には、民主党の幹部へサンダースが同党の大統領候補になることを妨害するよう求めるものも含まれていた。(例えばココ)また、投機家で体制転覆の仕掛け人としても知られているジョージ・ソロスの電子メールも外部に漏れ、その中でソロスが国務長官時代のヒラリー・クリントンに対してアルバニア情勢に対する対処の仕方をアドバイスしていることも発覚した。そのメールが書かれたのは2011年1月24日で、国務長官だったクリントンはソロスのアドバイスに従って動いている。そのほか、2012年9月11日にベンガジのアメリカ領事館が襲撃され、そこでクリストファー・スティーブンス大使が殺された事件に関するものも含まれている。ベンガジを含む襲撃に資金を出したのはサウジアラビアのスンニ派(ワッハーブ派)だということを示す証拠をフランスとリビアの情報機関が持っているというのだ。クリントンに関連した電子メールが外部に漏れ、その提供者だったと見られているリッチが射殺されたわけだが、ほかにも疑惑の死が指摘されている。例えば、クリントンやDNCに関する証言をする前日、6月22日に心臓発作で急死した元国連総会議長のジョン・アシュ。この人物は中国人実業家から130万ドル(約1億6000万円)の賄賂を受け取った疑いで昨年、逮捕されている。6月23日にはクリントン夫妻の資金に関する疑惑を記事にした編集者のマイク・フリンが死亡、そして7月10日にセス・リッチが殺され、8月1日にはクリントン夫妻に関する本を書いたビクター・ソーンが自宅近くの山で銃撃による傷が原因で死亡、8月4日にはクリントンとDNCの不正を追及していたサンダース支持者の弁護士のショーン・ルーカスが自宅で死体になって発見されている。また、ヒラリー・クリントンの側近のひとり、ボブ・ベッケルは2010年にWikiLeaksのアッサンジ殺害をフォックス・ニュースの番組で口にしている。彼を反逆者だとしたうえで、死刑を望めないので、法律を無視して撃ち殺すしかないと語っている。その翌年にベッケルはフォックス・ニュースに雇われ、現在はCNNのコメンテーターだ。ハッキングが明らかになって以来、西側の有力メディアは電子メールの中身を問題にせず、盗み出したのはロシアだと宣伝してきたが、ウィリアム・ビニーはNSAから漏れているのではないかと推測している。1963年11月22日のジョン・F・ケネディ大統領暗殺以降、戦争に反対していた有名人が殺されたり変死したりしているほか、1980年代には憲法の機能を停止させる目的でCOGプロジェクトが始まり、2001年9月11日に始動、その一方でアメリカによる世界制覇を実現しようというウォルフォウィッツ・ドクトリンが1992年2月に作成されている。こうしたことから、アメリカでは長期にわたるクーデターが進行中だと考える人がいる。ヘンリー・キッシンジャー、サイラス・バンス、ジェームズ・ベイカーが国務長官だったときに副次官補を務めたスティーブ・パチェニクはWikiLeaksについて、クーデターを阻止しようとしている情報機関内のグループが作り上げたのではないかと推測している。
2017.05.17
大規模なサイバー攻撃が話題になっている。マイクロソフトのOS、Windowsを使ったコンピュータがターゲットで、アメリカの電子情報機関NSAが開発したETERNALBLUEを使った有害ソフトが使われているという。昨年夏、ShadowBrokersなる個人だかグループがNSAのサイバー攻撃用のソフトを盗み、それをオークションにかけていると話題になっていたが、それが使われたようだ。ところで、マイクロソフトは早い段階からNSAの要請に従い、自社製品の暗号システムのレベルを下げていた会社。調査ジャーナリストのダンカン・キャンベルによると、ニッコ・ファン・ソメーレンは1998年、Windowsのセキュリティ機能をコントロールするソフトウェアに2種類のカギが存在していることを発見したという。ひとつはマイクロソフトが作業に使う合法的なカギだったが、もうひとつは不明。(Duncan Campbell, "Development of Surveillance Technology and Risk of Abuse of Economic Information Part 4/4: Interception Capabilities 2000," April 1999)その後、アンドリュー・フェルナンデスはマイクロソフトの開発者が削除を忘れたカギのラベルを発見する。ひとつのカギにはKEY、もうひとつにはNSAKEYと書かれていた。そのまま読むとNSAのKEY。また、メソーレンはWindows 2000の中に3種類のカギを発見している。第1のカギはマイクロソフト用。第2のカギはアメリカ政府用の合い鍵だとして、第3のカギは目的がわからない。本ブログではすでに書いたことだが、内部告発を支援しているWikiLeaksが公表したVault 7でも、情報機関がその気になれば誰でも監視できることが示されている。CIAのマルウエアはiPhoneやアンドロイド系のスマートフォン、スマートTV、あるいはWindows、OSx、Linux、またWi-Fiルーターに侵入、その情報を入手することができ、利用者が危機をオフにしたつもりでも、本人に気づかれずオンにすることも可能。2015年にサムスンのスマートTVが利用者の会話をスパイしていると問題になったが、こうした危険性があることはインターネットに接続されている機器全てに当てはまる。エドワード・スノーデンもNSAから内部資料を持ち出しているわけでNSAのサイバー攻撃兵器が盗まれる可能性はあるが、意図的に漏らしたことも考えられる。どちらが正しいかは不明だが、少なくとも結果として、アメリカの支配層に楯突くと何が起こるかを世界へ警告することにはなった。もしロシアや中国の軍事システムにも有害ソフトが影響を及ぼしていたなら、アメリカは先制核攻撃の前に防御システムを麻痺させるという警告にもなっただろう。が、すでに電子戦の分野でロシアはアメリカを上回る能力を持っているとも言われ、単に軍事的な緊張を高めるだけで終わったかもしれない。
2017.05.16
タグ、あるいは御札を使って人びとを操る陰陽師的な手法をアメリカや日本の支配層は使っている。人びとの考え方を監視、コミュニケーションを取り締まる法律を「テロ等準備罪」と名づけるのもそうした類いの手法だ。この法律は一般的に共謀罪と呼ばれている。「テロ」というと何かおどろおどろしく、大多数の人には無関係の行為のように思えるのだが、何が「テロ」なのかを決めるのは支配層。しかも「等」なる文字が入っている。庶民の常識と一致しなくても、状況によって支配層は自由に定義することになる。2001年9月11日以降、アメリカ政府は「アル・カイダ」を「テロ」の象徴として掲げてきたが、ロビン・クック元英外相が指摘したように、これはCIAが訓練した「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイルにすぎない。つまり傭兵の名簿。「アル・カイダ」はアラビア語でベースを意味、「データベース」の訳語としても使われるのだ。このアル・カイダ系武装集団をアメリカ支配層が侵略の手先に使っていることは2011年のリビアに対する攻撃で明確になった。その際、NATOの航空兵力と連携、地上で戦っていたLIFGがアル・カイダ系だということは、そのグループの指導者も認めている。リビアでは2011年10月にムアンマル・アル・カダフィ体制は倒され、カダフィ自身は惨殺された。その直後、ベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられている。その映像はYouTubeにアップロードされたほか、イギリスのデイリー・メイル紙も伝えていた。リビアでの「仕事」を終えた戦闘員をCIAが武器/兵器と一緒にトルコ経由でシリアへ運んだことは本ブログでも繰り返し書いてきた。その時に化学兵器もシリアへ持ち込まれたとも言われている。(詳細は割愛)バラク・オバマ政権はシリアの反政府軍を支援していたが、それを正当化するために「穏健派」というタグを使っていた。が、アメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)が2012年8月に作成した報告書は、反政府軍の主力はサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQI、つまり「穏健派」は存在しないと報告している。また、そうした政策は東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフ主義者の支配国をつくることになるとも警告していた。その警告はダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実になったわけだ。アル・カイダ系武装集団がテロリストだとするならば、アメリカ、イギリス、フランス、トルコ、サウジアラビア、カタール、イスラエルなど支援国の政府や有力メディアはテロリストの黒幕、あるいは支援者である。勿論、「テロ等準備罪」はこうした勢力を摘発の対象だとは考えていない。そんなことをすれば、日本の政府やマスコミも取り締まらねばならなくなる。歴史を振り返ると、アメリカの支配層がもっとも警戒している対象はコミュニストや戦争に反対する人びとだ。例えば、アメリカの好戦派がソ連に対する先制核攻撃計画を始動させ、レッドパージの嵐が吹き荒れた1950年代、FBIはCOINTELPROという国民監視プロジェクトを始動させた。反戦集会やデモに捜査官を潜入させ、平和運動を支援していた著名人の尾行、電話盗聴、郵便開封、さらに銀行口座の調査も実施している。(アンソニー・サマーズ著、水上峰雄訳、『大統領たちが恐れた男』、新潮社、1995年)ベトナム戦争に対する反対運動の盛り上がりを受け、1967年8月にCIAはMHケイアスというプロジェクトは始めている。このプロジェクトはCIAの内部でも秘密にされ、盗聴されることを恐れて本部の地下に特別室を作っていた。電子情報機関のNSAも国民を監視、その仕組みは現在に至るまで姿を変えつつ生きながらえている。その間、1970年代の前半にはNSAの内部告発、半ばには議会の調査、その後もダンカン・キャンベルらによる報道でその一端は明らかにされてきた。エドワード・スノーデンの内部告発はその延長線上にある。スノーデンが始めて明らかにした話ではなく、彼の話に驚いていることが驚きだ。これも本ブログで指摘してきたことだが、日本はアメリカの命令で中国と戦争する準備を進めているように見える。それが現実になった場合、共謀罪も威力を発揮することになるのだろう。大逆事件や横浜事件のようなでっち上げも想定できる。
2017.05.15
5月14日午前5時半頃、朝鮮は同国の西岸から弾道ミサイル1発を発射したと伝えられている。韓国ではアメリカの好戦的な政策に抵抗している文在寅が新大統領に就任、13日にはノルウェーから朝鮮へ戻る途中の崔善姫北米局長が北京で記者のインタビューに応じ、条件が整えばアメリカ政府と話し合う用意があると語っていた。その軍事的な緊張を緩和させる動きを1発の弾道ミサイルが壊したと言える。ネオコンを含むアメリカの好戦派にとって好都合な行為。例によって、絶妙のタイミングだ。話し合いの方向へ進む動きが出てくると強力なブレーキがかかるのはいつものこと。例えば、今年3月1日から2日にかけて崔善姫はニューヨークで元アメリカ政府高官と会談する予定になっていたのだが、アメリカの国務省がビザの発行を拒否したことでキャンセルされている。朝鮮だけでなく、アメリカにも東アジアの軍事的な緊張を緩和させたくない人びとが政府内にいるということだろう。勿論、安倍晋三政権もその好戦的陣営に属している。そう言えば、キエフでネオ・ナチを使ったクーデターが進行中だった2014年2月4日、ビクトリア・ヌランド国務次官補(当時)がジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使と「次期政権」の閣僚人事を電話で話し合っている音声がインターネット上にアップロードされた。その中で、政府と反政府派との衝突を話し合いで解決しようとしていたEUに対し、ヌランドは「くそくらえ(F*ck the EU)」と口にしていた。ネオコンの基本スタンスは「脅して屈服させる」。アメリカは何をしでかすかわからない国だと思わせれば自分たちが望む方向へ世界を導けるとリチャード・ニクソンは考え、イスラエルのモシェ・ダヤン将軍はイスラエルも狂犬のようにならなければならないと語ったそうだが、そういうことだ。そうした考え方をする勢力に属しているひとりがヒラリー・クリントンであり、それを批判して大統領に選ばれたのがドナルド・トランプ。ところがトランプはロシアとの関係修復を主張、国家安全保障補佐官だったマイケル・フリン中将を解任し、クリントンの人脈の属すH. R. マクマスターに交代させた。クリントンは戦争ビジネス、金融資本、ネオコンなどを後ろ盾にしている。そのクリントンの暗部に触れる電子メールの問題が昨年、話題になった。中東や北アフリカにおけるアル・カイダ系武装集団を使った秘密工作、リン・フォスター・ド・ロスチャイルドやジョージ・ソロスとの関係はすでに浮上している。ところが、FBIのジェームズ・コミー長官は電子メールについて、クリントンが機密情報の取り扱いに関する法規に批判した可能性があることを認めたうえで、司法省に対して彼女の不起訴を7月5日に決めている。不起訴の理由について、証拠となる万2000件近い電子メールが削除されていたことが挙げられていたが、電子情報機関のNSAは全てのメールを記録しているので、FBIがその気になれば捜査は可能だった。この決定から3カ月後、10月28日にコミー長官は7月の決定を翻してしまう。クリントンの電子メールに関する捜査を再開したと連邦議会に通知したというのだ。クリントンの側近中の側近として知られているフーマ・アベディンの元夫、アンソニー・ウィーナーが所有するパソコンから数万件に及ぶアベディン当ての電子メールが発見され、それが問題になっているという。この決定も翻されるのだが、ここにきて問題になっているのはコミー解任後の人事。長官代理になったのは副長官のアンドリュー・マッカビ。妻のジルは2015年3月にバージニア州上院議員選挙への出馬を表明、67万5000ドル以上をクリントンと親しいテリー・マコーリフなどから受け取っていたというのだ。2015年当時、アンドリューはFBIのワシントンDC担当で、クリントンの電子メール捜査を指揮する立場にあった。コミー長官を解任してマッカビを長官代理にする決定はドナルド・トランプでなく、ロッド・ロゼンスタイン司法副長官が行ったと伝えられている。ロゼンスタインの書いたコミー解任案はクリントンと緊密な関係にある人物をFBIのトップに据え、トランプ大統領を「ロシア話」で攻撃する材料を有力メディアに提供した。この「ロシア話」に関する証拠、根拠は提示されていない。相変わらず偽報道だ。朝鮮のミサイルにしろ、FBI長官の解任にしろ、アメリカ支配層の内部における抗争が影響しているのだろう。
2017.05.14
安倍晋三政権は地上配備型イージスシステム「イージス・アショア」を優先的に導入する方針だと伝えられている。このシステムは1ユニット700億円から800億円(共同によると800億円)。2ユニット必要だということなので、1400億円から1600億円ということになる。韓国にアメリカ軍はTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムのレーダー、ランチャー、通信機器を含む機器がトレーラーでゴルフ場の「ロッテスカイヒル星州カントリークラブ」へ運び込んだが、その能力などを考えればターゲットは中国。朝鮮は関係ない。アメリカにとって朝鮮は東アジアの軍事的な緊張を高める仕掛けのひとつにすぎず、朝鮮を攻撃するとしても目的は中国だ。中国との関係悪化を避けたい韓国がTHAADの配備に抵抗してきた理由もそこにある。日本はTHAADでなくイージス・アショアを選んだ。その理由のひとつとして挙げられているのがコスト。THAADは1ユニットが1000億円以上(共同によると1250億円)で、しかも6ユニットは必要になるという。総額6000億円から7500億円ということだ。しかし、日本がイージス・アショアを選んだからといって、中国の対応や緩くなるとは言えない。使われている発射システムが巡航ミサイルのトマホークと同じで、中国の沿岸やロシアのサハリンが射程圏内に入る。つまり中国だけでなくロシアを刺激することになるわけだ。今年5月10日に韓国大統領となった文在寅は軍事的な緊張を高めるような政策に反対している人物で、THAADの配備にも批判的。ネオコンをはじめとするアメリカの好戦派にとって好ましくない人物だが、任期は2022年まである。アメリカは東アジアの不安定化に安倍政権を使うしかない。そうした状況を利用し、安倍政権は暴走する可能性もある。安倍政権は秘密保護で支配層の謀議を隠し、目障りな国民、例えば戦争に反対する人びとを共謀罪で弾圧しようとし、改憲も目論んでいる。そうした中、海上自衛隊は「いずも」という大型の「護衛艦」を手に入れ、アメリカ軍の艦隊と行動を共にさせているようだ。この「護衛艦」は艦首から艦尾まで平らな「全通甲板」を有し、垂直離着陸が可能なMV22オスプレイや戦闘機F35Bも離発着できると言われ、2014年にアメリカ海軍が就航させた強襲揚陸艦「アメリカ」を連想させる。海上自衛隊は朝鮮半島、あるいは中国への上陸作戦に参加するつもりだと思われてもしかたがない。イージス・アショアも同じように見られるだろう。
2017.05.14
アメリカのドナルド・トランプ政権はクルド軍に対する軍事支援を強め、トルコ政府は反発している。アメリカはこれまで侵略と手先として使ってきたアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)に見切りをつけ、自国軍を占領のために投入するほか、クルド軍を新たな手先にしようと目論んでいるようだ。バラク・オバマ政権はリビアやシリアの体制を転覆させ、傀儡政権を樹立させるためにサラフィ主義者/ワッハーブ派やムスリム同胞団を傭兵として使った。1970年代終盤にオバマ大統領の師匠にあたるズビグネフ・ブレジンスキーがアフガニスタンで行った戦い方と同じだ。その戦費を出していたのがサウジアラビアやカタールのようなペルシャ湾岸産油国で、イギリス、フランス、イスラエル、ヨルダン、トルコなども協力してきた。アル・カイダやダーイッシュといったタグをつけているその傭兵集団はアメリカなどが侵略軍へ供給していた対戦車ミサイルのTOWや携帯型地対空ミサイルのスティンガーで政府軍の大きなダメージを与え、勢力を拡大していたが、2015年9月30日にシリア政府の要請を受けてロシア軍が攻撃を開始してから戦況は一変した。ロシア軍は戦闘機だけでなく地中海やカスピ海から巡航ミサイルを撃ち込み、アメリカが提供している武器でも破壊できない新型のT-90戦車も投入された。改良したT-72も有効のようで、政府軍進撃の一因になっている。役に立たなくなった傭兵にアメリカは見切りをつけたのか、クルド軍への支援を強めているのだが、それによってNATO加盟国であるトルコを怒らせることになった。レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の政治顧問はクルド軍に対する攻撃を継続するだけでなく、アメリカ軍に対する「誤爆」の可能性にも言及している。さらにエルドアン大統領はウラジミル・プーチン露大統領に対し、新型防空システムのS-400を購入したいという意向を伝えたようだ。トルコ政府はアメリカ/NATOから離脱してロシアへ接近しているように見えるが、それが本当になったなら、アメリカは重要な戦略的拠点を失うことになる。軍事面だけでなく石油パイプラインの建設が再浮上する可能性もあるだろう。そうなるとアメリカのEU支配が難しくなる。オバマ政権はシリアとイランを分断するため、「穏健派」を支援すると称してダーイッシュを作り上げた。2012年8月にDIA(国防情報局)が作成した報告書の中で、シリア政府軍と戦っているのはサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系のAQIであり、「穏健派」はいないことをアメリカ政府へ知らせていた。2014年1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国が宣言され、6月にその武装集団はファルージャやモスルを制圧しているが、こうした展開はアメリカ政府の政策による。DIAは東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者たちの支配国が作られる可能性があると警告していたが、実際にそうした状況が出現したのだ。それをロシア軍が壊そうとしている。そこでサラフィ主義者に替わる存在としてクルド勢力だ。その一部は以前からイスラエルの支援を受けている。
2017.05.13
ジェームズ・コミーFBI長官が5月9日に解任された後、アメリカの有力メディア内では新たなウォーターゲート事件だという騒ぎが起こっている。コミー解任でドナルド・トランプ政権はこれまで以上に不安定化したことは間違いないだろう。では、そのウォーターゲート事件とは何だったのだろうか?ウォーターゲート事件の主役、リチャード・ニクソンは1969年に大統領となり、72年の選挙で再選された。この当時、アメリカでは平和を望む声が高まり、1972年の選挙では戦争に反対する意思を明確にしていたジョージ・マクガバンが民主党の候補に選ばれている。これは支配層にとって衝撃だった。ニクソンも1970年代に入るとデタント(緊張緩和)政策を推進、1972年2月には中国を訪問して毛沢東や周恩来と会談している。その一方、ベトナム戦争から手を引く動きも見せ、1973年1月にはパリ休戦協定が調印されて停戦が実現した。ベトナム戦争は朝鮮戦争と同様、対中国戦の一環だった可能性が高いことを本ブログでは何度か指摘した。中国との関係修復に乗り出す政策へ変更したことから、ベトナム戦争を継続する理由もなくなったと言える。協定が調印されて2年後に北ベトナム軍がサイゴン(現在のホーチミン)へ無血入城した。こうした流れを止め、アメリカを戦争へ引き戻すことになるのがウォーターゲート事件にほかならない。この事件ではワシントン・ポスト紙が活躍、今でも「言論の自由」の象徴だと崇めている人も少なくないようだが、実態は違う。CIAの秘密工作人脈と深く結びついているのだ。事件当時の社主、キャサリン・グラハムは世界銀行の初代総裁の娘で、親友のポリー・ウィズナーが結婚していたフランク・ウィズナーは秘密工作を指揮していた人物。アレン・ダレスの側近で、ふたりともウォール街の弁護士だった。また、キャサリンの夫でキャサリンの前の社主だったフィリップ・グラハムはアレン・ダレス、フランク・ウィズナー、リチャード・ヘルムズとメディアをコントロールする秘密プロジェクト、モッキンバードを指揮していた。ウォーターゲート事件では、カール・バーンシュタインとボブ・ウッドワードというふたりの若手記者が取材の中心になった。このうちウッドワードは海軍の情報将校だった人物で報道の世界では素人に近く、取材の大半はバーンシュタインが担当したようだ。ウッドワードの功績は情報源のディープスロートを連れてきたことにあるとされている。その後、ウッドワードはワシントン・ポスト紙で出世するが、バーンシュタインは1977年に同紙を辞め、その直後に「CIAとメディア」という記事をローリング・ストーン誌に書いている。それによると、400名以上のジャーナリストがCIAのために働き、1950年から66年にかけて、ニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供しているとCIAの高官は語ったという。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977)西側の有力メディアはCIAの強い影響下にあることを明らかにしたのだが、そうした状況はその後強まり、最近も偽情報で世界を核戦争へと導こうとしている。そした実態に気づく人が増えてきた現在、インターネットに大きな影響力を持つ巨大企業が情報をコントロールしはじめてきた。ニクソン失脚後に誕生したジェラルド・フォード政権ではデタント派が粛清される。その黒幕的な存在がポール・ニッツェたち。ニッツェは1940年にナチスとの関係が疑われて捜査の対象になり、ネルソン・ロックフェラーのオフィスへ逃げ込んでいる。フォード政権の粛清で大きな意味を持っていたポストがCIA長官と国防長官。議会で情報機関の秘密工作の一部を明らかにしたウィリアム・コルビーCIA長官が解任されてジョージ・H・W・ブッシュが後任の長官になり、国防長官はジェームズ・シュレシンジャーからドナルド・ラムズフェルドに替えられた。そのほかリチャード・チェイニーが大統領首席補佐官に就任、ポール・ウォルフォウィッツやリチャード・パイプスはCIAの内部でソ連脅威論を正当化するために偽情報を発信するチームBのメンバーになった。このチームを始動させたのはブッシュだ。平和に生活することを望み、戦争に反対する人びとをアメリカの支配層は危険だと考える。そうした人びとを監視するため、FBIは1950年代からCOINTELPROというプロジェクトを実行、CIAは1967年からMHケイオスという作戦を始めている。1970年代の前半に内部告発があるまで存在すら否定されていた電子情報機関のNSAも監視を続けてきた。MHケイオスが明るみに出たのは1974年12月22日。調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュがニューヨーク・タイムズ紙でこの事実に触れる記事を書いたのだ。記事が出る前にハーシュはコルビーCIA長官を取材、それを聞いた長官は防諜部門を統括していたジェームズ・アングルトンを呼ぶ。そこで郵便物の違法開封を認めたアングルトンをコルビーは追い出してしまった。(John Rranelagh, "The Agency," Touchstone, 1987)それだけでなく、コルビーは議会の公聴会でNSAの通話傍受、ベトナム戦争における住民皆殺し作戦のフェニックス・プログラム、そしてMHケイオスについて証言している。支配層にとって都合の悪い話を公にしたわけだ。フォード政権で解任された理由はこうした彼の姿勢にあった。フォード政権では後にネオコンと呼ばれるグループが台頭してくるが、ウォルフォウィッツを含む若手メンバーを育成していたのがヘンリー・ジャクソン上院議員のオフィス。マクガバンが民主党の大統領候補に選ばれた際、同党の内部に反マクガバンのグループが結成されているが、その中心はジャクソン議員だった。ネオコンが形成される上で重要な役割を果たした人物は少なくないが、その中でも理論的な支柱だったレオ・ストラウス、軍事外交政策で中心的な存在だったジェームス・バーンハム、大学時代のウォルフォウィッツに大きな影響を与えた軍事戦略の専門家だったアルバート・ウールステッター、ソ連脅威論や中国脅威論の発信源だったアンドリュー・マーシャルを忘れてはならないだろう。ニクソン大統領に大きな問題があったことは事実だが、ウォーターゲート事件が緊張緩和の流れを断ち切り、世界を戦争へと引き戻す役割を果たしたことも忘れてはならない。第2次世界大戦後、1963年6月10にアメリカン大学でソ連との平和共存を訴えたジョン・F・ケネディ大統領は64年11月22日に暗殺、67年4月4日にベトナム戦争を批判したマーチン・ルーサー・キング牧師は68年4月4日に暗殺、ケネディ大統領やキング牧師と同じ考えだったロバート・ケネディ上院議員は68年6月6日に暗殺されている。アメリカで平和を訴えるのは命がけだ。なお、ウォーターゲート事件の発端になった侵入事件を起こしたチームはCIAの秘密工作部門と関係が深く、チームを指揮していたひとりハワード・ハントもCIAの幹部だった。死の直前、ケネディ大統領暗殺に自分は「ベンチウォーマー」として参加したと語っている。万一、リー・ハーベイ・オズワルドを犯人にすることが失敗した場合、ハントたちが犯人にされる手はずになっていたということだ。つまり、ハントの証言以外の情報を考慮しても、ハントはケネディ大統領の暗殺を含む秘密工作を熟知していた可能性が高い。ニクソンも情報を持っていただろう。ウォーターゲート事件で追い詰められたニクソンはピッグス湾事件の全容を明るみに出すとCIAを脅したと言われているが、これはケネディ大統領暗殺の真相を明らかにするという意味だったようだ。ウォーターゲート事件でハントは逮捕されるが、妻のドロシーは夫を助けるため、重要資料を持ってシカゴへ向かったと言われている。ところがその旅客機UA553はシカゴ空港で墜落、何を彼女が運んでいたのかは不明だ。ドロシーも情報機関で働いていた経験があり、ヨーロッパでナチスが略奪した財宝の回収工作セイフヘイブン作戦に参加、第2次世界大戦の直後には上海へ来ている。
2017.05.12
ジェームズ・コミーFBI長官が5月9日に解任された。一般的に言って捜査機関へ政治が介入することは望ましくないが、捜査機関や情報機関は支配階級の利権システムを守る政治的な組織だと言うことも事実。コミーを長官にしたこと自体が政治的だ。この人物はシカゴ大学ロースクールを卒業して地裁判事の特別修習生になり、検察の仕事をするようになる。2003年12月から05年8月まで司法副長官を務めていた。2005年に司法省を離れた彼が就いた仕事は軍事企業ロッキード・マーチンの顧問弁護士兼上級副社長。この会社はヒラリー・クリントンやリチャード・チェイニーの妻リンも関係が深い。上院議員のクリントンはロッキード・マーチンがスポンサーで、リンは1994年にロッキードの、95年から2001年まではロッキード・マーチンの重役だったのである。また、コミーは大統領選挙でジョン・マケインやミット・ロムニーを支援、リンゼー・グラハムやテッド・クルズともつながっている。いずれも反ロシアで、マケインはロスチャイルド家と強いつながりがあり、2008の大統領選挙ではジェイコブと息子のナットがロンドンで資金調達のためのパーティーを主催している。マケインは2013年5月にトルコからシリアへ不法入国、シリア侵略の手先になっている武装勢力のリーダーと会談しているが、その中にダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)の指導者と言われるようになるイブラヒム・アル・バドリー(アブ・バクル・アル・バグダディ)も含まれていた。この年の12月にはウクライナへ入り、翌年2月のクーデターで主力になるネオ・ナチのリーダーと会っている。ロシアを嫌い、戦争を望み、ネオコンと親密な関係にあるコミーが長官を務めていたFBIはヒラリー・クリントンの電子メール問題を捜査したことがある。クリントンは2009年1月から13年2月にかけて国務長官を務めていたが、その間、12年8月にアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)は、シリアで政府軍と戦っているのはサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIだと指摘、バラク・オバマ政権の「穏健派」支援政策は東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を創り出すことになると警告していた。この警告はダーイッシュという形で現実になる。こうした報告をクリントン国務長官が知らなかったとは考えられない。しかも、2009年12月にクリントン長官が送った電子メールにも「サウジアラビアの寄付者は全世界のスンニ系テロリスト集団に対する最も重要な資金供給源だ」と記載されている。アル・カイダ系武装集団のスポンサーはアメリカの同盟国だということを知っていたことは明らかだ。そのアル・カイダ系武装勢力とNATOが連携してリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制を倒すとCIAは国務省の協力を得て戦闘員と武器/兵器をトルコ経由でシリアへ運び込むが、その中には化学兵器も含まれていた。DIAの報告書がホワイトハウスへ提出された2012年8月にバラク・オバマ大統領は、シリアに対する直接的な軍事介入のレッド・ラインは生物化学兵器の使用だと宣言するが、その時に大統領はアル・カイダ系武装勢力が化学兵器を持っていることを知っていたはずだ。輸送工作の拠点のひとつがベンガジのアメリカ領事館で、クリストファー・スティーブンス大使も関係している。2012年9月10日に大使は領事館でCIAの工作責任者と会談、その翌日には海運会社の代表と会うが、その直後に領事館が襲撃されて大使は殺された。その当時、CIA長官だったのがデイビッド・ペトレイアスで、国務長官がヒラリー・クリントンだ。12月に入るとクリントンはシリアのバシャール・アル・アサド大統領が自暴自棄になって化学兵器を使う可能性があると主張、翌月の2013年1月29日にイギリスのデイリー・メール紙は、シリアで化学兵器を使ってアサド政権に責任をなすりつけて非難、国際的な軍事行動へつなげる作戦をオバマ政権は許可したと報道した。2014年3月と8月に化学兵器が使用されたと西側の政府や有力メディアは騒ぎ、直接的な軍事侵攻につなげようとしたが、嘘が発覚、発射したミサイルは地中海へ落下、ということで成功しなかった。このように偽情報で戦争を始めようとする一派の中にクリントンやマケインも含まれているのだが、そのクリントンが国務長官時代に公務の通信を個人用サーバーを使った電子メールで行った疑いが濃厚になり、FBIは任意の事情聴取を実施、機密情報の取り扱いに関する法規に批判した可能性があり、そうした情報をきわめて軽率に扱っていたという結論に達した。その上でコミー長官は不起訴を決めた。決定の理由としてクリントンが電子メールを消去してしまったことも挙げられているが、全てのメールはNSAが記録しているので、理由にならない。そうした批判はFBIの内部にもあったようで、2016年10月28日に捜査の再開が宣言されるのだが、投票日の2日前に捜査の終了が宣言されている。コミーはネオコンや戦争ビジネスに近く、政治的に動く長官だった。
2017.05.11
1970年代終盤にズビグネフ・ブレジンスキーがサラフィ主義者/ワッハーブ派やムスリム同胞団を中心にして戦闘集団を組織して以来、戦闘員を雇い、戦費を提供してきたサウジアラビアだが、その傭兵集団による侵略がシリアで躓き、イエメンへの侵攻も失敗して苦しい状況に陥っている。しかも自らが仕掛けた原油相場の下落で財政赤字が深刻化、体制は揺らいでいる。そのサウジアラビアで最も強く傭兵集団と結びついていると言われている人物が副皇太子で国防相でもあるモハンマド・ビン・サルマンだが、そのサルマンがイランとの軍事衝突が起こる場合はイランが戦場になると発言、つまりイランに対する先制攻撃を5月2日に示唆した。それに対してイランは7日、サウジアラビアが「おろかなこと」をした場合、メッカとメディナを除く地域を破壊すると警告している。サルマンは傭兵を送り込むか、アメリカから購入した「高額兵器」を使って目障りな国々を制圧するつもりだったようだが、相手のことも自分のことも理解できず、腕力を過信した結果その目論見は外れている。この思考回路はネオコンに似ている。1991年12月にソ連が消滅してアメリカが唯一の超大国になったと考え、92年2月に国防総省内でDPGの草案という形で世界制覇のプランを作成したのだ。その当時のロシアに大統領として君臨していたボリス・エリツィンはソ連を消滅させる上で中心的な役割を果たした西側巨大資本の傀儡で、その娘は今でも西側がロシアに張り巡らせたネットワークの中心的な存在。エリツィン時代のロシアは西側支配層とその手先(オリガルヒ)に略奪され、弱体化していた。しかし、21世紀に入ってウラジミル・プーチンが実権を握ると状況は一変、急速に国力を回復させるのだが、ネオコンはソ連消滅時の勝利感から今でも抜け出せていない。CFR/外交問題評議会が発行しているフォーリン・アフェアーズ誌の2006年3/4月号に掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文では、アメリカ軍の先制第1撃でロシアと中国の長距離核兵器を破壊できる日は近いと主張していた。ヨーロッパでロシアの周辺に配備しているミサイル(報復攻撃に備えるだけでなく、先制核攻撃に使われると見られている)や韓国に配備しつつあるTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムは先制核攻撃の準備だろう。アメリカは1950年代から先制核攻撃の準備を進め、攻撃のチャンスをうかがってきたことは本ブログでも繰り返し、書いてきた。今は射程500キロメートルでもすぐに1000キロメートルへ伸ばすことができ、2400キロメートルの攻撃的なミサイルへ切り替えることができるのだ。リーバーとプレスの論文が発表された2年後、ジョージア(グルジア)は南オセチアを奇襲攻撃する。当時のジョージア政府はイスラエルの強い影響下にあり、国防大臣と領土統合大臣は流暢にヘブライ語を操ることができた。しかもイスラエルはジョージアへ武器を提供し、将兵を訓練していた。奇襲作戦を立案したのはイスラエルの軍人だという推測もある。もうひとつ注目されているのは、攻撃の1カ月前、つまり2008年7月10日にアメリカの国務長官だったコンドリーサ・ライスがジョージアを訪れ、攻撃の直後にも再度訪問した事実。南オセチアへの奇襲攻撃は大統領だったミハエル・サーカシビリが計画したとジョージアの元大臣が語っているが、その背後にイスラエルとアメリカがいたことは間違いない。南オセチアへの奇襲攻撃はイスラエルやアメリカの好戦派によるロシア攻撃の予行演習だった可能性があるとも言える。調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、その前年までにアメリカ、サウジアラビア、イスラエルはシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラをターゲットにした秘密工作を始めている。その手先になるのがサラフィ主義者/ワッハーブ派やムスリム同胞団である。この計画もロシアや中国は出てこないという前提で進められていたのだろう。しかし、2015年9月30日にネオコンの世界制覇プランは破綻してしまう。リビアと同じように、アメリカ/NATOとアル・カイダ系武装集団(つまりサウジアラビアが雇った傭兵)の連携でシリアのバシャール・アル・アサド体制を倒そうとしたのだが、侵略勢力の偽情報はことごとく露見し、2015年9月30日にはロシア軍がシリア政府の要請で空爆を開始したのだ。すでに戦闘機でアメリカはロシアの後塵を拝しているが、カスピ海の艦船から巡航ミサイルで正確にシリアのターゲットへ命中させて西側を驚かせた。マッハ6から7で飛行、西側の防空システムは対応できないと考えられている弾道ミサイルのイスカンダルも脅威だ。また、2015年11月には新型魚雷の存在がリークされている。これは潜水艦から発射され、遠隔操作が可能で、海底1万メートルを時速185キロメートルで進み、射程距離は1万キロに達する。先制第1撃でロシアや中国を壊滅させられるということが幻想に過ぎないことを示し、核戦争でアメリカは勝てないことを知らせようとしている。ロシアが保有する武器/兵器は旧式で恐れるに足りないと信じていたネオコンは動揺しているだろうが、自分たちは世界の支配者になり、何をしても許されると信じて破壊と殺戮を繰り広げ、その宣伝部門としての役割を果たしてきたのが西側の有力メディア。1992年に始めた世界制覇プランが失敗に終わった場合、責任を問われるかもしれないと彼らは恐怖している可能性がある。どのようなことでも実行しかねない。
2017.05.10
5月7日に実施されたフランス大統領選挙の第2回目の投票でエマニュエル・マクロンがマリーヌ・ル・ペンを破った。マクロンは2006年から09年まで社会党に所属、その間、08年にロスチャイルド系投資銀行へ入り、200万ユーロという高額の報酬を得ていたといわれている人物だ。マクロンは2012年から14年にかけてフランソワ・オランド政権の大統領府副事務総長を務め、14年に経済産業デジタル大臣に就任すると巨大資本のカネ儲けを支援する新自由主義的な政策を推進、マクロンのボスだったオランドはアメリカ政府の侵略政策にも加わる。そうしたオランドの政策に対するフランス国民の憎悪は強まり、オランドの近くにいてオランド的な政策を継続することは不可能な状態になった。そこでマクロンはタグを付け替えて人びとを騙そうとしたようで、2016年4月に「前進!」を結成する。その目論見は成功したようだ。国内では巨大企業、国外では侵略戦争を続けるアメリカ支配層にべったりの政策を推進したオランドは2012年の選挙で大統領に選ばれているのだが、本来なら社会党の候補者になれなかった可能性が高い。ドミニク・ストロス-カーンIMF専務理事という有力候補がいたからだ。このストロス-カーンは大統領選の前年、2011年4月にブルッキングス研究所で演説し、失業や不平等は不安定の種をまき、市場経済を蝕むことになりかねないと主張、その不平等を弱め、より公正な機会や資源の分配を保証するべきだと語っている。しかも、進歩的な税制と結びついた強い社会的なセーフティ・ネットは市場が主導する不平等を和らげることができ、健康や教育への投資は決定的だと語っただけでなく、停滞する実質賃金などに関する団体交渉権も重要だとしていた。フランスやアメリカの支配層にとって不愉快な演説だったと言える。演説の翌月、ストロス-カーンはニューヨークのホテルで逮捕された。後に限りなく冤罪に近いことが判明するが、その前にIMF専務理事は辞めさせられ、大統領候補にもなれなくなる。この出来事のおかげでオランドは大統領になれ、また、やはり巨大資本の利益に奉仕するクリスティーヌ・ラガルドがIMFの専務理事になれたわけだ。今回の大統領選挙でフランスやアメリカの支配層から最も嫌われていた候補者はマリーヌ・ル・ペンだろう。メディアはマクロンに「中道」、ル・ペンに「極右」というタグ、あるいは御札をつけるというイメージ戦術を使っている。陰陽師の手口だ。そして、オランドの後継者が次期大統領に選ばれた。
2017.05.09
ロシア、トルコ、イランはシリアに戦闘鎮静化地域を設定、航空機の飛行は禁止された。ロシア政府はアメリカが主導する国々も航空機を飛ばすことは許されないと説明している。アメリカのドナルド・トランプ大統領はロシアのウラジミル・プーチン大統領に対し、このプランに賛意を示していたが、5月4日に3カ国が覚書へ署名した直後にアメリカ政府は態度を変え、この取り決めを無視するようだ。シリア政府軍と戦っている戦闘集団もロシア、トルコ、イランの取り決めに従う意思はない。このシリア政府軍と戦っている戦闘集団をシリアの蜂起軍であるかのように言う人が今でもいるようだが、事実上、アメリカ、イギリス、フランス、サウジアラビア、カタール、イスラエルといった国々に雇われた傭兵で編成された侵略軍。この事実をアメリカ政府が知らないはずはない。本ブログでは何度も指摘しているように、アメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)が2012年8月に作成、ホワイトハウスに提出された報告書によると、シリアで政府軍と戦っているのはサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIだとしている。当時、シリアのアル・カイダ系武装集団はアル・ヌスラというタグが付けられていたが、AQIもアル・ヌスラも実態は同じだとしている。これは正しい指摘だ。バラク・オバマ政権は「穏健派」を支援すると称して武器/兵器を提供、戦闘員を訓練していた。2011年10月にリビアのムアンマル・アル・カダフィ政権がアル・カイダ系武装集団LIFGとNATOの連携で倒された後、CIAは国務省の協力を得て戦闘員と武器/兵器をトルコ経由でシリアへ運んでいる。運ばれた兵器の中には毒ガスも含まれていたと言われている。そうした工作の拠点がベンガジにあったCIAの施設で、クリストファー・スティーブンス大使も工作に参加していた。2012年9月11日にベンガジのアメリカ領事館が襲撃され、大使も殺されているが、その前日にスティーブンスは武器輸送の責任者だったCIAの人間と会談、襲撃の当日には武器を輸送する海運会社の人間と会っていたという。その当時、CIA長官だったのがデイビッド・ペトレイアスであり、国務長官はヒラリー・クリントンだ。シリア政府軍と戦わせる目的で戦闘員をヨルダンで訓練、その工作をアメリカやイギリス助けているとする報道がアメリカ領事館襲撃の後に流れた。10月にアメリカ、イギリス、ヨルダンが反シリア政府軍を訓練、11月には対戦車兵器であるTOW、あるいは携帯型地対空ミサイルのスティンガーの扱い方を教えていたという。こうした戦闘員もアル・カイダ系武装集団へ参加することになる。2012年8月のDIA報告は、オバマ政権の政策によって東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告されていたが、これはダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実になった。ダーイッシュは2014年1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはファルージャやモスルを制圧しているが、その際にトヨタ製の真新しい小型トラック「ハイラックス」を連ねたパレード、その様子を撮影した写真が伝えられて有名になった。アメリカの軍や情報機関は偵察衛星、ドローン、通信傍受、人間による情報活動などでダーイッシュの動きを把握していたはずだが、動いていない。2012年8月当時、DIA局長だったマイケル・フリン中将はサラフィ主義者やムスリム同胞団を危険だと考えていた人物で、ダーイッシュが売り出された頃にCIAの幹部などと対立が激しくなり、14年8月に解任された。アメリカやアメリカの同盟国がダーイッシュと結びついていることはアメリカ側でも認められている。例えば、トーマス・マッキナニー中将は2014年9月にFoxニュースでアメリカがダーイッシュを創設する手助けをしたと発言、統合参謀本部議長だったマーチン・デンプシー大将は同じ月に、ダーイッシュへ「資金提供している主要なアラブ同盟国を知っている」と証言、同年10月にはジョー・バイデン米副大統領がハーバーバード大学で、中東におけるアメリカの主要な同盟国がダーイッシュの背後にいると発言、2015年にはウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官がアメリカの友好国と同盟国によってダーイッシュは作られたと語っている。クラークによると、ネオコンのポール・ウォルフォウィッツは国防次官だった1991年にシリア、イラン、イラクを5年から10年で殲滅すると口にしたという。それだけでなく、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されたてから10日後、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺では攻撃予定国のリストが作成され、イラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイランが載っていたという。ネオコンやイスラエルは1980年代にイラクのサダム・フセイン体制を倒したがっていた。それが原因で、フセインをペルシャ湾岸産油国の防波堤だと考えていたジョージ・H・W・ブッシュやジェームズ・ベイカーと対立する。ネオコンたちのプランは、イラクに親イスラエル派の傀儡政権を樹立、ヨルダン、イラク、トルコの親イスラエル国帯を作ってシリアとイランを分断、弱体化させるというものだった。イラクに傀儡政権を樹立することに失敗した後は、破壊と殺戮で破綻国家にしてシリアとイランを分断しようとする。シリアの東部からイラクの西部にかけてダーイッシュが支配するようになってもシリアとイランを分断できるわけで、ネオコンの影響下にあったオバマ政権、あるいはヒラリー・クリントンなどはダーイッシュを打倒する気はない。ダーイッシュの打倒を第一に考えたフリンやデンプシーはネオコンにとって排除されるべき人物であり、ダーイッシュやアル・カイダ系武装集団を倒しつつあるロシアは許すことのできない敵。ダーイッシュへの支援を妨害することになる戦闘鎮静化地域をアメリカ政府が無視するのは必然だ。当然、そうした動きをロシア、トルコ、イランは織り込み済みだろう。
2017.05.08
アフガニスタンのハミド・カルザイ元大統領はダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)について、アメリカによって作られた道具だ語っている。ダーイッシュの母体であるアル・カイダについてCIAから訓練を受けた戦闘員のコンピュータ・ファイルだと説明したのは、1997年から2001年までイギリスの外相を務めたロビン・クック。アラビア語で「アル・カイダ」とは「ベース」を意味し、「データベース」の訳として使われる。そうした事実を、かつてアメリカの傀儡と言われたカルザイも口にするようになった。こうしたことは2011年春にリビアやシリアに対する軍事侵略が始まった段階で知られていた。その年の10月にリビアでムアンマル・アル・カダフィ体制が倒され、カダフィは惨殺されているが、その直後にベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられていた。その映像はYouTubeにアップロードされ、イギリスのデイリー・メール紙も伝えている。ただ、NATOと連携してリビア政府軍と戦っていたLIFGがアル・カイダ系だということは早い段階から明確になっていた。LIFGの幹部がインタビューで認めているのだ。そうしたことをベンガジで掲げられたアル・カイダの旗は確認するものだったと言える。こうしたことからアル・カイダとアメリカ/NATOの関係が知られるようになると、新たなタグをつけた戦闘集団が登場してくる。それがダーイッシュで、一時期はアメリカ、イギリス、フランス、トルコ、サウジアラビア、カタール、イスラエルといった国々の支援で勢力を拡大していたが、2015年9月30日にロシア軍がシリア政府の要請で軍事介入すると戦況は一変、ダーイッシュやアル・カイダ系武装集団は敗走している。2012年からアメリカはシリアの体制をリビアと同じように倒すため、制空権を握って一気に方をつけようとするが、シリア軍は抵抗、バシャール・アル・アサド大統領も逃亡しなかった。2012年には「政府軍による住民虐殺」という偽情報を広めていたが、途中で偽情報の発信源だったシリア系イギリス人のダニー・デイエムの嘘が発覚していまう。西側の有力メディアが使っていた場面の前、デイエムが演出の打ち合わせをしている部分の映像が3月にインターネットで公開されてしまったのだ。そこで持ち出されたのが化学兵器。まず、2012年8月にバラク・オバマ大統領はシリアに対する直接的な軍事介入のレッド・ラインは生物化学兵器の使用だと宣言、その年の12月にヒラリー・クリントンは「自暴自棄になったシリアのアサド大統領は化学兵器を使う可能性がある」と主張する。ところが、2013年1月にイギリスのデイリー・メール紙はアメリカの偽旗作戦に関する記事を掲載している。シリアで化学兵器を使い、その責任をアサド政権になすりつけて非難、国際的な軍事行動につなげようという作戦をオバマ政権が許可したというのだ。そして2013年3月と8月に化学兵器が使われたと西側の政府や有力メディアは叫び、軍事介入へ突き進もうとするのだが、この時に化学兵器を使ったのは反政府軍だった可能性がきわめて高いことは多くの調査や研究で明らかになる。その辺の事情は本ブログでも繰り返し書いてきたことなので、今回は割愛する。アメリカの支配層は新たな口実を考えつかなかったようで、今でも化学兵器を宣伝の材料に使っているが、ストーリーに新しい団体を加えた。白ヘルだが、侵略軍が敗走する中、ダーイッシュと白ヘルとの緊密な関係が明らかにされている。(例えば、ココ)それでも西側の政府や有力メディアは白ヘルやSOHR(シリア人権監視所)をプロパガンダの軸に据えている。支配者の流す話をひたすら信じる人びとをコントロールすることに集中、自ら調べ、考えるような人びとを操ることは諦めたのかもしれないが、カルザイの発言からすると、西側メディアが発信する偽情報も限界に近づいているように思える。
2017.05.07
シリアに戦闘を鎮静化させる地域を設定することでロシア、トルコ、イランは合意、5月4日に覚書へ署名した。その地域へアメリカが主導する軍隊の航空機が侵入することも許されないとしている。シリアも同意しているのだろう。アメリカなどがリビアで実施、シリアでも行おうとした飛行禁止空域の設定は制空権をアメリカ/NATOが握ることを意味したが、今回は違う。ロシア軍も航空機を使用しないとしているものの、主導権を握っているのはロシアだ。アメリカ、イギリス、ヨルダンはヨルダンからシリアの南部地域へ侵攻しようとしているとする情報も流れているが、動きにくくなった。覚書に署名される前日、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領はロシアのウラジミル・プーチン大統領とソチで会談、ロシアの防空システムS-400購入の件がテーマになったという。このシステムは実戦配備されている中で最新のものだ。2016年7月にトルコで武装蜂起があって以来、エルドアン政権はアメリカ/NATOと距離を置いているが、その傾向に変化はないようだ。武装蜂起の直後からエルドアン政権は首謀者としてCIAの配下にあり、アメリカへ亡命中のフェトフッラー・ギュレンの名前を挙げていた。当時、イスラム世界では武装蜂起の数時間前にロシアの情報機関からトルコ政府へ警告があったという話が流れ、蜂起が始まってから2時間後にイランもクーデターを批判していた。このクーデター未遂でトルコとアメリカとの関係が悪化したことは確かだろうが、その前からエルドアン政権がロシアへ接近していた事実もある。例えば、6月下旬にエルドアン大統領はプーチン大統領に対してロシア軍機撃墜を謝罪、蜂起直前の7月13日にはシリアとの関係正常化を望んでいることを示唆していた。
2017.05.06
ドナルド・トランプの娘、イバンカの存在感が強まっているが、その結婚相手である大統領の顧問を務めているジャレド・クシュナーが話題になっている。ジャレドは弟のジョシュアと2015年にカドリという会社を設立したが、その際に10億ドルの融資を受けていた。その中に投機家のジョージ・ソロスや投資銀行のゴールドマン・サックスが含まれ、ソロスは約2億5900万ドルを出しているという。昨年の大統領選挙でソロスはヒラリー・クリントンを支援、そのクリントンの敗北が決まってからはトランプの排除を目的とした「パープル革命」を仕掛けていた。1990年代、夫のビル・クリントンが大統領だった時代にヒラリーと親しいマデリーン・オルブライトやビクトリア・ヌランドを政権内へ引き入れている。この政権は1997年にオルブライトが国務長官に就任してから一気に戦争へ進み始め、ユーゴスラビアを先制攻撃して解体することになった。バラク・オバマ政権でヒラリーは国務長官になり、シリアやリビアへの侵略を推進、2010年10月にリビアのムアンマル・アル・カダフィが惨殺されたと報告を受けた彼女は「来た、見た、死んだ」と口にし、喜んでいる。同じ頃、リビアのベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられた。その様子はYouTubeにアップロードされ、イギリスのデイリー・メール紙も伝えている。カダフィ体制を倒した後、CIAは戦闘員と武器/兵器をトルコ経由でシリアへ運んだ。リビアを破壊したのはNATOの航空兵力とアル・カイダ系のLIFGであり、運ばれた戦闘員はアル・カイダ系の傭兵だ。武器/兵器の輸送はベンガジにあったCIAの施設が使われたが、アメリカ領事館も拠点のひとつ。その領事館が2012年9月11日に襲撃され、クリストファー・スティーブンス大使を含むアメリカ人が殺された。領事館が襲撃される前日、大使は武器輸送の責任者だったCIAの人間と会談、襲撃当日には武器を輸送する海運会社の人間と会っている。つまり大使も戦闘員や武器/兵器の輸送に関わっていたわけで、国務長官も知っていた可能性が高い。また工作の主体だったCIAの長官はヒラリーと親しいデイビッド・ペトレイアスだった。当時、バラク・オバマ政権はシリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すため、「穏健派」を支援していたが、この主張を揺るがす報告書が襲撃の前月、アメリカ軍の情報機関DIAからホワイトハウスに提出されている。シリアの反政府軍はサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてAQI(イラクのアル・カイダ)だと指摘、オバマ政権の政策が継続されるとシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフ主義者の支配国が作られる可能性があると警告している。この警告はダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実になった。この報告書が提出された2012年8月、オバマ大統領はシリアに対する直接的な軍事介入のレッド・ラインを生物化学兵器の使用だと宣言した。12月には、自暴自棄になったアサド大統領が化学兵器を使う可能性があるとヒラリーが発言した。化学兵器の使用、アメリカによると直接的な軍事介入という道筋が示された。ところが、2013年1月にイギリスのデイリー・メール紙はオバマ政権の計画に水を差す記事を掲載した。シリアで化学兵器を使い、その責任をアサド政権になすりつけ、国際的な軍事行動を実現するという作戦をオバマ政権が許可したという内容だ。そして3月と8月にシリアでは化学兵器の使用が問題になり、アメリカなどシリアを侵略していた国々はシリア政府軍が使ったと証拠も根拠も示さずに宣伝するが、現地調査したカトリック系聖職者の報告、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュ、トルコの国会議員、マサチューセッツ工科大学の教授などから西側の政府や有力メディアの宣伝とは逆の主張が具体的、あるいは科学的に示された。化学兵器の使用はシリアに対するアメリカ/NATOの直接的な軍事介入を正当化するための偽旗作戦だった可能性が高いということだが、その偽旗作戦で重要な役割を果たしていたのがヒラリー。そのヒラリーを操ってきたひとりがソロス。トランプ政権に影響力を持つクシュナーへそのソロスから資金が流れていたということだ。
2017.05.05
アメリカ、イギリス、ヨルダンがヨルダンからシリアの南部地域へ侵攻しようとしているとする情報が流れている。2011年3月にバシャール・アル・アサド体制の打倒を目指す軍事作戦が始まるが、その最大の拠点はトルコだった。2011年10月にリビアのムアンマル・アル・カダフィ政権がアル・カイダ系武装集団LIFGとNATOの連携で倒されると、戦闘員と武器/兵器がシリアへ運び込まれるが、トルコ経由。運ばれた物資の中には化学兵器も含まれていた。こうした輸送の拠点がベンガジにあったCIAの拠点。アメリカ領事館も重要な役割を果たしていた。その当時、CIA長官だったのがネオコンのデイビッド・ペトレイアスで、CIAに協力していた国務省の長官がヒラリー・クリントン。2012年9月11日にリビア駐在のアメリカ大使だったJ・クリストファー・スティーブンスが領事館で殺されるが、その前日に大使はCIAの工作責任者と会談、襲撃の直前には海運会社の代表と会っていた。10月にはアメリカ、イギリス、ヨルダンが反シリア政府軍を訓練、11月には対戦車兵器(TOW)や携帯型地対空スティンガー・ミサイルの扱い方を教えていた。領事館が襲われる前の月にアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)は報告書を作成、その中で反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIだと指摘している。つまり、バラク・オバマ政権が主張するところの「穏健派」は事実上、存在しないというわけだ。また、オバマ政権が政策を変更しなかったならば、シリアの東部(ハサカやデリゾール)にはサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告、それはダーイッシュという形で現実のものになった。ちなみに、この報告書が書かれた当時のDIA局長がトランプ政権で安全保障担当補佐官に就任する予定のマイケル・フリン中将だ。この報告書が書かれた2012年8月にはバラク・オバマ米大統領がシリアに対する直接的な軍事介入のレッド・ラインは生物化学兵器の使用だと宣言、12月になるとヒラリー・クリントンがバシャール・アル・アサドは自暴自棄になって化学兵器を使う可能性があると主張した。そして1月29日付けのデイリー・メール紙はシリアで化学兵器を使ってアサド政権に責任をなすりつけて非難、国際的な軍事行動へつなげる作戦をオバマ政権は許可したと報道する。偽旗作戦を実行するというわけだ。そして実際、3月と8月に化学兵器の使用を口実にして西側は攻撃しようとするが、すぐに嘘が明らかにされ、しかも9月上旬に発射されたミサイルは地中海に落下していまった。最近の動きは2012年から13年にかけての展開に似ている。
2017.05.04
2014年5月2日、ウクライナ南部の港湾都市オデッサで反クーデター派の住民がネオ・ナチのグループに虐殺されている。それから3年後の5月2日、ロシアのウラジミル・プーチン大統領は事件の再発を防ぐよう、世界に訴えた。住民を殺したネオ・ナチの後ろ盾はアメリカ/NATOであり、そのアメリカ/NATOにとって都合の良いストーリーを西側のメディアは宣伝していた。構図はユーゴスラビアやイラクを先制攻撃したときと同じだ。虐殺はその日の午前8時、「サッカー・ファン」を乗せた列車が到着したところから始まる。赤いテープを腕に巻いた一団がその「ファン」を広場へ誘導するのだが、そこではネオ・ナチのクーデターに対する抗議活動が行われていた。誘導した集団はUNA-UNSOだと言われている。不穏な空気が漂う中、広場にいた反クーデター派の住民は労働組合会館の中へ誘導される。危険なので避難するようにと言われたようだが、実際は殺戮の現場を隠すことが目的だったと推測する人もいる。外から建物の中へ火炎瓶が投げ込まれて火事になり、焼き殺された人は少なくない。建物へ向かって銃撃があり、内部でも殺戮が繰り広げられた。48名が殺され、約200名が負傷したと伝えられているが、これは確認された数字で、住民の証言によると、多くの人びとが地下室で惨殺され、犠牲者の数は120名から130名だろうという。虐殺の詳しい調査は現時点でも実施されていない。虐殺の前、アメリカ政府の高官がキエフを訪れていることに注目する人もいる。まず4月12日にジョン・ブレナンCIA長官がキエフを極秘訪問、4月22日にはジョー・バイデン米副大統領がキエフを訪問、それにタイミングを合わせるようにしてオデッサでの工作が話し合われている。この会議に出席したのは大統領代行、内相代行、SBU(治安機関)長官代行、ネオ・ナチの中心的な存在だったアンドレイ・パルビー国家安全保障国防会議議長代行、そしてオブザーバーとしてドニエプロペトロフスクの知事になるイゴール・コロモイスキーだ。コロモイスキーはウクライナのほか、イスラエルとキプロスの国籍を持ち、スイスをビジネスの基盤にしている。会議の10日後にオデッサで虐殺があったのだが、その数日前、パルビーは数十着の防弾チョッキをオデッサのネオ・ナチの下へ運んだ。ネオ・ナチがキエフでクーデターを成功させ、ビクトル・ヤヌコビッチ大統領が憲法を無視する形で排除されたのは2014年2月23日のこと。2013年11月にはキエフのユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)へ約2000名の反ヤヌコビッチ派が集まった頃は暴力的でなかったが、2月になってから西側の軍事訓練を受けたネオ・ナチが前面に出始め、2月18日頃になるとチェーン、ナイフ、棍棒を手に、石や火炎瓶を投げ、ブルドーザーなどを持ち出す。中にはピストルやライフルを撃つ人間も出始め、22日になると狙撃で市民側にも警察側にも多くの死者が出ている。2月4日にはアメリカのビクトリア・ヌランド国務次官補とジェオフリー・パイアット大使の会話がインターネット上にアップロードされた。ふたりは電話で次期政権の人事について話し合っていたのだが、その中でヌランドが強く推していた人物がアルセニー・ヤツェニュク。実際、クーデター後、首相に就任している。その会話の中でヌランド国務次官補はEUが話し合いで解決しようとしていることに怒り、EUに対して「くそくらえ(F*ck the EU)」と口にしている。話し合いによる解決の道を破壊した狙撃について西側のメディアは政府側の仕業だと宣伝したが、2月25日にキエフ入りして調査したエストニアのウルマス・パエト外相は翌日、キャサリン・アシュトンEU外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)に対し、反政府側が実行したと強く示唆している: 「全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新連合(暫定政権)が調査したがらないほど、本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合の誰かだというきわめて強い理解がある。」この狙撃はパルビーが指揮していた可能性が高い。
2017.05.03
THAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムを韓国へ設置する口実として、アメリカ政府は朝鮮のミサイルを掲げている。朝鮮のミサイル攻撃からアメリカが韓国を守っているというストーリーだが、それが事実ならドナルド・トランプ米大統領が韓国に対して10億ドルをよこせと言っても理屈は合っている。が、その発言に慌てたネオコンのH・R・マクマスター国家安全保障補佐官はアメリカが費用を出すとテレビで大統領の発言を否定している。韓国では5月9日に大統領を決める投票があり、THAADに慎重な姿勢を見せている文在寅が配備賛成の安哲秀をリードしていると伝えられている。4月25日にTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムのレーダー、ランチャー、通信機器を含む機器がトレーラーでゴルフ場の「ロッテスカイヒル星州カントリークラブ」へ運び込まれたが、その際に抗議活動があった。大統領候補のふたりにしろ、韓国民にしろ、THAADが中国を意識した兵器であり、韓国と中国との関係を悪化させる仕掛けとしても使われていることを理解しているだろう。朝鮮のミサイルを脅威と感じていない点では、おそらく、日本の国民も同じだ。アメリカ政府が危機を演出、日本のマスコミも騒いでみせているが、人びとが気にしていないことは街の様子を見ても推測できる。29日に朝鮮が弾道ミサイルを発射したとして地下鉄や新幹線が一時、運転を見合わせたようだが、駅員は指示通りに動いただけのことであり、指示した会社の幹部は政府の気持ちを忖度したのだろう。こうしたとき、官僚は実際に指示しないものだ。後で責任を問われる材料を残さいのが彼らの遣り方。質問の形をとることもある。駅員にしろ会社幹部にしろ、彼らが恐れたのはミサイルでなく自分の立場が揺らぎ、収入に響くことだろう。マスコミで働く人びとや学者の多くもそうした思考をする。勿論、THAADはヨーロッパに配備されたミサイル・システムと同じで、アメリカの支配システムを維持するために中国とロシアを恫喝することが目的。核戦争を仕掛ける準備だ。本ブログでは何度も指摘しているように、アメリカやイスラエルの基本戦術は狂犬、あるいは凶人を装って相手を屈服させるというもの。脅せば屈すると信じ、大多数の国に対しては機能した。が、中国とロシアには通じない。通じない相手を核戦争で脅していると、どこかの時点で本当の核戦争になる。そうした政策を推進しようとしていたのがヒラリー・クリントンだった。選挙戦の時点ではそうした事態を避けようとしていたトランプだが、大統領就任から100日も経たないうちに核戦争を望まない人びとはホワイトハウスから排除されてしまった。
2017.05.02
海上自衛隊が保有する「いずも」が横須賀を出港したようだ。アメリカ海軍の補給艦を護衛するとしている。日本政府は5月から8月にかけて自衛隊が保有する最大の艦船を南シナ海へ派遣する計画だと伝えられたのは今年3月のことで、その計画から外れてはいない。ところで、「いずも」は「護衛艦」というタグが付けられているものの、艦首から艦尾まで平らな「全通甲板」を有し、垂直離着陸が可能なMV22オスプレイや戦闘機F35Bも離発着できると言われている艦船で、国際的にはヘリ空母(航空母艦)、あるいは揚陸艦などを兼ねた多目的空母と見なされている。護衛に適しているとは思えない。2014年にアメリカ海軍は強襲揚陸艦「アメリカ」を就役させたが、旧来のものに比べて航空運用機能が強化され、正規空母並みになっている。アメリカのこうした流れに「いずも」は符合していると言えそうだ。ロイターによると、「いずも」はシンガポール、インドネシア、フィリピン、スリ・ランカへ寄港した後、インド洋でインドやアメリカとの合同艦隊演習に参加するとも報じられている。
2017.05.01
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