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東京佼成ウインドオーケストラがコロンビアで続けている吹奏楽燦選のシリーズの最新作は定期でのライブ録音を集めたもの。CDよりもハイレゾが安かったため、思わずゲットしてしまった。CDだと税込みで¥2970のところ、ハイレゾは24bit 96kHzでなんと¥2500と格安で、全額楽天ポイントでの支払い。ブックレットが付いていないがしょうがない。2016年から2018年までの定期からピクアップした曲が演奏されている。古い曲が多く、新鮮味はない。この中では録音に恵まれないジェイガーの第一交響曲が入っているのが嬉しい。管理人が知る限りこの曲の全曲録音は大阪市音楽団が吹奏楽の交響曲シリーズ(東芝)で演奏していたものしか知らない。ちょっと調べたら他に国内盤が数種類あるようだが未聴。なので、新しい録音で聴けるのはとても嬉しい。演奏は悪くないが、ソロのときのフレージングの処理があまり丁寧でないのが感興を損ねる。交響曲の第一楽章のホルン・ソロは余裕がないのがバレバレで、聴いているほうも少し疲れてしまう。たまたまNASに大阪市音楽団の演奏が入っていて聴いてみたら、フレージングが滑らかで、その部分に限っては大阪市音楽団の演奏が勝っていた。聴く前は、劣っているんだろうな、と思っていた自分が恥ずかしい。聞き物はなんといってもジェイガーで、「ドラゴンの年」が続く。どちらも大変聴きごたえがある。欲を言えば「ドラゴン」の熱狂と交響曲第4楽章のトロンボーン・ソロが素っ気なかったことか。管理人の年代だとトロンボーン・ソロはなんといっても天理高校のコンクールの演奏が今でも印象に残っている。あのビブラートをかけた思い入れたっぷりのソロ以上の演奏は聴いたことがない。スパークでは「ドラゴンの年」がなんと言っても聴き物。第2楽章のコール・アングレのソロも素晴らしい。ただ、この曲にしてはブラス・バンドの演奏がはるかに楽しめる。特に1992年ブラスバンドヨーロッパ選手権で優勝したブリタニア・ビルディング・ソサエティの演奏はダントツの出来で、それに比べると吹奏楽版は薄味でカロリーが低い。「オリエント急行」はあまり好きではないが、今度の演奏は中間部の美しさを認識させてくれた。全曲を通じてソロ・トランペットのメロウなサウンドが魅力的だった。東京佼成ウインドオーケストラ:吹奏楽燦選ライヴ/オリエント急行(DENON) 24bit 96kHzFlac1.Sparke:オリエント急行2.Sparke:ドラゴンの年5.ジェイガー:交響曲第1番9.ヴァン・デル・ロースト:アルセナール指揮:秋山和慶(1,9)、藤岡幸夫(2-4)、大井剛史(5-8)【録音日】2017年4月29日:第133回定期演奏会(1)2016年11月23日:第131回定期演奏会(2-4)2016年2月13日:第127回定期演奏会(5-8)2018年10月6日:第140回定期演奏会(9)【録音】東京芸術劇場
2020年09月30日
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コルトレーンのジャイアント・ステップスの60周年記念盤がリリースされた。オリジナルテイクのみと、すべてのアウトテイクを含むデラックス版の2種類がある。筆者はデラックス版をpresto Musicから裏技を使って\1350で購入。裏技を使わなくても¥1590で購入できるので超お得だ。ところが、正規のテイクしかダウンロードできない。一個一個のファイルでもダウンロードを試みたが駄目。仕方がないので、サイトに連絡。3日ほどしてからやっと復旧した。最初から躓いてしまったが、肝心の音は透明感が増し、細身の音。ノイズが減ればスリムになるものだ。ところが、それが不満だというレビューが見受けられる。おそらく音圧レベルが低いのが問題なのだろう。当ブログは今回の音には肯定的だが、ジャズの迫力が減ったといわれればその通りだ。ただ、発売当初からこの音だったら文句も出ないだろう。今回は別テイクや失敗テイクもすべて収録されているので、資料的な価値は高い。CDにはアトランティック時代の写真や新しいライナーノートが付くので、記録を重視するのであれば断然CDかアナログだろう。ただ、マニアでもない限りオリジナルテイクのみの盤で問題ないだろう。オリジナル以外のテイクは筆者も初めて聞いた。リストを眺めていたら、別テイクや未完成テイクのパーソネルが違うことに気が付いた。その理由を調べていたら、シダー・ウォルトンがその経緯についてインタビューに答えたものがあった。簡単にいえば最初にシダー・ウォルトンとレックス・ハンフリーズが加わったメンバーで完成テイク2曲とその他の未完成テイクを録音。その後、録音を再開したときにシダー・ウォルトンとレックス・ハンフリーズがツアーでいなかったため、フラナガンとアート・テイラーで録音したとのこと。ウォルトンはフラナガンの不出来なソロを聴いた後で断ったことを後悔したという。断った理由は「あの曲は私にとって難しすぎたんだ。でもそうするべきではなかった。まだ若かったんだ。フラナガンがやったように、途切れ途切れでいいからソロを弾けばよかった。」と語っている。曲のハーモニーが完全に独創的だったとのこと。以来ウォルトンはジャイアント・ステップを録音したことはないという。よっぽど悔しかったのだろう。歴史にはイフが付き物だが、あの時J・J・ジョンソンとのツアーがなければ、歴史に残る録音に参加出来たことを思うと、彼の気持ちも分からないでもない。因みにフラナガンのこの曲でのプレイは全般的に精彩を欠き、take6では、ほとんどコードを抑えているだけで、アドリブとは言えない。心の動揺がそのまま出てしまったのだろうか。詳しいパーソネルはこちらに詳しい。なお、コルトレーンの93回目の誕生日にあたる9月23日にアーチー・シェップなど4人の対談がQobuz主催で行われた。英語だが、興味のある方はご覧頂きたい。 historic livestream panel discussion on John Coltrane's groundbreaking 1960 album Giant Steps John Coltrane:Giant Steps - 60th Anniversary Edition(Atlantic Records / Rhino)24bit 192kHz Flac
2020年09月28日
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シャイーがスカラ座フィルと続けているイタリア人作曲家のシリーズ。今回はレスピーギの巻。「ローマの松」と「ローマの噴水」がメインで、後は「リュートのための古風な舞曲とアリア」と悪く言えば月並みな選曲。なので、前回までと比べるとインパクトは少ない。そのほかは、あまり知られていない短い曲が少々と、管理人が期待する知られざる名曲をメインにとはいかなかった。まあ、こういう狙いは目論見通り行くことが少ないので、別な作曲家の方が良かったようにも思う。演奏はとても良い。シャイーといえば、テンポが速いという刷り込みが入っている。よく考えると、古典派やロマン派の初期の作品で目立つだけで、ロマン派後期や20世紀の作品では落ち着いたテンポなのだ。理由はよくわからないが、曲の本来のテンポだとシャイーは思っているのだろう。メインの二つの交響詩はメリハリがはっきりとしていて、テュッティを突き抜けて出てくるトランペットが実に爽快。低音がそれほど出ていないが、これらの曲が巨大化していなくて、望ましい。「ローマの松」は大音響が売りだが、ジャニコロの松がこれほど美しい曲だったとは知らなかった。墨絵のようなデリケートなサウンド、とくに後半のヴァイオリンとチェロの独奏、バックの絹のような弦のサウンド、実に素晴らしい演奏だ。個人的には3つの交響詩の中で「ローマの噴水」がもっとも好きな曲だ。理由は音で押しまくることが少なく、風景が見えるようなところもいい。「トレヴィの噴水」は期待にそぐわず、躍動的な演奏。知られざる曲は全て叙情的な曲が揃っている。気に入ったのは小オーケストラのためのアダージョ「Di Sera」(夕暮れ )2本のオーボエがフィーチャーされている。同名のソプラノと弦楽四重奏のための歌曲もあるが、別の曲のようだ。アダージョといえばバーバーの曲が有名だが、この曲も太陽が沈む前の美しい風景の気分を歌ったものだろうか、メランコリックな叙情が聞き手の心に染み渡る。田園の長閑な風景をを思い浮かべるような、中間部も良い。ただ、後半がいまいち盛り上がらないで終わってしまうのがもったいない。ヴァイオリンと管弦楽のための「Leggenda」も感傷的な旋律でヴァイオリンの独奏も美しい。「リュートのための古風な舞曲とアリア」も落ち着いたテンポとデリケートな表情が清々しい。ということで、企画としては不完全燃焼だが、演奏がそれを補ってあまりある特に交響詩は録音が生命なので、最新録音で聴けるのがなによりだ。オルガンが囂々と鳴っているのは一聴の価値がある。これらの交響詩の代表的な演奏の一つになるだろう。Riccardo Chailly:Respighi(DECCA)24bit48kHz Flacレスピーギ:1.交響詩《ローマの松》 P.1415.弦楽のためのアリア(Trans. Di Vittorio)6.ヴァイオリンと管弦楽のための《Leggenda》 P.367.小オーケストラのためのアダージョ《Di Sera》8.リュートのための古風な舞曲とアリア 第3組曲 P. 17212.交響詩《ローマの噴水》リッカルド・シャイー(指揮)スカラ座フィルハーモニー管弦楽団録音時期:2019年5月6-9日録音場所:ミラノ
2020年09月26日
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コロナ禍でイヴェントの中止や延期が続く中で、最後まで生き残った?大西順子のコンサートを観に行った。今までのコンサートとは違って、検温や氏名電話番号の記録などが行われた。開場も30分早め、座席も前後左右に観客が座らないように配慮されていた。そのため、予約者の席の移動もあり、その事前連絡など大変な手間ががかかったことは容易に想像できる。なので、実際の観客数は1/5になる計算だが、一部空いているスペースもあった。それをステージから見た大西が市松模様みたいだと話していた。大西順子は久しぶりに聞いたが、プレイは健在だった。演奏はよかったのだが、ピアノの音がよく聞こえない。特に左手がベースにマスクされる。ピアノだけが離れて聞こえるのだ。3人の間隔が狭く、ベースのモニターがベース奏者の後ろにあり、ピアノの音がもろにかぶるのだ。しばらくしたら原因がわかった。マイクのセッティングと音量に問題がありそうだ。後半少し持ち直した気がしたが、気のせいだったかもしれない。以前このホールで三浦一馬のコンサートを聴いたときに、エレキ・ギターの音が聞こえなかったことを思いだした。パーカッシブな演奏が持ち味なので、音が小さいというのは致命的で、彼女の特徴があまり発揮さていないのはとても残念だった。井上はいつも通りの安定した演奏ぶりで、ソロも文句なしだ。今回もっとも驚いたのはドラムスの吉良創太(1989-)。高知県生まれで東京音大の大学院を卒業している。とてもしなやかサウンドで自分のようにドラムスとブっ叩くものと思っている人にとっては目から鱗のプレイだろう。といって音が小さいとか、迫力がないのとは違う。ドラムの皮にスティックやマレットが当たるときのあたりが柔らかいというような感じなのだ。どんな時でも、しなやかなサウンドが失われることはない。こんなドラマーは初めてだ。ただ、生で聴かないと分からないサウンドであることも確か。愛犬の銀次郎くんと桃子ちゃんに因んだ「Apple of My Eye」と「Very Special」という二つのナンバーが演奏された。「Apple of My Eye」とは目の中に入れても痛くないくらい愛おしいという意味だそうだ。大西の溺愛いぶりが微笑ましい。「Xll」でも取り上げられたいた。「Xll」では、ホーンが入っている分少し騒がしく、曲の美しさを知るには今回のトリオでの演奏のほうがいい。リリカルで静けさの感じられる、クラシックを聴いているような格調高いだ。「Very Special」は同名のアルバムで最初と最後に演奏されていた曲。エンディングは今回の井上陽介とのデュオだった。自分で暗い曲だと言っていたが、抒情的な美しさが感じられるいい曲。CDではイントロとアウトロなので1分強とちょっと物足りないが、今回は演奏時間は申し分なく、この曲の美しさが堪能できた。スタンダードが珍しく2曲入っていた。「How High the Moon」はいきなり高速のピアノソロから始まるアレンジで、曲名が違うんじゃないかと思いつつ最後までいったところで、テーマが出てくるという意表を突いたアレンジ。昔のアレンジで「Play Piano Play(Somethin' Else)」というヨーロッパツアーのライブが残されている。トリオでの今年のチャレンジ目標というオスカー・ピーターソンのアレンジによる「Chicago」大変難しいアレンジだといっていた。どこが難しいのかよく分からないが、イントロとエンディングの複雑なアンサンブルのことかと思たが、あとでピーターソンの演奏を聞いたらばそういうことではないようだ。おそらく後半の倍テンポになった部分のことを言っているように思う。終わった後、大西が汗だくになっていたことからも、そういう感じがする。さすがにオスカーのテクニックに合わせたアレンジをなぞるだけでも大変そうだ。ベースソロもレイ・ブラウンの速弾きに合わせているので大変そうだ。音楽としてもスリリングでとても楽しめた。井上陽介の「Magic Touch」も「Xll」のために作られた曲。タイトルはピアノのタッチのことで、ファンクぽい曲にしたというのが作曲者の弁。トリオでウッド・ベースなので、ファンク色はあまり感じられなかった。抜かりなくベースソロが挟まれていて、楽しめた。アンコールのホレス・パーランの「アス・スリー」はメンバーの喋りを入れた楽しいナンバーで締めくくりとして、なかなかしゃれていた。その中で井上陽介が現在の窮状を切々と訴えていたのは、身につまされた。大西は今年で53になったようだが、相変わらず若々しい。最近ネットでの動画配信が多くなって、カメラの寄り方が半端でないので化粧品をそろえ始めたと話していた。色々不満を書いてしまったが、やはり生はいい。ステージが終わるときに気が付いたのだが、両手の親指にサポーターをつけている。故障でなければいいが。。。大西順子トリオ前半1.大西順子:Golden Boys2.大西順子:Essential3. 大西順子:Apple of My Eye4.Dizzy Gillespie、Luciano Pozo:Manteca後半5.Morgan Lewis:How High the Moon6.John Kander:Chicago7.大西順子:Very Special8.井上陽介:Magic Touchアンコールホレス・パーラン:Us Three(en.)大西順子(p)井上陽介(b)吉良創太(ds)大西順子トリオ 2020年9月22日 盛岡市キャラホール大ホール 6列20番で鑑賞
2020年09月24日
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本来6月に公開される予定だった、ジャズ喫茶ベイシーのドキュメンタリーが三か月遅れで公開された。ベイシーは今年で50年を迎えたそうだ。記念の年に、このような優れたドキュメンタリーが公開されたのはまことに喜ばしい。5年にわたりのべ150時間もの映像を撮り続けたのは、本作が初監督となる星野哲也。本業は白金のバー「ガランス」のオーナーだそうだ。菅原氏との交流を通じて彼の姿をきちんと形として残しておきたいと思い立ち、1本のドキュメンタリー映画としてまとめた。監督は最後はプロに仕上げてもらおうと思い、「踊る大捜査線」シリーズの亀山千広に依頼したそうだ。結果的に、これが大成功。大変優れたドキュメンタリーになった。店主の菅原正二氏(1942-)のインタビューが中心であるが、そのほかの多彩な顔触れが興味深い。この映画が撮影されたのは2年前だが、とても70歳を過ぎた老人とは思えない。坂田明のことを呼び捨てにしていたので、それなりに年をとっているとは思っていたが意外だった。映画の後半で誰かが、「ジャズはかっこよくないとダメだ。ジャズを愛する人もかっこよくなければダメだ」と言っていた。なるほど氏は昔から格好が良かったし、現在も均整のとれた肉体で、映画のポスターの写真も実に格好が良い。登場するのは、新宿でDIG、DUGを経営する中平穂積氏をはじめとするジャズ喫茶の経営者たち。オーディオの関係者、店を訪れたジャズ・ミュージシャンや俳優など有名人が沢山出てくる。菅原氏の独白が中心だが、彼らとの会話も大変面白い。菅原氏の独白でいろいろと金言みたいな言葉が出てくる。まさに一つの道を探究し続けているその道の達人の言葉だ。例えば、ヴァイオリンなどはすでに行きつくところまで行って進化が止まっっている。オーディオでいえばスピーカーがそれにあたるのだそうだ。何しろジェイムズ・B・ランシングが1940年代に作ったスピーカーがいい音でなるということを言っていた。現在でもアンプは古いJBLで、プレーヤーはリンのLP 12、カートリッジがSHUREのV 15 typelll。何十年も前から変わっていない。そういうラインナップであることも、氏の考え方そのものだろう。何しろ、ジャズ喫茶が衰退した現代でも、よりいい音を求めている前向きな姿勢には共感ができる。最後のほうで出てくる渡辺貞夫がセルマーのリガチャ(クラリネットやサックスのリードをマウスピースに止める部品)を5,6個試し吹きするシーンが出てくる。菅原氏はそれを見てオーディオでいえばリードがカートリッジでリガチャーがシェルだと言っていたのが興味深い。氏は多彩な趣味をお持ちのようで、アンティークのカメラがずらっと並んでいたり、レンズの周辺が暗いので、中心を暗くすると言った、玄人でも考えつかないようなことをやっている。録音の趣味もあるようで、店のライブを往年の名機のナグラで録音している。昔のハイソのテープ録音をダイレクト・カットしたラッカー盤を聴いているシーンが出てくる。なんとカッティング・マシーンまで自前で持っているようで、趣味としても実にハイクラスだ。音楽は映画撮影時に菅原氏が店内でかけたレコードのプレイバックを、「ナグラ」のラインアンプを使用し収録したという。ベイシーでのライブではペーター・ブロッツマン、渡辺貞夫や坂田明も登場する。中村誠一との会話では、好きな歌を歌いながら、最後はテナーのアドリブになるという嬉しいシーンも出てくる。村上ポンタ秀一に至っては、レコードと一緒にドラムを叩いたりしている。クラシックでは小澤征爾と豊嶋康嗣が出演して含蓄のある話をしている。小澤はジャズとクラシックのプレイの違い、豊嶋はヴァイオリンのストラディヴァリについて話している。映画の流れからも、適切なインタビューだった。最初がベイシー(エイプリル・イン・パリス」で終わりの方でもモンクのソロ・ピアノで「エイプリル・イン・パリス」が流れる構成はなかなか気が利いている。ということで、オーディオ・フリークやジャズファンの方々には是非ご覧頂きたい。公式サイト
2020年09月22日
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スイスのソプラノ歌手レグラ・ミューレマンのモーツァルトのアリア集(未聴)の続編。最近注目している歌手の1人で、以前もスイスの作曲家の作品を集めた優れたアルバムにふれたことがある。今回は、オペラのアリアが7曲で、2曲がコンサート・アリアというプログラム。穏やかな曲調のナンバーが並んでいる。地味ではあるが、落ち着いた佇まいと、味わい深い仕上がりは悪くない。こういうアルバムが息の長い人気を博すのであろう。コロラチュール・ソプラノであるミューレマンには適したプログラミングだろう。どの曲も癖のない伸びやかな歌唱で、フレージングも美しい。透明な声と作為を感じさせないすぐれたテクニックで、気持ちよく聞ける。ただ低い声で地声になるのは、ちょっと気になる。また、速いパッセージでは、少しもたつきが感じられる。どのナンバーもいい演奏だが、 歌劇『ツァイーデ』 K.344~「おやすみ、いとしい人よ、安らかに」とアリア『喜びに躍りて』 K.579が気に入った。どちらも聴いたことのない曲だが、曲の良さがしみじみと伝わってくる。特に『喜びに躍りて』がミューレマンのユーモラスな歌で楽しめる。なおこのアリアはウイーンでフィガロの結婚が再上演されるときに追加された2曲のうちの一つだそうだ。歌劇『偽ののろま娘』からの「可愛らしいキューピッド達は」も初めて聞いたが、なかなかいい曲で楽しめる。彼女の歌はどのナンバーでも、ステージが目に浮かぶような感情表現が豊かだ。バックのバーゼル室内管弦楽団はピリオド楽器とモダン楽器を併用するオーケストラ。最近はホリガーとのシューベルトの交響曲が注目を集めている。指揮のウンベルト・ベネディッティ=ミケランジェリは名前の通り、アウトゥーロ・ベネディッティ=ミケランジェリの甥だそうだ。すっきりとしたサウンドが心地よい。Regula Mühlemann:Mozart Aria Ⅱ(SONY)24bit96kHz Flac 1. 歌劇『イドメネオ』 K.366~「孤独はわが友、そよ風はやさしく」2. 歌劇『フィガロの結婚』 K.492~「とうとう嬉しい時が来た・・・恋人よここに」3. 歌劇『ルーチョ・シッラ』 K.135~「私は行く、私は急ぐ」4. 歌劇『羊飼の王様』 K.208~「彼女を愛そう」5. 歌劇『魔笛』 K.620~「愛の喜びは消え」6. 歌劇『ツァイーデ』 K.344~「おやすみ、いとしい人よ、安らかに」7. アリア『喜びに躍りて』 K.5798. 歌劇『偽ののろま娘』 K.51~「可愛らしいキューピッド達は」9. アリア『ああ、情け深い星たちよ、もし天にいて』 K.538レグラ・ミューレマン(ソプラノ)バーゼル室内管弦楽団ウンベルト・ベネデッティ・ミケランジェリ(指揮)録音時期:2020年2月4-7日録音場所:スイス、リーエン
2020年09月20日
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この前取り上げたザッパのアルバムでもフィーチャーされていたフランスの歌手カミーユ・ベルトーの新作「Le Tigre」を聴く。新機軸が目立ち、それはそれで嬉しいのだが、ジャズから徐々に離れている感じで、個人的には少し寂しい。タイトルはフランス語で「虎」のことだそうだ。トランペット奏者のマイケル・レオンハートのプロデュースが光る。今回も全14曲のうち自作でないのは2曲。作曲に並々ならぬ自信があればこそのラインナップだろう。歌詞は「dream dream」以外は彼女の手になるが、難解だ。機械翻訳してみたが、意味が分かる曲は一つもなかった。そのうちネットに日本語訳がアップされることを期待したい。いい曲が並んでいるし、アレンジが素晴らしい。編成も曲毎に変わり、飽きさせない。最初の「54番通りの子守歌」はその名の通り優しく穏やかな子守歌で、癒しに満ちた名曲だ。この曲は最後にポルトガル語でも歌われている。バックはディエゴ・フィゲイレドのギター1本で、アレンジも異なる。エンディングは少し音数が多くにぎやか。タイトルチューンはゆったりとしたチェロの刻みにビートのきいたシンセが加わるもので、ベルトーの新機軸だろう。後半のバックコーラスはベルトーらしいチャーミングなもの。「Todolist」はリズミックなダンスナンバー。「There Is A Bird」はクラシックハープ(アルパ?)が主にバックを務め、途中から弦が加わる穏やかな曲。ハープが入ることで、民族的な面白いテイストに仕上がっている。「Voyage En Haïku」の Haïkuは俳句のことらしい。ブックレットを機械翻訳したが意味がさっぱりわからなかった。後半はベルトーの語りになっている。「Je Suis Un Arbre」は森の中にいるような、なかなか不思議な雰囲気の曲。バックが主にラテン・パーカッションでラップみたいな声も聞こえる。後半ジャッキー・テラソンのピアノ・ソロが聞かれる。「Ma Muse」はイントロから印象的なフレーズが飛び出す。フランス人らしい明るくリズミックな曲で、実にしゃれている。「ドント・ノー・ホワイ」の作曲者であるジェシー・ハリスの「Dream Dream」はデキシースタイルのノスタルジックなアレンジ。当ブログとしてはあまり面白くなかったが、わざとこういう仕上げにしたのかもしれない。エンディングがちょっと面白い。「Tous Ego」は50年代から60年代のサスペンス映画にでも出てきそうなスタイリッシュな曲。バックはトランペットとアルトの2ホーンで、いかにもという雰囲気を醸し出している。ジャズマンが好んで取り上げるショパンの前奏曲集の第4番は、しっとりとした歌唱が素晴らしい。ギターとのデュオに薄くシンセが入っている。ギターのアルペジオが曲にマッチして、いい感じに仕上がっている。「Le Tube」はコーラスが面白い。ベルトーは新作が出るたびに確実に進化していることを確認できるのは、とても嬉しい。TodolistCamille Bertaudt:Le Tigre(Masterworks)24bit 96kHz Flac1. Camille Bertault: Berceuse De La 54ème Rue (Version Française)2. Camille Bertault: Le Tigre3. Camille Bertault: Todolist4. Camille Bertault: There Is A Bird5.Camille Bertault: Voyage En Haïku6. Camille Bertault: Je Suis Un Arbre7. Camille Bertault: Ma Muse8. Jesse Harris: Dream Dream9. Camille Bertault: Je Vieillis10. Camille Bertault: Tous Ego11. Chopin: Prélude12. Camille Bertault: A Quoi Bon13. Camille Bertault: Le Tube14. Camille Bertault: Berceuse De La 54ème Rue (Version Portugaise)Michael Leonhart (Hr,Flh,tp,perc.)Stéphane Guillaume (ss)Stéphane Guillaume (b-cl)Jacky Terrasson (p,org)Christophe Minck (b)Diego Figueiredo (g)Donald Kontomanou (ds)Minino Garaï (perc.)
2020年09月18日
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クラシック音楽格安ダウンロードサイトの30%オフの840円という激安価格で購入した一枚。ジュリーニ(1914-2005)はこの曲を2回録音している。今回の録音は1回目のフィルハーモニア管弦楽団を指揮した1963-1964年の録音。知らなかったが、録音が悪いという定評があるらしい。ちょい聴きしてなんかサチッテいるなと思っていた。その情報を知らなかったのが悔やまれる。静かな曲では全く問題ない。音はシャープなので、この問題がなければ大分違ったはずだ。特に「怒りの日」は鮮烈なサウンドだ。テュッティで音が混濁するのは許容範囲内。マスターテープの問題だろうか、曲の途中で音飛びが何か所かあるのも問題がある。例えハイレゾ化しても、もともとの録音が悪いと、何ともならないいい見本だろう。今回の場合は歴史的名演と評価されているらしい。確かに第一級の演奏だが、商品としては粗悪品と言ったら言い過ぎだろうか。最後の「リベラメ」でダメを押すように、盛大にサチッテくれたのが何とも恨めしい。録音の悪さにばかり耳が行くが、演奏は素晴らしい。壮年期のジュリーニのきびきびとして引き締まった指揮が、心地よい。合唱もなかなか健闘している。独唱はビッグ・ネームが並んで、大変充実している。男性陣、とりわけバスのギャウロフの黒光りするシャープな歌唱が光っている。テノールのゲッダも悪くない。女性陣はルートヴィッヒが細身だが強靭な声と劇的な表現で精彩を放っている。シュワルツコップも上手いのだが、声が重いので、アルトとのコントラストがはっきりしないのが惜しい。「Recordare(思い給え)」での二重唱は大変すばらしい。なお、現在はセールが終了して、レギュラー価格に戻っている。ところで、このサイトは商売っ気がないのか、予告なしにいきなりタイトルがなくなっていることが多い。今回チェックしたら、ワルターやセルがゴッソリとなくなっていた。買うつもりだったタイトルもあったので、惜しいことをした。フィルハーモニア管はこの頃全盛期だったのではないかと思ってwikiを調べたら、1964年の3月にオーナーのウォルター・レッグにより解散させられ、以後苦難の道を歩むことになる。名前に「ニュー」が付く前の全盛期だったことは確かで、それは演奏からもうかがえる。Giulini:Verdi Requiem(warner)2.8MHz 1bit DSFエリーザベト・シュヴァルツコップ(ソプラノ)クリスタ・ルートヴィヒ(メゾ・ソプラノ)ニコライ・ゲッダ(テノール)ニコライ・ギャウロフ(バス) フィルハーモニア合唱団フィルハーモニア管弦楽団カルロ・マリア・ジュリーニ録音:1963年9月16-21,23-27日、1964年4月7日録音場所:ロンドン、キングズウェイ・ホール
2020年09月16日
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ふと思いついてQobuzで検索して見つけた一枚。フランスのサックス奏者、ステファン・スピラがイタリアのピアニスト、ジョバンニ・ミラバッシのトリオと共演した一枚。彼らは「Spirabassi」(2009)でも共演していた。全体に趣味のいい音楽になっている。スピラはソプラノ・サックスだけを吹いている。とても暖かいいサウンドで、聴いているといい気持ちになってくる。タイトルの「Improkofiev」はインプロヴィゼーションとプロコフィエフの造語だろう。プロコフィエフを即興でみたいな感じだろうか。bandcampから入手。Qobuzではハイレゾがラインナップに入っていたので、バンドキャンプでもハイレゾを期待したがロスレスで、少しがっかりした。まあ$7なので、仕方ない。前半はスピラのオリジナル2曲にカーラ・ブレイの「lawns」スピラのオリジナルはプレイと同様温かみと親しみやすさが出ていて、気持ちよく聞くことが出来る。「Ocean Dance」はテンポの速い軽快な曲。少し長めのイントロのあとの、フランス人らしい軽くしゃれたテーマがいい。ソプラノのソロになると、一転して熱っぽくなるところ聴きどころ。その前のミラバッシのソロは、スピラに比べるとカロリーが低い。「lawns」は初めて聞いた。原曲はリリカルな美しい曲。ところが、今回の演奏はR&B風で別な曲のように聞こえるところが、とてもユニーク。のんびりとした気分が感じられるところは、悪くはない。ドラム・ソロから始まる「After Rain 」はセットのエンディングの曲みたいな位置のサンバ調の軽快な曲。ミラバッシの躍動的なソロに続いてスピラの熱っぽいソロが続く。だが、もう少し長く聴いていたくなる演奏だ。どの曲も立派なジャズになっていて、クラシックであることを忘れさせてくれる。最後の3曲はプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番のモチーフを使っている。プロコフィエフ特有のグロテスクさは皆無で、洗練されたジャズになっている。タイトル・チューンの「Improkofiev」はフリューゲルを加えたクインテット。リズミックで快適なテンポが心地よい。それに、何といってもソプラノとフリューゲルのハーモニーが美しい。ヨアン・ロスタロットのフリューゲルはセンスのいいいソロをとっている。「New York Dream」は第3楽章の夢見るような主題を題材にしているが、原曲に比べるとかなりドライだ。カロリーはかなり高く、聴き手の心を熱くさせる。最後の「No Strings Attached」も第3楽章のモチーフを使った軽快なアレンジ。これらのプロコフィエフの作品は巧妙で趣味のいいアレンジが光る。サティーの「ジムノペディー第1番」はメロディーが生のまま出てくるが、ハーモニーがしゃれている。ドラムスは切れのいいドラミングと積極的な演奏で目立っている。ベースは堅実ではあるがおとなしすぎか。ステファン・スピラの演奏は太く素晴らしくいい音と明快な演奏で、とても気に入った。リーダーアルバムは他にも数枚リリースしているが、取りあえずミラバッシとの前作「Spirabassi」もダウンロードしたので、そちらもじっくりと楽しみたい。「Spirabassi」ではテナーも演奏しているが、テナーもいい音だ。例によって、ロスレスを192kHzにアップ・コンバートして聴いたが、素晴らしくいい音に仕上がってる。Stéphane Spira,Giovanni Mirabassi:Improkofiev(jazzmax)16bit 44.1kHz Flac1. Stéphane Spira :Ocean Dance2.Carla Bley:Lawns3. Stéphane Spira:After Rain 4.Erik Satie:Gymnopédie N°15.Sergey Prokofiev:Improkofiev6.Sergey Prokofiev:New York Dream7.Sergey Prokofiev:No Strings AttachedStéphane Spira(ss)Giovanni Mirabassi(p)Steve Wood(b)Donald Kontomanou(ds)Yoann Loustalot(Flh track5)
2020年09月14日
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藤倉大の新作を聞く。今回は海外でも国内と同時配信で、安価に入手できることもあり、大変有難い。例によってprostudiomastersから税込みでC$16.26、日本円で1300円台で入手した。彼のアルバム作りは、ある程度作品がまとまってからアルバムにするという方法なので、ジャンルで統一されるということはない。今回は、大規模管弦楽と協奏曲が1曲、金管アンサンブルが1曲、それに器楽曲という構成。「Three」はアンサンブル・スリーというオーストラリアのアンサンブルの委嘱によって書かれた。トロンボーン、トランペット、エレキギターという変わった編成の曲。作曲者が6歳の時に家族でオーストラリアに滞在したときの幸せな記憶に基づいているという。それ以来、この作品のプレミア公開までオーストラリアには行ったことがなかったそうだ。作曲者は、今まで書いた曲の中で一番幸せな曲と語っている。曲自体はあまり面白くない。2人の金管は勝手なことをやっているようだし、ワウワウミュートの効果もあるとは思えない。ギターは旋律らしきものはなく、殆どノイズかと思われる瞬間もある。器楽は、笙とクラリネット、それにコントラバスの独奏が一曲ずつ。タイトル・チューンはクラリネットの独奏。フラッター・タンギングが多用されている。木管楽器では珍しい。実験色の強い作品が多い中では、かなりまともで、結構楽しめる。笙のための「obi(帯)」はひんやりとした感触が心地よい。委嘱した東野珠実の笙に作曲者自身のエレクトロニクスが加わっている。藤倉はブックレットで、笙が出せない中低音を電子音で補い、速く演奏できない笙をいかに速く演奏させるかという一種の実験を行ったと述べている。どちらも同じ音色なのです、どの部分が笙なのかよく分からない。エレクトロニクスは高温がうるさく、ちょこまかと動くのもうざい。藤倉が言うように実験色の強い作品になった。現時点では、何度か聞いてみないと理解できそうもない。コントラバスのための「スカーレット・アイビス」は高音域のみを使っていて、コントラバスらしいサウンドは聴かれない。ウイーン式調弦という方式で調弦されている。コントラバスの前身である6弦ヴィオローネの為の調弦ゆえ「ヴィオローネ調弦」とも呼ばれる。現代の4度調弦のコントラバスで演奏するとなると非常な困難を伴ったり、演奏効果があがりにくいそうだ。出典: http://www003.upp.so-net.ne.jp/ultrabassissimo/contents/wienertuning.html作曲者によると、「かなりユニークな自然倍音を作り出している」とのこと。旋律らしい旋律は出てこない。コントラバスの新しいサウンドを追求した作品だろうが、あまり楽しめない。協奏曲はホルン協奏曲第2番。N響の福川伸陽のホルンにアンサンブル・ノマドがバックを務めている。藤倉は、これまでのアルバムで福川伸陽を起用した作品をいくつも録音している。ワウワウミュートを使うことが多く、ホルンらしい豪放なサウンドは聴かれない。もともと藤倉はホルン協奏曲の音が、マッチョでうるさく聞こえることが多いので、嫌いだという。今回の曲は今までホルンを起用した作品の中では最も面白くなかった。理由は、ワウワウミュートが他の楽器と合わないからだ。ホルン単独だと、それほど違和感がないが、さすがに協奏曲はダメだった。ホルンの新しい可能性を提示する意義はあるだろうが、一般受けするとは思えない。ただ映像を観ると特殊な技巧が必要なことは確かだ。バックだけ聴いていると、かなりシリアスな音楽。本気か冗談かよく分からないが、ユーモアを感じさせるホルンの存在が特異で、形容に困る。この困った奴?に対し、バックは上手くつけていると思う。既成概念に囚われない、開かれた耳?をお持ちの方が理解できるかも知れない。当ブログとしては、耳が慣れないうちは、まともな判断は出来そうにもない。それでも後半のミュートを外した部分の音楽はホルンも真面目?になり、それなりに面白く聴かせてくれた。大編成の「umi」は20分ほどの曲で、心にぐさっと突き刺さるような痛みを感じさせる音楽。藤倉の自作のオペラ(ソラリス?)からの音楽だそうだ。弦は海の波の動きと、海に面しているときに感じる恐ろしい未知の感覚を示すとのこと。オペラの音楽だけに物語を感じさせる。このアルバム随一の聴き物だろう。一部引用したが、ブックレットには、作曲者自身の曲についての解説が掲載されていて、作曲者の意図が分かり、大変参考になる。Dai Fujikura :Turtle Totem(Minabel)24bit96kHz Flac曲目タイトル: 1.THREE~トランペット、トロンボーンとエレクトリック・ギターのための 2.ホルン協奏曲第2番 (アンサンブル・ヴァージョン) 3.Obi(帯)~笙とエレクトロニクスのための 4.スカーレット・アイビス~コントラバス・ソロのための 5.タートル・トーテム~クラリネット・ソロのための 6.Umi(海)~オーケストラのためのEnsemble Three(track1)福川伸陽(Hr track2)アンサンブル・ノマド(track2)東野珠実(笙 track3)佐藤洋嗣(b track4)吉田誠(cl track5)アントニー・ヴィット(指揮)名古屋フィルハーモニー交響楽団(track6)
2020年09月12日
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通っているスイミングで、着替え中に職員の方が入ってきた。少し間をおいて、こっちを見ろというので、見たら、洗面台の鏡の間に貼り紙がある。文面は「立ション禁止 軽犯罪法違反になります」聞くと、しばらく前から、小便の匂いがするという。月曜日と水曜日の午前中なそうだ。調べた結果、洗面台の前で立小便をしているらしいことを突き止めた。幼稚園の子供たちも来るので、その可能性もないわけではないが、酒臭い匂いがするので大人が立ちションしているという可能性が高いとのこと。毎回水を撒いているそうだが、大変なので、いよいよ注意喚起に踏み切ったということらしい。まあ、世の中には色々な人がいるもんだが、トイレがないわけでもないのに、わざわざロッカーで立ちションをすることもないと思う。もしかしたら病みつきになったのかもしれない。当ブログも匂いが気になっていた。雨が降っている時や降った直後などに匂ってくるので、配管から汚水が漏れているのかと思っていたが、クレームはつけていなかった。匂いのする場所も決まっていて、2つある洗面台の左側から匂ってくるのだ。今から考えると、最近時々帰りがけにスイミングの職員が入ってくるのはこのせいだったのだ。それにしても、ここまで詳しく話してくれると言うことは、当ブログが犯人じゃないかと思われているのかもしれない。あまり気持ちの良いものではないが、仕方がない。本当は監視カメラを付ければ良いのだろうが、何しろ裸が映るので、プライバシーの問題もある。とにかく、貼り紙が効いて、早く、あの不快な匂いを嗅ぐことがなくなることを願っている。悪戯といえば、このスクールの乾燥室に「水をかけるな」という貼り紙が長いこと貼られてある。その昔、水の右上に点をつけて、「氷をかけるな」という悪戯がされたことを思い出した。悪戯をするのなら、せめてこのようなユーモアのある悪戯にしてもらいたいものだ。ところで、ネットを見ていたらゲーリー・ピーコックが9月4日、ニューヨーク州アップステートで亡くなったことを知った。85歳だったそうだ。最近まで意欲的に新作を発表していたので、とても残念だ。とまれ、長い間楽しませて頂いことに感謝したい。合掌
2020年09月09日
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半年ぶりに映画を観に行った。イタリヤの名歌手ルチアーノ・パヴァロッティ(1935ー2007)のドキュメンタリーで、彼の生い立ちから亡くなるまでを描いている。監督はロン・ハワード。デビュー・コンサートの映像など貴重な記録がふんだんに使われている。父親はパン職人兼テノール歌手で、かなりの腕前だったそうだ。父親の写真も数葉出てくる。若い頃のパヴァロッティにそっくりだ。パヴァロッティは、幼い頃から父親とともに教会で歌っていた。1955年から本格的に音楽を学び、1961年コンクールで優勝し、副賞である「ラ・ボエーム」でデビュー。この時の映像も出てくるが、幾分細身の声ではあるが、パヴァロッティのイメージそのものの声が聞ける。1968年にはMETに登場するというスピード出世。初期の頃ジョーン・サザーランドから教えを受け、特に横隔膜の動かし方について教わったのが大きかったそうだ。どうやって教えてもらったのかという問いに、横隔膜を触ったとユーモアたっぷりに答えた。元々話術が巧みで、テレビへの出演も度々あったらしい。当彼にとっては三大テノールのコンサートを始めたことが、社会貢献活動に転身する、大きな転機になったというのは、初めて知った。コンサートを見聞きするだけでは分からない、インサイド・ストーリーだ。根っから楽天的で、素顔のパヴァロッティもステージでの印象とあまり変わらない。楽天的なのは、子供の頃に生死に関わる大病を患って、どんなことも前向きに考えるようになって以来だそうだ。印象的だったのは、パヴァロッティ&フレンズのコンサートでU2のボノに作曲を依頼し、コンサートへの出演まで実現したこと。あのような有名な歌手が、自らアイルランドまで飛び、ボノの自宅で作曲を依頼するというフットワークの軽さには驚く。おまけに、その模様を映像に撮るためのカメラクルーまで連れていくという強かな側面を持っているのには舌を巻く。この映画は彼の知られざるエピソードがたくさん出てきて、彼の人となりがよく分かる。例えば、コンサートで白いハンカチを持っているのは、リサイタルで緊張し、見かねたピアニストがハンカチを持ったらというアドバイスをくれたという話や、出番の前はいつも死にたいと思うほどナーバスになるという、役柄からは想像できない繊細さを持つことも知った。映画では、付き合いのあった関係者のインタビュー映像が数多く出てくる。深みを与えていたのは、なんといっても、前妻アドゥア・ヴェロー二と三人の娘、2度目の結婚で娘を1人もうけた2人目の妻ニコレッタ・マントヴァーニ、それに元愛人の歌手マデリン・レニーたちへの突っ込んだインタビュー。最も嫌がられるだろう離婚や家族のゴタゴタについても、かなり詳しく描かれている。当人たちの協力は勿論だが、その内容を引き出したスタッフの努力にも頭が下がる。家族のインタビューがなければ、単なる「大歌手の一生」みたいな表面的なものになっていただろう。パバロッティの映像を見ていると、彼のテクニックがどれだけ優れているかが、よくわかる。特にブレス・コントロールは常人離れしている。これは新しい発見だった。音楽は大半が彼の歌声なのだが、それ以外の音楽も趣味のいいポピュラー音楽などを使っていて、悪くない。ということで、すぐれたドキュメンタリーとしてオペラ・ファンはもとより、全てのクラシック・ファンに是非ご覧いただきたい。公式サイト
2020年09月07日
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Presto Musicのメールで知ったアルバム。ビッグ・バンドでフランク・ザッパを演奏するというもの。フォローしているフランス人歌手のカミーユ・ベルトーも1曲だけ参加している。Spotifyにアップされていたので、聞いてみたところなかなか面白い。Presto Musicでロスレスながら安価だったので、ダウンロードした。このバンドはティエリー・マイヨール(1966-)が率いるフランスのビッグバンド。このアルバムを聴くまで全く知らなかったが、フランスのビッグ・バンドらしからぬ分厚いサウンド。何よりもその熱気に圧倒される。ビッグバンドとしては、2018年にリリースした「pursuit of happiness」(2018)以来の2作目。3曲のヴォーカルものは、ヴォーカル担当が歌詞を手掛けている。ザッパの作品は、ロックはもとよりジャズやクラシックのジャンルでも幅広く取り上げられている。当ブログは、クラシックで取り上げられていることを知ってから、彼の音楽を聴くようになった。彼の音楽は耳あたりがいいわけではないが、怪しげな雰囲気が人を引き付けるのだろうか。このCDは、ザッパの猥雑で危険な香りは残しつつ、ビッグ・バンドの魅力が全開な演奏。どの曲もかなり濃く、クリス・ポッターをはじめとする多彩なゲストも、圧倒的な迫力で迫ってくる。オーケストラのカラーも独特なもので、ザッパの音楽にふさわしいマイヨールの巧みなヴォイシングが光る。ザッパの音楽につきものの、ピッコロやマリンバも入っていて、抜かりがない。タイトルチューンの「Zappa Forever」は13分余りの大曲でアルバム随一の聞き物。二つの部分に分かれている。最初の序奏での語りとベルトーの奇妙なスキャットが、何とも妖しげな世界を感じさせる。続く部分は普通のビッグバンドにベルトーの殆ど歌詞のないヴォーカルが付いている。曲は速いテンポで、エネルギッシュに進行する。後半の息をつかせないようなハイスピードのアルト・ソロが圧巻。雄大なメロディーが続くエンディングの盛り上がりはなかなか感動的だ。続く「Planète Mars」でのトランペットのプランジャー・ミュートのサウンドが強烈。「Les 4 éléments」でのギラッド・ヘクセルマンのファンキーなギタープレイもド迫力だ。2曲でフィーチャーされているデヴィッド・リンクス(1965-)はフランス人らしからぬ、黒っぽくネットリとした歌唱がいい。スキャットも達者だ。ということで、これは思わぬ拾い物だった。ビッグ・バンド愛好家以外のジャズ・フリークやザッパを愛好する方にも是非お勧めしたい。なおイオナレコードのサイトではスコアも販売されている。普通のビッグ・バンドのサウンドに飽き足らない向きには、興味をそそるものだろう。Thierry Maillerd BIG Band:Zappa Forever(ILONA RECORDS 375292)16bit 44.1kHz Flac1. Zappa for ever2. Planète Mars3. Les 4 éléments4. Threads of gold5. The wall6. Island7. Les Carpates8. Between earth and sky9. Transylvanie10. TransitionCamille Bertault(vo track1)Chris Potter(sax track 2,8)Gilad Hekselman(g track 3,10)David Linx(vo track 4,6)Franck Tortiller(Marimba,Vib)Stéphane Belmondo(Bugle track9)all composed by Thierry MaillardThierry Maillard Big Band
2020年09月05日
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アレクサンドル・デスプラという作曲家の映画音楽集。てっきりパユが主役のコンセプト・アルバムと思い込んでいたので、少しがっかりした。この作曲家の名前は知らなかったがいろいろな映画音楽を作曲している多作家だ。wikiによると70以上の映画やテレビの音楽を作曲している。アカデミー賞を受賞した、シェイプ・オブ・ウォーターとグランド・ブダペスト・ホテル』組曲も含まれている。管理人はよほど印象に残らないと、映画の作曲家が誰であるかは全く関心がない。特に気に入った時にサウンド・トラックを聴くくらいだ。デスプラの手掛けた映画音楽の中には管理人が観た映画もいくつか含まれている。抒情的な作風が持ち味だろうが、中には、アニメの「犬ヶ島 (Isle of Dogs)」(2018)みたいな、少しキモイ音楽も作っている。このアルバムはパユがフィーチャーされている映画音楽特集みたいなイメージで聴いていたが、シンフォニックな編曲を、大編成のオケで聞かせるという本格的なものであることに気が付いた。同傾向のアルバムにはムーティや最近出たシャイーなどのニーノ・ロータ集、Naxosの映画音楽のシリーズが思い浮かぶ。全体にしっとりしていて、聴後感は悪くないが、すべてが微温的でやや物足りない。デスプラの音楽はフランス人らしい洒落っ気はあるが、暗く鬱陶しいところもあり、それが好みの分かれるところ。気にいったのは協奏交響曲「ペレアスとメリザンド」協奏交響曲という名前が付いているが、フルートとオーケストラのための交響曲という位置づけなのだろう。メーテルランクの有名な戯曲に基づく音楽で、フランス人作曲家らしい優美な繊細さが感じられる。3楽章はなかなかスペクタクルで面白い。「シェイプ・オブ・ウォーター」は映画音楽から3曲をピックアップした組曲。構成はサウンド・トラックとほぼ同じで、フルートはオブリガートとも呼べないほど地味なもの。音楽自体は、さすがにサウンド・トラックよりはスケールと奥行きが深い。「ラスト、コーション」は愁いを帯びたフルートの旋律が美しい。「真珠の耳飾りの少女」も美しいが暗い。タイトル・チューンの「Airlines」は独奏フルートのための4分ほどの作品。特殊奏法を含む純然たる器楽曲。和風のテイストを感じさせる静かな音楽。アルバムの中では異色の存在だ。耳触りがよく、現代作品としては聴きやすい部類に入るだろう。今後、フルーティストのレパートリーとして、広まっていくかもしれない。「誕生」は後半のワルツの部分の、ヴァイオリンの華やかで、艶のあるサウンドが美しい。最期の「グランド・ブダペスト・ホテル」はウイットに富んだ音楽だったという印象があったが、意外につまらなかった。念のためサウンド・トラックを聞いたら、サウンド・トラックはチンバロンをフィーチャーして、楽しい音楽が続いている。コダーイのハリーヤーノシュのテイストに近い。今回の演奏は、サウンド・トラックのちんまりとした箱庭的な面白さが感じられない。ちょっときれいにしすぎ?と言ったら怒られるだろうか。録音は観客のノイズや拍手、ホールのノイズなどもすべてカットされていて、ライブとは思えない。ブックレットにはデスプラとパユの長いインタビューが載っていて、大変興味深い。Alexandre Desplat:Airlines(Erato 9029530687)24bit 96kHz Flacアレクサンドル・デスプラ:1.シェイプ・オブ・ウォーター(パリ組曲)†4.協奏交響曲『ペレアスとメリザンド』*7.ラスト、コーション†8. 真珠の耳飾りの少女†9.誕生*10.エアラインズ(独奏フルートのための)*11.『グランド・ブダペスト・ホテル』組曲†* World-premiere recording† World-premiere recording of version for flute and orchestraエマニュエル・パユ(al)ミレアム・ラファルグ(acordion track 1-3)フロレンティーノ・カルボ(mandrin track11)フランス国立管弦楽団アレクサンドル・デスプラ(指揮、編曲)Recorded: 3–6.XII.2018 & 6.XII.2018 (LIVE), Auditorium, Radio France, Paris
2020年09月03日
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初めてオクラを植えた。いつも参考にしている、塚原農園のやり方に倣って進めた。それほど難しいことはなかったが、風で倒れない様にすることが必要で、伸びてきたら高さ60センチの高さに、テープをは貼って柵を作った。あとは、お約束の虫の防除だが、定植時にオルトランを撒いたがあまり効果が出ない。案の定油虫や夜盗虫が発生した。殺虫剤を撒いたがイマイチ。仕方がないので、ガムテープでせっせと虫取りをした。今まで2回したが、効果はまずまず。ただ、腰痛もちにはなかなかつらい作業だ。花が咲いて、いよいよ収穫時期になったのだが、成長が速く収穫が間に合わない。普通5-7センチくらいが採り時なのだが、放っておくと、すぐ15センチくらいになってしまう。朝と夕方に採っているのだが、見逃して巨大になっていることがよくある。採れたては柔らかくて、店で売られているものと同じ野菜とは思えない程。ただ、大きくなりすぎると、筋っぽくなり、外側が硬くなってしまう。オクラの料理というと、茹でて輪切りにして醤油をかけて食べる、という方法しか知らなかった。これだけだとかなわんなと思い、ネットで調べた。丸ごと天ぷらにしたのが、上手そうだったので、妻に作ってもらった。これが、ことの他美味い。炒め物もリクエストしているが、そちらはまだ作ってもらえていない。高さも2メートル近くになってきたし、毎回4,5本以上採れるのでさすがに飽きてきた。まだまだ量産?しているが、ストックもだいぶできたので、きりのいいところでやめようかと思っている。来年も植えるかどうかは分からないが、次回は植える本数を少なくして、適正な量にしたい。ところで、今年は、何故かどの野菜も豊作で、いまいちなのはサツマイモくらいだ。ただ、毎日の作業が多く、ちょっと辛いことも確かだが、ぜいたくな悩みかもしれない。
2020年09月01日
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