仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2011.10.08
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カテゴリ: 仙台
わたし(おだずま注:後掲出典の著者三原さん)が中学生の頃の台ノ原は軍隊の射撃場があっただけで、家はほとんど無く、春にはスズラン秋には鈴虫が多かった。ことに秋の台ノ原は良かった。こどもたちは石油ランプのホヤを持って鈴虫を捕りに行き、一本松の根方に腰を下ろして展望を楽しんだ。その頃までは樗牛瞑想の松などといわず、台ノ原の一本松で親しまれた。

北仙台の近く北山丘陵東端の鹿島ヶ崎から東照宮の在る玉田ヶ崎をかけ榴ヶ岡までを一線とした原野は古歌に知られた玉田横野で、台ノ原と向小田原をむすぶ丘陵は仙台平野一帯の低地にのぞみ、この連丘から北が延暦4年に建置された階上(しなのえ)郡であった。シナは高原を意味する。このシナの南の縁りは天平の昔、陸奥国分寺創建の時、瓦焼きの工人によって良質の陶土が発見され、地形も窯を構築するに打ってつけの好条件の上、国分寺にも近いという便利があった。後に二代藩主忠宗の時、藩窯杉山焼が台ノ原に起こったのも偶然ではなかった。

平泉時代、この辺一帯は佐藤基治の所領であったといい伝え、基治は基衡の時代に一本松の近くに天満宮を建てたという。慶長6年に政宗が仙台城を築城したとき、この天満宮の社地から建築資材として百本のケヤキを伐採したという。公は仙台城完成後、その奉斎のため基治創建以来の天満宮を今の東照宮の地、玉田ヶ崎に移して新たに社殿を造営した。玉田ヶ崎は、仙台七崎の一つで玉手崎とも称したので、これを玉手崎天神と呼んだ。慶安2年、忠宗が玉田ヶ崎に東照宮を造営するに先立って、これを東林に遷宮し、さらに伊達騒動最中の寛文7年、当時品川邸に隠居中の三代綱宗が。かつてこの天神に所願の事があって、亀千代に命じ三度び遷座したのが、榴ヶ岡天満宮である。一本松の近くに今も元天神という地名が残っているのは基治の建てた当初の天満宮の地であろう。

忠宗も綱村も造林に力を入れた。平泉毛越寺の杉並木は忠宗、中尊寺の表坂の杉並木は綱村の植林で、今はない塩釜街道や奥州街道の松並木も綱村時代のものであった。台ノ原丘陵は仙台城下にとって左翼の防御地帯で、忠宗、綱村相次いで杉を造林したので、後には鬱蒼たる杉の大森林となり、杉山台という地名が生まれた。ただ堤町に隣接する今の警察学校のあるあたりは藩窯があり、綱村がタカ狩りに行くために杉はその奥の方だけであった。

文化元年12月レザノフが皇帝アレキサンドル一世の命を受け、仙台藩の水主(かこ)寒風沢の津太夫ら4名の漂流船員を長崎に送還し通商を申し入れたが、長崎奉行に拒絶されたのでカムチャッカに引き返し、フォストフ中尉に命じて幕府を威嚇するためエトロフ、クナシリを荒らしたとき、松平越中守定信から仙台藩の国老中村日向成義に出兵命令が下った。文化4年11月のことである。12月には千島に500名、箱館に700名出動を告げ、なお幕府から大銃を携行すべしという命令があって杉山台で演習を開始した。連日寒風の中で猛特訓を行った。この場所が明治になってからそのまま陸軍射撃場となり、現在警察学校が建っている。幕末には迫撃砲の演練をかね、藩主が臨場して打ち上げ花火がここで行われていた。

幕末から明治にかけて杉山台の杉は年とともに伐採され、杉山台は名実ともになくなり、そこで杉の字を除いてタダの台ノ原と呼ぶようになった。堤焼の初期に杉山焼と称したのは杉山台の杉山であり、仙台の北に、上杉山通、中杉山通、杉山通の町名があるのは、そのいずれも北は杉山台に通ずる町であるところから生まれた町名で、かつて台ノ原は鬱蒼たる杉の密林地帯であったことを仙台市民に教えてくれる町名である。

■三原良吉『郷土史仙臺耳ぶくろ』宝文堂、1982年





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最終更新日  2011.10.08 12:17:26
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