仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2012.05.22
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カテゴリ: 仙台



渡辺萬次郎『わが町仙台』(宝文堂、1977年)の記述から、昭和30年、40年代の仙台近郊団地造成の概要。
(前回  昭和30-50年 仙台の団地造成の概要(その1) (2012年5月22日) から続く)

■関連する過去の記事
仙台の団地名を考える(再び) (2012年5月20日)
仙台の「団地名」を考える(後編) (2011年12月11日)
仙台の「団地名」を考える(前編) (2011年12月11日)
仙台圏の宅地開発史を考える (2011年1月5日)


(e)西南地区

向山、長町方面を門戸とする西南地区中、中心に近い長町分では、緑ヶ丘、茂ヶ崎など、八木山及び大年寺山の東斜面に位するもの、八木山団地、松が丘等山頂に近いもの、長町・越路両恵通苑、青葉苑等、それらの中間に位するものも数多く、そのうち八木山土地区画整備(ママ)組合に属する八木山団地には8千人の収容を予定し、既に中学、小学校を備え、その周囲には東北放送、東北工大、動物公園等があり、また西部には郵政研修所の高層をみるが、集団住宅等は含まぬ。

以上の西南に当たる西多賀地区では、山腹中段に早期に造成された西の平、萩の台、大谷地等の小団地の外、近年その奥の金剛沢に造成された八木山南ニュータウンが著しく、その周辺には第2羽黒台、城南荘、信販鈎取等数が多い。

更にその西の鈎取沢上流の西岸には、月ヶ丘、ひより台、県営太白団地等、次々に団地が造られ、その西南には山田住宅、山田自由ヶ丘が開かれ、更にその西南で旧生出村とを堺する旗立台地では、東に羽黒台、西に日本平、その更に西に南仙台ニュータウンが次々開かれたほか、その一部には農学短大、さわらび学園等がある。

更に生出地区の中心茂庭の一部には、仙台市営茂庭団地が造成中であり、それから峠を北に越した折立地区の折立団地も、行政的には生出に属するが、その位置広瀬川に近く、むしろ西方地区に属する。これから更に西方には熊ヶ根の南にゴルフ場付き住宅団地西仙台ハイランドがある。

(f)南方地区

名取川を南に越えた名取山地には、各地に住宅団地の造成を計画されながら自然保存地区に編入され実現に至らず、その東麓の丘陵地帯に県の造成した名取ニュータウンが7千人の収容を予定し、その西方には名取工業専門学校、成人病センター等を見るに過ぎぬ。古代史上最も早く人の集まったこの方面が、最も長く旧態を保存するのも皮肉である。

(g)山地造成の問題点

以上各方面の山地造成団地中、昭和30年代のものは山地の原形をそのままにしてこれを階段状に削り、崖を玉石積で被うたに過ぎぬ。緑ヶ丘の東斜面の如きその代表的なもので、さながら古城の塁壁のごとく、道路は弓の字形に上る。従って冬季積雪が凍結すれば車の昇降は不可能となり、その上雨期には斜面崩壊の危険がある。

昭和40年代に入り、かつ造成が大規模となればブルドーザーの利用によって山を削り谷を埋めて平地をなるべく広くしたが、削った部分の周壁や埋めた部分の前端に大断崖を列ねやすい。特に団地のあるものは地辷(すべ)りの跡をそのまま利用したため、例えば茂ヶ崎団地の如きは崩壊しやすい玉石層を露わに示した大きな崖に三方面から囲まれる。昭和44年緑ヶ丘の北側に起こった山崩のごときもその例で、この内側に計画中の第2松ヶ丘団地の未着手だったことが幸いであった。

大年寺山の北側につくられた野草園の如きも昭和22年新たに起こった地辷(すべ)りによる急斜面で当時はその下を流れる米研(こめとぎ)沢を埋めて沼沢と化した。県はその下流への脱出を恐れて砂防ダムを築いたがそれさえその後崩壊に瀕して再建を余儀なくせられた。

この種の地辷(すべ)り可能地帯は山中に多く、例えば八木山-日本楢道の通じる金剛沢の北斜面では昭和40年代に入ってこれを起し、営林署による防止工事が行われたがなお緩慢な動揺が続きその後に植えた杉の立木が一本ごとに傾いている。
これを防止する方法としては崖を階段状にすること、防壁に水脱き孔を多くし内部滞水を無くすること、崖下に家屋の建築を避け、小公園等の空き地にすること等で、現に実行せられつつあるが、多量の降雨に会すればたといこの種の崩壊がなくとも裸になった地表の土砂を急激に流し、下流に氾濫する危険がある。昭和41年6月中山不動を襲った山津波はその例であり、その後社務所をやや東方に移している。

山地造成の第2の問題は交通にある。現在は改まったが、はじめは無統制に行われたため、市中心部との交通に不便多く、かつ隣接団地間に障壁の多いことで、団地の境界が断崖になったり谷で隔てられる場合が多く、遥かに迂回しなければ隣の団地に買い物にも行けぬのが実状である。
特に開発の途中においては、埋木の末端が谷に臨んで崩崖をなし、各所に一時的沼沢を生ずるからその下流では降雨の際の決潰流失に注意を要する。





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最終更新日  2024.02.25 09:15:16
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