仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2016.01.22
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カテゴリ: 雑感
以前、「起きれ」「食べれ」のように、上一段や下一段活用の動詞を、本来の命令形(起きろ、食べろ)ではなくて、五段活用の命令形で話すのは、東北日本海側と九州であるということ(新聞に書いていたこと)を記した。

現代の合理的な言語の進化というべきなのか、それとも(東北と九州というから)方言周圏論的な地域分布で説明されるのか、などと関心を抱いていた。

大野晋『日本語について』(岩波書店、1994年。この中の「文法ぎらい」という部分で、初出は1977年)に次のようなことが書いている。



サ行変格活用の「する」は、「し、し、する、する、すれ、しろ」と活用するのが文法の教え。だが、千葉県、神奈川県、埼玉県の中では、「勉強しる」という言い方がある。また、北海道では「勉強しれ」という。

また、「来る」について、千葉、埼玉、神奈川では、「あいつは、まだ、きない(来ない)」という人がある。

現在の「こ、き、くる、くる、これ、こい」は、将来おそらく「き、き、きる、きる...」となると予測されることがある。このことを以下に解説する。

「する」についていえば、昔は「せ、し、す、する、すれ、せよ」と活用した。それが、「 、し、 する 、する、すれ、 しろ 」と進化した。ところが、「朝、起きる」という動詞は、昔は「起き、起き、起く、起くる、起くれ、起きよ」(上一段活用)だったのが、「き、き、 くる 、くる、くれ、きよ」となり、さらに今日では「き、き、 きる きる きれ 、きろ」となった。この変化とおなじ道にきっと引き込まれて、現在のサ行変格活用は、将来、「し、し、しる、しる、しれ、しろ」と変わるだろうと推測できる。

千葉や神奈川の「そうしる方が良い」という形は、この前衛的な新形だと言える。

この方式にならうと、「来る」も、「き、き、きる、きる、きれ、こい」と進展することが十分予想できる。千葉や埼玉の「あいつは、まだ、きない(来ない)」は将来の先取りと見られる。

あと200年くらい経つと、日本語のサ行変格活用はなくなって、「する」は「しない、した、しる、しる、しれば、しろ」と活用することになると予言される。

すると「来る」(こ、き、くる、くる、くれ、こい)は、全く孤立するので、記憶の経済上何か似た形に引き寄せた方が楽だから、現に千葉、埼玉、神奈川に現れているように、「 、き、くる、くる、くれ、こい」に移り、さらに「き、き、 きる きる きれ きい 」みたいになるだろう。

「くる」が「きる」になるのは、「する」が「しる」になるよりも遅れてさらに100年か200年後になろうが、日本語の昔の流れを見れば将来そういくだろう。



最初に紹介された北海道の「勉強しれ」(たぶん命令形としてだろう)の説明はないようだし、上一段や下一段活用の動詞の命令形としての「起きれ」「食べれ」に直接関連する内容ではないのだが、大変参考になる説明だとおもう。


■関連する過去の記事
食べれ!降りれ? (2007年6月20日)
起きれ食べれ降りれ用法は東北日本海側方言か (2013年1月26日)





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最終更新日  2016.01.22 22:06:28
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