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テナーを含むカルテット盤、スコット・ラファロも参加 ハンプトン・ホーズ(Hampton Hawes)は、1928年ロサンゼルス生まれのジャズ・ピアニスト。幼い頃からピアノを覚え、10代には西海岸のクラブなどで演奏していたという。1950年代前半には戦後の日本に駐留し、日本のミュージシャンとも接触を持ったようだが、米国に戻って1950年代半ば以降には自己名義の作品を録音していった。途中、逮捕による活動休止があったり、1977年には脳溢血で急死してしまっているものの、比較的多くの吹込みを残している。 ホーズのピアノは、ビ・バップを軸にしたある種“正統派”な演奏なのだが、聴きやすさの中に、跳ねたり粘っこさを見せたりという部分が多分に含まれていて、個人的には特に好みのピアノ奏者の一人だったりする。そんなわけで、取り上げたいアルバム作品は多々あるのだけれど、今回はひとまず1958年録音のカルテット盤、『フォー・リアル!(For Real!)』を取り上げたい。 編成はカルテットで、ハロルド・ランド(Harold Land)のテナー・サックスがフィーチャーされている。このテナーがまた絶好調で、全体として出しゃばり過ぎず、しかし小気味よくという、お手本のような演奏である。ホーズのピアノはやや控えめで、ベースやドラムが前に出る余裕を持たせようとしているようにすら感じられる場面もある。その一方で、当然ながら、ピアノ・ソロの場面では、飄々とした感じでたっぷりプレイしている。それから、おそらく多くのジャズ・ファンの目が向くであろうところとして、夭逝のベーシスト、スコット・ラファロが参加している。 本盤でいちばんの聴きどころと思うのは、表題曲の5.「フォー・リアル」。上で述べたこの盤の特徴がよく出ている。なおかつ、収録曲の中でもっとも尺が長く、聴きごたえもある。他に個人的には、1.「ヒップ」もなかなか好みだったりする。ハンプトン・ホーズのピアノをじっくり楽しみたいという向きには、この作品は必ずしも好適盤というわけではないかもしれない。けれども、ここで述べたような観点から、筆者としては、なかなか楽しめている盤だったりする。[収録曲]1. Hip2. Wrap Your Troubles in Dreams3. Crazeology4. Numbers Game5. For Real6. I Love You[パーソネル、録音]Hampton Hawes(p), Harold Land (ts), Scott LaFaro (b), Frank Butler (ds)1958年3月17日録音。 【輸入盤CD】【ネコポス100円】Hampton Hawes / For Real 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2020年01月30日
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2020年01月29日
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初期レインボーの2枚組ライヴ盤 レインボー(Rainbow)は、ディープ・パープルのギタリストであるリッチー・ブラックモア(Ritchie Blackmore)が発足させたバンドで、1975年にファースト作(『銀嶺の覇者』)を発表した。翌年のセカンド作(『虹を翔る覇者』)に続き、3枚目のリリースにして最初のライヴ作となったのが、1977年リリースの『レインボー・オン・ステージ(Rainbow On Stage)』であった。 レインボーは、実質的にブラックモア主導のバンドということもあり、メンバーの出入りが激しかった(その上、演奏スタイルも変化していった)。本ライヴ盤は、ヴォーカルがロニー・ジェイムズ・ディオだった時期の来日公演(1976年)の音源が中心となっている。全6曲(後にメドレーの3曲が別々のトラックと扱われたので全8曲となっており、下記の曲目データは8曲収録の表記にあわせる)から成っていた。6曲という数からは一見わかりづらいが、長尺の演奏が多く、発売当時はLP2枚組というヴォリュームであった。実のところ、筆者もそのレコードだった時の曲配置のイメージに愛着があったりする。 収録内容は2.~5.が日本公演の音源(5.は大阪公演で、他は東京公演)、残りは西ドイツ(ケルン、ニュルンベルク、ミュンヘン)の音源が使用されているが、元のライヴそのままではなく手が加えられている(複数の音源からミックスされたり編集されてたりしている)箇所が多い。収録曲は、ファースト作の曲を中心に、セカンド作や、さらにはディープ・パープル時代の曲も収録されている。さらに、ちょっと珍しいところでは、本ライヴ盤発売時にはまだリリースされていなかった次作(『バビロンの城門』)に収録された曲(1.に含まれている「キル・ザ・キング」)が収められている。 とにかく演奏に一体感があるという点が、本盤の最大の特徴と言える。昔聴いていた時にはあまり深く考えずにただ酔い、没頭していたけれど、今あらためて考えれば、1976年段階でこの演奏内容というのがすごい。ハード・ロック/ヘヴィー・メタルという名で括られる音楽が作られ、広まっていった過程を考えれば、確実に将来を先取りしていた。個人的な体験による贔屓もあると言われると確かにそうかもしれないのだけれど、ライヴ盤に残されたこの演奏で、その当時の熱さも、いま述べた先駆性も追体験できる、そんな作品だと思う。[収録曲]1. Intro: Over the Rainbow/Kill the King2. Man on the Silver Mountain3. Blues4. Starstruck5. Catch the Rainbow6. Mistreated7. Sixteenth Century Greensleeves8. Still I'm Sad*LP(2枚組)では、1.と2~4.(LPではメドレーとして1曲の扱い)がA面、5.がB面、6.がC面、7.と8.がD面に収録。1977年リリース。 レインボー・オン・ステージ [ レインボー ] 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2020年01月27日
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独特の音楽スタイルの吟遊詩人 J・J・ケイル(J. J. Cale)はオクラホマ出身のギタリスト、シンガー・ソングライター(1938年生まれ、2014年没)。J・J・ケイルというアーティスト名は、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのジョン・ケイルと混同しないように付けられた芸名(この人の本名はジョン・ウェルドン・ケイル)である。本盤『トルバドール(Troubadour)』は、1976年にリリースされた作品で、彼のスタイルが体現されたアルバムでと言えるように思う。 J・J・ケイルの音楽スタイルは、“タルサ・サウンド”(タルサはオクラホマ州にある都市の名称)などと呼ばれ、ブルース、ジャズ、カントリーなどが相混じったものである。彼のスタイルは、しばしば“レイド・バック”と言われ、エリック・クラプトンがソロ・アーティストとしてやっていく際に目標として言及していたものでもある。 実際、本盤には、クラプトンが本作発表の翌年にカバーして有名となった6.「コカイン」が含まれている。けれども、この曲だけを聴いておしまいというのでは、本盤はもったいない。個人的嗜好から何曲か触れておくと、まずは1.「ヘイ・ベイビー」。あくまで個人の感想だが、妙に病みつきになりそうなナンバーが多く、この曲はその筆頭である。本盤でぜひとも聴き逃がせないナンバーだと思うのは、2.「トラヴェリン・ライト」。そして、次点が8.「消えた女」。なんだか個人的思い入ればかりで曲を挙げているような気もしてきたが、とにかくどの楽曲・演奏も渋くてカッコいい。 J・J・ケイル自身は、残念なことに2013年に74歳で亡くなってしまっている。とはいえ、彼の作品、とりわけ本盤はずっと後世へと聴き継がれて欲しいと思う。[収録曲]1. Hey Baby2. Travelin' Light3. You Got Something4. Ride Me High5. Hold On6. Cocaine7. I'm a Gypsy Man8. The Woman That Got Away9. Super Blue10. Let Me Do It to You11. Cherry12. You Got Me On So Bad1976年リリース。 トルバドール/J.J.ケール[SHM-CD]【返品種別A】 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2020年01月24日
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通常のベスト盤とはちょっと違ったピーター・セテラ・ヒストリー ピーター・セテラ(Peter Cetera)は1944年、米国のシカゴ出身のシンガー、ベーシスト。1960年代からバンド、シカゴのメンバーとして活動し、「長い夜」などではリード・ヴォーカルを担当した。1980年代に入った頃にはバンド内での存在感もより大きくなったが、1980年代半ばにシカゴを脱退し、ソロ活動に専念、ソロとしてもいくつものヒット曲を送り出した。 本盤『愛ある別れ~ピーター・セテラ・ベスト・コレクション(You’re the Inspiration: A Collection)』は、邦題では“ベスト・コレクション”と呼ばれているが、実際には純粋なベスト盤ではない。正しくは“ベスト盤的要素を持った企画盤”とでも呼べばいいのかもしれない。というのも、収録された11曲中の5曲が新たに録音されたものだったからである。その背後には、権利の関係で自由に楽曲が収録できなかったことがあったようだけれども、結果的に以下に記すような新録も含め、既存の楽曲だけのコンピレーションとは一風違った特徴を持つことになった。 まず、ベスト盤的編集に集められているのは、様々なアーティストとのデュエット・ナンバーである。エイミー・グラントとのヒット曲2.「ザ・ネクスト・タイム・アイ・フォール」をはじめ、チャカ・カーンとの4.「フィールズ・ライク・ヘヴン」などが収められ、この部分に関しては、“デュエット・ベスト集”といった色合いである。次に、新録の5曲のうち、3曲はシカゴ時代のナンバーの再録音、つまりは新ヴァージョンである。日本語表題に採られている1.「愛ある別れ(If You Leave Me)」、原盤の表題になっている5.「君こそすべて(You’re the Inspiration)」、そして8.「朝もやの二人(Baby, What a Big Surprise)」である。これらはキーを変えたり、アレンジを変えたりと、シカゴ時代とは違った、1990年末時点でのピーター・セテラによる曲の解釈が示されている。残る2曲(3.「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー・ザット・マッチ」と7.「シー・ダズント・ニード・ミー・エニモア」)は新曲で、とりわけ3.はなかなかよくできたバラードで、筆者的にも結構好みだったりする。[収録曲]1. If You Leave Me Now (New Version) 2. The Next Time I Fall (w/Amy Grant) 3. Do You Love Me That Much4. Feels Like Heaven (w/Chaka Khan)5. You're the Inspiration (New Version)6. I Wasn't the One (Who Said Goodbye) (w/Agnetha Fältskog)7. She Doesn't Need Me Anymore8. Baby, What a Big Surprise (New Version) 9. (I Wanna Take) Forever Tonight (w/Crystal Bernard)10. After All (w/Cher)11. S.O.S. (w/Ronna Reeves)1997年リリース。 【中古】 愛ある別れ〜ピーター・セテラ・ベスト・コレクション /ピーター・セテラ 【中古】afb 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーをクリックして応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2020年01月20日
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爆発力のあるブルース・ロック/ハード・ロック 1960年代後半から1970年代前半は“スーパーグループ”なるものがもてはやされた。そのネーミングには、3人程の構成メンバーの姓をくっつけて“○○、××アンド△△”みたいなのが多かった。現在の感覚からすると、あまり響きがいいとは言えないグループ名が多かったような気もするが、それはそれで分かりやすかったのかもしれない(何と言っても元のグループなどで成功を収めて名の知れたミュージシャンたちだったわけだから)。 ウェスト、ブルース&レイング(West, Bruce & Laing)もそうしたグループの一つであった。元クリームのジャック・ブルース(ベース)と元マウンテンのレズリー・ウェスト(ギター)とコーキー・レイング(ドラムス)が組んだもので、1972~74年にかけて2枚のスタジオ作と1枚のライヴ作を残している。 1972年作の本盤『ホワイ・ドンチャ(Why Dontcha)』は、そんな彼らにとって最初の作品であった。マウンテンやクリームがそうであったように、ブルースがロックに取り込まれてブルース・ロックが形成され、さらにそれはハード・ロックなど複数の方向へと展開していくという流れの中に本作も位置付けられるだろう。本盤を一聴すれば、随所のフレーズは“ブルース・ロック”感が漂うのだが、音は重くインパクトのある“ハード・ロック”感が強い。 実際、本盤のいちばんの特徴は“爆発力”や“インパクト”にあると思う。そして、そうした“爆発力”の源泉はあくまで3人の楽器演奏にある。ヴォーカルは3人がかわるがわる担当していて、ところどころ別の楽器(例えばジャック・ブルースがオルガンやシンセを担当するなど)も取り入れられている。 筆者が気に入っているのは、表題曲の1.「ホワイ・ドンチャ」。とにかく勢いがあって、“重い”サウンドが疾走する感じがいい。これと同様な感覚は、3.「ザ・ドクター」や8.「プレジャー」なんかでも味わうことができる。あと、注目したいのは、5.「サード・ディグリー」や10.「ポリューション・ウーマン」。駄作と評されることの多い盤だけれど、とにかく演奏レベルが高い。もう少し楽曲が粒ぞろいであったなら、どれも“最高の演奏”とか言われたかもしれないようにすら思う。そして、何よりも、聴き手の側がマウンテンとクリームの幻影を取っ払って聴くならば、決して駄盤などではないような気がするのだけれど。[収録曲]1. Why Dontcha2. Out into the Fields3. The Doctor4. Turn Me Over5. Third Degree6. Shake Ma Thing (Rollin’ Jack)7. While You Sleep8. Pleasure9. Love Is Worth the Blues10. Pollution Woman1972年リリース。 【輸入盤CD】【ネコポス100円】West, Bruce & Laing / Why Dontcha ウェスト、ブルース&レイング / ホワイ・ドンチャ [CD] 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2020年01月17日
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18年ぶりの新作は貫禄の1枚 リトル・スティーヴン(Little Steven, Steve Van Zandt)は、2017年になってようやく21世紀最初のアルバムをリリースした。1999年の『ボーン・アゲイン・サヴェージ』以来なので、18年ぶりのアルバム発表であった(無論、その間にブルース・スプリングスティーンのバンドや個人では俳優業など様々な活動はしていたのだけれど)。それが本盤『ソウルファイアー(Soulfire)』であり、提供曲など自分で自分をカバーした、いわゆるセルフ・カバー曲を中心としたカバー・アルバムであるが、他人のカバーやアウトテイクなどのナンバーも含む。 収録曲をざっと見渡してみたい。1.「ソウルファイアー」は、デンマークのバンド、ザ・ブレイカーズ(The Breakers)への提供曲(2011年の同バンドのセルフ・タイトル作に収録)。それから、提供曲という点では、盟友のサウスサイド・ジョニーへの提供曲が複数含まれている。2.「アイム・カミング・バック」は『ベター・デイズ』(1991年)、5.「サム・シングス・ジャスト・ドント・チェンジ」と6.「ラヴ・オン・ザ・ロング・サイド・オブ・タウン」は『ディス・タイム・イッツ・フォー・リアル』(1977年)、11.「アイ・ドント・ウォント・トゥ・ゴー・ホーム」は同名のアルバム(1976年)に収録されたものといった具合である。リトル・スティーヴンによる提供曲と言っても、共作も含まれる。例えば、上記の6.はブルース・スプリングスティーンの共作だし、9.「スタンディング・イン・ザ・ライン・オブ・ファイアー」は、ゲイリー・US・ボンズとの共作で、彼らの同名アルバム(1984年)に収録されたナンバーである。 セルフ・カバーではなく、先達のカバー曲もいくつか収録されている。3.「ブルース・イズ・マイ・ビジネス」はエタ・ジェイムズ、8.「ダウン・アンド・アウト・イン・ニュー・ヨーク・シティ」はジェームズ・ブラウンの曲をカバーしたものである。さらに、それ以外には、7.「ザ・シティ・ウィープス・トゥナイト」のような過去作のアウトテイク、4.「アイ・ソー・ザ・ライト」のように未完成だった曲(リッチー・サンボラとの共作)を完成させて今回のアルバムに収録したものも含まれている。 全体を通して納得なのは、どの曲も見事なまでに“リトル・スティーヴン節”に仕上がっている点である。若い頃の奇抜さは少し引っ込んだように見えるけれども、独特の粘っこいヴォーカル、堂々としたアメリカン・ロック調をベースにいろいろと工夫を凝らすアレンジ力はやっぱりこの人のマルチ・タレントさなしには成り立たない。決して多作なアーティストではないけれど、その才能と年月を重ねた貫禄がどちらも発揮された好盤だと思う。[収録曲]1. Soulfire2. I'm Coming Back3. Blues Is My Business4. I Saw the Light5. Some Things Just Don't Change6. Love on the Wrong Side of Town7. The City Weeps Tonight8. Down and Out in New York City9. Standing in the Line of Fire10. Saint Valentine's Day11. I Don't Want to Go Home12. Ride the Night Away2017年リリース。 SOULFIRE【輸入盤】▼/LITTLE STEVEN[CD]【返品種別A】 ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2020年01月14日
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ケニー・バレルの諸作の中でも個人的に特別な愛聴盤 ケニー・バレル(Kenny Burrell)の最良の盤はと問われると、丸3日間(否、せめて1週間?)は頭を抱えることができそうだが、間違いなくその1枚の候補にするかどうか迷うだろうと思うのが、本盤『ブルージー・バレル(Bluesy Burrell)』である。1962年に録音されたもので、まだまだ伸び盛りの当時30歳過ぎのバレルが、既に大御所だったコールマン・ホーキンス(Coleman Hawkins)と全7曲中4曲で共演しているという作品である。 本盤の特徴と言えそうな点を順に見ていくが、結論から述べてしまうと、全体を通じてダンディでシャレている。それはいろんな要素が交わりつつも、最後は独自色に染まっているというところにあるからと言っていい。まず、一点目の特徴としては、上述の通りの共演盤であるということ。ホーキンスのテナーが聴けるのは4曲だが、それらはいずれもどこか自制的である。バレルはこの録音以前にも優れた共演盤(例えばこちらやこちらやこちら)をいくつも残しているが、相手の良さを消さずに自分の良さも消さない演奏は見事というほかない。このことは本盤にも当てはまり、上の“自制的”というのは決して悪い意味ではなく、ホーキンスもバレルもいい意味で互いを意識しあった結果だったということなのだろう。 二つめに、演奏の精度の高さが挙げられる。ホーキンスとバレルの演奏だけでなく、ピアノのトミー・フラナガン(当時はホーキンスのグループのレギュラー・メンバーだった)をはじめとする面々がとにかく安定している。そして、三つめは、“中途半端な”ラテン風味。コンガのレイ・バレットが4曲に加わっていて、冒頭の1.「トレス・パラブラス」(「キサス・キサス・キサス」でも知られるキューバ人作曲家オスバルド・ファレスの作)も、そういう意味では、典型的な選曲である。ところが、実際に演奏を聴いてみると、“これがボサ・ノヴァ?”という声が聞こえてきそうなぐらいジャジーでブルージーさが温存されている。つまりは、“中途半端な”ラテンのフレーバーというのも、決して悪い意味ではなく、ラテンに化けてしまうことなく、あくまで“ご飯の上のふりかけ”的なちょっとしたフレーバーに止めているところがミソなのだと思う。 それでもなお、この肩の力の抜け具合は真剣なジャズとは言えん!という、至極まっとうな意見もあるかもしれない。けれども、演奏がシャレているというだけでなく、それが一貫したダンディズムに結びつているのは、やっぱり本盤のよさで、何度繰り返して聴いても筆者が心打たれる部分であったりする。[収録曲]1. Tres Palabras2. No More3. Guilty4. Montono Blues5. I Thought About You6. Out of This World7. It's Getting Dark[パーソネル、録音]Kenny Burrell (g), Coleman Hawkins (ts, 1., 4., 5., 7.), Tommy Flanagan (p), Major Holley (b), Eddie Locke (ds), Ray Barretto (conga, 1., 4., 6., 7.)1962年9月14日録音。 デサフィナード+ブルージー・バレル [ コールマン・ホーキンス ] 【輸入盤CD】【ネコポス100円】Kenny Burrell & Coleman Hawkins / Bluesy Burrell (ケニー・バレル) 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2020年01月11日
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永遠不滅のピアノ・トリオ盤 ビル・エヴァンス(ビル・エバンス、Bill Evans)の作品のうち、もっともよく聴かれているのは『ワルツ・フォー・デビイ』だろう。これが名盤であり、実際、名盤ガイドなどでも繰り返し紹介される盤であるということは確かなのだけれど、本来最初に推奨すべきはこちらではなかろうかとついつい考えたくなるのが、『ポートレイト・イン・ジャズ(Portrait in Jazz)』という盤である。 その理由はというと、主に二つある。一つはスタジオで録音されたという点。『ワルツ~』の方は実況録音盤であるのに対し、本盤はニューヨークシティでスタジオ録音されている。ジャズの真髄はライヴ演奏にあり、という意見に反対するわけではないけれども、最初にじっくり聴く一枚にするなら、スタジオで録音された盤という意見ももっともではないかと思ったりする。 もう一つは、それでいてスタンダード曲が並んでいる点。この点については、『ワルツ~』もスタンダードを扱ってはいるものの、こちらの盤は1.「降っても晴れても」、2.「枯葉」、7.「恋とは何でしょう」、9.「いつか王子様が」といった具合に、とっつきやすさという点でもどちらかというと本盤の方に分があるように思える。 もちろん、収録曲やスタジオ録音だからというのだけが理由ではない。何よりもそのメンバー構成は大事な点で、ビル・エヴァンス(ピアノ)、スコット・ラファロ(ベース)、ポール・モチアン(ドラム)という、決して多くを残さなかった組み合わせである(上記の『ワルツ~』もこのメンツでの録音で、よく知られているように、『ワルツ~』の収録からわずか10日余りでラファロは事故死してしまう)。リヴァーサイド4部作などと呼ばれるうちのスタジオ録音作2枚のうちの一つがこの盤なのである。さらに、この3人の組み合わせがビル・エヴァンスの充実期となった点である。ラファロを失ったエヴァンスはしばらく活動を停止し、シーンから遠ざかってしまうほどのショックを受けた。そのことはすなわち、この3人での演奏がいかほどうまく行っていたのかも物語っている。 実際、本盤を聴けば、初めての人にもきっと聴きやすく、なおかついろんな聴き方をするリスナーが繰り返し聴いてもスリリングな楽しみを得られると思う。エヴァンスのピアノ演奏そのもの、エヴァンスとラファロのインタープレイ、ラファロのベースそのものの演奏、さらにはそれを支えながらも積極的に絡んでくるモチアンのドラミング…。年明け早々から去年の話というのもなんだけれど、2019年がエヴァンスの生誕90年ということで、昨年は、久しぶりに引っ張り出してきたものも含めて、何枚かのエヴァンス盤を繰り返し聴いたりしていた。そして結論として、やっぱり永遠不滅で今後も繰り返し聴きつづけなければという思いを最も与えてくれたのが、本盤だったというわけである。[収録曲]1. Come Rain or Come Shine2. Autumn Leaves (take 1) 3. Autumn Leaves (take 2)4. Witchcraft5. When I Fall in Love6. Peri's Scope7. What Is This Thing Called Love?8. Spring Is Here9. Someday My Prince Will Come10. Blue in Green (take 3)11. Blue in Green (take 2)[パーソネル、録音]Bill Evans (p), Scott LaFaro (b), Paul Motian (ds)1959年12月28日録音。 ポートレイト・イン・ジャズ +1 [ ビル・エヴァンス ] 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2020年01月08日
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現代ジャズ?いやはや半世紀前のジャズ… エンリコ・イントラ(Enrico Intra)は、1935年ミラノ出身のイタリアのジャズ・ピアニスト。彼の盤と言うと、筆者はそれこそ何枚かは聴いてみているのだけれど、さほど枚数を聴いたわけでもない。けれども、今のところダントツに推奨で、おそらく聴いた盤の数が増えてもそうであり続けるのではないかという予感がしているのが、本盤『ジャズ・イン・ストゥーディオ(Jazz in Studio)』である。 録音がなされたのは1962年のこと。起伏に富み、エモーショナルで、どこか軽快で、既成概念にとらわれない奔放さが好印象の演奏である。エンリコ・イントラのピアノがというよりは、トリオの3人が一体になってそうした空気感を作り上げているという印象である。何でも5か月にわたってリハーサルを繰り返した挙句の演奏とのことで、いい意味で作り込まれた演奏なのだと思う。 筆者の好みとともに聴きどころを挙げると、まずは1.「パーカッション」。ピアノをちゃんと強調した演奏ながら、ベースとドラムスがしっかり効いているというのがいい。3.「ピットゥーラ」は、疾走感を出しながらも実に綿密な演奏をしている。6.「ジョン・ルイス」から7.「クラシック・ジャズ」という2曲は、本盤収録の演奏の中でも特に作り込まれた感じがするが、まったく嫌味な感じがしない。一方、10.「フィオーラ・ブルース(フラワー・ブルース)」は、いくぶんルーズな感じを醸しだしていて、個人的にはなかなか気に入っている。ちなみに、イタリア人トリオということもあって、各曲の冒頭には、短くイタリア語での曲紹介の音声が含まれている。 手元のCDはリイシュー盤で、元々はEPだった別のライヴ演奏(11.~14.の4曲)がボーナス曲として収められている。本編よりも数年前(1957年)のサン・レモのジャズフェスティヴァルでの演奏だが、こちらの方は、どちらかというと、“勢い”がキーワードになりそうである。全体として疾走感のある演奏で、もちろんこの感覚は本編での演奏にも通じているのだけれど、ベーシストが交代しているとはいえ、意図して作り込もうとするとこんなに変わってくるものかと変に驚かされたりもする。 ちなみに、この盤、かつては中古相場でウン十万円とかいう高値がついていたそうだが、筆者はそんなこととはつゆ知らず、2008年のリイシュー後に“何となく”入手した。実を言うと、ジャケットが目に留まり、“現代ピアノ盤”だと思って最初に手に取った。確かに、音がそれなりによくないことを横に置けば、演奏内容はいまだって“現在のジャズです”と言われたら信じる人も多いのではなかろうか。それほどにまで先を見据えた“現代的”演奏を演っていたのだというと、果たして言いすぎであろうか。[収録曲]1. Percussion2. Nardis3. Pittura4. A Foggy Day5. Tra Bop6. John Lewis7. Classic Jazz 8. You Stepped Out Of A Dream9. Tre, Tre, Tre10. Fiora Blues11. Modern In S.Remo12. Blues13. The Classic Jazz14. La Strada Del Petrolio[パーソネル、録音]Enrico Intra (p), Pupo de Luca (ds), Pallino Salonia (b, 1.~10.), Ernesto Villa (b, 11.~14.)1962年10月録音(ただし、ライヴ音源のボーナス・トラック11.~14.は1957年録音)。 【中古】輸入ジャズCD ENRICO INTRA TRIO / JAZZ IN STUDIO[輸入盤] ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2020年01月05日
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2020年01月04日
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HAPPY NEW YEAR 2020!新年おめでとうございます。本ブログをご覧のみなさんにとって、2020年がよき年であることをお祈りいたします。今年もまた無理のない範囲でコンスタントに更新を続けられればと思っています。毎日更新はなかなか難しいですが、少しずつマイペースで参りますので、よろしくお付き合いください。 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2020年01月01日
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