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豪華ハード・バップの面々との吹込みによる名トロンボーン奏者の1枚 カーティス・フラー(Curtis Fuller)は、1934年にデトロイトで生まれたトロンボーン奏者で、2021年に86歳で没している(追悼過去記事(1) ・(2) )。ジャズ・トロンボーンと言えば、J.J.ジョンソンかカーティス・フラーかというくらい、この楽器の代表的なプレーヤーとして知られる。そんな彼がとりわけ素晴らしい作品を相次いで吹き込んだのが、1950年代後半から1960年代初頭にかけてであった。その中でも代表作とされる『ブルースエット』とほぼ同時期に吹き込まれた(厳密には2か月ほど前に録音された)のが、本盤『スライディング・イージー(Sliding Easy)』である。 本盤の特徴としては、何と言ってもまずは演奏メンバーの充実度である。ピアノがトミー・フラナガン、ベースがポール・チェンバース、ドラムスがエルヴィン・ジョーンズ。さらに、フロントは三管の編成で、トロンボーンのカーティス・フラーに加えて、トランペットのリー・モーガン、テナー・サックスのハンク・モブレイという面々である。もちろん、吹き込みの当時は若かったわけだけれど、後世から見れば、ハード・バップ・ジャズのレジェンドが居並ぶという、そんなメンツだったわけである。 そんな豪華な顔ぶれには、さらに続きがある。収められた6曲中、4曲(1.、3.、4.、5.)はベニー・ゴルソン、残る2曲(2.と6.)はジジ・グライスが編曲を担当している。とりわけ、三管を生かしたゴルソンのアレンジの美しさは、本盤の演奏を支える重要な要素となっていると思う。 いくつかの曲を個別に見ておきたい。1.「ビット・オブ・ヘヴン」は、フラーの自作曲で、三管のアンサンブルの美しさが光る。4.「ボンゴ・バップ」は、チャーリー・パーカーの曲で、表題からもわかるようにラテン風のリズムのナンバーだが、フラーをはじめフロント管楽器それぞれの軽妙な演奏が心地いい。リラックス感を醸し出す5.「ホエン・ライツ・アー・ロウ」の演奏は、個人的にはかなりおすすめ。そして、6.「C.T.A.」は、グライスの編曲によるもので、溌溂とした各奏者のソロ演奏が受け渡されていく展開が何とも言えないスリリングさを作り上げている。 そのようなわけで、これぞ代表的な1枚と言うような盤というわけではないかもしれない。けれども、カーティス・フラーのみならず、彼を含む当時のモダン・ジャズの雰囲気を体現した盤であると思う。そうした意味で、歴史的名盤ではないかもしれないが、もっともっとこれに親しむ人がいてもいいんじゃないかとも思っていたりする盤である。[収録曲]1. Bit of Heaven2. Down Home3. I Wonder Where Our Love Has Gone4. Bongo Bop5. When Lights Are Low6. C.T.A.[パーソネル、録音]Curtis Fuller (tb), Lee Morgan (tp), Hank Mobley (ts), Tommy Flanagan (p), Paul Chambers (b), Elvin Jones (ds), Benny Golson (arr), Gigi Gryce (arr)1959年3月9日録音。 【中古】 Curtis Fuller カーティスフラー / Sliding Easy 【CD】 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2023年10月29日
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トロンボーン奏者率いるクインテット演奏の代表盤 J・J・ジョンソン(J. J. Johnson,1924年生れ2001年没)は、モダン・ジャズを代表するトロンボーン奏者。彼の大評判として知られ、彼が率いたクインテットによる最高峰の演奏と言えるのが、1957年に録音された本盤『ダイアルJ.J.5(Dial J.J.5)』である。 クインテット(5人組)のメンバーは、トロンボーンのJ・J・ジョンソンに加えて、ボビー・ジャスパー(テナー、フルート)、トミー・フラナガン(ピアノ)、ウィルバー・リトル(ベース)、エルヴィン・ジョーンズ(ドラムス)という面々である。リズムセクションの3人は、本盤の録音後、この同じ年にトミー・フラナガンの名盤として知られる『オーヴァーシーズ』を録音しており、本盤でもこれら3人の演奏の安定感とよさが際立っている。テナー・サックスとフルートを使い分けているボビー・ジャスパーは、ベルギー出身で米国へ渡って活躍した人物で、本盤のほかにウィントン・ケリーの『ケリー・ブルー』でも知られる。 どれもスリリングで、このメンツだからこそ成し得たという演奏が並ぶ。個人的好みで何曲か挙げると、1.「ティー・ポット」、2.「バルバドス」、4.「セッテ・チョーズ」、9.「バード・ソング」といった具合になるだろうか。とは言うものの、このクインテットの本領は、本盤の別の部分でも発揮されているようにも思う。 それは、5人全員がそろうのではなく、3人や4人の演奏曲も含まれている点である。7.「ソー・ソーリー・プリーズ」と8.「イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー」では、リーダーのJ.J.が演奏していない。また、ボビー・ジャスパーは必要に応じてサックスまたはフルートを演奏し、時に彼が抜ける。結果、6.「ラヴ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ」は、ジャスパー抜きのカルテット演奏。7.はJ.J.もジャスパーも抜けており、トリオでの演奏となっている(これがまた上述の『オーヴァーシーズ』を想起させる見事な演奏!)。8.はJ.J.が抜けてジャスパーのフルートをフィーチャーした、なおかつリーダー抜きでのカルテット演奏。この自在さというか臨機応変さがこのメンバーでの演奏のよさであるというのも実感できる作品というふうに思う。[収録曲]1. Tea Pot2. Barbados3. In a Little Provincial Town4. Cette Chose5. Blue Haze6. Love Is Here to Stay7. So Sorry Please8. It Could Happen to You9. Bird Song10. Old Devil Moon[パーソネル、録音]J. J. Johnson (tb)Bobby Jaspar (ts, fl)Tommy Flanagan (p)Wilbur Little (b)Elvin Jones (ds)1957年1月29日(5., 6., 8., 9.)、1月31日(2., 3., 4.)、5月14日(1., 7., 10.)録音。 ダイアルJ.J.5 [ J.J.ジョンソン ] 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2023年10月25日
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不調和が調和する瞬間 ブルーノート、プレスティジ、リバーサイドと所属を変えていった後にセロニアス・モンク(Thelonious Monk)が行きついたのはコロンビア・レコードで、キャリア後期のかなりの期間・アルバム数をこのレーベルに残すことになった。そんなコロンビア期の最初の作品(1962年録音)がこの『モンクス・ドリーム(Monk’s Dream)』だった。 一般に言われるように、モンクの音楽はヘンテコである。言い換えると、通常の音楽理論と“調和”していない。突飛でもないことが起こる音楽である。結果、聴き手側が、予想を裏切られることを予想して聴くという状況がしばしば起きる。 ところが、本盤を聴くとさらに不思議な現象が起こっているように感じられる。ここで提示される音楽はそれ自体として“調和”したものになっている。話が少々ややこしいが、ここで披露されている音楽そのものは、一般的な音楽観や音楽理論と“調和”していない独特なものだ。けれども、演奏されている音楽だけに目を向けると、本盤の中では完結的に“調和”しているように見えるのである。 何とも小難しい話になってしまったけれど、これが筆者の正直な感想である。そんな風になっている主要因は、テナー・サックスのチャーリー・ラウズ(Charlie Rouse)の存在であろう。これ以前には『5・バイ・モンク・バイ・5』(1959年)にも参加しているが、その時よりもはるかにこの奏者自身が“モンク化”している。要するに、セロニアス・モンクの音楽に“調和”しているのだ。 その結果、意外な不協和音、予想外のぶつかり合いといった面でのミュージシャン間での緊張が少ないとも言える。なので、それらをこのモンク盤に求めるならば、期待は裏切られるかもしれない。けれども、“フツーじゃない音楽がフツーにまとまった形で提示されている”という本盤の演奏を、筆者はとても気に入っている。ラウズのサックスは、時にモンクらしいフレーズを吹き、また時にモンクの独自のピアノの間合いにぴったりとはまった演奏をしている。そんなわけで、繰り返し演奏を共にすることになるこの二人の関係性の確立が本盤のいちばんの聴きどころなのだと思う。 収録されているのは、ほとんどが既発表の楽曲で、初演は3.「ブライト・ミシシッピ」だけである。ただし、過去の発表時と表題が異なっている曲もあり、5.「ボリバルのブルース(Bolivar Blues)」は、「バルー・ボリバル・バルーズアー(Ba-Lue Bolivar Ba-Lues-Are)」というへんてこりんなタイトルで発表された曲(『ブリリアント・コーナーズ』に収録)。同様に、4.「ファイヴ・スポット・ブルース(Five Spot Blues)」は、「ブルース・ファイヴ・スポット(Blues Five Spot)」として『ミステリオーソ』で演奏されていたものである。[収録曲]1. Monk's Dream2. Body and Soul3. Bright Mississipp4. Five Spot Blues5. Bolivar Blues6. Just a Gigolo7. Bye-Ya8. Sweet and Lovely[パーソネル、録音]Thelonious Monk (p), Charlie Rouse (ts), John Ore (b), Frankie Dunlop (ds)1962年10月31日(5.と7.)、11月1日(2.と3.)、11月2日(1.、6.、8.)、11月6日(4.)録音。 Thelonious Monk セロニアスモンク / Monk's Dream + 4 【BLU-SPEC CD 2】 下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2023年10月20日
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ギター小僧のその先へ、幅が広がり始めた1枚 ニルス・ロフグレン(Nils Lofgren)は、グリンというバンドでメジャーデビューし、1970年代、地味ながら着実にソロ活動を繰り広げていった。この間の活動で、“ギター小僧”、“ギター・キッド”などといったイメージがついたけれど、1980年代を迎えると、音楽性を少し変えていった。ポップな方向を向いたというのは、コアなファンにとってはがっかりな部分もあったかもしれないが、数十年後の現在から見れば、彼の音楽性が広がっていく過程だったようにも思う。 そんな彼の傾向が見え始めたのが、1981年発表の本盤『ナイト・フェイズ・アウェイ(Night Fades Away)』である。1980年代にニルスは3枚のスタジオ作を残している(本盤のほかに、1983年の『ワンダーランド』、1985年の『フリップ』)が、いずれも、前後の作品に比べてポップ寄りのサウンドに仕上がっている。 本盤に収められた楽曲のうち、筆者のお気に入りナンバー1は、何といっても表題曲の1.「ナイト・フェイズ・アウェイ」。ソフトな曲調ながら、ヴォーカルもなかなかよくて、ハーモニクスを含むギタープレイの特色もうまく活かされている。全体に目を向けると、小気味よく聴きやすいロックナンバーが多く含まれているのも特徴。そうした曲の代表格としては、デル・シャノンで知られる2.「アイ・ゴー・トゥ・ピーシズ」、ビートルズのカバーである7.「エニータイム・アット・オール」。さらには、6.「セイラー・ボーイ」なんかもテンポのよさが目立つ。あと、8.「魔女の誘惑(エンシェント・ヒストリー)」は、グリン時代からの雰囲気を保っていて、これも何気に外せないナンバーだったりする。[収録曲]1. Night Fades Away2. I Go to Pieces3. Empty Heart4. Don't Touch Me5. Dirty Money6. Sailor Boy7. Anytime at All8. Ancient History9. Streets Again10. In Motion1981年リリース。 【中古】 Nils Lofgren ニルスロフグレン / ナイト・フェイズ・アウェイ 【LP】↓LP盤です↓ Nils Lofgren「Night Fades Away」 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2023年10月14日
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ロック色を強めた好盤 “100万ドルのギタリスト”と言われたジョニー・ウィンター(Johnny Winter)がコロンビアと契約してから、メジャーデビュー盤、セカンド作(過去記事)に続いて、3枚目のリリースとなったのが、この『ジョニー・ウィンター・アンド(Johnny Winter And)』である。 この“ジョニー・ウィンター・アンド”はバンドの呼称である(“アンド(そして)”で終わることの違和感を、筆者は何十年たっても払しょくできないでいるけれど)。メンバーは、リック・デリンジャー(ギター)、ランディ・ジョー・ホブス(ベース)、ランディ・Z (ドラムス)という面々で、特にデリンジャーは曲作りや共同プロデュースという役割を果たしている。 ジョニー・ウィンターのキャリアの中で見ると、本盤は、ブルースをベースにしつつも、どんどんとロック色を強めていった時期の作品である。注目のナンバーをいくつか見ておきたい。1.「ゲス・アイル・ゴー・アウェイ」は勢いのある曲調に乗せて展開されるギターのカッコよさとヴォーカルの激しさがいい。3.「ノー・タイム・トゥ・リヴ」は、トラフィックのカバー(原曲は1968年作の『トラフィック』に収録)。4.「ロックンロール・フーチー・クー」はデリンジャー作でこの曲の初出(後にデリンジャーは次作でセルフ・カバーも披露している)。 アルバム後半に目を向けると、ウィンターらしさが発揮された7.「プロディガル・サン」、デリンジャーのペンによる8.「オン・ザ・リム」や11.「ファンキー・ミュージック」などが光る。さらに、聴き逃がせないと思うのは、哀愁漂う曲調の9.「レット・ザ・ミュージック・プレイ」。ブルースに固執するのではなく、幅広い曲演奏を取り入れていることもよく分かる1曲だと言える。 残念なことに、本盤のセールスは振るわなかった。全米でのチャート順位は、前作(55位)、前々作(24位)に対して、本作は154位にとどまった。本盤よりも後に出されたライヴ盤(1971年)の方が注目度が高いため、そちらに目が行きがちである(若い頃、筆者が先に聴いたのも、実はそちらのライヴ盤だった)。けれども、こちらの盤も決して忘れてはならないお薦め盤であることを声を大にして言いたい。[収録曲]1. Guess I'll Go Away2. Ain't That a Kindness3. No Time to Live4. Rock and Roll, Hoochie Koo5. Am I Here?6. Look Up7. Prodigal Son8. On the Limb9. Let the Music Play10. Nothing Left11. Funky Music1970年リリース。 輸入盤 JOHNNY WINTER / JOHNNY WINTER AND-LIVE AT THE FILLMORE EAST [CD] ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2023年10月07日
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輝かしきバンドのデビュー盤 1970年代後半、デヴィッド・ペイチ(キーボード)とジェフ・ポーカロ(ドラム)を中心にスタジオ・ミュージシャンたちから成るバンドが動き始めた。これら2人以外のメンバーは、スティーヴ・ルカサー(ギター)、ボビー・キンボール(ヴォーカル)、デヴィッド・ハンゲイト(ベース)、スティーヴ・ポーカロ(キーボード)といった面々であった。彼らが1978年にリリースしたデビュー盤が、原盤ではセルフタイトルの『TOTO~宇宙の騎士(Toto)』だった。 名前のTOTO(以前、日本では4文字とも大文字で表記されていた)を見た日本人の多くは、便器で有名なメーカー(当時は東陶機器、以前の東洋陶器)を思い浮かべるかもしれない。けれども、アルバム・ジャケットは、宇宙をバックにしたエクスカリバー(中世イングランドのアーサー王伝説に出てくる魔法の力を持った剣)。そしてそのサウンドは、“産業ロック”とも呼ばれることになる、1980年代以降に向けた新たな方向性を既に示しているものだった。 セッション・ミュージシャンとして活躍していた人たちがバンドを組んだのだから、その演奏の実力はこのデビュー盤からもはや完成されている。それに加えて素晴らしかったのは、上記のジャケ写から連想されるコンセプトが楽曲の音にもぴったりとリンクしていた点だろう。1.「子供の凱歌(チャイルズ・アンセム)」という冒頭のインスト曲で、リスナーはあっという間に“アーサー王の剣が宇宙に浮かぶ世界”へと誘われる。1970年代のそれまでのロックとは次元の異なる世界とでも呼べるものが、当時の感覚では新鮮だったということになるのだろう。 1.に加え、筆者が気に入っているナンバーを少し見ておきたい。2.「愛する君に(アイル・サプライ・ザ・ラヴ)」は、1980~90年代のロック・ナンバーの雰囲気を先取りしている。3.「ジョージー・ポーギー」この少し後のTOTOの名曲の香りを既に持っている。さらに、7.「ふりだしの恋(テイキン・イット・バック)」と10.「アンジェラ」(個人的にはこちらが特にお気に入り)は、AOR的ロック/バラードというこの後の流れを先取りしているように思う。それから、9.「ホールド・ザ・ライン」は、TOTOにとっての最初のヒット曲となったシングルで、全米5位を記録している。[収録曲]1. Child's Anthem2. I'll Supply the Love3. Georgy Porgy4. Manuela Run5. You Are the Flower6. Girl Goodbye7. Takin' It Back8. Rockmaker9. Hold the Line10. Angela1978年リリース。 [期間限定][限定盤]宇宙の騎士/TOTO[CD]【返品種別A】 宇宙の騎士 [ TOTO ] 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2023年10月02日
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